JP6380807B2 - 非水電解質二次電池用正極活物質 - Google Patents

非水電解質二次電池用正極活物質 Download PDF

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Description

本発明は、非水電解質二次電池用の正極活物質に関する。
リチウム二次電池に代表される非水電解液二次電池は、既存の電池に比べて軽量かつエネルギー密度が高いことから、従来よりパソコンや携帯端末等のいわゆるポータブル電源や車両駆動用電源、住宅用蓄電装置等として用いられている。特に近年では、非水電解液二次電池は、大容量でかつハイレートでの充放電を行う、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両の駆動用高出力電源として好ましく用いられている。
この種の非水電解液二次電池は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して対向配置され、非水電解質と共に電池ケースに収容されている。この正極活物質と負極活物質との間で電荷担体(リチウム二次電池の場合はリチウムイオン)を吸蔵・放出させることにより充放電が実現され得る。二次電池の電池性能は、正極および負極に備えられる活物質の各種特性によるところが大きく、電池の用途に応じて、適切な特性を実現する活物質の開発が進められている。
特開2008−016232号公報 国際公開第2007/114557号
例えば、特許文献1には、少なくともコバルトを含むリチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面に、ニッケルおよび/またはマンガンを含むリチウム遷移金属複合酸化物よりなる被覆層を備え、この被覆層の少なくとも一部にケイ素を含む表面層を被着した正極活物質が開示されている。特許文献1には、この正極活物質を用いることにより、非水電解質二次電池の容量および充放電サイクル特性が改善されることが記載されている。しかしながら、この特許文献1の技術に開示された正極活物質をハイレートでの充放電を行う用途の非水電解質二次電池に使用した場合、十分な電池特性が得られ難いという欠点があった。また、サイクル特性もさほど良好でないという欠点があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば、ハイレートでの充放電を行う用途の非水電解質二次電池に使用した場合であっても出力抵抗が低く、サイクル特性が良好な、優れた電池特性を維持し得る正極活物質を提供することにある。
上記目的を実現すべく、本発明により、非水電解質二次電池用の正極活物質が提供される。この正極活物質は、層状結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物からなる活物質粒子を含んでいる。この活物質粒子(一次粒子)は、ケイ素(Si)、リン(P)およびゲルマニウム(Ge)からなる群から選択される少なくとも1種の添加元素を含んでいる。そしてこの活物質粒子は、該活物質粒子の半径方向の中心側の領域であって、上記添加元素を実質的に含まない第1領域と、上記第1領域の外側の領域であって、上記添加元素を含む第2領域と、から構成されている。ここで、ここに開示される正極活物質は、上記第2領域において、上記添加元素の含有割合が、前記リチウム遷移金属酸化物における遷移金属元素の合計を100質量%としたとき、上記半径方向内側から外側に向かうにつれて、0質量%から5質量%以下の範囲で漸増していることにより特徴づけられる。
ここに開示される正極活物質によると、活物質粒子は、全体として層状の結晶構造を維持しつつ、添加元素を含んでいる。これにより、層状結晶構造の端部における層間距離が拡大され、電荷担体の受入性が向上される。また、添加元素は上記第2領域にのみ濃度および濃度分布態様を限定されて含まれるため、電池の内部抵抗を低減することができる。これらの特長により、ハイレート充放電特性およびサイクル特性が両立され二次電池を実現し得る、正極活物質が実現される。
なお、本発明者らは、特許文献1に開示された正極活物質について、ケイ素を含む表面層によりリチウム複合酸化物粒子間の焼結が抑制されているものの、ハイレートでの充放電を行う電池に使用した場合、抵抗成分であるケイ素により表面層の抵抗が極めて高くなることを知見している。また、ハイレートでの充放電を繰り返し行った場合には、表面層と被覆層との結晶構造が異なるため、界面における結晶安定性が低下してサイクル特性が損なわれることを知見している。
また、特許文献2には、内部バルク部と外部バルク部とで遷移金属元素の種類の異なるリチウム遷移金属酸化物粒子において、外部バルク部と内部バルク部との境界面から活物質表面に向けて金属組成が連続的な濃度勾配で存在する正極活物質が開示されている。しかしながら、この特許文献2には、リチウム遷移金属酸化物粒子の全体を層状型の結晶構造とし、さらにその結晶構造を改変して電荷担体の受入性を改善するものではない。
これらの点において、本発明は、特許文献1および2に開示される技術と完全に区別することができる。
一実施形態に係る正極活物質粒子の構成を模式的に示した断面図である。 (A)層状型リチウム遷移金属酸化物の一般的な結晶構造を模式的に示した図であり、(B)ここに開示されるリチウム遷移金属酸化物の結晶構造を模式的に示した図である。 一実施形態に係る正極活物質粒子の表面からの深さ方向での添加元素の濃度分布を示す図である。 従来の正極活物質粒子の表面からの深さ方向での添加元素の濃度分布を示す図である。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない非水電解質二次電池の構成や動作等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
ここに開示される非水電解質二次電池用の正極活物質は、本質的に、層状の結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物からなる活物質粒子を含んでいる。活物質粒子を構成する層状の結晶構造のリチウム遷移金属酸化物は、主として、遷移金属とリチウムとの複合酸化物から構成されている。このリチウム遷移金属酸化物の組成は厳密には制限されない。例えば、非水電解質二次電池の正極活物質として汎用されるリチウム遷移金属酸化物において、いわゆる、ジグザグ層状のマンガン系リチウム複合酸化物または層状岩塩型のコバルト系リチウム複合酸化物やニッケル系リチウム複合酸化物等として認識される化合物であり得る。この酸化物は、典型的には、一般式:LiCoO,LiNiO,LiMnO,Li(Ni,Mn,Co)Oで表される化合物であり、さらには、代表的にはLiMnOで表される、いわゆるリチウムリッチ型(リチウム過剰型)の化合物であり得る。また、これらの化合物は、各遷移金属サイトの一部を他の1以上の遷移金属元素又は典型元素で置換したものであり得る。また、両者が固溶体を形成していても良い。リチウム遷移金属酸化物がこのような化学組成を有することで、この正極活物質は、例えば、高容量で、熱や電池化学反応に対する層状結晶構造の安定性が高いものとなり得る。
ここに開示される活物質粒子は、図1に模式的に示されるように、この活物質粒子の半径方向の中心側の領域であって、添加元素を実質的に含まない第1領域と、該第1領域の外側の領域であって、添加元素を含む第2領域と、から構成されている。換言すると、活物質粒子は、その半径方向で、中心側の第1領域と、この第1領域よりも外側の第2領域とに分けたとき、第1領域は添加元素を実質的に含まず、より表層側の第2領域において添加元素を含んでいる。そして、典型的には、第2領域では、添加元素が含まれていること以外は、本質的に第1領域と同じ化学組成を有している(添加元素以外の金属元素は第1領域と同じ化学量論組成である)。
なお、本明細書において「半径方向」とは、活物質粒子の重心を通る方向を意味し、半径方向の「中心側」とは活物質粒子の重心により近い側を、「外側」とは活物質粒子の重心からより遠く表面に近い側を、それぞれ意味する。活物質粒子は球形に限定されることなく、楕円形状や凹凸表面を有する不定形状であっても良い。
また、添加元素を「実質的に含まない」とは、意図的に当該添加元素を含有しないことを意味する。例えば、当該添加元素の含有量は、3質量%以下、より限定的には2質量%以下、例えば1質量%以下であり得る。
層状のリチウム遷移金属酸化物は、典型的には、酸素原子が最密充填した面が積層し、この最密充填の隙間の八面体サイトにリチウム(Li)と遷移金属元素とが規則配列することで、図2(A)に模式的に示されるように、リチウムのみからなる面(以下、単にリチウム層という場合がある。)と遷移金属元素からなる面(以下、単に遷移金属層という場合がある。)と、が交互に積層して結晶が構成されている。このリチウム層内においては、リチウムイオンは二次元的に比較的スムーズに移動することができる。そして、リチウムイオンが、リチウム層の端部から結晶構造外に放出されたり、外部から面内に挿入(吸蔵)されたりすることで、電池の充電および放電が行われる。
ここで、遷移金属元素(M)は、下記の表1に示すように、周囲の6つの酸素原子(O)とMO6八面体を構造ユニットとして形成している。ここで本発明者らは、この遷移金属からなる層に、MO6八面体よりも酸素との結合距離の短いMO4四面体を構成する元素を導入することにより、酸素原子間距離、すなわち遷移金属層の厚みを薄くする作用が得られることを想到した。このことは、相対的にリチウム層の厚みを厚くするものであり、遷移金属層の層間距離を拡大するものとなり得る。したがって、このMO4四面体をリチウム遷移金属酸化物粒子の表面(すなわち、結晶構造の端部であり得る)に局所的に導入することにより、例えば、図2(B)に示されるように、当該表面(端部)のリチウム層の厚みを厚くすることができる。延いては、活物質粒子の表面からのリチウムイオンの吸蔵および放出をスムーズに低抵抗で実現することに繋がるものであり得る。特にリチウムイオンの受入特性が大幅に向上されることは、二次電池のハイレート特性の向上に大きく寄与する点で意義が高い。
Figure 0006380807
従って、本発明においては、上記の添加元素として、リチウム遷移金属酸化物の層状結晶構造の遷移金属層に固溶し得て、かつ、酸素原子と安定的にMO4四面体を構成し得る元素を採用するようにしている。発明者らの鋭意研究によると、安定的に上記のMO4四面体を形成するためには、4以上の価数をとり得る元素であって、さらには酸素イオンとのイオン半径比が2.42以上4.44以下であることが必要との知見が得られている。正極活物質の添加元素として安定的であり、上記条件を満たす元素としては、例えば、具体的には、ケイ素(Si)、リン(P)およびゲルマニウム(Ge)を考慮することができる。これらの元素は、いずれか一種の元素を単独で添加しても良いし、二種以上を組み合わせて添加するようにしても良い。
なお、遷移金属層にわずかでも添加元素が導入されることで上記効果を得ることができる。そして添加元素の割合が多くなるほどリチウム層の厚み厚くなり、電荷担体の受入性が向上される。しかしながら、添加元素の割合が遷移金属元素の合計を100質量%として5質量%を超過する部分が生じると、活物質粒子の構造(層状結晶構造をも包含する)が崩れやすくなる。層状結晶構造が乱れると、かかる添加元素は電池の抵抗成分として作用し、却って電池特性が悪化されるために好ましくない。また、リチウム層におけるリチウムイオンの移動はスムーズに行われ得る。したがって、ここに開示される発明においては、上記添加元素をリチウムイオンの受入特性に最も寄与し得る活物質粒子の表面において5質量%との最も高い割合(濃度)で含むようにしている。
また、添加元素の含有割合が急激に変化すると、活物質粒子の構造の安定性が著しく低下する。例えば、半径方向で添加元素の含有割合が急激に変化したり、局所的に存在したりすると、繰り返しの充放電に伴い、上記添加元素を多く含む領域と少ない領域との界面で割れや剥離が生じ、活物質の容量劣化が起り易くなり得る。かかる観点から、添加元素の含有割合は、表面から中心(重心)側に向けて、連続的に徐々に漸減するようにしている。換言すると、上記添加元素は、第2領域において、半径方向で外側に向かうにつれて0質量%から5質量%以下の範囲で漸増するようにしている。
なお、以上のような添加元素によるリチウム層の拡大は、活物質粒子の内部において実現されてもその寄与は少なく、過剰な添加元素の含有を引き起こし得る。このような観点から、必ずしもこれに限定されるものではないが、添加元素が含まれる第2領域の厚み(表面からの深さ)は、例えば700nm以下に限定することができ、好ましくは600nm以下、より好ましくは500nm以下とすることが適切である。
また、本明細書における添加元素の含有割合についての「漸増」とは、例えば、第2領域を図1に示すように表面からの深さで5等分に分割したとき、表面側からの各領域A〜Eにおける添加元素の含有量をそれぞれX(A)質量%〜X(E)質量%とし、第1領域における含有量をX(1)質量%としたとき、これらX(A)〜X(E),X(1)が、下記の式(1)および式(2)の条件を満たすことで確認することができる。
式(1):0=X(1)≦X(E)≦X(D)≦X(C)≦X(B)≦X(A),0<X(A)≦5
式(2):X(A)−X(B)≦2,X(B)−X(C)≦2,X(C)−X(D)≦2,X(D)−X(E)≦2,X(E)−X(1)≦2
式(1)を満足することで、活物質粒子の半径方向内側から外側に向かうにつれて、添加元素の含有量(濃度)が0質量%から5質量%以下の範囲で増加していることを確認することができる。また、式(2)を満足することで、隣り合う上記領域での濃度(含有量)差が2質量%以下となり、その増加の度合い(濃度分布)が連続して緩やかに(徐々に)変化していることを確認することができる。
このような活物質粒子の微小領域における添加元素の含有量は、公知の適切な分析手段を利用して測定することができる。かかる分析手段としては、例えば、X線光電子分光分析法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)や、飛行時間型二次イオン質量分析法(Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry:TOF−SIMS)等を利用することができる。なお、深さ方向で添加元素の含有量の推移を調べる場合は、適宜、公知のイオンビームエッチング(イオンミリング)等の手法を利用して、活物質粒子の表面を所定の厚みで削りながら目的の添加元素の含有量を測定すればよい。
また、活物質粒子が全体として層状構造を維持しているかどうかは、X線回折(X-ray diffraction:XRD)分析や、適切な電子顕微鏡観察により確認することができる。例えば、X線回折により結晶構造の異なる異相が同定されないことや、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)観察により得られた電子線回折図形を解析して活物質粒子の表面に層状結晶構造が維持されているかどうか、また、TEMの高解像度の明視野像による結晶構造の観察等により把握することができる。
なお、上記の第1領域を構成するリチウム遷移金属酸化物は、必ずしもこれに制限されるものではないが、例えば、以下の一般式(I)で表すものとすることができる。
Li3−x(Mn1−(a+b+c)NiCo 3−δ (I)
ここで、式(I)中、MはMn,Ni,Co,Si,GeおよびP以外の任意の遷移金属元素および金属元素の少なくとも1種を示している。また、x,a,b,c,δは、次の関係を満たすことが好ましい。すなわち、1≦x≦1.5,0≦a<1,0≦b<1,0≦c≦0.2,a+b+c<1および0≦δ≦1.5である。これらa,b,c,δは、相互の元素の割合によりその値が変動し得るため一概には言えないものの、おおよその目安として、例えば以下を満たすことがより好ましい。
すなわち、上記xは、層状のリチウム遷移金属酸化物を構成する複合酸化物における金属元素の含有量、延いては(1−x)としてLiの割合を示し、他の構成元素の種類、置換割合の他、環境条件等により1〜1.5程度の値をとり得る。上記aはNi含有量を示し、0.05≦aであるのがより好ましく、またa≦0.35であるのがより好ましい。上記bはCo含有量を示し、0.01≦bであるのがより好ましく、b≦0.5、例えばb≦0.35であるのがより好ましい。上記cは、Mn,Ni,Co以外の遷移金属元素と、Si,GeおよびP以外の典型元素の含有量を示し、0.01≦cであるのがより好ましく、c≦0.3であるのがより好ましい。また、[1−(a+b+c)]はMnの含有量を示し、0より大きいことが好ましい。すなわち、リチウム遷移金属酸化物は、Mnを含んでいることが好ましい。上記δは、上記の層状結晶構造における酸素欠陥量を示し、かかる結晶構造における置換原子の種類、置換割合の他、環境条件等により変動し得るため正確に表示することは困難である。このため、酸素原子数を決定する変数であるδは3を超えない正の数であってよく、典型的には0≦δ≦1.5、例えば0≦δ≦1を採用し得る。
なお、Mとして採用し得る遷移金属元素および金属元素については特に制限されず、例えば、具体的には、スカンジウム(Sc),イットリウム(Y),チタン(Ti),鉄(Fe),亜鉛(Zr),ハフニウム(Hf),バナジウム(V),ニオブ(Nb),タンタル(Ta),クロム(Cr),モリブデン(Mo),タングステン(W),銅(Cu),銀(Ag),金(Au),アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)等から1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることが例示される。なかでも、Ti,Feのうちのいずれか一方あるいは両方であることがより好ましい。
そして上記の第2領域を構成するリチウム遷移金属酸化物は、必ずしもこれに制限されるものではないが、例えば、式(I)中のMn,Ni,Co,Mを、添加元素としてのSi,GeおよびPのいずれか1種で置換した組成とすることができる。上述のように、第2領域において添加元素の濃度は変化されるため、その化学組成を一般式で示すことは省略する。
このような活物質粒子は、典型的には粉末状態で用意することができ、非水電解液二次電池用の正極活物質として使用することができる。かかる粉末状の正極活物質の平均粒子径については、用途に応じて適宜調整することができるが、例えば、1μm以上25μm以下とすることができ、典型的には2μm以上20μm以下、例えば6μm以上15μm以下とすることが好適である。なお、本明細書において「平均粒子径」とは、一般的なレーザ回折・光散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、累積50%に相当する粒径(D50)を意味する。したがって、活物質粒子は、一次粒子の形態で存在していても良いし、二次粒子を形成していても良い。
かかる正極活物質の製造方法等は厳密には制限されないものの、上記のとおり、活物質粒子の表層側の第2領域においてのみ添加元素を連続的な濃度分布で含むとの構成から、例えば、第1領域のみから構成される活物質粒子(複数の粒子の集合体、あるいは、粉末の形態であり得る。)を出発材料として用い、この活物質粒子の表面から所定の添加元素を固溶させる手法により製造することが好ましい。出発材料としての層状結晶構造を有する活物質粒子の製造手法は特に制限されない。例えば、一例として、後述の実施例に示したような、アルカリ水溶液を使用した共沈法(晶析法)により比較的高品質な活物質粒子を製造することができる。所定の添加元素を固溶させる際には、例えば、出発材料としての活物質粒子の表面に、上記添加元素を含む化合物を被覆し、例えば1100℃〜1300℃程度の温度で、0.25時間〜3時間程度加熱する比較的高温かつ短時間の熱処理により、目的の添加元素を活物質粒子の表面から中心に向けて結晶構造内に徐々に拡散させてゆくことが例示される。添加元素を含む化合物としては特に制限されないが、例えば、Si,GeおよびPの各種の塩を好適に用いることができる。具体的には、例えば、各種のケイ酸塩,ゲルマン酸塩,リン酸塩やこれらの水和物等を使用することができる。
ここで開示される正極活物質は、各種用途の二次電池に利用可能であるが、上記の構成から特に、ハイレートでの充放電を行う用途で使用される二次電池の正極活物質として特に好適に利用することができる。なお、ここでいうハイレートとは、5C以上の電流値での充電または放電を意味し、例えば10C以上、さらには20C以上、例えば25C以上や、30C以上、35C以上や40C以上での大電流での充放電を対象とすることができる。したがって、かかる特徴を活かして、ここで開示される正極活物質を使用した非水電解液二次電池は、例えば、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車等に搭載される車両駆動用電源として好適に利用し得る。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をこれらの具体例で示すものに限定することを意図したものではない。
本試験例では、リチウムイオン二次電池の作製にあたり、まずは、下記の手順1〜3で例1〜15の正極活物質を調製した。
[手順1]
まず、酢酸ニッケルII(Ni(CHCOO))、酢酸コバルト(Co(CHCOO))および酢酸マンガン(Mn(CHCOO))を用い、Ni,Co,Mnのモル比が所定の割合(ここでは1:1:1)となるよう水に溶解させてNiCoMn水溶液を調製した。このNiCoMn水溶液を、共沈反応容器内に用意したpHが12.0(液温25℃)の水酸化ナトリウム・アンモニア含有の塩基性水溶液に、pHを維持しながら滴下し、混合することで、NiCoMnの水酸化物を晶析(共沈)させた。この晶析物をろ過し、アルカリ成分を洗浄して乾燥させることで、粒子状のNiCoMn複合水酸化物を主体とする前駆体を得た。
上記前駆体中の全遷移金属(すなわち、Ni,Co,Mn)のモル数の合計をMとしたとき、このMに対するリチウムのモル比(Li/M)が1.0、となるように炭酸リチウム(LiCO)を秤量し、上記前駆体と均一に混合したのち、大気中にて、800℃で24時間焼成することで焼成物を得た。なお、ここまでが公知の共沈法によるリチウム遷移金属酸化物からなる正極活物質の製造方法に相当する。
次いで、この焼成物とメタケイ酸リチウム(LiSiO,平均粒子径1μm〜50μm)とを、焼成物に対するメタケイ酸リチウムの質量比を0.01〜0.001の範囲で幾通りかに変化させて混合し、大気中、1100℃〜1300℃,0.25h〜3hの範囲で焼成温度および焼成時間を変化させて焼成することで、平均粒子径が約5μmの粉末からなる正極活物質(例1〜8)を得た。
なお、上記のメタケイ酸リチウムに代えて、ゲルマン酸リチウム(LiGeO)またはリン酸リチウム(LiPO)を用いることで、平均粒子径が約5μmの粉末からなる正極活物質(例9〜10)を得た。
[手順2]
上記の手順1において得られた焼成物を、そのまま粉末状の例12の正極活物質とした。この正極活物質の平均粒子径は約5μmであり、Si等の添加元素は含まない従来の一般的な正極活物質である。
[手順3]
上記の手順1において、焼成物とメタケイ酸リチウム(LiSiO)との割合を、質量比で、1:0.005(例13)および1:0.05(例14)となるように混合し、大気雰囲気中、600℃で6〜12時間焼成することで、平均粒子径が約5μmの粉末からなる正極活物質を得た。
[手順4]
手順1のNiCoMn水溶液に対し、Ni,Co,Mnの各元素の合計を100質量%としたとき、メタケイ酸リチウム(LiSiO)に含まれるSiの割合が5質量%となる量で、メタケイ酸リチウムを溶解させた。この水溶液を用い、手順1と同様にして前駆体を経て、粉末状の焼成物を得た。そしてこの焼成物を、例14の正極活物質とした。この正極活物質の平均粒子径は約5μmであり、正極活物質を構成する粒子の全体に略均一に、添加元素としてのSiが含まれるものである。
[手順5]
メタケイ酸ナトリウム(NaSiO)をイオン交換水に溶解させることで、2Nのメタケイ酸水溶液を用意した。そして、手順1のNiCoMn水溶液と、メタケイ酸水溶液とを、共沈反応容器内に用意したpHが12.0(液温25℃)の水酸化ナトリウム・アンモニア含有の塩基性水溶液にpHを維持しながら所定の割合で滴下し、混合することで、NiCoMnSiの水酸化物を晶析(共沈)させた。引き続き、メタケイ酸水溶液の割合を増やしながら、メタケイ酸水溶液とNiCoMn水溶液とを反応器に供給してゆくことで、先に沈殿した沈殿物の表面に、Siの濃度が漸増するように新たな沈殿物の層を形成した。メタケイ酸水溶液とNiCoMn水溶液との混合割合は、質量比で、最終的にSi:(Ni+Co+Mn)が0:100から5:100となるまで変化させた。このようにして得られた前駆体と、炭酸リチウム(LiCO)とを均一に混合したのち、大気中にて、800℃で24時間焼成することで、平均粒子径が約5μmの焼成物を得た。この焼成物を例15の正極活物質とした。
[活物質における添加元素の濃度分布測定]
上記で用意した例1〜15の正極活物質について、活物質を構成する粒子における添加元素の濃度分布を調べることで、添加元素の固溶状態を確認した。本実施形態では、以下の3ステップで添加元素の濃度分布を測定した。
S1:XRD分析
S2:TEM観察
S3:XPS定量分析
(S1:XRD分析)具体的には、まず、各例の正極活物質についてX線回折(X-ray diffraction:XRD)分析を行うことにより、添加元素を添加するために用いた添加元素化合物が正極活物質中に残存しているか否かを確認する。
(S2:TEM観察)次いで、TEMを用い、各例の正極活物質の表面の電子線回折を観察し、当該正極活物質が層状型(ここでは層状岩塩型)に属する結晶構造を有するか、あるいは、添加元素を添加する際に用いた原料化合物の結晶構造を有するか、を確認する。
これらのステップから、S1において添加元素化合物が残存しておらず、S2において正極活物質を構成する粉末の結晶表面が層状構造を維持していれば、目的の添加元素が層状岩塩型の結晶構造内に固溶していると考えることができる。そして上記S1およびS2にて目的の添加元素が層状岩塩型の結晶構造内に固溶していると判断される場合は、次のS3に進む。
(S3:XPS定量分析)すなわち、S3では、XPSを用いて、各例の正極活物質の表層付近の化学組成を深さ方向で分析する。具体的には、図2に示すように、各例の正極活物質粒子について、表面から例えば500nmの領域を第2領域とし、この第2領域よりも内部側(すなわち、半径方向で表面から500nmよりも中心側)を第1領域とする。また第2領域を、さらに100nmずつの厚みの層状の領域A〜Eに表面から順に5分割する。そして、この第2領域における領域A〜Eと、第1領域とのそれぞれについて、XPS分析により添加元素(Si,GeまたはP)の濃度を測定する。深さ方向での組成分析は、正極活物質粒子の一の表面領域でのXPS分析が終わるごとに、該表面に希ガスイオンを照射して表層を厚み100nmでエッチングし、これにより露出されるより深部の領域を正極活物質の次の表面領域(新たな測定表面)とすることを繰り返すことで、実施することができる。
本実施形態においても、上記S1〜S3に従って、添加元素の濃度を測定した。なお、XPS測定における希ガスイオンとしてはアルゴン(Ar)イオンを用い、添加元素(Si,GeまたはP)と、この正極活物質粒子を構成する遷移金属(Mn,Ni,Co)との相対的な量比から、添加元素の濃度を算出するようにした。具体的には、遷移金属元素の合計を100質量%とし、この遷移金属元素量を基準とした添加元素の割合を添加元素の濃度とした。その結果を下記の表2に示した。
なお、表2において、例えば例4の正極活物質は、領域A〜第1領域までの濃度が順に、領域A:5質量%、領域B:4質量%、領域C:3質量%、領域D:2質量%、領域E:1質量%、第1領域:0質量%であったことを示している。
なお、上記ステップに基づき測定された各領域における添加元素の濃度(質量%)を、それぞれX(A)〜X(E)およびX(1)としたとき、これらが下式(1)および(2)を満たす場合に、当該添加元素は第2領域において「半径方向内側から外側に向かうにつれて連続的に漸増している」と判断することができる。
そこで、各例の正極活物質における添加元素濃度が、下式(1)および(2)を満たす場合を「漸増」とし、その他の場合については、式(2)満たさない場合を「急増」、式(2)は満たすが式(1)は満たさない場合を「均一」とし、いずれにも当てはまらない場合を「−」として表2の「添加元素の径方向の濃度分布」の欄に示した。
≪式(1)≫ 0=X(1)≦X(E)≦X(D)≦X(C)≦X(B)≦X(A),0<X(A)≦5
≪式(2)≫ X(A)−X(B)≦2,X(B)−X(C)≦2,X(C)−X(D)≦2,X(D)−X(E)≦2,X(E)−X(1)≦2
[リチウムイオン二次電池の構築]
上記で用意した例1〜15の正極活物質を用い、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、質量比率が90:8:2となるようにN−メチルピロリドン(NMP)と混合し、スラリー状組成物を調製した。この組成物を、幅約130mm,厚み約20μmの長尺状アルミニウム箔(正極集電体)に片側から110mmの幅で目付量が15mg/cmとなるように塗布して正極活物質層を形成した。得られた正極を乾燥およびプレスし、シート状の正極(正極シート)を作製した。
次に、負極活物質としての鱗片状の天然黒鉛と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、質量比率が98.3:1.0:0.7となるようにイオン交換水と混合して、スラリー状組成物を調製した。この組成物を、幅約135mm,厚みおよそ10μmの長尺状銅箔(負極集電体)に目付量が15mg/cmとなるように塗布して負極活物質層を形成した。得られた負極を乾燥およびプレスし、シート状の負極(負極シート)を作製した。
次に、上記で作製した正極シートと負極シートとを、幅120mm,厚み25μmのポリエチレン(PE)製セパレータを介して重ね合わせて捲回し、得られた捲回電極体を側面方向から押しつぶすことによって扁平形状に成形した。そして、電池ケースの蓋に一体化された正極および負極の接続端子に、かかる捲回電極体の正極集電体の端部と、負極集電体の端部とを溶接によりそれぞれ接合した。
この電極体を、幅120mm,高さ75mm,奥行き15mm,ケース厚み1mmの角型電池ケースに収容し、非水電解液を注入した。なお、非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)とを3:5:2の体積比率で含む混合溶媒に、電解質としてのLiPFを約1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。そして、電池ケースの開口部に蓋体を装着し、溶接して接合することによって、例1〜15のリチウムイオン二次電池を構築した。なお、本実施形態で作製したリチウムイオン二次電池の定格容量は5Ahである。
[コンディショニング]用意した例1〜15のリチウムイオン二次電池に対し、まず、25℃にて、1C(5A)で4.2Vまで放電したのち5分間の休止時間を設け、3.0Vまで充電したのち5分間の休止期間を設けた。その後、1Cで4.1Vまで定電流(CC)充電したのち電流値が0.01Cとなった時点で充電を完了するCC−CV充電(4.1V,レート1C,0.01Cカット)し、1Cで3.0Vまで定電流(CC)放電したのち電流値が0.01Cとなった時点で放電を完了するCC−CV放電を行った。そして、この放電時の容量を、初期容量とした。
[電池抵抗の測定]上記コンディショニング後の例1〜15の各電池について、出力IV抵抗を測定した。すなわち、25℃にてSOC60%に調整した後、5C,10C,20Cの各レートで放電したときの放電から10秒後の電圧降下を測定した。そして測定された電圧降下量(V)を電流に対してプロットした電流−電圧直線から傾きRを算出することで、出力IV抵抗とした。得られた結果を表2に示した。
[サイクル特性の評価]上記コンディショニング後の例1〜15の各電池について、サイクル特性を評価した。すなわち、25℃にて、2C(10A)のレートで4.2V〜3.0Vの電圧範囲での充放電を1000サイクル繰り返し行い、上記の初期容量と同様にしてサイクル後容量を測定した。そして、容量維持率(%)を、初期容量に対するサイクル後の容量の割合((サイクル後の容量/初期容量)×100(%))として算出した。得られた容量維持率を表2のサイクル特性の欄に併せて示した。
Figure 0006380807
[評価]上記のS1〜S3による各例の正極活物質の粒子表面の結晶構造や元素濃度分布の分析結果から、添加元素を含まない例11の従来の正極活物質以外は、いずれもSi,GeまたはPの添加元素がリチウム遷移金属酸化物に固溶していることが確認できた。
図3に、例4の正極活物質粒子におけるSi元素の濃度分布を例示した。例1〜10の正極活物質粒子については、図3に示したように、第2領域における添加元素の濃度が活物質粒子の外表面から内側に行くほど連続的に少なくなる傾斜構造を有していることが確認できた。また、この添加元素の固溶による傾斜構造は、正極活物質粒子の直径に対して表面から約1/10以下の厚み(ここでは500nm以下)の層状領域(第2領域)においてみられ、それよりも中心側の領域(第1領域)における添加元素の固溶は確認されなかった。これは、手順1の製法によるものと考えられる。
そして例12〜14の正極活物質は、第2領域における添加元素の濃度が均一であることが確認できた。図4に、例13の正極活物質粒子におけるSi元素の濃度分布を例示した。図4に示したように、例12および13の正極活物質は、第1領域と第2領域との界面近傍において添加元素の濃度が急激に変化していることが確認できた。一方、例14の正極活物質については、第2領域のみならず、第1領域を含む活物質粒子全体の添加元素の濃度が均一であることが確認できた。また、例15の活物質は、活物質粒子全体で添加元素の濃度が外表面から内側に行くほど連続的に少なくなる傾斜構造を有していることが確認できた。
ここで、例4〜10の正極活物質については、最表面側の領域Aの添加元素の濃度が5質量%以下であり、従来の例11の正極活物質と比較して出力IV抵抗が大幅に低下し、電池の出力特性が向上していることが確認できた。このような効果は、添加元素がSi,Ge,Pのいずれの場合においても確認することができた。これは、活物質粒子の最表面に添加元素が存在することで、結晶構造における端部のリチウム層の幅を拡大することができ、リチウムイオンの受け入れ性が大幅に高められたためであると理解できる。なお、出力IV抵抗は、領域Aにおける添加元素の濃度が5質量%と高い場合(例4,5,9,10)に特に大幅に低減され、領域Aにおける添加元素の濃度が少なくなるほどその効果が小さくなる(例6〜8)ことがわかった。また、例4および例5の比較から、最表面の領域Aに十分に添加元素が存在し、それよりも内側の領域B〜Eでの添加元素濃度が急激に減少しなければ、領域B〜Eでの添加元素濃度が低くても出力IV抵抗に与える影響は低いものと考えられた。また、例4〜10の正極活物質については、添加元素を第2領域に部分的に含むにもかかわらず、良好なサイクル特性が維持できることが確認された。
しかしながら、領域Aの添加元素の濃度が5質量%を超過している例1〜3の正極活物質については、添加元素の総添加量が少ない場合(例3)や、添加元素の濃度が緩やかに減少している場合(例1,2)であっても、例11よりも出力IR抵抗が大幅に増大してしまうことがわかった。これは、過剰な添加元素が活物質粒子の構造(結晶構造を含む)を崩し、通常のリチウムイオンの吸蔵放出を妨げてしまったことを意味するものと理解できる。なお、表面の添加元素の含有量が特に多い場合(例1)は、この添加元素が固溶状態で存在していても単に抵抗成分が増大したことと同じとなり、特に抵抗が高くなってしまうことが確認された。また、添加元素の濃度が急激に変化している場合(例3)には、添加元素の総量が少なくても、サイクル特性が著しく劣化することが確認された。これは、添加元素の濃度が急変している箇所にて活物質の体積膨張率に大きな変化が生じ、活物質の割れなどの大きな欠陥が発生したことによるものと考えられる。
例12および例13では、第2領域において添加元素が5質量%または3質量%と比較的少量かつ均一に含まれている。このような態様においても、結晶構造における端部のリチウム層の幅を拡大することができるため、例11と比較して出力IV抵抗は低減されている。しかしながら、領域Aよりも内側の領域A〜Eに過剰に添加元素を含むため、全体としての出力IV抵抗の低減効果は例4,5,7等と比較して抑制されてしまうことがわかった。そして例12および例13では、第2領域と第1領域との界面にて添加元素の濃度が急激に変化するため、かかる界面にて活物質層の割れや第2領域の剥離等が生じ、サイクル特性が著しく劣化することが確認された。
例14では、第1領域を含む活物質粒子の全体に亘って添加元素の濃度が均一に保たれている。この例14では、例13とは逆に、第2領域と第1領域との界面にて添加元素の濃度に変化がないためにサイクル特性は極めて良好であったが、活物質粒子の中心部にまで添加元素が抵抗成分として含まれるために、出力IV抵抗の低減効果は殆ど見られなかった。
なお、例15の正極活物質は、出力IV抵抗は例6〜7と同レベルまで低下しているものの、サイクル特性が著しく悪化されてしまった。例15の正極活物質は、活物質粒子の中心まで緩やかに濃度を減少させるために、例えば添加元素を固溶させる手法で製造することが不可能であった。そのため、添加元素を遷移金属と共に共沈させ、その割合を段階的に増やす方法を採用した。しかしながら、かかる製造方法によると添加元素の割合を変更する段階で結晶成長に相違が生じ、結晶界面が形成されてしまう。そしてかかる界面の存在により、サイクル特性が著しく悪化したと考えられた。
以上のことから、ここに開示される正極活物質によると、出力IV抵抗が低減されて、入出力特性が大幅に改善できることが確認された。また、かかる良好な入出力を繰り返しの充放電サイクル後も維持することができ、サイクル特性にも優れていることが確認された。以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。

Claims (2)

  1. 非水電解質二次電池用の正極活物質であって、
    層状結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物からなる活物質粒子を含み、
    前記活物質粒子は、ケイ素(Si)およびゲルマニウム(Ge)のうちの少なくとも1種の添加元素を含むとともに、
    前記活物質粒子の半径方向の中心側の領域であって、前記添加元素を実質的に含まない第1領域と、
    前記第1領域の外側の領域であって、前記添加元素を含む第2領域と、
    から構成されており、
    前記第2領域の厚みは700nm以下であり、
    前記第2領域において、前記添加元素の含有割合は、前記リチウム遷移金属酸化物における遷移金属元素の合計を100質量%としたとき、前記半径方向内側から外側に向かうにつれて、0質量%から5質量%以下の範囲で漸増している、正極活物質。
  2. 前記第2領域は前記層状結晶構造を有し、
    前記添加元素は、当該層状結晶構造において酸素原子と四面体ユニットを構成する位置に固溶している、請求項1に記載の正極活物質。
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