以下、本発明の詳細を説明する。
(導電性粒子)
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された導電層とを備える。本発明に係る導電性粒子では、上記導電層が、フッ素原子を含有する粒子を含む。
本発明に係る導電性粒子における上述した構成の採用により、本発明に係る導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、酸の存在下に晒されても電極間の接続抵抗を低く維持することができる。上記導電層の外表面上ではなく、上記導電層内に上記フッ素原子を含有する粒子が含まれているので、更に上記フッ素原子を含有する物質が粒子状であるため、電極間の接続抵抗を低くすることができ、更に導電層内に含まれている上記フッ素原子を含有する粒子によって、耐酸性を大きく向上させることができる。また、電極間の接続時に上記導電層が割れたとしても、上記導電層内に含まれている上記フッ素原子を含有する粒子が部分的に露出するため、上記フッ素原子を含有する粒子の撥水効果によって、耐酸性を効果的に高めることができ、電極間の接続抵抗を低く維持することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る導電性粒子をより具体的に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図1に示す導電性粒子1は、基材粒子2と、導電層3とを有する。導電層3は、基材粒子2の表面上に配置されている。第1の実施形態では、導電層3は、基材粒子2の表面に接している。導電性粒子1は、基材粒子2の表面が導電層3により被覆された被覆粒子である。導電層3は、単層の導電層である。
導電性粒子1では、導電層3が、フッ素原子を含有する粒子4を複数含む。フッ素原子を含有する粒子4は、導電層3内に含まれており、導電層3内に埋め込まれている。
導電性粒子1は、後述する導電性粒子11,21とは異なり、芯物質を有さない。導電性粒子1は表面に突起を有さない。導電性粒子1は球状である。導電層3は表面に突起を有さない。このように、本発明に係る導電性粒子は導電性の表面に突起を有していなくてもよく、球状であってもよい。また、導電性粒子1は、後述する導電性粒子11,21とは異なり、絶縁性物質を有さない。但し、導電性粒子1は、導電層3の外表面上に配置された絶縁性物質を有していてもよい。また、導電層3の外表面は、防錆処理されていることが好ましい。
導電性粒子1では、基材粒子2と導電層3とが接している。基材粒子2と導電層3との間には、フッ素原子を含有する粒子4を含まない導電層が配置されていてもよく、導電層3の外表面上に、フッ素原子を含有する粒子4を含まない導電層が配置されていてもよい。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図2に示す導電性粒子11は、基材粒子2と、導電層12と、複数の芯物質13と、複数の絶縁性物質14とを有する。導電層12は、基材粒子2の表面上に基材粒子2に接するように配置されている。導電性粒子11では、導電層12は、単層の導電層である。
導電性粒子11では、導電層12が、フッ素原子を含有する粒子4を複数含む。
導電性粒子11は導電性の表面に、複数の突起11aを有する。導電層12は外表面に、複数の突起12aを有する。複数の芯物質13が、基材粒子2の表面上に配置されている。複数の芯物質13は導電層12内に埋め込まれている。芯物質13は、突起11a,12aの内側に配置されている。導電層12は、複数の芯物質13を被覆している。複数の芯物質13により導電層12の外表面が隆起されており、突起11a,12aが形成されている。
導電性粒子11は、導電層12の外表面上に配置された絶縁性物質14を有する。導電層12の外表面の少なくとも一部の領域が、絶縁性物質14により被覆されている。絶縁性物質14は絶縁性を有する材料により形成されており、絶縁性粒子である。このように、本発明に係る導電性粒子は、導電層の外表面上に配置された絶縁性物質を有していてもよい。但し、本発明に係る導電性粒子は、絶縁性物質を必ずしも有していなくてもよい。
図3は、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図3に示す導電性粒子21は、基材粒子2と、導電層22と、複数の芯物質13と、複数の絶縁性物質14とを有する。導電層22は全体で、基材粒子2側に第1の導電層22Aと、基材粒子2側とは反対側に第2の導電層23Bとを有する。
導電性粒子11と導電性粒子21とでは、導電層が異なっている。すなわち、導電性粒子11では、1層構造の導電層が形成されているのに対し、導電性粒子21では、2層構造の第1の導電層22A及び第2の導電層22Bが形成されている。第1の導電層22Aと第2の導電層22Bとは別の導電層として形成されている。
第1の導電層22Aは、基材粒子2の表面上に配置されている。基材粒子2と第2の導電層22Bとの間に、第1の導電層22Aが配置されている。第1の導電層22Aは、基材粒子2に接している。従って、基材粒子2の表面上に第1の導電層22Aが配置されており、第1の導電層22Aの表面上に第2の導電層22Bが配置されている。導電性粒子21は導電性の表面に、複数の突起21aを有する。導電層22は外表面に突起22aを有する。第1の導電層22Aは外表面に、突起22Aaを有する。第2の導電層22Bは外表面に、複数の突起22Baを有する。
導電性粒子21では、導電層22が、フッ素原子を含有する粒子4を複数含む。第1の導電層22Aは、フッ素原子を含有する粒子4を複数含む。第2の導電層22Bも、フッ素原子を含有する粒子4を複数含む。
以下、導電性粒子の他の詳細について説明する。
[基材粒子]
上記基材粒子としては、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子等が挙げられる。上記基材粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを備えるコアシェル粒子であってもよい。なかでも、金属を除く基材粒子が好ましく、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子がより好ましい。
上記基材粒子は、樹脂により形成された樹脂粒子であることが好ましい。上記導電性粒子を用いて電極間を接続する際には、上記導電性粒子を電極間に配置した後、圧着することにより上記導電性粒子を圧縮させる。上記基材粒子が樹脂粒子であると、上記圧着の際に上記導電性粒子が変形しやすく、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなる。このため、電極間の導通信頼性が高くなる。
上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、種々の有機物が好適に用いられる。上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、及び、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させて得られる重合体等が用いられる。エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させることにより、導電材料に適した任意の圧縮時の物性を有する樹脂粒子を設計及び合成することができる。
上記樹脂粒子を、エチレン性不飽和基を有する単量体を重合させて得る場合、上記エチレン性不飽和基を有する単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
上記非架橋性の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等のハロゲン含有単量体等が挙げられる。
上記架橋性の単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体等が挙げられる。
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法により重合させることで、上記樹脂粒子を得ることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いて、ラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
上記基材粒子が金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である場合に、上記基材粒子の材料である無機物としては、シリカ及びカーボンブラック等が挙げられる。上記シリカにより形成された粒子としては特に限定されないが、例えば、加水分解性のアルコキシシル基を2つ以上持つケイ素化合物を加水分解して架橋重合体粒子を形成した後に、必要に応じて焼成を行うことにより得られる粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子としては、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。
上記基材粒子が金属粒子である場合に、該金属粒子の材料である金属としては、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金及びチタン等が挙げられる。但し、上記基材粒子は金属粒子ではないことが好ましい。
上記基材粒子の粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2μm以上、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、より一層好ましくは300μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下、最も好ましくは5μm以下である。上記基材粒子の粒子径が上記下限以上であると、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなるため、電極間の導通信頼性がより一層高くなり、導電性粒子を介して接続された電極間の接続抵抗がより一層低くなる。さらに基材粒子の表面に導電層を無電解めっきにより形成する際に凝集し難くなり、凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。上記基材粒子の粒子径が上記上限以下であると、導電性粒子が充分に圧縮されやすく、電極間の接続抵抗がより一層低くなり、更に電極間の間隔が小さくなる。上記基材粒子の粒子径は、基材粒子が真球状である場合には、直径を示し、基材粒子が真球状ではない場合には、最大径を示す。
上記基材粒子の粒子径は、2μm以上、5μm以下であることが特に好ましい。上記基材粒子の粒子径が2〜5μmの範囲内であると、電極間の間隔が小さくなり、かつ導電層の厚みを厚くしても、小さい導電性粒子が得られる。
[導電層及びフッ素原子を含有する粒子]
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子の表面上に配置されており、かつフッ素原子を含有する粒子を含む導電層(以下、[導電層及びフッ素原子を含有する粒子]の欄において、フッ素原子を含有する粒子を含む導電層を、導電層Xと記載することがある)を備える。上記導電層Xは、フッ素原子を含有する粒子を含む。本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と上記導電層Xとの間に、上記導電層Xとは異なり、かつ上記フッ素原子を含有する粒子を含まない導電層(他の導電層)を備えていてもよく、上記導電層Xの外表面上に、上記導電層Xとは異なり、かつ上記フッ素原子を含有する粒子を含まない導電層(他の導電層)を備えていてもよい。
上記導電層X及び上記他の導電層の材料である金属は特に限定されない。上記導電層X及び上記他の導電層の材料である金属としては、金、銀、銅、パラジウム、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素、タングステン、モリブデン及びこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。なかでも、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができるので、錫を含む合金、ニッケル、パラジウム、銅又は金が好ましく、ニッケル又はパラジウムがより好ましく、ニッケルが特に好ましい。
上記導電層Xを構成する金属はニッケルを含むことが好ましい。上記導電層Xは、上記フッ素原子を含有する粒子とニッケルとを含むことが好ましい。上記導電層Xは、ニッケル、タングステン、モリブデン、パラジウム、リン及びボロンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ニッケルと、リン又はボロンとを含むことがより好ましい。上記導電層Xの材料は、リン及びボロンなどを含む合金であってもよい。上記導電層Xでは、ニッケルとタングステン又はモリブデンとが合金化していてもよい。上記導電層Xの融点は、好ましくは300℃以上、より好ましくは450℃以上である。
上記導電層Xの硬度をより一層高くし、電極間の接続時に、導電層の表面及び電極の表面の酸化膜をより一層効果的に排除し、電極間の接続抵抗をより一層低くする観点からは、上記導電層Xは、ニッケルを含むことが特に好ましい。上記導電層Xはニッケルを主金属として含むことが好ましい。上記導電層X100重量%中、ニッケルの含有量は50重量%以上であることが好ましい。上記導電層X100重量%中、ニッケルの含有量は好ましくは75重量%以上、より好ましくは85重量%以上、更に好ましくは95重量%以上である。ニッケルの含有量が上記下限以上であると、導電層の表面及び電極の表面の酸化膜がより一層効果的に除去され、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。
上記導電層Xはリン又はボロンを含むことが好ましい。上記導電層Xがリン又はボロンを含む場合に、リン又はボロンを含む導電層X100重量%中、リンとボロンとの合計の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは3重量%以上、好ましくは10重量%以下である。リンとボロンとの合計の含有量が上記上限以下であると、導電層Xの抵抗がより一層低くなり、またニッケルなどの金属の含有量が相対的に多くなるので、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。
上記導電層Xは、単層であってもよく、2層以上の積層構造を有していてもよい。また、上述したように、上記導電性粒子は、上記導電層Xと他の導電層とを有し、導電層が全体で、2層以上の積層構造を有していてもよい。上記導電層が複数の層により形成されている場合には、最外層は、金層、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は錫と銀とを含む合金層であることが好ましく、金層又はパラジウム層であることがより好ましく、金層であることが特に好ましい。最外層がこれらの好ましい導電層である場合には、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、最外層が金層である場合には、耐腐食性がより一層高くなる。
粒子の表面上に導電層を形成する方法は特に限定されない。導電層を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。なかでも、導電層の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
導電層全体の厚み(導電層Xのみの場合には導電層Xの厚み、導電層Xと他の導電層とが存在する場合には導電層Xと他の導電層との合計の厚み)は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上、特に好ましくは50nm以上、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下、更に好ましくは500nm以下、特に好ましくは400nm以下、最も好ましくは300nm以下である。導電層全体の厚みが上記下限以上であると、導電性粒子の導電性がより一層良好になる。導電層全体の厚みが上記上限以下であると、基材粒子と導電層との熱膨張率の差が小さくなり、基材粒子から導電層が剥離し難くなる。
また、上記導電層Xの厚みは、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上、特に好ましくは50nm以上、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下、更に好ましくは500nm以下、特に好ましくは400nm以下、最も好ましくは300nm以下である。上記導電層Xの厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗がより一層低くなり、酸の存在下に晒されても電極間の接続抵抗がより一層上昇し難くなる。
上記導電層の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子の断面を観察することにより測定可能である。
上記フッ素原子を含有する粒子の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン及びポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。なかでも、撥水効果をより一層高くし、酸の存在下に晒されても電極間の接続抵抗をより一層上昇し難くする観点からは、上記フッ素原子を含有する粒子の材料は、ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。従って、上記フッ素原子を含有する粒子は、ポリテトラフルオロエチレン粒子であることが好ましい。
上記フッ素原子を含有する粒子の平均粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下である。上記フッ素原子を含有する粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、酸の存在下に晒されても電極間の接続抵抗がより一層上昇し難くなる。
上記フッ素原子を含有する粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。上記フッ素原子を含有する粒子の平均粒子径は、任意の上記フッ素原子を含有する粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
上記フッ素原子を含有する粒子の粒子径は、上記導電層Xの厚みの1/50以上であることが好ましく、1/100以上であることがより好ましく、1/500以下であることが好ましく、1/200以下であることがより好ましい。上記フッ素原子を含有する粒子の粒子径と上記導電層Xの厚みとが上述した関係を満足すると、電極間の接続抵抗を効果的に低くし、かつ酸の存在下での電極間の接続抵抗の上昇を効果的に抑えることができる。
上記導電層X100重量%中、上記フッ素原子を含有する粒子の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。上記フッ素原子を含有する粒子の含有量が上記下限以上であると、酸の存在下に晒されても電極間の接続抵抗がより一層上昇し難くなる。上記フッ素原子を含有する粒子の含有量が上記上限以下であると、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。
[防錆処理(被膜形成)]
導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子の導電性の表面が防錆処理されていることが好ましく、上記フッ素原子を含有する粒子を含む導電層の表面が防錆処理されていることが好ましく、導電層の表面が防錆処理されていることが好ましい。導通信頼性をより一層高める観点からは、炭素数6〜22のアルキル基を有する化合物により、導電性の表面及び上記導電層の表面が防錆処理されていることが好ましい。導通信頼性をより一層高める観点からは、アルキルリン酸化合物又はアルキルチオールにより、導電性の表面及び上記導電層の表面が防錆処理されていることが好ましい。防錆処理により、導電性の表面及び上記導電層の表面に、被膜を形成できる。すなわち、被膜を備える導電性粒子が得られる。
導電層がフッ素原子を含有する粒子を含む構成と、導電層の外表面が防錆処理されている構成との組み合わせによって、酸の存在下での電極間の接続抵抗を低くより一層維持することができる。
上記被膜は、炭素数6〜22のアルキル基を有する化合物(以下、化合物Aともいう)により形成されていることが好ましい。上記導電性粒子は、上記化合物Aにより表面処理されていることが好ましい。上記アルキル基の炭素数が6以上であると、導電層の表面に錆がより一層生じ難くなる。上記アルキル基の炭素数が22以下であると、導電性粒子の導電性が高くなる。導電性粒子の導電性をより一層高める観点からは、上記化合物Aにおける上記アルキル基の炭素数は16以下であることが好ましい。上記アルキル基は直鎖構造を有していてもよく、分岐構造を有していてもよい。上記アルキル基は、直鎖構造を有することが好ましい。
上記化合物Aは、炭素数6〜22のアルキル基を有していれば特に限定されない。上記化合物Aは、炭素数6〜22のアルキル基を有するリン酸エステル又はその塩、炭素数6〜22のアルキル基を有する亜リン酸エステル又はその塩、炭素数6〜22のアルキル基を有するアルコキシシラン、炭素数6〜22のアルキル基を有するアルキルチオール、及び炭素数6〜22のアルキル基を有するジアルキルジスルフィドからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、上記炭素数6〜22のアルキル基を有する化合物Aは、リン酸エステル又はその塩、亜リン酸エステル又はその塩、アルコキシシラン、アルキルチオール及びジアルキルジスルフィドからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの好ましい化合物Aの使用により、導電層に錆をより一層生じ難くすることができる。錆をより一層生じ難くする観点からは、上記化合物Aは、上記リン酸エステルもしくはその塩、亜リン酸エステルもしくはその塩、又は、アルキルチオールであることが好ましく、上記リン酸エステルもしくはその塩、又は、亜リン酸エステルもしくはその塩であることがより好ましい。上記化合物Aは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記化合物Aは、導電層と反応可能な反応性官能基を有することが好ましく、導電層と反応可能な反応性官能基を有することが好ましい。被膜は、被膜を除く導電性粒子(導電層)と化学結合していることが好ましい。被膜は、導電層と化学結合していることが好ましい。上記反応性官能基の存在により、及び上記化学結合により、被膜の剥離が生じ難くなり、この結果導電層に錆がより一層生じ難くなる。
上記炭素数6〜22のアルキル基を有するリン酸エステル又はその塩としては、例えば、リン酸ヘキシルエステル、リン酸ヘプチルエステル、リン酸モノオクチルエステル、リン酸モノノニルエステル、リン酸モノデシルエステル、リン酸モノウンデシルエステル、リン酸モノドデシルエステル、リン酸モノトリデシルエステル、リン酸モノテトラデシルエステル、リン酸モノペンタデシルエステル、リン酸モノヘキシルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノヘプチルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノオクチルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノノニルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノデシルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノウンデシルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノドデシルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノトリデシルエステルモノナトリウム塩、リン酸モノテトラデシルエステルモノナトリウム塩及びリン酸モノペンタデシルエステルモノナトリウム塩等が挙げられる。上記リン酸エステルのカリウム塩を用いてもよい。
上記炭素数6〜22のアルキル基を有する亜リン酸エステル又はその塩としては、例えば、亜リン酸ヘキシルエステル、亜リン酸ヘプチルエステル、亜リン酸モノオクチルエステル、亜リン酸モノノニルエステル、亜リン酸モノデシルエステル、亜リン酸モノウンデシルエステル、亜リン酸モノドデシルエステル、亜リン酸モノトリデシルエステル、亜リン酸モノテトラデシルエステル、亜リン酸モノペンタデシルエステル、亜リン酸モノヘキシルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノヘプチルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノオクチルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノノニルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノデシルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノウンデシルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノドデシルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノトリデシルエステルモノナトリウム塩、亜リン酸モノテトラデシルエステルモノナトリウム塩及び亜リン酸モノペンタデシルエステルモノナトリウム塩等が挙げられる。上記亜リン酸エステルのカリウム塩を用いてもよい。
上記炭素数6〜22のアルキル基を有するアルコキシシランとしては、例えば、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリメトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリメトキシシラン及びペンタデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
上記炭素数6〜22のアルキル基を有するアルキルチオールとしては、例えば、ヘキシルチオール、ヘプチルチオール、オクチルチオール、ノニルチオール、デシルチオール、ウンデシルチオール、ドデシルチオール、トリデシルチオール、テトラデシルチオール、ペンタデシルチオール及びヘキサデシルチオール等が挙げられる。上記アルキルチオールは、アルキル鎖の末端にチオール基を有することが好ましい。
上記炭素数6〜22のアルキル基を有するジアルキルジスルフィドとしては、例えば、ジヘキシルジスルフィド、ジヘプチルジスルフィド、ジオクチルジスルフィド、ジノニルジスルフィド、ジデシルジスルフィド、ジウンデシルジスルフィド、ジドデシルジスルフィド、ジトリデシルジスルフィド、ジテトラデシルジスルフィド、ジペンタデシルジスルフィド及びジヘキサデシルジスルフィド等が挙げられる。
[芯物質]
上記導電性粒子は導電性の表面に突起を有することが好ましい。上記導電層は外表面に突起を有することが好ましい。上記突起は複数であることが好ましい。上記導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。さらに、上記導電性粒子の導電層の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。上記突起を有する導電性粒子の使用により、電極間に導電性粒子を配置した後、圧着させることにより、突起により酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗を低くすることができる。さらに、上記導電性粒子が表面に絶縁性物質を有する場合、又は導電性粒子が樹脂中に分散されて導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の樹脂を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
上記芯物質が上記導電層中に埋め込まれていることによって、上記導電層が外表面に複数の突起を有するようにすることが容易である。但し、導電性粒子及び導電層の表面に突起を形成するために、芯物質を必ずしも用いなくてもよい。
上記突起を形成する方法としては、基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきにより導電層を形成する方法、並びに基材粒子の表面に無電解めっきにより導電層を形成した後、芯物質を付着させ、更に無電解めっきにより導電層を形成する方法等が挙げられる。
上記芯物質の材料としては、導電性物質及び非導電性物質が挙げられる。上記導電性物質としては、例えば、金属、金属の酸化物、黒鉛等の導電性非金属及び導電性ポリマー等が挙げられる。上記導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン等が挙げられる。上記非導電性物質としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム及びジルコニア等が挙げられる。なかでも、導電性を高めることができ、更に接続抵抗を効果的に低くすることができるので、金属が好ましい。上記芯物質は金属粒子であることが好ましい。上記芯物質の材料である金属としては、上記導電材料の材料として挙げた金属を適宜使用可能である。
上記芯物質の形状は特に限定されない。芯物質の形状は塊状であることが好ましい。芯物質としては、例えば、粒子状の塊、複数の微小粒子が凝集した凝集塊、及び不定形の塊等が挙げられる。
上記芯物質の平均径(平均粒子径)は、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。上記芯物質の平均径が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。
上記芯物質の「平均径(平均粒子径)」は、数平均径(数平均粒子径)を示す。芯物質の平均径は、任意の芯物質50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
上記導電性粒子1個当たりの上記の突起の数は、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上である。上記突起の数の上限は特に限定されない。上記突起の数の上限は導電性粒子の粒子径等を考慮して適宜選択できる。
複数の上記突起の平均高さは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。上記突起の平均高さが上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。
[絶縁性物質]
上記導電性粒子は、上記導電層の表面上に配置された絶縁性物質を備えることが好ましい。この場合には、導電性粒子を電極間の接続に用いると、隣接する電極間の短絡をより一層防止できる。具体的には、複数の導電性粒子が接触したときに、複数の電極間に絶縁性物質が存在するので、上下の電極間ではなく横方向に隣り合う電極間の短絡を防止できる。なお、電極間の接続の際に、2つの電極で導電性粒子を加圧することにより、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質を容易に排除できる。上記導電性粒子が導電層の外表面に複数の突起を有する場合には、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質をより一層容易に排除できる。
電極間の圧着時に上記絶縁性物質をより一層容易に排除できることから、上記絶縁性物質は、絶縁性粒子であることが好ましい。
上記絶縁性物質の材料である絶縁性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン類、(メタ)アクリレート重合体、(メタ)アクリレート共重合体、ブロックポリマー、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂の架橋物、熱硬化性樹脂及び水溶性樹脂等が挙げられる。
上記絶縁性物質の平均径(平均粒子径)は、導電性粒子の粒子径及び導電性粒子の用途等によって適宜選択できる。上記絶縁性物質の平均径(平均粒子径)は好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。上記絶縁性物質の平均径が上記下限以上であると、導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されたときに、複数の導電性粒子における導電層同士が接触し難くなる。上記絶縁性粒子の平均径が上記上限以下であると、電極間の接続の際に、電極と導電性粒子との間の絶縁性物質を排除するために、圧力を高くしすぎる必要がなくなり、高温に加熱する必要もなくなる。
上記絶縁性物質の「平均径(平均粒子径)」は、数平均径(数平均粒子径)を示す。絶縁性物質の平均径は、粒度分布測定装置等を用いて求められる。
(導電材料)
本発明に係る導電材料は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。上記導電性粒子は、バインダー樹脂中に分散され、導電材料として用いられることが好ましい。上記導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。上記導電性粒子及び上記導電材料はそれぞれ、電極間の電気的な接続に用いられることが好ましい。
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。
上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
上記導電材料及び上記バインダー樹脂は、熱可塑性成分又は熱硬化性成分を含むことが好ましい。上記導電材料及び上記バインダー樹脂は、熱可塑性成分を含んでいてもよく、熱硬化性成分を含んでいてもよい。上記導電材料及び上記バインダー樹脂は、熱硬化性成分を含むことが好ましい。上記熱硬化性成分は、加熱により硬化可能な硬化性化合物と熱硬化剤とを含むことが好ましい。上記熱硬化剤は、熱カチオン硬化開始剤であることが好ましい。上記加熱により硬化可能な硬化性化合物と上記熱硬化剤とは、上記バインダー樹脂が硬化するように適宜の配合比で用いられる。上記バインダー樹脂が熱カチオン硬化開始剤を含むと、硬化物中に酸が含まれやすい。しかし、本発明に係る導電性粒子の使用により、電極間の接続抵抗を低く維持することができる。
上記導電材料は、上記導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
本発明に係る導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。本発明に係る導電材料が、導電フィルムである場合には、導電性粒子を含む導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。上記導電ペーストは、異方性導電ペーストであることが好ましい。上記導電フィルムは、異方性導電フィルムであることが好ましい。
上記導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間に導電性粒子が効率的に配置され、導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性がより一層高くなる。
上記導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
(接続構造体)
上記導電性粒子を用いて、又は上記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、該接続部が本発明の導電性粒子により形成されているか、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されている接続構造体であることが好ましい。導電性粒子が用いられた場合には、接続部自体が導電性粒子である。すなわち、第1,第2の接続対象部材が導電性粒子により接続される。
図4に、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に正面断面図で示す。
図4に示す接続構造体51は、第1の接続対象部材52と、第2の接続対象部材53と、第1,第2の接続対象部材52,53を接続している接続部54とを備える。接続部54は、導電性粒子1を含む導電材料を硬化させることにより形成されている。なお、図4では、導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。導電性粒子1にかえて、導電性粒子11,21等を用いてもよい。
第1の接続対象部材52は表面(上面)に、複数の第1の電極52aを有する。第2の接続対象部材53は表面(下面)に、複数の第2の電極53aを有する。第1の電極52aと第2の電極53aとが、1つ又は複数の導電性粒子1により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材52,53が導電性粒子1により電気的に接続されている。
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。上記接続構造体の製造方法の一例としては、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材との間に上記導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記加圧の圧力は9.8×104〜4.9×106Pa程度である。上記加熱の温度は、120〜220℃程度である。
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記接続対象部材は電子部品であることが好ましい。上記導電性粒子は、電子部品における電極の電気的な接続に用いられることが好ましい。
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
(実施例1)
粒子径が3.0μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP−203」)を用意した。
パラジウム触媒液を5重量%含むアルカリ溶液100重量部に、上記樹脂粒子10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、樹脂粒子を取り出した。次いで、樹脂粒子をジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、樹脂粒子の表面を活性化させた。表面が活性化された樹脂粒子を十分に水洗した後、5重量%PTFE粒子(平均粒子径40nm)水分散液500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。
また、硫酸ニッケル0.23mol/L、ジメチルアミンボラン0.92mol/L、クエン酸ナトリウム0.5mol/L及びタングステン酸ナトリウム0.01mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。
得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。その後、懸濁液を濾過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、樹脂粒子の表面上に、ニッケル−PTFE−タングステン−ボロン導電層(厚み約0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例2)
5重量%PTFE粒子(平均粒子径40nm)水分散液500重量部を、20重量%PTFE粒子(平均粒子径40nm)水分散液500重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上に、ニッケル−PTFE−タングステン−ボロン導電層(厚み約0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例3)
5重量%PTFE粒子(平均粒子径40nm)水分散液500重量部を、10重量%PTFE粒子(平均粒子径10nm)水分散液500重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上に、ニッケル−PTFE−タングステン−ボロン導電層(厚み約0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例4)
実施例1と同様の基材粒子を用意した。この基材粒子をエッチングし、水洗した。次に、パラジウム触媒を8重量%含むパラジウム触媒化液100mL中に基材粒子を添加し、攪拌した。その後、ろ過し、洗浄した。pH6の0.5重量%ジメチルアミンボラン液に基材粒子を添加し、パラジウムが付着された基材粒子を得た。
パラジウムが付着された基材粒子をイオン交換水300mL中で3分間攪拌し、分散させ、分散液を得た。次に、金属ニッケル粒子スラリー(平均粒子径100nm)1gを3分間かけて上記分散液に添加し、芯物質が付着された基材粒子を得た。
基材粒子を上記芯物質が付着された基材粒子に変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を得た。
(実施例5)
4ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブが取り付けられた1000mLのセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル100mmolと、N,N,N−トリメチル−N−2−メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド1mmolと、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩1mmolとを含むモノマー組成物を固形分率が5重量%となるようにイオン交換水に秤取した後、200rpmで攪拌し、窒素雰囲気下70℃で24時間重合を行った。反応終了後、凍結乾燥して、表面にアンモニウム基を有し、平均粒子径220nm及びCV値10%の絶縁性粒子を得た。
絶縁性粒子を超音波照射下でイオン交換水に分散させ、絶縁性粒子の10重量%水分散液を得た。
実施例4で得られた導電性粒子10gをイオン交換水500mLに分散させ、絶縁性粒子の水分散液4gを添加し、室温で6時間攪拌した。3μmのメッシュフィルターでろ過した後、更にメタノールで洗浄し、乾燥し、絶縁性粒子が付着した導電性粒子を得た。
走査電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、導電性粒子の表面に絶縁性粒子による被覆層が1層のみ形成されていた。画像解析により導電性粒子の中心より2.5μmの面積に対する絶縁性粒子の被覆面積(即ち絶縁性粒子の粒子径の投影面積)を算出したところ、被覆率は30%であった。
(参考例6)
5重量%PTFE粒子(平均粒子径40nm)水分散液500重量部を、25重量%PTFE粒子(平均粒子径40nm)水分散液500重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上に、ニッケル−PTFE−タングステン−ボロン導電層(厚み約0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(参考例7)
5重量%PTFE粒子(平均粒子径40nm)水分散液500重量部を、15重量%PTFE粒子(平均粒子径60nm)水分散液500重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上に、ニッケル−PTFE−タングステン−ボロン導電層(厚み約0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(比較例1)
5重量%PTFE粒子(平均粒子径40nm)水分散液500重量部を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上に、ニッケル−タングステン−ボロン導電層(厚み約0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(比較例2)
5重量%PTFE粒子(平均粒子径40nm)水分散液500重量部を、5重量%シリカ粒子(平均粒子径10nm)水分散液500重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上に、ニッケル−シリカ−タングステン−ボロン導電層(厚み約0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(比較例3)
5重量%PTFE粒子(平均粒子径40nm)水分散液500重量部を、20重量%ポリスチレン粒子(平均粒子径50nm)水分散液500重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上に、ニッケル−ポリスチレン−タングステン−ボロン導電層(厚み約0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(評価)
(1)ニッケルを含む導電層の全体100重量%中のニッケル、ボロン、タングステン及びフッ素原子を含有する粒子の含有量
60%硝酸5mLと37%塩酸10mLとの混合液に、導電性粒子5gを加え、導電層を完全に溶解させ、溶液を得た。得られた溶液を用いて、ニッケル、ボロン及びタングステンの含有量をICP−MS分析器(日立製作所社製)により分析した。フッ素原子を含有する粒子の含有量をSEM−EDX分析器(堀場製作所社製)により分析した。
(2)初期の接続抵抗A
接続構造体の作製:
マイクロカプセル型アミン系硬化剤(旭化成ケミカルズ社製「ノバキュアHX3941HP」)50重量部と、液状エポキシ樹脂(三菱化学社製「EP828」)14重量部と、フェノキシ樹脂(新日鐵住金化学社製「YP50」)35重量部と、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBE403」)1重量部とに、導電性粒子を含有量が3重量%となるように添加し、分散させて、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、片面が離型処理された厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに塗布し、70℃の熱風で5分間乾燥し、異方性導電フィルムを作製した。得られた異方性導電フィルムの厚さは12μmであった。
得られた異方性導電フィルムを5mm×5mmの大きさに切断した。切断された異方性導電フィルムを、一方に抵抗測定用の引き回し線を有するアルミニウム電極(高さ0.2μm、L/S=20μm/20μm)を有するガラス基板(幅3cm、長さ3cm)のアルミニウム電極側のほぼ中央に貼り付けた。次いで、同じアルミニウム電極を有する2層フレキシブルプリント基板(幅2cm、長さ1cm)を、電極同士が重なるように位置合わせをしてから貼り合わせた。このガラス基板と2層フレキシブルプリント基板との積層体を、10N、180℃、及び20秒間の圧着条件で熱圧着し、接続構造体を得た。得られた接続構造体では、電極間を接続している導電性粒子の多くにおいて、導電層に割れが観察された。なお、ポリイミドフィルムにアルミニウム電極が直接形成されている2層フレキシブルプリント基板を用いた。
接続抵抗の測定:
得られた接続構造体の対向する電極間の接続抵抗を4端子法により測定した。また、初期の接続抵抗Aを下記の基準で判定した。
[初期の接続抵抗Aの評価基準]
○○○:接続抵抗が2.0Ω以下
○○:接続抵抗が2.0Ωを超え、3.0Ω以下
○:接続抵抗が3.0Ωを超え、5.0Ω以下
△:接続抵抗が5.0Ωを超え、10Ω以下
×:接続抵抗が10Ωを超える
(3)酸の存在下に晒された後の接続抵抗B
上記(2)初期の接続抵抗Aの評価で得られた接続構造体を85℃、湿度85%で、500時間放置した。接続構造体を上記条件で放置したことによって、バインダー樹脂中に含まれる酸によって、接続構造体における電極間の接続部分が酸の存在下に一定期間晒された。放置後の接続構造体において、接続構造体の対向する電極間の接続抵抗を4端子法により測定した。また、酸の存在下に晒された後の接続抵抗を下記の基準で判定した。
[酸の存在下に晒された後の接続抵抗Bの評価基準]
○○○:接続抵抗Bが接続抵抗Aの2倍未満
○○:接続抵抗Bが接続抵抗Aの2倍以上、3倍未満
○:接続抵抗Bが接続抵抗Aの3倍以上、5倍未満
△:接続抵抗Bが接続抵抗Aの5倍以上、9倍未満
×:接続抵抗Bが接続抵抗Aの9倍以上
結果を下記の表1に示す。下記表1において、含有量の欄の「F粒子」は、フッ素原子を含有する粒子を示す。