以下に添付図面を参照して、本発明を適用した実施の形態となる試料測定装置を詳細に説明する。
(概要)
まず、実施の形態の試料測定装置は、以下の光学構成により、偏角分光情報、偏角測色情報およびBRDF情報(Bidirectional Reflectance Distribution Function:双方向反射率分布関数)を取得することができる。BRDF情報は、ある反射地点に、ある方向から光が入射したとき、それぞれの方向へ,どれだけの光が反射されるかを表す、反射地点に固有の関数である。BRDF情報は、赤(R),緑(G),青(B)の3種類の光の波長の分光情報を用いる。
具体的には、計算式で指定される範囲に設置された2つ以上の角度から、試料に対して照明を照射し、2次元の分光カメラを用いて、1回の撮像動作(ワンショット)で撮像を行うことで、反射光から分光情報を取得する。そして、試料の2次元の分光情報を得た2次元画像内のX軸方向およびY軸方向の画素毎の照明方向と、撮像方向の光学幾何条件の変化を利用して、偏角分光情報を得る。これにより、2次元画像の面内を一様の試料と捉え、測定範囲として定めた角度範囲の偏角分光情報、偏角測色情報、および、BRDF情報を得ることができる。
次に、実施の形態の試料測定装置は、光輝感、粒子感、光沢、および、ヘーズ(濁度(曇度))、写像性、および、オレンジピール等の質感については、それぞれ以下の測定方法を用いることで質感を数値化する。なお、オレンジピールは、ディプレイ材料の素材に起因する光の乱反射で斑点ムラの現象(ミカンの皮のプツプツのように見える現象)である。
1.「光輝感」は、以下のように数値化する。すなわち、分光カメラの光学構成を、試料に対する1ピクセルの分解能が、例えば10〜100μmの分解能があるような光学構成とし、ハイダイナミックレンジ技術を使用し、18ビット以上のダイナミックレンジで撮影する。そして、照明角度毎、分光波長毎の明度ヒストグラムを計算し、角度および波長毎の光輝面積と光輝強度を算出する。
2.粒子感は、以下のように数値化する。すなわち、上述の分解能の分光カメラで、照明角度毎の粒子画像における、照明の正反射光を避けた拡散光として判定された画素のみを用いて、画像の再構成を行う。そして、再構成した画像から、明/暗の面積の均一性を粒子感として数値化する。均一性は、画像のエントロピーや分散を用いても良いし、フーリエ解析によって、求めてもよい。
3.光沢は、正反射光を撮像した画素について、人間の視感度である555nm付近の分光情報および標準ガラス板での校正結果を用いて、数値化する。
4.ヘーズ(濁度(曇度))は、正反射光と正反射光から1.9度〜3度ずれた試料面について、人間の視感度である555nm付近の分光情報および標準ガラス板での校正結果を用いて数値化する。
5.写像性は、投影機から投影した波長の短いスリット光(スリットパターンの光)を分光カメラで撮像し、人間の視感度である555nm付近の分光情報および標準ガラス板での校正結果を用いて、数値化する。
6.オレンジピールは、投影機から投影した波長の短いスリット光を分光カメラで撮像し、人間の視感度である555nm付近の分光情報および標準ガラス板での校正結果を用いて、数値化する。
また、実施の形態の試料測定装置は、投影機から投影するスリット光を用いて、試料の三次元形状を取得する。または、実施の形態の試料測定装置は、3次元取得装置によって試料の三次元形状を取得する。そして、実施の形態の試料測定装置は、取得した試料の三次元形状の法線方向から偏角分光情報を校正する。これにより、測定対象面の形状に影響されることなく、試料の測定を行うことができる。
実施の形態の試料測定装置は、このようにして、偏角分光情報、偏角測色情報、BRDF情報を取得して、光輝感、粒子感、光沢、ヘーズ、写像性、オレンジピール等の塗料の質感を数値化する。このため、例えばパール色、メタリックなどの、見る角度で異なる色に見える光輝材を含む塗料を、一度に定量評価することができる。
(第1の実施の形態)
図1に第1の実施の形態の試料測定装置のブロック図を示す。この図1に示すように、試料測定装置は、分光カメラ装置1、光源装置2、投影機3、情報処理装置4、および、モニタ装置5を有している。
後に詳しく説明するが、分光カメラ装置1としては、マルチバンドカメラ装置を用いることができる。マルチバンドカメラ装置は、2次元の分光情報を取得する分光情報取得部として、メインレンズ内に挿入された分光フィルタ群とメインレンズと受光素子の間に挿入されたマイクロレンズアレイによって、マイクロレンズ毎に分光フィルタの数に応じた分光情報を取得する。また、分光カメラ装置1として1組以上のフィルタ、および、回折格子(または、プリズム)を含むハイパースペクトルカメラ装置等を用いてもよい。
分光カメラ装置1は、撮像部11および画像処理部12を備えており、各角度に固定されている光源装置2の照明部15による光の照射に同期して、2次元の分光情報を1回の撮像動作(ワンショット)で取得する。一例ではあるが、1回の撮像動作とは、撮像部11がCMOSセンサ、または、CCDセンサ等の半導体撮像素子の場合、各画素で受光した撮像光(この例の場合は、試料からの反射光)に応じて生成された電荷を読み出すまでの動作を意味している。CMOSは、「Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor」の略記である。CCDは、「Charge Coupled Device」の略記である。
光源装置2は、複数の照明部15と、各照明部15を点灯駆動する点灯制御部16を有している。照明部15としては、点光源、ライン照明、または、平行光照明を用いることができる。また、光源種としては、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、白色LEDなどを用いることができる。LEDは、「Light Emitting Diode」の略記である。
投影機3としては、プロジェクタ装置を用いることができる。投影機3は、試料の写像性(鮮明度)およびオレンジピールを測定する際等に、縞状の投影パターン(所定の空間周波数を有する投影パターン)を試料に照射する。
モニタ装置5としては、例えば液晶モニタ装置を用いることができる。詳しくは後述するが、モニタ装置5には、設定メニューおよび操作メニュー等の他、光輝感パラメータにおける光の各照射角度に対応する強度ヒストグラム等が表示される。
情報処理装置4としては、一般的なコンピュータ装置を用いることができる。情報処理装置4は、CPU21、ROM22、RAM23、HDD(ハードディスクドライブ)24を備える。また、情報処理装置4は、各種インタフェース(I/F)25と、入出力インタフェース(I/O)26を有している。CPU21〜I/O26は、バスライン27を介して相互に接続されている。CPUは、「Central Processing Unit」の略記である。ROMは、「Read Only Memory」の略記である。RAMは、「Random Access Memory」の略記である。
HDD24には、試料の質感を測定するために、分光カメラ装置1の撮像制御、光源装置2の光源点灯制御、投影機の投影パターンの投影制御と共に、取得された分光情報を用いて試料の各測定項目に対応する演算等を行う試料測定プログラムが記憶されている。図2に、試料測定プログラムに従ってCPU21が動作することで実現される各機能の機能ブロック図を示す。この図2に示すように、CPU11は、光源制御部31、撮像制御部32、パターン制御部33、校正情報取得部34、情報校正部35、および、算出部の一例である測定値算出部36の各機能をソフトウェア的に実現する。
なお、この例では、光源制御部31〜測定値算出部36は、ソフトウェア的に実現されることとして説明を進めるが、光源制御部31〜測定値算出部36のうち、一部または全部をハードウェアで実現してもよい。
また、試料測定プログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。また、CD−R、DVD、ブルーレイディスク(登録商標)、半導体メモリなどのコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。DVDは、「Digital Versatile Disk」の略記である。また、試料測定プログラムは、インターネットなどのネットワーク経由でインストールするかたちで提供してもよい。また、試料測定プログラムは、機器内のROM等に予め組み込んで提供してもよい。
光源制御部31は、光源装置2を点灯制御する。撮像制御部32は、分光カメラ装置1を撮像制御する。パターン投影制御部33は、所定の投影パターンを投影する。校正情報取得部34は、測定開始時等に、例えば標準白色板、標準黒ガラスまたはミラー等の校正部材を読み取ることで、校正情報を取得する。情報校正部35は、取得された校正情報を用いて写像性、オレンジピール等の測定情報を校正する。測定値算出部36は、校正された測定情報を用いて、各種の測定項目の評価値を算出する。
次に、図3を用いて、分光カメラ装置1の原理を説明する。ここでは、理解容易とするために、光学系としてのメインレンズ54は単レンズで示し、メインレンズ54の絞り位置Sを単レンズの中心としている。メインレンズ54の中心には、光学バンドパスフィルタとしてのカラーフィルタ56が配置されている。カラーフィルタ56は、XYZ表色系の等色関数に基づいた分光透過率を持つ色の三刺激値に対応したフィルタである。すなわち、カラーフィルタ56は、XYZ表色系の等色関数に基づいた分光透過率が異なる複数(ここでは3つ)のカラーフィルタ56a、56b、56cから構成されている。
このような光学バンドパスフィルタは、分光透過率が異なるフィルタを複数組み合わせて構成してもよいし、一つのフィルタ上で領域毎に分光透過率を異ならせるように構成してもよい。例えば、400nmから700nmまでの波長域において、20nm刻みで透過波長のピークを持った16種類の光学バンドパスフィルタを用いた場合、400nmから700nmまでの波長域においての分光情報を20nm刻みで取得することが可能である。
なお、実際には、図3に示すようにレンズ内にカラーフィルタ56が位置することはない。カラーフィルタ56は、メインレンズ54の絞り付近に配置される。「絞り付近」とは、絞り位置を含み、種々の画角の光線が通過できる部位を意味する。換言すれば、メインレンズ54に対するカラーフィルタ56の設計上の許容範囲を意味する。
図4に光線の入射角度が0度の場合の各カラーフィルタ56a、56b、56cの分光透過率を示す。図4における実線、破線、点線はそれぞれ、下記の等色関数に基づいたカラーフィルタ56a(FX)、56b(FY)、56c(FZ)の分光透過率TX(λ)、TY(λ)、TZ(λ)である。
図5に、カラーフィルタ56a(FX)、56b(FY)、56c(FZ)の幾何学的設計例を示す。図5では、カラーフィルタ56をおおよそ扇型に3等分しているが、全体を円形としてもよいし、矩形で分割してもよい。また、各フィルタの面積の割合も等分である必要はない。
図4に示すように、Zについての等色関数のラインで囲まれる面積は他に比べて小さい。この面積の大小は信号雑音比(SN比)の大きさに相関する。SN比を大きくするために、Zに対応するカラーフィルタ56cの面積を他に比べて大きくしてもよい。
次に、TX(λ)、TY(λ)、TZ(λ)の設計について説明する。図6の各分光透過率は、CIE−1931表色系で規定された等色関数とレンズのフィルタを除く光学系の分光透過率TL(λ)、および受光素子の分光感度S(λ)から設計される。すなわち、以下の数1式〜数3式で定義できる。
数1式〜数3式では、センサ自体にも分光感度があるため、その不均一性をなくすためにS(λ)で除している。数1式〜数3式において、それぞれの最大値を透過率100%として規格化したものがTX(λ)、TY(λ)、TZ(λ)となる。規格化することで、特にx(λ)、y(λ)に対応したカラーフィルタについてSN比を改善できる。このように設計したカラーフィルタを用いると、そのカラーフィルタを透過した光線を受光素子で検出した場合に、最大値による規格化を逆算するだけで、その出力値をそのままX、Y、Z(三刺激値)として用いることができる。
TX(λ)、TY(λ)、TZ(λ)は複雑な波形ではあるが、設計値に近い値で生成することが可能である。TX(λ)、TY(λ)、TZ(λ)は、一例として誘電体多層膜で生成することができる。誘電体多層膜は、光学的な干渉作用によりバンドパスフィルタとして機能する。カラーフィルタ56の分光透過率は、干渉作用でバンドパスフィルタを実現できるため、原理的に光線の入射角度依存性を持つ。図6に、カラーフィルタ56a(FX)での入射角度依存性の例を示す。実線、破線、点線はそれぞれ、入射角度0度、20度、30度の分光透過率である。入射角度が大きくなるにつれて短波長側に透過帯域がシフトしていることがわかる。
図3に示すように、メインレンズ54の集光位置付近には、複数のマイクロレンズ(小レンズ)から構成されるマイクロレンズアレイ(MLA)53が配置されている。イメージ面には、メインレンズ54により集光された光情報を電子情報(電気信号)に変換する複数の受光素子(センサ)を備えた受光素子アレイ55が配置されている。MLA53のマイクロレンズの径と、受光素子アレイ55を構成する各受光素子とは、約「30:1〜2:1」の比率の関係にある。
図7に、MLA3を光軸方向から見た図を示す。図7において、白い円は各レンズを示しており、黒く塗りつぶしている部分は遮光部を示している。すなわち、レンズアレイを構成するレンズの部分以外は遮光部により遮光されている。一例ではあるが、遮光部は、酸化クロムを蒸着して形成されている。遮光部は、曲率を持たない平坦部や、曲率が製造的に設計値仕様を満たさない領域である。これらの領域からの光は、設計上意図しない光線を受光素子まで届けるおそれがあるため、遮光することで設計から想定される電気信号を得ることができる。これにより、正確な測定値を得ることができる。
受光素子アレイ55は、画素毎のカラーフィルタが実装されていないモノクロセンサである。以下、受光素子アレイを「モノクロセンサ」ともいう。図3に示す物体57から発する光のうち、メインレンズ54の開口に入射し絞りを通過する光束が測定の対象となる。メインレンズに入射した光束は、無数の光線の集合であり、それぞれの光線はメインレンズ54の絞りの異なる位置を通過する。図3の例の場合、メインレンズ54の絞り位置に、3つのカラーフィルタ56a、56b、56cを配置しているので、各光線は異なる分光透過率を持つ3つのフィルタを通過することになる。このとき、フィルタ面に入射する光線の角度は物体高さにより異なる。これは図3中、符号P、符号Qで示す物体上の点から発した光束の主光線が、異なる角度でメインレンズ54の絞り面を通過していることからもわかる。
カラーフィルタ56を通過した光線は、MLA53付近で一旦結像するが、その後MLA53によりそれぞれセンサの別位置に到達する。すなわち、センサ面の位置(受光位置)は、光線が通過したフィルタ面に対応するため、物体のある一点から発した光を波長的に三刺激値X、Y、Zに分解した値を測定することができる。
しかし、図6を用いて説明したように、カラーフィルタ56の分光透過率は、入射角依存性を持つため、受光素子の出力を単純に用いただけでは、光軸上はよくても軸外を含めた二次元面の正確な三刺激値X、Y、Zを測定することは困難となる。
このため、分光カメラ装置1は、基準となる値と、分光カメラ装置1からの出力値から算出した値とを用いて受光位置毎に補正した、二次元面の正確な三刺激値を得るようになっている。一般には、重回帰分析と呼ばれる手法である。重回帰分析では、説明変数と目的変数とを予め用意し、それらから求まる回帰行列を利用して補正演算を行う。以下にその手順を具体的に述べる。まず、分光カメラ装置1からの出力値を算出する手順について述べる。これは重回帰分析における説明変数に相当する。
図3の構成で撮影された画像は、図8に示すような小さな円が並んだものとなる。円になるのは単レンズ(メインレンズ54)の絞り形状が円形状だからである。ここでは、それぞれの小さな円を「マクロピクセル」と呼ぶこととする。各マクロピクセルは、レンズアレイを構成する各小レンズの直下に形成される。マクロピクセルの内部構造は、図5に示したカラーフィルタの構造に対応したものとなる。マクロピクセルの拡大図を図9に示す。図9と図5とを比べて、上下左右が反転しているのは、光学系を通過したことによるものである。ただし、この対応関係は光学系に依存するため、この例に限ったものではない。
マクロピクセルの内部構造MX、MY、MZは、それぞれ、カラーフィルタFX、FY、FZを通過した光が到達した結果である。MX、MY、MZの受光素子の出力値をv=[vX,vY,vZ]tとする。tは行列の転置を意味する。出力値の取り方は、MX、MY、MZの平均値をとってもよいし、MX、MY、MZから一つの受光素子を選択し、その出力値を代表値としてもよい。
次に、基準となる値の取得方法について述べる。これは重回帰分析における目的変数に相当する。色空間において広い範囲をカバーする色見本を分光器等のX値、Y値、Z値を測定する装置で測定し、それらを基準の値とする。色見本としては、例えば広く用いられている「カラーチェッカー」と呼ばれる24色の矩形の色見本が並んだものを用いることができる。カラーチェッカーの例を、図10に示す。カラーチェッカーに含まれる24色の測定値のxy色度図へのプロット結果を、図11に示す。
色見本はカラーチェッカーに限るわけではなく、測定したい対象がわかっていれば、そ
の色に近いものを基準の値とすることでより良い補正結果を得ることができる。ある色見本に対するX、Y、Z(三刺激値)の基準の値をr=[rX,rY,rZ]tとする。
次に、補正演算の流れを述べる。まず、色見本を測定器で測定し、基準の値を得る。色見本に24色のカラーチェッカーを用いた場合、便宜的に番号を付け、1番目の色に対する基準の値をr1=[r1X r1Y r1Z]tとする。すなわち、r1〜r24までの値を得る。R=[r1,・・・,r24]とする。Rは、3行24列の行列となる。この行列Rが目的変数である。
次に、図3の分光カメラ装置1で色見本を撮影し、撮像情報を取得する。このとき画像全体に一つの色見本が映るように配置する。各マクロピクセルからvを取得する。基準の値と同様にV=[v1,・・・,v24]を得る。このVが説明変数となる。ここまでに得られたRおよびVから行列Gを求める。
G=RVt(VVt)−1・・・(数4式)
この行列Gは、回帰行列と呼ばれ、補正演算に用いられる。説明変数Vは、マクロピクセル毎に別の値を持つため、行列Gもマクロピクセル毎に算出される。以上が補正演算のための準備である。
実際に測定を行うときの流れを説明する。測定対象となる試料を、分光カメラ装置1で撮像する。撮像画像に含まれる各マクロピクセルについて出力値を算出する。これを、「vC=[vCX,vCY,vCZ]t」とする。次に、補正された三刺激値rCを、以下の数5式の演算を行うことで算出する。マクロピクセル毎にrCを求めることで、二次元面の正確な三刺激値を求めることができる。
rC=GvC・・・(数5式)
上述の流れでは、出力値をそのまま用いるVやvCを用いたが、以下の数6式に示すように拡張することもできる。
v=[vX, vY, vZ 1 vX 2 vY 2 vZ 2 ・・・]t(数6式)
数6式の「…」は、vXvYおよびvX 3などの高次の項を意味する。このような拡張を行うことで、補正の精度を高め、より正確な値を求められることができる。拡張したVで回帰行列Gを求めた場合には、実際に数5式を用いた測定の場合にも、拡張したvCを用いることが好ましい。
次に、分光カメラ装置1としては、図12の構成の分光カメラ装置を用いてもよい。図12に示す分光カメラ装置1の場合、メインレンズ85の像位置とセンサ面88が共役関係になるようにマイクロレンズアレイ87を設けている。また、センサ面88上には、図13に示すように、複数の分光フィルタ89a〜89dを設けることにより、上述と同等の効果が得ることができる。
図12に示す分光カメラ装置1の場合、マイクロレンズアレイ87のレンズの数と分光フィルタ89a〜89dの数は一致する。そして、メインレンズ85の像を各々のマイクロレンズアレイ87で、各センサ位置に結像する。図12に示す分光カメラ装置1の場合、複雑な画像処理が不要であるため、高速演算が可能となる。また各分光画像を、それぞれ隣接する撮像領域で同時に撮像可能であるため、センサ面88を有効に利用でき、図3等を用いて説明した上述の分光カメラ装置1よりも、より高解像度の分光画像を得ることができる。
また、メインレンズ85と、マイクロレンズアレイ87との間に、フィールドレンズ86を設けてもよい。このフィールドレンズ86を設けることで、各マイクロレンズアレイ87で作られる像の視差を低減できる。なお、フィールドレンズ86は、メインレンズ85の射出瞳とマイクロレンズアレイ87の入射瞳が共役関係にあることが好ましい。
次に、図14に、実施の形態の試料測定装置における、分光カメラ装置1および光源装置2の各照明部15の位置関係を示す。また、図15に、分光カメラ装置1および光源装置2の各照明部15の位置関係で形成される各角度を示す。
実施の形態の試料測定装置は、平面状の試料61に対して、2つ以上の角度に設置された光源装置2の各照明部15a〜15eからそれぞれ光を照射する。そして、試料61に対して、例えば垂直方向(試料61の真上)または図14に示すような上方(試料61の斜め上)に設置された分光カメラ装置1で、試料61の2次元の分光情報を、各照明部15a〜15eの光の照射角度毎に、1回の撮像動作(ワンショット)で取得する。この場合において、試料測定装置は、試料61のサイズ、被写体距離、分光カメラ装置1の画角に対応して、試料61の右端61a、左端61bにおける光の照射角および鏡面反射角と、試料61の右端61a、左端61bにおける分光カメラ装置1の視野角との差の角度(アスペキュラ角:aspecular)を、以下のような条件で設定する。そして、分光カメラ装置1の位置に対応して決定した偏角範囲における、試料61の試料面の偏角分光情報を漏れなく取得する。
例えば、−15度から110度までの範囲の偏角分光情報を取得する場合、図14および図15に示すように、試料61に対して45度の角度に分光カメラ装置1を設置する。また、図14および図15に示すようにアスペキュラ角として、「角度A≦−15度≦角度C≦角度B≦角度E≦角度D≦角度G≦角度F≦角度I≦角度H≦110度≦角度J」となるように照明を配置し、所望の偏角範囲の分光情報(偏角分光情報)を漏れなく取得する。
図16に、照明部15dから光を照射したタイミングで、分光カメラ装置1で撮像された撮影画像の例を示す。照明部15dを用いて行われる撮像は、照明部15dからの光が、試料61のやや右端側61aから試料61に照射される。また、分光カメラ装置1は、試料61のやや左端61b側から、試料61に照射された光の反射光を受光して、試料61を撮像する。このため、光の照射方向と撮像方向が反対となるため、図16に示すように、試料61の左端61b側から試料61の右端61a側にかけて、徐々に暗くなる試料61の撮像画像が撮像される。
図14の構成において、一例として、試料61の直径を60mm、画角を22.6度の分光カメラ装置1と試料61との間の距離を150mm、試料61と各角度に設置された各照明部15a〜15eとの距離を、それぞれ150mmとする。この場合、図15に示すように、取得できる最大偏角範囲は−16度〜121度となる。同条件において、照明部の数を増加した場合、最大で−54度〜142度の偏角範囲となる。
これに対して、0度から90度までの範囲の偏角分光情報を取得する場合は、図17に示すように、試料61に対して分光カメラ装置1を垂直に設置する。また、アスペキュラ角として、「角度N≦0度≦角度O≦角度K≦角度P≦角度L≦90度≦角度M」の条件を満たすように照明部15f〜15hを設置し、カバー範囲の偏角分光情報をもれなく取得できるようにする。図17の例では、照明部として照明部15f〜15hの計3つを設けたが、試料61のサイズ、被写体距離、分光カメラ装置1の画角、測定したい偏角範囲に応じた照明部の数を設ければよい。
図17に示す構成において、試料61の直径を60mm、分光カメラ装置1と試料61との間の距離を150mm、試料61と各角度に設置された照明部15f〜15hとの間の距離をそれぞれ150mmとする。この場合、取得可能な最大偏角範囲は−23度〜101度となる。ASTM基準(E2539)では、パール色に対する通常のアスペキュラ角として−15度〜110度が推奨されている。ASTMは、「米国材料試験協会」の略記である。しかし、試料によっては、アスペキュラ角が0〜90度でも、試料の特徴を把握可能な測定を行うことができる場合もある。このため、上述の図14の構成および図17の構成は、試料に応じて使い分ければよい。
次に、試料61の測定動作および各評価項目の測定値の算出動作を説明する。まず、動作の概要を説明する。図1において、情報処理装置4は、図2に示す撮像制御部32で分光カメラ装置1の撮像制御を行う。また、情報処理装置4は、光源制御部31で照明部15の点灯制御を行い、測定値算出部36で、各評価項目の測定値を算出する。算出された各測定値は、HDD24、RAM23またはROM22等の記憶部に格納される。
また、情報処理装置4は、試料の測定の前に、校正情報取得部34で標準白色板等の校正部材の読み取りを行い、偏角分光情報を校正するための校正情報を生成する。また、情報処理装置4は、写像性およびオレンジピールの測定時には、校正情報取得部34で均一な標準黒ガラスまたは標準ミラー等の校正部材の読み取りを行い、偏角分光情報を校正するための校正情報を生成する。校正情報取得部34は、生成された校正情報を、HDD24、RAM23またはROM22等の記憶部に格納する。情報校正部35は、測定により得られた試料の偏角分光情報を、校正情報を用いて校正する。測定値算出部36は、校正された偏角分光情報を用いて、各評価項目の測定値を算出する。なお、校正情報の生成は、例えば工場出荷時等の、試料の測定前に行っても良いし、校正部材を常備しておくことで、試料の測定毎に行ってもよい。
以下、具体的に説明する。まず、図18は、写像性およびオレンジピールに対応する校正情報以外の、通常の校正情報の取得動作の流れを示すフローチャートである。この図18のフローチャートにおいて、ステップS1では、ユーザが手動で、または、校正情報取得部34が、標準白色板の移動機構を制御して、図14または図17に示した試料61の設置位置(分光カメラ装置1の撮像範囲内)に標準白色板を設置する。
ステップS2では、光源制御部31が、図14または図17に示した照明部15a〜15e、または、照明部15f〜15hのうち、いずれか一つの照明部を点灯制御する。また、ステップS3では、撮像制御部32は、点灯制御された照明部からの光が照射された標準白色板を、ワンショットで撮像するように、分光カメラ装置1を撮像制御する。校正情報取得部34は、標準白色板の撮像情報を校正情報として、図1のHDD24等の記憶部に記憶する。
実施の形態の試料測定装置は、一つずつ、順次、照明部を点灯制御しながら標準白色板を撮像する。ステップS4では、CPU21が、全ての照明部に対応する撮像が完了したか否かを判別する。CPU21により、全ての照明部に対応する撮像が完了していないものと判別された場合(ステップS4:No)、処理がステップS2に戻る。そして、再度、次に点灯駆動される照明部が、光源制御部31により点灯駆動され、撮像制御部32の制御で、分光カメラ装置1による標準白色板の撮像が繰り返し行われる。これにより、HDD24には、各照明部に対応する各校正情報が格納される。
これに対して、全ての照明部に対応する撮像が完了したものと判別された場合(ステップS4:Yes)、図18のフローチャートの処理が終了する。
実施の形態の試料測定装置は、このように校正情報を取得すると、図19のフローチャートに示すように、試料の撮像を行うことで照明部毎の偏光分光情報を取得し、各偏光分光情報を用いて、各評価項目の測定値を算出する。この図19のフローチャートにおいて、ステップS11では、ユーザが手動で、または、校正情報取得部34が移動機構を制御して、図14または図17に示すように、分光カメラ装置1の撮像範囲内に試料61を設置する。
ステップS12では、光源制御部31が、図14または図17に示した照明部15a〜15e、または、照明部15f〜15hのうち、いずれか一つの照明部を点灯制御する。また、ステップS13では、撮像制御部32は、点灯制御された照明部からの光が照射された試料61を、ワンショットで撮像するように、分光カメラ装置1を撮像制御する。撮像制御部32は、試料61の撮像情報である上述の偏角分光情報を、図1のRAM23等の記憶部に記憶する。
ここで、試料測定装置は、光源制御部31が、所定の露光時間となるように各照明部15a〜15eを点灯制御する動作(光量を変更する動作)、および、撮像制御部32が撮像時の露光時間を変更する動作のうち、いずれか一つ、または、両方を行う。そして、測定値算出部36が、このような光量の変更または露光時間の変更に応じて取得した複数の2次元分光情報を合成する。これにより、ダイナミックレンジを拡大した2次元分光情報を生成することができる。
次に、実施の形態の試料測定装置は、一つずつ、順次、照明部を点灯制御しながら試料61を撮像する。ステップS14では、CPU21が、全ての照明部に対応する撮像が完了したか否かを判別する。CPU21により、全ての照明部に対応する撮像が完了していないものと判別された場合(ステップS14:No)、処理がステップS12に戻る。そして、再度、次に点灯駆動される照明部が、光源制御部31により点灯駆動され、撮像制御部32の制御で、分光カメラ装置1による試料61の撮像が繰り返し行われる。これにより、HDD24には、各照明部に対応する各偏角分光情報が格納される。
次に、ステップS14において、全ての照明部に対応する撮像が完了したものと判別されることで(ステップS14:Yes)、処理がステップS15に進むと、情報校正部35が、HDD24に記憶されている校正情報を用いて、RAM23に記憶した偏角分光情報をそれぞれ補正(校正)する。測定値算出部36は、ステップS16において、補正された偏角分光情報を用いて、後述するように各評価項目の測定値を算出する。具体的には、測定値算出部36は、偏角分光情報、偏角測色情報、BRDF情報、光輝感、粒子感、光沢、および、ヘーズの各測定値を算出し、算出した測定値をHDD24等の記憶部に記憶し、図19のフローチャートの処理が終了となる。
次に、図20は、写像性およびオレンジピールに対応する校正情報の取得動作の流れを示すフローチャートである。この図20のフローチャートにおいて、ステップS21では、ユーザが手動で、または、校正情報取得部34が、標準黒ガラスまたはミラーの移動機構を制御して、図14または図17に示した試料61の設置位置(分光カメラ装置1の撮像範囲内)に標準黒ガラス等を設置する。
ステップS22では、光源制御部31が、図14または図17に示した照明部15a〜15e、または、照明部15f〜15hのうち、いずれか一つの照明部を点灯制御する。また、ステップS23では、撮像制御部32が、点灯制御された照明部からの光が照射された標準黒ガラス等を、ワンショットで撮像するように、分光カメラ装置1を撮像制御する。校正情報取得部34は、標準黒ガラス等の撮像情報を、写像性およびオレンジピールに対応する校正情報として、図1のHDD24等の記憶部に記憶する。
実施の形態の試料測定装置は、一つずつ、順次、照明部を点灯制御しながら標準黒ガラス等を撮像する。ステップS24では、CPU21が、全ての照明部に対応する撮像が完了したか否かを判別する。CPU21により、全ての照明部に対応する撮像が完了していないものと判別された場合(ステップS24:No)、処理がステップS22に戻る。そして、再度、次に点灯駆動される照明部が、光源制御部31により点灯駆動され、撮像制御部32の制御で、分光カメラ装置1による標準黒ガラス等の撮像が繰り返し行われる。これにより、HDD24には、各照明部に対応する写像性およびオレンジピールの各校正情報が格納される。
これに対して、全ての照明部に対応する撮像が完了したものと判別された場合(ステップS24:Yes)、図20のフローチャートの処理が終了する。
次に、このように写像性およびオレンジピールの各校正情報を取得すると、実施の形態の試料測定装置は、図21のフローチャートに示すように、試料の撮像を行うことで照明部毎の偏光分光情報を取得し、各偏光分光情報を用いて、写像性およびオレンジピールの各評価項目の測定値を算出する。
図21のフローチャートにおいて、ステップS31では、ユーザが手動で、または、校正情報取得部34が移動機構を制御して、図14または図17に示すように、分光カメラ装置1の撮像範囲内に試料61を設置する。ステップS32では、光源制御部31が、図14または図17に示した照明部15a〜15e、または、照明部15f〜15hのうち、いずれか一つの照明部を点灯制御する。また、ステップS33では、撮像制御部32は、点灯制御された照明部からの光が照射された試料61を、ワンショットで撮像するように、分光カメラ装置1を撮像制御する。撮像制御部32は、試料61の撮像情報である上述の偏角分光情報を、図1のRAM23等の記憶部に記憶する。
実施の形態の試料測定装置は、一つずつ、順次、照明部を点灯制御しながら試料61を撮像する。ステップS34では、CPU21が、全ての照明部に対応する撮像が完了したか否かを判別する。CPU21により、全ての照明部に対応する撮像が完了していないものと判別された場合(ステップS34:No)、処理がステップS32に戻る。そして、再度、次に点灯駆動される照明部が、光源制御部31により点灯駆動され、撮像制御部32の制御で、分光カメラ装置1による試料61の撮像が繰り返し行われる。これにより、HDD24には、各照明部に対応する各偏角分光情報が格納される。
次に、ステップS34において、全ての照明部に対応する撮像が完了したものと判別されることで(ステップS34:Yes)、処理がステップS35に進むと、情報校正部35が、HDD24に記憶されている写像性およびオレンジピールの校正情報を用いて、RAM23に記憶した偏角分光情報をそれぞれ補正(校正)する。測定値算出部36は、ステップS36において、補正された偏角分光情報を用いて、後述するように写像性およびオレンジピールの測定値を算出し、算出した測定値をHDD24等の記憶部に記憶し、図21のフローチャートの処理が終了となる。
次に、測定値算出部36における、各評価項目の具体的な算出動作を説明する。この実施の形態の試料測定装置においては、予め計算された範囲にそれぞれ異なる角度で設置した複数の照明部から、試料に対して光を照射する。そして、試料からの反射光を、ワンショットで分光情報を取得可能な2次元の分光カメラ装置1で撮影し、撮像された2次元画像のX軸方向およびY軸方向の各画素の、照明方向および撮像方向の光学幾何条件の変化を利用して変角分光情報を得る。
実施の形態の試料測定装置では、面内を一様の試料と捉えている。測定値算出部36は、測定範囲として定めた角度範囲の偏角分光情報を用いて、偏角測色情報およびBRDF情報(双方向反射率分布関数:BRDF:Bi-directional Reflectance Distribution Function)を、以下のように算出する。
(偏角分光情報)
偏角分光情報は、試料表面上のある点x(i,j,θ,λ)における偏角分光反射特性であり、上述のように、分光カメラ装置1により、各波長の情報としてHDD24等の記憶部に保存される。「i」は、X軸における受光素子上の座標、「j」は、Y軸における受光素子上の座標、「θ」は、アスペキュラ角、「λ」は、分光した波長を示す。
(偏角測色情報)
測定値算出部36は、偏角測色情報を算出する場合、CIE(Commission Internationale de l'Eclairage:国際照明委員会)で定められている通り、まず、上述の偏角分光情報を用いて、三刺激値XYZを計算する。そして、三刺激値XYZを用いて、図22に示す演算を行うことで、L*a*b*表色系に変換し、これを、偏角測色情報とする。または、測定値算出部36は、三刺激値XYZを、図23に示す演算を行うことで、L*u*v*表色系に変換し、これを偏角測色情報とする。
(BRDF情報)
図24において、試料61の表面上のある点x(i,j)におけるBRDFは、入射と反射の双方向に依存し、照明15の方向(θi,φi)からの入射光の強さに対する分光カメラ装置1の撮像方向(θr,φr)への反射光の強さの比として定義される。図24に示す角度Qはθi、角度Rはφi、角度Sはθr、角度Tはφrを示している。赤(R),緑(G),青(B)の3チャネル毎にBRDFを定義する。以下の数7式のように、4つの角度QRSTをパラメータとするのが一般的であることから、測定値算出部36は、以下の数7式の演算により、BRDF情報を算出する。
∫BDRF(x,θi,φi,θr,φr,)・・・(数7式)
(質感パラメータの取得)
また、測定値算出部36は、光輝感、粒子感、光沢、ヘーズ、写像性およびオレンジピール等の質感については、それぞれ以下のように測定値を算出する。
(光輝感)
分光カメラ装置1は、試料61に対する分解能が、1画素あたり、10〜100μmの分解能の光学構成を有している。そして、分光カメラ装置1は、ハイダイナミックレンジ技術を用いて、例えば18ビット以上のダイナミックレンジで試料61の撮像を行う。
測定値算出部36は、照明角度毎、分光波長毎に強度ヒストグラムを計算し、角度および波長毎の光輝面積、光輝強度、および、光輝分散を算出する。具対的には、測定値算出部36は、例えば波長555nmにおいて、角度10度±2.5度の範囲毎に強度ヒストグラムを計算し、一定画素数以上の強度ヒストグラムを算出する。なお、この例では10度毎に計算しているが、例えば5度毎等、他のアスペキュラ角度で強度ヒストグラムを計算してもよい。
図25に、アスペキュラ角度10度、20度、30度の強度ヒストグラムを計算する領域を示す。また、図26に、アスペキュラ角度10度、20度、30度の強度ヒストグラムを示す。図25に示すように、アスペキュラ角度10度におけるピークの画素数を「光輝面積AR1」、アスペキュラ角度20度におけるピークの画素数を「光輝面積AR2」、アスペキュラ角度30度におけるピークの画素数を「光輝面積AR3」とする。また、図26において、アスペキュラ角度10度におけるピークの光輝強度を「光輝強度K1」、アスペキュラ角度20度におけるピークの光輝強度を「光輝強度K2」、アスペキュラ角度30度におけるピークの光輝強度を「光輝強度K3」とする。さらに、アスペキュラ角度10度におけるヒストグラムの光輝分散は「光輝分散B1」、アスペキュラ角度20度におけるヒストグラムの光輝分散は「光輝分散B2」、アスペキュラ角度30度におけるヒストグラムの光輝分散は「光輝分散B3」とする。
この場合において、角度θにおける光輝感パラメータS(θ)は、一例として、「S_area(θ)」、「S_strength(θ)」および「S_variance(θ)」の3つのパラメータで表すことができる。「S_area(θ)」のパラメータは、光輝面積(ピークの画素数)AR1,光輝面積AR2,光輝面積AR3で表される。「S_strength(θ)」のパラメータは、ピークの光輝強度K1、光輝強度K2、光輝強度K3で表される。「S_variance(θ)」のパラメータは、光輝分散B1,光輝分散B2,光輝分散B3で表される。
一例として、図27の(a)の符号を付した図に、粒子が細かいメタリック塗装の試料の画像を示し、図27の(b)の符号を付した図に、粒子が細かいメタリック塗装の試料の強度ヒストグラムを示す。また、図28の(a)の符号を付した図に、粒子が粗いメタリック塗装の試料の画像を示し、図28の(b)の符号を付した図に、粒子が粗いメタリック塗装の試料の強度ヒストグラムを示す。さらに、図29の(a)の符号を付した図に、パール塗装の試料の画像を示し、図29の(b)の符号を付した図に、パール塗装の試料の強度ヒストグラムを示す。なお、図27〜図29は、試料を垂直方向から撮像(図17参照)した際の画像および強度ヒストグラムである。図1に示す情報処理装置4は、このような分光カメラ装置1で撮像された試料の画像、および、算出した強度ヒストグラムを、モニタ装置5に表示する。
(粒子感)
分光カメラ装置1は、試料61に対する分解能が、1画素あたり、10〜100μmの分解能の光学構成を有している。そして、分光カメラ装置1は、ハイダイナミックレンジ技術を用いて、例えば18ビット以上のダイナミックレンジで試料61の撮像を行う。
測定値算出部36は、照明角度毎の粒子画像の照明の正反射光以外の拡散光と判定した画素のみを用いて、画像の再構成を行う。すなわち、図26の強度ヒストグラムに示す例を用いて説明すると、測定値算出部36は、ピークの画素数の「光輝面積AR2」および「光輝面積AR3」を除いた画素のみを用いて、画像の再構成を行う。
そして、測定値算出部36は、再構成した画像から明るい箇所および暗い箇所の分散値を算出し、算出した分散値を粒子感の測定値とする。正反射光は、ノイズである場合も多く、粒子感の演算が不正確なものとなるおそれがある。しかし、正反射光以外の拡散光に対応する画素のみを用いて、上述の画像の再構成および分散値の算出を行うことにより、粒子感の正確な数値化を図ることができる。なお、分散値が小さければ、塗装面に対して塗料の粒子が均一に分散していることを示し、分散値が大きければ、塗装面に対して塗料の粒子がまばらに分散していることを示す。なお、均一性の数値化は、画像のエントロピーを用いて算出してもよいし、フーリエ解析によって算出してもよい。
(光沢)
測定値算出部36は、光沢の測定値を算出する場合、鏡面反射光を撮像した画素について、人間の視感度である555nmの分光強度情報を用いる。そして、測定値算出部36は、日本工業規格(JIS) Z8741−1997 鏡面光沢度−測定方法(Specular glossiness Methods of measurement)に準じた、以下の数8式の演算を行うことで、光沢の測定値を算出する。
Gs(θ)=φs/φos*Gos(θ)・・・(数8式)
数8式において、「φs」は、規定された入射角θに対する試料面からの鏡面反射光束を示す。「φos」は、規定された入射角θに対する標準面からの鏡面反射光束を示す。「Gos(θ)」は、使用した標準面の光沢度(%)を示す。なお、標準面としては、標準黒ガラスまたは標準ミラーを用いてもよい。
また、測定値算出部36は、三刺激値XYZを変換した上述のL*a*b*表色系の情報からフロップインデックス(Flop Index)を算出し、フロップ特性(明るさの変化の度合い)を算出する。フロップインデックスとは、角度毎のL*a*b*表色系の情報の値と、ハイライトとシェードの間で見られる明度の相対的な変化である。
フロップインデックスの計算式としては、測定値算出部36は、デュュポン社(Dupont社)が開発した、以下の数9式を用いる。
Flop Index=2.69*(L*15−L*110)1.11/(L*45)0.85・・・(数9式)
なお、45度で正規化せずに、単にハイライト(15度)とシェード(110度)の差をフロップインデックスとしてもよい。
(ヘーズ)
測定値算出部36は、正反射光と正反射光から1.9度〜3度ずれた試料面について、人の視感度である555nmの分光強度情報から、例えば図30に示す「ASTM E−430 Test Method B」の演算を行い、ヘーズの測定値を算出する。図30の例は、20度の鏡面反射光の例であるが、角度に応じて拡張可能である。例えば、図14の例の場合、45度の鏡面反射光の例である。
次に、写像性およびオレンジピールの測定値を算出する場合、図31に示すように、投影機1から試料に投影した所定の短波長のスリット光80を、分光カメラ装置1で撮像する。測定値算出部36は、人間の視感度である555nm付近の分光強度情報を用いて、例えば以下の数10式に示すASTM D5767−95 Test Method Bの演算を行い、写像性およびオレンジピールの測定値を算出する。
C=((M−m)/(M+m))×100・・・(数10式)
なお、数10式における、「C」は写像性の測定値、「M」は分光強度情報の最大値、「m」は分光強度情報の最小値を示している。図32の(a)の符号を付した図、および、(b)の符号を付した図に、分光強度情報波形の一例を示す。
(オレンジピール)
オレンジピールの測定値を算出する場合、図31に示したように、投影機3からスリット光80を投影して分光カメラ装置1で撮像するのであるが、オレンジピールの測定時には、所定の長い波長のスリット光を投影して撮像を行う。測定値算出部36は、人の視感度である555nm付近の分光強度情報を用いて、例えば上述の数10式を用いて、オレンジピールの測定値を算出する。オレンジピールについては、周期の長いスリット光80を用いることで、写像性よりも周期の長い大局的な凹凸特性を評価することができる。
なお、図1に示す情報処理装置4は、このように算出された偏角分光情報、偏角測色情報、BRDF情報、光輝感、粒子感、光沢、ヘーズ、写像性およびオレンジピールの各測定値をモニタ装置5に表示する。ユーザは、表示された各測定値から、試料を総合的に評価することができる。
以上の説明から明らかなように、第1の実施の形態の試料測定装置は、計算式によって指定される範囲に設置された複数の角度から試料61に照明を照射し、その反射光をワンショットで、分光情報の取得が可能な2次元の分光カメラ装置1で撮像する。また、試料61の2次元画像内のX軸方向およびY軸方向の画素毎の照明方向と撮像方向の光学幾何条件の変化を利用して偏角分光情報を得る。そして、面内を一様の試料として捉え、測定範囲として定めた角度範囲の偏角分光情報、偏角測色情報、BRDF情報を得る。
また、試料61の質感については、それぞれ以下のようにして数値化した測定情報を算出する。すなわち、光輝感の算出は、以下のようにして行う。試料に対して、1画素あたり、10〜100μmの分解能を有する分光カメラ装置1を用い、ハイダイナミックレンジ技術を使用し、18ビット以上のダイナミックレンジで撮影する。照明角度毎、分光波長毎の明度ヒストグラムを計算し、角度および波長毎の光輝面積と光輝強度を算出する。
粒子感の算出は、以下のようにして行う。試料に対して、1画素あたり、10〜100μmの分解能を有する分光カメラ装置1を用い、照明角度毎の粒子画像の照明の正反射光を避けた拡散光と判定された画素のみを用いて、画像の再構成を行い、その画像から明/暗の面積の均一性を粒子感として、数値化する。均一性は画像のエントロピーまたは分散を用いても良いし、フーリエ解析で求めてもよい。
光沢の算出は、以下のようにして行う。正反射光を撮像した画素については、人間の視感度である555nm付近の分光情報および標準ガラス板での校正結果を用いて、数値化する。
ヘーズ(濁度(曇度))の算出は、以下のようにして行う。正反射光と正反射光から1.9度〜3度ずれた試料面について、人間の視感度である555nm付近の分光情報および標準ガラス板での校正結果を用いて、数値化する。
写像性の算出は、以下のようにして行う。投影機3から投影するスリット光(波長短い)を分光カメラ装置1で撮像し、人間の視感度である555nm付近の分光情報および標準ガラス板での校正結果を用いて、数値化する。
オレンジピールの算出は、以下のようにして行う。投影機3から投影するスリット光(波長長い)を分光カメラ装置1で撮像し、人間の視感度である555nm付近の分光情報および標準ガラス板での校正結果を用いて、数値化する。
第1の実施の形態の試料測定装置は、パール色、または、メタリック色等の、見る角度で異なる色に見える光輝材を含む塗料の偏角分光情報、偏角色情報、BRDF情報、光輝感、粒子感、光沢、ヘーズ、写像性、オレンジピールを各評価項目の測定値を算出できる。このため、見る角度で異なる色に見える光輝材を含む塗料の総合的な定量評価を、一度に行うことができる。
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態の試料測定装置の説明をする。上述の第1の実施の形態の試料測定装置は、写像性の測定時に、スリット光81を照射して撮像するものであった。
これに対して、第2の実施の形態の試料測定装置は、写像性の測定時となると、パターン投影制御部33が、図33に示すように、分光カメラ装置1の撮像限界空間周波数までの空間周波数を含む2次元のホワイトノイズ82を、試料に投影するように、投影機3を制御する。そして、上述のように、光源制御部31が照明部を順次点灯駆動し、撮像制御部32が、分光カメラ装置1を撮像制御して、ホワイトノイズ82を撮像する。
ホワイトノイズは、フーリエ変換を行い、パワースペクトルにすると、全ての周波数で同じ強度となる。測定値算出部36は、ホワイトノイズの撮像画像をフーリエ変換することで得られる2次元空間周波数特性を、写像性の測定値として算出する。投影したホワイトノイズの撮像画像をフーリエ変換して得られる2次元空間周波数特性は、全ての入射像の空間周波数に対する写像の空間周波数応答そのものとなる。このため、上述のスリット光80の代わりに、ホワイトノイズを投影しても、写像性を算出できる他、上述の第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態の試料測定装置の説明をする。この第3の実施の形態の試料測定装置は、試料面の各位置の三次元形状の光学幾何条件を補正することで、測定対象面の形状に影響されない計測ができる。
具体的には、第3の実施の形態の試料測定装置の場合、投影機3から投影するスリット光、または、図34に示す3次元情報取得装置90によって、試料面の各位置の三次元形状を取得する。測定値算出部36は、取得された試料面の各位置の三次元形状から、試料の各位置の法線方向を算出する。そして、測定値算出部36は、算出した試料の各位置の法線方向、および、分光カメラ装置1、各照明部、試料の位置関係から、照明部からの光の正反射方向を補正した上で、アスペキュラ角を再計算する。これにより、試料面の各位置の三次元形状の光学幾何条件を補正することができる。
試料の偏角特性を測定する場合、試料が水平方向から1度傾いているだけで、偏角特性にもズレが生じる。しかし、第3の実施の形態の試料測定装置の場合、試料面の法線方向と、その幾何学的配置から、1度傾いた偏角特性のズレを校正して、算出を行うことができる。このため、試料の各位置の三次元形状から法線方向を計算し、照明の正反射方向を補正した上で、アスペキュラ角を計算し直すことで、測定対象面の形状に影響されない測定を行うことができ、各評価項目の、より正確な測定値を得られる他、上述の各実施の形態の同じ効果を得ることができる。
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態の試料測定装置の説明をする。上述の各実施の形態では、例えば図17に示す各照明部15f〜15hを、一つずつ点灯制御しながら、分光カメラ装置1において、ワンショットで撮像を行うものであった。
これに対して、第4の実施の形態の試料測定装置は、図35に示すように分光透過率特性がそれぞれ異なるフィルタ91,92,93を、各照明部15f〜15hの前面に設けている。なお、分光透過率特性がそれぞれ異なる塗料を各照明部15f〜15hに塗布してもよい。各フィルタ91,92,93の分光透過率特性は、図36に示すようになっている。一例ではあるが、図36において、実線のグラフがフィルタ91の分光透過率特性、点線のグラフがフィルタ92の分光透過率特性、一点鎖線のグラフがフィルタ93の分光透過率特性を示している。この図36からわかるように、各フィルタ91,92,93は、透過させる光の波長が所定分ずつずれている。
光源制御部31は、全ての照明部15f〜15hを同時に点灯制御する。なお、「同時に点灯制御」する場合、各照明部15f〜15hの点灯タイミングを一致させて一度に点灯制御する他、各照明部15f〜15hを、一つまたは複数ずつ点灯制御して、最終的に、全ての照明部15f〜15hを、同時に点灯制御してもよい。すなわち、各照明部15f〜15hが、同時に点灯している時間が存在するように、各照明部15f〜15hを点灯制御すればよい。
撮像制御部33は、全ての照明部15f〜15hが同時に点灯制御されている間に、1回の撮像動作を行うように分光カメラ装置1を撮像制御する。これにより、ワンショットで、各照明部15f〜15hに対応する偏角分光情報および偏角測色情報を、一度に取得することができる。このため、試料の測定時間を短縮化できる他、上述の各実施の形態と同じ効果を得ることができる。
上述の各実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な各実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。各実施の形態および各実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。