JP6383580B2 - ウォータジャケットスペーサ - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関におけるシリンダブロックに形成されるオープンデッキタイプのウォータジャケットに挿入される環状のウォータジャケットスペーサに関する。
内燃機関、特に、水冷式エンジンには、シリンダブロックにおけるシリンダボア回りにウォータジャケットが形成され、このウォータジャケットに冷却水(不凍液が混合された冷却水も含む)が流通され、エンジンの作動に伴い昇温するシリンダボア壁の冷却がなされる。このようなウォータジャケット内には、ウォータジャケットスペーサが挿入され、冷却水の流通容量を調整してシリンダボア壁の冷却の適正化がなされる。このようなウォータジャケットスペーサは、ウォータジャケットの形状に沿うような環状の樹脂の成型体からなる。自動車用のエンジンの場合、直列的に連なる複数のシリンダボアを取り囲むように環状のウォータジャケットが形成されており、そのためウォータジャケットスペーサが嵩高くなる。このように、ウォータジャケットスペーサ自体が嵩高いため、これを複数梱包して、エンジンの組立現場に搬送したり、保管したりする際には、大きな輸送スペースや保管スペースを確保する必要がある。特許文献1〜特許文献3には、ウォータジャケットスペーサを複数の分割体によって構成する例が記載されている。
特許第4017584号公報 特開2008−208743号公報 特開2008−208744号公報
ところで、前記のような分割体からなるウォータジャケットスペーサは、輸送性や保管性の点で極めて有益であるが、分割体を誤った組み合わせ状態でウォータジャケットに挿入してしまうと、ウォータジャケットスペーサの所期の冷却機能が得られなくなる。特に、ウォータジャケットスペーサは、その部位に応じて冷却水の流通を規制し、或は冷却水を誘導・整流するような構造が付加されることがある。例えば、冷却水の導入口に対向する部位においては、シリンダボア壁の過冷却を防止するため、導入口から導入された冷却水を速やかに分散させるような構造が採用される。このように、部位によって構造が異なるウォータジャケットスペーサの分割体を、誤った組み合わせ状態でウォータジャケットに挿入すると、前記のようにその所期の冷却機能が果たせなくなり、エンジンの組立工程においては、このような誤った組み合わせ状態が生じないよう細心の注意を払う必要がある。そこで、これら分割体に、誤った組み合わせ状態ではウォータジャケットに挿入し得ないような構造的特徴の改善が望まれるようになった。前記特許文献1〜3には、このような分割体の誤った組み合わせ状態でのウォータジャケットに対する挿入を未然に防止する方策については言及されていない。
本発明は、前記実情に鑑みなされたもので、2個の分割体が誤った組み合わせ状態であることが簡易にわかり、正規の組み合わせ状態でのウォータジャケットへの挿入が的確になし得、内燃機関の組立工程の効率化を図ることができる2分割のウォータジャケットスペーサを提供することを目的としている。
本発明に係るウォータジャケットスペーサは、内燃機関におけるオープンデッキタイプの環状のウォータジャケットに挿入される環状のウォータジャケットスペーサであって、周方向の2箇所で分割される2個の分割体からなり、前記2個の分割体は、正規の組み合せでは、前記ウォータジャケットのデッキ側から見た平面形状に沿った環状体とされ、且つ、当該ウォータジャケットのデッキ側から当該ウォータジャケット内の所定の位置に挿入可能とされると共に、前記分割体の少なくとも同じ分割体同士の誤った組み合わせでは、前記ウォータジャケットにデッキ側から挿入しようとすると、当該分割体の一部が前記デッキより突出し、前記ウォータジャケット内への挿入がなし得ないよう構成されていることを特徴とする。
本発明に係るウォータジャケットスペーサによれば、当該ウォータジャケットスペーサが2個の分割体からなるから、梱包がコンパクトになされ、輸送や保管に有益である。また、2個の分割体は、正規の組み合せでは、ウォータジャケットのデッキ側から当該ウォータジャケット内の所定の位置に挿入可能とされるから、当該ウォータジャケットスペーサは、所期の冷却機能を発揮する。そして、2個の分割体を誤った組み合わせで、ウォータジャケットにデッキ側から挿入しようとすると、当該分割体の一部が前記デッキより突出するから、誤った組み合わせであることが即座にわかる。したがって、ウォータジャケットに対する分割体の誤った組み合わせによる組付けが未然に防止され、内燃機関の組立工程の効率化が図られる。
本発明に係るウォータジャケットスペーサにおいて、前記2個の分割体のそれぞれは、平面視した周方向長さが前記正規の組み合わせ状態の全周長の1/2より大とされている、又は、前記ウォータジャケットの内壁に形成される異形部に整合する誤挿入防止形状部を備えているものとしても良い。
これによれば、分割体の前記周方向長さを前記全周長の1/2より大とする場合、ウォータジャケットの異形部の有無に関らず、環状のウォータジャケットスペーサを分割して形成する分割体に分割部位及び分割部位の形状のみを検討すれば、本発明の目的を実現することができる。また、ウォータジャケットの異形部に整合する誤挿入防止形状部を備える分割体の場合、ウォータジャケットの異形部を利用し、そこへ整合する誤挿入防止形状部の形状のみを検討すれば、同様に本発明の目的を実現することができる。このように、いずれの場合でも、本発明の目的を実現するための分割体の形状を容易に設定することができる。
本発明に係るウォータジャケットスペーサにおいて、前記2個の分割体は、前記周方向長さが前記全周長の1/2より大とされ、正規の組み合わせでは両分割体の周方向端部が互いに所定の噛み合い態様で噛み合って前記全周長をなす環状体とされて前記ウォータジャケットに挿入可能とされ、誤った組み合わせでは、前記ウォータジャケットの径方向への食み出し部分が生じ、前記ウォータジャケットへの挿入が不可となるよう構成されていても良い。
これによれば、2個の分割体は、正規の組み合わせでは、周方向端部が互いに所定の噛み合い態様で噛み合って前記ウォータジャケットに挿入可能とされる。また、誤った組み合わせでは、前記所定の噛み合い態様の噛み合いがなされず、正規のウォータジャケットスペーサの全周長より大きくなって、ウォータジャケットの径方向への食み出し部分が生じる。したがって、1つの分割体がウォータジャケット内に挿入できても、もう一つの分割体はデッキより突出して、この組み合わせではウォータジャケット内に挿入できないことが即座にわかる。
この場合、前記所定の噛み合い態様が、周方向に沿った凹凸形状の噛み合いであっても良い。
これによれば、周方向に沿った凹凸形状の噛み合いが所定の噛み合い態様に合致しておれば、これが正規の組み合わせであって、ウォータジャケットに正しく挿入される。凹凸形状の噛み合いが所定の噛み合い態様に合致していなければ、正規のウォータジャケットスペーサの全周長より大きくなって、ウォータジャケットの径方向への食み出し部分が生じ、分割体の一部がデッキより突出することになり、これによって、誤った組み合わせであることが即座にわかる。
さらにこの場合、前記凹凸形状の噛み合いが、シリンダボアの軸方向に重なり合う形状の噛み合い、或は、シリンダボアの径方向に重なり合う形状の噛み合いであっても良い。
これによれば、シリンダボアの軸方向に重なり合う形状、或は、シリンダボアの径方向に重なり合う形状の噛み合いが所定の噛み合い態様に合致しておれば、これが正規の組み合わせであって、ウォータジャケットに正しく挿入される。この噛み合いが所定の噛み合い態様に合致していなければ、正規のウォータジャケットスペーサの全周長より大きくなって、ウォータジャケットの径方向への食み出し部分が生じ、分割体の一部がデッキより突出することになり、これによって、誤った組み合わせであることが即座にわかる。
本発明に係るウォータジャケットスペーサにおいて、前記2個の分割体の一方の分割体は、前記周方向長さが前記全周長の1/2より大とされ、他方の分割体は、前記異形部に整合する誤挿入防止形状部を備え、正規の組み合わせでは、他方の分割体が前記誤挿入防止形状部が前記異形部に整合するようウォータジャケットに挿入されると共に、一方の分割体がウォータジャケットの残余のスペースに挿入されて、両分割体が前記全周長をなす環状体とされ、誤った組み合わせでは、前記ウォータジャケットの径方向への食み出し部分が生じ、前記ウォータジャケットへの挿入が不可となるよう構成されていても良い。
これによれば、一方の分割体同士を組み合わせると、これら分割体の平面視した周方向長さが前記正規の組み合わせ状態の全周長の1/2より大とされているから、この組み合わせ状態では全周長より大きくなって、ウォータジャケットの径方向への食み出し部分が生じる。したがって、1つの分割体がウォータジャケット内に挿入できても、もう1つの分割体はデッキより突出して、この組み合わせ状態ではウォータジャケット内に挿入できないことが即座にわかる。また、他方の分割体同士を組み合わせた場合、そのうち1つの分割体を誤挿入防止形状部がウォータジャケットの異形部に整合するようウォータジャケット内に挿入できても、もう1つの分割体は、誤挿入防止形状部がウォータジャケットの径方向に食み出すことになる。したがって、この組み合わせ状態でも、分割体の1つはデッキより突出して、ウォータジャケット内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。
本発明に係るウォータジャケットスペーサにおいて、前記2個の分割体は、ともに前記ウォータジャケットの内壁に形成された互いに異なる異形部にそれぞれ整合する誤挿入防止形状部を備え、正規の組み合わせでは前記異形部のそれぞれに誤挿入防止形状部が整合して、両分割体が前記全周長をなす環状体とされてウォータジャケットに挿入され、誤った組み合わせでは、前記ウォータジャケットの径方向への食み出し部分が生じ、前記ウォータジャケットへの挿入が不可となるよう構成されても良い。
これによれば、2個の分割体のそれぞれに形成された誤挿入防止形状部を対応する異形部に整合させるようにすれば、正規の組み合わせでウォータジャケット内に挿入させることができる。しかし、誤った組み合わせでは、分割体の1つが、ウォータジャケット内に挿入できても、もう1つの分割体の誤挿入防止形状部はウォータジャケットの異形部に整合せず、ウォータジャケットの径方向への食み出し部分が生じ、当該分割体はデッキより突出して、ウォータジャケット内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。
これらの場合、前記ウォータジャケットスペーサの異形部と、前記誤挿入防止形状部とが互いに凹凸関係で整合するように構成されていても良い。
これによれば、異形部と誤挿入防止形状部との凹凸関係の整合によって、各分割体のウォータジャケットにおける所定部位への挿入の視覚的な判別がし易くなる。
この凹凸関係としては、前記ウォータジャケットスペーサの異形部が、ウォータジャケットの外側内壁に形成される凹部であり、前記誤挿入防止形状部が当該異形部に整合するよう径方向に突出する凸部であるようにしても良い。
これによれば、異形部の凹形状と、誤挿入防止形状部の凸形状とが整合することになるから、各分割体のウォータジャケットにおける所定部位への挿入の視覚的な判別がし易くなる。
本発明によれば、ウォータジャケットスペーサが、2分割のウォータジャケットスペーサであることにより輸送性及び保管性に優れる。また、2個の分割体が誤った組み合わせである場合にはその事実が簡易にわかり、正規の組み合わせ状態でのウォータジャケットへの挿入が的確になし得、もって、内燃機関の組立工程の効率化を図ることができる。
本発明に係るウォータジャケットスペーサが適用される自動車用エンジンにおけるシリンダブロックの一例を概略的に示す平面図である。 (a)(b)(c)は、本発明に係るウォータジャケットスペーサの第一の実施形態を示す模式的斜視図であって、(a)は分割体の正規の組み合わせ状態を、(b)(c)は分割体の誤った組み合わせ状態をそれぞれ示す。 (a)(b)(c)は、同実施形態の第1の変形例を示す図2と同様図である。 (a)(b)(c)は、同実施形態の第2の変形例を示す図2と同様図である。 (a)(b)(c)は、同実施形態の第3の変形例を示す図2と同様図である。 (a)(b)(c)は、本発明に係るウォータジャケットスペーサの第二の実施形態を示す模式的平面図であって、(a)は分割体の正規の組み合わせ状態を、(b)(c)は分割体の誤った組み合わせ状態をそれぞれ示す。 (a)(b)(c)は、同実施形態の変形例を示す図6と同様図である。 (a)(b)(c)は、本発明に係るウォータジャケットスペーサの第三の実施形態を示す模式的平面図であって、(a)は分割体の正規の組み合わせ状態を、(b)(c)は分割体の誤った組み合わせ状態をそれぞれ示す。 (a)(b)(c)は、本発明に係るウォータジャケットスペーサの第四の実施形態を示す模式的平面図であって、(a)は分割体の正規の組み合わせ状態を、(b)(c)は分割体の誤った組み合わせ状態をそれぞれ示す。 (a)(b)(c)(d)は、本発明に係るウォータジャケットスペーサの第五の実施形態を示し、ウォータジャケットスペーサを周方向に展開した状態の模式的側面図であって、(a)は分割体の正規の組み合わせ状態を、(b)(c)(d)は分割体の誤った組み合わせ状態をそれぞれ示す。 (a)(b)(c)は、本発明に係るウォータジャケットスペーサの第六の実施形態を示し、ウォータジャケットスペーサを周方向に展開した状態の模式的側面図であって、(a)は分割体の正規の組み合わせ状態を、(b)(c)は分割体の誤った組み合わせ状態をそれぞれ示す。 (a)(b)(c)(d)は、同実施形態における分割体の別の誤った組み合わせ状態をそれぞれ示す図11と同様図である。 (a)は本発明に係るウォータジャケットスペーサの梱包時の荷姿の一例を示す模式的平面図であり、(b)は参考例の同荷姿を示す同様図である。
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るウォータジャケットスペーサが適用される自動車用エンジン(内燃機関)1におけるシリンダブロック2の一例を概略的に示している。図1に示すウォータジャケットスペーサは、自動車用エンジン1におけるオープンデッキタイプの環状のウォータジャケット3に挿入される環状のウォータジャケットスペーサ4である。このウォータジャケットスペーサ4は、周方向の2箇所で分割される2個の分割体5,6からなり、この2個の分割体5,6は、正規の組み合せでは、ウォータジャケット3のデッキ30側(図1の紙面手前側)から見た平面形状に沿った環状体とされ、且つ、ウォータジャケット3のデッキ30側から当該ウォータジャケット3内の所定の位置に挿入可能とされると共に、誤った組み合わせでは、ウォータジャケット3にデッキ30側から挿入しようとすると、分割体5,6の一部がデッキ30より突出するよう構成されている。
図例のシリンダブロック2は、3気筒エンジンを構成し、3個のシリンダボア20…を、軸Lが互いに平行で、且つ、平面視して直列的に配列するよう備え、この3個のシリンダボア20…を取り囲むように環状のウォータジャケット3が一連的に形成されている。シリンダブロック2の上面(不図示のクランク室とは反対側面)には不図示のシリンダヘッドがボルト(不図示)によって締結一体とされる。2aは、シリンダヘッドをシリンダブロック2に締結一体化するためのボルト用挿通孔である。ウォータジャケット3は、深さ方向底部の底壁(内壁の一部)31、内側内壁(シリンダボア20側の内壁)32、外側内壁(シリンダボア20とは反対側の内壁)33からなり、シリンダブロック2の上面側に開口されている。この開口する側、即ち、シリンダヘッドが締結される側がデッキ30とされる。ウォータジャケット3には、シリンダブロック2に設けられた冷却水導入口2bから冷却水が導入される。導入された冷却水は、ウォータジャケット3内を流通し、冷却水排出口2cから排出される。ウォータジャケット3内を冷却水が流通する間、ウォータジャケットスペーサ4によって流通容量及び流速の適性化がなされ、シリンダボア20の壁部の冷却が適正になされる。
本発明のウォータジャケットスペーサの第一の実施形態について、図2〜図5をも参照して説明する。本実施形態のウォータジャケットスペーサ4を構成する分割体5,6は、いずれも平面視した(デッキ30側から見た)周方向長さが、ウォータジャケットスペーサ4の平面視した全周長の1/2より大とされている。両分割体5,6は、正規の形状におけるウォータジャケットスペーサ4をシリンダボア20の並列方向の両端部でカットしたような形状とされている。そして、両分割体5,6は、正規の組み合わせでは、両分割体5,6の周方向端部50,60が互いに所定の噛み合い態様で噛み合って前記全周長をなす環状体とされて前記ウォータジャケット3に挿入可能とされる。また、誤った組み合わせでは、前記全周長より大きくなってウォータジャケット3の径方向への食み出し部分が生じ、ウォータジャケット3への挿入が不可となるよう構成されている。本実施形態における所定の噛み合い態様は、周方向に沿った凹凸形状の噛み合いであって、この凹凸形状の噛み合いが、シリンダボア20の軸L方向に重なり合う形状の噛み合いである。
図2に示す例では、両分割体5,6における周方向端部50,60の端縁部50a,60aは、軸L方向に対して直状に傾斜した形状とされている。一方の分割体5の端縁部50aは、ウォータジャケットスペーサ4の深さ方向の底部側が対向する他方の端縁部60a側に突出するように(凸状に)、深さ方向の開口部側が対向する他方の端縁部60aとは反対側に凹むように(凹状に)形成されている。また、他方の分割体6の端縁部60aは、前記深さ方向の開口部側が対向する一方の端縁部50a側に突出するように(凸状に)、深さ方向の底部側が対向する一方の端縁部50aとは反対側に凹むように(凹状に)形成されている。そして、傾斜した端縁部50a,60aの中間部における両分割体5,6の周方向長さは、ウォータジャケットスペーサ4の前記全周長の1/2に相当する。図1の1点鎖線Aは、端縁部50a,60aの中間部を結ぶ線であって、ウォータジャケットスペーサ4を前記全周長の1/2で分断したと想定した場合の分断線に相当する。このように構成される両分割体5,6において、図2(a)に示すように、両分割体5,6の正規の組み合わせ状態では、両分割体5,6における周方向端部50,60の端縁部50a,60aが互いに凹凸形状の噛み合いによって整合し、シリンダボア20の軸L方向に重なり合うよう噛み合う。これによって、両分割体5,6は、所定のウォータジャケットスペーサ4の形状をなし、一部が径方向に食み出すことなく、即ち、一部がデッキ30(図1参照)より突出することなく、ウォータジャケット3内に挿入が可能とされる。
なお、図2において、ウォータジャケット3の外側内壁33を2点鎖線で示し、内側内壁32(図1参照)の図示を省略している。これは、以下の実施形態を示す図においても同様である。また、図2において2点鎖線で示す外側内壁33は、ウォータジャケット3の開口部における当該外側内壁33の周縁部の位置を概念的に示している。さらに、図2に示す軸Lは、図1に示すシリンダボア20毎の3本の軸を便宜上1本の軸として表している。これらは、図3〜図5においても同様である。
図2(b)(c)は、両分割体5,6を誤って組み合わせた状態を示している。(b)図は、一方の分割体5,5同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態では、分割体5,5の周方向端部50,50が互いに突き合せられるが、その端縁部50a,50a同士は、前記のように軸L方向に重なり合うように噛み合わず、その平面形状はウォータジャケット3より大きくなる。したがって、分割体5,5の一部がウォータジャケット3の径方向に食み出し、即ち、デッキ30より突出することになり、ウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。(c)図は、他方の分割体6,6同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態でも、端縁部60a,60a同士は、前記のように軸L方向に重なり合うように噛み合わず、その平面形状はウォータジャケット3より大きくなり、一部がウォータジャケット3の径方向に食み出し、即ち、デッキ30より突出することになる。したがって、分割体6,6の一部がウォータジャケット3の径方向に食み出し、即ち、デッキ30より突出することになり、ウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。図2(b)(c)の例では、誤った組み合わせの分割体5(6)の1つの分割体5(6)をウォータジャケット3に挿入できても、もう1つの分割体5(6)が挿入できない状態を示している。しかし、誤って組み合わせた状態(突合せた状態)でウォータジャケット3に挿入しようとすると、両者がともにウォータジャケット3に挿入し得ない状態となることは、図2(b)(c)から自明である。また、一方の分割体5の端縁部50aの形状と、他方の分割体6の端縁部60aの形状とが、逆の関係であっても同様であることも自明である。
このように、2個の分割体5,6が誤った組み合わせである場合には、その事実が、視覚的にも簡易にわかり、正規の組み合わせ状態でのウォータジャケット3への挿入が的確になし得、もって、自動車用エンジン1の組立工程の効率化を図ることができる。
図3は同実施形態の第1の変形例を模式的に示している。この例では、一方の分割体5における周方向端部50の端縁部50bは、周方向に沿って略三角形状に凹む谷形の形状(凹形状)とされ、他方の分割体6における周方向端部60の端縁部60bは、周方向に沿って略三角形状に突出する山形の形状(凸形状)とされている。そして、谷形形状の端縁部50bの深さ方向中間部及び山形形状の端縁部60b高さ方向の中間部における両分割体5,6の周方向長さは、ウォータジャケットスペーサ4の前記全周長の1/2に相当する。このように構成される両分割体5,6において、図3(a)に示すように、両分割体5,6の正規の組み合わせ状態では、両分割体5,6における周方向端部50,60の端縁部50b,60bが互いに凹凸形状の噛み合いによって整合し、シリンダボア20の軸L方向に重なり合うよう噛み合う。これによって、両分割体5,6は、所定のウォータジャケットスペーサ4の形状をなし、一部が径方向に食み出すことなく、即ち、一部がデッキ30(図1参照)より突出することなく、ウォータジャケット3内に挿入が可能とされる。
図3(b)(c)は、両分割体5,6を誤って組み合わせた状態を示している。(b)図は、一方の分割体5,5同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態では、分割体5,5の周方向端部50,50が互いに突き合せられるが、その端縁部50b,50b同士は、前記のように軸L方向に重なり合うように噛み合わず、その平面形状はウォータジャケット3より大きくなる。したがって、分割体5,5の一部がウォータジャケット3の径方向に食み出し、即ち、デッキ30より突出することになり、ウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。(c)図は、他方の分割体6,6同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態でも、端縁部60b,60b同士は、前記のように軸L方向に重なり合うように噛み合わず、前記と同様にウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。
その他の構成は図2の例と同様であるので共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
図4は、同実施形態の第2の変形例を模式的に示している。この例では、両分割体5,6の周方向端部50,60のそれぞれが、図2に示す例と同様の端縁部50a,60aと、図3に示す例と同様の端縁部50b,60bとを備えている。このように構成される両分割体5,6において、図4(a)に示すように、両分割体5,6の正規の組み合わせ状態では、両分割体5,6における周方向端部50,60の一方の端縁部50a,60a及び他方の端縁部50b,60bが互いに凹凸形状の噛み合いによって整合し、シリンダボア20の軸L方向に重なり合うよう噛み合う。これによって、両分割体5,6は、所定のウォータジャケットスペーサ4の形状をなし、一部が径方向に食み出すことなく、即ち、一部がデッキ30(図1参照)より突出することなく、ウォータジャケット3内に挿入が可能とされる。
図4(b)(c)は、両分割体5,6を誤って組み合わせた状態を示している。(b)図は、一方の分割体5,5同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態では、分割体5,5の周方向端部50,50が互いに突き合せられるが、その端縁部50a,50b同士は、前記のように軸L方向に重なり合うように噛み合わず、その平面形状はウォータジャケット3より大きくなる。したがって、分割体5,5の一部がウォータジャケット3の径方向に食み出し、即ち、デッキ30より突出することになり、ウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。(c)図は、他方の分割体6,6同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態でも、端縁部60a,60b同士は、前記のように軸L方向に重なり合うように噛み合わず、前記と同様にウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。
その他の構成は図2及び図3に示す例と同様であるので共通部分に同一の符号を付し、ここでもその説明を割愛する。
図5は、同実施形態の第3の変形例を模式的に示している。この例では、両分割体5,6の周方向端部50,60のそれぞれが、図2示す例と同様の端縁部50a,60aと、横向き台形状の端縁部50c,60cとを備えている。台形状の端縁部50c,60cは、互いに凹凸関係で整合し合う形状とされている。このように構成される両分割体5,6において、図5(a)に示すように、両分割体5,6の正規の組み合わせ状態では、両分割体5,6における周方向端部50,60の一方の端縁部50a,60a及び他方の端縁部50c,60cが互いに凹凸形状の噛み合いによって整合し、シリンダボア20の軸L方向に重なり合うよう噛み合う。これによって、両分割体5,6は、所定のウォータジャケットスペーサ4の形状をなし、一部が径方向に食み出すことなく、即ち、一部がデッキ30(図1参照)より突出することなく、ウォータジャケット3内に挿入が可能とされる。
図5(b)(c)は、両分割体5,6を誤って組み合わせた状態を示している。(b)図は、一方の分割体5,5同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態では、分割体5,5の周方向端部50,50が互いに突き合せられるが、その端縁部50a,50c同士は、前記のように軸L方向に重なり合うように噛み合わず、その平面形状はウォータジャケット3より大きくなる。したがって、分割体5,5の一部がウォータジャケット3の径方向に食み出し、即ち、デッキ30より突出することになり、ウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。(c)図は、他方の分割体6,6同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態でも、端縁部60a,60c同士は、前記のように軸L方向に重なり合うように噛み合わず、前記と同様にウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。
その他の構成は図2の例と同様であるので共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
本発明のウォータジャケットスペーサの第二の実施形態について、図6及び図7をも参照して説明する。本実施形態では、ウォータジャケットスペーサ4を構成する分割体5,6は、いずれも平面視した(デッキ30側から見た)周方向長さが、ウォータジャケットスペーサ4の平面視した全周長の1/2より大とされている。また、両分割体5,6は、正規の組み合わせでは、両分割体5,6の周方向端部51,61が互いに所定の噛み合い態様で噛み合って前記全周長をなす環状体とされて前記ウォータジャケット3に挿入可能とされる。さらに、誤った組み合わせでは、ウォータジャケット3の径方向への食み出し部分が生じ、ウォータジャケット3への挿入が不可となるよう構成されている。加えて、前記所定の噛み合い態様は、周方向に沿った凹凸形状の噛み合いである。これらの点で、前記第一の実施形態と共通する。しかし、この凹凸形状の噛み合いが、シリンダボア20の径方向に重なり合う形状の噛み合いである点で第一の実施形態と異なる。
図6に示す例では、分割体5,6の周方向端部51,61がいずれも段差状に薄肉に形成されている。一方の分割体5の周方向端部51は、外径側部分に段差部51aを有し、他方の分割体6の周方向端部61は、内径側部分に段差部61aを有している。即ち、周方向端部51,61が周方向に突出する凸部とされ、段差部51a,61aが周方向に凹む凹部とされ、これにより、周方向端部51,61と段差部51a,61aとが径方向に重なり合うよう噛み合い、前記所定の噛み合い態様が確立される。図6(a)の1点鎖線Aは、周方向端部51,61の中間部を結ぶ線であって、ウォータジャケットスペーサ4を前記全周長の1/2で分断したと想定した場合の分断線に相当する。このように構成される両分割体5,6において、図6(a)に示すように、両分割体5,6の正規の組み合わせ状態では、両分割体5,6における周方向端部51,61と、段差部61a,51aとが互いに凹凸形状の噛み合いによって整合し、シリンダボア20の径方向に重なり合うよう噛み合う。これによって、両分割体5,6は、所定のウォータジャケットスペーサ4の形状をなし、一部が径方向に食み出すことなく、即ち、一部がデッキ30(図1参照)より突出することなく、ウォータジャケット3内に挿入が可能とされる。
図6(b)(c)は、両分割体5,6を誤って組み合わせた状態を示している。(b)図は、一方の分割体5,5同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態では、分割体5,5の周方向端部51,51が互いに突き合せられるが、前記のように径方向に重なり合う噛み合い構造が確立されず、その平面形状はウォータジャケット3より大きくなる。したがって、分割体5,5の一部がウォータジャケット3の径方向に食み出し、即ち、デッキ30(図1参照)より突出することになり、ウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。(c)図は、他方の分割体6,6同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態でも、周方向端部61,61は、前記のように径方向に重なり合うように噛み合わず、前記と同様にウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。
その他の構成は、図2の例と同様であるので共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
図7は第二の実施形態の変形例を模式的に示している。図7に示す例では、一方の分割体5の周方向端部51が周方向に向く凹溝形状部51bとされ、他方の分割体6の周方向端部61が凹溝形状部51bに嵌合し得る薄肉突状部61bとされている。即ち、一方の分割体5の周方向端部51の凹溝形状部51bと、他方の分割体6の周方向端部61の薄肉突状部61bとの嵌合により、径方向に重なり合うよう噛み合う前記所定の噛み合い態様が確立される。図7(a)の1点鎖線Aは、周方向端部51,61の周方向中間部を結ぶ線であって、ウォータジャケットスペーサ4を前記全周長の1/2で分断したと想定した場合の分断線に相当する。このように構成される両分割体5,6においては、図7(a)に示すように、両分割体5,6の正規の組み合わせ状態で、両分割体5,6の周方向端部51,61が、凹溝形状部51bと薄肉突状部61bとの嵌合によって、シリンダボア20の径方向に重なり合うよう噛み合う。これによって、両分割体5,6は、所定のウォータジャケットスペーサ4の形状をなし、一部が径方向に食み出すことなく、即ち、一部がデッキ30(図1参照)より突出することなく、ウォータジャケット3内に挿入が可能とされる。
図7(b)(c)は、両分割体5,6を誤って組み合わせた状態を示している。(b)図は、一方の分割体5,5同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態では、分割体5,5の周方向端部51,51が互いに突き合せられるが、前記のように径方向に重なり合う噛み合い構造が確立されず、その平面形状はウォータジャケット3より大きくなる。したがって、分割体5,5の一部がウォータジャケット3の径方向に食み出し、即ち、デッキ30より突出することになり、ウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。(c)図は、他方の分割体6,6同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態でも、周方向端部61,61は、前記のように径方向に重なり合うように噛み合わず、前記と同様にウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。
その他の構成は、図6に示す例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
本発明のウォータジャケットスペーサの第三の実施形態について、図8をも参照して説明する。この実施形態においては、一方の分割体5は、その周方向長さがウォータジャケットスペーサ4の全周長の1/2より大とされる。他方の分割体6は、ウォータジャケット3の外側内壁33に形成された異形部(凹部)34に整合する誤挿入防止形状部(凸部)6aを備える。そして、他方の分割体6は、一方の分割体5との正規の組み合わせでは、誤挿入防止形状部6aが異形部34に整合するようウォータジャケット3に挿入されると共に、一方の分割体5がウォータジャケット3の残余のスペースに挿入されて、両分割体5,6が前記全周長をなす環状体とされるよう構成される。このように構成される両分割体5,6において、図8(a)に示すように、両分割体5,6の正規の組み合わせ状態では、両分割体5,6における周方向端部52,62が互いに突き合わされる。これによって、両分割体5,6は、所定のウォータジャケットスペーサ4の形状をなす。両分割体5,6は、この突合せ状態で、或は、個別にウォータジャケット3に挿入される。この時、誤挿入防止形状部6aが異形部34に整合するようウォータジャケット3に挿入され、一部が径方向に食み出すことなく、即ち、一部がデッキ30(図1参照)より突出することなく、ウォータジャケット3内に挿入が可能とされる。
図8(b)(c)は、両分割体5,6を誤って組み合わせた状態を示している。(b)図は、一方の分割体5,5同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態では、分割体5,5の周方向端部52,52が互いに突き合せられるが、分割体5の周方向長さが、ウォータジャケットスペーサ4の全周長の1/2より大とされているから、突合せられた状態の平面形状はウォータジャケット3より大きくなる。したがって、分割体5,5の一部がウォータジャケット3の径方向に食み出し、即ち、デッキ30より突出することになり、ウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。(c)図は、他方の分割体6,6同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態では、そのうち1つの分割体6を誤挿入防止形状部6aがウォータジャケット3の異形部34に整合するようウォータジャケット3内に挿入できても、もう1つの分割体6は、誤挿入防止形状部6aがウォータジャケット3の径方向に食み出すことになる。したがって、もうひとつの分割体6がウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。
なお、図8では、異形部34がウォータジャケット3の外側内壁33に形成された凹部であり、誤挿入防止形状部6aが分割体6の外周に径方向に突出するよう形成された凸部であるが、異形部34及び誤挿入防止形状部6aの凹凸関係が逆であっても良い。また、ウォータジャケット3の内側内壁32(図1参照)と分割体6の内周との間に、同様の整合関係をなす異形部及び誤挿入防止形状部を形成しても良い。さらに、両分割体5,6の周方向端部52,62に、図2〜図7に示すような噛み合い形状部を形成しても良い。その他の構成は、図2の例と同様であるので共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
本発明のウォータジャケットスペーサの第四の実施形態について、図9をも参照して説明する。本実施形態では、両分割体5,6は、ともにウォータジャケット3の外側内壁33に形成された互いに異なる異形部(凹部)35,34にそれぞれ整合する誤挿入防止形状部(凸部)5a,6aを備える。両分割体5,6の正規の組み合わせでは異形部35,34のそれぞれに誤挿入防止形状部5a,6aが整合して、両分割体5,6が前記全周長をなす環状体とされるよう構成される。このように構成される両分割体5,6において、図9(a)に示すように、両分割体5,6の正規の組み合わせ状態では、両分割体5,6における周方向端部52,62が互いに突き合わされる。これによって、両分割体5,6は、所定のウォータジャケットスペーサ4の形状をなす。両分割体5,6は、この突合せ状態で、或は、個別にウォータジャケット3に挿入される。この時、誤挿入防止形状部5a,6aが異形部35,34にそれぞれ整合するようウォータジャケット3に挿入され、一部が径方向に食み出すことなく、即ち、一部がデッキ30(図1参照)より突出することなく、ウォータジャケット3内に挿入が可能とされる。
図9(b)(c)は、両分割体5,6を誤って組み合わせた状態を示している。(b)図は、一方の分割体5,5同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態では、分割体5,5の周方向端部52,52が互いに突き合せられるが、分割体5,5の1つの分割体5を、誤挿入防止形状部5aを異形部35に整合させることによって、ウォータジャケット3内に挿入することができる。しかし、もう1つの分割体5の誤挿入防止形状部5aはウォータジャケット3の異形部34に整合せず、ウォータジャケット3の径方向への食み出し部分が生じる。当該もう1つの分割体5はデッキ30より突出して、ウォータジャケット3内に挿入できず、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。また、(c)図は、他方の分割体6,6同士を組み合わせた状態を示している。この組み合わせ状態では、そのうち1つの分割体6を誤挿入防止形状部6aがウォータジャケット3の異形部34に整合するようウォータジャケット3内に挿入できても、もう1つの分割体6は、誤挿入防止形状部6aが異形部35に整合せず、ウォータジャケット3の径方向に食み出すことになる。したがって、もう1つの分割体6はウォータジャケット3内に挿入できず、デッキ30より突出して、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。
なお、本実施形態において、異形部35,34が互いに異なるとは、図例のように形状や大きさが互いに異なる場合の他、ウォータジャケット3の線対称位置に設けられていない場合も含まれる。そして、図9では、異形部35,34がウォータジャケット3の外側内壁33に形成された凹部であり、誤挿入防止形状部5a,6aが分割体5、6の外周に径方向に突出するよう形成された凸部であるが、異形部35,34及び誤挿入防止形状部5a,6aの凹凸関係が逆であっても良い。また、ウォータジャケット3の内側内壁32(図1参照)と分割体5、6の内周との間に、同様の整合関係をなす異形部及び誤挿入防止形状部を形成しても良い。さらに、両分割体5,6の周方向端部52,62に、図2〜図7に示すような噛み合い形状部を形成しても良い。その他の構成は、図8の例と同様であるので共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
本発明のウォータジャケットスペーサの第五の実施形態について、図10をも参照して説明する。図10では、ウォータジャケット3の内壁の一部としての底壁31及びデッキ30が2点鎖線で示されている。本実施形態では、両分割体5,6のそれぞれが、上辺部に突起部5b,6bを備えている。そして、両分割体5,6の周方向両端部50,60は、周方向に沿った凹凸形状の噛み合い態様であって、軸L(図1、図2等参照)方向に重なり合う噛み合う凹形状(谷形状)の端縁部50d及び凸形状(山形状)の端縁部60dを、それぞれ備えている。この凹凸形状の端縁部50d,60dの所期の噛み合い態様による分割体5,6の正規の組み合わせでは、分割体5,6が所定のウォータジャケットスペーサ4の形状をなすよう構成される。また、分割体5,6が誤った組み合わせでウォータジャケット3に挿入された時には、突起部5b,6bのいずれかが、ウォータジャケット3のデッキ30から突出するように構成される。このように構成される両分割体5,6において、図10(a)に示すように、両分割体5,6の正規の組み合わせ状態では、両分割体5,6の周方向両端部50,60が突き合せられ、凹凸形状の端縁部50d,60dが所期の噛み合い状態とされる。これによって、分割体5,6が所定のウォータジャケットスペーサ4の形状をなし、ウォータジャケット3内に、いずれの突起部5b,6bもデッキ30より突出することなく挿入が可能とされる。
図10(b)(c)(d)は、両分割体5,6を誤って組み合わせた状態を示している。(b)(c)図は、一方の分割体5,5同士を組み合わせた状態を示している。(b)図は、分割体5,5のうちの1つの分割体5は、その周方向端部50がもう1つの分割体5の周方向端部50の上に乗るように組み合わせられた状態を示す。この分割体5,5の組み合わせ状態では、その全周長は正規の組み合わせにおける全周長と同じで、両分割体5,5がともにウォータジャケット3内に挿入可能とされるが、1つの分割体5の突起5bがデッキ30より突出することになり、したがって、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。また、(c)図は、分割体5,5のうちの1つの分割体5は、その周方向端部50における凹形状の端縁部50dの一部がもう1つの分割体5における周方向端部50の凹形状の端縁部50dの一部に噛み合って組み合わさった状態となっていることを示す。この分割体5,5の組み合わせ状態でも、その全周長は正規の組み合わせにおける全周長と同じで、2つの分割体5,5がともにウォータジャケット3内に挿入可能とされるが、1つの分割体5の突起5bが、(b)図の場合より突出量は少ないものの、やはりデッキ30より突出することになる。したがって、この場合も誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。さらに、(d)図は、他方の分割体6,6同士を組み合わせた状態を示している。(d)図においては、分割体6,6のうちの1つの分割体6は、その周方向端部60の端縁部60dがもう1つの分割体6の周方向端部60の端縁部60dの上に乗るように組み合わせられた状態とされる。この分割体6,6の組み合わせ状態では、その全周長は正規の組み合わせにおける全周長と同じで、2つの分割体6,6がともにウォータジャケット3内に挿入可能とされるが、1つの分割体6の突起6bがデッキ30より突出することになり、したがって、誤った組み合わせ状態であることが即座にわかる。
本発明のウォータジャケットスペーサの第六の実施形態について、図11及び図12をも参照して説明する。図11及び図12では、図10と同様にウォータジャケット3の内壁の一部としての底壁31及びデッキ30が2点鎖線で示されている。本実施形態では、両分割体5,6のそれぞれが、上辺部に突起部5b,6bを、下辺部に各2個の脚部5c,6cをそれぞれ備えている。一方の分割体5における2個の脚部5cは、ウォータジャケット3の底壁(内壁)31に形成された凹部からなる2個の異形部36にそれぞれ整合する誤挿入防止形状部とされる。そして、両分割体5,6の周方向端部50,60は、周方向に沿った凹凸形状の噛み合い態様であって、軸L(図1、図2等参照)方向に重なり合う噛み合う凸形状の端縁部50e及び凹形状の端縁部60eを、それぞれ備えている。この凹凸形状の端縁部50e,60eの所期の噛み合い態様による分割体5,6の正規の組み合わせでは、分割体5,6が所定のウォータジャケットスペーサ4の形状をなすよう構成される。また、分割体5,6が誤った組み合わせでウォータジャケット3に挿入された時には、突起部5b,6bのいずれかが、ウォータジャケット3のデッキ30から突出するように構成される。
前記のように構成される両分割体5,6において、図11(a)に示すように、両分割体5,6の正規の組み合わせ状態では、両分割体5,6の周方向両端部50,60が突き合せられ、凹凸形状の端縁部50e,60eが所期の噛み合い状態とされる。また、誤挿入防止形状部としての脚部5cが、ウォータジャケット3の底壁31に形成された異形部36に整合するよう着座される。これによって、分割体5,6が所定のウォータジャケットスペーサ4の形状をなし、ウォータジャケット3内に、いずれの突起部5b,6bもデッキ30より突出することなく挿入が可能とされる。
図11(b)(c)は、両分割体5,6を誤って組み合わせた状態であって、一方の分割体5,5同士を組み合わせた状態を示している。(b)図においては、分割体5,5のうち1つの(図の左側)の分割体5は、2個の脚部5cがウォータジャケット3の底壁31に形成された2個の異形部36にそれぞれ整合するよう着座され、ウォータジャケット3の正規の位置に挿入されている。しかし、もう1つの(図の右側)の分割体5は、左側の分割体5に対して一部が乗るように端縁部50e,50e同士が噛み合っているが、2個の脚部5cが2個の異形部36が存在しない底部31に着座しているために、当該右側の分割体5の突起部5bがデッキ30より突出している。これによって、誤った組み合わせであることが即座にわかる。また、(c)図においては、分割体5,5のうち右側の分割体5は、2個の脚部5cが底部31に着座し、且つ、左側の分割体5は、右側の分割体5に対して一部が乗るように端縁部50e,50e同士が噛み合っている。そのため、左側の分割体5は2個の脚部5cがいずれも2個の異形部36に着座せずに浮いた状態となり、左右の分割体5,5の突起部5bが、ともにデッキ30から突出している。これによって、誤った組み合わせであることが即座にわかる。
図12(a)〜(d)は、両分割体5,6を誤って組み合わせた状態であって、他方の分割体6,6同士を組み合わせた状態を示している。(a)図においては、分割体6,6のうち1つの(図の左側)の分割体6は、もう1つの分割体(図の右側)6に対して、端縁部60e,60e同士が噛み合うことなく乗った状態で組み合わされている。右側の分割体6は、その2個の脚部6cが2個の異形部36が存在しない底部31に着座し、ウォータジャケット3の正規の位置に挿入されているが、左側の分割体6は浮いた状態とされ、突起部6bがデッキ30より突出している。これによって、誤った組み合わせであることが即座にわかる。また、(b)図においては、分割体6,6のうち左側の分割体6は、2個の脚部6cが2個の異形部36に整合することなく底部31に着座し、且つ、右側の分割体6は、左側の分割体6に対して、端縁部60e,60e同士が噛み合うことなく乗った状態で組み合わされている。そのため、右側の分割体6は2個の脚部6cがいずれも底部31に着座せずに浮いた状態となり、右側の分割体6の突起部6bがデッキ30から突出している。これによって、誤った組み合わせであることが即座にわかる。さらに、(c)図においては、右側の分割体6は、(a)図の場合と同様にウォータジャケット3の正規の位置に挿入されているが、左側の分割体6は、右側の分割体6に対して、端縁部60e,60e同士が一部噛み合って、浮いた状態とされている。そのため、左側の分割体6の突起部6bがデッキ30より突出し、これによって、誤った組み合わせであることが即座にわかる。さらにまた、(d)図においては、左側の分割体6は、(b)図の場合と同様に突起部6bがデッキ30より突出することなくウォータジャケット3に挿入されているが、右側の分割体6は、左側の分割体6に対して、端縁部60e,60e同士が一部噛み合って、浮いた状態とされている。そのため、右側の分割体6の突起部6bがデッキ30より突出し、これによって、誤った組み合わせであることが即座にわかる。
図11及び図12に示す例は、ウォータジャケット3の底壁31の形状との関係において、分割体5,6の誤った組み合わせを防止するための構造を提案するものである。しかし、ウォータジャケット3の仕様等に応じて、底壁31、内側内壁32或は外側内壁33に種々の形状が採用されることがある。このような場合でも、底壁31、内側内壁32或は外側内壁33の形状との関係において分割体5,6の形状を工夫し、分割体5,6の誤った組み合わせが即座にわかるような構成にすることは可能である。
図13(a)は本発明に係るウォータジャケットスペーサの梱包時の荷姿の一例を示す模式的平面図であり、(b)は参考例の同荷姿を示す同様図である。前記各実施形態で記載したとおり、本発明に係るウォータジャケットスペーサ4は、2個の分割体5,6からなる。例えば、分割体によらない4個の環状のウォータジャケットスペーサ40を梱包する際の荷姿は、(b)図に示す参考例のように嵩高くなる。これに対して、同仕様の2個の分割体5,6からなる4セットのウォータジャケットスペーサ4を梱包する際の荷姿は(a)に示すように非常に嵩低くなる。このように、本発明に係るウォータジャケットスペーサは、梱包がコンパクトになされ、輸送や保管に有益であることが理解される。
なお、図13に示す荷姿は、一例を示すものであり、ウォータジャケットスペーサの仕様、形状、及び個数(セット数)等によって異なることは言うまでもない。
なお、本発明のウォータジャケットスペーサが適用される内燃機関として3気筒の自動車用のエンジン1を例に採ったが、他の気筒数の自動車用のエンジン、或いは、自動車用以外の内燃機関にも適用されることは言うまでもない。また、シリンダブロック2における冷却水導入口2b、冷却水排出口2cの設置位置は、図1の例に限定されず、ウォータジャケット3の周方向のいずれの位置であっても良い。シリンダブロック2のウォータジャケット3のデッキ30において、シリンダヘッドのウォータジャケット(不図示)に直接連通するよう構成される場合は、冷却水排出口2cが設けられないこともある。さらに、実施形態では、分割体5,6の仮想の分割位置をウォータジャケットスペーサ4の長手方向(シリンダボア20の配列方向)の両端部としているが、これに限定されるものではない。2個の分割体5,6を正規の組み合わせとした時に、ウォータジャケット3の形状に整合する環状体となる形状であれば、分割位置をウォータジャケットスペーサ4の周方向のどの部位に設けても良い。そして、分割体5,6の周方向端部を突き合せてウォータジャケットスペーサ4を構成する際に、所期のウォータジャケットスペーサ4を精度良く構成するために、分断部の端面は、当該分断部に対応するシリンダボア20の軸Lに向いていることが望ましい。
1 自動車用エンジン(内燃機関)
20 シリンダボア
3 ウォータジャケット
30 デッキ
33 外側内壁(内壁)
34,35,36 異形部
4 ウォータジャケットスペーサ
5 一方の分割体
6 他方の分割体
50,60 周方向端部
51,61 周方向端部
52,62 周方向端部
5a,6a 誤挿入防止形状部
5c 脚部(誤挿入防止形状部)
L シリンダボアの軸

Claims (9)

  1. 内燃機関におけるオープンデッキタイプの環状のウォータジャケットに挿入される環状のウォータジャケットスペーサであって、 周方向の2箇所で分割される2個の分割体からなり、 前記2個の分割体は、正規の組み合せでは、前記ウォータジャケットのデッキ側から見た平面形状に沿った環状体とされ、且つ、当該ウォータジャケットのデッキ側から当該ウォータジャケット内の所定の位置に挿入可能とされると共に、前記分割体の少なくとも同じ分割体同士の誤った組み合わせでは、前記ウォータジャケットにデッキ側から挿入しようとすると、当該分割体の一部が前記デッキより突出し、前記ウォータジャケット内への挿入がなし得ないよう構成されていることを特徴とするウォータジャケットスペーサ。
  2. 請求項1に記載のウォータジャケットスペーサにおいて、 前記2個の分割体は、ともに平面視した周方向長さが前記全周長の1/2より大とされ、正規の組み合わせでは両分割体の周方向端部が互いに所定の噛み合い態様で噛み合って前記全周長をなす環状体とされて前記ウォータジャケットに挿入可能とされ、前記誤った組み合わせでは、前記ウォータジャケットの径方向への食み出し部分が生じ、前記ウォータジャケットへの挿入が不可となるよう構成されていることを特徴とするウォータジャケットスペーサ。
  3. 請求項2に記載のウォータジャケットスペーサにおいて、 前記所定の噛み合い態様が、周方向に沿った凹凸形状の噛み合いであることを特徴とするウォータジャケットスペーサ。
  4. 請求項に記載のウォータジャケットスペーサにおいて、 前記凹凸形状の噛み合いが、シリンダボアの軸方向に重なり合う形状の噛み合いであることを特徴とするウォータジャケットスペーサ。
  5. 請求項3に記載のウォータジャケットスペーサにおいて、 前記凹凸形状の噛み合いが、シリンダボアの径方向に重なり合う形状の噛み合いであることを特徴とするウォータジャケットスペーサ。
  6. 請求項1に記載のウォータジャケットスペーサにおいて、 前記2個の分割体の一方の分割体は、前記周方向長さが前記全周長の1/2より大とされ、他方の分割体は、前記ウォータジャケットの内壁に形成される異形部に整合する誤挿入防止形状部を備え、正規の組み合わせでは、他方の分割体が前記誤挿入防止形状部が前記異形部に整合するようウォータジャケットに挿入されると共に、一方の分割体がウォータジャケットの残余のスペースに挿入されて、両分割体が前記全周長をなす環状体とされ、前記誤った組み合わせでは、前記ウォータジャケットの径方向への食み出し部分が生じ、前記ウォータジャケットへの挿入が不可となるよう構成されていることを特徴とするウォータジャケットスペーサ。
  7. 請求項1に記載のウォータジャケットスペーサにおいて、 前記2個の分割体は、ともに前記ウォータジャケットの内壁に形成された互いに異なる異形部にそれぞれ整合する誤挿入防止形状部を備え、正規の組み合わせでは前記異形部のそれぞれに誤挿入防止形状部が整合して、両分割体が前記全周長をなす環状体とされてウォータジャケットに挿入され、前記誤った組み合わせでは、前記ウォータジャケットの径方向への食み出し部分が生じ、前記ウォータジャケットへの挿入が不可となるよう構成されていることを特徴とするウォータジャケットスペーサ。
  8. 請求項6又は請求項7に記載のウォータジャケットスペーサにおいて、 前記ウォータジャケットの異形部と、前記誤挿入防止形状部とが互いに凹凸関係で整合するように構成されていることを特徴とするウォータジャケットスペーサ。
  9. 請求項8に記載のウォータジャケットスペーサにおいて、 前記ウォータジャケットの異形部が、ウォータジャケットの外側内壁に形成される凹部であり、前記誤挿入防止形状部が当該異形部に整合するよう径方向に突出する凸部であることを特徴とするウォータジャケットスペーサ。
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