これらインセット納まりの引き折戸装置では、全開時に戸枠の外側に引き折戸を収納するための設置スペースが不要であり、引戸装置に比べて容易に省スペース化を達成することができる。
しかし、上記提案の引き折戸装置では、引戸及び折戸が戸枠の開口内に配置されているため、全開状態であっても引戸や折り畳まれた折戸が開口の一部に残って塞ぐこととなる。そのため、戸枠の開口が比較的狭い場合には、広い開放スペースを確保するのが困難であり、使い勝手に難がある。
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的は、引き折戸装置の構造を改良することにより、全開時に戸枠の外側に引き折戸を収納するための省スペース化を達成しつつ、戸枠の開口内に広い開放スペースを確保できるようにすることにある。
上記の目的を達成するために、この発明では、引き折戸が戸枠の外側で戸枠に沿ってスライド移動して戸枠内の開口を開閉するアウトセット式の引き折戸装置とするようにした。
具体的には、第1の発明の引き折戸装置は、戸枠の前側位置を戸枠に沿って左右方向に移動して戸枠内の開口を開閉する引き折戸を有する引き折戸装置であって、上記引き折戸は、操作部により左右方向に引き操作される引戸と、この引戸の戸尻側に連結された複数枚の折戸とを備えている。上記引戸は、上記戸枠の前側位置で該戸枠に沿って上下方向の軸心回りに回動不能な状態でスライド移動可能に設けられ、上記引戸と該引戸に隣接する戸先側折戸とは上下方向の軸心回りに揺動可能に連結され、上記複数枚の折戸は、互いに上下方向の軸心回りに揺動可能に連結され、戸尻側に位置する戸尻側折戸の戸尻側端部は、戸枠周囲の前側に位置する折戸支持部に対し上下方向の軸心を有する折戸軸を介して揺動可能に支持されており、引き折戸が戸枠内の開口を開いた全開位置では、上記引戸が戸枠の開口外部の前側位置に収納されかつ折戸が戸枠の開口外部の前側位置で折り畳まれて(折り重なって)収納されるように構成されていることを特徴とする。
この第1の発明では、引き折戸は、戸枠の前側位置を戸枠に沿って左右方向に移動して戸枠内の開口を開閉するものであり、この引き折戸が戸枠内の開口を開くときには、引戸が戸枠の前側位置で該戸枠に沿って回動不能な状態でスライドすると、この引戸に連結された折戸も引戸によって押される。折戸のうちの戸尻側折戸は折戸軸を介して折戸支持部に支持されているので、この折戸軸と引戸との間で折戸が押されて折り重なり、戸尻側折戸は折戸軸回りに回動し、引き折戸の全開位置では、引戸が戸枠の開口外部の前側位置に収納されかつ折戸が戸枠の開口外部の前側位置で折り畳まれて収納される。そのため、全開状態では、折り畳まれた折戸が開口の一部に残って塞ぐことはなく、戸枠の開口が比較的狭い場合でも広い開放スペースを確保することができて使い勝手が向上する。
また、全開位置で折戸が戸枠の開口外部の前側位置で折り畳まれて収納されるので、その収納のためのスペースが引戸装置に比べて小さくなり、省スペース化を達成することができる。
さらに、引き折戸の全開位置で引戸も戸枠の開口外部の前側位置に収納されるので、戸枠内の開口が引戸と干渉することなく完全に開放されるようになり、戸枠の開口内の開放スペースをさらに大に確保することができる。
第2の発明は、第1の発明において、折戸の端部のうち、折戸の折り畳み時に前側に移動する端部同士は接続部材により連結され、引き折戸が全閉位置から全開位置に向かって移動するとき、上記接続部材の戸先側折戸との連結部を前側に向かうように案内して該戸先側折戸を回動させる連結案内部が設けられていることを特徴とする。
この第2の発明では、引戸が引き折戸の全閉位置から全開位置に向かって移動すると、この引戸の移動に伴い、折戸において折り畳み時に前側に移動する端部同士を連結している接続部材の戸先側折戸との連結部が連結案内部による案内により前側に押されて戸先側折戸が回動し、この戸先側折戸の回動によって両折戸の連結部が前側に折れ曲がり、この動作をきっかけ(契機、動因)として折戸が回動する。このことで複数枚の折戸をスムーズに折り畳むことができる。
第3の発明は、第2の発明において、折戸軸は、折戸支持部に左右方向にスライド移動可能に支持されていることを特徴とする。
この第3の発明では、引戸が引き折戸の全閉位置から全開位置に向かって移動するとき、一旦、引き折戸の全体が開き方向にスライドした後、上記第2の発明と同様の動作で複数枚の折戸が折り畳まれる。このことで、第2の発明と同様の作用効果を奏することができる。また、開き動作の初期に引き折戸の全体がスライドすることで、全開位置で引戸を戸枠開口の外側に移動させることができ、戸枠の開口内により一層広い開放スペースを確保することができる。
第4の発明は、第1の発明において、折戸の端部のうち、折戸の折り畳み時に前側に移動する端部同士は接続部材により連結され、引き折戸の全閉位置にあるとき、この接続部材の戸先側折戸の連結位置は、戸尻側折戸の連結位置よりも前側にずれていることを特徴とする。
この第4の発明では、引戸が引き折戸の全閉位置から全開位置に向かって移動すると、この引戸の移動により、引戸と、戸尻側折戸を支持している折戸軸との間にある折戸が両者から押される。このとき、隣接する折戸の折り畳み時に前側に移動する端部同士は接続部材により連結され、引き折戸の全閉位置では、この接続部材の戸先側折戸の連結位置が戸尻側折戸の連結位置よりも前側にずれており、このことで、戸先側折戸の戸尻側端部が戸尻側折戸の戸先側端部の前側に向かうように接続部材が回動して、両折戸の連結部が前側に折れ曲がり、この動作をきっかけとして折戸が回動する。このことで複数枚の折戸をスムーズに折り畳むことができる。
第5の発明は、第1の発明において、折戸軸は、折戸支持部に左右方向にスライド移動可能に支持され、引き折戸が全閉位置から全開位置に向かって移動するとき、戸尻側折戸を前側に押して折戸軸回りに回動させる押し部材が設けられていることを特徴とする。
この第5の発明では、引戸が引き折戸の全閉位置から全開位置に向かって移動すると、この引戸の移動により、戸尻側折戸を支持している折戸軸が折戸支持部に対しスライド移動する。このスライド移動に伴い、押し部材が戸尻側折戸を前側に押すようになり、この押し動作により戸尻側折戸が折戸軸を中心にして該折戸軸と反対側の端部が前側に向かうように回動する。この回動動作をきっかけとして該戸尻側折戸に連結されている他の折戸も回動し、このことで複数枚の折戸をスムーズに折り畳むことができる。
第6の発明は、第1の発明において、折戸軸は、折戸支持部にスライド移動可能に支持され、引き折戸の全閉位置では、引戸及び折戸が戸枠の前側に戸枠に対し離隔した状態で位置しており、引き折戸が全閉位置から全開位置に向かって移動するとき、折戸軸を後側に移動させるように案内する折戸軸案内部が設けられていることを特徴とする。
この第6の発明では、引き折戸の全閉位置で引戸及び折戸が戸枠の前側に戸枠に対し離隔した状態で位置しており、この引き折戸が全開位置に向かって移動すると、折戸支持部にスライド移動可能に支持されている折戸軸が折戸軸案内部により後側に向かって移動するように案内される。この折戸軸の後側への移動に伴い、戸尻側折戸が折戸軸を中心にして該折戸軸と反対側の端部が前側に移動するように回動する。この回動動作をきっかけとして該戸尻側折戸に連結されている他の折戸も回動し、このことで複数枚の折戸をスムーズに折り畳むことができる。
第7の発明は、第1の発明において、折戸軸は、戸枠周りの支持部にスライド移動可能に支持され、引き折戸の全閉位置では、引戸及び折戸が戸枠の前側に戸枠に対し近接ないし当接した状態で位置しており、引き折戸が全閉位置から全開位置に向かって移動するとき、引戸及び折戸を戸枠の前側に戸枠に対し離隔させた後に折戸軸を後側に移動させるように案内する引き折戸案内部が設けられていることを特徴とする。
この第7の発明では、引き折戸の全閉位置で引戸及び折戸が戸枠の前側に戸枠に対し近接ないし当接した状態で位置しており、この引き折戸が全開位置に向かって移動すると、引き折戸案内部により、引戸及び折戸が戸枠の前側に戸枠に対し離隔するように移動した後、折戸支持部にスライド移動可能に支持されている折戸軸が案内部により後側に向かって移動するように案内される。この折戸軸の後側への移動に伴い、戸尻側折戸が折戸軸を中心にして該折戸軸と反対側の端部が前側に移動するように回動する。この回動動作をきっかけとして該戸尻側折戸に連結されている他の折戸も回動し、このことで複数枚の折戸をスムーズに折り畳むことができる。また、引き折戸の全閉位置では、引戸及び折戸が戸枠の前側に戸枠に対し近接ないし当接しているので、戸枠の開口を引き折戸により隙間の無い状態ないし小さい状態で閉じることができる。
以上説明したように、本発明の引き折戸装置によると、戸枠外側の前側に引き折戸を戸枠に沿ってスライド可能に配置してアウトセット式としたことにより、引き折戸の全開状態では、引戸及び折り畳まれた折戸が開口の一部に残って塞ぐのを防止できるとともに、全開位置で折戸を戸枠前側の開口外部で折り畳んで収納して、その収納スペースを小さくでき、よって、開き状態での戸枠開口の広い開放スペースの確保と、折戸の格納スペースの省スペース化の達成とを併せ図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態に係る引き折戸装置A1を概略的に示したものであり、1は建物等における壁で、この壁1によって部屋R1,R2が区画されている。壁1には開口部が形成され、この開口部の周りには戸枠2(建具枠)が施工されている。この戸枠2は左右方向に並べられて立設される1対の竪枠3L,3Rと、両竪枠3L,3Rの上端部間に架け渡された上枠(図示せず)とを備え、これら竪枠3L,3R及び上枠と、上枠の真下に位置する下方の床部(下枠に相当する)とに囲まれた部分に、出入り口となる矩形状の開口4が形成され、この戸枠2の開口4を引き折戸装置A1が開閉するようになっている。
尚、以下の各実施形態の説明では、各図の下側を「前側」とし、上側を「後側」とし、左側を「左側」とし、右側を「右側」として説明する。換言すれば、壁1は前側の部屋R1と後側の部屋R2とを区画し、戸枠2の開口4は両部屋R1,R2間の出入り口であり、この出入り口を引き折戸装置A1が開閉する。また、「戸先」は左側で、「戸尻」は右側である。
図示しないが、戸枠2における上枠の前側(図1(a)〜(d)の下側)の側面には、その上枠に沿って左右方向に延びるガイドレールが取り付けられ、このガイドレールは左右端部がそれぞれ左右の竪枠3L,3Rに重なるように上枠の略全体に亘って延びている。
また、戸枠2における右側竪枠3R(戸枠2周囲)の前側には、折戸支持部としての支持ブラケット6が突設されている。
上記引き折戸装置A1は、戸枠2の前側を戸枠2に沿って左右方向に移動して戸枠2内の開口4を開閉する引き折戸15を有し、この引き折戸15は1枚の引戸16と、この引戸16の戸尻側(右側)に連結された戸先側及び戸尻側の左右2枚の折戸18L,18Rとを備えている。引戸16は折戸18L,18Rに比べて幅(左右方向の長さ)が小さい戸材であり、その前側及び後側の上下中間部にはそれぞれ操作部としての操作ハンドル17,17が取り付けられている。引戸16はその上端部が上記ガイドレールに対し、上下方向の軸心回りに回動しないように例えば左右方向に離れた複数の車輪(図示せず)を介してスライド移動可能に吊下げ状態で支持されており、操作ハンドル17を掴んで引戸16をガイドレール(戸枠2)に沿って左右の竪枠3L,3R間を左右方向にスライドさせることで、引き折戸15を開閉操作して戸枠2の開口4を開閉するようになっている。
上記各折戸18L,18Rは幅広の戸材からなり、両折戸18L,18Rは互いに同じ幅及び高さを有する。引戸16の右端部と、引戸16に隣接する左側の戸先側折戸18Lの左端部(戸先側端部)とはヒンジ結合されており、このことで、引戸16と戸先側折戸18Lとは上下方向の軸心回りに揺動可能に連結されている。
また、両折戸18L,18Rの端部のうち、戸先側折戸18Lの右端部(戸尻側端部)と戸尻側折戸18Rの左端部(戸先側端部)とは、両折戸18L,18Rの折り畳み時に前側(部屋R1の内部)に移動する端部であり、これらの端部間には接続部材としてのリンク部材19が介在されており、このリンク部材19の両端部はそれぞれ上下方向の軸心を有するピボット軸20,20(図2参照)により戸先側折戸18Lの右端部と戸尻側折戸18Rの左端部とに連結されており、このことで、2枚の折戸18L,18R同士はリンク部材19により互いに上下方向の軸心回りに揺動可能に連結されている。
さらに、引き折戸15において戸尻側に位置する戸尻側折戸18Rは、その戸尻側端部(右端部)において、上記支持ブラケット6(折戸支持部)に対し上下方向の軸心を有する折戸軸22を介して揺動可能に支持されており、引き折戸15は、引戸16がガイドレールに支持され、戸尻側折戸18Rの戸尻側端部が折戸軸22を介して支持ブラケット6に支持されることで、全体が左右2箇所で支持されている。
そして、操作ハンドル17を掴んで引戸16を左右方向にスライド移動させることで、その引戸16に連結された2枚の折戸18L,18Rを展開状態(閉じ状態)又は折り畳み状態(開き状態)に切り換えて戸枠2の開口4を開閉し、図1(a)に示すように、引戸16を左端に移動させたときには、両折戸18L,18Rを引戸16と直線状に並ぶように展開して全閉状態とする。一方、図1(d)に示すように、引戸16を右端に移動させたときには、両折戸18L,18Rを戸先側折戸18Lの戸先側端部及び戸尻側折戸18Rの戸尻側端部が引戸16と直線状に配置されかつ戸先側折戸18Lの戸尻側端部及び戸尻側折戸18Rの戸先側端部が前側に突出するように折り畳んで(折り重ねて)全開状態とし、この引き折戸15が戸枠2内の開口4を開いた全開位置では、両折戸18L,18Rが戸枠2における右側竪枠3R前側で開口4の外部で折り畳まれて収納され、かつ引戸16の一部(例えば右半部)が同様に戸枠2における右側竪枠3R前側の開口4外部に収納されるようになっている。
また、図2に拡大して示すように、引き折戸15が全閉位置にあるとき、上記両折戸18L,18Rを連結しているリンク部材19において、その戸先側折戸18Lの戸尻側端部へのピボット軸20による連結位置は、戸尻側折戸18Rの戸先側端部へのピボット軸20による連結位置よりも前側(図2で下側)に距離Dだけずれている。このことで、引き折戸15の全閉位置から引戸16が右方向に移動するように押されたとき、両折戸18L,18Rを連結するリンク部材19の連結位置(ピボット軸20,20の位置)のずれにより、図2に矢印で示すように、リンク部材19を戸先側折戸18Lの戸尻側端部が戸尻側折戸18Rの戸先側端部に対して前側に移動するように図で反時計回り方向に回動させ、それら両端部が前側に移動して両折戸18L,18Rが折れ曲がるきっかけ(契機、動因)の動きを生じさせるようにしている。
次に、上記実施形態に係る引き折戸装置A1の動作について説明する。図1(a)に示すように、戸枠2の開口4が引き折戸15によって閉じられている全閉状態では、引戸16は左端に位置し、両折戸18L,18Rは引戸16と直線状に並ぶように展開されている。
この状態から引き折戸15を開くときには、操作ハンドル17を掴み、引戸16をガイドレールに沿って右方向にスライド移動させる。このとき、引き折戸15の全閉位置で、図2に示すように、両折戸18L,18Rを連結しているリンク部材19の戸先側折戸18Lのピボット軸20による連結位置が戸尻側折戸18Rの同連結位置よりも距離Dだけ前側にずれているので、引き折戸15の全閉位置から引戸16が右方向に移動するように押されるのに伴い、図1(b)に示すように、戸先側折戸18Lの戸尻側端部が戸尻側折戸18Rの戸先側端部に対して前側に移動するようにリンク部材19が図で反時計回り方向に回動し、それら両端部が前側に移動して両折戸18L,18Rが折れ曲がるきっかけの動きが生じる。この動きにより、図1(c)に示すように、戸先側折戸18Lの戸尻側端部と戸尻側折戸18Rの戸先側端部とがいずれも前側に移動して両折戸18L,18Rが折れ曲がり、戸枠2の開口4が開き始める。
さらに折戸18L,18Rを右側に移動させて右端に位置付けると、図1(d)に示すように、引き折戸15が全開状態となり、戸枠2の開口4が開かれる。
この全開状態では、両折戸18L,18Rは、戸先側折戸18Lの戸先側端部及び戸尻側折戸18Rの戸尻側端部がいずれも引戸16と直線上の位置に配置されかつ戸先側折戸18Lの戸尻側端部及び戸尻側折戸18Rの戸先側端部が前側に突出するように折り畳まれ(折り重ねられ)、その折り畳み状態で戸枠2における右側竪枠3L,3R前側の開口4外部に収納される。そのため、全開状態では、引き折戸15を戸枠2内の開口内に納めるインセット納まりのように、折り畳まれた折戸18L,18Rが戸枠2の開口4の一部に残ってそれを塞ぐことはなく、戸枠2の開口4が比較的狭い場合でも広い開放スペースを確保することができ、引き折戸15の使い勝手を向上させることができる。
また、上記全開状態では、折戸18L,18Rが戸枠2における右側竪枠3L,3R前側の開口4外部に折り畳まれて収納されるので、その収納のためのスペースは折戸18L,18Rのない引戸装置に比べて小さくなり、収納のための省スペース化を達成することができる。
さらに、引き折戸15の全開位置では、引戸16の一部(例えば右半部)が、折り畳まれた折戸18L,18Rと同様に戸枠2における右側竪枠3L,3R前側の開口4外部に収納されるので、戸枠2の開口4内に引戸16が大きく残ることはない。そのため、開口4が略完全に開放されるようになって、戸枠2の開口4内の開放スペースをさらに大に確保することができる。
全開状態にある引き折戸15を閉じるときには、操作ハンドル17を掴んで引戸16を左側に移動させればよく、上記開き動作と逆の動作が行われて、引き折戸15が全閉位置に移動する。
(実施形態2)
図3は実施形態2に係る引き折戸装置A2を示し(尚、以下の各実施形態では、図1及び図2と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)、上記実施形態1では、両折戸18L,18Rの端部間を連結するリンク部材19のピボット軸20,20による連結位置の違いによって両折戸18L,18Rが折れ曲がるきっかけを生じさせるようにしているのに対し、リンク部材19と戸先側折戸18Lの端部とを連結しているピボット軸20を溝により前側に案内して両折戸18L,18Rが折れ曲がるきっかけを生じさせるようにしたものである。
すなわち、この実施形態では、実施形態1と同様に、両折戸18L,18Rの端部のうち、戸先側折戸18Lの戸尻側折戸である右端部と、戸尻側折戸18Rの戸先側端部である左端部とは、両折戸18L,18Rの折り畳み時に前側に移動する端部であり、これらの端部間には接続部材としてのリンク部材19が介在され、リンク部材19の両端部はそれぞれ上下方向の軸心を有するピボット軸20,20により戸先側折戸18Lの右端部と戸尻側折戸18Rの左端部とに連結されており、2枚の折戸18L,18R同士はリンク部材19により互いに上下方向の軸心回りに揺動可能に連結されている。
そして、実施形態1とは異なり、図4に示すように、ピボット軸20,20のうち、リンク部材19を戸先側折戸18Lの戸尻側端部に連結する左側のピボット軸20は上方に延長されている。一方、ガイドレール又は戸枠2の上枠には、上記左側のピボット軸20の延長部に嵌合してそれを案内する連結案内部としての案内溝23を下面に有する案内溝形成部24が設けられている。案内溝23は、平面視で右側に向かって前側に向かうように湾曲しながら傾斜し、その溝長さ方向の左端(後端)は閉塞されているが、右端(前端)はピボット軸20の延長部が溝端部から出入り可能に開放されている。そして、引き折戸15が全閉状態にあるときには、リンク部材19の戸先側折戸18Lとの連結部である上記ピボット軸20の延長部が案内溝23の後端に位置し(図4参照)、この全閉位置から引き折戸15が全開位置に向かって移動するとき、案内溝23により、リンク部材19の戸先側折戸18Lとの間のピボット軸20を、図4で矢印にて示すように前側に案内して戸先側折戸18Lを回動させるようにしている。その他の構成は実施形態1と同様である。
したがって、この実施形態においても、上記実施形態1と同様の作用効果が得られる。
また、引き折戸15の動作について説明すると、引戸16が引き折戸15の全閉位置にあるときには、図3(a)に示すように、リンク部材19の戸先側折戸18Lとの連結部であるピボット軸20の延長部が案内溝形成部24の案内溝23の後端に位置している。引き折戸15がこの全閉位置から全開位置に向かって移動すると、この引戸16の移動に伴い、図3(b)に示すように、折戸18L,18Rにおいて折り畳み時に前側に移動する端部同士を連結しているリンク部材19の戸先側折戸18Lとの連結部であるピボット軸20の延長部が案内溝形成部24の案内溝23内を移動する。この案内溝23は平面視で右側に向かって前側に向かうように傾斜しているので、この案内溝形成部24の案内溝23による案内によりピボット軸20が前側に押され、このピボット軸20に連結されている戸先側折戸18Lがピボット軸20側の戸尻側端部を前側に向かうように図で時計回り方向に回動し、この戸先側折戸18Lの回動によって両折戸18L,18Rの連結部が前側に折れ曲がり、この動作をきっかけとして、図3(c)に示すように折戸18L,18Rが回動する。このことで、図3(d)に示すように、実施形態1と同様に2枚の折戸18L,18Rをスムーズに折り畳むことができる。
(実施形態3)
図5は実施形態3に係る引き折戸装置A3を示し、上記実施形態2に構造において、引き折戸15を全閉位置から開くときに、その初期に引き折戸15全体を戸尻方向(右方向)にスライド移動させるようにしたものである。
すなわち、この実施形態においては、戸尻側折戸18Rの戸尻側端部を揺動可能に支持している折戸軸22は、支持ブラケット6(折戸支持部)に対し、同支持ブラケット6に形成したガイド溝7により左右方向にスライド移動可能に支持されており、このことで、引き折戸15を全閉位置から開いたときに、その初期の段階で引き折戸15が右方向に所定距離Lだけスライド移動するようになっている。
また、案内溝形成部24の案内溝23は、平面視で右側に向かって前側に向かうように傾斜しているが、その溝長さ方向の左端(後端)及び右端(前端)はいずれもピボット軸20の延長部が溝端部から出入り可能に開放されている。また、案内溝形成部24の位置も実施形態2に比べて右側に上記所定距離Lと同じ寸法だけずれており、引き折戸15が全閉位置から開いて右方向に所定距離Lだけスライド移動した後にピボット軸20の延長部が案内溝23に左端から入り、引き折戸15がさらに右方向に移動すると、ピボット軸20の延長部が案内溝23の右端から抜け出すようになっている。尚、引き折戸15は全開位置で引戸16が戸枠2の右側の竪枠3Rに近接するので、引戸16における後側の操作ハンドル17は省略されている。
その他は実施形態2と同様の構成であり、この実施形態でも実施形態2と同様の作用効果を奏することができる。
また、この実施形態では、特に、引戸16が引き折戸15の図5(a)に示す全閉位置から全開位置に移動するとき、図5(b)に示すように、一旦、引き折戸15の全体が開き方向にスライドした後、図5(c)及び図5(d)に示すように、実施形態2と同様の動作で複数枚の折戸18L,18Rが折り畳まれる。このように開き動作の初期に引き折戸15の全体がスライドすることで、全開位置では引戸16を戸枠2の開口4のさらに右外側に移動させることができ、戸枠2の開口4内により一層広い開放スペースを確保することができる利点がある。
(実施形態4)
図6は実施形態4に係る引き折戸装置A4を示し、引き折戸15が引き動作時に右側に移動したときに、それと連係して戸尻側折戸18Rを前側に押して折戸軸22回りに回動させることで、両折戸18L,18Rの折れ曲がりのきっかけを生じさせるようにしている。
すなわち、この実施形態では、引き折戸15の両折戸18L,18Rは、実施形態2と同様にリンク部材19により互いに上下方向の軸心回りに揺動可能に連結されている。
また、実施形態3と同様に、戸尻側折戸18Rの戸尻側端部を揺動可能に支持している折戸軸22は、支持ブラケット6(折戸支持部)のガイド溝7に対し左右方向にスライド移動可能に支持されており、このことで、引き折戸15を全閉位置から開いたときに、その初期の段階で引き折戸15が右方向に所定距離L1だけスライド移動するようになっている。
そして、例えば戸枠2における右側の竪枠3Rには、その前面に有底の穴部(図示せず)が形成され、この穴部に押し部材26が出没可能に嵌装され、この押し部材26と穴部の底部との間には、押し部材26を突出方向(前方向)に付勢する圧縮バネ(図示せず)が縮装されている。押し部材26及び穴部の位置は、引き折戸15が全閉位置にあるときに戸尻側折戸18Rの折戸軸22と左右方向に略一致し、引き折戸15が全閉位置から開き方向に上記所定距離L1だけ右方向にスライド移動した段階で折戸軸22の位置から外れてその左側の戸尻側折戸18Rの後面に対向するような位置に設定されており、このことで、引き折戸15が全閉位置から全開位置に向かって右方向に所定距離L1だけスライド移動したとき、戸尻側折戸18Rを圧縮バネで付勢された押し部材26により前側に押して折戸軸22回りに図で反時計回り方向に回動させるようにしている。
この実施形態においては、引戸16が引き折戸15の図6(a)に示す全閉位置にあるときには、戸尻側折戸18Rの折戸軸22が竪枠3L,3R前面の穴部内の押し部材26の位置と左右方向に略一致している。そのため、押し部材26が圧縮バネの付勢力によって戸尻側折戸18Rを押しても、その押す位置は折戸軸22の位置であるので、その戸尻側折戸18Rを回動させるモーメントが働かない。
そして、図6(b)に示すように、引戸16が全閉位置から全開位置に向かって右方向にスライド移動すると、この引戸16の移動により、引き折戸15全体が右方向に所定距離L1だけ移動し、戸尻側折戸18Rを支持している折戸軸22も支持ブラケット6に対しスライド移動する。このスライド移動に伴い、圧縮バネによって付勢力されている押し部材26の押す位置が相対的に折戸軸22よりも左側に移り、この押す位置の変化により戸尻側折戸18Rを回動させるモーメントが働くようになり、このモーメントにより、図6(c)に示すように、戸尻側折戸18Rが折戸軸22を中心にして該折戸軸22と反対側の端部が前側に向かうように図で反時計回り方向に回動する。この回動動作をきっかけとして戸尻側折戸18Rに連結されている戸先側折戸18Lも回動し、このことで両折戸18L,18Rがスムーズに折り畳まれ、図6(d)に示すように、全開位置で引き折戸15を開くことができる。尚、この引き折戸15の全開位置では、押し部材26は引戸16により押されて竪枠3Rの穴部に没入する。
したがって、この実施形態でも実施形態1等と同様の作用効果が得られる。
(実施形態5)
図7は実施形態5に係る引き折戸装置A5を示し、引き折戸15の開き動作の初期に戸尻側折戸18Rの戸尻側端部を後側に変位するようにスライドさせることで、両折戸18L,18Rの折れ曲がり動作のきっかけを生じさせるようにしたものである。
すなわち、この実施形態では、引戸16を支持するガイドレールは戸枠2の上枠と平行であるが、その戸枠2に対し離れて配置されており、そのため、図7(a)に示すように、引戸16及び2枚の折戸18L,18Rからなる引き折戸15は全閉位置で戸枠2前側に離隔した状態で位置している。
また、支持ブラケット6(折戸支持部)には折戸軸案内部としてのガイド溝7が形成され、このガイド溝7に折戸軸22がスライド移動可能に支持され、このガイド溝7は、平面視で右側に向かって後側に向かうように湾曲しながら傾斜している。このことで、引き折戸15が全閉位置から全開位置に向かって移動するとき、案内溝23によって折戸軸22を後側に移動するように案内する構造となっている。
この実施形態においては、図7(a)に示すように、引き折戸15は全閉位置で戸枠2前側に離隔した状態で位置しており、この引き折戸15を全開位置に向かって右側に移動させると、図7(b)に示すように、支持ブラケット6のガイド溝7にスライド移動可能に支持されている折戸軸22が後側に向かって移動するように案内される。この折戸軸22の後側への移動に伴い、戸尻側折戸18Rが折戸軸22を中心にして該折戸軸22と反対側の端部が前側に移動するように図で反時計回り方向に回動する。図7(c)に示すように、この回動動作をきっかけとして戸尻側折戸18Rに連結されている戸先側折戸18Lも回動し、このことで両折戸18L,18Rがスムーズに折り畳まれ、図7(d)に示すように、全開位置で引き折戸15を開くことができる。
したがって、この実施形態でも実施形態1等と同様の作用効果が得られる。
(実施形態6)
図8は実施形態6に係る引き折戸装置A6を示し、上記実施形態5において、全閉位置にある引き折戸15を戸枠2前側に戸枠2と近接ないし当接させた状態で配置したものである。
すなわち、この実施形態では、引戸16を吊下げ支持するガイドレールは、その左端部が戸枠2(左側の竪枠3L)に近接し、該左端部から右側に向かうに伴って戸枠2から離れ、その離れた状態のまま戸枠2の上枠と平行に延びており、この左端部を除いた部分のガイドレールは実施形態5と同様である。そのため、図8(a)に示すように、引き折戸15は全閉位置にあるときに戸枠2前側に戸枠2に対し近接ないし当接した状態で位置している。尚、引き折戸15は全閉位置で戸枠2に近接ないし当接するので、引戸16における後側の操作ハンドル17は省略されている。
また、実施形態5と同様に、支持ブラケット6(折戸支持部)にはガイド溝7が形成され、このガイド溝7に折戸軸22がスライド移動可能に支持されている。実施形態5とは異なり、このガイド溝7は平面視で、左端部が右側に向かって前側に向かうように傾斜し、この左側部の右端に連続する右端部が右側に向かって後側に向かうように傾斜していて、全体として略L字状又は略へ字状に湾曲している。このことで、引き折戸15が全閉位置から全開位置に向かって移動するとき、ガイドレール及びガイド溝7によって引戸16及び折戸18L,18Rの全体を一旦戸枠2の前側に戸枠2に対し離隔させた後に、戸尻側折戸18Rの戸尻側端部にある折戸軸22を後側に移動するように案内する構造となっている。
本実施形態では、上記ガイドレールと支持ブラケット6のガイド溝7とにより、引戸16及び折戸18L,18Rを戸枠2の前側に戸枠2に対し離隔させた後に折戸軸22を後側に移動させるように案内する引き折戸案内部が構成されている。
したがって、この実施形態の場合、図8(a)に示すように、引き折戸15は全閉位置で戸枠2前側に戸枠2と近接ないし当接した状態で位置しており、この引き折戸15を全開位置に向かって右側に移動させると、図8(b)に示すように、ガイドレールの左端部及び支持ブラケット6のガイド溝7の左側部により、引戸16及び折戸18L,18R(引き折戸15の全体)が一旦戸枠2の前側に戸枠2に対し離隔するように移動する。次いで、その離隔状態のままで、今度は折戸軸22が支持ブラケット6のガイド溝7の右側部により後側に向かって移動するように案内される。この折戸軸22の後側への移動に伴い、図8(c)に示すように、戸尻側折戸18Rが折戸軸22を中心にして該折戸軸22と反対側の端部が前側に移動するように図で反時計回り方向に回動し、この回動をきっかけとして戸尻側折戸18Rに連結されている戸先側折戸18Lも回動する。このことで両折戸18L,18Rがスムーズに折り畳まれ、図8(d)に示すように、全開位置で引き折戸15を開くことができる。
したがって、この実施形態でも実施形態5と同様の作用効果が得られる。特に、引き折戸15の全閉位置では、引戸16及び折戸18L,18Rが戸枠2に対し近接ないし当接しているので、実施形態5に比較して、戸枠2の開口4を引き折戸15により隙間の小さい状態で閉じることができる。
(その他の実施形態)
上記各実施形態は、引き折戸15の折戸18L,18Rが2枚の場合であるが、2枚以上の複数枚(偶数枚)の折戸を備えた引き折戸であってもよい。
また、上記各実施形態では、引き折戸15は、上端部でガイドレールによって吊下げ支持されているものとしているが、下端部も床面上のガイドレールによって支持されるようにしてもよい。さらに、床面上にガイド軸を設置し、当該ガイド軸により折戸軸22の下端部も案内するようにすれば、引き折戸15の開閉動作がより安定する。