以下、本発明に係る医療用デバイスについて好適な実施形態(第1〜第4実施形態)を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る医療用デバイス10は、生体管腔である尿管、腎盂、腎杯等の泌尿器系に存在する結石(対象物)を回収する医療用機器として構成される。手技において、術者は、医療用デバイス10の先端に設けたバスケット12(処置部:図1参照)を、尿管内の結石がある箇所に送達して、バスケット12内に結石を取り込み、尿管からデバイスを抜去することで結石を回収する。
なお、医療用デバイス10は、結石を回収するためだけでなく、様々な生体管腔の治療に適用することができる。例えば、医療用デバイス10が適用される生体管腔としては、泌尿器系の他に、心臓血管系、内分泌系、リンパ系、呼吸器系、消化器系等の管腔或いはその他の臓器等が挙げられる。
図1に示すように、医療用デバイス10は、長尺なシャフト本体部14と、シャフト本体部14の基端側に取り付けられる操作部16とを備える。シャフト本体部14は、患者の外部から治療部位(尿管内の結石の存在箇所)に到達可能な軸方向長さを有する。このシャフト本体部14は、内視鏡18(尿管鏡)の内部を通して尿管内に挿入するため、内視鏡18の挿入チューブ20の外径よりも充分に細径に形成される。
図1中において2点鎖線で示す内視鏡18は、例えば、挿入チューブ20及び把持操作部22を有し、さらに挿入チューブ20の先端部にカメラ24や照明(図示せず)を備える。この内視鏡18は、カメラ24で尿管内の画像情報を取得し、挿入チューブ20内の光ファイバを通して、外部に用意した図示しないモニタに尿管内の画像を表示し、結石の治療を可能とする。内視鏡18の挿入チューブ20には、所定の内径を有する挿通ルーメン20aが軸方向に沿って貫通形成されている。挿通ルーメン20aには、本医療用デバイス10のシャフト本体部14が挿入される他に、結石の破砕処理を行う医療用レーザ器具が挿入される。
シャフト本体部14は、長手方向の大部分を占める胴体部が、外側シャフト26と内側シャフト28の二重管構造に構成されている。また、シャフト本体部14は、外側シャフト26の先端に連結固定されたガイド筒30(収容部)を備えると共に、このガイド筒30の内側で内側シャフト28の先端に連結固定された保持部材32(保持部)を備える。上記のバスケット12は、保持部材32の先端に設けられて、シャフト本体部14の先端方向に露出自在となっている。
シャフト本体部14の外側シャフト26は、線材を螺旋状に巻回したコイルチューブとして形成されている。外側シャフト26の直線(通常)状態では軸方向に隣り合う線材が接触し合っている。軸方向に隣り合う線材同士は接着されていてもよい。外側シャフト26は、内視鏡18の挿通ルーメン20aの内径よりも小径の外径で延び、その先端部がガイド筒30に固定される一方、その基端部が操作部16の操作子70に固定される。外側シャフト26の軸方向長さは、治療部位の位置にもよるが、例えば、20cm〜120cm程度に設定される。
また、外側シャフト26は、線材が周囲を囲うことで、その軸心部に外側シャフト挿通孔34を備える。外側シャフト挿通孔34は、外側シャフト26の軸方向に沿って貫通している。さらに、外側シャフト26(線材)の内周面又は外周面には、他の部材との摺動性を高める潤滑剤が塗布されていることが好ましい。
シャフト本体部14の内側シャフト28は、外側シャフト26と同様に、線材を螺旋状に巻回し、軸方向に隣り合う線材が接触し合うコイルチューブに形成される。このように、外側シャフト26及び内側シャフト28を螺旋状にすることで、シャフト本体部14は、柔軟性が高められ、送達時にシャフト本体部14全体を容易に曲げることができる。なお、外側シャフト26及び内側シャフト28は、コイルチューブだけでなく、種々の構成を適用することができ、例えば、周知のカテーテルのように、可撓性を有する長尺なチューブで構成してよい。
内側シャフト28及び外側シャフト26を構成する線材の材料は、特に限定されず、金属材料や樹脂材料を適用することができる。金属材料としては、例えば、Ni−Ti系合金のような擬弾性合金(超弾性合金を含む)、形状記憶合金、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等、SUSの全品種)、コバルト系合金、タングステン系合金、炭素系材料等が挙げられる。また、樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、或いはこれら二種以上の混合物等)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料又はこれらの混合物が挙げられる。
内側シャフト28は、外側シャフト挿通孔34の内径よりも小径の外径に形成されて、外側シャフト挿通孔34内に挿通配置される。内側シャフト28の軸方向長さは、外側シャフト26の軸方向長さよりも若干長く形成される。これにより、内側シャフト28の先端は、ガイド筒30内にも挿入され、この内部で保持部材32を固着支持する。
内側シャフト28の内部には、軸方向に沿って内側シャフト挿通孔36が設けられ、この内側シャフト挿通孔36の内部には、複数のワイヤ40が挿通配置される。また、内側シャフト28の外周面には、内側シャフト28の摺動性を高める潤滑剤が塗布されていてもよい。
複数のワイヤ40は、医療用デバイス10の先端部において、バスケット12を構成する部材であり、第1実施形態では内側シャフト挿通孔36内に8本収容されている。8本のワイヤ40は、内側シャフト挿通孔36を通って、シャフト本体部14の基端部まで延び、後述する操作部16のハブ72に連結固定される。
一方、シャフト本体部14のガイド筒30は、外側シャフト26と同程度の外径を有する円筒状に形成される。ガイド筒30は、保持部材32及び内側シャフト28を摺動自在に収容すると共に、バスケット12を収容する機能を有する。このガイド筒30は、金属材料や樹脂材料等により成形され、外側シャフト26よりも硬質に形成されることが好ましいが、材質や形状により柔軟性があるものでも、柔軟性がないものでもよい。ガイド筒30の内部には、外側シャフト挿通孔34に連通する収容空間42が設けられている。
図2に示すように、ガイド筒30の周壁には、収容空間42と外部を連通する一対のガイド溝44が切り欠かれている。各ガイド溝44は、ガイド筒30の先端側で短く先端方向に延びる先端溝部46と、先端溝部46に連なると共にガイド筒30を斜めに延びる傾斜溝部48と、傾斜溝部48に連なると共に基端方向に延び先端溝部46よりも充分に長尺な基端溝部50とを含む。先端溝部46と基端溝部50は、ガイド筒30の周方向に互いに45°ずれる位置に形成され、傾斜溝部48が2つを連結することで、各ガイド溝44は、同じ溝幅で連なる1本の溝に形成されている。なお、ガイド溝44は、ガイド筒30の内周面に形成され、ガイド筒30の外周面は壁に覆われていてもよい。
図1に戻り、ガイド筒30内に挿入されるシャフト本体部14の保持部材32は、内側シャフト28の外径と同程度の外径を有する円筒状の部材である(図3も参照)。この保持部材32は、ガイド筒30の収容空間42内で、ガイド筒30と相対的に摺動自在に配置される。また、保持部材32は、複数のワイヤ40を、一体回転可能に保持又は非回転状態で配置する。
図3に示すように、保持部材32の外周面には、円柱状を呈し、径方向外側に突出する一対の突起52が形成されている。各突起52は、ガイド筒30の肉厚に略一致する突出量で突出し、ガイド筒30の一対のガイド溝44に挿入される。これにより、保持部材32は、ガイド筒30から抜けることが規制されると共に、ガイド溝44に案内される。つまり、保持部材32は、突起52が先端溝部46から基端溝部50に移動(又は逆に移動)する際に、傾斜溝部48において周回りに回転することになる。
この保持部材32は、保持部材32の軸方向に沿って貫通形成された複数の孔部を有する。具体的には、軸心部に断面円形状に形成された1つのワイヤ固定孔54と、ワイヤ固定孔54の径方向外側位置で、若干の弧を描いて周方向に延在する4つのワイヤ配置孔56とを含む。各ワイヤ配置孔56は、保持部材32の周方向に沿って互いに等間隔(90°間隔)に形成されている。
ワイヤ固定孔54には4本のワイヤ40が束ねられて挿入される。これにより、保持部材32は、4本のワイヤ40を強い圧迫力で接触保持し、4本のワイヤ40を強固に固定する。逆に、4つのワイヤ配置孔56には、それぞれ1本のワイヤ40が挿入される。各ワイヤ配置孔56は、ワイヤ40に強い接触力をかけずに、自由状態で各ワイヤ40を挿通させる。
次に、図1、図4、図5A及び図5Bを参照して、医療用デバイス10において実際に結石を回収するバスケット12について具体的に説明する。バスケット12は、シャフト本体部14の先端から先端方向に露出し、且つシャフト本体部14の軸心回りに複数並ぶワイヤ40により構成される。
各ワイヤ40は、シャフト本体部14の先端から露出すると、先端方向及びシャフト本体部14の径方向外側に向かって直線的に(側面視で傾斜して)延出する。そして、所定長さ延出した各ワイヤ40は、曲点40aで径方向内側に円弧を描いて延び、先端頂部(シャフト本体部14の軸心部の延長部分付近)において、反対側で対称形状に形成されたワイヤ40に連なる。先端頂部で連なる2本のワイヤ40とは、換言すれば、元々1つのワイヤが、その中間部分で円弧状に湾曲した輪を作り露出された部分であり、この1つのワイヤの中間部分に連なる両線がシャフト本体部14内に挿入されて2本で延在していると言い得る。本明細書中では、発明の理解の容易化のため、シャフト本体部14内を延在するワイヤ40を基準に、ワイヤ40の本数を述べるものである。
よって、医療用デバイス10は、8本のワイヤ40を有し、シャフト本体部14の先端から各ワイヤ40を露出可能としている。そして、シャフト本体部14の先端から90°間隔に放射状に広がる4本のワイヤ40によって、側面視で、基端三角形状と先端半円形状を連ね、正面視で十字形状の3次元構造物58を構成する。すなわち、バスケット12は、8本のワイヤ40により2つの3次元構造物58を備える。一方の3次元構造物58は、シャフト本体部14の軸心回りに回転する回転構造物60に構成されており、他方の3次元構造物58は、回転しない非回転構造物62に構成されている。
回転構造物60を構成する4本のワイヤ40(第2ワイヤ:以下、回転ワイヤ64ともいう)は、保持部材32のワイヤ固定孔54に挿入され固定されている。つまり、回転ワイヤ64は、保持部材32と一体的に回転するように構成され、保持部材32がシャフト本体部14の軸心回りに回転すると、保持部材32に連れ回って回転する。一方、非回転構造物62を構成する4本のワイヤ40(第1ワイヤ:以下、非回転ワイヤ66)は、保持部材32の4つのワイヤ配置孔56に挿通配置されている。この非回転ワイヤ66は、保持部材32が回転しても追従して回転することなく、配置位置をキープする。回転構造物60のうち最も外側の2本のワイヤ40は、バスケット12の先端頂部で小さく周回する輪60aを形成しており、この輪60aは、回転構造物60の他のワイヤと非回転構造物62を留める機能を有する。
以上のように構成されるバスケット12は、ガイド筒30の収容空間42に収容されることで収縮状態を呈し、ガイド筒30の先端からの露出に伴い拡張状態を呈する。そして、拡張状態では、回転構造物60と非回転構造物62の動作により、対象物の取り込みを行う構成となっている。具体的には、図1に示すように、保持部材32がガイド筒30の先端側に位置する状態では、保持部材32から露出される各回転ワイヤ64と各非回転ワイヤ66がそれぞれ径方向外側に最も展開した状態(第1拡張形態)となる。
この第1拡張形態において、保持部材32は、突起52が先端溝部46に配置されていることで、ガイド筒30との相対位置が規定され、図5Aに示すように、回転ワイヤ64を非回転ワイヤ66の近接位置に配置する。なお、本実施形態において回転ワイヤ64と非回転ワイヤ66の近接とは、互いのワイヤが重なった状態を含むものである。
この場合、バスケット12は、一の回転ワイヤ64と一の非回転ワイヤ66とが互いに近いことで、その間に充分に広くバスケット12の内側を開放する第1連通部68a(隙間)を形成する。またバスケット12は、一の回転ワイヤ64と非回転ワイヤ66の接近箇所に若干の(又は略閉塞した)第2連通部68b(隙間)を形成する。バスケット12は、第1拡張形態から後述する第2拡張形態への移行時に、この第1連通部68aの角度間隔を狭めるように回転動作する。
詳細には、周方向に互いに隣接する回転ワイヤ64と非回転ワイヤ66により構成される第1連通部68aの角度θoは、90°付近の値(例えば、90°≦θo≦80°)をとる。逆に、第2連通部68bの角度θcは、0°付近の値(例えば、0°≦θc≦10°)をとる。つまり第1拡張形態では、バスケット12が第1連通部68aを大きく開けることになるので、この第1連通部68aから結石を内側に容易に取り込むことができる。
逆に、図4に示すように、第1拡張形態から、ガイド筒30が保持部材32に対し相対的に進出して突起52が基端溝部50に入り込んだ段階では、各回転ワイヤ64と各非回転ワイヤ66が多少収縮するが拡張が保たれた状態(第2拡張形態)となる。この第2拡張形態において、保持部材32は、突起52が傾斜溝部48を通って基端溝部50に案内されることで、ガイド筒30に対し45°軸心回りに回転する。そのため、非回転ワイヤ66に対し回転ワイヤ64も45°回転することになり、図5Bに示すように、回転ワイヤ64は隣接する非回転ワイヤ66同士の略中間部に配置される。つまり、周方向に互いに隣接する第1及び第2連通部68a、68bの角度θo、θcは、45°に近い値(例えば、40°≦θo、θc≦50°)となる。よって、第2拡張形態では、バスケット12が第1及び第2連通部68a、68bの角度間隔を小さくするので、内側に取り込んだ結石のこぼれを抑制することができる。
図1に戻り、医療用デバイス10の操作部16は、術者が医療用デバイス10を把持してシャフト本体部14の動作を操作する機構部である。この操作部16は、外側シャフト26の基端に連結される操作子70と、内側シャフト28の基端に連結されるハブ72とを含む。なお、図1中及び図4中の下部側は、医療用デバイス10の基端側の構成を示すが、図示の都合上、先端側よりも縮小した状態で示している。
操作子70は、樹脂材料により、外側シャフト26よりも大径且つ硬質に形成された円筒部材である。この操作子70は、その内部において外側シャフト26を強固に固定し、且つハブ72内に摺動自在に収容される。また、操作子70は、軸方向基端側に操作突起74を備え、この操作突起74は、ハブ72のスライド用長孔76を貫通して操作部16の側面に突出している。
ハブ72は、術者が把持し易いように、操作子70と同様に硬質に形成され、且つ操作子70よりも一回り大径に形成された円筒部材である。また、ハブ72の外周面には、操作子70の一部(操作突起74)を露出する軸方向に長いスライド用長孔76が形成されている。さらに、ハブ72の内部には、複数のワイヤ40が固定されている。これにより、術者は、ハブ72に対して相対的に操作子70を操作して、外側シャフト26とガイド筒30を一体的に進退させることができる。そして、ガイド筒30の進退動作により、バスケット12の収容と露出を行い、さらに露出状態において第1拡張形態と第2拡張形態の移行を行う。
第1実施形態に係る医療用デバイス10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用効果について説明する。医療用デバイス10は、既述したように、経尿道的尿管砕石術に使用される。
経尿道的尿管砕石術において、術者は、患者に麻酔をした後、図示しないガイドワイヤを膀胱側から尿管Aに挿入し、結石の近くまでガイドワイヤを到達させる。その後、ガイドワイヤに沿って内視鏡18を挿入し、尿管A内(結石X)の状態を確認する。さらに、内視鏡18の挿通ルーメン20aを介して医療用レーザ機器(又は鉗子、電気水圧衝撃波砕石装置等)を挿入し、レーザ等の破砕処理により結石Xを破砕する。これにより、尿管A内の結石Xは、図6Aに示すように、内視鏡18の先端方向に小さく破砕された状態となる。
レーザで結石Xを破砕した後、術者は、医療用レーザ機器に替えて上述した医療用デバイス10を内視鏡18の挿通ルーメン20aに挿入し、尿管A内に進入させていく。進入時には、医療用デバイス10の外側シャフト26及び内側シャフト28が柔軟性を有していることから、湾曲又は屈曲した尿管A内でもシャフト本体部14の先端部は比較的容易に移動することができる。
医療用デバイス10の送達時において、術者は、操作子70の操作突起74をハブ72のスライド用長孔76の先端側に配置させることで、バスケット12をガイド筒30の収容空間42に収納させる。この状態では、ガイド筒30の周壁により各ワイヤ40同士が径方向内側に弾性的に押されて、バスケット12が収縮状態を呈する。
医療用デバイス10は、術者の操作により、シャフト本体部14の先端部が内視鏡18の先端部から尿管A内に進出する。シャフト本体部14の進出後は、図6Bに示すようにバスケット12を展開させる。すなわち、術者は、操作子70をスライド用長孔76の後端側に移動させることで、外側シャフト26及びガイド筒30を内側シャフト28及び保持部材32から相対的に後退させる。これにより、保持部材32の先端側に支持されているバスケット12は、ガイド筒30から露出されて、収縮状態から拡張状態に移行する。この際、術者は、操作突起74をスライド用長孔76の基端まで充分に後退させる。これにより、ガイド筒30のガイド溝44に挿入されている保持部材32の突起52が先端溝部46に配置される。すなわち、バスケット12は、ガイド筒30の先端から先端及び径方向外側に大きく拡張した第1拡張形態となる。
この第1拡張形態では、回転ワイヤ64(回転構造物60)と非回転ワイヤ66(非回転構造物62)が互いに近接している。このため、バスケット12の第1連通部68a(図5A参照)を大きく開放する。よって、術者は、第1拡張形態のバスケット12の第1連通部68aを介して、バスケット12の外側から内側に結石Xを容易に取り込むことができる。
結石Xをある程度(1〜5個程度)内側に取り込むと、術者は、次に操作部16の操作子70を進出させる。これにより、外側シャフト26及びガイド筒30が内側シャフト28及び保持部材32と相対的に進出する。そして、ガイド溝44内では、保持部材32の突起52が先端溝部46から基端溝部50に移動する。よって、保持部材32がシャフト本体部14の軸心回りに45°回転する。
上記のシャフト本体部14の動作により、図7Aに示すように、バスケット12は若干収縮する第2拡張形態に移行する。この移行時に回転ワイヤ64は非回転ワイヤ66に対し45°回転する。これにより、第1連通部68aが狭まって、バスケット12の内側に取り込んだ結石Xがワイヤ40から抜けることが抑制され、複数の結石Xを捕まえた状態を持続することができる。
術者は、さらに操作子70を進出させることで、バスケット12と相対的にガイド筒30を進出させて、バスケット12のワイヤ40を収縮させる。この際、保持部材32の突起52は、直線状に延びる基端溝部50に沿って、つまり保持部材32の姿勢を変えずに後退する。これにより図7Bに示すように、周方向に均等間隔に(45°間隔で)存在する複数のワイヤ40は互いに近接するように縮小して、複数の結石Xをこぼすことなく掴んだ状態とする。その後、図示は省略するものの、操作子70の進出に伴い結石Xを掴んだままバスケット12がさらに収縮し、内視鏡18内を通して医療用デバイス10を後退させ、尿管Aから結石Xを回収することが可能となる。
以上のように、第1実施形態に係る医療用デバイス10によれば、バスケット12が複数の回転ワイヤ64と、複数の非回転ワイヤ66とを含むことで、尿管A内の結石Xをバスケット12内に容易且つ確実に取り込むことができる。すなわち、バスケット12は、第1拡張形態で、各回転ワイヤ64及び各非回転ワイヤ66が互いに近接する位置に配置されていることで、バスケット12の内側に結石Xを入り込み易くする。そして、第1拡張形態から第2拡張形態への移行に伴い、各非回転ワイヤ66と相対的に各回転ワイヤ64が回転することで、隣接するワイヤ40同士の隙間を小さくして結石Xを良好に掴むことができる。またバスケット12は、第1拡張形態の際に複数の結石Xを取り込んでも第2拡張形態において結石Xの抜けを抑制することが可能であり、治療を効率的に行うことができる。
この場合、第2拡張形態で各回転ワイヤ64が各非回転ワイヤ66の略中間部に位置することで、隣接するワイヤ40同士の隙間をそれぞれ小さくすることができ、結石Xの抜けを一層抑制することができる。
また、医療用デバイス10は、保持部材32を有することで、各回転ワイヤ64の回転と非回転ワイヤ66の非回転とを良好に分けてバスケット12を回転動作させることができる。さらに、保持部材32は、各回転ワイヤ64をワイヤ固定孔54に固定し、各非回転ワイヤ66をワイヤ配置孔56に配置することで、各非回転ワイヤ66を非回転状態として回転し、保持している各回転ワイヤ64にのみ回転力を伝達することができる。その結果、バスケット12は、各回転ワイヤ64と各非回転ワイヤ66の相対位置を良好に変動することができる。この際、周方向に長いワイヤ配置孔56は、保持部材32が周方向に回転しても、非回転ワイヤ66の非回転状態を簡単に維持することができる。
そして、医療用デバイス10は、ガイド筒30が保持部材32と相対的に進退した際に保持部材32を容易に回転させ、保持部材32が固定している回転ワイヤ64をスムーズに連れ回すことができる。また、保持部材32がシャフト本体部14の先端側に設けられることで、バスケット12に対して保持部材32の回転力を確実に伝達することができ、バスケット12の回転動作を良好に行うことができる。
なお、医療用デバイス10は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例及び応用例をとることが可能である。例えば、ガイド筒30のガイド溝44の形状は特に限定されるものではなく、先端溝部46と基端溝部50の周方向のずれ量(角度)は自由に設計してよい。つまり、回転ワイヤ64の回転角度は、自由に設定することができる。
また、バスケット12を構成するワイヤ40の本数は、8本(4本の回転ワイヤ64と4本の非回転ワイヤ66)に限定されるものではなく、少なくとも、回転ワイヤ64が2本以上、非回転ワイヤ66が2本以上あればよい。また、回転ワイヤ64及び非回転ワイヤ66は、奇数本(例えば、3本で構成し先端頂部を接合した構成)とすることもできる。
バスケット12を構成する複数のワイヤ40は、側面視等で異なる形状(例えば、線径、線長等)に形成されていてもよい。また、回転ワイヤ64は、非回転ワイヤ66の外側又は内側のいずれに配置されていてもよい。
以下、他の変形例について図8A〜図8Dを参照して幾つか説明する。例えば、医療用デバイス10は、図8Aに示す第1変形例に係るワイヤ40Aのように、断面形状がD字形状(又は半円形状)に形成されたものを用いてもよい。また、医療用デバイス10は、図8Bに示す第2変形例に係るワイヤ40Bのように、断面形状が三日月形状(又はC字形状)に形成されたものを用いてもよい。この場合、ワイヤ40A、40Bは、断面円形状から切り欠いた部分を内側に向けて配置されるとよい。また、バスケット12は、断面形状が異なるワイヤ(例えば、ワイヤ40、40A、40B)を組み合わせて構成してもよい。
図8Cに示す第3変形例に係る保持部材32Aは、第1実施形態のワイヤ配置孔56に代えて、ワイヤ配置溝80を保持部材32Aの外周面に設けた構成となっている。このワイヤ配置溝80は、保持部材32Aの外周面の周方向に沿って所定の(ワイヤ配置孔56の長手方向の長さに一致する)溝幅を有する。このようにワイヤ配置溝80を設けても、ワイヤ配置溝80とガイド筒30の間に非回転ワイヤ66を配置して保持部材32Aの回転に非回転ワイヤ66を追従させない構成とすることができる。また、ワイヤ配置溝80を設けることで保持部材32Aをより小さく形成して、医療用デバイス10の小型化を一層促進することができる。さらに、保持部材32Aの外周面に設けられる突起82は、図8Cに示すように角柱状に形成されてもよい。要するに、突起52、82の形状や形成数は自由に設計してよく、ガイド溝44も突起52、82に応じた形成数としてよい。
図8Dに示す第4変形例に係る保持部材32Bは、第1実施形態に係るワイヤ固定孔54に代えて、回転ワイヤ64を個々に固定するワイヤ固定小孔84を複数(4つ)備えた構成となっている。このワイヤ固定小孔84は、保持部材32Bの基端側にて互いが近接し、保持部材32Bの先端側にて互いが離間するように、保持部材32B内部で傾斜して形成されている。従って、回転ワイヤ64は、基端から先端に向かって斜め放射状に延在して保持部材32Bに固定される。このように、回転ワイヤ64を固定することで、回転ワイヤ64の拡張形態(第1拡張形態、第2拡張形態)をより安定的に誘導することができる。なお、非回転ワイヤ66は、第3変形例と同様にワイヤ配置溝80に配置される。
また、保持部材32の他の変形例としては、回転ワイヤ64を固定するワイヤ固定小孔84と、非回転ワイヤ66を配置するワイヤ配置孔56又はワイヤ配置溝80を1つの同心円上に配置してもよい。
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係る医療用デバイス10Aについて説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態に係る医療用デバイス10と同一の構成、又は同一の機能を有する構成については同じ符号を付しその詳細な記載については省略する。
第2実施形態に係る医療用デバイス10Aは、図9、図10A及び図10Bに示すように、回転ワイヤ64Aと非回転ワイヤ66の配置を逆にした点で、第1実施形態に係る医療用デバイス10と異なる。具体的には、この医療用デバイス10Aのシャフト本体部14は、医療用デバイス10と同様に、外側シャフト26、内側シャフト28、ガイド筒30を備えるが、保持部材100の構成が異なる。
保持部材100は、その軸心部に1つのワイヤ配置孔102を備え、このワイヤ配置孔102の径方向外側に複数(4つ)のワイヤ固定孔104を備える。ワイヤ配置孔102は、4本の非回転ワイヤ66よりも充分に大径な内径を有し、4本の非回転ワイヤ66を内側に配置する。従って、保持部材100が軸心回りに回転しても非回転ワイヤ66が追従しなくなる。
これに対し、各ワイヤ固定孔104は、それぞれ1本の回転ワイヤ64Aを挿入可能な孔径に形成され、挿入した各回転ワイヤ64Aを強固に固定する。保持部材100と各回転ワイヤ64Aの固定手段は特に限定されず、摩擦接触の他に、例えば接着剤を用いてよい。これにより各回転ワイヤ64Aは、弾性変形自在でありつつ、保持部材100から先端方向且つ径方向外側に向かって斜めに延びる姿勢が強固に維持される。
各回転ワイヤ64Aは、保持部材100の基端から僅かに突出した箇所で切断されて短く形成されている。このように、各回転ワイヤ64Aが短くても、各回転ワイヤ64Aは保持部材100に強固に一体化されているので、保持部材100と共に保持部材100の軸心回りに円滑に回転する。また、回転ワイヤ64Aが短いことで、シャフト本体部14が軽量化し、医療用デバイス10Bの動作が容易となる。なお、各回転ワイヤ64Aの基端には、保持部材100から回転ワイヤ64Aの抜けを防止するため、ワイヤ固定孔104よりも太めのストッパ106が設けられてもよい。
一方、ガイド筒30は、医療用デバイス10と同様に、保持部材100の突起52を案内するガイド溝44を備える。図9中において、ガイド溝44の基端溝部50Aは、ガイド筒30の基端まで切り欠かれている。これにより、ガイド筒30に保持部材100を組み付ける際には、基端側の切り欠きから保持部材100をスムーズに挿入することができる。また、ガイド溝44の先端溝部46Aは、第1実施形態の先端溝部46よりも軸方向長さが長くなっている。
上記の構成により、保持部材100の基端方向を延びる内側シャフト28の内側シャフト挿通孔36には、4本の非回転ワイヤ66のみが通される。この内側シャフト28と、非回転ワイヤ66は、シャフト本体部14を延在して、医療用デバイス10Aの基端側の操作部16において操作子70に連結固定される。
なお、保持部材100の先端側に露出されるバスケット12は、図12に示す先端頂部において環状リング108を設け、非回転構造物62と回転構造物60とを回転自在に連結する構成となっている。この場合、回転構造物60と非回転構造物62は、回転ワイヤ64Aにより2つの輪60aを有すると共に、非回転ワイヤ66により2つの輪62aを有し、これらの輪60a、62aを環状リング108で繋げている。これにより、非回転構造物62と回転構造物60は、より一体的な拡張及び収縮が可能となり、また非回転構造物62に対する回転構造物60の回転を円滑に行うことができる。なお、環状リング108は、第1実施形態に係る医療用デバイス10にも適用可能なことは勿論である。
第2実施形態に係る医療用デバイス10Aは、基本的には以上のように構成される。この医療用デバイス10Aは、結石X付近まで送達され、ガイド筒30の後退により、ガイド筒30の先端にバスケット12を露出し第1拡張形態を構成する。この際、操作子70の操作突起74をスライド用長孔76の基端まで後退することで、保持部材100の突起52を先端溝部46Aに位置させる。よって、第1拡張形態では、図9に示すように、回転ワイヤ64A(回転構造物60)と非回転ワイヤ66(非回転構造物62)が近接して、バスケット12の側部に大きな隙間が形成される。
バスケット12の内側に結石Xを取り込んだ後、術者は、操作部16の操作子70を進出操作し、外側シャフト26とガイド筒30を一体的に進出させる。これにより保持部材100がガイド筒30と相対的に後退しこの保持部材100と共に回転ワイヤ64Aも後退する。そして、図11に示すように突起52が先端溝部46Aから傾斜溝部48を介して基端溝部50Aに移動することで、保持部材100がシャフト本体部14の軸心回りに回転し回転ワイヤ64Aも回転する。一方、保持部材100の軸心部に位置する非回転ワイヤ66は、保持部材100の回転の影響を受けずにその姿勢を維持する。よって、バスケット12は、回転ワイヤ64Aと非回転ワイヤ66の隙間が均等的(45°)な間隔になった第2拡張形態に良好に移行する。
以上のように、第2実施形態に係る医療用デバイス10Aでも、第1実施形態に係る医療用デバイス10と同様の効果を得ることができる。特に、保持部材100の外寄りで回転ワイヤ64Aを保持する構成では、回転ワイヤ64Aの回転時の滑り等を抑制して、保持部材100の回転動作を回転ワイヤ64Aにスムーズに伝達し、バスケット12を良好に回転動作させることができる。
〔第3実施形態〕
図13A〜図13Cに示すように、第3実施形態に係る医療用デバイス10Bは、回転ワイヤ110とガイド筒112の形状により回転ワイヤ110自体を回転させる構成となっている点で、第1及び第2実施形態に係る医療用デバイス10、10Aと異なる。具体的に、医療用デバイス10Bは、医療用デバイス10と同様に、外側シャフト26、内側シャフト28、ガイド筒112、保持部材114を備えるが、医療用デバイス10Aと同様に、回転ワイヤ110と非回転ワイヤ66の配置関係が逆となっている。つまり、内側シャフト28の内側シャフト挿通孔36内には4本の非回転ワイヤ66が挿通され、内側シャフト28の外側(外側シャフト挿通孔34)には4本の回転ワイヤ110が配置される。
この場合、内側シャフト28及び保持部材114は、非回転ワイヤ66を束ねて固定すると共に、外側シャフト26と相対的に進退可能に構成される。保持部材114は、非回転ワイヤ66を通すワイヤ配置孔56Aを軸心部に有した単純な円筒状を呈している。なお、保持部材114は、例えば図示しない突出部等を備え、ガイド筒112の内周面形状(溝等)により軸方向の直線移動がガイドされてもよい。或いは、医療用デバイス10Bは、保持部材114を省き内側シャフト28がシャフト本体部14の先端側まで延びる構成でもよい。
また、第3実施形態に係る医療用デバイス10Bの基端側は、図示は省略するが、操作部16の操作子70に外側シャフト26が連結固定され、操作子70の操作に基づき外側シャフト26及びガイド筒112が一体的に進退する構成となっている。一方、ハブ72には、内側シャフト28、回転ワイヤ110、非回転ワイヤ66が連結固定される。
4本の回転ワイヤ110は、シャフト本体部14の先端側において、保持部材114の外側を延びることで、ガイド筒112の収容空間42を構成する内周面付近を通っている。そして、各回転ワイヤ110の所定位置には、凸部116がそれぞれ設けられている。各凸部116は、回転ワイヤ110の外周面からシャフト本体部14の径方向外側に突出する矩形状の片である。また、各凸部116は回転ワイヤ110の一部にループを作製することにより形成してもよい。各凸部116は回転ワイヤ110に一体又は別体で形成される。
一方、ガイド筒112は、4本の細いワイヤ用ガイド溝118を円筒状の周壁に備える。各ワイヤ用ガイド溝118は、各回転ワイヤ110の凸部116が挿入されることで、ガイド筒112の進退時に凸部116をガイドする。各ワイヤ用ガイド溝118は、先端溝部118a、傾斜溝部118b及び基端溝部118cを有し、先端溝部118aと傾斜溝部118bがガイド筒112の周方向に45°ずれると共に、傾斜溝部118bにより一連に連通している。これにより、凸部116が先端溝部118aから基端溝部118cに移動する際に、回転ワイヤ110を45°周方向に回転させる。
第3実施形態に係る医療用デバイス10Bは、基本的には以上のように構成される。この医療用デバイス10Bは、図13Aに示すように第1拡張形態において、回転ワイヤ110の凸部116を先端溝部118aに位置させる。この状態でバスケット12は、図13Cに示すように、回転ワイヤ110と非回転ワイヤ66が近接して、大きな隙間(第1連通部68a)を形成する。
結石Xをバスケット12の内側に取り込んだ後、術者は、操作部16の操作子70を進出操作し、外側シャフト26、ガイド筒112を一体的に進出させる。この際、回転ワイヤ110の凸部116は、図14Bに示すように先端溝部118aから傾斜溝部118bを介して基端溝部118cに移動することで、回転ワイヤ110の先端側をシャフト本体部14の軸心回りに回転させる。一方、非回転ワイヤ66は回転しないため、シャフト本体部14から先端に露出するバスケット12は、図14A及び図14Cに示すように、回転ワイヤ110と非回転ワイヤ66の隙間が均等的(45°)な間隔になった第2拡張形態に良好に移行する。
以上のように、第3実施形態に係る医療用デバイス10Bでも、第1及び第2実施形態に係る医療用デバイス10、10Aと同様の効果を得ることができる。特に回転ワイヤ110を直接的にガイドするので、回転構造物60を確実に回転させることができる。
〔第4実施形態〕
図15に示すように、第4実施形態に係る医療用デバイス10Cは、バスケット12Aを回転動作させる構造を、シャフト本体部120の基端側に設けた点で、第1〜第3実施形態に係る医療用デバイス10、10A、10Bと異なる。この医療用デバイス10Cのシャフト本体部120は、外側シャフト26と、外側シャフト26の基端に接続されたガイド筒122と、ガイド筒122の内部に収容された保持部材32とを含む。さらに、医療用デバイス10Cは、外側シャフト26及びガイド筒122の内側に配置されたワイヤ用シース124を有する。また、シャフト本体部120の先端側には、バスケット12Aを露出する端部となり、外側シャフト26に連結固定される円筒状のノーズ125が設けられている。
医療用デバイス10Cのバスケット12Aは、図15及び図16に示すように、第1拡張形態から第2拡張形態への移行時に、バスケット12と同様に、回転ワイヤ64が非回転ワイヤ66と相対的に回転する。ただし、第4実施形態に係るバスケット12Aは、その露出部分において回転ワイヤ64(回転構造物60)が非回転ワイヤ66(非回転構造物62)の内側に存在する。このように内側に回転ワイヤ64が存在することで、回転ワイヤ64の回転時に、回転ワイヤ64が尿管Aに接触する可能性が大幅に減り、円滑な回転がなされる。このバスケット12Aの構造は、第1〜第3実施形態の医療用デバイス10、10A、10Bにも適用することができる。
一方、シャフト本体部120のガイド筒122は、円筒状の部材に形成され、その収容空間42には、保持部材32が摺動自在に収容される。このガイド筒122は、医療用デバイス10Cの操作部16の操作子70に連結されている。なお、医療用デバイス10Cは、ガイド筒122自体を大きく形成して、術者が把持操作する操作部16として機能させることもできる。つまり、ハブであるガイド筒122内に保持部材32を備え、術者は、ガイド筒122と保持部材32を相対操作することで、バスケット12Aの拡張、縮小、回転動作を行うことができる。
ガイド筒122の周壁には、第1実施形態に係るガイド溝44と同形状の(先端溝部46、傾斜溝部48及び基端溝部50を有する)ガイド溝126が一対設けられ、各ガイド溝126には、保持部材32の突起52が挿入される。また、ガイド筒122の周壁には、外側から収容空間42を視認可能な窓部128が設けられている。この窓部128は、医療用デバイス10Cの組立時に、保持部材32とワイヤ用シース124を接着する際に使用される。
保持部材32は、基本的に、第1実施形態と同形状に形成され、図17A及び図17Bに示すように、一対の突起52、1つのワイヤ固定孔54及び4つのワイヤ配置孔56を有する。ワイヤ固定孔54には、4本の回転ワイヤ64が挿入され、各ワイヤ配置孔56には、それぞれ1本の非回転ワイヤ66が挿入される。そして、第4実施形態では、4本の回転ワイヤ64をワイヤ用シース124に収容した状態で、ワイヤ固定孔54に挿入しワイヤ用シース124と共に保持部材32に固定している。
ワイヤ用シース124は、回転ワイヤ収容孔124aを有し、4本の回転ワイヤ64を束ねた状態で収容する。このワイヤ用シース124は、軸方向の所定範囲にわたって(保持部材32の基端部からノーズ125に達する長さで)形成されている。つまり、外側シャフト26の内部では、8本のワイヤ40のうち4本の回転ワイヤ64がワイヤ用シース124の内側にあって延び、4本の非回転ワイヤ66がワイヤ用シース124の外側を延びている。
ワイヤ用シース124は、内側シャフト28と同様にコイルチューブを適用することができる。これにより、シャフト本体部120は充分な柔軟性が得られる。なお、ワイヤ用シース124の構成は、特に限定されるものではなく、可撓性を有するチューブを適用してよい。
第4実施形態に係る医療用デバイス10Cは、基本的には以上のように構成される。この医療用デバイス10Cは、シャフト本体部120の先端が結石X付近まで送達され、操作子70が後退操作されることで、ノーズ125の先端にバスケット12Aが露出及び拡張する。この拡張時に、保持部材32の突起52をガイド溝126の先端溝部46に位置させることで、シャフト本体部120(ノーズ125)の先端に露出したバスケット12Aは、図15に示す第1拡張形態を呈する。この状態では、非回転ワイヤ66に対し回転ワイヤ64が近接した位置に配置され、大きな隙間が形成される。
バスケット12Aの内側に結石Xを取り込んだ後、術者は、操作子70を進出操作し、その先端に連結されているガイド筒122及び外側シャフト26を進出させる。これによりガイド溝126内の突起52が先端溝部46から傾斜溝部48を介して基端溝部50に移動する。そのため、保持部材32がシャフト本体部120の基端側で軸心回りに回転し、ワイヤ用シース124及び回転ワイヤ64が一体的に回転する。このワイヤ用シース124の回転は、シャフト本体部120の先端方向にも伝達されて、ワイヤ用シース124から露出された回転ワイヤ64も連れ回り回転する。一方、ワイヤ用シース124の外側に存在する非回転ワイヤ66は回転しない。その結果、バスケット12Aは、図16に示す第2拡張形態に良好に移行する。
以上のように、第4実施形態に係る医療用デバイス10Cでも、医療用デバイス10、10A、10Bと同様の効果を得ることができる。特に、長尺で湾曲等するデバイスでは、シャフト本体部120の基端側で回転力を付与してもシャフト本体部120の先端側に回転力を付与し難くなるが、医療用デバイス10Cは、ワイヤ用シース124により回転ワイヤ64を束ねることで、回転ワイヤ64を良好に回転させることができる。
また、第4実施形態に係る医療用デバイス10Cも、種々の変形例及び応用例をとることができ、例えば、保持部材32の突起52にレバー等を接合して、術者が保持部材32を直接操作する構成でもよい。
図18に示す第5変形例に係る医療用デバイス10Dのガイド筒130は、ガイド溝126Aが基端方向に向かって2股に分岐し、術者が保持部材32の回転と非回転を選択可能な構成となっている。具体的には、ガイド溝126Aは、先端溝部46に対して斜めに連なる傾斜溝部48と、この傾斜溝部48に連なる第1基端溝部50aを有する回転溝路132と、先端溝部46に直線状に連なり基端方向に延びる第2基端溝部50bを有する非回転溝路134とを含む。
術者は、バスケット12Aの回転ワイヤ64を回転させたい場合に、保持部材32の突起52を先端溝部46から回転溝路132に後退移動させる。その一方で、バスケット12Aの回転ワイヤ64を回転させたくない場合に、保持部材32の突起52を先端溝部46から非回転溝路134に後退移動させる。
このように、バスケット12Aの回転ワイヤ64の回転の実施可否を、術者の選択により切り換える構成とすることで、結石Xを取り込み作業時に一層汎用性が高い操作を行うことができる。なお、医療用デバイス10、10A〜10Cは、回転ワイヤ64の回転量(回転角度)を調整する調整機構を備えていてもよい。例えば、ガイド筒130の基端に保持部材32に連結される回転調整用ダイヤルを設けて、回転調整用ダイヤルの回転に基づき、保持部材32、回転ワイヤ64等を回転させることができる。
また、医療用デバイス10、10A〜10Cは、シャフト本体部120の先端側又は中間部にガイド筒130を備えてもよい。この場合、シャフト本体部120の基端側のハブ72にガイド溝126A(回転溝路132、非回転溝路134)と同形状の溝(図示せず)を設けて、操作子70の進退操作時にバスケット12Aの回転の可否を選択する構成とすればよい。
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。例えば、ガイド筒30に突起部、保持部材32にガイド溝が配置されていてもよい。また、医療用デバイス10、10A〜10Dは、尿管結石の治療用途に限定されるものではなく、種々の治療に適用することができ、治療用途に応じた構成や形状をとり得る。
医療用デバイス10、10A〜10Dを適用する治療例としては、血管内の血栓等の回収、食道内の誤飲物の回収等が挙げられる。また、医療用デバイス10は、生体管腔内の腫物を非回転ワイヤ66に対する回転ワイヤ64の回転に基づき切り取り、バスケット12内に取り込む構成とすることもできる。要するに、医療用デバイス10は、非回転ワイヤ66と回転ワイヤ64による動作により、生体管腔内の対象物を内部に取り込んで治療することが可能な種々の構成を適用し得る。