以下、実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は、実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。図1において、感光性基板であるウェハWの転写面(露光面)の法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの転写面内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの転写面内において図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。
図1を参照すると、本実施形態の露光装置では、光源LSから露光光(照明光)が供給される。光源LSとして、たとえば193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源や、248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源LSから+Z方向に射出された光は、ビーム送光部1、レンズアレイ2aおよびリレー光学系2bを介して、光路折曲げミラーMR1に入射する。光路折曲げミラーMR1により斜め方向に反射された光は、空間光変調器3に入射する。
空間光変調器3は、後述するように、所定面内に配列されて個別に制御される複数のミラー要素と、制御系CRからの制御信号に基づいて複数のミラー要素の姿勢を個別に制御駆動する駆動部とを有する。ビーム送光部1は、光源LSからの入射光束を適切な大きさおよび形状の断面を有する光束に変換しつつ空間光変調器3へ導くとともに、空間光変調器3の複数のミラー要素の配列面(以下、「空間光変調器の配列面」という)に入射する光の位置変動および角度変動をアクティブに補正する機能を有する。
レンズアレイ2aは、例えば光軸AXと直交する面に沿って縦横に且つ稠密に配置された複数のレンズ要素からなり、光源LSからビーム送光部1を介して入射した光束を複数の光束に波面分割する。レンズアレイ2aにより波面分割された複数の光束は、リレー光学系2bを介して空間光変調器3の配列面において重畳される。すなわち、波面分割素子としてのレンズアレイ2aおよびリレー光学系2bは、空間光変調器3へ入射する光の強度分布の均一性を向上させる光強度分布均一化部材2を構成している。ここで、レンズアレイ2aの各レンズ要素の焦点位置(或いは波面分割された複数の光束の発散原点の位置)と、リレー光学系2bの前側焦点位置とはほぼ一致しており、リレー光学系2bの後側焦点位置と回折光学素子3の入射面とはほぼ一致している。
リレー光学系2bと光路折曲げミラーMR1との間の光路中にはビームスプリッターBSが配置され、ビームスプリッターBSにより照明光路から取り出された光はビームモニターBMに入射する。ビームモニターBMは、照明光路から取り出された光に基づいて、空間光変調器3へ入射する光の配列面内の位置、空間光変調器3へ入射する光の配列面に対する角度、および空間光変調器3の配列面における光強度分布をモニターする。
ビームモニターBMのモニター結果は、制御系CRへ供給される。制御系CRは、ビームモニターBMの出力に基づいて、ビーム送光部1および空間光変調器3を制御する。ビームモニターBMは、例えば、空間光変調器3の配列面における光の入射位置および光強度分布をモニターするために、空間光変調器3の配列面と光学的に共役な位置(レンズアレイ2aに対してほぼ光学的にフーリエ変換の関係にある位置)に配置された光電変換面を有する第1撮像部と、空間光変調器3へ入射する光の配列面における光の入射角度をモニターするために、空間光変調器3の配列面に対してほぼ光学的にフーリエ変換となる位置(レンズアレイ2aと光学的にほぼ共役な位置)に配置された光電変換面を有する第2撮像部とを備えていても良い。ビームモニターBMの内部構成は、例えば米国特許公開第2011/0069305号公報に開示されている。
空間光変調器3と光路折曲げミラーMR1との間の光路中において、空間光変調器3の配列面の近傍位置には、光路を伝搬する伝搬光束のうちの一部の光束の偏光状態を変化させる偏光部材4が設けられている。空間光変調器3および偏光部材4の構成および作用については後述する。
空間光変調器3から+Z方向へ射出された光は、リレー光学系5の前側レンズ群5aを介して、リレー光学系5の瞳面5cに入射する。前側レンズ群5aは、その前側焦点位置が空間光変調器3の配列面の位置とほぼ一致し且つその後側焦点位置が瞳面5cの位置とほぼ一致するように設定されている。空間光変調器3を経た光は、後述するように、複数のミラー要素の姿勢に応じた光強度分布を瞳面5cに可変的に形成する。瞳面5cに光強度分布を形成した光は、リレー光学系5の後側レンズ群5bを介して、リレー光学系6に入射する。リレー光学系6は、その前側焦点位置がリレー光学系5の後側レンズ群5bの後側焦点位置の近傍に位置し、且つその後側焦点位置がマイクロフライアイレンズ7の入射面の近傍に位置しており、リレー光学系5の後側レンズ群5bの後側焦点位置、ひいては空間光変調器3の配列面とマイクロフライアイレンズ7の入射面とを光学的にフーリエ変換の関係に設定している。
リレー光学系6を経た光は、光路折曲げミラーMR2により+Y方向に反射され、マイクロフライアイレンズ(またはフライアイレンズ)7に入射する。後側レンズ群5bおよびリレー光学系6は、瞳面5cとマイクロフライアイレンズ7の入射面とを光学的に共役に設定している。したがって、空間光変調器3を経た光は、瞳面5cと光学的に共役な位置に配置されたマイクロフライアイレンズ7の入射面に、瞳面5cに形成された光強度分布に対応した光強度分布を形成する。
マイクロフライアイレンズ7は、たとえば縦横に且つ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子であり、平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成されている。マイクロフライアイレンズでは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズ(微小屈折面)が互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、レンズ要素が縦横に配置されている点でマイクロフライアイレンズはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。
マイクロフライアイレンズ7における単位波面分割面としての矩形状の微小屈折面は、マスクM上において形成すべき照野の形状(ひいてはウェハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形状である。なお、マイクロフライアイレンズ7として、例えばシリンドリカルマイクロフライアイレンズを用いることもできる。シリンドリカルマイクロフライアイレンズの構成および作用は、例えば米国特許第6913373号明細書に開示されている。
マイクロフライアイレンズ7に入射した光束は多数の微小レンズにより二次元的に分割され、その後側焦点面またはその近傍の照明瞳には、入射面に形成される光強度分布とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源(多数の小光源からなる実質的な面光源:瞳強度分布)が形成される。マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に形成された二次光源からの光束は、コンデンサー光学系8を介して、マスクブラインド9を重畳的に照明する。
こうして、照明視野絞りとしてのマスクブラインド9には、マイクロフライアイレンズ7の矩形状の微小屈折面の形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。なお、マイクロフライアイレンズ7の後側焦点面またはその近傍に、すなわち後述する投影光学系PLの入射瞳面と光学的にほぼ共役な位置に、二次光源に対応した形状の開口部(光透過部)を有する照明開口絞りを配置してもよい。
マスクブラインド9の矩形状の開口部(光透過部)を介した光は、結像光学系10の集光作用を受け、且つ結像光学系10の光路中に配置されたミラーMR3により−Z方向へ反射された後、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。すなわち、結像光学系10は、マスクブラインド9の矩形状開口部の像をマスクM上に形成することになる。
マスクステージMS上に保持されたマスクMを透過した光束は、投影光学系PLを介して、ウェハステージWS上に保持されたウェハ(感光性基板)W上にマスクパターンの像を形成する。こうして、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内においてウェハステージWSを二次元的に駆動制御しながら、ひいてはウェハWを二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウェハWの各露光領域にはマスクMのパターンが順次露光される。
本実施形態の露光装置は、照明光学系(1〜10)を介した光に基づいて照明光学系の射出瞳面における瞳強度分布を計測する第1瞳強度分布計測部DTrと、投影光学系PLを介した光に基づいて投影光学系PLの瞳面(投影光学系PLの射出瞳面)における瞳強度分布を計測する第2瞳強度分布計測部DTwと、第1および第2瞳強度分布計測部DTr,DTwのうちの少なくとも一方の計測結果に基づいて空間光変調器3を制御し且つ露光装置の動作を統括的に制御する制御系CRとを備えている。
第1瞳強度分布計測部DTrは、例えば照明光学系の射出瞳位置と光学的に共役な位置に配置された光電変換面を有する撮像部を備え、照明光学系による被照射面上の各点に関する瞳強度分布(各点に入射する光が照明光学系の射出瞳位置に形成する瞳強度分布)をモニターする。また、第2瞳強度分布計測部DTwは、例えば投影光学系PLの瞳位置と光学的に共役な位置に配置された光電変換面を有する撮像部を備え、投影光学系PLの像面の各点に関する瞳強度分布(各点に入射する光が投影光学系PLの瞳位置に形成する瞳強度分布)をモニターする。
第1および第2瞳強度分布計測部DTr,DTwの詳細な構成および作用については、例えば米国特許公開第2008/0030707号明細書を参照することができる。また、瞳強度分布計測部として、米国特許公開第2010/0020302号公報の開示を参照することもできる。
本実施形態では、マイクロフライアイレンズ7により形成される二次光源を光源として、照明光学系の被照射面に配置されるマスクM(ひいてはウェハW)をケーラー照明する。このため、二次光源が形成される位置は投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役であり、二次光源の形成面を照明光学系の照明瞳面と呼ぶことができる。また、この二次光源の形成面の像を照明光学系の射出瞳面と呼ぶことができる。典型的には、照明瞳面に対して被照射面(マスクMが配置される面、または投影光学系PLを含めて照明光学系と考える場合にはウェハWが配置される面)が光学的なフーリエ変換面となる。瞳強度分布とは、照明光学系の照明瞳面または当該照明瞳面と光学的に共役な面における光強度分布(輝度分布)である。
マイクロフライアイレンズ7による波面分割数が比較的大きい場合、マイクロフライアイレンズ7の入射面に形成される大局的な光強度分布と、二次光源全体の大局的な光強度分布(瞳強度分布)とが高い相関を示す。このため、マイクロフライアイレンズ7の入射面および当該入射面と光学的に共役な面も照明瞳面と呼ぶことができ、これらの面における光強度分布についても瞳強度分布と称することができる。図1の構成において、リレー光学系5,6およびマイクロフライアイレンズ7は、空間光変調器3を経た光束に基づいてマイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に瞳強度分布を形成する手段を構成している。
次に、空間光変調器3の構成および作用を具体的に説明する。空間光変調器3は、図2に示すように、所定面内に配列された複数のミラー要素3aと、複数のミラー要素3aを保持する基盤3bと、基盤3bに接続されたケーブル(不図示)を介して複数のミラー要素3aの姿勢を個別に制御駆動する駆動部3cとを備えている。図2では、空間光変調器3からリレー光学系5の瞳面5cまでの光路を示している。
空間光変調器3では、制御系CRからの指令に基づいて作動する駆動部3cの作用により、複数のミラー要素3aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素3aがそれぞれ所定の向きに設定される。空間光変調器3は、図3に示すように、二次元的に配列された複数の微小なミラー要素3aを備え、入射した光に対して、その入射位置に応じた空間的な変調を可変的に付与して射出する。説明および図示を簡単にするために、図2および図3では空間光変調器3が4×4=16個のミラー要素3aを備える構成例を示しているが、実際には16個よりもはるかに多数のミラー要素3aを備えている。
図2を参照すると、空間光変調器3に入射する光線群のうち、光線L1は複数のミラー要素3aのうちのミラー要素SEaに、光線L2はミラー要素SEaとは異なるミラー要素SEbにそれぞれ入射する。同様に、光線L3はミラー要素SEa,SEbとは異なるミラー要素SEcに、光線L4はミラー要素SEa〜SEcとは異なるミラー要素SEdにそれぞれ入射する。ミラー要素SEa〜SEdは、その位置に応じて設定された空間的な変調を光L1〜L4に与える。
空間光変調器3では、すべてのミラー要素3aの反射面が1つの平面に沿って設定された基準状態において、光路折曲げミラーMR1と空間光変調器3との間の光路の光軸AXと平行な方向に沿って入射した光線が、空間光変調器3で反射された後に、空間光変調器3とリレー光学系5との間の光路の光軸AXと平行な方向に進むように構成されている。また、上述したように、空間光変調器3の複数のミラー要素3aの配列面とリレー光学系5の瞳面5cとは、前側レンズ群5aを介して光学的にフーリエ変換の関係に位置決めされている。
したがって、空間光変調器3の複数のミラー要素SEa〜SEdによって反射されて所定の角度分布が与えられた光は、瞳面5cに所定の光強度分布SP1〜SP4を形成し、ひいてはマイクロフライアイレンズ7の入射面に光強度分布SP1〜SP4に対応した光強度分布を形成する。すなわち、前側レンズ群5aは、空間光変調器3の複数のミラー要素SEa〜SEdが射出光に与える角度を、空間光変調器3のファーフィールド(フラウンホーファー回折領域)である瞳面5c上での位置に変換する。こうして、マイクロフライアイレンズ7が形成する二次光源の光強度分布(瞳強度分布)は、空間光変調器3およびリレー光学系5,6がマイクロフライアイレンズ7の入射面に形成する光強度分布に対応した分布となる。
空間光変調器3は、図3に示すように、平面状の反射面を上面にした状態で1つの平面に沿って規則的に且つ二次元的に配列された多数の微小な反射素子であるミラー要素3aを含む可動マルチミラーである。各ミラー要素3aは可動であり、その反射面の傾き、すなわち反射面の傾斜角および傾斜方向は、制御系CRからの制御信号に基づいて作動する駆動部3cの作用により独立に制御される。各ミラー要素3aは、その反射面に平行な二方向であって互いに直交する二方向を回転軸として、所望の回転角度だけ連続的或いは離散的に回転することができる。すなわち、各ミラー要素3aの反射面の傾斜を二次元的に制御することが可能である。
各ミラー要素3aの反射面を離散的に回転させる場合、回転角を複数の状態(例えば、・・・、−2.5度、−2.0度、・・・0度、+0.5度・・・+2.5度、・・・)で切り換え制御するのが良い。図3には外形が正方形状のミラー要素3aを示しているが、ミラー要素3aの外形形状は正方形に限定されない。ただし、光利用効率の観点から、ミラー要素3aの隙間が少なくなるように配列可能な形状(最密充填可能な形状)とすることができる。また、光利用効率の観点から、隣り合う2つのミラー要素3aの間隔を必要最小限に抑えることができる。
本実施形態では、空間光変調器3として、たとえば二次元的に配列された複数のミラー要素3aの向きを連続的にそれぞれ変化させる空間光変調器を用いている。このような空間光変調器として、たとえば欧州特許公開第779530号公報、米国特許第5,867,302号公報、米国特許第6,480,320号公報、米国特許第6,600,591号公報、米国特許第6,733,144号公報、米国特許第6,900,915号公報、米国特許第7,095,546号公報、米国特許第7,295,726号公報、米国特許第7,424,330号公報、米国特許第7,567,375号公報、米国特許公開第2008/0309901号公報、米国特許公開第2011/0181852号公報、米国特許公開第2011/188017号公報並びに特開2006−113437号公報に開示される空間光変調器を用いることができる。なお、二次元的に配列された複数のミラー要素3aの向きを離散的に複数の段階を持つように制御してもよい。
空間光変調器3では、制御系CRからの制御信号に応じて作動する駆動部3cの作用により、複数のミラー要素3aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素3aがそれぞれ所定の向きに設定される。空間光変調器3の複数のミラー要素3aによりそれぞれ所定の角度で反射された光は、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に、所望の瞳強度分布を形成する。さらに、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳と光学的に共役な別の照明瞳の位置、すなわち結像光学系10の瞳位置および投影光学系PLの瞳位置(開口絞りASが配置されている位置)にも、所望の瞳強度分布が形成される。
このように、空間光変調器3は、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に瞳強度分布を可変的に形成する。リレー光学系5,6は、空間光変調器3の複数のミラー要素3aがそのファーフィールドに形成するファーフィールドパターンを、マイクロフライアイレンズ7の入射面の照明瞳に結像させる分布形成光学系を構成している。この分布形成光学系は、空間光変調器3からの射出光束の角度方向の分布を、分布形成光学系からの射出光束の断面における位置分布に変換する。
図4は、レンズアレイ2aからリレー光学系5の瞳面5cまでの光路を直線状に展開して示す図である。図4では、空間光変調器3を透過型の空間光変調器として図示するとともに、ビームスプリッターBSおよび光路折曲げミラーMR1の図示を省略している。また、図4では、紙面に垂直な方向にx軸を、紙面において水平に延びる光軸AXの方向にy軸を、紙面において鉛直の方向にz軸をそれぞれ設定している。
偏光部材4は、空間光変調器3の近傍の位置であって、リレー光学系2bと空間光変調器3との間の光路中、すなわちほぼ平行光束が伝搬する光路中に配置されている。以下、説明の理解を容易にするために、偏光部材4には、光強度分布均一化部材2の作用により光強度が均一化された矩形状の断面を有する平行光束が入射し、光強度分布均一化部材2を経た光はz方向に偏光した直線偏光(以下、「z方向直線偏光」という)であるものとする。
偏光部材4は、図5に示すように、光路を伝搬する伝搬光束の一部に作用するように光路中に配置された1/2波長板41を有する。1/2波長板41は、例えば矩形状の外形を有し、その入射面および射出面が光軸AXと直交するように配置され、z方向に(必要に応じてx方向にも)移動可能である。偏光部材4は、1/2波長板41をz方向に移動させる駆動部DR41を有する。駆動部DR41は、1/2波長板41を移動させるためのアクチュエータと、1/2波長板41の移動量を検知するためのエンコーダとを有し、制御系CRからの制御信号に基づいて1/2波長板41を移動させる。
偏光部材4には、図6に示すように、光軸AXを中心した矩形状の断面を有するz方向直線偏光の平行光束F1が入射する。この場合、入射光束F1のうち、1/2波長板41のエッジ41aよりも内側(+z方向側)の第1部分光束F11は、1/2波長板41を経て空間光変調器3に入射する。1/2波長板41のエッジ41aよりも外側(−z方向側)の第2部分光束F12は、1/2波長板41を経ることなく空間光変調器3に入射する。図5および図6では、光軸AXを含むxy平面から+z方向の光路を伝搬する光束に作用するように1/2波長板41が配置された様子を示している。
図6に示す状態において、1/2波長板41は、z方向直線偏光の光が入射した場合、z方向を+90度(図6の紙面において時計廻りに90度)回転させたx方向に偏光方向を有するx方向直線偏光の光を射出するように、光学軸の向きがx方向およびz方向に対して45度をなす方向に設定されている。その結果、偏光部材4の直後において空間光変調器3に入射する光束F1は、図7に示すような偏光状態になる。すなわち、第1部分光束F11は、1/2波長板41の偏光作用を受けるため、x方向直線偏光になる。第2部分光束F12は、1/2波長板41の偏光作用を受けないため、z方向直線偏光のままである。
偏光部材4の位置において第1部分光束F11が占める部分領域R11(図6を参照)は、図8に示すように、空間光変調器3の配列面における有効反射領域のうちの部分領域R01に対応している。同様に、第2部分光束F12が占める部分領域R12(図6を参照)は、空間光変調器3の配列面における部分領域R02に対応している。空間光変調器3の配列面における部分領域R01,R02に外接する矩形状の領域R0は、偏光部材4の位置において入射光束F1が占める領域R1(図6を参照)に対応している。
空間光変調器3の駆動部3cは、図9に示すように、第1部分領域R01に位置する第1ミラー要素群S01を経た光が、リレー光学系5の瞳面5c上の一対の瞳領域R11a,R11bへ導かれるように、第1ミラー要素群S01に属する複数のミラー要素3aの姿勢をそれぞれ制御する。一対の瞳領域R11a,R11bは、例えば光軸AXを挟んでz方向に間隔を隔てた領域である。
駆動部3cは、第2部分領域R02に位置する第2ミラー要素群S02を経た光が、リレー光学系5の瞳面5c上の一対の瞳領域R12a,R12bへ導かれるように、第2ミラー要素群S02に属する複数のミラー要素3aの姿勢をそれぞれ制御する。一対の瞳領域R12a,R12bは、例えば光軸AXを挟んでx方向に間隔を隔てた領域である。
こうして、空間光変調器3は、リレー光学系5の瞳面5c上に、例えば4つの円形状の実質的な面光源P11a,P11b;P12a,P12bからなる4極状の光強度分布21を形成する。すなわち、第1部分光束F11は、空間光変調器3の第1ミラー要素群S01を経て、瞳領域R11a,R11bを占める面光源P11a,P11bを形成する。面光源P11a,P11bを形成する光は、1/2波長板41を経ているので、x方向直線偏光である。
第2部分光束F12は、空間光変調器3の第2ミラー要素群S02を経て、瞳領域R12a,R12bを占める面光源P12a,P12bを形成する。面光源P12a,P12bを形成する光は、1/2波長板41を経ていないので、z方向直線偏光である。マイクロフライアイレンズ7の入射面には、光強度分布21に対応する4極状の光強度分布が形成される。
こうして、空間光変調器3と偏光部材4との協働作用により、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳には、光強度分布21に対応する4極状で周方向偏光状態の瞳強度分布21’が形成される。さらに、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳と光学的に共役な別の照明瞳の位置、すなわち結像光学系10の瞳位置および投影光学系PLの瞳位置(開口絞りASが配置されている位置)にも、光強度分布21に対応する4極状で周方向偏光状態の瞳強度分布が形成される。
1/2波長板41により偏光状態が変更される第1部分光束F11の光量は、1/2波長板41のエッジ41aのz方向位置に依存して変化する。換言すれば、1/2波長板41のz方向位置が変化すると、瞳強度分布21’におけるx方向直線偏光状態の面光源P11a,P11bと、z方向直線偏光状態の面光源P12a,P12bとの間の強度比が変化する。
一般に、周方向偏光状態の輪帯状や複数極状(2極状、4極状、8極状など)の瞳強度分布に基づく周方向偏光照明では、最終的な被照射面としてのウェハWに照射される光がs偏光を主成分とする偏光状態になる。ここで、s偏光とは、入射面に対して垂直な方向に偏光方向を有する直線偏光(入射面に垂直な方向に電気ベクトルが振動している偏光)のことである。入射面とは、光が媒質の境界面(被照射面:ウェハWの表面)に達したときに、その点での境界面の法線と光の入射方向とを含む面として定義される。その結果、周方向偏光照明では、投影光学系の光学性能(焦点深度など)の向上を図ることができ、ウェハ(感光性基板)上において高いコントラストのマスクパターン像を得ることができる。
本実施形態では、姿勢が個別に制御される多数のミラー要素3aを有する空間光変調器3を用いているので、瞳強度分布の偏光状態の変更に関する自由度は高い。一例として、制御系CRからの指令にしたがって空間光変調器3を制御するだけで、図10に示すように、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に4極状で径方向偏光状態の瞳強度分布22を形成することができる。
図10に示す例では、1/2波長板41および第1ミラー要素群S01を経た光が、照明瞳面において光軸AXを挟んでx方向に間隔を隔てた一対の瞳領域R21a,R21bへ導かれて、実質的な面光源P21a,P21bを形成する。1/2波長板41を経ることなく第2ミラー要素群S02を経た光は、光軸AXを挟んでz方向に間隔を隔てた一対の瞳領域R22a,R22b導かれて、実質的な面光源P22a,P22bを形成する。こうして、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に、例えば4つの円形状の実質的な面光源P21a,P21b;P22a,P22bからなる4極状で径方向偏光状態の瞳強度分布22が形成される。
一般に、径方向偏光状態の輪帯状や複数極状の瞳強度分布に基づく径方向偏光照明では、最終的な被照射面としてのウェハWに照射される光がp偏光を主成分とする偏光状態になる。ここで、p偏光とは、上述のように定義される入射面に対して平行な方向に偏光方向を有する直線偏光(入射面に平行な方向に電気ベクトルが振動している偏光)のことである。その結果、径方向偏光照明では、ウェハWに塗布されたレジストにおける光の反射率を小さく抑えて、ウェハ(感光性基板)上において良好なマスクパターン像を得ることができる。
制御系CRは、たとえば、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等からなるいわゆるワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等から構成することができ、装置全体を統括して制御することができる。また、制御系CRには、例えばハードディスクから成る記憶装置、キーボード,マウス等のポインティングデバイス等を含む入力装置,CRTディスプレイ(又は液晶ディスプレイ)等の表示装置、及びCD(compact disc),DVD(digital versatile disc),MO(magneto-optical disc)あるいはFD(flexible disc)等の情報記憶媒体のドライブ装置が、外付けで接続されていてもよい。
記憶装置には、投影光学系PLによってウェハW上に投影される投影像の結像状態が最適(例えば収差又は線幅が許容範囲内)となる瞳強度分布(照明光源形状)に関する情報、これに対応する照明光学系、特に空間光変調器3のミラー要素の制御情報等を格納してもよい。ドライブ装置には、後述する瞳強度分布の設定を行うためのプログラム等が格納された情報記憶媒体(以下の説明では便宜上CD−ROMとする)がセットされていてもよい。なお、これらのプログラムは記憶装置にインストールされていても良い。制御系CRは、適宜、これらのプログラムをメモリ上に読み出す。
制御系CRは、たとえば以下の手順で、空間光変調器3を制御することができる。なお、以下の説明に際して、実施形態の露光装置は、図9に示す瞳強度分布21’を形成するものとする。瞳強度分布は、たとえば瞳面を格子状に複数の区画に分割し、それぞれの区画の光強度および偏光状態を用いて数値として表現した形式(広義のビットマップ形式)で表現することができる。ここで、空間光変調器3のミラー要素数をN個とし、瞳強度分布の分割された区画数をM個とすると、個々のミラー要素により反射されるN本の光線を適当に組み合わせてM個の区画に導く、換言すれば、M個の区画により構成されるM個の輝点上でN本の光線を適当に重ね合わせることで、瞳強度分布(二次光源)が形成(設定)される。
まず、制御部CRは、目標となる瞳強度分布21’に関する情報を記憶装置から読み出す。次に、読み出された瞳強度分布21’に関する情報から、偏光状態ごとの強度分布を形成するのに、それぞれ何本の光線が必要なのかを算出する。そして、制御部CRは、空間光変調器3の複数のミラー要素を、それぞれ所要数のミラー要素からなる2つのミラー要素群S01,S02に仮想的に分割し、それぞれのミラー要素群S01,S02が位置する部分領域R01,R02およびこれらの部分領域に対応する部分領域R11,R12を設定する。
制御部CRは、偏光部材4の1/2波長板41を駆動して、部分領域R11に対応する領域をカバーするように1/2波長板41を位置決めする。また、制御部CRは、第1ミラー要素群S01のミラー要素3aを駆動して、第1ミラー要素群S01からの光が面光源P11a,P11bに向かうように設定する。同様に、第2ミラー要素群S02のミラー要素3aを駆動して、第2ミラー要素群S02からの光が面光源P12a,P12bに向かうように設定する。
本実施形態では、姿勢が個別に制御される多数のミラー要素3aを有する空間光変調器3を備えているので、瞳強度分布の形状(大きさを含む広い概念)および偏光状態の変更に関する自由度は高い。また、本実施形態では、空間光変調器3の配列面の近傍位置に配置された偏光部材4と、空間光変調器3へ入射する光の強度分布の均一性を向上させる光強度分布均一化部材2とを備えているので、空間光変調器3の制御性を向上させることができ、ひいては瞳強度分布の所望の偏光状態を精度良く実現することができる。
本実施形態では、光源LSから射出された不均一なビームプロファイルを有する光が、光強度分布均一化部材2の作用により強度分布の均一性が向上した光となって、空間光変調器3の配列面へ入射する。すなわち、光強度分布均一化部材2の作用により、空間光変調器3の各ミラー要素3aへ入射する光束の光強度分布が均一化され、ひいては各ミラー要素3aから射出される光束の光強度分布も均一化される。その結果、瞳強度分布の形成に際して多数のミラー要素3aを駆動すべき空間光変調器3の制御性が向上する。
また、光強度分布均一化部材2の作用により偏光部材4へ入射する光束の光強度分布が均一化されるので、1/2波長板41のz方向位置と1/2波長板41により偏光状態が変更される第1部分光束F11の光量との関係が線形的になり単純化される。その結果、1/2波長板41のz方向位置を変化させることにより、例えば瞳強度分布21’におけるx方向直線偏光状態の面光源P11a,P11bとz方向直線偏光状態の面光源P12a,P12bとの間の強度比を調整することができ、ひいては瞳強度分布21’の所望の偏光状態を精度良く実現することができる。
また、制御部CRには、必要に応じて、ビームモニターBMから、空間光変調器3の配列面における光強度分布のモニター結果が供給される。この場合、制御部CRは、ビームモニターBMの光強度分布に関するモニター結果を随時参照し、光源LSから供給される光のビームプロファイルの経時的な変動に応じて空間光変調器3を適宜制御することにより、所望の瞳強度分布を安定的に形成することができる。
以上のように、本実施形態の照明光学系(1〜10)では、空間光変調器3の制御性を向上させることができ、ひいては瞳強度分布の所望の偏光状態を精度良く実現することができる。本実施形態の露光装置(1〜WS)では、瞳強度分布の所望の偏光状態を精度良く実現する照明光学系(1〜10)を用いて、転写すべきマスクMのパターンの特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで、微細パターンをウェハWに正確に転写することができる。
上述の説明では、単一の1/2波長板41を備えた偏光部材4が、空間光変調器3の配列面の近傍位置に配置されている。しかしながら、これに限定されることなく、偏光部材4を構成する偏光素子の形態、数、配置などについては様々な形態が可能である。例えば図11に示すように、空間光変調器3の配列面の近傍位置に配置されて一対の1/2波長板42,43を備えた偏光部材4を用いて、6極状の瞳強度分布を形成することができる。図11の変形例では、互いに異なる偏光変換特性を有し且つz方向に移動可能な一対の1/2波長板42,43が並列的に配置されている。
1/2波長板42は、z方向直線偏光の光が入射した場合、z方向を+60度(図11の紙面において時計廻りに60度)回転させた+60度斜め方向に偏光方向を有する+60度斜め方向直線偏光の光を射出するように、光学軸の向きが設定されている。1/2波長板43は、z方向直線偏光の光が入射した場合、z方向を−60度(図11の紙面において反時計廻りに60度)回転させた−60度斜め方向に偏光方向を有する−60度斜め方向直線偏光の光を射出するように、光学軸の向きが設定されている。
その結果、偏光部材4の直後において空間光変調器3に入射する光束F1は、図12に示すような偏光状態になる。すなわち、入射光束F1のうち、1/2波長板42のエッジ42aよりも内側(+z方向側)の第1部分光束F11は、1/2波長板42の偏光作用を受けるため、+60度斜め方向直線偏光になる。1/2波長板43のエッジ43aよりも内側(−z方向側)の第2部分光束F12は、1/2波長板43の偏光作用を受けるため、−60度斜め方向直線偏光になる。エッジ42aと43aとの間の第3部分光束F13は、1/2波長板42,43の偏光作用を受けないため、z方向直線偏光のままである。
偏光部材4の位置において第1部分光束F11が占める部分領域R11(図11を参照)は、図13に示すように、空間光変調器3の配列面における有効反射領域のうちの部分領域R01に対応している。同様に、部分光束F12,F13が占める部分領域R12,R13(図11を参照)は、空間光変調器3の配列面における部分領域R02,R03に対応している。空間光変調器3の配列面における部分領域R01〜R03に外接する矩形状の領域R0は、偏光部材4の位置において入射光束F1が占める領域R1(図11を参照)に対応している。
空間光変調器3の駆動部3cは、第1部分領域R01に位置する第1ミラー要素群S01を経た光が、図14に示すように、リレー光学系5の瞳面5c上の一対の瞳領域R31a,R31bへ導かれるように、第1ミラー要素群S01に属する複数のミラー要素3aの姿勢をそれぞれ制御する。一対の瞳領域R31a,R31bは、例えば光軸AXを挟んで−30度斜め方向に間隔を隔てた領域である。
駆動部3cは、第2部分領域R02に位置する第2ミラー要素群S02を経た光が、リレー光学系5の瞳面5c上の一対の瞳領域R32a,R32bへ導かれるように、第2ミラー要素群S02に属する複数のミラー要素3aの姿勢をそれぞれ制御する。一対の瞳領域R32a,R32bは、例えば光軸AXを挟んで+30度斜め方向に間隔を隔てた領域である。
駆動部3cは、第3部分領域R03に位置する第3ミラー要素群S03を経た光が、リレー光学系5の瞳面5c上の一対の瞳領域R33a,R33bへ導かれるように、第3ミラー要素群S03に属する複数のミラー要素3aの姿勢をそれぞれ制御する。一対の瞳領域R33a,R33bは、例えば光軸AXを挟んでx方向に間隔を隔てた領域である。
こうして、空間光変調器3は、リレー光学系5の瞳面5c上に、例えば6つの円形状の実質的な面光源P31a,P31b;P32a,P32b;P33a,P33bからなる6極状の光強度分布23を形成する。すなわち、第1部分光束F11は、空間光変調器3の第1ミラー要素群S01を経て、瞳領域R31a,R31bを占める面光源P31a,P31bを形成する。面光源P31a,P31bを形成する光は、1/2波長板42を経ているので、+60度斜め方向直線偏光である。
第2部分光束F12は、空間光変調器3の第2ミラー要素群S02を経て、瞳領域R32a,R32bを占める面光源P32a,P32bを形成する。面光源P32a,P32bを形成する光は、1/2波長板43を経ているので、−60度斜め方向直線偏光である。第3部分光束F13は、空間光変調器3の第3ミラー要素群S03を経て、瞳領域R33a,R33bを占める面光源P33a,P33bを形成する。面光源P33a,P33bを形成する光は、1/2波長板42,43を経ていないので、z方向直線偏光である。
こうして、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳には、光強度分布23に対応する6極状で周方向偏光状態の瞳強度分布23’が形成される。図11の変形例では、1/2波長板42,43のz方向位置を変化させることにより、瞳強度分布23’において互いに偏光状態の異なる面光源P31a,P31bとP32a,P32bとP33a,P33bとの間の強度比を調整することができる。
また、図示を省略するが、互いに異なる偏光変換特性を有する一対の1/2波長板を備えた偏光部材を用いて、6極状で径方向偏光状態の瞳強度分布を形成することができる。また、図示を省略するが、互いに異なる偏光変換特性を有する3つの1/2波長板を備えた偏光部材を用いて、例えば8極状で周方向偏光状態(あるいは径方向偏光状態)の瞳強度分布を形成することができる。
上述の説明では、偏光部材として、伝搬光束のうちの一部の光束が進行する光路に配置された1つまたは複数の1/2波長板を用いている。しかしながら、1/2波長板に限定されることなく、例えば伝搬光束のうちの一部の光束が進行する光路に配置された1つまたは複数の1/4波長板、旋光子などを用いて偏光部材を構成することもできる。1/4波長板を備えた偏光部材を用いる場合、瞳強度分布における任意の面光源の偏光状態を所望の楕円偏光に設定することができる。
旋光子は、平行平面板の形態を有し、旋光性を有する光学材料である結晶材料、例えば水晶により形成されている。また、旋光子は、その入射面(ひいては射出面)が光軸AXと直交し、その結晶光学軸が光軸AXの方向とほぼ一致(すなわち入射光の進行方向とほぼ一致)するように配置される。旋光子を備えた偏光部材を用いる場合、瞳強度分布における任意の面光源の偏光状態を所望の直線偏光に設定することができる。
上述の説明では、偏光部材4が、空間光変調器3の配列面の近傍位置に配置されている。しかしながら、これに限定されることなく、図1において破線で示すように、空間光変調器3よりも被照射面側の光路中において空間光変調器3の配列面と光学的にほぼ共役な位置に偏光部材4を配置することができる。また、図示を省略したが、空間光変調器よりも光源側の光路中において空間光変調器の配列面と光学的にほぼ共役な位置に偏光部材を配置することもできる。
一般に、空間光変調器の配列面の近傍の位置、または空間光変調器の配列面と光学的に共役な面を含む共役空間に偏光部材を配置してもよい。ここで、「共役空間」とは、空間光変調器の配列面と光学的に共役な共役位置の前側に隣接するパワーを有する光学素子と当該共役位置の後側に隣接するパワーを有する光学素子との間の空間である。なお、「共役空間」内には、パワーを持たない平行平面板や平面鏡が存在していても良い。
上述の説明では、光源LSと空間光変調器3との間の光路中に配置されて空間光変調器3の配列面へ入射する光の強度分布の均一性を向上させる光強度分布均一化部材2として、波面分割素子としてのレンズアレイ2aとリレー光学系2bとを用いている。しかしながら、例えば内面反射型のオプティカルインテグレータ(典型的にはロッド型インテグレータ)を用いて光強度分布均一化部材を構成することもできる。
光強度分布均一化部材では、当該部材に入射する光束の光強度分布の均一性よりも、当該部材から射出される光束の光強度分布の均一性の方が良くなることが重要であり、当該部材から射出される光束の光強度分布が完全に均一にならなくても良い。光源と空間光変調器との間の光路の中間位置よりも光源側に、光強度分布均一化部材を配置することができる。
なお、光強度分布均一化部材2は、光源LSと空間光変調器3との間の光路中において偏光部材4よりも光源側に配置される。偏光部材を光強度分布均一化部材よりも光源側に配置すると、偏光部材により生成された偏光状態の異なる複数の光束が光強度分布均一化部材を経てさらに多くの光束に波面分割されて、空間光変調器の各ミラー要素において偏光状態の異なる光が混在し、ひいては所望の偏光状態を有する瞳強度分布を形成することができなくなる。
上述の実施形態では、二次元的に配列されて個別に制御される複数のミラー要素を有する空間光変調器として、二次元的に配列された複数の反射面の向き(角度:傾き)を個別に制御可能な空間光変調器3を用いている。しかしながら、これに限定されることなく、たとえば二次元的に配列された複数の反射面の高さ(位置)を個別に制御可能な空間光変調器を用いることもできる。このような空間光変調器としては、たとえば特開平6−281869号公報及びこれに対応する米国特許第5,312,513号公報、並びに特表2004−520618号公報およびこれに対応する米国特許第6,885,493号公報の図1dに開示される空間光変調器を用いることができる。これらの空間光変調器では、二次元的な高さ分布を形成することで回折面と同様の作用を入射光に与えることができる。なお、上述した二次元的に配列された複数の反射面を持つ空間光変調器を、たとえば米国特許第6,891,655号公報や、米国特許公開第2005/0095749号公報の開示に従って変形しても良い。
上述の実施形態では、空間光変調器3が所定面内で二次元的に配列された複数のミラー要素3aを備えているが、これに限定されることなく、所定面内に配列されて個別に制御される複数の透過光学要素を備えた透過型の空間光変調器を用いることもできる。
上述の実施形態では、マスクの代わりに、所定の電子データに基づいて所定パターンを形成する可変パターン形成装置を用いることができる。なお、可変パターン形成装置としては、たとえば所定の電子データに基づいて駆動される複数の反射素子を含む空間光変調素子を用いることができる。空間光変調素子を用いた露光装置は、たとえば米国特許公開第2007/0296936号公報に開示されている。また、上述のような非発光型の反射型空間光変調器以外に、透過型空間光変調器を用いても良く、自発光型の画像表示素子を用いても良い。
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行っても良い。
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。図15は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図15に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の投影露光装置を用い、マスク(レチクル)Mに形成されたパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。
その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の投影露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、上述の実施形態の投影露光装置は、フォトレジストが塗布されたウェハWを、感光性基板つまりプレートPとしてパターンの転写を行う。
図16は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図16に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルタ形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)およびモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、上述の実施形態の投影露光装置を用いて回路パターンおよび電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、上述の実施形態の投影露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
ステップS52のカラーフィルタ形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリックス状に多数配列するか、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルタを形成する。ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルタとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルタとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路およびバックライト等の各種部品を取り付ける。
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
なお、上述の実施形態では、露光光としてArFエキシマレーザ光(波長:193nm)やKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF2レーザ光源などに対して本発明を適用することもできる。
また、上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、投影光学系と感光性基板との間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開第WO99/49504号パンプレットに開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。ここでは、国際公開第WO99/49504号パンフレット、特開平6−124873号公報および特開平10−303114号公報の教示を参照として援用する。
また、上述の実施形態では、露光装置においてマスク(またはウェハ)を照明する照明光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、マスク(またはウェハ)以外の被照射面を照明する一般的な照明光学系に対して本発明を適用することもできる。