JP6390110B2 - 連続鋳造の開始方法 - Google Patents
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Description
連続鋳造が進行し、鋳片が連続鋳造機の機端(出側)に到達すると、鋳片に結合されたダミーバーは、鋳片から分離されて連続鋳造機外へと撤去され、また、ダミーバーが分離された鋳片は、更に鋳造方向下流の鋳片切断機へと搬送され切断されてスラブとなる。
このためダミーバーヘッドには、一般に締結溝が設けられており、上記した鋳型において、締結溝内に浸入した溶鋼を凝固させることで、鋳片とダミーバーヘッドとを機械的に嵌合させている。これにより、ダミーバーを鋳型の下流側へ向けて搬送することで、鋳片を鋳型から引き抜くことができる。
例えば、特許文献1では、凹溝(締結溝)を備えたダミーバーヘッドの形状(図11)を採用し、また、特許文献2では、アリザシ部(締結溝)を備えたダミーバーヘッドの形状(第4図)を採用している。
このため、鋳片とダミーバーヘッドとの間で焼き付きが発生し、連続鋳造機の機端でのダミーバーヘッドの持ち上げの際に、ダミーバーヘッドが鋳片から容易に分離できない場合があり、鋳片の変形(ダミーバーヘッドの持ち上げ方向への変形)を招いていた。更に、このように変形した鋳片を、前記した鋳片切断機へ搬送しようとすると、搬送設備との衝突を引き起こす等、生産を停止せざるを得ない事態を招く場合があった。
このため、上記した鋳片とダミーバーヘッドとの分離不良のトラブルを抑制できるものの、鋳片とダミーバーヘッドとの焼き付きは依然として発生するため、改善の余地があった。
この被覆により、溶鋼は、ダミーバーを構成している鋼に直接接触せず、セラミックス材料(溶射皮膜)に直接接触することになる。そして、セラミックス材料の採用により、溶射皮膜の割れ抑制、摩耗抑制、分離性向上が可能となり(第6頁17〜19行目)、溶鋼とダミーバーヘッドとの焼き付きをなくすことができる(第4頁13〜14行目)。
なお、特許文献3に記載の発明は、第1図に示している通り、垂直型連続鋳造機を前提とした発明であり、「ダミーバー10が不要となったときに、鋳片から横方向に力を加えて取り脱す」(第5頁16〜17行目)と記載している。この記載は、ダミーバーに対し、横方向に力を与えて鋳片とダミーバーとを分離することを意味し、一般に強制分離と呼ばれ、鋳片の変形が起こりにくい。つまり、この強制分離においては、上記したセラミックスの溶射皮膜と鋳片の密着の程度では、鋳片の変形が起こりにくいものと考えられる。
以上のことから、特許文献3は、ダミーバーを上方へ持ち上げることにより、鋳片からダミーバーを分離させることを前提とするものではなく、特許文献3では、前記した鋳片が変形するという問題を解決できない。
前記ダミーバーの溶鋼接触面に、強熱減量が10%以上40%以下である無機物粒子を予め塗布し、前記鋳型より下流に配置された二次冷却帯で、前記ダミーバーと前記鋳片との締結部分に冷却水を供給し、前記連続鋳造機の出側で、前記ダミーバーの上流側端部を上方に持ち上げ、前記鋳片から前記ダミーバーを分離する。
また、上記したように、鋳片とダミーバーとの分離は、無機物粒子の塗布と、二次冷却帯での注水タイミング(締結部分に冷却水を供給)の調整とを行うことで可能となるため、例えば、前記した特許文献3に記載の溶射のように、手間がかかる対策とは異なり、既設設備を用いた簡易な対処で、本願の課題を解決できる。
まず、本発明の一実施の形態に係る連続鋳造の開始方法を適用する連続鋳造機とダミーバーについて説明するが、この連続鋳造機とダミーバーには、例えば、特開2009−45641号公報に記載のものを使用できるため、以下、簡単に説明する。
上記した連続鋳造機は、ダミーバー(ダミーバーヘッド)を上方へ持ち上げて、鋳片からダミーバーを分離させることが可能な設備であれば、特に限定されるものではなく、例えば、垂直曲げ型と湾曲型のいずれでもよい。
なお、ダミーバーは、鋳型からの鋳片の引き抜きと、連続鋳造機の機端(出側)での撤去が可能な構成であれば、上記したリンク式のダミーバーに限定されるものではない。
このダミーバーヘッドには、鋳片との機械的な嵌合を行う締結溝が形成されている。なお、締結溝は、ダミーバー(ダミーバーヘッド)を持ち上げることにより、鋳片とダミーバーとの機械的嵌合を解除できる構成であれば、特に限定されるものではなく、例えば、前記した特許文献2に記載の形状を使用できる。
まず、ダミーバーをダミーバーカー(搬送台車)にセットした状態で、ダミーバーヘッドの溶鋼接触面に無機物粒子を塗布する。なお、無機物粒子の塗布は、溶鋼接触面の全てが覆われるように行えばよく、また、ダミーバーを鋳型内に挿入する前に予め実施できれば、塗布の時期は特に限定されるものではない。
ここで、溶鋼接触面とは、ダミーバーを鋳型に挿入し、鋳型に形成された空間部の底にダミーバーヘッドを配置した場合に、鋳型に供給される溶鋼と接触する領域であり、前記した結合溝の表面も含まれる。
このように、無機物粒子を坏土にして塗布することで、その強度を溶射皮膜に比べて十分に低下させることができ、ダミーバーと鋳片との分離時に、鋳片の変形を抑制できることにつながる。
特に、無機物粒子としては、前記したJIS K0067に記載の強熱減量試験により得られる強熱減量が、10%以上40%以下のものを使用することが好ましい。この無機物粒子は、炭酸塩から発生するCO2や、結晶水を含む無機物から発生するH2Oを原因として、強熱減量するものであり、無機物粒子から発生するガスにより、ダミーバーと鋳片との直接接触を緩和できると考えられる。なお、強熱減量の調整は、上記した無機物の配合量を調節することで実施できる。
従って、無機物粒子の強熱減量を10%以上40%以下としたが、上記した鋳片とダミーバーとの直接接触の緩和効果を更に高めるため、下限を15%、更には20%とすることが好ましい。
これにより、ダミーバーヘッドの溶鋼接触面と溶鋼(鋳片)との間には、上記した無機物粒子で構成される強度が低い皮膜(以下、単に皮膜ともいう)が存在するため、溶鋼とダミーバーヘッドとの直接接触を防止できる。
このとき、二次冷却帯に配置された冷却用ノズルを用いて、上記した皮膜を介して鋳片とダミーバーが嵌合している締結部分に、冷却水を供給する(吹き付ける)。
そこで本発明者らは、この締結部分に対して冷却水を供給することで、鋳片とダミーバーヘッドとの焼き付きを抑制できることを、新たに知見した。
なお、冷却水の供給開始後は、冷却水の供給を継続して行い、鋳片に対して冷却水を供給する。
この二次冷却帯での冷却水の供給は、従来、鋳片とダミーバーヘッドとの締結部分を避け、この締結部分よりも上流側の鋳片に対してのみ行っている。これは、例えば、ダミーバーヘッドにも冷却水を供給した場合、ダミーバーヘッド周囲に配置されるダミーバーの摺動部の潤滑油に冷却水がかかることを抑制、更には防止すること、等による。これについては、摺動部の防水に配慮すれば、鋳片とダミーバーヘッドとの締結部分に冷却水を供給することができる。
そして、ダミーバーが分離された鋳片を、更に鋳造方向下流の鋳片切断機へと搬送し切断して、スラブとする。
一方、前記した特許文献3に記載のセラミックス材料の溶射では、鋳片と溶射皮膜との間で焼き付きが発生した場合、溶射皮膜は強度が高いため割れにくく、また、溶射皮膜とダミーバーとの接着力も高いため、溶射皮膜がダミーバーから外れにくい。
更に、本願は、ダミーバー(ダミーバーヘッド)を上方に持ち上げることで、鋳片からダミーバーを分離できるため、前記した強制分離に必要な設備を省略できる場合もある。
以上のことから、本発明の連続鋳造の開始方法を用いることで、ダミーバーの上方への持ち上げによって鋳片からダミーバーを分離させることを前提に、鋳片とダミーバーとの分離を、鋳片の変形を抑制、更には防止しながら、容易に行うことができる。
ここでは、垂直曲げ型の連続鋳造機を使用し、ダミーバーの上方への持ち上げによって鋳片からダミーバーを分離させる試験を行い、ダミーバーヘッドの溶鋼接触面への無機物粒子の塗布の影響と、鋳片とダミーバーヘッドとの締結部分への二次冷却帯での冷却水の供給の影響について、それぞれ調査した。なお、ダミーバーにはリンク式のものを用い、ダミーバーヘッドの締結溝の形状を、前記した特許文献2に記載の形状とした。
また、二次冷却帯での冷却水の供給量は、鋳片の冷却を行う場合と同程度とした。
なお、鋳片とダミーバーの分離時における鋳片の搬送速度は、1.0m/分とし、スラブ(鋳片)のサイズは、幅1.0m、厚み0.25mとした。
具体的には、1年あたりの電流値の増大回数を、基準となる従来例を「1」として指標化し、「0.5以下」を合格した。なお、電流値の増大回数とは、吊り上げ機の通常時の最大負荷電流値を「1.0」とし、「2.0」より大きくなった場合(鋳片が変形する前兆)の回数である。
試験条件と評価結果を、表1に示す。
当然のことながら従来例では、鋳片とダミーバーヘッドとの焼き付きが多く発生した。
この従来例の焼き付き頻度を「1」とした。
このように、比較例1は、無機物粒子の塗布がなかったため、鋳片とダミーバーヘッドとの焼き付きが発生し、焼き付き頻度は従来例と同程度であった(焼き付き頻度:1)。
比較例2は、アルミナ溶射を行ったダミーバーヘッドを用いたが、鋳片と溶射皮膜との間で焼き付きが発生し、また溶射皮膜がダミーバーから外れにくいため、焼き付き頻度は従来例より僅かに改善される程度であった(焼き付き頻度:0.9)。
比較例3は、無機物粒子の塗布により、鋳片とダミーバーヘッドとの焼き付きを抑制できたが、締結部分への冷却水の供給がなかったため、焼き付き頻度は比較例2より僅かに改善される程度であった(焼き付き頻度:0.8)。これは、二次冷却帯の通過中に、締結部分が二次冷却帯の湾曲に沿った曲げ応力を受け、鋳片とダミーバーヘッドとの直接接触を招き、両者の焼き付きを招いたためと考えられる。
このように、参考例は、無機物粒子の塗布と、締結部分への冷却水の供給を行っているため、焼き付き頻度は従来例より大幅に改善された(焼き付き頻度:0.4)。
このように、実施例1は、強熱減量が前記した最適範囲(10〜40%)内の無機物粒子を使用したため、前記した鋳片とダミーバーとの直接接触の緩和効果が得られたと考えられ、焼き付き頻度が参考例よりも更に改善された(焼き付き頻度:0.2)。
Claims (1)
- 垂直曲げ型又は湾曲型の連続鋳造機の鋳型内に、上流側端部に締結溝が設けられたダミーバーを挿入した後、溶鋼を供給し、前記ダミーバーと前記鋳型で鋳造される鋳片を、前記締結溝で結合した状態で前記鋳型の下流側へ向けて搬送する連続鋳造の開始方法において、
前記ダミーバーの溶鋼接触面に、強熱減量が10%以上40%以下である無機物粒子を予め塗布し、前記鋳型より下流に配置された二次冷却帯で、前記ダミーバーと前記鋳片との締結部分に冷却水を供給し、前記連続鋳造機の出側で、前記ダミーバーの上流側端部を上方に持ち上げ、前記鋳片から前記ダミーバーを分離することを特徴とする連続鋳造の開始方法。
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