JP6384163B2 - 多孔質物品およびその製造方法 - Google Patents
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Description
近年では、釉薬処理が施されていないタイル(無釉薬タイル)が用いられている。無釉薬タイルは、釉薬タイルとは異なる表面の質感を有し、広く用いられている。
無釉薬タイル、特に磁器質のものは、高温で焼成されており、吸水率も極めて低いが、粒子間の空孔に汚れ物質が侵入することがある。
質感向上のために無釉薬タイルを研磨処理する場合には、さらに空孔が表面に現れ易くなるため、汚れの問題が深刻化する。
非特許文献1に示されているように、無釉薬タイルには、通常、広い孔径範囲、例えば、孔径0.001μm〜10μmの多数の空孔がある。
無釉薬タイルの汚れを防止するためには、このような広い範囲の孔径を有する多数の空孔を封止することが求められる。
また、汚れ防止技術としては、シリコーン樹脂やフッ素樹脂などの撥水材料を空孔内に浸透させ、撥水作用により汚れの侵入を防止する技術がある。
しかしながら、これらの技術は、無釉薬タイルの汚れ対策として十分とはいえなかった。
例えば、特許文献1記載の技術では、微細孔(例えば孔径1μm未満)は封止できても、孔径が大きい細孔(例えば孔径1μm以上)については、溶剤乾燥に伴う処理剤の収縮のため、完全な封止は困難となる。
また、撥水剤塗布技術では、撥水剤が微細孔には充填されないため、圧力がかかった場合や、長時間汚れと接触した場合に汚れを防ぐのは難しかった。
無釉薬タイルの細孔径分布は、孔径0.001μm〜10μmにわたり、さらには肉眼で確認可能な巨大空孔も存在しており、このような広い範囲の孔径を有する多数の空孔を封止するのは困難であった。
一方、空孔に侵入する汚れ物質も、その大きさは様々である。例えば、無釉薬タイルを床材として用いた場合、汚れ物質としては、靴などに付着した泥や、床にこぼれた赤ワインなどがある。泥等は粒子径が大きく(例えば粒子径数μm)、赤ワインに含まれる色素等は粒子径が小さいため(例えば粒子径数nm)、広い範囲の粒子径を有する汚れ物質に対処する必要がある。
すなわち、本発明は、無機材料からなる基材の少なくとも一主面に、孔径が互いに異なる複数の細孔が形成された多孔質物品であって、前記複数の細孔の一部に、酸化アルミニウム粒子と珪酸リチウムとを含む混合物が充填され、前記主面は、ジルコニウムと珪酸カリウムの水和化合物を含む被膜で被覆され、前記混合物が充填された細孔以外の細孔の少なくとも一部に、前記水和化合物が充填されている多孔質物品を提供する。
このため、泥などの粗大粒子による汚れだけでなく、赤ワイン等の色素などのような微小粒子による汚れを防ぐことができる。従って、汚れ防止性能に優れた多孔質物品が得られる。
このため、広い孔径範囲の細孔を確実に封止することができる。従って、汚れ防止性能に優れた多孔質物品が得られる。
また、この製造方法によれば、多孔質物品を、常温あるいはわずかな加熱にて製造可能であるため、製造コスト低減が可能となる。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
図1〜図3は本発明の多孔質物品の一実施形態である無釉薬タイル1を示すものである。無釉薬タイルとは、表面に釉薬処理が施されていないタイルである。
無釉薬タイル1は、無機材料からなるタイル基材1A(基材)の表面(少なくとも主面1a)に、孔径が広範囲(例えば、数nmから数百μm)にわたる多数の細孔2が形成されている。
無釉薬タイル1は、図1に示すように、例えば、板状に形成されている。無釉薬タイル1の平面視形状は特に制限はなく、例えば、矩形、円形、不定形などとしてよい。タイル基材1Aは、例えば、陶磁器からなる。
図2に示すように、大細孔2aは、例えば、平均孔径1μm以上の細孔2である。図3に示すように、微細孔2bは、例えば、平均孔径が1μm未満の細孔2である。
細孔2の平均孔径は、無釉薬タイル1の主面1aの平面写真に基づいて、無作為に選定した100以上の細孔2について、それぞれ最大径と最小径との平均である代表径を算出し、これら代表径の平均値として求めることができる。
また、タイル基材1Aの主面1aには、孔径が互いに異なる2以上の細孔2があればよく、例えば孔径が互いに異なる3種類以上の細孔2が形成されていてもよい。
図1に示す例では、タイル基材1Aの主面1aのみに細孔2が存在するが、タイル基材1Aの全表面に細孔2が形成されていてもよい。
多孔質物品としては、タイルに限らず、コンクリート、石材を挙げることができる。
なお、第1材料3は、複数の大細孔2aの全てに充填されていてもよいし、大細孔2aの一部のみに充填されていてもよい。
また、大細孔2aの内部空間には、第1材料3だけでなく第2材料4が充填されていてもよいが、第1材料3と第2材料4の比率(質量比)については、第1材料3の方が多い(好ましくは第1材料3が50質量%を超える)ことが好ましい。
コランダム粒子は、水だけでなく、酸とアルカリの両方に対して優れた耐久性を示す。
D50値は、粒度分布の粒子径の下限値から積算した積算個数が全体個数の50%のときの粒子径であり、D90値は、粒子径の下限値から積算した積算個数が全体個数の90%のときの粒子径である。
コランダム粒子の粒度分布は、光透過式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
D50値が0.5μmを下回ると、このコランダム粒子を含む塗布液(後述する第1混合液3a)の粘性が大きくなるため塗布し難くなり、塗布を容易にするため水を多量に添加すると、塗布膜が乾燥したときの収縮が大きく、塗布膜に開孔や割れが生じるおそれがある。一方、D50値が5μmを超えると、大細孔2aに対するコランダム粒子の充填が不十分となり、汚れ防止効果が十分に発揮されなくなるおそれがある。
また、D90値に上限を設定しなかった理由は、仮に、積算個数が全体個数の10%の粗大粒子が含まれていたとしても、残りの粒子が微細であれば充填には支障がなく、この10%の粗大粒子は後述する第二工程で取り除くことが可能であるからである。
珪酸リチウムは、粉体で用いるよりも、珪酸リチウムを酸化ケイ素(SiO2)換算で20質量%程度含む水溶液で用いる方が、安定性および取り扱いやすさの点で好ましい。
なお、珪酸アルカリとしては、珪酸リチウム以外に、珪酸ナトリウムや珪酸カリウムがあるが、珪酸ナトリウムや珪酸カリウムは耐水性の問題があり、実用性を害するおそれがあるため好ましくない。
被膜5の厚さは、1μm以上とすることができる。厚さをこの範囲とすることによって、被膜5における干渉色の発生を防ぐことができる。
被膜5の厚さは、例えば10μm以下とすることができる。厚さをこの範囲とすることによって被膜5のひび割れを防ぐことができる。
微細孔2bに第2材料4を充填するには、タイル基材1Aの主面1aに、ジルコニウム化合物と珪酸カリウムとを含む第2混合液4a(図7参照)を塗布することによって、第2混合液4aを微細孔2bに浸透させる方法を採用することができる。
なお、第2材料4は、複数の微細孔2bの全てではなく、複数の微細孔2bの一部のみに充填されていてもよい。
また、微細孔2bの内部空間には、第2材料4だけでなく第1材料3が充填されていてもよいが、第1材料3と第2材料4の比率(質量比)については、第2材料4の方が多い(好ましくは第2材料4が50質量%を超える)ことが好ましい。
なお、珪酸アルカリとしては、珪酸カリウム以外に、珪酸ナトリウムや珪酸リチウムが挙げられるが、無釉薬タイル1の白化を防ぐことができ、長期にわたって無釉薬タイル1の美観を良好にすることができることから、珪酸カリウムを用いることが好ましい。
本発明の多孔質物品の製造方法の一実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の製造方法は、第1〜第3の工程を有する。
第1の工程は、無機材料からなり、少なくとも一主面に、孔径が互いに異なる複数の細孔が形成された基材の主面に、酸化アルミニウム粒子と珪酸リチウムと水とを含む第1混合液を塗布することによって、複数の細孔の一部に第1混合液を充填する工程である。
第2の工程は、細孔に充填されなかった余剰の第1混合液を除去する工程である。
第3の工程は、余剰の第1混合液が除去された、基材の主面に、ジルコニウム化合物と珪酸カリウムとを含む水溶液である第2混合液を塗布することによって、混合物が充填された細孔以外の細孔の少なくとも一部に、第2混合液を充填させるとともに、基材の主面に、第2混合液に由来する、ジルコニウムと珪酸カリウムの水和化合物を含む被膜を形成する工程である。
以下、各工程について、具体例を挙げて説明する。
図4および図5に示すように、この工程は、タイル基材1Aの主面1aに、酸化アルミニウム粒子と珪酸リチウムと水とを含む第1混合液3aを塗布して、大細孔2a(例えば孔径1μm以上)に第1混合液3aを充填する工程である。
本実施形態の製造方法では、第1混合液3aを塗布する前に、予め、タイル基材1Aの主面1a(被塗布面)を、水や有機溶媒等を用いて洗浄し、清浄化しておくのが好ましい。これによって、第1混合液3aを塗布した際の、タイル基材1Aの主面1aに対する第1混合液3aの濡れ性を高めることができる。
ここで、酸化アルミニウム粒子と珪酸リチウムとの比率を前記範囲とした理由は、この範囲が、タイル基材1Aの表面の汚れ防止に優れ、酸化アルミニウム粒子と液体の沈降分離も小さく、優れた第1材料3が安定して得られる範囲だからである。
酸化アルミニウム粒子の比率が40未満であると、大細孔2a内の第1材料3における乾燥時の開孔が大きくなり、大細孔2aに第1材料3が十分に充填されない。一方、前記比率が60を超えると、第1混合液3aの流動性が乏しくなり、第1混合液3aが大細孔2aに十分に浸透しなくなる。
酸化アルミニウム粒子の比率を前記範囲とすることによって、第1混合液3aを大細孔2aに十分に浸透させ、大細孔2aを第1材料3で十分に充填し封止することができる。
珪酸リチウムの比率が1未満であると、第1材料3の耐水性が十分に得られなくなり、一方、前記比率が10を超えると、大細孔2a内に浸透しなかった余剰の第1混合液3aが乾燥・硬化し、除去が困難になる。
珪酸リチウムの比率を前記範囲とすることによって、第1材料3の耐水性を高めるとともに、余剰の第1混合液3aを除去し易くできる。
水の比率が30未満であると、第1混合液3aの流動性が乏しくなり、大細孔2aに第1混合液3aが十分に浸透しなくなり、一方、前記比率が59を超えると、大細孔2a内の第1材料3における乾燥時の開孔が大きくなり、大細孔2aに第1材料3が十分に充填されない。
水の比率を前記範囲とすることによって、大細孔2aに第1混合液3aが十分に浸透するとともに、大細孔2aを第1材料3で十分に充填し封止することができる。
この混合の際に、酸化アルミニウム粒子を第1混合液3a全体に十分に分散させ、かつ、タイル基材1Aの主面1aに対する第1混合液3aの濡れ性を改善するために、界面活性剤等を適宜添加してもよい。
第1混合液3aを塗布する方法としては、第1混合液3aを細孔内に確実に充填することのできる方法であれば特に限定されないが、例えば、ローラーによる塗布方法、ブラシ、刷毛やヘラなどの器具を用いた塗布方法等が用いられる。
大細孔2a内の第1混合液3aは、乾燥することによって第1材料3となる。第1材料3は、酸化アルミニウム粒子と珪酸リチウムとを含む混合物である。
第1混合液3aは酸化アルミニウム粒子を含むため、第1混合液3aが乾燥したときの収縮が小さく、開孔や割れが生じ難い。このため、大細孔2aは確実に封止される。
第1混合液3aは、酸化アルミニウム粒子を含むため、微細孔2bに充填するのが難しい場合がある。図5に示す例では、第1混合液3aは、ほとんど微細孔2bに充填されていない。
図6に示すように、この工程は、タイル基材1Aの主面1aに塗布された第1混合液3aのうち、大細孔2aに浸透しなかった余剰の第1混合液3aを除去する工程である。
余剰の第1混合液3aを除去する方法としては、吸水性を有する布材等により拭き取る方法、ブラシ等を用いて擦り取る方法、吸引する方法等が挙げられる。
図7に示すように、この工程は、余剰の第1混合液3aが除去された、タイル基材1Aの主面1aに、ジルコニウム化合物と珪酸カリウムとを含む水溶液である第2混合液4aを塗布し、微細孔2b(例えば孔径1μm未満)に第2混合液4aを充填するとともに、タイル基材1Aの主面1aに被膜5を形成する工程である。被膜5は、ジルコニウムと珪酸カリウムの水和化合物を含む。
第2混合液4aには、被膜5の特性を低下させない範囲で、界面活性剤、有機溶剤等の有機化合物を添加してもよい。
各成分の質量比は、酸化物換算にて、ZrO2:SiO2=1:10〜1:3000であることが好ましい。
ジルコニウム化合物としては、炭酸ジルコニウムカリウムが好ましい。
ジルコニウム化合物の濃度を前記範囲とすることによって、被膜5の耐水性を高めることができるとともに、第2混合液4aを、タイル基材1Aの主面1aに塗布し易い性状とすることができる。
珪酸カリウムの濃度を前記範囲とすることによって、被膜5に干渉色を生じ難くするとともに、第2混合液4aを、タイル基材1Aの主面1aに塗布し易い性状とすることができる。
また、第2混合液4aには、タイル基材1Aの主面1aに対する第1混合液3aの濡れ性を改善するために、上述した界面活性剤等を適宜添加してもよい。
タイル基材1Aの主面1aに塗布された第2混合液4aの一部は、微細孔2bに浸透する。
微細孔2bに浸透した第2混合液4aに含まれるジルコニウム化合物と珪酸カリウムとの化学反応(水和反応)により、微細孔2b内で、不溶性の水和化合物が生成される。
この水和化合物は、例えば、珪酸ジルコニウム水和物と考えられ、耐水性の点で優れている。
微細孔2b内の第2混合液4aは、乾燥によって第2材料4となる。
これにより、図1に示す無釉薬タイル1が得られる。
第1材料3は酸化アルミニウム粒子を含むため、乾燥したときの収縮が小さく、開孔や割れが生じ難い。このため、孔径が大きい大細孔2aを確実に封止することができる。
また、第1材料3で封止できなかった、孔径が小さい微細孔2bについては、ジルコニウムと珪酸カリウムの水和化合物によって封止することができる。
このように、広い孔径範囲の細孔2を封止することができるため、例えば、泥などの粗大粒子による汚れだけでなく、例えば、赤ワイン、コーヒー、コーラ等に含まれる色素などのような微小粒子による汚れを防ぐことができる。
特に、赤ワインはアルコールを含むため細孔2に浸透しやすい性質を有するが、細孔2の封止によって赤ワインによる汚れを確実に防ぐことができる。
従って、汚れ防止性能に優れた無釉薬タイル1が得られる。
この製造方法によれば、第1混合液3aによって大孔径の大細孔2aを封止し、第1混合液3aでは封止できない小孔径の微細孔2bを、第2混合液4aによって封止することができる。
このように、広い孔径範囲の細孔2を封止することができるため、例えば、泥などの粗大粒子による汚れだけでなく、例えば、赤ワイン、コーヒー、コーラ等に含まれる色素などのような微小粒子による汚れを防ぐことができる。
従って、汚れ防止性能に優れた無釉薬タイル1が得られる。
また、この製造方法によれば、無釉薬タイル1を、常温あるいはわずかな加熱にて製造可能であるため、製造コストの低減が可能となる。
図4に示すように、タイル基材1Aとして、スペイン産の無釉薬磁器研磨タイルを用意した。
このタイル基材1Aの主面1aに泥水(土粒子のほとんどが粒子径1μm以上)および赤ワイン(色素粒子のほとんどが粒子径1μm未満)を滴下し、1日間、自然乾燥させた。
タイル基材1Aの主面1aに付着した汚れに対して、洗剤や有機溶剤を用いてブラシにて清掃を試みたが、泥および赤ワインの汚れがしみとなって残った。
このことから、このタイル基材1Aは、孔径1μm以上の細孔と、孔径1μm未満の細孔を有すると推測できた。
(実験例1〜実験例10)
表1に示す組成の第1混合液3aを用意した。酸化アルミニウム粒子としては、コランダム粒子(D50=1μm、D90=10μm、日本軽金属社製)を用いた。珪酸リチウムとしては、珪酸リチウム45(日本化学社製)を用いた。
図4および図5に示すように、ローラーを用いて、タイル基材1Aの主面1aに、第1混合液3aを塗布した。
次いで、図6に示すように、余剰の第1混合液3aをゴムヘラで取り除き、タイル基材1Aの主面1aを自然乾燥させた。
第1の工程および第2の工程を経たタイル基材1Aについて、処理の有効性を確認した。
タイル基材1Aの主面1aに、泥水(土粒子のほとんどが粒子径1μm以上)を滴下し、1日間、自然乾燥させることにより、タイル基材1Aに土粒子を付着させた。
タイル基材1Aの主面1aに付着した汚れに対して、洗剤や有機溶剤を用いてブラシにて清掃を試みた。タイル基材1Aの主面1aを観察し、その清浄度を「泥汚れ清掃性」として次の5段階で評価した。評点3以上を合格とした。結果を表2に示す。
比較のため、第1の工程および第2の工程を行わない場合(実験例1)の評価結果を、表2に併せて示す。
2:未処理よりはわずかに良い。
3:未処理よりは明らかに良いが汚れの残存が認められる。
4:ほとんど汚れが認められない。
5:全く汚れが認められない。
第1の工程および第2の工程を経たタイル基材1Aの主面1aに、泥水に代えて赤ワインを滴下し、1日間、自然乾燥させることにより、タイル基材1Aの主面1aに色素粒子を付着させ、この汚れに対して清掃を試みた。
清掃したタイル基材1Aの主面1aの清浄度を「赤ワイン汚れ清掃性」として、前記5段階で評価した。結果を表2に併せて示す。
また、赤ワイン汚れ清掃性については、いずれの実験例も不十分であった。
図4および図5に示すように、ローラーを用いて、タイル基材1Aの主面1aに実験例4の第1混合液3aを塗布した。
図6に示すように、余剰の第1混合液3aをゴムヘラにて取り除き、タイル基材1Aの主面1aを自然乾燥させた。
第1混合液3aのコランダム粒子としては、表3に示す粒度分布のものを用いた。
タイル基材1Aについて、前述の方法により泥汚れ清掃性を評価した。
(実験例11〜実験例32)
第1の工程および第2の工程による処理は、粒子径が大きい泥汚れの清掃性は改善できても、粒子径が小さいワイン汚れに対しては有効ではなかった。
これは、第1混合液3aでは、ワインの色素粒子が侵入可能な1μm未満の微細な細孔を充填できなかったためであると推測できる。この問題を解決するには、微細な細孔を封止する第3の工程が必要である。
図4および図5に示すように、ローラーを用いて、タイル基材1Aの主面1aに、実験例4で用いた第1混合液3aを塗布し、図6に示すように、余剰の第1混合液3aを、ゴムヘラを用いて取り除き、タイル基材1Aの表面を自然乾燥させた。
次いで、図7に示すように、ローラーを用いて、タイル基材1Aの主面1aに、ジルコニウム化合物と珪酸カリウム化合物と水を含む第2混合液4aを塗布した。
ジルコニウム化合物としては、炭酸ジルコニウムカリウム(メルケミカル社製)を用いた。珪酸カリウム化合物としては、珪酸カリウム(モル比(SiO2/K2O)=3.6、日本化学社製)を用いた。第2混合液4aの組成を表4に示す。
第2混合液4aを塗布したタイル基材1Aを、7日間室温下で放置して自然乾燥させた。
第3の工程を経たタイル基材1Aについて、処理の有効性を確認した。
タイル基材1Aの主面1aに赤ワインを滴下し、1日間、自然乾燥させることによりタイル基材1Aに前記粒子を付着させ、この汚れに対して中性洗剤による清掃を試みた。
清掃した主面1aの清浄度を「赤ワイン汚れ清掃性」として、前記5段階で評価した。結果を表5に示す。
第3の工程を経たタイル基材1Aの主面1aに、赤ワインに代えて泥水を滴下し、1日間、自然乾燥させることにより、タイル基材1Aに土粒子を付着させ、この汚れに対して前記清掃を試みた。
清掃したタイル基材1Aの主面1aの清浄度を「泥汚れ清掃性」として、次の5段階で評価した。評点3以上を合格とした。結果を表5に併せて示す。
比較のため、第1の工程および第2の工程を行わないこと以外は、実験例18と同様の試験を行った(実験例32)。結果を表5に併せて示す。
2:未処理よりはわずかに良い。
3:未処理よりは明らかに良いが汚れの残存が認められる。
4:ほとんど汚れが認められない。
5:全く汚れが認められない。
また、珪酸カリウムの比率が10質量%未満であると、被膜5に干渉色が発生し、無釉薬タイル1の美観に影響が出た。また、珪酸カリウムの比率が30質量%を超えると、塗布液が塗装中に乾燥し、塗装作業がし難くなった。
また、第1および第2の工程を行わなかった実験例32では、ワインに対しても良好な清掃性を示さなかった。
Claims (6)
- 無機材料からなる基材の少なくとも一主面に、孔径が互いに異なる複数の細孔が形成された多孔質物品であって、
前記複数の細孔の一部に、酸化アルミニウム粒子と珪酸リチウムとを含む混合物が充填され、
前記主面は、ジルコニウムと珪酸カリウムの水和化合物を含む被膜で被覆され、
前記混合物が充填された細孔以外の細孔の少なくとも一部に、前記水和化合物が充填されており、
前記酸化アルミニウム粒子と前記珪酸リチウムとの質量比は、酸化アルミニウム粒子:珪酸リチウム=40〜60:1〜10であり、
前記酸化アルミニウム粒子の粒度分布のD50値は0.5μm以上かつ5μm以下であり、D90値は3μm以上であり、
前記ジルコニウムと前記珪酸カリウムの質量比率は、酸化物換算でZrO 2 :SiO 2 =1:10〜1:3000であることを特徴とする多孔質物品。 - 前記水和化合物が充填された細孔の平均孔径は、前記混合物が充填された細孔の平均孔径より小さいことを特徴とする請求項1に記載の多孔質物品。
- 前記水和化合物が充填された細孔の平均孔径は1μm未満であり、前記混合物が充填された細孔の平均孔径は1μm以上であることを特徴とする請求項2に記載の多孔質物品。
- 前記被膜の厚さは1μm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔質物品。
- 無機材料からなり、少なくとも一主面に、孔径が互いに異なる複数の細孔が形成された基材の前記主面に、酸化アルミニウム粒子と珪酸リチウムと水とを含む第1混合液を塗布することによって、前記複数の細孔の一部に前記第1混合液を充填する第1の工程と、
前記細孔に充填されなかった余剰の第1混合液を除去する第2の工程と、
前記余剰の第1混合液が除去された前記主面に、ジルコニウム化合物と珪酸カリウムとを含む水溶液である第2混合液を塗布することによって、前記第1混合液が充填された細孔以外の細孔の少なくとも一部に、前記第2混合液を充填させるとともに、前記主面に、前記第2混合液に由来する、ジルコニウムと珪酸カリウムの水和化合物を含む被膜を形成する第3の工程と、を有し、
前記第1混合液の酸化アルミニウム粒子と珪酸リチウムと水との質量比は、酸化アルミニウム粒子:珪酸リチウム:水=40〜60:1〜10:30〜59であり、
前記酸化アルミニウム粒子の粒度分布のD50値は0.5μm以上かつ5μm以下であり、D90値は3μm以上であり、
前記第2混合液は、ジルコニウム化合物を、酸化ジルコニウム換算で0.01質量%以上かつ1質量%以下含み、珪酸カリウムを二酸化珪素換算で10質量%以上かつ30質量%以下含み、
前記ジルコニウム化合物と前記珪酸カリウムの質量比率は、酸化物換算でZrO 2 :SiO 2 =1:10〜1:3000であることを特徴とする多孔質物品の製造方法。 - 前記ジルコニウム化合物として、炭酸ジルコニウムアンモニウムまたは炭酸ジルコニウムカリウムを用いることを特徴とする請求項5に記載の多孔質物品の製造方法。
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