JP2010203245A - 内燃機関の冷却構造 - Google Patents

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Shuichi Kitahara
秀一 北原
Teruo Kobayashi
輝夫 小林
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Abstract

【課題】クロスフローの流通方式に適したスペーサを得ること。
【解決手段】スペーサSは、冷却水入口24に連通する上流側流路46aと冷却水出口44に連通する下流側流路46bとに前記ウォータージャケット20を分けるように、前記ウォータージャケット20の対向する位置に設けられる一対の分離部材30a、30bを有し、前記スペーサSの上面は、前記上流側流路46aにおいて前記冷却水入口24に対応する部位から前記一方の分離部材30bに向けて上り傾斜面48aが形成されると共に、前記下流側流路46bにおいて前記他方の分離部材30aから前記冷却水出口44に対応する部位に向けて下り傾斜面48bが形成される。
【選択図】図4

Description

本発明は、例えば、車両用エンジン等の内燃機関を冷却するウォータージャケット内に配設されるウォータージャケットスペーサに関する。
従来から、例えば、水冷式多気筒内燃機関を構成するシリンダブロック及びシリンダヘッドには、内部を空洞化したウォータージャケットが形成され、前記ウォータージャケット内に冷却水を流通させることにより、燃焼室周りや点火プラグ周りのシリンダブロック及びシリンダヘッドの所定部位を適宜冷却している。例えば、特許文献1には、シリンダブロックのウォータージャケット内に挿入され、前記ウォータージャケットの内壁に密着することにより上部流路と下部流路とに分離する流路分離部材を有するスペーサが開示されている。
このウォータージャケットに対する冷却水の流通方向としては、従来技術において、大別して2種類の方式が知られている。第1の流通方式は、所謂、クロスフロー(横流し)の流通方式からなり、シリンダブロックに設けられたウォータージャケットに前記シリンダブロックの一端側から冷却水を送給し、直列気筒の片側で気筒列方向に沿って並行に冷却水を流通させ、その途中の数箇所で気筒列方向と略直交するシリンダヘッドのウォータージャケットに冷却水を持ち上げて前記シリンダヘッドにも片側で並行に冷却水を流通させた後、前記シリンダブロックの他端側で前記シリンダブロックを通過した後の冷却水をシリンダヘッドのウォータージャケットへ持ち上げて、シリンダブロックと同様に直列気筒の片側で並行に冷却水を流通させる方式である。
第2の流通方式は、所謂、縦流しの流通方式からなり、シリンダブロックの一端側から冷却水を送給し、直列気筒の左右片側のシリンダブロックのウォータージャケットを一筆書きのように1周した後、シリンダヘッドのウォータージャケットへ冷却水を流通させる方式である。
特開2008−25474号公報
しかしながら、前記特許文献1に開示されたスペーサは、冷却水がウォータージャケットの一端側から導入され、ウォータージャケットの周囲を周回(1周)した後、シリンダヘッドのウォータージャケットへと送給される、所謂、縦流しタイプに適するスペーサ構造であり、シリンダブロックの内側又は外側(吸気側又は排気側)から冷却水をシリンダヘッドのウォータージャケット側に上げた後、前記とは反対側のシリンダブロックの外側又は内側(排気側又は吸気側)に冷却水を戻すクロスフロータイプに適していない。
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、ウォータージャケットに対する冷却水の流通経路をクロスフローの流通方式とすることが可能なウォータージャケットスペーサを提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダボアの周囲に形成されるウォータージャケット内に挿入されるスペーサであって、前記スペーサは、冷却水入口に連通する上流側流路と冷却水出口に連通する下流側流路とに前記ウォータージャケットを分けるように、前記ウォータージャケットの対向する位置に設けられる一対の分離部材を有し、前記スペーサの上面は、前記上流側流路において前記冷却水入口に対応する部位から前記一方の分離部材に向けて上り傾斜が形成されると共に、前記下流側流路において前記他方の分離部材から前記冷却水出口に対応する部位に向けて下り傾斜が形成されることを特徴とする。
本発明によれば、一対の分離部材が設けられたスペーサによって、シリンダブロックのウォータージャケットを上流側流路と下流側流路とに分けることができ、冷却水の流通経路をクロスフローの流通方式とすることができる。この結果、本発明では、一対の分離部材が設けられたスペーサをウォータージャケット内に挿入することにより、従来から製造している既存のシリンダブロックをクロスフロータイプに簡便に変更することができ、シリンダブロックの大幅な設計変更等を不要として製造コストを低減することができる。
また、本発明によれば、スペーサの上面に形成された上り傾斜により、上流側流路では、冷却水入口から離間するにつれて徐々に流路断面積が絞られて狭小となり、一方、スペーサの上面に形成された下り傾斜により、下流側流路では、冷却水出口に近接するにしたがって徐々に流路断面積が広がるように設けられる。この結果、本発明では、冷却水入口部位から冷却水出口部位までの上流側流路及び下流側流路を流通する冷却水の流速を略一定に保持することができ、気筒列方向に沿って並ぶ複数のシリンダボア毎に等しい冷却性能を得ることができる。
また、本発明は、前記冷却水入口が、複数のシリンダボアが直列に並ぶ気筒列方向に沿った前記ウォータージャケットの一端側に設けられると共に、前記冷却水出口は、前記気筒列方向に沿った前記ウォータージャケットの他端側に設けられ、前記ウォータージャケットは、前記一対の分離部材によって吸気側と排気側に分けられることを特徴とする。
本発明によれば、各シリンダボア同士における吸気側と排気側との間での冷却温度差(冷却能力差)を抑制することができる。
また、本発明によれば、前記上流側流路と前記下流側流路の体積がそれぞれ等しくなるように設けられることにより、上流側流路と下流側流路との間で冷却水の流通速度を略一定に保持して、圧力損失を抑制することにより、円滑な冷却水の流れを得ることができる。
さらに、本発明は、前記内燃機関はV型エンジンからなり、前記一対の分離部材のうち、気筒列方向に沿った前記ウォータージャケットの一端側の分離部材は、前記冷却水入口のVバンク間側近傍部位に設けられ、気筒列方向に沿った前記ウォータージャケットの他端側の分離部材は、前記一端側の分離部材と気筒列中心線に対して点対称となるVバンク外側部位に設けられ、前記冷却水入口から導入された冷却水は、初めに、シリンダブロックの外側のウォータージャケットから流通するように設けられることを特徴とする。
本発明によれば、クロスフローの流通方式を採用し、冷却水入口から導入された冷却水を先に外側(EX側)のウォータージャケットから流通させた場合、先に内側(IN側)のウォータージャケットから流通させた場合と比較して、冷却水流路長が短縮されて圧力損失(通路抵抗)を低減することができる。
本発明によれば、ウォータージャケットに対する冷却水の流通経路をクロスフローの流通方式とすることが可能なウォータージャケットスペーサを得ることができる。
本発明の実施形態に係るスペーサが組み込まれたV型エンジンにおいて、冷却水のクロスフロー用の冷却回路をフロント側からみた斜視図である。 図2に示すクロスフロー用の冷却回路をリア側から見た斜視図である。 (a)、(b)は、ウォータージャケットに対して挿入される本発明の実施形態に係るスペーサの斜視図である。 (a)は、ウォータージャケット内に、図3に示されるスペーサが装着された状態を示す平面図、(b)は、(a)の矢印A方向からみた矢視図、(c)は、(a)の矢印B方向からみた矢視図である。 (a)は、変形例に係るスペーサのスペーサ本体の斜視図、(b)は、前記スペーサ本体が分離部材と共にウォータージャケット内に装着された状態を示す斜視図である。 (a)は、比較例に係るスペーサを示す一部破断側面図、(b)は、本実施形態に係るスペーサを示す一部破断側面図である。 (a)は、クロスフローの流通方式において、冷却水入口から導入された冷却水を初めに外側のウォータージャケットから流通させた場合の流通経路を示す説明図、(b)は、クロスフローの流通方式において、冷却水入口から導入された冷却水を初めに内側のウォータージャケットから流通させた場合の流通経路を示す説明図である。 クロスフローの流通方式を採用した際、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に介装されるガスケットの平面図である。
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るスペーサが組み込まれたV型エンジンにおいて、冷却水のクロスフロー用の冷却回路をフロント側からみた斜視図、図2は、図1に示すクロスフロー用の冷却回路をリア側から見た斜視図である。
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係るスペーサSが組み込まれたエンジン(内燃機関)10は、Vバンク12に沿って6つの気筒(シリンダボア14a〜14f)が相互に対向配置されたV型6気筒エンジンからなり、図示しない車両のエンジンルーム内に縦置きに設置される。このエンジン10は、例えば、アルミニウム合金製のシリンダブロック16と、前記シリンダブロック16の上側に組み付けられる、例えば、アルミニウム合金製のシリンダヘッド18と、前記シリンダヘッド18の上側に装着されるヘッドカバー19(図2参照)とによって構成される。
なお、本実施形態では、V型6気筒エンジンを例に挙げて以下説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、直列エンジン等にも適用することができると共に、気筒数も問わない。
また、以下の説明において、図示しない車両のフロント側を図中において「FR側」と示し、図示しない車両のリア側を図中において、「RR側」と示している。さらに、図1及び図2中では、ラジエータ(R/A)で放熱された冷水からなる冷却水の流通経路を太線の実線で示し、例えば、燃焼室近傍を流通して加熱されることによって温水となった冷却水の流通経路を細線の実線で示している。さらにまた、上下方向とは、シリンダボア14a〜14fの軸線に沿ったシリンダヘッド18側を上側として以下に説明する。
前記シリンダブロック16及びシリンダヘッド18の内部には、冷却水が流通するウォータージャケット20、22がそれぞれ設けられる。また、シリンダブロック16の一端側(フロント側)には、前記ウォータージャケット20に対して冷却水を供給する左右一対の冷却水入口24が設けられ、前記一対の冷却水入口24には、それぞれ、ウォーターポンプ26の一対の吐出ポートが接続される。
前記シリンダブロック16のウォータージャケット20は、平面視して、気筒列方向に沿ったシリンダボア14a〜14fの略外周を囲繞するように連続し且つ周回するように形成される。前記シリンダブロック16の上下方向において、前記ウォータージャケット20の上端部は、開口して形成されると共に、前記ウォータージャケット20の下端部(底部)は、シリンダブロック16の内部で閉塞するように形成される。前記シリンダボア14a〜14fには、円筒体からなる図示しないシリンダライナが装着されている。なお、前記ウォータージャケット20の上端部開口は、シリンダブロック16とシリンダヘッド18との間に介装されるガスケット(後記する)によってシールされる。
前記シリンダブロック16のウォータージャケット20の溝内には、前記ウォータージャケット20を分断(分離)する一対の分離部材30a、30bがスペーサSと一体的に構成される。なお、このスペーサS及び分離部材30a、30bについては、後記で詳細に説明する。
続いて、図1及び図2に示される冷却回路に基づき、クロスフローの流通方式における冷却水の流通経路について説明する。
図1及び図2に示されるように、ラジエータ(R/A)から送給された冷却水は、先ず、サーモスタットケーシング32に導入された後、Vバンク12間の凹部34内に配設されたウォーターギャラリカバー36及びシリンダブロック16のポート38を経由してウォーターポンプ26に導入される。前記ウォーターポンプ26の左右一対の吐出ポートに接続された左右一対の冷却水入口24から導入された冷却水は、初めにシリンダブロック16の外側(排気側、以下、EX側という)のウォータージャケット20を気筒列方向に沿ってそれぞれ流通すると同時に、左右一対のシリンダヘッド18にもそれぞれ送給される。
左右一対のシリンダヘッド18に送給された冷却水は、前記シリンダヘッド18のウォータージャケット22に沿って気筒列方向と直交する方向に流通した後、シリンダブロック16の内側(吸気側、以下、IN側という)のウォータージャケット20に戻される。このように冷却水は、シリンダブロック16及びシリンダヘッド18にそれぞれ形成されたウォータージャケット20、22の気筒列方向及び気筒列方向と直交する方向に沿って送給される。そして、冷却水入口24から最も離間した奥側のシリンダボア14c、14fにシリンダヘッド18からの戻りの冷却水がVバンク12間の凹部34の隔壁に形成された冷却水出口44を通じてVバンク12間の凹部34内に導入される。さらに、前記Vバンク12間の凹部34内に導入された冷却水は、さらに、ウォーターギャラリカバー36及びポート42を介してラジエータ(R/A)に導入され、上記のような経路に沿って冷却水が循環する。
次に、シリンダブロック16のウォータージャケット20内に挿入されるスペーサSについて説明する。図3(a)、(b)は、ウォータージャケットに対して挿入される本発明の実施形態に係るスペーサの斜視図である。
このスペーサSは、ウォータージャケット20内に挿入されて、前記ウォータージャケット20内を流通する冷却水の容量を減少させることにより、エンジン10の始動時に早期暖機運転ができるようにするものである。
前記スペーサSには、該スペーサSと伴にシリンダブロック16のウォータージャケット20内に挿入されて、前記シリンダブロック16のウォータージャケット20内を流通する冷却水の流路を、上流側流路46aと下流側流路46b(図4(b)、(c)参照)とに分ける一対の分離部材30a、30bが一体的に設けられる。
この場合、上流側流路46aとは、冷却水入口24に連通し前記冷却水入口24から導入された冷却水を上方側のシリンダヘッド18のウォータージャケット22側へ送給する流路をいい、下流側流路46bとは、前記シリンダヘッド18のウォータージャケット22内を流通して仕事を終えた冷却水がシリンダブロック16のウォータージャケット20へ戻される流路をいう。
換言すると、一対の分離部材30a、30bは、シリンダボア14a〜14fの軸方向に沿って延在し、シリンダボア14a〜14fの周方向に沿って流れる冷却水の流れを規制するものであって、シリンダブロック16のウォータージャケット20を前記シリンダボア14a〜14fの周方向に沿って、冷却水入口24から導入された冷却水をシリンダヘッド18のウォータージャケット22へ上げる上流側流路46aと、前記シリンダヘッド18のウォータージャケット22からの戻りの冷却水を集合させて冷却水出口44から導出する下流側流路46bとに分離する。
従って、本実施形態では、一対の分離部材30a、30bが設けられたスペーサSによって、シリンダブロック16のウォータージャケット20を上流側流路46aと下流側流路46bとに分けることができ、冷却水の流通経路をクロスフローの流通方式とすることができる。この結果、本実施形態では、一対の分離部材30a、30bが設けられたスペーサSをウォータージャケット20内に挿入することにより、従来から製造している既存のシリンダブロック16をクロスフロータイプに簡便に変更することができ、シリンダブロック16の大幅な設計変更等を不要として製造コストを低減することができる。
前記一対の分離部材30a、30bは、図1、図2及び図4(a)に示されるように、ウォータージャケット20の気筒列方向に沿った一端側及び他端側にそれぞれ配置され、上下方向に沿った長さは、ウォータージャケット20の深さと略同一に設定される。
このスペーサSは、図3に示されるように、平面視して、ウォータージャケット20の形状に対応する円弧が連続し且つ周回する形状からなり、例えば、樹脂製材料等によって形成される。なお、スペーサSとウォータージャケット20の内壁及び外壁との間には、例えば、約1mm程度のクリアランスが設けられるとよい。
図4に示されるように、上下方向に沿ったスペーサSの上面には、前記上流側流路46aにおいて、前記冷却水入口24の部位に対応する箇所からウォータージャケット20の他端側に配設された分離部材30b(一方の分離部材)に向けて上り傾斜する上り傾斜面48aが形成されると共に、前記下流側流路46bにおいて、ウォータージャケット20の一端側に配設された分離部材30a(他方の分離部材)から前記冷却水出口44に対応する箇所に向けて下り傾斜する下り傾斜面48bが形成される。
一対の分離部材30a、30b間に形成されたスペーサSの上り傾斜面48aにより、上流側流路46aでは、冷却水入口24から離間するにつれて徐々に流路断面積が絞られて狭小となり(図4(c)参照)、一方、スペーサSの下り傾斜面48bにより、下流側流路46bでは、冷却水出口44に近接するにしたがって徐々に流路断面積が広がるように設けられる(図4(b)参照)。
この結果、本実施形態では、冷却水入口24部位から冷却水出口44部位までの上流側流路46a及び下流側流路46bを流通する冷却水の流速を略一定に保持することができ、気筒列方向に沿って並設された複数のシリンダボア14a〜14f毎に等しい冷却性能を得ることができる。
シリンダブロック16のウォータージャケット20を流通する冷却水の流れが、上流側流路46aに設けられるスペーサSの上り傾斜面48aと下流側流路46bに設けられるスペーサSの下り傾斜面48bとによってそれぞれ均一化されることにより、シリンダボア14a〜14fに対する冷却能力を制御して各シリンダボア14a〜14fに対する冷却能力を等しくすることができる。
スペーサSの上面に形成された上り傾斜面48a及び下り傾斜面48bの傾きは、一定角度で形成される傾斜面に限定されるものではなく、例えば、中間部位で傾斜角度が変化し、又は曲線から形成される湾曲面であってもよい。
また、冷却水が導入される冷却水入口24は、複数のシリンダボア14a〜14fが直列に並ぶ気筒列方向に沿ったウォータージャケット20の一端側に設けられ、一方、前記冷却水出口44は、前記気筒列方向に沿った前記ウォータージャケット20の他端側に設けられ、前記ウォータージャケット20は、前記一対の分離部材30a、30bによって吸気側(IN側、内側)と排気側(EX側、外側)に分けられる(図7(a)参照)。従って、本実施形態では、各シリンダボア14a〜14f同士における吸気側(IN側)と排気側(EX側)との間での冷却温度差(冷却能力差)を抑制することができる。
なお、スペーサSの冷却水入口24と冷却水出口44に対応する部位には、冷却水の流れを阻害しないように切り欠き部50が設けられる(図3参照)。また、スペーサSは、その底面と一対の分離部材30a、30bの上端部とを、ウォータージャケット20の底壁とガスケット70a、70b(図8参照)に突き当てて固定される。
さらに、本実施形態では、シリンダブロック16のウォータージャケット20内にスペーサSを挿入することにより、上流側流路46aにおける容積(体積)と下流側流路46bにおける容積(体積)とが等しく(略等しく)なるように設定されている。この結果、本実施形態では、上流側流路46aと下流側流路46bとの間で冷却水の流通速度を略一定に保持して、圧力損失を抑制することにより円滑な冷却水流れを得ることができる。
なお、本実施形態では、一対の分離部材30a、30bがスペーサSと一体的に形成された一体型を例示して説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、図5に示されるように、一組のスペーサ本体52a、52bと一対の分離部材30a、30bとを別体で構成するようにしてもよい。
一組のスペーサ本体52a、52bと一対の分離部材30a、30bとを別体で構成した場合、先ず、スペーサ本体52a、52bをウォータージャケット20内に挿入した後、スペーサ本体52a、52bの離間部位に対して棒状の一対の分離部材30a、30bを後から挿入するタイプと、スペーサ本体52a、52bに一対の分離部材30a、30bを組み付けた状態で、前記スペーサ本体52a、52b及び一対の分離部材30a、30bを略同時にウォータージャケット20内に挿入するタイプとがある。
ここで、本実施形態に係るスペーサSにおいて、例えば、吸引側(IN側)の下り傾斜面を例にして、傾斜面を形成することの利点について、比較例と対比しながら説明する。
図6(a)は、比較例に係るスペーサを示した一部破断側面図、図6(b)は、本実施形態に係るスペーサを示した一部破断側面図である。
比較例に係るスペーサでは、排気側の上面と比較して吸気側の上面を若干低くすると共に、前記吸気側の上面が水平に沿った平坦面によって形成されている。この場合、比較例に係るスペーサでは、断面X1通路を流通する冷却水の流量は、冷却水I+冷却水II+冷却水IIIの合計流量となり、断面X2通路を流通する冷却水の流量は、冷却水II+冷却水IIIの合計流量となり、断面X3通路を流通する冷却水の流量は、冷却水IIIの流量となる。なお、この場合、冷却水Iの流量=冷却水IIの流量=冷却水IIIの流量と仮定する。
比較例では、吸気側の上面が水平に沿った平坦面で形成されているため、シリンダヘッドのウォータージャケットからの戻り冷却水が流通する流路断面積は、それぞれ、断面X1通路、断面X2通路及び断面X3通路において等しくなる。このように同一の流路断面積に対して、冷却水出口側に向かって徐々に冷却水の流量が増大する場合には、冷却水の流路が絞られた状態となり、冷却水の圧力損失が増加するという不具合がある。
これに対して、本実施形態では、冷却水入口24から冷却水出口44に向かって下り傾斜する下り傾斜面48bによって、流路断面積が冷却水入口24側から冷却水出口44側に向かって徐々に増大(拡大)するように設定されている。この結果、本実施形態では、冷却水の流量増大に伴って流路断面積が拡大することにより、比較例のような圧力損失を回避して冷却水の流速を略一定に保持し、冷却水の円滑な流通を達成することができる。
なお、本実施形態では、スペーサSによってシリンダボア14a〜14f外周の特定範囲(下死点近傍部位)が被覆されることにより、シリンダボア14a〜14fの冷却性能を制御することができる。シリンダボア14a〜14fは、上部側である燃焼室近傍がより加熱されるために積極的に冷却される必要がある。このため、本実施形成に係るスペーサSでは、シリンダボア14a〜14fの上方側を被覆することなく、下方側のみを被覆するようにしている。
図7(a)は、クロスフローの流通方式において、冷却水入口から導入された冷却水を初めに外側のウォータージャケットから流通させた場合の流通経路を示す説明図、図7(b)は、クロスフローの流通方式において、冷却水入口から導入された冷却水を初めに内側のウォータージャケットから流通させた場合の流通経路を示す説明図である。
なお、図7中において、太線からなる実線は、冷却水入口24から導入された冷水の冷却水を示し、破線は、シリンダヘッド18側のウォータージャケット22に上げられた冷却水が燃焼室等で加熱されて温水となった冷却水がシリンダブロック16側のウォータージャケット20に戻されて流通する状態を示している。
図7(a)に示されるように、スペーサSに設けられた一対の分離部材30a、30bのうち、気筒列方向に沿ったウォータージャケット20の一端側の分離部材30aは、冷却水入口24のVバンク12間側近傍に設けられ、気筒列方向に沿ったウォータージャケット20の他端側の分離部材30bは、前記一端側の分離部材30aに対して点対称となるVバンク12外側位置に設けられる。
この場合、「点対称」とは、冷却水入口24が設けられている気筒列方向の一端側に対して前記気筒列方向の他端側であって、冷却水入口24が気筒列中心線C(平面視して各シリンダボア列の中心を通る直線)から偏位(オフセット)している距離と同一距離だけ気筒列中心線から反対側に偏位(オフセット)していることをいう。
これに対して、図7(b)に示されるように、スペーサSに付設される一対の分離部材30a、30bが、ウォータージャケット20の気筒列方向に沿った一端側及び他端側において、それぞれ、シリンダブロック16の外側(EX側)のVバンク12外側位置に設けられている。
本実施形態では、クロスフローの流通方式を採用し、冷却水入口24から導入された冷却水を先に外側(EX側)のウォータージャケット20から流通させた場合(図7(a)参照)、先に内側(IN側)のウォータージャケット20から流通させた場合(図7(b)参照)と比較して、冷却水流路長が略距離Aだけ短縮されて圧力損失(通路抵抗)を低減することができる利点がある。
また、V型のエンジン10では、Vバンク12間側が吸気側(IN側)であり、反対側であるVバンク12外側が排気側(EX側)である。このV型のエンジン10では、比較的高温となる外側の排気側のウォータージャケット20内に先に冷却水を流通させて冷却することにより、エンジン10の効率的な冷却を行うことができる。
図8は、クロスフローの流通方式を採用した際、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に介装されるガスケットの平面図である。図8に示されるように、クロスフロー用のガスケット70a、70bには、複数の略楕円形状孔部72aや略三角形状孔部72bが気筒列中心線Cに沿って略対称位置に配置される。
なお、図8中において、網点が付された略楕円形状孔部72a及び略三角形状孔部72bは、シリンダブロック16のウォータージャケット20とシリンダヘッド18とのウォータージャケット22とを連通させる孔部であって、シリンダブロック16のウォータージャケット20からシリンダヘッド18のウォータージャケット22へ冷却水が送られる孔部を示す。また、網線が付された略楕円形状孔部72a及び略三角形状孔部72bは、前記とは反対にシリンダヘッド18のウォータージャケット22からシリンダブロック16のウォータージャケット20へ冷却水が戻される孔部を示している。
10 エンジン(内燃機関)
12 Vバンク
14a〜14f シリンダボア
16 シリンダブロック
18 シリンダヘッド
20、22 ウォータージャケット
24 冷却水入口
30a、30b 分離部材
44 冷却水出口
46a 上流側流路
46b 下流側流路
48a 上り傾斜面(上り傾斜)
48b 下り傾斜面(下り傾斜)
S スペーサ
C 気筒列中心線

Claims (4)

  1. 内燃機関のシリンダブロックのシリンダボアの周囲に形成されるウォータージャケット内に挿入されるスペーサであって、
    前記スペーサは、冷却水入口に連通する上流側流路と冷却水出口に連通する下流側流路とに前記ウォータージャケットを分けるように、前記ウォータージャケットの対向する位置に設けられる一対の分離部材を有し、
    前記スペーサの上面は、前記上流側流路において前記冷却水入口に対応する部位から前記一方の分離部材に向けて上り傾斜が形成されると共に、前記下流側流路において前記他方の分離部材から前記冷却水出口に対応する部位に向けて下り傾斜が形成されることを特徴とするウォータージャケットスペーサ。
  2. 請求項1記載のウォータージャケットスペーサにおいて、
    前記冷却水入口は、複数のシリンダボアが直列に並ぶ気筒列方向に沿った前記ウォータージャケットの一端側に設けられると共に、前記冷却水出口は、前記気筒列方向に沿った前記ウォータージャケットの他端側に設けられ、
    前記ウォータージャケットは、前記一対の分離部材によって吸気側と排気側に分けられることを特徴とするウォータージャケットスペーサ。
  3. 請求項1又は2記載のウォータージャケットスペーサにおいて、
    前記上流側流路と前記下流側流路は、体積がそれぞれ等しくなるように設けられることを特徴とするウォータージャケットスペーサ。
  4. 請求項2又は3記載のウォータージャケットスペーサにおいて、
    前記内燃機関はV型エンジンからなり、前記一対の分離部材のうち、気筒列方向に沿った前記ウォータージャケットの一端側の分離部材は、前記冷却水入口のVバンク間側近傍部位に設けられ、気筒列方向に沿った前記ウォータージャケットの他端側の分離部材は、前記一端側の分離部材と気筒列中心線に対して点対称となるVバンク外側部位に設けられ、
    前記冷却水入口から導入された冷却水は、初めに、シリンダブロックの外側のウォータージャケットから流通するように設けられることを特徴とするウォータージャケットスペーサ。
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