JP6394053B2 - 光走査装置、及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
光走査装置は、光偏向器が画像形成領域外に反射させたレーザー光を検出する同期信号検出手段(同期フォトダイオード)を備えている。同期信号検出手段は、レーザー光の受光光量に応じた同期信号を出力する。被走査面上におけるレーザー光の書き込み開始位置は、同期信号検出手段から出力された同期信号に基づいて決定される。同期信号の出力タイミングがずれると被走査面の主走査方向に書き込み開始位置のずれが生ずるため、これを抑制する種々の発明がなされている。
また、特許文献2には、光偏向器と同期信号検出手段との間に光束の一部を遮光する遮光板が配置された光走査装置が記載されている。遮光板は、同期信号検出手段に到達する光束の光強度分布を、主光線を中心としたほぼ線対称の形状とする。このため、光偏向器によるケラレが生じても同期位置が正確に検出される。
また、特許文献3には、光偏向器と同期信号検出手段(BDセンサー)との間に同期光束のうち光量むらのある部分のみを遮光するリブを設けた走査光学装置が記載されている。この発明では、ポリゴンミラーの各面の同期光量のむらが抑制できるので、主走査方向における書き込み開始位置のずれを低減することができる。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、同期信号検出手段の出力低下を抑制しつつ、異なる光走査装置間の同期信号検出手段の出力ばらつきを抑制することが可能な光走査装置を提供することを目的とする。
まず、図1に基づいて本実施形態に係る光走査装置の構成の概要を説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る光走査装置の概略構成図である。
光走査装置205は、半導体レーザー(光源)1、結像光学系2、ポリゴンミラー(光偏向器)3、走査光学系4、同期検知部5、及び走査制御装置(不図示)等を備えている。これらは光学ハウジング231(図22参照)の所定位置に組み付けられている。
結像光学系2は、カップリングレンズ6、開口素子7、及びシリンドリカルレンズ8を備える。走査光学系4は、fθレンズ10及び長尺トロイダルレンズ11を備える。同期検知部5は、同期スリット(光束制限手段)12、同期PD(同期フォトダイオード:同期信号検出手段)13を備える。なお、符号9は、ポリゴンミラー3を収容する不図示の防音ハウジングの窓に設けられた防音ガラスである。
カップリングレンズ6から射出される光束は、開口素子7を通り、シリンドリカルレンズ8により副走査方向のみ集光した状態(主走査方向に長い線像の状態)で、防音ガラス9を通って、ポリゴンミラー3の偏向反射面に入射される。これは、走査光学系4により偏向面の面倒れを補正できるようにするためである。なお、「主走査方向」とは、ポリゴンミラー3の偏向反射面が不図示の感光体ドラム上のビームを走査する方向(図中のY方向)を、「副走査方向」はポリゴンミラー3の回転軸に平行な方向(図中のZ方向)をそれぞれ表すものとする。
更に、主走査方向の画像領域外には被走査面上における書き込み開始位置を決めるための同期検知部5が設けられている。同期検知部5は、同期信号を取る同期PD13と、同期PD13における出力を常に安定させるために配置する同期スリット12を有する。本図において同期PD13は、主走査方向に関して画像領域を間に挟んで半導体レーザー1とは反対の側に位置する画像領域外に配置されている。
まず、光源が1つの発光部を有するSingle−LDである場合の同期信号の検出方法について図2、及び図3に基づいて説明する。図2(a)は同期PDからの同期信号と発光部におけるレーザー駆動信号とのタイミングチャートを示し、(b)は理想的な走査ライン書き込み開始位置の模式図である。図3(a)は同期PDにおける取得波形を示し、(d)は同期PD出力が変動した場合の走査ライン書き込み開始位置ずれを示す模式図である。
図2(a)は、光源が1つの発光部を有するSingle−LDである場合の同期信号とレーザー駆動信号とのタイミングチャートを示している。ポリゴンミラー3は等角速度で回転しているため、同期信号は一定時間ごとに出力され、各走査ラインに対応するレーザー駆動信号は、同期信号出力後から一定時間t1の経過後に送られる。したがって、各走査ラインは図2(b)に示すように、常に同位置から書き出されることになる。
ここで、ポリゴンミラー3の各偏向面の寸法ばらつき等に起因して、同期PD13における出力にばらつきが生じると、同期PDの出力の高低によって時間t0が必ずしも一致せず、図3(a)に示すような時間Δtのずれが生じてしまう。したがって、各走査ラインに対応するレーザー駆動信号にも時間Δtのずれが生じることになり、結果として図3(b)に示すように主走査方向に印字位置のずれ(Δt1〜Δt6)が生じる。
図4は、光源が2つの発光部を有する2ch-LDAの配置例を示す説明図である。図示する半導体レーザー1(光源)は、発光部1a(ch1)と、発光部1b(ch2)の2つの発光部を有している。一般的に複数の発光部を有する光源は、所望の書込密度(例えば600dpi)を満足させるため、光束の進行方向(ここではX軸)を回転軸として、この軸周りに主走査方向(Y軸)から所定の角度θだけ発光部を回転させた状態で取り付けられている。
図4、図5では、光源が複数の発光部を有する場合であって、各発光部の発光に基づく同期信号を同期PDにてそれぞれ取得して、各同期信号の検出タイミングに基づいて各発光部にレーザー駆動信号を発生させる例を示している。
ここで、仮に同期信号を取得する対象の発光部として先行ビームであるch2(発光部1b)を選択した場合の同期信号の検出方法について、図6に基づいて説明する。図6は、光源が2つの発光部を有する2ch-LDAの場合であって、一方の発光部の発光に基づいて取得した同期信号とレーザー駆動信号のタイミングチャートである。
本発明の特徴的な構成について説明する。
本発明においては、ポリゴンミラーに入射する光ビームはポリゴンミラーの偏向反射面より小さく、且つ、ポリゴンミラーで偏向する光ビームは光束の一部が偏向反射面でケラレているが、被走査面を走査する範囲(画像を形成する範囲)は従来のアンダーフィルド光学系と同様である。なお、「ケラレる」とは入射光束の一部が、感光体上または同期検出部に到達しない現象である。
具体的な例を図8に示す。図8は、設計中央値における光走査装置の主走査断面におけるポリゴンミラー3への入射光束幅と、ポリゴンミラー3によって偏向反射され不図示の同期PD13に向かう反射光束幅との関係を説明する図である。ポリゴンミラー3は、反射面の内接円直径がD、回転中心から反射面までの距離(以後、A寸と呼ぶ)がD/2の位置に5面の反射面3a1〜3a5が形成された回転多面鏡である。ポリゴンミラー3に対し、入射光束は基準軸(図中のX方向)に対し入射角φ0で入射し、不図示の同期PD13に向かう際には基準軸(図中のX方向)に対し反射角−ψ0(以後、同期画角と呼ぶ)で反射している。
不図示の同期PD13に向かう反射光束幅は、ポリゴンミラー3の回転軸の偏心、ポリゴンミラー3の各面毎のA寸ばらつきに起因する各偏向面の長手方向(又は周方向)の幅の変化、及び光走査装置を構成する任意の光学素子における組付誤差や形状誤差などによって変化し得る。
図9は、ポリゴンミラー3の各面のA寸ばらつきに起因する各偏向面3aの長手方向の幅の変化によって、光束のケラレ量が変わる様子を示している。図9(a)は設計中央値を示す。図9では、(b)に示すようにA寸が増加したときにケラレが増加して同期PDに向かう光量が低下し、(c)に示すように、A寸が現象したときにケラレが減少して同期PDに向かう光量が増大する。
同期スリット12を設計するにあたり、本発明の発明者は、光走査装置を構成する任意の光学素子における組付誤差や形状誤差が生じた場合の同期PD13に向かう光束の主走査方向の位置ずれに着目した。
また、図8に示すようにポリゴンミラーのA寸は、光走査装置が想定どおりにできている設計中央値ではD/2である。A寸が大きくなった場合はD/2+ΔD、A寸が小さくなった場合はD/2−ΔDであるとする。ポリゴンミラーのA寸は、公差範囲を±3σとする正規分布を持ち、公差中央値が平均と一致しており、約99.7%の確率でD/2±ΔDの公差範囲内に収まると仮定する。
まず、誤差伝播の法則について少し触れる。光学性能(ここでは、同期PDに向かう光束の設計中央値に対する主走査方向の位置ずれ量)を決める2つのパラメータが、連続的な確率変数P、Qをとるとする。そして、各々の確率変数は、ばらつきσp、σqの確率密度に支配されているとする。この時、光学性能の確率変数Zは、確率変数P、Qの関数として、z=f(p,q)と表せる。確率変数P、Qに相関がなければ、誤差伝播の法則より
として、光学性能のばらつきσzが求まる。ここで、式(1)の右辺第1項の平方根は、確率密度Pをとるパラメータによって得られる光学性能のばらつきσxと見ることができる。同様に、式(1)の右辺第2項の平方根は、確率密度Qをとるパラメータによって得られる光学性能のばらつきσyと見ることができる。従って、式(1)は、
と書き直せる。これは、光学性能の確率変数Zが、各々のパラメータの分布に従う光学性能の確率変数X、Yの和、すなわちZ=X+Yとして計算されることを意味する。
として計算してよい。すなわち、光学性能のばらつきは、各々のパラメータのばらつきσj(j=1,2,・・・,n)から、それに対応する光学性能のばらつきσi(i=1,2,・・・,n)を関数fによって求め、σiの二乗和平方根として計算される。
まず、光走査装置を構成する全ての光学素子について、組付誤差や形状誤差など想定され得る全ての公差(ばらつき)を列挙し、各公差を、公差No.1、公差No.2、公差No.3、・・・、公差No.(n−1)、公差No.nとする(想定され得る全ての公差の数がn個であると仮定した)。尚、光走査装置を構成する全ての光学素子は、各公差について、公差範囲を±3σとする正規分布を持ち、公差中央値が平均と一致していると仮定すると、公差No.1〜公差No.nにおける任意の1の公差について公差変動が生じると、約99.7%の確率で公差範囲内に収まる。
そして、各公差におけるばらつきから、光線Aと光線Bの主走査方向の位置ばらつきを求め、光線Aと光線Bで主走査方向の位置ばらつきの二乗和平方根をとることで、同期PDに向かう光束の主走査方向の位置ばらつきの最大値を主走査方向の正側と負側で求めることができる。同期PDに向かう光束は、約99.7%の確率で主走査方向の位置が公差範囲内に収まる。光線A側と光線B側での主走査方向の位置ばらつきの最大値が、設計中央値における光束の光線A(光線A0)と光線B(光線B0)をそれぞれ基点とした時の同期スリット12による遮光量(A0−As間、B0−Bs間:図14参照)に相当する。
図14は、同期信号をch1でのみ取得することを前提にした同期スリット12を示している。図中の遮光量Asと遮光量Bsは、各公差におけるばらつきから、光線Aと光線Bの主走査方向の位置ばらつきを求め、光線Aと光線Bで全公差に亘って計算した主走査方向の位置ばらつきの二乗和平方根の値である。このような同期スリット12を配置すると、同期スリット12を通過後の光束(A3−B3)は、約99.7%の確率で主走査方向の光束幅が一定となって同期PDに到達する。つまり、同一の光走査装置内だけでなく異なる光走査装置間でも、常に同期PD13の出力を安定させることができる。図示の例において同期スリット12の開口中心Csは、主光線Cに対して主走査方向の正側(+側)に約40μm偏心して配置されている。ここで、主光線とは、光源(半導体レーザー1)と光偏向器(ポリゴンミラー3)との間に配置された開口素子7の主走査方向における中心を通る光線のことである(図1参照)。
従来の同期スリットは、同期スリット12通過後の光強度分布が主光線を中心として対称となるように決定していた。図示の例では、光線A3と主光線Cの主走査方向における位置の差分の絶対値が、光線B3と主光線Cの主走査方向における位置の差分の絶対値:0.695と一致するように、図中の遮光量Asを0.646としていたため、光束を不必要に遮光していた。
本発明の同期スリット12は、開口中心Csが主光線Cに対して偏心しているため、従来の同期スリットのように不必要に光束を遮光することがない。また、同一の光走査装置内だけでなく異なる光走査装置間でも、常に同期PD13の出力を安定させることができる。
図17は、本発明の第二の実施形態に係る光走査装置の概略構成図である。本実施形態においては、ポリゴンミラー3と同期PD13との間、より詳しくはfθレンズ10と同期PD13との間に、光束を主走査方向に関して収束させる機能を有する収束光学系(以下、同期レンズ14)を配置した点に特徴がある。
同期レンズ14を配置すると、主走査方向に関して光束が同期PDからはみ出すことを防ぎ、同期PDの出力を向上させることができるため、SN比の低下に起因する同期PDの検出精度の劣化を防ぐことができる。また、同期PDの主走査方向幅を小さくすることが可能となり、同期PDの応答性が向上する。
本発明の第三の実施形態に係る光走査装置について説明する。本実施形態においては、図17に示した同期レンズ14に面倒れ補正機能を持たせた点に特徴がある。図18は、面倒れ補正について説明するための模式図である。図示するように同期レンズ14は、ポリゴンミラー3の反射面3aと同期PD13の受光面とを光学的共役の関係にする光学系である。このため、光偏向器(ポリゴンミラー3)にある程度の面倒れが発生しても、同期PD13の像点に光束を導くことが可能となり、面倒れによる同期PD13の出力低下を抑制することができる。したがって、SN比の低下に起因する同期信号検出精度の劣化を防ぐことができる。
本発明の第四の実施形態に係る光走査装置について説明する。本実施形態においては、図17に示した同期スリット12が、ポリゴンミラー3と同期レンズ14との間に配置されている点に特徴がある。図19(a)、(b)は、同期レンズを配置した場合における同期スリット通過前後の光束幅の様子を示す模式図である。同期スリット12を同期レンズ14に対して光源側(ポリゴンミラー3側)に配置した場合の同期スリット12通過前後の光束の様子を図19(a)に示し、同期スリット12を同期レンズ14に対して同期PD13側に配置した場合の同期スリット12通過前後の光束の様子を図19(b)に示す。
図19(a)に示すように同期スリット12を、同期レンズ14よりもポリゴンミラー3側に配置することで、光束を所望の量だけ確実に遮光することが可能となるため、不必要に光束を遮ることによる同期PD13の出力低下を未然に防ぐことができる。また、同期スリット12自身の取り付けずれや形状誤差に起因する同期PDの出力ばらつきを小さくすることができる。したがって、SN比の低下に起因する同期信号検出精度の劣化を防ぐことができる。
逆に、図19(b)に示すように同期スリット12を同期レンズ14よりも同期PD13側に配置すると、同期レンズ14が収束させた光束を同期スリット12で遮光しなければならない。このため、同期スリット12には高い加工精度と配置精度が求められるため、作業性が低下してしまう。
光走査装置205を構成する各光学素子は、光学ハウジング231の所定位置に組み付けられている(図22参照)。本発明の第五の実施形態に係る光走査装置においては、同期スリット12を光学ハウジングに一体化した点に特徴がある。同期スリット12を光学ハウジングと一体に形成することで、同期スリット12の組付精度の向上が期待できるため、同期スリット12における組付誤差(ばらつき)の見積もり量を小さくすることが可能となる。したがって、同期スリット12で光束を遮光する範囲を狭くすることができるため、同期PD13の出力低下を抑制でき、SN比の低下に起因する同期信号検出精度の劣化を防ぐことができる。
本発明の第六の実施形態に係る光走査装置においては、同期レンズ14の焦点距離を、fθレンズ10の焦点距離に比べて短くした点に特徴がある。同期レンズ14の焦点距離を、fθレンズ10の焦点距離に比べて短くすることで、同期PD13上での走査速度が遅くなるため、同期PD13が受光する光量を大きくすることが可能となり、同期PD13の出力を向上させることができる。したがって、SN比が向上し同期信号検出精度を改善することができる。
本発明の第七の実施形態に係る光走査装置においては、同期PD13を主走査方向に関して、ポリゴンミラー3によって偏向された光束の画像形成領域よりも光源側(半導体レーザー1側)に配置した点に特徴がある。図20は、本発明の第七の実施形態に係る光走査装置の概略構成図である。図21は、図20に示す光走査装置において、ポリゴンミラーへの入射光束と同期PDに向かう反射光束を示す模式図である。
図20に示すように、同期PD13を主走査方向に関して光源側の画像領域外に配置することで、図21に示すように、光偏向器(ポリゴンミラー3)の反射面3a(3a1〜3a5)に対して、光束が鋭角に入射することが可能となる。このため、光走査装置を構成する任意の1の光学素子に組付誤差や形状誤差が生じても、主走査方向における光束の位置ずれ量を低減することができ、同期スリット12の開口径を拡大することが可能となる。したがって、同期PD13の出力低下を抑制することができるため、SN比の低下に起因する同期信号検出精度の劣化を防ぐことができる。
次に、本発明に係る光走査装置を用いた画像形成装置の一実施の形態を説明する。図22は、本発明の光走査装置を用いた画像形成装置の構成例を示す概略図である。本実施の形態は、本発明に係る光走査装置をタンデム型フルカラーレーザプリンタに適用した例である。以下に説明する画像形成装置は、本発明の光偏光器を適用可能な構成の一例であり、これに限定されるものではない。
これらの感光体203Y、203M、203C及び203Kは、全て同一径に形成されたもので、その周囲には、電子写真プロセスに従いプロセス部材が順に配設されている。
感光体203Yを例に採れば、帯電チャージャ204Y、本発明に係る光走査装置205Y、現像装置206Y、転写チャージャ207Y、クリーニング装置208Y等が順に配設されている。これは、他の感光体203M、203C及び203Kに関しても同様である。
上記構成において、例えば、フルカラーモード(複数色モード)時であれば、各感光体203Y、203M、203C及び203Kに対して、Y、M、C、K用の各色の画像信号に基づき、各々の光走査装置205Y、205M、205C及び205Kによる光ビームの光走査によって静電潜像を形成する。これらの静電潜像は、各々の対応する色トナーで現像されてトナー像となり、搬送ベルト202上に静電的に吸着されて搬送される転写紙上に順次転写されることで重ね合わされる。各色のトナー像が重ね合わされた転写紙は、定着装置214によってフルカラー画像として転写紙に定着され、画像が定着した転写紙は排紙ローラ216によって排紙トレイ215に排出される。
前述の各実施形態に係る光走査装置を画像形成装置に備えることで、縦線揺らぎを抑制した高品位な画像再現性が確保できる画像形成装置を実現することができる。
<第一の実施態様>
本態様は、少なくとも1つの発光部(1a、1b・・・)を有する光源(半導体レーザー1)と、光源からの光束を偏向走査する光偏向器(ポリゴンミラー3)と、光偏向器によって偏向された光束を被走査面(感光体203)に導光する走査光学系4と、光偏向器により偏向された光束を検出して、被走査面上における光束の書き込み開始位置を決定する同期信号を出力する同期信号検出手段(同期PD)と、を備え、光偏向器によって同期信号検出手段に導かれる光束の一部が光偏向器によってケラレる光走査装置205であって、光源と光偏向器との間に配置され、光源から出射した光束の幅を規定する開口素子7と、光偏向器と同期信号検出手段との間の光路中に配置されると共に光偏向器によって偏向された光源の任意の発光部からの光束の少なくとも主走査方向の一部を遮光する光束制限手段(同期スリット12)と、を備え、光束制限手段は、光束制限手段を通過した光束の主走査方向における光強度分布が開口素子を通過した光束の主光線Cに対して非対称となるように偏心配置されていることを特徴とする。
そのため、複数の発光部から出射した光束は、光走査装置を構成する任意の光学素子上で主走査方向に関して異なる位置を走査する。特許文献1のように従来は、複数の発光部で同期信号を取得することを想定していたため、異なる発光部から出射して同期信号検出手段に到達する各々の光束の主走査断面内における幅を、光束制限手段によって常に揃えることで、同期信号検出手段における出力を安定させた。同期信号検出手段における出力が安定すると、同期信号の検出タイミングも安定するため、同期信号の検出に伴って発生させる各走査ラインに対応するレーザー駆動信号の発生タイミングが一定となるため、主走査方向の印字位置ずれを抑制することができ、高品質な画像を提供することが可能となる。
異なる発光部から出射して同期信号検出手段に到達する各々の光束の主走査断面内における幅を、光束制限手段によって常に揃えるためには、光走査装置を構成する任意の光学素子の組付誤差や加工誤差などを考慮すると、主走査方向に関して光束制限手段が形成する開口径は十分小さくする必要がある。つまり、同期信号検出手段の出力は常に一定にはなるが、同期信号検出手段の出力の絶対値は大きく低下し、SN比の低下に起因して同期信号検出精度が劣化する。
仮に光源が2つの発光部1a、1bから構成される2ch−LDAであるとし、2つの発光部をch1、ch2と呼ぶこととする(図4)。先述のように、光源は一般的に光束の進行方向を回転軸として、該軸周りに回転させた状態で取り付けられているため、ch1とch2から出射した光束は、光偏向器によって同期信号検出手段に向けて偏向され、異なるタイミングで同期信号検出手段に到達する。ch2から出射した光束の方が、ch1から出射した光束よりも仮に早く同期信号検出手段に到達するとした場合、ch1はch2が到達してから時間Δtd経過後に同期信号検出手段に到達する(図5)。この時、ch2から出射する光束を先行ビーム、ch1から出射する光束を後行ビームと呼ぶこととする。また、該時間Δtdは、設計段階で発明者が知り得る情報である。
光偏向器であるポリゴンミラーは等角速度で回転しているため、同期信号はch2に関して一定時間ごとに出力される。同期信号は、同期信号検出手段の出力がある一定のスレッシュレベル(閾値)以上となる時間t0後に出力される(図3(a))。この時点から一定時間t1の経過後にch2が書き出す走査ラインに対応するレーザー駆動信号が送られる。
先述したように、ch1はch2が到達してから時間Δtd経過後に同期信号検出手段に到達する事は予めわかっているため、ch2が書き出す走査ラインに対応するレーザー駆動信号が送られてから時間Δtd経過後に、ch1が書き出す走査ラインに対応するレーザー駆動信号を送るようにすると、ch1で同期信号を取得しなくてもch2における同期信号の情報だけで、各走査ラインの書き込み開始タイミングを適切に設定することができる(図6、図7(a))。
そこで本発明では、光偏向器と同期信号検出手段との間に光束制限手段を設け、任意の1の発光部(1a又は1b)から出射した光束の光束制限手段通過後の光強度分布が主光線Cを中心として非対称となるように、光束制限手段を主光線に関して偏心配置させることで、同期信号検出手段における出力低下を抑制させつつ、同一の光走査装置内の同期信号検出手段の出力ばらつきに加えて、異なる光走査装置間の同期信号検出手段の出力ばらつきも抑制させた(図14〜図16)。尚、本発明では、半光源と光偏向器との間に配置された開口素子の主走査方向における中心を通る光線を主光線と定義する。
このように、異なる光走査装置間の同期PDの出力ばらつきも抑制できると、縦線揺らぎ(走査ラインの書き込み開始位置ずれ)に起因する画像劣化を抑制できることに加え、光走査装置ごとにスレッシュレベル(閾値)を設定する手間を省くことができる。
本実施態様に係る光走査装置205は、光束制限手段(同期スリット12)は、光源(半導体レーザー1)から選択された1の発光部(1a又は1b)からの光束についてのみ、主走査断面内における光束幅を常に揃える機能を有することを特徴とする。
なお、「光束幅を常に揃える」とは、交差範囲内に収まることである。
光束制限手段は、各光源における任意の1の発光部から出射して同期信号検出手段(同期PD13)に向かう光束についてのみ主走査断面内における幅を常に揃える機能を有することで、光束制限手段が形成する開口部の開口径を不必要に小さくすることを防ぎ、同期信号検出手段における出力を常に一定にしつつ、同期信号検出手段における出力低下を抑制した。
本実施態様に係る光走査装置205は、光偏向器(ポリゴンミラー3)と同期信号検出手段(同期PD13)との間に、光偏向器によって偏向された光束を主走査方向に収束させる収束光学系(同期レンズ14)を配置したことを特徴とする。
光偏向器と同期信号検出手段との間に光束を主走査方向に関して収束させる光学系を配置することで、主走査方向に関して光束が同期信号検出手段からはみ出すことを防ぎ、同期信号検出手段の出力を向上させることができる。SN比の低下に起因する同期PDの検出精度の劣化を防ぐことができる。
また、同期信号検出手段の主走査方向幅を小さくすることが可能となり、同期信号検出手段の応答性が向上する。
本実施態様に係る光走査装置205において、収束光学系(同期レンズ14)は、光偏向器(ポリゴンミラー3)の偏向面3aと同期信号検出手段(同期PD13)とを光学的共役な関係にすることを特徴とする。即ち、収束光学系は光偏向器の面倒れ補正機能を有する。
収束光学系に面倒れ補正機能を持たせることで、光偏向器にある程度の面倒れが発生しても、同期信号検出手段に光束を導くことが可能となり、面倒れによる同期信号検出手段の出力低下を抑制することができる。したがって、SN比の低下に起因する同期信号検出精度の劣化を防ぐことができる。
本実施態様に係る光走査装置205において光束制限手段(同期スリット12)は、収束光学系(同期レンズ14)よりも光偏向器側(ポリゴンミラー3側)に配置されていることを特徴とする。
光束制限手段を、収束光学系と光偏向器との間に配置することで、光束を所望の量だけ確実に遮光することが可能となるため、不必要に光束を遮ることによる同期信号検出手段(同期PD13)の出力低下を未然に防ぐことができる。また、光束制限手段自身の取り付けずれや形状誤差に起因する同期信号検出手段の出力ばらつきを小さくすることができる。したがって、SN比の低下に起因する同期信号検出精度の劣化を防ぐことができる。
本実施態様に係る光走査装置205において収束光学系(同期レンズ14)の主走査方向における焦点距離は、走査光学系4の主走査方向における焦点距離に比べて短いことを特徴とする。
収束光学系の焦点距離を、走査光学系4(を構成するfθレンズ10)の焦点距離に比べて短くすることで、同期信号検出手段(同期PD13)上での走査速度が遅くなるため、同期信号検出手段が受光する光量を大きくすることが可能となり、同期信号検出手段の出力を向上させることができる。したがって、SN比が向上し、同期信号検出精度を改善することができる。
本実施態様に係る光走査装置205は、光源(半導体レーザー1)、結像光学系2、光偏向器(ポリゴンミラー3)、走査光学系4、及び同期信号検出手段(同期PD13)を収容する光学ハウジング231を備え、光束制限手段(同期スリット12)は、光学ハウジングに一体化されていることを特徴とする。
光束制限手段を光学ハウジングと一体に形成することで、光束制限手段の組付精度の向上が期待できるため、光束制限手段における組付ずれの見積もり量を小さくすることが可能となる。したがって、光束制限手段で光束を遮光する範囲を狭くすることができるため、同期PDの出力低下を抑制でき、SN比の低下に起因する同期信号検出精度の劣化を防ぐことができる。
本実施態様に係る光走査装置205において同期信号検出手段(同期PD13)は、光偏向器(ポリゴンミラー3)によって偏向された光束の画像形成領域よりも光源(半導体レーザー1)側に配置されていることを特徴とする。
同期信号検出手段を主走査方向に関して光源側に配置することで、光偏向器の反射偏向面に対して、光束が鋭角に入射することが可能となる。このため、光走査装置を構成する任意の1の光学素子の組付誤差や形状誤差が生じても、主走査方向における光束のシフト量を低減することができ、光束制限手段(同期スリット12)が形成する開口部の開口径を大きくとることが可能となる。したがって、同期信号検出手段の出力低下を抑制することができる。したがって、SN比の低下に起因する同期信号検出精度の劣化を防ぐことができる。
本実施態様は、上記各実施態様に係る光走査装置205を備えたことを特徴とする画像形成装置200である。
各実施態様に係る光走査装置を画像形成装置に搭載することで、縦線揺らぎ(走査ラインの書き込み開始位置ずれ)に起因する画像劣化を抑制し、高品質な画像の形成を実現できる。
Claims (8)
- 少なくとも1つの発光部を有する光源と、
前記光源からの光束を偏向走査する光偏向器と、
前記光偏向器によって偏向された光束を被走査面に導光する走査光学系と、
前記光偏向器により偏向された光束を検出して、前記被走査面上における前記光束の書き込み開始位置を決定する同期信号を出力する同期信号検出手段と、を備え、
前記光偏向器によって偏向されて前記同期信号検出手段に導かれる光束の一部が、前記光偏向器によってケラレる光走査装置であって、
前記光源と前記光偏向器との間に配置され、前記光源から出射した光束の幅を規定する開口素子と、
前記光偏向器と前記同期信号検出手段との間の光路中に配置されると共に前記光偏向器によって偏向された前記光源の任意の発光部からの光束の少なくとも主走査方向の一部を遮光する光束制限手段と、を備え、
前記光偏向器によって偏向されて前記同期信号検出手段に導かれる光線であって、前記光偏向器の回転軸に対して直交する断面における光束端部の光線のうち、前記光偏向器によりケラレが発生している側の光線を光線A、もう一方の側の光線を光線Bと定義した場合に、
前記光束制限手段は、前記光走査装置を構成する全ての光学素子の各公差におけるばらつきから、前記光線Aと前記光線Bについて前記主走査方向の位置ばらつきを夫々求め、前記光線Aと前記光線Bの前記主走査方向の位置ばらつきの二乗和平方根を夫々とることにより求められる前記光線A側と前記光線B側の前記主走査方向の位置ばらつきの夫々の最大値が、設計中央値における光束の光線Aと光線Bをそれぞれ基点とした時の前記光束制限手段による遮光量に相当するように構成されており、
前記光束制限手段は、該光束制限手段を通過した光束の主走査方向における光強度分布が前記開口素子を通過した光束の主光線に対して非対称となるように偏心配置されていることを特徴とする光走査装置。 - 前記光偏向器と前記同期信号検出手段との間に、前記光偏向器によって偏向された光束を主走査方向に収束させる収束光学系を配置したことを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
- 前記収束光学系は、前記光偏向器の偏向面と前記同期信号検出手段とを光学的共役な関係にすることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
- 前記光束制限手段は、前記収束光学系よりも前記光偏向器側に配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の光走査装置。
- 前記収束光学系の主走査方向における焦点距離は、前記走査光学系の主走査方向における焦点距離に比べて短いことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の光走査装置。
- 前記光源、結像光学系、前記光偏向器、前記走査光学系、及び前記同期信号検出手段を収容する光学ハウジングを備え、
前記光束制限手段は、前記光学ハウジングに一体化されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の光走査装置。 - 前記同期信号検出手段は、前記光偏向器によって偏向された光束の画像形成領域よりも光源側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の光走査装置。
- 請求項1乃至7の何れか一項に記載の光走査装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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