JP6392805B2 - 複数モータ駆動用サーボ制御装置 - Google Patents
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Description
かかるタンデム制御では、移動指令を複数のサーボモータに対して与え、1つの被駆動体を複数のサーボモータで駆動する。これにより、大型の被駆動体を駆動させることや、被駆動体を安定した状態で移動させることが可能となる。
この場合に、マスター側及びスレーブ側のそれぞれのサーボモータにおいて加減速を繰り返していると、各サーボモータにおける速度フィードバックの取り込みのタイミングの差等が原因で、各サーボモータの速度制御部の積分要素の積分値が互いに乖離することがある。このように各サーボモータの積分値が互いに乖離してしまうと、これに起因してサーボモータの制御性が悪化したり、過大なトルク指令がなされてサーボモータがオーバヒートしたりするおそれがある。
しかしながら、このようにマスター側及びスレーブ側の速度積分器それぞれの積分値を常に一致させると、スレーブ側サーボモータを主に駆動するとき、すなわち、マスター側サーボモータの加速度が負の値であるときのサーボモータに対する位置指令値とサーボモータの位置との間の位置偏差が大きくなり、サーボモータの制御に対して悪影響が及ぼされ、制御が不安定となる。
これにより、スレーブ側サーボモータを主に駆動するときには、マスター側サーボモータの速度積分器の積分値を、スレーブ側サーボモータの速度積分器の積分値と一致させることができ、特許文献1に記載の構成から生じる上記問題を解消することができる。
しかしながら、加減速の速い動きを行っているにも関わらず、積分値を常に一致させてしまうと、マスター側及びスレーブ側の両軸と被駆動体との機械的結合剛性が低い場合には、被駆動体が弾性変形することにより、被駆動体に「たわみ」や「ねじれ」といった問題が生じ、被駆動体を適切に制御することができなくなるため問題となる。
3つの実施形態の概略であるが、第1の実施形態は、1つのマスター軸と、1つのスレーブ軸とにより1つの被駆動体を駆動させる実施形態である。
また、第2の実施形態は、スレーブ軸の数を増加させ、1つのマスター軸と、複数のスレーブ軸とにより1つの被駆動体を駆動させる実施形態である。
更に、第3の実施形態は、マスター側及びスレーブ側の両軸と被駆動体との機械的結合剛性を推定し、推定結果に基づいてローパスフィルタを調整する機能を追加した実施形態である。
まず、第1の実施形態について説明を行う。図1に示すように本実施形態は、上位制御装置1、位置制御部2、速度制御部100、第1電流制御部3−1、第1電流増幅器4−1、第1速度検出器5−1、第1サーボモータ6−1、第1伝達機構7−1、第2電流制御部3−2、第2電流増幅器4−2、第2速度検出器5−2、第2サーボモータ6−2、第2伝達機構7−2、被駆動体8及び位置検出器9を備える。
本実施形態では、第1サーボモータ6−1及び第2サーボモータ6−2に対してタンデム制御を行い、これら2つのサーボモータに対する位置指令、あるいは移動指令MCMDとしては同一の値の指令がなされる。
位置制御部2よりも後段の各部は、この位置指令、あるいは移動指令MCMDを読みとり、所定周期毎に、位置制御、速度制御、及び電流制御を行い、第1電流増幅器4−1や第2電流増幅器4−2を介して、第1サーボモータ6−1及び第2サーボモータ6−2を駆動する。なお、上位制御装置1は、例えば、数値制御装置(CNC:Computer Numerical Control)により実現することができる。また、以下の説明では、上位制御装置1から、位置指令が出力されるものとする。
このように、本実施形態では、マスター軸側及びスレーブ軸側の双方について共通の速度指令を出力することとしているので、位置検出器9を1つのみ配置し、この1つの位置検出器9が検出した1つの位置フィードバック量により減算を行なう。ただし、これは、位置検出器9の数を1つだけとすることに限定する趣旨ではなく、任意の用途のために、位置検出器9を複数配置するようにしてもよい。
また、速度制御部100は、このような速度ループ処理に加えて、本実施形態特有の処理を行なうことにより、スレーブ軸側の積算値を調整する。この点は、本実施形態の要旨の1つであるので、図1を参照した本説明を終了した後に、図2の機能ブロック図と、図3及び図4のフローチャートとを参照して詳細に説明する。
具体的には、第1電流指令から、第1サーボモータ6−1のモータ電流である第1電流フィードバック量が減算される。そして、減算器は、減算後の値を第1電流御部3−1に対して出力する。
また、同様にして第2電流指令から、第2サーボモータ6−2のモータ電流である第2電流フィードバック量が減算される。そして、減算器は、減算後の値を第2電流制御部3−2に対して出力する。
ここで、これら減算後の値は、それぞれが電流偏差量となる。そして、第1電流制御部3−1は、受け取った電流偏差量を処理して第1電圧指令を生成し、生成した第1電圧指令を第1電流増幅器4−1に対して出力する。
また、同様にして、そして、第2電流制御部3−2は、受け取った電流偏差量を処理して第2電圧指令を生成し、生成した第2電圧指令を第2電流増幅器4−2に対して出力する。
また、第1サーボモータ6−1及び第2サーボモータ6−2のそれぞれは、例えば、ロータとステータのうちのいずれか一方に永久磁石が設けられた回転型サーボモータ、ステータとスライダのうちのいずれか一方に永久磁石が設けられたリニアサーボモータ、ステータとバイブレータのうちのいずれか一方に永久磁石が設けられた振動型サーボモータ、永久磁石を使用しない誘導モータ等によって実現することができる。
また、被駆動体8は、例えば、工作機械のテーブル、産業用ロボットのアーム等によって実現することができる。
すなわち、位置検出器9は、被駆動体の移動を直接検出するように被駆動体に取り付けられる場合もあり、モータの出力軸等に取り付けられ、モータの回転位置を検出することによって被駆動体の位置を検出する場合もある。更に、この位置検出器9を、例えばリニアスケールで構成するようにしてもよく、ロータリエンコーダで構成するようにしてもよい。
ここで、図2に示すように、速度制御部100は、マスター軸側の速度制御部分として、減算器11、積分器12、比例ゲインの増幅器13、積分ゲインの増幅器14及び加算器15を備える。また、速度制御部100は、スレーブ軸側の速度制御部分として、減算器21、積分器22、比例ゲインの増幅器23、積分ゲインの増幅器24及び加算器25を備える。更に、速度制御部100は、スレーブ軸側の積分値を調整するための構成として、減算器31、ローパスフィルタ32及び加算器33を備える。速度制御部100は、PI制御を行なうことにより、電流指令を生成する。
なお、図示の都合上、ステップS12を行った後に、ステップS13及びステップS14が行なわれるように記載されているが、実際には、ステップS12と、ステップS13及びステップS14は、同じタイミングで並行して行なわれる。
減算器31は、積分器12から入力されたマスター軸の積分値から、積分器22から入力されたスレーブ軸の積分値を減算することにより、積分値の差分を算出して、算出した積分値の差分をローパスフィルタ32に対して出力する(ステップS24)。
なお、図示の都合上、ステップS22を行った後に、ステップS23からステップS26までが行なわれるように記載されているが、実際には、ステップS22と、ステップS23からステップS26までは、同じタイミングで並行して行なわれる。
なお、図3及び図4に示した各ステップは、所定周期毎に繰り返し実行される。
もっとも、本実施形態では、特許文献1や特許文献2に開示の技術のように、常にスレーブ軸側の積分値をマスター軸側の積分値に一致させる訳ではない。この点について以下に説明をする。
ローパスフィルタ32の説明で述べたように、ローパスフィルタ32に入力された積分値の差分が、遮断周波数より低い周波数であれば、この積分値の差分はローパスフィルタ32を通過する。よって、この積算値の差分は加算器33において、積分器22から入力されるスレーブ軸側の積分値に加算される。すなわち、スレーブ軸側の積分値が調整され、マスター軸側の積分値と一致する積分値となる。
一方で、ローパスフィルタ32に入力された積分値の差分が、遮断周波数より高い周波数であれば、この積分値の差分はローパスフィルタ32により減衰する。よって、この積算値の差分は加算器33において、積分器22から入力されるスレーブ軸側の積分値には加算されない。すなわち、スレーブ軸側の積分値は調整されず、マスター軸側の積分値と異なる積分値となる。
一方で、第1サーボモータ6−1や第2サーボモータ6−2をゆっくりと駆動させている場合や、第1サーボモータ6−1や第2サーボモータ6−2を停止させた場合のような、マスター軸側の積分値とスレーブ軸側の積分値の差分が小さくなるような場合に、スレーブ軸側の積分値を調整してマスター軸側の積分値と一致する積分値とする。これにより、スレーブ軸側の積分値を調整してマスター軸側の積分値の乖離を抑制し、積分値が乖離した場合に生じてしまうトルク指令の増大という問題を防止することができる。
また、上述したようにスレーブ軸とマスター軸間の機械的結合剛性に応じてローパスフィルタ32の遮断周波数を決定することにより、「ねじれ」が発生しない範囲において、スレーブ軸側の積分値を調整してマスター軸側の積分値と一致させることができる。
従って、本実施形態では、スレーブ軸側の積分値を調整してマスター軸側の積分値と一致することができると共に、常にスレーブ軸側の積分値を調整してマスター軸側の積分値と一致する積分値としてしまうと「ねじれ」等が発生してしまうという弊害を防止することが可能となる、という効果を奏する。
次に、上述した第1の実施形態を変形した第2の実施形態について図面を参照して説明する。ここで、第1の実施形態では、1つのマスター軸と、1つのスレーブ軸とにより1つの被駆動体を駆動させていた。一方で、第2の実施形態では、スレーブ軸の数をN軸(Nは2以上の自然数である。)に増加させ、1つのマスター軸と、N軸のスレーブ軸により1つの被駆動体を駆動させる点で相違する。
なお、その他の基本的な構成や処理において第1の実施形態と、第2の実施形態は共通する。そこで、以下の説明では、第1の実施形態との相違点についてもっぱら説明を行い、相違点についての説明は、第1の実施形態と重複するため省略する。
また、これに対応して速度制御部100が、速度制御部101に置き換わっている。また、速度制御部101には、第1速度フィードバック量に加えて、第2速度フィードバック量から第M速度フィードバック量までが入力される。
すなわち、N軸のスレーブ軸のそれぞれが、他のスレーブ軸ではなく、自スレーブ軸の速度偏差に基づいた電流指令を算出することができる。これにより、本実施形態では、各スレーブ軸それぞれで、各スレーブ軸それぞれに適した制御を行なうことが可能となる、という効果を奏する。
次に、第3の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下では、第1の実施形態を変形して第3の実施形態とした場合について説明するが、上述した第2の実施形態のスレーブ軸をN軸とした構成を変形して第3の実施形態とするようにしてもよい。
ここで、本実施形態は、スレーブ軸とマスター軸間の、第1伝達機構7−1、第2伝達機構7−2及び被駆動体8を介した機械的結合剛性を推定し、この推定結果に基づいてローパスフィルタの時定数により定まる遮断周波数を調整する機能を追加した実施形態である。
なお、その他の基本的な構成や処理において本実施形態は、第1の実施形態や第2の実施形態と共通する。そこで、以下の説明では、第1の実施形態や第2の実施形態との相違点についてもっぱら説明を行い、相違点についての説明は、第1の実施形態や第2の実施形態の説明と重複するため省略する。
具体的には、マスター軸側の減算器は、位置指令から第1位置フィードバック量を減算した値を第1位置制御部2−1に対して出力する。また、スレーブ軸側の減算器は、位置指令から第2位置フィードバック量を減算した値を第2位置制御部2−2に対して出力する。ここで、かかる減算後の値は、それぞれ、マスター軸側の位置偏差量と、スレーブ軸側の位置偏差量となる。
そして、第1位置制御部2−1及び第2位置制御部2−2は、それぞれ自身が受け取った位置偏差量を処理して、それぞれの速度指令を生成し、生成した速度指令を速度制御部100に対して出力する。具体的には、第1位置制御部2−1が出力した速度指令は第1速度指令として、速度制御部102内のマスター軸側の速度制御部分に入力される。また、第2位置制御部2−2が出力した速度指令は第2速度指令として、速度制御部102内のスレーブ軸側の速度制御部分に入力される。
剛性推定調整部40は、スレーブ軸とマスター軸間の機械的結合剛性を推定し、推定した機械的結合剛性に基づいてローパスフィルタ32の時定数により定まる遮断周波数を調整する。
電流指令切替器41は、速度制御部102が第1電流制御部3−1に出力する第1電流指令を、加算器15が出力する位置制御用第1電流指令と、剛性推定調整部40が出力する剛性推定用第1電流指令の何れにするかを切り替えるためのスイッチである。また、電流指令切替器41は、同様に、速度制御部102が第2電流制御部3−2に出力する第2電流指令を、加算器25が出力する位置制御用第2電流指令と、剛性推定調整部40が出力する剛性推定用第4電流指令の何れにするかを切り替える。
そして、剛性推定用第1電流指令と剛性推定用第2電流指令6−1により、第1サーボモータ及び第2サーボモータ6−2が駆動すると、これに応じて被駆動体8が駆動すると共に、被駆動体8にねじれが生じる。
この場合に、第1位置検出器9−1及び第2位置検出器9−2により検出された、第1位置フィードバック量及び第2位置フィードバック量が剛性推定調整部40に入力される。
プログラムは、様々なタイプのコンピュータ可読媒体(computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。コンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。コンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む
2 位置制御部
2−1 第1位置制御部
2−2 第2位置制御部
3−1 第1電流制御部
3−2 第2電流制御部
3−M 第M電流制御部
4−1 第1電流増幅器
4−2 第2電流増幅器
4−M 第M電流増幅器
5−1 第1速度検出器
5−2 第2速度検出器
5−M 第M速度検出器
6−1 第1サーボモータ
6−2 第2サーボモータ
6−M 第Mサーボモータ
7−1 第1伝達機構
7−2 第2伝達機構
7−M 第M伝達機構
8 被駆動体
9 位置検出器
11、21、31、M1 減算器
12、22、M2 積分器
13、23、M3 比例ゲインの増幅器
14、24、M4 積分ゲインの増幅器
15、25、M5、33 加算器
32 ローパスフィルタ
40 剛性推定調整部
41 電流指令切替器
100、101、102 速度制御部
Claims (5)
- 一つの被駆動体をマスター軸のモータ及びスレーブ軸のモータで駆動するための制御を行なうサーボ制御装置において、
前記マスター軸の速度偏差の積分値と前記スレーブ軸の速度偏差の積分値との差分を算出する差分算出手段と、
前記差分をローパスフィルタでフィルタ処理するフィルタ手段と、
前記フィルタ処理の処理結果を、前記スレーブ軸の速度偏差の積分値に加算する加算手段と、
を備え、
前記マスター軸では該マスター軸の速度偏差の積分値を用いて該マスター軸のモータを駆動するための電流指令を算出し、前記スレーブ軸では前記加算手段による加算後の積分値を用いて該スレーブ軸のモータを駆動するための前記電流指令を算出することを特徴とするサーボ制御装置。 - 前記マスター軸のモータに対応するマスター軸制御手段であって、マスター軸及びスレーブ軸で共通の速度指令と、自制御手段に対応するマスター軸のモータの速度フィードバックとに基づいて、自制御手段に対応するマスター軸のモータの速度偏差を算出すると共に、該算出した速度偏差に比例ゲインを乗じた値と、該算出した速度偏差を積分した積分値に積分ゲインを乗じた値との和を、自制御手段に対応するマスター軸を駆動するための電流指令として算出するマスター軸制御手段と、
前記スレーブ軸のモータに対応するスレーブ軸制御手段であって、前記マスター軸及びスレーブ軸で共通の速度指令と、自制御手段に対応するスレーブ軸のモータの速度フィードバックとに基づいて、自制御手段に対応するスレーブ軸のモータの速度偏差を算出すると共に、該算出した速度偏差に比例ゲインを乗じた値と、前記加算手段による加算後の積分値に積分ゲインを乗じた値との和を、自制御手段に対応するスレーブ軸を駆動するための電流指令として算出するスレーブ軸制御手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のサーボ制御装置。 - 前記スレーブ軸をN軸(Nは2以上の自然数)備えると共に、該N軸のスレーブ軸に対応して、前記差分算出手段、前記フィルタ手段、及び前記加算手段をそれぞれN個備え、
前記N個の前記差分算出手段のそれぞれが、前記マスター軸の前記積分値と、自差分算出手段に対応するスレーブ軸の前記積分値との差分を算出し、
前記N個のフィルタ手段のそれぞれが、自フィルタ手段に対応するスレーブ軸の前記差分をローパスフィルタでフィルタ処理し、
前記N個の加算手段のそれぞれが、自加算手段に対応するスレーブ軸の前記フィルタ処理の処理結果を、自加算手段に対応するスレーブ軸の前記積分値に加算する、
ことにより前記N軸のスレーブ軸それぞれにおいて、自スレーブ軸に対応する前記加算手段による加算後の積分値を用いて自スレーブ軸のモータを駆動するための電流指令の算出を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のサーボ制御装置。 - 前記マスター軸及び前記スレーブ軸間の機械的結合剛性を推定する推定手段を更に備え、
該推定手段の推定結果に基づいて、前記ローパスフィルタの遮断周波数を調整することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のサーボ制御装置。 - 前記ローパスフィルタの遮断周波数を、マスター軸とスレーブ軸間の機械的結合剛性が高い場合に高くなるように調整し、マスター軸とスレーブ軸間の機械的結合剛性が低い場合に低くなるように調整することを特徴とする請求項4に記載のサーボ制御装置。
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