(1.部品実装機1の構成)
まず、後述する本発明の第1〜第4実施形態の部品装着方法を実施する部品実装機1の構成について、図1を参考にして説明する。図1は、第1〜第4実施形態の部品装着方法を実施する部品実装機1の構成を示す平面図である。図1の紙面左側から右側に向かう方向が基板Kの搬送方向にあたるX軸方向、紙面下側の後方から紙面上側の前方に向かう方向が部品実装機1の長手方向にあたるY軸方向である。部品実装機1は、基板搬送装置2、部品供給装置3、XYロボット4、部品移載装置5、部品認識用カメラ6、および制御装置7などが機台9に組み付けられて構成されている。基板搬送装置2、部品供給装置3、XYロボット4、部品移載装置5、および部品認識用カメラ6は、制御装置7から制御され、それぞれが所定の作業を行うようになっている。
基板搬送装置2は、一対のガイドレール21、22、一対のコンベアベルト23、24、パルスモータ25、および図略のクランプ装置などで構成されている。一対のガイドレール21、22は、機台9の上面中央を横断してX軸方向に延在し、かつ互いに平行して機台9に組み付けられている。基板Kの停止位置は、一対のガイドレール21、22の内側に設定されており、基板Kの搬送方向にあたるX軸方向に位置変更可能とされている。一対のガイドレール21、22の向かい合う内側に、それぞれ図略の複数のガイドプーリが配置されている。複数のガイドプーリには、無端環状の一対のコンベアベルト23、24が装架されている。一対のコンベアベルト23、24は、機台9の下方に配置されたパルスモータ25から図略の駆動プーリを介して輪転駆動される。一対のコンベアベルト23、24は、コンベア搬送面に基板Kの両縁をそれぞれ戴置した状態で順方向に輪転して、基板Kを停止位置に搬入する。基板Kの最初の停止位置は、部品移載装置5が初回の部品装着サイクルを最も効率良く実施できる位置に定められる。
一対のガイドレール21、22の間の下方には、図略のクランプ装置が設けられている。クランプ装置は、停止位置の基板Kを押し上げ、水平姿勢にクランプして位置決めする。パルスモータ25は、正転および逆転の切り替えが可能であり、かつ回転量も自在に制御される。したがって、一対のコンベアベルト23、24は、順方向および逆方向の輪転の切り替えが可能であり、位置決めされていない基板Kの停止位置を自在に変更できる。部品移載装置5による基板Kへの部品装着動作が終了すると、クランプ装置は基板Kを解放する。次いで、一対のコンベアベルト23、24は、順方向に輪転して基板Kを搬出する。
部品供給装置3は、機台9のY軸方向の後方寄りに配設されている。部品供給装置3は、複数のフィーダ装置31がX軸方向に列設されて構成されている。各フィーダ装置31は、本体部32と、本体部32の後部に設けられた供給リール33と、本体部32の前端上部に設けられた採取位置34とを有している。供給リール33には、多数の部品が所定ピッチで収納された図略の細長いテープが巻回保持されている。このテープが所定ピッチずつ繰り出され、部品が収納状態を解除されて採取位置34に順次供給されるようになっている。なお、複数のフィーダ装置31の一部を別方式の部品供給装置、例えば、トレー式部品供給装置に置き換えてもよい。
XYロボット4は、部品移載装置5を水平2軸方向に駆動する。XYロボット4は、一対のY軸レール41、42、Y軸スライダ43、ならびに、図略のX軸サーボモータ、X軸ボールねじ送り機構、Y軸サーボモータ、およびY軸ボールねじ送り機構などで構成されている。一対のY軸レール41、42は、機台9の両方の側面寄りに基板搬送装置2よりも高く配置され、Y軸方向に延在している。Y軸レール41、42上には、X軸方向に長いY軸スライダ43が装架されている。Y軸スライダ43は、Y軸サーボモータおよびY軸ボールねじ送り機構によって、Y軸方向に駆動される。
部品移載装置5は、Y軸スライダ43に装架されている。部品移載装置5は、X軸サーボモータおよびX軸ボールねじ送り機構によって、X軸方向に駆動される。部品移載装置5は、負圧により部品を吸着採取して基板Kに装着する吸着ノズルを1本または複数本もつノズルツール51を有している。ノズルツール51は、固定されていてもよく、部品装着サイクルの変わり目に交換可能とされていてもよい。部品移載装置5は、さらに、ノズルツール51に並んで配置された基板認識用カメラ52を有している。基板認識用カメラ52は、基板Kに付設されたフィデューシャルマークを撮像して、基板Kの正確な停止位置を検出する。
制御装置7からの制御により、部品移載装置5は、始めに第1部品装着サイクルを実施し、続いて第2部品装着サイクル以降を繰り返して実施する。部品移載装置5は、各部品装着サイクルにおいて、まず、部品供給装置3の部品種ごとに定まる採取位置34から部品を採取する。次に、部品移載装置5は、搬送方向(X軸方向)および搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に移動して、部品認識用カメラ6の上方で一旦停止し、あるいは、部品認識用カメラ6の上空を通過する。3番目に、部品移載装置5は、停止位置に停止された基板Kに移動して、採取した部品を基板Kの所定の装着位置に装着する。各部品装着サイクルの最後に、部品移載装置5は、部品認識用カメラ6を経由しないで部品供給装置3に復動する。
部品認識用カメラ6は、基板搬送装置2と部品供給装置3との間の機台9の上面に、上向きに設けられている。部品認識用カメラ6の中央に、撮像位置61が設定されている。部品認識用カメラ6は、部品移載装置5が部品供給装置3から基板Kに移動する途中で、吸着ノズルに吸着されている部品の状態を撮像する。部品認識用カメラ6の撮像データによって部品の吸着姿勢の誤差や回転角のずれなどが判明すると、制御装置7は、必要に応じて部品装着動作を微調整し、装着が困難な場合には当該の部品を廃棄する制御を行う。
制御装置7は、部品装着サイクルごとに基板Kに装着する部品の種類、装着位置、装着順序、当該の部品を供給するフィーダ装置31などを指定したデータからなる装着シーケンスを保持している。基板Kへの部品装着動作が効率的となるように、複数の部品装着サイクルの順序および指定内容は、予め最適化されて設定されている。制御装置7は、部品認識用カメラ6および基板認識用カメラ52の撮像データ、ならびに図略のセンサの検出データなどを取得する。その上で、制御装置7は、装着シーケンスに設定された部品装着サイクルの順序にしたがって部品装着動作を制御する。また、制御装置7は、生産完了した基板Kの生産数や、部品の装着に要した装着時間、部品の吸着エラーの発生回数などの稼動状況データを逐次収集して更新する。本発明の各実施形態の部品実装機の部品装着方法は、主に制御装置7の演算処理機能によって実施される。
(2.基板Kの説明)
次に、各実施形態で生産する基板Kについて例示説明する。図2は、各実施形態で生産する基板Kを例示した平面図である。基板Kは、複数の小片基板K1〜K30の生産の基になる多数枚取り基板である。図2の例で、基板Kの幅方向(Y軸方向)に5枚の小片基板、長手方向(X軸方向)に6枚の小片基板が格子状に配置されている。基板Kへの部品装着動作およびリフロー処理が実施された後に、30枚の第1〜第30小片基板K1〜K30が分離されて生産される。
基板Kの対角線上の2つの頂点の近傍に、フィデューシャルマークの1種であるグローバルマークGMが付設されている。グローバルマークGMは、基板Kの正確な停止位置を検出するためのマークである。また、各小片基板K1〜K30のそれぞれの対角線上の2つの頂点の近傍に、フィデューシャルマークの1種であるローカルマークLMが付設されている。ローカルマークLMは、小片基板K1〜K30ごとに正確な位置を検出して、部品を装着する装着位置Pの精度を高めるためのマークである。以降の説明を簡易にするため、各小片基板K1〜K30に1個の部品のみを装着し、その装着位置Pが各小片基板K1〜K30の中心である場合を想定する。
グローバルマークGMおよびローカルマークLMの使用方法にはバリエーションが有り、本実施形態では次の2通りを考える。すなわち、第1マーク使用方法では、基板Kを搬入して最初の停止位置に停止させたとき、基板認識用カメラ52によりグローバルマークGMを撮像する。これにより、基板Kの種類が誤っていないことを確認して、各ローカルマークLMのおおよその位置を把握できる。そして、基板Kの停止位置を変更してもグローバルマークGMの再度の撮像は行わず、基板Kの搬送距離から各ローカルマークLMのおおよその位置を演算する。また、部品装着サイクルの途中で部品を各小片基板K1〜K30の装着位置Pに装着する直前に、基板認識用カメラ52によりローカルマークLMを撮像して、当該の小片基板K1〜K30の正確な位置を検出する。
一方、第2マーク使用方法では、ローカルマークLMを未使用または不付きとする。そして、基板Kを最初の停止位置に停止させたとき、および停止位置を変更した都度、基板認識用カメラ52によりグローバルマークGMを撮像して停止位置を検出する。また、部品装着サイクルの途中で部品を小片基板K1〜K30の装着位置Pに装着するときには、グローバルマークGMの撮像によって検出された基板Kの停止位置に基づいて当該の装着位置Pを決定する。この方法は、グローバルマークGMのみが付設された多数枚取りでない一般の基板における装着位置Pの決定方法と同じである。
(3.第1実施形態の部品実装機の部品装着方法)
次に、第1実施形態の部品実装機1の部品装着方法について、図3〜図6を参考にして説明する。第1実施形態では、部品移載装置5が1本の吸着ノズルをもち、1個の部品を採取する場合を考える。また、第1実施形態では、次回の部品装着サイクルのみを演算対象とし、第1マーク使用方法が採用されているものとする。図3は、第1実施形態において、制御装置7が実行する演算処理フローの図である。制御装置7は、部品移載装置5が部品装着サイクルを順次実施する進捗状況に応じ、未だ実施されていない部品装着サイクルを対象として、リアルタイムで演算処理フローを実行する。
図3のステップS1で、制御装置7は、演算対象とする次回の部品装着サイクルを設定する。例えば、基板Kが搬入された直後であれば、制御装置7は第1部品装着サイクルを設定する。また例えば、第n部品装着サイクルを実施している時点では、第(n+1)部品装着サイクルを設定する。
次のステップS2で、制御装置7は、未変更時所要時間TAを推定する。未変更時所要時間TAは、今回の部品装着サイクルで基板Kを停止した現在停止位置を変更しない場合に、部品移載装置5が次回の部品装着サイクルの実施に要する時間である。未変更時所要時間TAは、次の(式1)の演算により推定される。
TA=Ta1+Ta2+Ta3+Ta4+Ta5+Ta6 ………………(式1)
ただし、Ta1:採取位置34における部品の採取時間
Ta2:採取位置34から部品認識用カメラ6までの移動時間
Ta3:部品認識用カメラ6による撮像時間
Ta4:部品認識用カメラ6から現在停止位置の基板Kの装着位置ま
での移動時間
Ta5:装着位置における部品の装着時間
Ta6:現在停止位置の基板Kの装着位置から次次回の部品装着サイ
クルで吸着する部品の採取位置34まで戻る復動時間
ここで、上記した採取時間Ta1および装着時間Ta5は、使用している吸着ノズルの種類および部品の種類に応じて予め定められる。また、第1マーク使用方法が採用されているので、部品を各小片基板K1〜K30の装着位置Pに装着する直前に、基板認識用カメラ52によりローカルマークLMを撮像する。このときの撮像時間および画像データの画像処理時間からなる第1位置検出時間は、装着時間Ta5に含まれる。
また、移動時間Ta2は、採取位置34と部品認識用カメラ6の撮像位置61との固定された位置関係に応じて予め定められる。さらに、撮像時間Ta3は、撮像によって取得される画像データの画像処理時間を含んで予め定められる。ただし、部品移載装置5が部品認識用カメラ6の上空を通過して、部品認識用カメラ6がオンザフライ撮像( On the Fly 撮像)を行う場合、撮像時間Ta3は概ねゼロとなる。
採取時間Ta1、移動時間Ta2、撮像時間Ta3、および装着時間Ta5が一定値であるのに対し、移動時間Ta4および復動時間Ta6は、基板Kの停止位置に依存して変化する。したがって、制御装置7は、部品装着サイクルごとに移動時間Ta4および復動時間Ta6を演算する(詳細後述)。未変更時所要時間TAを推定すると、制御装置7は、演算処理フローの実行を次回停止位置推定ステップS3に進める。ステップS1およびステップS2は、本発明の未変更時推定ステップに相当する。
次回停止位置推定ステップS3で、制御装置7は、次回の部品装着サイクルを最も効率良く実施できる基板Kの次回停止位置を推定する。次回停止位置の具体的な推定方法は、後述する。次いで、制御装置7は、演算処理フローの実行を位置変更時推定ステップS4に進める。
位置変更時推定ステップS4で、制御装置7は、位置変更時所要時間TBを推定する。位置変更時所要時間TBは、基板Kの停止位置を現在停止位置からステップS3で推定した次回停止位置に変更する場合に、部品装着サイクルを終了するまでの所要時間である。位置変更時所要時間TBは、基板Kの停止位置の変更に要する位置変更時間TC、および次回の部品装着サイクルの実施に要するサイクル所要時間TDから演算により推定できる。
ここで、位置変更時間TCは、次の(式2)の演算により推定される。
TC=Tc1+Tc2 …………………………………………………………(式2)
ただし、Tc1:基板Kを現在停止位置から次回停止位置まで搬送して停止さ
せる搬送時間
Tc2:基板認識用カメラ52によりグローバルマークGMを撮像し
て次回停止位置を検出する第2位置検出時間
上記した第2位置検出時間Tc2は、第1マーク使用方法で発生せず、第2マーク使用方法のみで発生する。したがって、第1マーク使用方法が採用された第1実施形態では、第2位置検出時間Tc2=0となる。
また、サイクル所要時間TDは、次の(式3)の演算により推定される。
TD=Ta1+Ta2+Ta3+Td4+Ta5+Td6 ………………(式3)
ただし、Ta1〜Ta3、Ta5:(式1)に同じ
Td4:部品認識用カメラ6から次回停止位置の基板Kの装着位置ま
での移動時間
Td6:次回停止位置の基板Kの装着位置から次次回の部品装着サイ
クルで吸着する部品の採取位置34まで戻る復動時間
(式3)のサイクル所要時間TDと(式1)の未変更時所要時間TAとを比較すれば分かるように、基板Kの停止位置を変更すると、移動時間Td4および復動時間Td6の2項目のみが変化する。ここで、基板Kの次回停止位置は次回の部品装着サイクルを最も効率良く実施できるように推定されているので、(移動時間Td4+復動時間Td6)≦(移動時間Ta4+復動時間Ta6)となる。したがって、サイクル所要時間TD≦未変更時所要時間TAとなる。ただし、部品移載装置5の移動はX軸方向およびY軸方向で別々に駆動されるので、サイクル所要時間TDが未変更時所要時間TAに対してどれだけ短縮されるかは、ケースバイケースとなる。
次に、制御装置7は、位置変更時間TCおよびサイクル所要時間TDから、位置変更時所要時間TBを演算する。ここで、搬送時間Tc1で表される位置変更時間TCの少なくとも一部は、採取時間Ta1、移動時間Ta2、撮像時間Ta3、および移動時間Td4の一部とオーバーラップ可能である。つまり、部品移載装置5が採取位置34から部品を採取して部品認識用カメラ6に移動し装着位置に近づくまでの間に基板Kの次回停止位置への位置変更が終了していれば、搬送時間Tc1は無視できる。しかしながら、搬送時間Tc1が長くかかり、部品移載装置5が装着位置に移動する時点で、基板Kの位置変更の終了を待つ待ち時間が発生する場合がある。この場合、搬送時間Tc1の一部である待ち時間は、サイクル所要時間TDとは別に必要になる。制御装置7は、搬送時間Tc1の長短の条件に応じて、待ち時間とサイクル所要時間TDとを加算して位置変更時所要時間TBを推定する。推定後に、制御装置7は、演算処理フローの実行をステップS5に進める。
ステップS5で、制御装置7は、未変更時所要時間TAと位置変更時所要時間TBとの大小関係を比較する。制御装置7は、未変更時所要時間TAが位置変更時所要時間TBより長いときに演算処理フローの実行をステップS6に進め、そうでないときに演算処理フローの実行をステップS8に進める。なお、未変更時所要時間TAと位置変更時所要時間Tとが等しいときの分岐先は、ステップS6およびステップS8のどちらに定めてもよい。換言すれば、図3のステップS5の条件判定用の不等式(TA>TB?)は、等号を含んだ不等号≧であってもよい。
ステップS6で、制御装置7は、基板Kの停止位置を現在停止位置から次回停止位置に変更すると決定し、演算処理フローの実行をステップS7に進める。ステップS5およびステップS6は、本発明の停止位置決定ステップに相当する。ステップS7で、制御装置7は、基板搬送装置2を制御して基板Kの現在停止位置を次回停止位置に変更し、演算処理フローの実行をステップS9に進める。一方、ステップS8で、制御装置7は、基板Kの現在停止位置を変更しないと決定し、演算処理フローの実行をステップS9に進める。
ステップS9で、制御装置7は、XYロボット4および部品移載装置5を制御して次回の部品装着サイクルを実施する。これにより、次回の部品装着サイクルは今回実施した部品装着サイクルとなり、次次回の部品装着サイクルが次回の部品装着サイクルに繰り上がる。制御装置7は、演算処理フローの実行をステップS1に戻し、以下繰り返す。
次に、第1実施形態の部品実装機の部品装着方法の作用例について説明する。第1実施形態における第1装着シーケンスは、第1〜第30部品装着サイクルのデータからなる。第1装着シーケンスの第1部品装着サイクルには、部品Bを特定の採取位置34から採取して、第1小片基板K1の装着位置Pに装着する旨が指定されている。以下同様に、第n部品装着サイクルには、部品Bを特定の採取位置34から採取して、第n小片基板Knの装着位置Pに装着する旨が指定されている(n=2〜30)。
図4は、第1実施形態において、第1〜第9部品装着サイクルが終了し、第10部品装着サイクルで部品移載装置5が部品Bを第10小片基板K10の装着位置Pに装着した直後の状況を示した図である。図4において、部品Bを採取する特定の採取位置34が×印で略示されている。また、部品認識用カメラ6の撮像位置61も×印で略示されている。図4の矢印A1に示されるように、部品移載装置5は、第10部品装着サイクルの最後に、第10小片基板K10の装着位置Pから採取位置34に復動する。制御装置7は、この復動の制御と並行して、図3に示された演算処理フローを実行する。
制御装置7は、まず、演算対象とする次回の第11部品装着サイクルを設定する。制御装置7は、次に(式1)を用いて未変更時所要時間TAを推定する。図5は、第1実施形態の未変更時推定ステップ(S1、S2)を説明する図である。制御装置7は、基板Kの現在停止位置を変更しない条件で、移動時間Ta4および復動時間Ta6を演算する。移動時間Ta4は、矢印A2に示されるように、部品移載装置5が部品認識用カメラ6の撮像位置61から第11小片基板K11の装着位置Pまで移動するのに要する時間である。制御装置7は、撮像位置61と第11小片基板K11の装着位置Pとの既知である位置関係、ならびにXYロボット4の諸性能などに基づいて移動時間Ta4を演算する。
同様に、復動時間Ta6は、矢印A3に示されるように、部品移載装置5が第11小片基板K11の装着位置Pから採取位置34まで復動するのに要する時間である。制御装置7は、第11小片基板K11の装着位置Pと採取位置34との既知である位置関係、ならびにXYロボット4の諸性能などに基づいて復動時間Ta6を演算する。XYロボット4の諸性能として、例えば、X軸方向およびY軸方向の最高移動速度や加減速能力などを例示できる。
制御装置7は、次に基板Kの次回停止位置を推定する。図6は、第1実施形態の次回停止位置推定ステップS3および位置変更時推定ステップS4を説明する図である。図6において、矢印A4に示されるように次回停止位置に位置変更された基板Kが実線で示され、現在停止位置は破線で示されている。
制御装置7は、搬送方向において、次回の部品装着サイクルで装着する1個の部品の装着位置が、部品認識用カメラの撮像位置と、次次回の部品装着サイクルで採取する1個の部品の採取位置との中間に一致する基板の位置を次回停止位置とする。具体的に、制御装置7は、図6に示されるように、部品認識用カメラ6の撮像位置61と採取位置34とのX軸方向における離間距離2Lの中間位置M1を求める。そして、制御装置7は、X軸方向において第11小片基板K11の装着位置Pが中間位置M1に一致する基板Kの位置を次回停止位置とする。
制御装置7は、次に位置変更時所要時間TBを推定する。制御装置7は、まず(式2)を用いて基板Kの位置変更に要する位置変更時間TCを推定する。ここで、第1マーク使用方法が採用されているので第2位置検出時間Tc2は発生せず、位置変更時間TCは搬送時間Tc1で表される。制御装置7は、基板Kの搬送距離LK1、および基板搬送装置2の諸性能などに基づいて位置変更時間TCを演算する。基板搬送装置2の諸性能として、例えば、コンベアベルト23、24の最高輪転速度や加減速能力、クランプ装置のクランプ所要時間および解放所要時間などを例示できる。
続いて、制御装置7は、(式3)の演算によりサイクル所要時間TDを推定する。制御装置7は、基板Kが次回停止位置に変更された条件で、移動時間Tb4および復動時間Tb6を演算する。移動時間Tb4は、矢印A5に示されるように、部品移載装置5が撮像位置61から次回停止位置の第11小片基板K11の装着位置Pまでの移動に要する時間である。復動時間Tb6は、矢印A6に示されるように、部品移載装置5が次回停止位置の第11小片基板K11の装着位置Pから採取位置34までの復動に要する時間である。移動時間Tb4および復動時間Tb6の演算は、位置関係が異なる点を除いて現在停止位置の場合と同様である。次に、制御装置7は、位置変更時間TCの一部の待ち時間と、サイクル所要時間TDとを加算して位置変更時所要時間TBを推定する。
制御装置7は、次に未変更時所要時間TAと位置変更時所要時間TBとの大小関係を比較する。例えば、位置変更時間TCの全体がサイクル所要時間TDにオーバーラップして待ち時間が無くなる場合、未変更時所要時間TAが位置変更時所要時間TBより長くなる。この場合、制御装置7は、図6の矢印A4に示される基板Kの位置変更を実施する。すると、基板Kの位置変更に要する時間よりも部品装着サイクルに要する時間の短縮分のほうが大きいので、部品装着時間を短縮する効果が発生する。
逆に、未変更時所要時間TAが位置変更時所要時間TB以下であれば、基板Kの位置変更を実施しても部品装着時間を短縮する効果が発生しない。この場合、制御装置7は、基板Kの現在停止位置を維持する。
基板Kの位置変更を実施するか否かに関わらず、制御装置7は、XYロボット4および部品移載装置5を制御して第11部品装着サイクルを実施する。これにより、第11部品装着サイクルは今回実施した部品装着サイクルとなり、第12部品装着サイクルが次回の部品装着サイクルに繰り上がる。制御装置7は、演算処理フローの実行を繰り返す。
なお、第12〜第15小片基板K12〜K15の各装着位置Pは、X軸方向において、第11小片基板K11の装着位置Pと同じ位置にあたる。したがって、第12〜第15部品装着サイクルを実施する直前に基板Kの現在停止位置を変更することは生じない。次に基板Kの現在停止位置を変更する可能性があるのは、第16部品装着サイクルを実施する直前となる。
(4.第1実施形態の態様および効果)
第1実施形態の部品実装機1の部品装着方法は、搬送方向に基板Kを搬送するとともに、搬送方向に位置変更可能な停止位置に基板Kを停止させる基板搬送装置2と、基板Kに装着する部品Bを供給する部品供給装置3と、部品供給装置3の前記部品種ごとに定まる採取位置34から部品Bを採取し、搬送方向(X軸方向)および搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に移動して、採取した部品Bを停止位置に停止された基板Kの所定の装着位置Pに装着し、部品供給装置3に復動する部品装着サイクルを複数回実施する部品移載装置5と、を備えた部品実装機1の部品装着方法であって、今回の部品装着サイクルで基板Kを停止した現在停止位置を変更しない場合に、次回の部品装着サイクルの実施に要する未変更時所要時間TAを推定する未変更時推定ステップ(S1、S2)と、次回の部品装着サイクルを最も効率良く実施できる基板Kの次回停止位置を推定する次回停止位置推定ステップS3と、基板Kの停止位置を現在停止位置から次回停止位置に変更する場合に、基板Kの停止位置の変更および次回の部品装着サイクルの実施に要する位置変更時所要時間TBを推定する位置変更時推定ステップS4と、未変更時所要時間TAが位置変更時所要時間TBより長いときに、基板Kの停止位置を現在停止位置から次回停止位置に変更すると決定する停止位置決定ステップ(S5、S6)と、を有する。
第1実施形態では、次回の部品装着サイクルを実施する以前に、未変更時推定ステップ(S1、S2)、次回停止位置推定ステップS3、位置変更時推定ステップS4、および停止位置決定ステップ(S5、S6)を実行して、基板Kの停止位置を変更すべきか否かを正確に決定できる。したがって、基板Kの停止位置の変更に要する時間を含めて次回の部品装着サイクルに要する部品装着時間を短縮でき、部品装着動作を効率化できる。さらに、この効率化の効果が一連の部品装着サイクルで加算されて、基板Kの生産効率が高められる。
さらに、第1実施形態において、部品実装機1は、部品移載装置5が部品Bを採取した状態を撮像する部品認識用カメラ6をさらに備え、次回停止位置推定ステップS3で、部品移載装置5が1個の部品Bを採取する場合に、搬送方向(X軸方向)において、次回の部品装着サイクルで装着する1個の部品Bの装着位置Pが、部品認識用カメラ6の撮像位置61と、次次回の部品装着サイクルで採取する1個の部品Bの採取位置34との中間位置M1に一致する基板Kの位置を次回停止位置とする。
これによれば、部品移載装置5が1個の部品Bを採取する場合に、基板Kの次回停止位置を適正に定めることができる。基板Kが次回停止位置に停止された状態では、部品移載装置5が撮像位置61から装着位置Pに移動するときと、装着位置Pから採取位置34に復動するときとで、X軸方向の移動距離が互いに等しく、かつ最小となる。したがって、部品装着時間の短縮に有利となる。
さらに、第1実施形態において、基板Kには、停止位置を検出するためのフィデューシャルマークとしてグローバルマークGMおよびローカルマークLMが付設されており、部品移載装置5は、グローバルマークGMおよびローカルマークLMを撮像して基板Kの停止位置を検出する基板認識用カメラ52を有し、位置変更時推定ステップS4において、基板Kを現在停止位置から次回停止位置まで搬送して停止させる搬送時間Tc1のうち次回の部品装着サイクルにオーバーラップできない待ち時間と、次回の部品装着サイクルの実施に要するサイクル所要時間TDと、を加算して位置変更時所要時間TBを推定し、未変更時推定ステップ(S1、S2)および前記位置変更時推定ステップS3において、次回の部品装着サイクルの実施に要するサイクル所要時間TDは、部品装着サイクルの途中で部品Bを基板Kの装着位置に装着する直前に基板認識用カメラ52によりローカルマークLMを撮像して小片基板K1〜K30の現在停止位置または次回停止位置を検出する第1位置検出時間を含む。
これによれば、基板Kの停止位置を次回停止位置に変更したときに、グローバルマークGMの撮像による次回停止位置の検出を行わないので第2位置検出時間Tc2が発生しない。したがって、位置変更時所要時間TBを小さくして、基板Kを次回停止位置に位置変更する機会が増加する。これにより、部品装着動作を顕著に効率化でき、さらに、基板の生産効率が顕著に高められる。
さらに、第1実施形態において、記部品移載装置5が部品装着サイクルを順次実施する進捗状況に応じ、未だ実施されていない部品装着サイクルを対象として未変更時推定ステップ(S1、S2)、次回停止位置推定ステップS3、位置変更時推定ステップS4、および停止位置決定ステップ(S5、S6)をリアルタイムで実行する。
これによれば、部品実装機1を稼動させる前に全部品装着サイクルを対象として基板Kの停止位置を変更するか否かを予め決定する場合と比較して、フレキシブルな対応が可能になる。詳述すると、前述した第1装着シーケンスは、固定されたものでなく、生産状況に応じて変更される場合がある。例えば、特定の小片基板への部品Bの装着をスキップする場合が発生し得る。また例えば、部品Bを供給するフィーダ装置31で部品切れが発生して、同種の部品Bを供給する別のフィーダ装置31を用いる場合が発生し得る。このように生産途中における装着シーケンスの変更があっても、リアルタイムの制御ではフレキシブルに対応して、基板Kの位置変更を常に最適化できる。
(5.第2実施形態の部品実装機の部品装着方法)
次に、第2実施形態の部品実装機1の部品装着方法について、図7〜図10を参考にして、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態では、部品移載装置5が4本の吸着ノズルをもち、1回の部品装着サイクルで4個の部品Bを採取および装着できる場合を考える。また、第2実施形態では、次回の部品装着サイクルのみを演算対象とし、第2マーク使用方法が採用されているものとする。第2実施形態においても図3の演算処理フローを用いるが、次に説明する細部が異なる。
すなわち、ステップS2で未変更時所要時間TAを推定するときに、次の諸点を考慮する。部品移載装置5が複数の吸着ノズルを有するので、採取時間Ta1は、次回の部品装着サイクルに定められた全部の部品の採取に要する時間となる。このとき、部品の種類が異なっていれば、異なるフィーダ装置31の採取位置34の相互間の移動に要する時間は、採取時間Ta1に含まれる。また、部品移載装置5が複数の部品を採取した場合、装着時間Ta5は、採取した全部の部品の装着に要する時間となる。このとき、複数の部品の装着位置の相互間の移動に要する時間は、装着時間Ta5に含まれる。なお、第2マーク使用方法が採用されているので、第1位置検出時間は発生しない。
また、移動時間Ta4は、部品移載装置5が部品認識用カメラ6から現在停止位置の基板Kに装着する最初の部品の装着位置まで移動するのに要する時間となる。さらに、復動時間Ta6は、部品移載装置5が現在停止位置の基板Kに装着する最後の部品の装着位置から次次回の部品装着サイクルで吸着する最初の部品の採取位置34まで戻るのに要する時間となる。
さらに、位置変更時推定ステップS4で位置変更時所要時間TBを推定するときに、第2位置検出時間Tc2を考慮する必要がある。第2位置検出時間Tc2は、サイクル所要時間TDにオーバーラップできず、別に必要になる。通常、第2位置検出時間Tc2は、移動時間Td4の途中に割り込む。つまり、部品移載装置5は、部品認識用カメラ6で撮像された後に一旦グローバルマークGMを撮像できる位置に移動し、基板認識用カメラ52がグローバルマークGMを撮像した後に装着位置Pに移動する。
次に、第2実施形態の部品実装機1の部品装着方法の作用例について説明する。第2実施形態において、制御装置7は、第1〜第8部品装着サイクルのデータからなる第2装着シーケンスを保持している。図7は、第2実施形態における第2装着シーケンスの一部を例示した図である。第2装着シーケンスの第1部品装着サイクルには、4個の部品Bを特定の採取位置34から採取して、第1小片基板K1、第2小片基板K2、第7小片基板K7、および第6小片基板K6の順番に、それぞれの装着位置Pに装着する旨が指定されている。第1部品装着サイクルでは、「田」字状に配置された4枚の小片基板を対象として、反時計回りの順番で部品Bを装着する。「田」字状に配置された4枚の小片基板を対象とする点は、第2、第4、第5、第6、および第7部品装着サイクルでも同様である。このうち第7部品装着サイクルにおける装着順序は、図8の矢印A11に例示されている。
また、第3部品装着サイクルには、4個の部品Bを特定の採取位置34から採取して、第5小片基板K5、第10小片基板K10、第15小片基板K15、および第20小片基板K20の順番に、それぞれの装着位置Pに装着する旨が指定されている。第3部品装着サイクルでは、直線的に配置された4枚の小片基板K5、K10、K15、K20に順番に部品Bを装着する。第3部品装着サイクルにおける装着順序は、図8の矢印A12に示されている。
ここで、図8は、第2実施形態において、第2部品装着サイクルの最後の部品Bが第8小片基板K8に装着された直後の状況を示した図である。図8の矢印A13に示されるように、部品移載装置5は、第2部品装着サイクルの最後に、第8小片基板K8の装着位置Pから採取位置34に復動する。制御装置7は、この復動の制御と並行して、図3に示された演算処理フローを実行する。
制御装置7は、まず、演算対象とする次回の第3部品装着サイクルを設定する。制御装置7は、次に(式1)を用いて未変更時所要時間TAを推定する。図9は、第2実施形態の未変更時推定ステップ(S1、S2)を説明する図である。制御装置7は、基板Kの現在停止位置を変更しない条件で、移動時間Ta4および復動時間Ta6を演算する。移動時間Ta4は、矢印A14に示されるように、部品移載装置5が部品認識用カメラ6の撮像位置61から第3部品装着サイクルで装着する最初の第5小片基板K5の装着位置Pまで移動するのに要する時間である。また、復動時間Ta6は、矢印A15に示されるように、部品移載装置5が第3部品装着サイクルで装着する最後の第20小片基板K20の装着位置Pから採取位置34まで復動するのに要する時間である。
制御装置7は、次に基板Kの次回停止位置を推定する。図10は、第2実施形態の次回停止位置推定ステップS3および位置変更時推定ステップS4を説明する図である。図10において、次回停止位置に位置変更された基板Kが実線で示され、現在停止位置は破線で示されている。
制御装置7は、搬送方向において、次回の部品装着サイクルで装着する最初と最後の部品の装着位置の中間位置が、部品認識用カメラ6の撮像位置61と、次次回の部品装着サイクルで採取する最初の部品の採取位置との中間に一致する基板Kの位置を次回停止位置とする。具体的に、制御装置7は、第3部品装着サイクルで装着する最初の第5小片基板K5の装着位置Pと、最後の第20小片基板K20の装着位置PとのX軸方向における中間位置M3を求める。また、制御装置7は、第1実施形態と同様に、部品認識用カメラ6の撮像位置61と採取位置34とのX軸方向における離間距離2Lの中間位置M1を求める。そして、制御装置7は、X軸方向において中間位置M3が中間位置M1に一致する基板Kの位置を次回停止位置とする。
制御装置7は、次に位置変更時所要時間TBを推定する。制御装置7は、(式2)を用いて、矢印A16に示される基板Kの位置変更に要する位置変更時間TCを推定する。ここで、第2マーク使用方法が採用されているので、搬送時間Tc1の一部の待ち時間、および第2位置検出時間Tc2の両方を考慮する必要が有る。制御装置7は、基板Kの搬送距離LK2、および基板搬送装置2の諸性能などに基づいて搬送時間Tc1を演算する。また、制御装置7は、基板KのグローバルマークGMの位置、XYロボット4の諸性能、および基板認識用カメラ52の撮像性能などに基づいて、第2位置検出時間Tc2を演算する。
続いて、制御装置7は、(式3)の演算によりサイクル所要時間TDを推定する。制御装置7は、基板Kが次回停止位置に変更された条件で、移動時間Tb4および復動時間Tb6を演算する。移動時間Tb4は、矢印A17に示されるように、部品移載装置5が撮像位置61から装着する最初の第5小片基板K5の装着位置Pまで移動するのに要する時間である。復動時間Tb6は、矢印A18に示されるように、部品移載装置5が装着する最後の第20小片基板K20の装着位置Pから採取位置34までの復動に要する時間である。移動時間Tb4および復動時間Tb6の演算は、位置関係が異なる点を除いて現在停止位置の場合と同様である。次に、制御装置7は、第2位置検出時間Tc2と、第1実施形態で説明した待ち時間と、次回の部品装着サイクルの実施に要するサイクル所要時間TDと、を加算して位置変更時所要時間TBを推定する。
制御装置7は、次に未変更時所要時間TAと位置変更時所要時間TBとの大小関係を比較する。以下、第1実施形態と同様の演算処理を実施する。基板Kの位置変更を実施するか否かに関わらず、制御装置7は、XYロボット4および部品移載装置5を制御して第3部品装着サイクルを実施する。これにより、第3部品装着サイクルは今回実施した部品装着サイクルとなり、第4部品装着サイクルが次回の部品装着サイクルに繰り上がる。制御装置7は、演算処理フローの実行を繰り返す。
(6.第2実施形態の態様および効果)
上述した第2実施形態においては、第1実施形態と同様の効果が発生する。さらに、第2実施形態に固有な態様によって、次に説明する固有の効果が発生する。
すなわち、第2実施形態において、部品実装機1は、部品移載装置5が部品Bを採取した状態を撮像する部品認識用カメラ6をさらに備え、次回停止位置推定ステップS3で、部品移載装置5が複数の部品Bを採取する場合に、搬送方向(X軸方向)において、次回の部品装着サイクルで装着する最初と最後の部品の装着位置Pの中間位置M3が、部品認識用カメラ6の撮像位置61と、次次回の部品装着サイクルで採取する最初の部品の採取位置34との中間位置M1に一致する基板Kの位置を次回停止位置とする。
これによれば、部品移載装置5が複数の部品Bを採取する場合に、基板Kの次回停止位置を適正に定めることができる。基板Kが次回停止位置に停止された状態では、部品移載装置5が撮像位置61から最初の部品Bの装着位置Pに移動するときと、最後の部品Bの装着位置Pから採取位置34に復動するときとで、X軸方向の移動距離が互いに等しく、かつ最小となる。したがって、部品装着時間の短縮に有利となる。
また、第2実施形態において、基板Kには、停止位置を検出するためのフィデューシャルマークとしてグローバルマークGMが付設されており、部品移載装置5は、グローバルマークGMを撮像して基板Kの停止位置を検出する基板認識用カメラ52を有し、位置変更時推定ステップS4において、基板Kを現在停止位置から次回停止位置まで搬送して停止させる搬送時間Tc1のうち次回の部品装着サイクルにオーバーラップできない待ち時間と、基板Kが停止された後に基板認識用カメラ52によりグローバルマークGMを撮像して次回停止位置を検出する第2位置検出時間Tc2と、次回の部品装着サイクルの実施に要するサイクル所要時間TDと、を加算して位置変更時所要時間TBを推定する。
これによれば、基板Kの位置変更時に必要となる第2位置検出時間Tc2を正確に位置変更時所要時間TBに反映して、高い演算精度を確保できる。したがって、基板Kの停止位置を変更すべきか否かを正確に決定できる。
(7.第3実施形態の部品実装機の部品装着方法)
次に、第3実施形態の部品実装機1の部品装着方法について、第1および第2実施形態と異なる点を主に説明する。第3実施形態では、次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルを演算対象とする。また、第1実施形態と同様に、部品移載装置5が1本の吸着ノズルをもち、第1〜第30部品装着サイクルが設定され、第1マーク使用方法が採用されているものとする。図11は、第3実施形態において、制御装置7が実行する演算処理フローの図である。制御装置7は、部品移載装置5が部品装着サイクルを順次実施する進捗状況に応じ、未だ実施されていない部品装着サイクルを対象として、リアルタイムで演算処理フローを実行する。
図11のステップS11で、制御装置7は、演算対象とする次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルを設定する。例えば、制御装置7は、次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルで装着する部品の装着位置が、搬送方向(X軸方向)において一致した範囲内でサイクル回数を設定する。次のステップS12で、制御装置7は、各部品装着サイクルについて(式1)を用い、未変更時所要時間TAを推定する。さらに、制御装置7は、サイクル回数分の未変更時所要時間TAを加算して、未変更時所要時間(トータル値)TAtotを推定する。ステップS11およびステップS12は、本発明の未変更時推定ステップに相当する。次の次回停止位置推定ステップS13で、制御装置7は、次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルを最も効率良く実施できる基板Kの次回停止位置を推定する。次回停止位置の具体的な推定方法は、後述する。
次の位置変更時推定ステップS14で、制御装置7は、(式2)を用いて位置変更時間TCを推定する。また、制御装置7は、各部品装着サイクルについて(式3)を用い、サイクル所要時間TDを演算する。さらに、制御装置7は、位置変更時間TCおよびサイクル回数分のサイクル所要時間TDから、位置変更時所要時間(トータル値)TBtotを推定する。ここで、位置変更時間TCのうち搬送時間Tc1の一部が次回の部品装着サイクルの所要時間TDにオーバーラップできないときには、前述した待ち時間の考慮が必要となる。一方、第1マーク使用方法が採用されているので、位置変更時間TCのうちの第2位置検出時間Tc2=0となる。
ステップS15で、制御装置7は、未変更時所要時間(トータル値)TAtotと位置変更時所要時間(トータル値)TBtotとの大小関係を比較する。未変更時所要時間(トータル値)TAtotが位置変更時所要時間(トータル値)TBtotより長いときに、ステップS16で、制御装置7は、基板Kの停止位置を現在停止位置から次回停止位置に変更すると決定する。そして、ステップ17で、制御装置7は、基板Kの現在停止位置を次回停止位置に変更し、演算処理フローの実行をステップS19に進める。
また、未変更時所要時間(トータル値)TAtotが位置変更時所要時間(トータル値)TBtot以下のとき、ステップS18で、制御装置7は、基板Kの現在停止位置を変更しないと決定し、演算処理フローの実行をステップS19に進める。ステップS19で、制御装置7は、XYロボット4および部品移載装置5を制御して次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルを実施する。これにより、複数回の部品装着サイクルに後続する部品装着サイクルが次回の部品装着サイクルに繰り上がる。制御装置7は、演算処理フローの実行をステップS11に戻して、以下繰り返す。
次に、第3実施形態の部品実装機の部品装着方法の作用例について説明する。第3実施形態において、第10部品装着サイクルで部品移載装置5が部品Bを第10小片基板K10の装着位置Pに装着した直後の状況は、図4に一致する。ここで、次回の第11部品装着サイクルから第15部品装着サイクルまでは、第11〜第15小片基板K11〜K15の部品Bの装着位置が搬送方向(X軸方向)において一致している。したがって、制御装置7は、演算対象として第11〜第15部品装着サイクルを設定する。制御装置7は、次に第11〜第15部品装着サイクルの各未変更時所要時間TAを推定し加算して、未変更時所要時間(トータル値)TAtotを推定する。
制御装置7は、次に基板Kの次回停止位置を推定する。制御装置7は、搬送方向において、次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルで装着する複数の部品の装着位置の平均位置が、前記部品認識用カメラの撮像位置と、次次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルで採取する複数の部品の採取位置の平均位置との中間に一致する基板の停止位置を次回停止位置とする。
具体的に、制御装置7は、第11〜第15部品装着サイクルで装着する5個の部品Bの装着位置PのX軸方向の平均位置を求める。ここで、5個の部品Bの装着位置Pは、X軸方向において一致しており、平均位置は装着位置Pに等しい。また、制御装置7は、第12〜第16部品装着サイクルで採取する5個の部品Bの採取位置34のX軸方向の平均位置を求める。ここで、5個の部品Bの採取位置34は同一箇所であり、平均位置は採取位置34に等しい。制御装置7は、第1実施形態と同様に、部品認識用カメラ6の撮像位置61と採取位置34とのX軸方向における離間距離2Lの中間位置M1を求める。そして、制御装置7は、X軸方向において第11〜第15小片基板K11〜K15の装着位置Pが中間位置M1に一致する基板Kの位置を次回停止位置とする。結果として、第3実施形態における次回停止位置は、第1実施形態における次回停止位置に一致する。
次に、制御装置7は、位置変更時間TCおよび第11〜第15部品装着サイクルの各サイクル所要時間TDから、位置変更時所要時間(トータル値)TBtotを推定する。制御装置7が未変更時所要時間(トータル値)TAtotと位置変更時所要時間(トータル値)TBtotとの大小関係を比較する以降の演算処理は、第1実施形態と同様である。
第3実施形態では、位置変更時所要時間(トータル値)TBtotが、位置変更時間TCおよび5個のサイクル所要時間TDから推定される。このため、個々のサイクル所要時間TDが未変更時所要時間TAから短縮される時間短縮分がわずかであっても、5個の時間短縮分が足し合わされて位置変更時間TCによる時間延長分を上回る機会が増加する。つまり、第3実施形態では、基板Kの位置変更を実施して部品装着動作を効率化できる機会が、第1実施形態よりも増加する。
(8.第3実施形態の態様および効果)
第3実施形態の部品実装機1の部品装着方法は、搬送方向に基板Kを搬送するとともに、搬送方向に位置変更可能な停止位置に基板Kを停止させる基板搬送装置2と、基板Kに装着する部品を供給する部品供給装置3と、部品供給装置3の部品種ごとに定まる採取位置34から部品Bを採取し、搬送方向(X軸方向)および搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に移動して、採取した部品を停止位置に停止された基板Kの所定の装着位置Pに装着し、部品供給装置3に復動する部品装着サイクルを複数回実施する部品移載装置5と、を備えた部品実装機1の部品装着方法であって、今回の部品装着サイクルで基板Kを停止した現在停止位置を変更しない場合に、次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルの実施に要する未変更時所要時間(トータル値)TAtotを推定する未変更時推定ステップ(S11、S12)と、次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルを最も効率良く実施できる基板Kの次回停止位置を推定する次回停止位置推定ステップS13と、基板Kの停止位置を現在停止位置から次回停止位置に変更する場合に、基板Kの停止位置の変更および次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルの実施に要する位置変更時所要時間(トータル値)TBtotを推定する位置変更時推定ステップS14と、未変更時所要時間(トータル値)TAtotが位置変更時所要時間(トータル値)TBtotより大きいときに、基板Kの停止位置を現在停止位置から次回停止位置に変更すると決定する停止位置決定ステップ(S15、S16)と、を有する。
これによれば、次回の部品装着サイクルを実施する以前に、未変更時推定ステップ(S11、S12)、次回停止位置推定ステップS13、位置変更時推定ステップS14、および停止位置決定ステップ(S15、S16)を実行して、基板Kの停止位置を変更すべきか否かを正確に決定できる。したがって、基板Kの停止位置の変更に要する時間を含めて次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルに要する部品装着時間を総合的に短縮でき、部品装着動作を効率化できる。さらに、この効率化の効果が一連の部品装着サイクルで加算されて、基板の生産効率が高められる。
さらに、第3実施形態において、部品実装機1は、部品移載装置5が部品Bを採取した状態を撮像する部品認識用カメラ6をさらに備え、次回停止位置推定ステップ(S11、S12)で、部品移載装置5が1個の部品Bを採取する場合に、搬送方向(X軸方向)において、次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルで装着する複数の部品Bの装着位置Pの平均位置が、部品認識用カメラ6の撮像位置61と、次次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルで採取する複数の部品Bの採取位置34の平均位置との中間位置M1に一致する基板Kの停止位置を次回停止位置とする。
これによれば、部品移載装置5が1個の部品Bを採取する場合に、複数回の部品装着サイクルを考慮して、基板Kの次回停止位置を適正に定めることができる。基板Kが次回停止位置に停止された状態では、複数回の部品装着サイクルのそれぞれで部品移載装置5が撮像位置61から装着位置Pに移動するときと、装着位置Pから採取位置34に復動するときとで、X軸方向の移動距離が概ね均等化され、かつ小さくなる。したがって、部品装着時間の短縮に有利となる。
さらに、第3実施形態において、未変更時推定ステップ(S11)で、部品Bの装着位置が搬送方向(X軸方向)において一致しまたは一定幅に収まる範囲内で、次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルのサイクル回数を設定する。
これによれば、搬送方向において一致しまたは近接した複数の装着位置に対して効率的な次回停止位置を用いるので、位置変更による各部品装着サイクルの時間短縮分の効果が加算される。したがって、基板Kの位置変更を実施して部品装着動作を効率化できる機会が増加し、基板の生産効率が高められる機会が増加する。仮に、搬送方向において散乱した装着位置を含む複数回の部品装着サイクルを設定すると、効率的な次回停止位置が存在せず、基板Kの位置変更の効果が生じない。
(9.第4実施形態の部品実装機の部品装着方法)
次に、第4実施形態の部品実装機の部品装着方法について、図12および図13を参考にして、第1〜第3実施形態と異なる点を主に説明する。第4実施形態では、次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルを演算対象とし、かつ部品装着サイクルのサイクル回数を1ずつ増加させ、繰り返して推定を行う。また、第2実施形態と同様に、部品移載装置5が4本の吸着ノズルをもち、図7に示された第1〜第8部品装着サイクルが設定され、第2マーク使用方法が採用されているものとする。図12は、第4実施形態において、制御装置7が実行する演算処理フローの図である。
第4実施形態におけるステップS12〜ステップS19の演算処理は、細部を除いて第3実施形態と同様であるので、同一のステップ符号(S12〜S19)を付して説明は省略する。図12のステップS21で、制御装置7は、部品装着サイクルの初期設定として、サイクル回数を1とし、次回の部品装着サイクルを初期設定する。そして、ステップS15で、未変更時所要時間(トータル値)TAtotが位置変更時所要時間(トータル値)TBtot以下のとき、制御装置7は、演算処理フローの実行をステップS22に進める。
ステップS22で、制御装置7は、部品装着サイクルのサイクル回数を増加可能であるか否かを判定する。可能であるときのステップS23で、制御装置7は、サイクル回数を1だけ増加して、演算処理フローの実行をステップS12に戻す。例えば、制御装置7は、初回のステップS23でサイクル回数を1から2に増加し、次回および次次回の部品装着サイクルを設定する。また例えば、制御装置7は、3回目のステップS23でサイクル回数を3から4に増加し、次回以降の連続した4回の部品装着サイクルを設定する。
制御装置7は、ステップS12〜S15、ステップS22、およびステップS23からなるループ演算処理を繰り返して推定を行う。ループ演算処理の途中のステップS15で、未変更時所要時間(トータル値)TAtotが位置変更時所要時間(トータル値)TBtotより長くなると、制御装置7は、演算処理フローの実行をステップS16に進め、ループ演算処理から抜ける。これは、基板Kの停止位置を変更して部品装着時間を短縮できるサイクル回数が見つかったことを意味する。その後、制御装置7は、ステップS17で基板Kの現在停止位置を次回停止位置に変更し、ステップS19でXYロボット4および部品移載装置5を制御して当該サイクル回数の部品装着サイクルを実施する。
また、ループ演算処理の途中のステップS22で、最後の部品装着サイクルまで到達してサイクル回数を増加できなくなると、制御装置7は、演算処理フローの実行をステップS18に進め、ループ演算処理から抜ける。これは、基板Kの停止位置を変更しても部品装着時間を短縮する効果が得られないことを意味する。その後、制御装置7は、ステップS19で、XYロボット4および部品移載装置5を制御して初期設定された次回の部品装着サイクルのみを実施する。
次に、第4実施形態の部品実装機の部品装着方法の作用例について説明する。第4実施形態において、第2部品装着サイクルの最後の部品Bが第8小片基板K8に装着された直後の状況は、図8に一致する。ここで、制御装置7は、まず、演算対象とするサイクル回数を1として、第3部品装着サイクルを設定する。制御装置7は、ステップS12〜S14で、第2実施形態と同様の演算処理を行う。その結果、未変更時所要時間(トータル値)TAtotが位置変更時所要時間(トータル値)TBtot以下であると、制御装置7は、サイクル回数を2に増加し、第3および第4部品装着サイクルを設定する。
制御装置7が前述したループ演算処理を実施すると、以降に述べる作用が発生する。図13は、第4実施形態の次回停止位置推定ステップS13および位置変更時推定ステップS14を説明する図である。図13において、次回停止位置に位置変更された基板Kが実線で示され、現在停止位置は破線で示されている。
制御装置7は、搬送方向において、次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルのそれぞれで装着する最初と最後の部品の装着位置の平均位置が、部品認識用カメラの撮像位置と、次次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルのそれぞれで採取する最初の部品の採取位置の平均位置との中間に一致する基板の停止位置を前記次回停止位置とする。具体的に、制御装置7は、第3部品装着サイクルで装着する最初の第5小片基板K5、最後の第20小片基板K20、第4部品装着サイクルで装着する最初の第13小片基板K13、および最後の第18小片基板K18の各装着位置PのX軸方向における平均位置M5を求める。
この例では、平均位置M5は、第13小片基板K13の装着位置Pに一致する。なぜなら平均位置M5から図13の右方の第5小片基板K5の装着位置Pまでの距離L5と、平均位置M5から図13の左方の第18および第20小片基板K18、K20の装着位置Pまでの距離L18、L20とがバランスするからである。また、制御装置7は、第1実施形態と同様に、部品認識用カメラ6の撮像位置61と採取位置34とのX軸方向における離間距離2Lの中間位置M1を求める。そして、制御装置7は、X軸方向において平均位置M5が中間位置M1に一致する基板Kの位置を次回停止位置とする。
制御装置7は、次に位置変更時所要時間(トータル値)TBtotを推定する。制御装置7は、まず、矢印A21に示される基板Kの位置変更時の搬送距離LK3に基づいて、位置変更時間TCを推定する。ここで、第2マーク使用方法が採用されているので、搬送時間Tc1の一部の待ち時間、および第2位置検出時間Tc2の両方を考慮する必要がある。
制御装置7は、続いて(式3)の演算により、第3および第4部品装着サイクルの各サイクル所要時間TDを推定する。つまり、制御装置7は、基板Kが次回停止位置に変更された条件で、第3および第4部品装着サイクルの移動時間Tb4および復動時間Tb6をそれぞれ演算する。第3部品装着サイクルの移動時間Tb4は、矢印A22に示されるように、部品移載装置5が撮像位置61から最初に装着する第5小片基板K5の装着位置Pまで移動するのに要する時間である。第3部品装着サイクルの復動時間Tb6は、矢印A23に示されるように、部品移載装置5が最後に装着する第20小片基板K20の装着位置Pから採取位置34までの復動に要する時間である。
また、第4部品装着サイクルの移動時間Tb4は、矢印A24に示されるように、部品移載装置5が撮像位置61から最初に装着する第13小片基板K13の装着位置Pまで移動するのに要する時間である。第4部品装着サイクルの復動時間Tb6は、矢印A25に示されるように、部品移載装置5が最後に装着する第18小片基板K18の装着位置Pから採取位置34までの復動に要する時間である。その後、制御装置7は、位置変更時間TCならびに第3および第4部品装着サイクルの各サイクル所要時間TDに基づいて、位置変更時所要時間(トータル値)TBtotを推定する。
また、図面は省略したが、制御装置7は、ステップS12で、第3および第4部品装着サイクルで装着する最初と最後の部品Bの装着位置Pに着目して、それぞれ未変更時所要時間TAを推定する。その後、制御装置7は、第3および第4部品装着サイクルの未変更時所要時間TAを加算して未変更時所要時間(トータル値)TAtotを推定する。これにより、制御装置7は、ステップS15およびステップS23の判定を行い、必要に応じてループ演算処理を繰り返す。部品装着サイクルのサイクル回数を3以上とした場合も、制御装置7は、同様の演算処理を実施する。
サイクル回数を増加してゆく途中で、未変更時所要時間(トータル値)TAtotが位置変更時所要時間(トータル値)TBtotより長くなると、制御装置7は、ループ演算処理から抜ける。そして、制御装置7は、基板Kの現在停止位置を次回停止位置に変更し、当該サイクル回数の部品装着サイクルを実行する。また、最後の部品装着サイクルまで到達してサイクル回数を増加できなくなると、制御装置7は、ループ演算処理から抜ける。そして、制御装置7は、基板Kの現在停止位置を維持して、第3部品装着サイクルのみを実行する。
(10.第4実施形態の態様および効果)
第4実施形態において、部品実装機1は、部品移載装置5が部品Bを採取した状態を撮像する部品認識用カメラ6をさらに備え、次回停止位置推定ステップ(S11、S12)で、部品移載装置5が複数の部品Bを採取する場合に、搬送方向において、次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルのそれぞれで装着する最初と最後の部品Bの装着位置Pの平均位置M5が、部品認識用カメラ6の撮像位置61と、次次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルのそれぞれで採取する最初の部品の採取位置34の平均位置との中間位置M1に一致する基板の停止位置を次回停止位置とする。
これによれば、部品移載装置5が複数の部品Bを採取する場合に、複数回の部品装着サイクルを考慮して、基板Kの次回停止位置を適正に定めることができる。基板Kが次回停止位置に停止された状態では、複数回の部品装着サイクルのそれぞれで部品移載装置5が撮像位置61から装着位置Pに移動するときと、装着位置Pから採取位置34に復動するときとで、X軸方向の移動距離が概ね均等化され、かつ小さくなる。したがって、部品装着時間の短縮に有利となる。
さらに、第4実施形態において、未変更時推定ステップ(S11、S12)、次回停止位置推定ステップS13、および位置変更時推定ステップS14で、次回以降の連続した複数回の部品装着サイクルのサイクル回数を1ずつ増加させ、繰り返して推定を行う。
これによれば、少ないサイクル回数で効果が生じにくくとも、適宜サイクル回数を増加させて、効果の生じるサイクル回数を探索できる。したがって、基板Kの位置変更を実施して部品装着動作を効率化できる機会が増加し、基板の生産効率が高められる機会が増加する。
(11.実施形態の応用および変形)
なお、各実施形態において、採取時間Ta1、移動時間Ta2、撮像時間Ta3、および装着時間Ta5は一定値である。したがって、これらの4量を省略して未変更時所要時間TAおよびサイクル所要時間TDを推定してもよい。4量の省略により未変更時所要時間TAと位置変更時所要時間TBとの大小関係の判定結果は変わらないので、演算処理を簡易化できる。また、第3実施形態では、部品Bの装着位置が搬送方向(X軸方向)において一致した第11〜第15部品装着サイクルを演算対象としているが、これに限定されない。例えば、部品Bの装着位置がX軸方向において小片基板1枚分の幅に収まる範囲内を許容すれば、第11〜第20部品装着サイクルをまとめて演算対象にできる。また、第4実施形態において、ステップS15で未変更時所要時間(トータル値)TAtotが位置変更時所要時間(トータル値)TBtotより長くなっても、直ちにループ演算処理から抜ける必要はない。すなわち、制御装置7は、ループ演算処理から抜けることなくさらにサイクル回数を増加させて、一層大きな効果を探索する演算処理フローを実行してもよい。
さらになお、本発明は、各実施形態で説明したようにリアルタイムで実施する必要はない。例えば、部品実装機1の稼動に直接関与しないコンピュータ装置であっても、部品実装機1の性能および装着シーケンスに関するデータを記憶部に保持していれば、本発明を実施できる。また、ローカルマークLMは全ての小片基板K11〜K30に付設されている必要は無く、数枚の小片基板に対して共通に設けられていてもよい(いわゆるブロックマーク)。さらに、基板Kが多数枚取り基板でなくとも大形の基板であれば、停止位置を移動する効果が生じ得る。特にグローバルマークGMの他に特定の部品用にローカルマークLMが付設された大形基板では、多数枚取り基板と同様の効果が生じる。本発明は、その他にも様々な応用や変形が可能である。