以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
<エンジン>
図1に、本発明を適用したエンジン100を示す。このエンジン100は、例えば自動車に搭載されるガソリンエンジンであり、吸気通路10、排気通路30、エンジン本体20、ECU50(Electronic Control Unit、制御装置の一例)などで構成されている。
<吸気通路10>
吸気通路10は、外部からエンジン本体20に吸気(空気)を導入する通路である。吸気通路10には、エアクリーナ2、ターボ過給機4(コンプレッサ4a)、インタークーラ9、スロットルバルブ11、吸気マニホールド13が設けられており、吸気通路10は、これらを配管15で接続することによって構成されている。
エアクリーナ2は、吸気通路10の上流側の端部に配置されており、外部から吸気通路10に導入される吸気を浄化する。そのエアクリーナ2の下流側に、ターボ過給機4が配置されている。ターボ過給機4は、排気のエネルギーを利用して吸気を過給する装置であり、タービン4bやコンプレッサ4aなどで構成されている。吸気通路10には、そのコンプレッサ4aが配置されており、コンプレッサ4aで昇圧されることによって吸気は過給される。
吸気通路10のターボ過給機4の周辺部位には、コンプレッサ4aによって過給された吸気の一部を、コンプレッサ4aの上流側に還流するエアバイパス通路6が設けられている。エアバイパス通路6の一端は、吸気通路10におけるコンプレッサ4aの下流側であってスロットルバルブ11の上流側の部位に接続されており、エアバイパス通路6の他端は、吸気通路10におけるコンプレッサ4aの上流側の部位に接続されている。エアバイパス通路6の途中には、エアバイパス通路6を流れる吸気の流量を制御するエアバイパスバルブ7が設けられている。
ターボ過給機4の下流側には、吸気を冷却するインタークーラ9が配置されている。更に、そのインタークーラ9の下流側には、スロットルバルブ11が配置されている。スロットルバルブ11は、吸気通路10の流路に開閉制御可能に設けられており、その開度を変化させることによって吸気の流量を調整する。
スロットルバルブ11の下流側には、吸気マニホールド13が配置されている。吸気マニホールド13は、吸気を一時的に蓄えることができる容量の大きなサージタンク13aを有しており、エンジン本体20の吸気ポート14に接続されている。
配管15は、これら装置を接続する部材である。このエンジン100では特に、鋼管等の変形不能なパイプ15aだけでなく、弾性変形可能なホース15bが、配管15として用いられている。このエンジン100では、パイプ15aを中継するホース15bが、吸気通路10のスロットルバルブ11とコンプレッサ4aとの間の部位(過給機下流側部位10aともいう)に設置されている。
具体的には、スロットルバルブ11とインタークーラ9とを接続しているパイプ15aの中間部位に第1ホース15bが設けられ、インタークーラ9とコンプレッサ4aとを接続しているパイプ15aの中間部位に第2ホース15bが設けられている。このように、インタークーラ9の下流側及び上流側の各々のパイプ15aに、第1ホース15b及び第2ホース15bによる中継部位を設けることで、インタークーラ9を設置する際には、位置ずれがあっても組み付けが容易にでき、また、エンジン本体20等で発生する振動が吸気通路10を介してインタークーラ9等に伝わるのを抑制できるようになっている。
<排気通路30>
排気通路30は、エンジン本体20で発生する排気を排出する通路である。排気通路30には、上流側から順に、ターボ過給機4(タービン4b)、排気浄化装置37,38が設けられている。タービン4bは、コンプレッサ4aと軸で連結されており、通過する排気のエネルギーによって回転し、この回転によってコンプレッサ4aが駆動されるようになっている。排気浄化装置37,38には、例えばNOx触媒や三元触媒や酸化触媒などの排気浄化触媒が収容されており、排気浄化装置37,38を通過することで排気が浄化されるようになっている。
排気通路30には、排気を吸気通路10に還流するEGR(Exhaust Gas Recirculation)通路32が接続されている。EGR通路32の一端は、排気通路30のタービン4bの上流側の部位に接続されており、EGR通路32の他端は、吸気通路10のスロットルバルブ11の下流側の部位に接続されている。EGR通路32には、還流させる排気を冷却するEGRクーラ33と、EGR通路32を流れる排気の流量を制御するEGRバルブ34とが設けられている。
また、排気通路30のターボ過給機4の周辺部位には、タービン4bを迂回して排気を流すことができるタービンバイパス通路35が設けられている。このタービンバイパス通路35には、全閉状態から全開状態の間で行われる開度調整により、タービンバイパス通路35を流れる排気の流量を制御するウェイストゲートバルブ(WGバルブ36)が設けられている。
<エンジン本体20>
エンジン本体20には、クランクシャフト28、吸気バルブ22、燃料噴射弁23、点火プラグ24、ピストン27、排気バルブ29、吸気バルブ可変機構(吸気VVT25)、排気バルブ可変機構(排気VVT26)などが備えられている。エンジン本体20には、複数の気筒21(図1では1つのみ表示)が形成されている。各気筒21には、クランクシャフト28に連結されたピストン27が収容されており、各気筒21のピストン27の上方に燃焼室が形成されている。
吸気通路10は、吸気ポート14を通じて燃焼室と連通しており、排気通路30は、排気ポート31を通じて燃焼室と連通している。吸気ポート14は吸気バルブ22によって開閉され、排気ポート31は排気バルブ29によって開閉される。燃料噴射弁23は、燃焼室に燃料を噴射し、点火プラグ24は、燃焼室で点火できるように、エンジン本体20に設置されている。
吸気通路10を通じて供給される吸気と、燃料噴射弁23から供給される燃料とによって燃焼室で混合気が形成される。点火プラグ24の点火によってその混合気が燃焼されることでピストン27が往復運動する。そのピストン27の往復運動によってクランクシャフト28が回転し、駆動力が発生する。
クランクシャフト28には、吸気カムシャフトと排気カムシャフトとが連結されている(図示せず)。吸気カムシャフトは、クランクシャフト28に連動して回転することにより、吸気バルブ22を駆動する。この駆動によって、吸気バルブ22は、吸気ポート14を所定のタイミングで開閉するように往復運動する。
同様に、排気カムシャフトは、クランクシャフト28に連動して回転することにより、排気バルブ29を駆動する。この駆動によって、排気バルブ29は、排気ポート31を所定のタイミングで開閉するように往復運動する。
吸気VVT25は、吸気カムシャフトの位相を進角又は遅角させる装置である。吸気VVT25が吸気カムシャフトの位相を進角又は遅角させることにより、吸気バルブ22の開時期及び閉時期(開閉時期)は、所定の最進角時期と最遅角時期との間で連続的に変化する。吸気VVT25は、例えば電磁バルブを用いて構成することができる。
排気VVT26は、吸気VVT25と同様に、排気カムシャフトの位相を進角又は遅角させることによって、排気バルブ29の開時期及び閉時期を連続的に変更し得る。排気VVT26は、例えば油圧式のソレノイドバルブを用いて構成することができる。
<各種センサ>
エンジン100には、各種センサが設けられている。具体的には、エンジン100の所定位置に、大気圧を検出する大気圧センサ60が設けられている。吸気通路10のエアクリーナ2の下流側の部位(詳しくは、エアクリーナ2とコンプレッサ4aとの間の部位)には、吸気の流量を検出するエアフロセンサ61と、吸気の温度を検出する第1温度センサ62と、が設けられている。
吸気通路10のコンプレッサ4aとスロットルバルブ11との間の部位(過給機下流側部位10a)には、過給圧を検出する第1圧力センサ63が設けられている。吸気通路10のスロットルバルブ11の下流側の部位(詳しくは、サージタンク13aの内部)には、インマニ圧力(サージタンク13aの内圧)を検出する第2圧力センサ64が設けられている。この第2圧力センサ64には、インマニ温度(サージタンク13aの内部温度)を検出する温度センサが内蔵されている。
エンジン本体20には、クランクシャフト28のクランク角を検出するクランク角センサ69、吸気カムシャフトのカム角を検出する吸気側カム角センサ70、及び、排気カムシャフトのカム角を検出する排気側カム角センサ71が設けられている。
EGRバルブ34には、その開度(EGR開度)を検出するEGR開度センサ65が設けられている。WGバルブ36には、その開度(WG開度)を検出するWG開度センサ66が設けられている。排気通路30のタービン4bの下流側の部位(詳しくは、タービン4bと排気浄化装置との間の部位)には、排気中の酸素濃度を検出するO2センサ67と排気温度を検出する排気温度センサ68とが設けられている。
大気圧センサ60は大気圧の信号S60をECU50に出力する。同様に、エアフロセンサ61は吸気流量の信号S61を、第1温度センサ62は吸気温度の信号S62を、第1圧力センサ63は過給圧の信号S63を、第2圧力センサ64はインマニ圧力及びインマニ温度の信号S64を、EGR開度センサ65はEGR開度の信号S65を、WG開度センサ66はWG開度の信号S66を、O2センサ67は酸素濃度の信号S67を、排気温度センサ68は排気温度の信号S68を、クランク角センサ69はクランク角の信号S69を、吸気側カム角センサ70は吸気カムシャフトのカム角の信号S70を、排気側カム角センサ71は排気カムシャフトのカム角の信号S71を、それぞれ、ECU50に出力する。
<ECU50>
ECU50は、CPUやメモリなどからなるハードウエアと、CPUで実行される各種プログラム(OSなどの基本制御プログラム、特定のアプリケーションプログラムなど)や、メモリに記憶された各種データなどからなるソフトウエアとを備え、いわゆるコンピュータで構成されている。
ECU50は、各種センサから入力される検出信号に基づいて、スロットルバルブ11、吸気VVT25、排気VVT26、燃料噴射弁23、点火プラグ24、エアバイパスバルブ7、EGRバルブ34、WGバルブ36などを制御する。そうすることで、ECU50はエンジン100を総合的に制御している。
図2に示すように、ECU50には、ベース制御部51、補正制御部52、速度切替部57などが備えられている。
<ベース制御部51>
ベース制御部51は、エンジン100で出力が要求されるトルク(以下「目標トルク」)に基づいて、各制御機器において制御の基準となる制御値(以下「基準値」)を設定し、その「基準値」により各制御機器の制御を行う。
詳しくは、ベース制御部51は、「目標トルク」を基準として、スロットルバルブ11の開度、WGバルブ36の開度、点火プラグ24の点火時期、吸気バルブ22の開閉時期、排気バルブ29の開閉時期、燃料噴射弁23での燃料噴射時期や燃料噴射量などを制御する(トルクベース制御)。トルクベース制御では、エンジン100の運転状態に基づいて「目標トルク」が取得され、この「目標トルク」が達成可能になる各制御機器の「基準値」が設定される。
図3のフローチャートを参照しながら、スロットルバルブ11、WGバルブ36、及び吸気VVT25の制御について説明する。
<スロットルバルブ11の制御>
まず、ベース制御部51は、エンジン100の運転状態を検知する(ステップS1)。具体的には、クランク角センサ69から入力される信号S69に基づいて算出されるエンジン100の回転数(エンジン回転数)、車速、アクセルの操作量(アクセル開度)、変速比等が、エンジン100の運転状態に関する情報として、ベース制御部51に読み込まれる。
ベース制御部51は、これら運転状態に関する情報を用いて演算を行い、加速度の目標値(目標加速度)を取得する(ステップS2)。そして、ベース制御部51は、取得した目標加速度の実現に必要な「目標トルク」を取得する(ステップS3)。
更に、ベース制御部51は、「目標トルク」の実現に必要な充填効率(Charging Efficiency)の目標値(以下「目標充填効率」)を取得する(ステップS4)。「目標充填効率」は、「目標トルク」、エンジン回転数、及び、図示平均有効圧力の目標値に基づいて求められる。図示平均有効圧力の目標値は、トルク損失となる機械抵抗やポンプ損失(ポンピングロス)、「目標トルク」に基づいて求められる。
そして、ベース制御部51は、スロットルバルブ11を制御するために、「目標充填効率」の実現に必要な、吸気マニホールド13の内部の吸気量の目標値(以下「目標インマニ空気量」)を取得する(ステップS5)。「目標インマニ空気量」は、吸気マニホールド13の内部の吸気密度を基準とした体積効率(インマニ基準の体積効率)と、吸気マニホールド13の容積(インマニ容積)と、気筒21の容積(シリンダ容積)と、シリンダ吸入空気量(気筒21に吸入される1行程あたりの吸気の質量)の目標値(目標シリンダ空気量)と、に基づいて取得される。
ここで、インマニ容積及びシリンダ容積は、ECU50のメモリに記憶されている。目標シリンダ空気量は、「目標充填効率」、シリンダ容積、及び、標準大気密度(標準状態における大気の密度:約1.2kg[kg/m3])に基づいて求められる。
ベース制御部51は、更に「目標インマニ空気量」の実現に必要となる、スロットルバルブ11を通過する吸気の流量の目標値(以下「目標スロットル通過流量」)を取得する(ステップS6)。「目標スロットル通過流量」は、「目標充填効率」、「目標インマニ空気量」、及び、現在のインマニ空気量の推定値(実インマニ空気量)に基づいて求められる。
ここで、実インマニ空気量は、第2圧力センサ64から入力されるインマニ圧力及びインマニ温度の信号S64に基づいて推定される。なお、実インマニ空気量は、吸気マニホールド13に出入する空気量の収支計算に基づいて推定してもよい。
ベース制御部51は、「目標スロットル通過流量」の実現に必要となる、スロットルバルブ11の開度の目標値(以下「目標スロットル開度」)を設定する(ステップS7)。「目標スロットル開度」は、「目標スロットル通過流量」と、第1圧力センサ63から入力される過給圧の信号S63と、第2圧力センサ64から入力されるインマニ圧力の信号S64とに基づいて設定される。
そうして、ECU50は、スロットルバルブ11の開度が「目標スロットル開度」となるように「基準値」の制御信号を出力する(ステップS8)。
<WGバルブ36の制御>
ECU50では、WGバルブ36を制御するために、現在のエンジン100の運転領域が、過給を行う必要がある過給領域にあるか、過給を行う必要が無い非過給領域にあるかが絶えずチェックされている。具体的には、ECU50は、「目標充填効率」に基づいて、過給領域か非過給領域かを判断している(ステップS9)。なお、非過給領域は、過給領域に比べて「目標充填効率」の小さい低負荷の領域である。
そして、ECU50によって過給領域であると判断された場合には(ステップS9でYes)、ベース制御部51は、「目標充填効率」の実現に必要な、過給圧の目標値(以下「目標過給圧」)を取得する(ステップS10)。ECU50のメモリには、エンジン回転数及び「目標充填効率」とこれらに対応した吸気バルブ22の開閉時期とが関連付けされた過給圧マップが記憶されており、「目標過給圧」は、この過給圧マップに基づいて取得される。
ベース制御部51は、「目標過給圧」に基づいて、タービン4bを通過する排気の流量の目標値(以下「目標タービン流量」)を取得する(ステップS11)。「目標タービン流量」は、目標圧縮機駆動力(コンプレッサ4aの駆動力の目標値)やエンジン回転数等に基づいて取得される。なお、目標圧縮機駆動力は「目標過給圧」から求められる。
ベース制御部51は、「目標タービン流量」の実現に必要な、WGバルブ36の開度の目標値(以下「目標WG開度」)を設定する(ステップS12)。「目標WG開度」は、「目標タービン流量」と排気の総流量とに基づいて求められる。
そうして、ECU50は、WGバルブ36の開度が「目標WG開度」となるように「基準値」の制御信号を出力する(ステップS13)。それにより、過給時のWGバルブ36は、「目標トルク」が実現されるように、主に閉じ位置側(WGバルブ36の開度が概ね50%より小さい範囲)で制御され、タービン4bに適量の排気が流入するようになる。
一方、ECU50によって非過給領域であると判断された場合には(ステップS9でNo)、通常であれば、エンジン回転数の全域で、WGバルブ36を開き位置側(WGバルブ36の開度が概ね50%より大きい範囲)に設定する制御が行われるが、このエンジン100の場合、更に、ECU50によって、現在のエンジン100のエンジン回転数が、切替回転数CR未満か否かが判断される(ステップS14)。
詳しくは、切替回転数CRは、WGバルブ36の開度の制御パターンを切り換える回転数であり、非過給領域におけるエンジン回転数の中間領域(いわゆる中回転領域)に設定されている。それにより、非過給領域は、切替回転数CRを境界にして、低回転側の領域と、高回転側の領域とに区画されている。
切替回転数CRは、低負荷からの加速時の吸気VVT25の制御において、スロットルバルブ11が、略全閉状態から略全開状態に大きく開かれた場合に、ホース15bが潰れて吸気通路10が一時的に閉塞された状態となり得るエンジン回転数よりも低い回転数であり、仕様に応じて適宜設定される。
そして、ECU50により、現在のエンジン100のエンジン回転数が切替回転数CR未満であると判断された場合には(ステップS14でYes)、ECU50は、WGバルブ制御マップに基づいて、通常通り、WGバルブ36を開き位置側に設定する制御を行う(ステップS15)。
具体的には、WGバルブ制御マップは、ECU50のメモリに記憶されている。図4に、非過給領域のWGバルブ制御マップを例示する。WGバルブ制御マップには、エンジン回転数及び「目標充填効率」とこれらに対応したWGバルブ36の開度設定値(a1,・・・,bn)とが関連付けて記憶されている。
ECU50は、WGバルブ制御マップにおける、切替回転数CR未満の低回転側領域でのWGバルブ36の開度設定値(a1,・・・,an)に基づいて、WGバルブ36を開き位置側に設定する。このエンジン100では、WGバルブ36は開度60%〜全開付近に設定される。
それにより、アイドリング時など、エンジンが低負荷かつ低回転で駆動される時には、排気の多くがタービン4bを迂回してタービンバイパス通路35に流れるようになるため、タービン4bの存在によって生じるエンジン100の背圧が低減され、燃費低下を効果的に抑制できる。
対して、ECU50により、現在のエンジン100のエンジン回転数が切替回転数CR以上であると判断された場合には(ステップS14でNo)、ECU50は、少なくともその低負荷領域(極低負荷領域)においてWGバルブ36を閉じ位置側に設定する制御(迂回規制制御)を行う(ステップS16)。
具体的には、WGバルブ制御マップにおける、切替回転数CR以上の高回転側領域での開度設定値(b1,・・・,bn)のうち、目標充填効率の小さい低負荷側の開度設定値(例えばb1,b2,bn−5等)は、WGバルブ36を略全閉する値(例えば開度10%以下)に設定されている。そして、このエンジン100では、目標充填効率の大きい高負荷側の開度設定値(例えばb5,b6,bn等)には、WGバルブ36を開き位置側に設定する値が設定されている。
それにより、非過給領域におけるエンジン回転数が切替回転数CR以上の領域では、図5に示すように、WGバルブ36の開度は、低負荷側の極低負荷領域で閉じ位置側に設定され、高負荷側で開き位置側に設定される。
このようにWGバルブ36を設定することで、非過給時におけるエンジンの高回転側の極低負荷領域では、タービンバイパス通路35を通じた排気の迂回が規制されるため、開き位置側に設定される通常の場合に比べて、エンジン100の背圧が高くなる。その結果、アクセルが踏み込まれても、高い背圧によって、多量の吸気が気筒21に急激に吸入され難くできるので、加速初期に、過給機下流側部位10aが強い陰圧状態となるのが阻止でき、ホース15bの潰れを抑制することができる。
更に、タービン4bに排気のほとんどが流入するようになるので、タービン4bは、高回転に速やかに移行できる予備駆動状態となる。その結果、タービン4bの迅速な立ち上げが可能になり、ターボラグの解消も促進させることができる。
特に、低負荷側になるほど、エンジン100の背圧の上昇量は小さくなるので、図5のように、迂回規制制御で設定されるWGバルブ36の開度を、エンジン100の高負荷側に比べて低負荷側で小さくすることで、極低負荷領域であっても効果的な背圧を得ることができる。そして、高負荷側では、その背圧が低減されるので、迂回規制制御による燃費の低下を軽減できる。
なお、閉じ位置や開き位置でのWGバルブ36の開度や、WGバルブ36の開度が閉じ位置から開き位置に移行する過程は、エンジンの仕様に合わせて設定される。
<吸気VVT25の制御>
また、ベース制御部51は、吸気バルブ22を制御するために、「目標充填効率」に基づいて、「目標トルク」の実現に必要な、吸気バルブ22の開閉時期(第1開閉時期)を設定する(ステップS17)。ECU50のメモリには、エンジン回転数及び「目標充填効率」とこれらに対応した吸気バルブ22の開閉時期とが関連付けされた吸気VVTマップが記憶されており、第1開閉時期は、この吸気VVTマップに基づいて設定される。
図6に、第1開閉時期での吸気バルブ22のバルブリフト量を概略的に示す。図6に示すように、吸気バルブ22が吸気行程の途中で開かれて、BDCを過ぎて圧縮行程の途中で閉じられるように、第1開閉時期は設定される(遅閉じ制御)。
そうして、ECU50は、吸気バルブ22の開閉時期が、設定された第1開閉時期となるように、吸気VVT25に「基準値」の制御信号を出力する。また、後述するように、補正制御部52によって第1開閉時期が第2開閉時期に補正される場合には、ECU50は、吸気バルブ22の開閉時期が、補正された第2開閉時期となるように、吸気VVT25にその制御信号を出力する(ステップS18)。
点火プラグ24の点火時期、排気VVT26の開閉時期、燃料噴射弁23での燃料噴射時期や燃料噴射量なども、「基準値」によって「目標トルク」が実現されるように制御される。その際、図7に示すように、吸気バルブ22の開弁期間は、基準値に基づいて設定された排気バルブ29の開弁期間と重なって、所定のオーバーラップ期間OLが形成され得るようになっている。なお、これら処理の順序は一例であり、ECU50の性能や仕様に応じて適宜変更できる。
<補正制御部52>
図2に示すように、補正制御部52は、目標体積効率演算部53、体積効率予測部54、仮想体積効率演算部55、及び吸気VVT進角量算出部56を備える。
補正制御部52は、ターボラグを改善するため、加速初期において、第1開閉時期よりも吸気充填量(気筒21に導入される吸気の質量)が増大するように、第1開閉時期を第2開閉時期に進角補正する制御を行う。具体的には、第1開閉時期から吸気バルブ22の開閉時期を進角(シフト)させて、吸気バルブ22の開閉時期を第2開閉時期に設定する。
一般に、気筒21への吸気の導入は、ピストン27が下降して容積が拡大するときに生じる負圧によって行われる。従って、ピストン27がBDC(下死点)に達した後は、容積が縮小していくので加圧に転じるが、ピストン27がBDCを通過した後も、BDCの少し後(ABDC)までは、吸気の慣性によって気筒21に吸気が導入される。
吸気充填量は、TDCからABDCまでの区間におけるバルブリフト量の積分量(図6における領域Aの面積に相当する。)に依存する。一方、ABDCから次のTDCまでの区間において吸気バルブ22が開いている期間は、吸気の一部が吸気ポート14に排出される。気筒21から吸気ポート14へ排出される吸気量は、ABDCから次のTDCまでの区間における吸気バルブ22のバルブリフト量の積分量(図6における領域Bの面積に相当する。)に依存するため、領域Aの面積と領域Bの面積との収支で吸気充填量が決まる。
図8に、第2開閉時期での吸気バルブ22のバルブリフト量を概略的に示す。吸気バルブ22の開閉時期が変更されれば、領域Aの面積と領域Bの面積とが変化するので、吸気充填量が変化する。従って、第1開閉時期の状態(破線)から、吸気バルブ22の開閉時期が進角して第2開閉時期の状態になると、領域Aの面積が増大して領域Bの面積が減少する。これにより、第2開閉時期の吸気充填量は、第1開閉時期の吸気充填量よりも増大する。
次に、図9を参照しながら、補正制御部52による吸気バルブ22の開閉時期の進角補正について詳しく説明する。
<目標体積効率演算部53>
目標体積効率演算部53は、体積効率の目標値(以下「目標体積効率」:Kvt)を、ベース制御部51で取得された「目標タービン流量」Qttと、標準大気密度ρ0とに基づいて、「目標体積効率」Kvtを算出する。詳しくは、ECU50のメモリには、「目標タービン流量」Qtt及び標準大気密度ρ0とこれらに対応した「目標体積効率」Kvtとが関連付けされた目標体積効率マップが記憶されており、「目標体積効率」Kvtは、この目標体積効率マップに基づいて求められる。
ここで、「目標体積効率」Kvtは、「目標タービン流量」Qtt、ひいては「目標過給圧」の実現に必要な体積効率に相当する。なお、体積効率は、いずれも標準状態における吸気の状態を基準とした体積効率(すなわち、充填効率)である。一般的には、体積効率が増加するにつれて、充填量も増加することになる。
<体積効率予測部54>
体積効率予測部54は、吸気通路10における気筒21の近傍部分(図1の破線で囲む部分、気筒近傍部分)に現存する吸気が気筒21に吸入された場合の体積効率の予測値(以下「予測体積効率」:Kvs)を、気筒近傍部分に現存する吸気の状態と、エンジン100の運転状態とに基づいて算出する。
すなわち、体積効率予測部54は、気筒近傍部分に現存する吸気の状態として、第2圧力センサ64の信号S64からインマニ圧力を読み込む。そして、そのインマニ圧力と、エンジン100の運転状態とに基づいて「予測体積効率」Kvsを算出する。
「予測体積効率」Kvsは、エンジン回転数、インマニ圧力、大気圧、吸気バルブ22の開閉時期、及び排気バルブ29の開閉時期、に基づいて算出される。ここでの吸気バルブ22の開閉時期及び排気バルブ29の開閉時期は、現存している開閉時期であり、それぞれ、クランク角センサ69、吸気側カム角センサ70、及び排気側カム角センサ71から入力される信号S69,S70,S71に基づいて取得される。
<仮想体積効率演算部55>
仮想体積効率演算部55は、吸気バルブ22の開閉時期を現存している開閉時期から5deg.CA(クランク角)ずつ進角させたときの「予測体積効率」Kvsに相当する仮想の体積効率(以下「仮想体積効率」:Kvv)を算出する。
仮想体積効率演算部55における「仮想体積効率」Kvvの算出では、エンジン回転数、インマニ圧力、大気圧、及び排気バルブ29の開閉時期については、「予測体積効率」Kvsの算出に用いた値が使用され、吸気バルブ22の開閉時期については、「予測体積効率」Kvsの算出に用いた値から5deg.CAずつ進角させた値が使用される。
<吸気VVT進角量算出部56>
吸気VVT進角量算出部56は、「予測体積効率」Kvsが「目標体積効率」Kvtよりも小さいときに、「仮想体積効率」Kvvの算出結果を利用して、吸気バルブ22の進角量を算出する。
吸気VVT進角量算出部56は、「目標体積効率」Kvt、「予測体積効率」Kvs、及び「仮想体積効率」Kvvを取得する。そして、吸気VVT進角量算出部56は、「目標体積効率」Kvtから「予測体積効率」Kvsを減算することによって、「目標体積効率」Kvtと「予測体積効率」Kvsとの間の差分ΔKv1(=Kvt−Kvs)を算出する。
この差分ΔKv1は、吸気充填量が不足しているか否かを示す指標である。例えば、差分ΔKv1がゼロより大きい場合、つまり、「予測体積効率」Kvsが「目標体積効率」Kvt未満である場合には、吸気充填量が不足し得るということになる。
一方、吸気VVT進角量算出部56は、「仮想体積効率」Kvvから「予測体積効率」Kvsを減算することによって、仮想体積効率Kvtと「予測体積効率」Kvsとの間の差分ΔKv2(=Kvv−Kvs)を算出する。この差分ΔKv2は、吸気バルブ22の開閉時期を5deg.CAずつ進角させたときの体積効率の増加量である。
吸気VVT進角量算出部56は、差分ΔKv1がゼロよりも大きい場合、充填量を増加させる。そして、差分ΔKv1がゼロよりも大きくなるほど、充填量の増加量も大きくなるように吸気バルブ22の開閉時期をシフト補正する。このとき、吸気VVT進角量算出部56は、差分ΔKv2の大きさに応じて、第1開閉時期からの進角量を調整し、第2開閉時期を設定する。
詳しくは、吸気VVT進角量算出部56は、差分ΔKv1を差分ΔKv2で除算することによって、5deg.CA基準の体積効率過不足率Rv(=ΔKv1/ΔKv2)を算出する。そして、体積効率過不足率Rvに対して5deg.CAを乗算することによって、追加進角量Δθ(クランク角単位)を算出する。
ここで、体積効率過不足率Rvは、吸気バルブ22の開閉時期を5deg.CAずつ進角させたときに吸気充填量が過不足無く増加するか否かを示す指標である。例えば、体積効率過不足率Rvが1よりも大きい場合には、吸気バルブ22の開閉時期を5deg.CAずつ進角させてもなお、「予測体積効率」Kvsが「目標体積効率」Kvvまで増加せず、吸気充填量が依然として不足し得るということになる。従って、この場合には、追加進角量Δθは、5deg.CAよりも大きく設定される。
一方、体積効率過不足率Rvが1未満の場合には、吸気バルブ22の開閉時期を5deg.CAずつ進角させてしまうと、「予測体積効率」Kvsが「目標体積効率」Kvvよりも大きくなって、充填量が必要以上に増加し得ることになる。従って、この場合には、追加進角量Δθは、5deg.CA未満に設定される。
このように吸気VVT進角量算出部56によって算出される追加進角量Δθが、吸気バルブ22の第1開閉時期に加算され、第2開閉時期が決定される。
補正制御部52による、こうした制御は、自動車の走行時に所定の周期で繰り返し実行される。その具体例として、低負荷の状態で加速する時の制御を示す。
<低負荷状態での加速時における吸気VVT25の制御>
アイドリング時など、出力要求されるトルクが小さい状態では、吸気充填量は小量に設定されている。そのため、スロットルバルブ11の開度は全閉付近に設定され、吸気通路10の内圧も過給されていないため、低くなっている。従って、そのような状態から加速されると、要求される吸気充填量が急増する。そのため、その吸気充填量の確保とともに、タービン4bの駆動(吸気の過給圧を高めるのに必要)に要する排気量を確保するために、スロットルバルブ11は全開付近に設定され、大きく開かれる。
ところが、その際、吸気通路10に存在している吸気量は少ないため、スロットルバルブ11が大きく開かれても、吸気充填量の増加、ひいては排気量の増加は、直ぐには追随できない。そのため、加速初期に、吸気充填量の不足が生じ、タービン4b及びコンプレッサ4aが十分に駆動されずに「目標過給圧」への到達が遅れるおそれがある(ターボラグ)。
それに対し、このエンジン100では、補正制御部52によって吸気バルブ22の開閉時期が進角補正されるので、実際の体積効率が増加し、吸気充填量、ひいては排気量が順次増加していく。排気量が増加すれば、タービン4bの出力が高まってコンプレッサ4aの駆動力が高まるので、過給圧は「目標過給圧」付近まで上昇する。過給圧が「目標過給圧」付近まで上昇すれば、吸気バルブ22の開閉時期は、所定の開閉時期付近で安定するようになる。
その際、スロットルバルブ11が、略全閉状態から略全開状態に大きく開かれることで、加速初期に吸気が一気に気筒21に吸入されるため、吸気の導入が追い付かず、過給機下流側部位10aが一時的に陰圧状態となって、過給機下流側部位10aに収縮力が作用する。
アイドリング時のように、エンジン回転数が低い場合であれば、気筒21に吸入される吸気量はそれほど多くない。そのため、過給機下流側部位10aに作用する収縮力も小さく、圧力も直ぐに回復するので、問題視されることはほとんどない。
ところが、マニュアルモードでエンジンブレーキを使いながら坂道を下っている時など、アイドリング時と比べてエンジン回転数が高い状況下でアクセルが踏み込まれた場合には、多量の吸気が急激に気筒21に吸入される。そのため、加速初期に、過給機下流側部位10aが強い陰圧状態となって、過給機下流側部位10aに大きな収縮力が作用する。
その結果、過給機下流側部位10aに設けられているホース15bが潰れて吸気通路10が一時的に閉塞状態となり、吸気が適切に行えなくなるおそれがある。そこで、このエンジン100では、上述したWGバルブ36の迂回規制制御に加え、そのような状況であっても吸気が適切に行えるようにするために、ECU50に速度切替部57が設けられている。
<速度切替部57>
速度切替部57は、高回転側の領域では、吸気バルブ22の開閉時期が第1開閉時期から第2開閉時期にシフトしていく速度が、低回転側の領域よりも遅くなるように、進角速度を切り換える。
詳しくは、エンジン回転数の中間領域において進角速度を切り換える回転数(切替回転数CR)が設定されており、速度切替部57は、その切替回転数CR以上の領域では、切替回転数CR未満の領域よりも、進角速度を低下させる制御を行う。なお、このエンジン100では、進角速度を切り換える切替回転数CRは、WGバルブ36の開度の制御パターンを切り換える切替回転数CRと同じ回転数に設定されている。
図10に、切替回転数CRと進角速度との関係を示す。ECU50のメモリには、予備試験等に基づいて設定された切替回転数CRが記憶されており、速度切替部57は、その切替回転数CRに基づいて進角速度を切り換える。
すなわち、速度切替部57は、エンジン回転数が切替回転数CR以上か否かを絶えずチェックしており、切替回転数CR未満の領域では、ベース制御部51によって設定される「基準値」に基づいた進角速度(基準速度)で吸気バルブ22の開閉時期が進角するように制御し、エンジン回転数が切替回転数CR以上の領域では、基準速度よりも低速な進角速度(低減速度)で吸気バルブ22の開閉時期が進角するように制御する。
図11に、速度切替部57による進角速度の切替制御の一例を示す。縦軸は吸気バルブ22の開閉時期の位相を、横軸は吸気バルブ22の開閉時期が進角する過渡時間を、それぞれ表している。二点鎖線が基準速度であり、実線が低減速度である。
エンジン回転数が切替回転数CR未満の領域では、吸気バルブ22の開閉時期は、一定の基準速度で第1開閉時期から第2開閉時期に進角するように制御され、エンジン回転数が切替回転数CR以上の領域では、吸気バルブ22の開閉時期は、基準速度よりも低速な一定の低減速度で第1開閉時期から第2開閉時期に進角するように制御される。
エンジン回転数が切替回転数CR未満の領域では、吸気バルブ22の開閉時期は、従来通り基準速度で進角するので、吸気充填量、ひいては排気量を適切に増加させることができ、加速初期の吸気不足を効果的に改善することができる。
そして、エンジン回転数が切替回転数CR以上の領域では、低速な低減速度で進角するので、吸気バルブ22の開閉時期の進角制御による吸気充填量の急激な増加が緩和され、加速初期に多量の吸気が一気に気筒21に吸入されるのを抑制することができる。その結果、過給機下流側部位10aでの強い陰圧状態の発生が抑制されるので、ホース15bが潰れて吸気通路10が一時的に閉塞状態となるのを防止でき、安定した吸気が実現できる。
第2開閉時期は、切替回転数CR以上の領域も切替回転数CR未満の領域と同じであり、切替回転数CR以上の領域は、第1開閉時期から第2開閉時期に達する時間が、切替回転数CR未満の領域から僅かに遅れるだけなので、切替回転数CR以上の領域においても、切替回転数CR未満の領域と同様に、吸気充填量、ひいては排気量を適切に増加させることができ、加速初期の吸気不足を効果的に改善することができる。
しかも、このエンジン100の速度切替部57では、オーバーラップ期間OLの上限設定値OLmaxを利用して、進角速度が制御されるように構成されている。
図12に示すように、ECU50のメモリには、エンジン回転数及び「目標充填効率」とこれらに対応したオーバーラップ期間OLの上限設定値OLmax(s1,・・・,dn)とが関連付けされたOL上限マップが記憶されており、オーバーラップ期間OLは、この上限設定値OLmaxを超えないように制御されている。加速初期において補正制御部52が進角補正する際も、オーバーラップ期間OLは、この上限設定値OLmaxを超えないように制御される。
図13に、進角補正時におけるオーバーラップ期間OLの変化を示す。排気バルブ29の開閉時期が進角したとしても、吸気バルブ22の開閉時期の方が進角量は多いので、吸気バルブ22の開閉時期が進角すれば、相対的にオーバーラップ期間OLは増加する。そして、進角補正時の過渡期において、基準速度であれば、オーバーラップ期間OLがOL1であった状態から、オーバーラップ期間OLがOL2となる状態まで吸気バルブ22の開閉時期が進角する場合に、上限設定値OLmaxがOL2よりも小さい値に設定されていたとすると、吸気バルブ22の開閉時期の進角量は、その上限設定値OLmaxによって制限され、上限設定値OLmaxに対応した位相までしか進角できない。
図12に示すように、OL上限マップにおける切替回転数CR以上の領域には、このような基準速度での吸気バルブ22の開閉時期の進角量を制限する値を含んだ上限設定値OLmax(d1,d2,・・・,dn)が、エンジン回転数及び「目標充填効率」に対応して設定されている。それにより、切替回転数CR以上の領域では、上限設定値OLmaxによって基準速度での進角が制限を受け、吸気バルブ22の開閉時期は、低減速度で進角するように制御されている。
対して、OL上限マップにおける切替回転数CR未満の領域には、基準速度での進角が制限を受けない上限設定値OLmax(s1,s2,・・・,sn)が、エンジン回転数及び「目標充填効率」に対応して設定されており、切替回転数CR未満の領域では、吸気バルブ22の開閉時期は、基準速度で進角するように制御されている。
このように、オーバーラップ期間OLの上限設定値OLmaxを利用して、吸気バルブ22の開閉時期の進角速度を制御することで、複雑な演算が回避でき、ECU50での処理負担を軽減できるようになっている。
<変形例>
なお、本発明の過給機付きエンジン100は、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
上述したエンジン100では、迂回規制制御で設定されるWGバルブ36の開度は、エンジン100の高負荷側に比べて低負荷側で小さくなるように設定されていたが、高負荷側も低負荷側と同様に閉じ位置側に設定してもよい。具体的には、目標充填効率の大きい高負荷側の開度設定値(例えばb5,b6,bn等)にも、WGバルブ36を閉じ位置側に設定する値を設定してもよい。
また、迂回規制制御で設定されるWGバルブ36の開度は、エンジンの低回転側に比べて高回転側で小さくなるように設定してあってもよい。例えば、WGバルブ制御マップにおいて、bn−5の値をb1の値より小さくするような場合である。
エンジン回転数が高くなるほど、気筒21への吸気の吸入量が増加し、過給機下流側部位10aが強い陰圧状態となってホース15bが潰れ易くなるので、高回転側でWGバルブ36の開度を小さくして背圧を相対的に高めることで、強い陰圧状態の発生を効率的に抑制することができる。その結果、燃費低下を抑制しながら、安定した吸気の実現が可能になる。