JP6380286B2 - 燃料電池車 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池車に関する。
燃料電池と燃料電池に供給される燃料を貯留したタンクとを備え、燃料電池の電力により走行する燃料電池車が知られている。例えば、特許文献1には、車体の前方側に燃料電池が配置され、燃料電池の後方側に隣接してタンクが配置されている。
特表2008−518827号公報
このようにタンクの前方側に隣接して燃料電池などの前方側部材が配置されていると、車体の前面衝突時に前方側部材が後退してタンクに衝突して、クラッシュストロークを確保できない可能性がある。
本発明は、前面衝突時のクラッシュストロークを確保した燃料電池車を提供する。
本発明は、車体と、前記車体に搭載された走行用のモータと、燃料電池に供給される燃料を貯蔵し、車体前方側に口金部を有したタンクと、前記モータに供給される電力を発電する前記燃料電池、及び前記燃料電池からの電力を変換して前記モータに供給する電力変換器、の何れか一方であり、前記タンクよりも車体前方側に間隔を空けて配置され、前記タンクと水平方向に部分的に重なる前方側部材と、前記前方側部材を前記車体に締結し、所定以上の荷重が作用した場合に破断又は変形する締結部と、前記口金部に支持された被支持部と、前記前方側部材の後側面及び下側面に沿った支持部と、前記被支持部から前記支持部に向けて水平方向よりも斜め上方に延びた延在部と、を含む案内部材と、を備え、前記車体の前面衝突時に前記締結部が破断又は変形して前記前方側部材が車体後方側に移動する場合、前記前方側部材が車体後方側へ移動するにつれて、前記延在部は前記被支持部を支点として車体前方側から車体後方側に回転し、前記支持部は前記前方側部材を前記タンクの上方側に案内する、燃料電池車を提供する。これにより、前方側部材がタンクに衝突するまでの距離を確保でき、クラッシュストロークを確保できる。
前記タンクを前記車体のフロアパネルの下面側に固定したバンドと、前記バンドの両端を前記フロアパネルに固定した固定部と、前記固定部よりも内側で前記バンドを前記フロアパネルに固定し、前記固定部よりも脆弱な脆弱固定部と、を備え、前記案内部材を介して前記前方側部材から前記タンクに下方側へ所定以上の荷重が加わった場合に、前記固定部は破断せずに前記脆弱固定部が破断して前記タンクの下方側への移動を許容するように前記バンドが変形してもよい。
前記被支持部は、前記口金部の外周面の上方側に係合した切欠部が形成されていてもよい。
前記被支持部及び支持部は、それぞれヒンジ部を介して回転可能に前記延在部に接続されていてもよい。
前記締結部が破断及び変形していない場合には、前記前方側部材は、前記締結部に加えて、前記タンクに支持された前記案内部材により支持されていてもよい。
本発明によれば、前面衝突時のクラッシュストロークを確保した燃料電池車を提供できる。
本実施例の燃料電池車の概略図である。 車両の前方側の内部構成を示した側面図である。 燃料電池周辺の上面図である。 燃料電池周辺の正面図である。 案内部剤の説明図である。 図4のA−A断面図である。 図4のB−B断面図である。 前面衝突時の燃料電池、案内部材、及びタンクの挙動の説明図である。 タンクの前方側を固定するバンドの説明図である。 タンクの前方側を固定するバンドの説明図である。 タンクの後方側を固定するバンドの説明図である。 第1変形例の案内部材の説明図である。 前面衝突時の燃料電池、案内部材、及びタンクの挙動の説明図である。 第2変形例の案内部材の説明図である。 図10のC−C断面図である。 第3変形例の案内部材の説明図である。 図12のD−D断面図である。 オフセット衝突時の燃料電池の挙動の説明図である。 タンクの前方側にコンバータが配置される場合の説明図である。 タンクの前方側にPCUが配置される場合の説明図である。 第4変形例の案内部材の説明図である。
図1は、本実施例の燃料電池車1(以下、車両1と称する)の概略図である。車両1の車体2には、車体前方側に前輪Wfが搭載され、車体後方側に後輪Wrと後輪Wrを駆動する走行用のモータMとが搭載されている。尚、本明細書では、車体前方側、車体後方側を、それぞれ単に前方側、後方側と称する。車両1は、後輪駆動である。車体2の中央部に位置する搭乗室4よりも車体前方側には、フロントルーム3が設けられている。フロントルーム3内には、燃料電池スタック(以下、燃料電池と称する)50が配置されている。燃料電池50は、モータMに供給される電力を発電する。
搭乗室4よりも車体後方側には、DC−DCコンバータ60(以下、コンバータと称する)、パワーコントロールユニット(以下、PCUと称する)70、及びモータMが搭載されている。コンバータ60は、燃料電池50の電力を昇圧してPCU70へ出力する。PCU70は、コンバータ60を介して供給された燃料電池50からの電力を、交流に変換してモータMに供給するインバータである。コンバータ60及びPCU70は、モータMの上方側に配置されている。車体2の中央部には、燃料電池50に供給される燃料である水素ガスを貯蔵したタンク20及び30が搭載されている。タンク20及び30は、車体2の前方側から後方側に並び、それぞれ長手方向が車体2の前後方向、車幅方向となるように配置されている。タンク20は、燃料電池50に供給される燃料を貯蔵し、車体前方側に口金部22を有したタンクの一例である。
図2は、車両1の前方側の内部構成を示した側面図である。フロアパネル11は、搭乗室4の床に相当する。フロアパネル11よりも前方側には、フロントサスペンションメンバ(以下、サスペンションメンバと称する)40が配置されている。サスペンションメンバ40は、金属製であり下面視で略矩形枠状であり、不図示のフロントサイドメンバに吊り下げられている。サスペンションメンバ40は、前輪Wfに加わる衝撃を吸収する不図示のショックアブソーバを支持している。サスペンションメンバ40は、車幅方向に延び車体2の前方側及び後方側にそれぞれ位置した前方クロス部42及び後方クロス部45と、前方クロス部42から後方側に延びて後方クロス部45に連続した一対のサイドレール部43、44とを含む。前方クロス部42及びサイドレール部44には、詳しくは後述するマウント部m1及びm2がそれぞれ設けられている。サスペンションメンバ40は、車体2の一部を構成している部材である。
タンク20は、フロアパネル11の略中央に前後方向に沿ったセンタートンネルパネル13の下面側に、金属製のバンド80及び80aにより固定されている。バンド80は、バンド80aよりも前方側に位置している。タンク30は、センタートンネルパネル13よりも後方側にあり車幅方向に沿ったフロアトンネル14の下面側にバンド80aにより固定されている。
タンク20は、タンク本体部21、口金部22及び23を含む。タンク本体部21の中心軸線は、車体2の前後方向に延びている。口金部22及び23は、タンク本体部21の前方側及び後方側にそれぞれ設けられタンク本体部21の中心軸線上に設けられている。口金部22及び23はタンク本体部21内と連通した略円筒状であるが、口金部22及び23の一方は燃料電池50に配管を介して接続され、他方は不図示のプラグにより塞がれている。口金部22は、根元部の径よりも先端部の径が大きい形状であるがこれに限定されない。タンク30も同様に、タンク本体部31、口金部32を含む。
タンク20と燃料電池50との間には、案内部材90が配置されているが、詳しくは後述する。カバーCVは、サスペンションメンバ40やタンク20及び30の下方側を覆うようにフロアパネル11の下面に固定され、燃料電池50やタンク20及び30を保護している。
燃料電池50は、タンク20よりも前方側に間隔を空けて配置され、タンク20と水平方向に部分的に重なっている前方側部材の一例である。具体的には、燃料電池50及びタンク20を車体2の前方側から見た場合には、燃料電池50の下方側の一部とタンク20の上方側が重なって見える。燃料電池50は、このような高さ位置でマウント機構M1及びM2により支持されて、サスペンションメンバ40に締結されている。マウント機構M1及びM2は、燃料電池50を車体2に締結し、所定以上の荷重が作用した場合に破断又は変形する締結部の一例である。
図3Aは、燃料電池50周辺の上面図である。図3Bは、燃料電池50周辺の正面図である。尚、図3Aにおいては、燃料電池50に加えてタンク20及び案内部材90を示している。燃料電池50は、上側面51、前側面52、右側面53、左側面54、後側面55、及び下側面56を有した略直方体状である。上側面51及び下側面56は、水平面と略平行である。前側面52及び後側面55は、車幅方向に沿った鉛直面に略平行である。右側面53及び左側面54は、車体2の前後方向に沿った鉛直面に略平行である。前側面52及び後側面55は、燃料電池50内で積層された複数のセルを挟む一対のエンドプレートに相当する。燃料電池50及びタンク20は水平方向で部分的に重なるように配置されている。
燃料電池50の前側面52及び左側面54は、それぞれマウント機構M1及びM2により支持されている。マウント機構M1は、マウント部m1に固定されたマウントブラケットB1と、マウントブラケットB1にインシュレータI1を介して支持され前側面52に固定されたマウントブラケットB11と、を含む。マウント機構M2は、マウント部m2により固定されたマウントブラケットB2と、マウントブラケットB2にインシュレータI2を介して支持され左側面54に固定されたマウントブラケットB22と、を含む。マウントブラケットB11、B22は、例えばボルトにより燃料電池50に固定されている。インシュレータI1、I2は、弾性変形するゴムを含み、サスペンションメンバ40から燃料電池50に伝達する振動を吸収する。
マウントブラケットB1、B11、B2、及びB22は、アルミ製又は鉄製であり、車体2が前面衝突して所定以上の大きさの衝撃が加わった場合には破断又はサスペンションメンバ40と共に塑性変形する。尚、マウントブラケットB11及びB22を燃料電池50に固定しているボルトや、インシュレータI1及びI2、マウントブラケットB1及びB2、マウント部m1及びm2の何れかを、前面衝突時に破断又は塑性変形するように脆弱に形成してもよい。このようにマウント機構M1及びM2が破断又は変形することにより、前面衝突時の衝撃が吸収される。前面衝突時にマウント機構M1及びM2が破断又は変形することにより、燃料電池50は後退することが可能となる。この際に、案内部材90は燃料電池50をタンク20の上方側へと案内する。案内部材90について以下に説明する。
図4は、案内部材90の説明図である。図5Aは、図4のA−A断面図である。図5Bは、図4のB−B断面図である。案内部材90は、金属製であり、例えばアルミよりも剛性のある鉄製であるが、これに限定されない。案内部材90は、棒体91、受け板92、支え板93、及び押え板94を含む。棒体91は、押え板94から受け板92に向けて水平方向よりも斜め上方に車体2の前後方向に沿って延びたように配置されている。棒体91は、中空の円筒状であるが、これに限定されず、中空の角筒状や中実の棒状であってもよい。棒体91の長さは、口金部22の先端から燃料電池50の後側面55までの水平方向の距離Lxよりも長く設定されている。棒体91の傾斜角度は、水平方向に対して、例えば10〜50度、好ましくは20〜45度である。棒体91は、被支持部から支持部に向けて水平方向よりも斜め上方に延びた延在部の一例である。
受け板92は、棒体91の前方側の端部に設けられ、車体2の前後方向に略垂直な平板状であり、燃料電池50の後側面55に接触している。支え板93は、受け板92の下方側に連続し、受け板92に対して略直角に折り曲げられ、燃料電池50の下側面56に接触している。即ち、受け板92及び支え板93は、それぞれ燃料電池50の後側面55及び下側面56を支持している。受け板92及び支え板93は、一枚の板状の部材が側面視で略L字状となるように略直角に折り曲げられた形状であり、詳しくは後述するが変形可能に薄肉に形成されている。また、詳しくは後述するが、支え板93から、受け板92及び棒体91の接続箇所の下方側までの鉛直方向での長さHは、棒体91の延びた方向での棒体91の長さよりも短い。受け板92及び支え板93の幅は、棒体91の径よりも大きい。受け板92及び支え板93は、前方側部材の後側面及び下側面に沿った支持部の一例である。
押え板94は、棒体91の後方側の端部に設けられ、板状に形成されている。押え板94の下端には、口金部22の上方側の外周面に沿った円弧状の切欠部95が形成されている。切欠部95が口金部22の外周面に係合して、押え板94は口金部22上に支持されている。また、押え板94は、口金部22の根元部付近の、タンク本体部21の前方側の湾曲した面に接触している。押え板94の幅は、棒体91の径よりも大きい。受け板92及び押え板94は、棒体91に溶接により接合されていてもよいし、一体に成形されていてもよい。押え板94は、口金部22に支持された被支持部の一例である。
押え板94が口金部22の上方側で支持された状態で受け板92が後側面55に接触している。このため、案内部材90が燃料電池50及びタンク20間から脱落することが抑制されている。また、支え板93が下側面56に接触しているため、案内部材90の上方側へ離脱、及び案内部材90の棒体91の軸方向周りの回転が抑制されている。また、受け板92が後側面55に接触し押え板94がタンク20のタンク本体部21の前方側に接触しているため、案内部材90の前後方向の移動が抑制される。また、押え板94の切欠部95が口金部22の上方側の外周面と係合しているため、押え板94の車幅方向での口金部22からの離脱が抑制される。以上により、例えば車両1の走行により案内部材90に振動が伝達した場合であっても、案内部材90の脱落が抑制される。尚、案内部材90のがたつきを防止する観点からは、受け板92、支え板93、及び押え板94はそれぞれ後側面55、下側面56、及びタンク本体部21の前方側の曲面に常に接触していることが望ましいが、これに限定されない。
次に、案内部材90が設けられていない場合での前面衝突時の燃料電池50の挙動について説明する。案内部材90が設けられていない場合に、車体2が前面衝突してマウント機構M1及びM2が破断して燃料電池50に後方側への荷重が作用した場合を想定する。この場合、燃料電池50はその重量によって水平方向よりも斜め下方側に後退して、燃料電池50の後側面55が口金部22に衝突する可能性がある。この場合のクラッシュストロークは、後退開始前の燃料電池50の後側面55から口金部22の先端までの水平方向の距離Lxに相当する。また、例えば前面衝突によりマウント機構M1及びM2が変形して、燃料電池50が口金部22には接触しないように水平方向に後退した場合は、燃料電池50はタンク本体部21の前方側に衝突する。この場合のクラッシュストロークは、後退開始前の燃料電池50の後側面55からタンク本体部21の前方側までの水平方向の距離Lyに相当する。このようにクラッシュストロークが短い場合には、前面衝突時の衝撃を吸収しにくいという問題がある。
本実施例では、案内部材90により前面衝突時でのクラッシュストロークを確保している。図6は、前面衝突時の燃料電池50、案内部材90、及びタンク20の挙動の説明図である。前面衝突によりマウント機構M1及びM2が破断又は変形して燃料電池50に後方側への荷重が作用して後退する場合を想定する。この場合、燃料電池50が後退するにつれて、棒体91は、押え板94を支点として受け板92及び支え板93が上方側に移動するように回転しようとする。棒体91が押え板94から受け板92へ水平方向より斜め上方側に延びており、押え板94がタンク本体部21の前方側に接触して案内部材90の後方側への移動が規制されているからである。
また、受け板92及び支え板93は薄肉に形成されているため、棒体91の回転している途中で変形する。例えば、図6に示した例では、受け板92の棒体91と接続されている部分より上方側が後側面55から離れるように折れ曲がる。棒体91が略鉛直姿勢になると、支え板93により支持された下側面56は、口金部22の略鉛直上方側に位置する。ここで、支え板93が口金部22に接触しないように、上述した長さHと棒体91の長さとが設定されている。具体的には、棒体91の長さは上述した長さHよりも長く設定され、これを実現するように棒体91の角度や棒体91と受け板92との接続箇所の位置も設定されている。尚、本実施例のように口金部22の先端部の径が口金部22の根元部の径よりも大きい場合には、燃料電池50と口金部22との接触を回避するために、棒体91は上述した長さHよりもある程度余裕を持って長く設定されていることが望ましい。
また、詳しくは後述するが、棒体91が回転している途中で案内部材90を介して燃料電池50からタンク20に下方側へ所定以上の荷重が加わることにより、タンク20の前方側が下方側に移動する。タンク20の前方側が下方側に移動しつつ燃料電池50が更に後退することにより、棒体91が鉛直姿勢から後方側に倒れるように回転しながら押え板94が口金部22から離れる。また、燃料電池50の後退と棒体91の回転により、支え板93が下側面56に接触しながら受け板92が後側面55から離れるように変形し、棒体91はタンク本体部21の上方側に衝突する。この場合のクラッシュストロークは、後退開始前の燃料電池50の後側面55から棒体91がタンク本体部21に接触した際の後側面55までの水平方向の距離Lに相当し、上述した距離Lxよりも長い。このようにして、燃料電池50はタンク20の上方側に案内されるため、クラッシュストロークを確保できる。
次に、タンク20の前方側の下方側への移動について説明する。タンク20の前方側は、図2に示したようにバンド80によりフロアパネル11に固定されている。図7A及び図7Bは、タンク20の前方側を固定するバンド80の説明図である。バンド80は、タンク20のタンク本体部21の外周に沿った湾曲部81と、湾曲部81の両側から連続して直線状に延びてフロアパネル11の下面に固定された直状部82とを含む。湾曲部81から離れた直状部82の端部は、ボルトBと不図示のナットによりフロアパネル11に固定されている。また、2つのボルトBよりも内側にあり湾曲部81に近い直状部82の部分は、ボルトSBと不図示のナットによりフロアパネル11に固定されている。
ボルトSBは、ボルトBよりも細く脆弱である。このため、前面衝突時に後退している燃料電池50から案内部材90を介してタンク20に下方側への所定以上の荷重が加わると、湾曲部81も同様に下方側への荷重を受けてボルトSBのみが破断する。ボルトSBのみが破断すると、直状部82の両端部のみがボルトBのみによってフロアパネル11に固定された状態となる。この状態で、タンク20へ加わった下方側への荷重により、湾曲部81が下方側に移動して湾曲部81及び直状部82が変形する。このため、タンク20の前方側は下方側に移動する。ボルトBは、バンド80の両端をフロアパネル11に固定した固定部の一例である。ボルトSBは、固定部よりも内側でバンド80をフロアパネル11に固定し、固定部よりも脆弱な脆弱固定部の一例である。
図7Cは、タンク20の後方側を固定するバンド80aの説明図である。バンド80aの直状部82aは、直状部82よりも短く、ボルトBのみにより固定されている。このため、タンク20に下方側へ所定以上の荷重が作用した場合であっても、ボルトBは破断せずに、バンド80aはタンク20を同じ高さ位置で保持する。従って、タンク20に下方側へ所定以上の荷重が作用した場合には、バンド80のみが変形して、タンク20の前方側が下方側に移動する。
以上のように、前面衝突時には案内部材90により燃料電池50がタンク20の上方側に案内され、かつバンド80のみが変形してタンク20の前方側が下方側に移動する。このように、燃料電池50が水平方向に後退してタンク20に衝突することを回避でき、燃料電池50がタンク20に接触するまでの距離を確保して、クラッシュストロークを確保できる。これにより、前面衝突時の衝撃を効率的に吸収できる。
また、案内部材90は、金属製であり、簡易な構造であるため、製造コストの増大を抑制しつつ、クラッシュストロークを確保できる。
また、前面衝突時にバンド80が変形してタンク20の前方側が下方側の移動した場合であっても、タンク20の後方側はバンド80aによりフロアパネル11に固定されている。このため、前面衝突時においても、タンク20がフロアパネル11に固定された状態を維持できる。
前面衝突前のマウント機構M1及びM2が破断及び変形していない状態では、燃料電池50は、マウント機構M1及びM2と共に案内部材90により支持されている。このため、燃料電池50を安定して支持することができる。
尚、例えば押え板94の一部を口金部22に溶接してもよい。この場合、棒体91が回転している途中で押え板94が口金部22から破断する、又は、押え板94が変形することが望ましい。また、案内部材90は、燃料電池50の後退に伴って変形はするが破断はしない程度の剛性を有していることが望ましい。
次に、案内部材の変形例について説明する。尚、上記実施例と同一の構成については同一の符号を付することにより、重複する説明を省略する。図8は、第1変形例の案内部材90aの説明図である。図9は、前面衝突時の燃料電池50、案内部材90a、及びタンク20の挙動の説明図である。案内部材90aの受け板92及び押え板94は、それぞれヒンジ部h1及びh2を介して棒体91aに回転可能に接続されている。ヒンジ部h1及びh2の回転軸の方向は、車幅方向である。図9に示すように、燃料電池50が後退し始めると、受け板92及び支え板93がそれぞれ後側面55及び下側面56に接触し押え板94がタンク本体部21の前方側の面に接触した状態を維持しつつ、棒体91aが回転する。棒体91aが鉛直姿勢から後方側に倒れるように回転してタンク20の前方側が下方側に移動することにより、押え板94は口金部22から離脱する。このように、受け板92及び押え板94はそれぞれヒンジ部h1及びh2を介して棒体91aに対して回転するため、棒体91aの回転がスムーズに行われる。従って、燃料電池50をタンク20の上方側にスムーズに案内することができる。また、受け板92及び押え板94が棒体91aに対して回転可能であるため、案内部材90aを燃料電池50及びタンク20間に設置する作業も容易である。
図10は、第2変形例の案内部材90bの説明図である。図11は、図10のC−C断面図である。案内部材90bの押え板94bは、口金部22の先端にボルトB9により固定されている。また、押え板94bは、薄肉な板状に形成されており、棒体91は押え板94bを支点として棒体91が回転するように、押え板94bは変形可能である。従って、前面衝突時には、燃料電池50の後退に伴って、押え板94bに対して棒体91が回転して、燃料電池50がタンク20の上方側に案内される。また、案内部材90bはタンク20にボルトB9により固定されているため、マウント機構M1及びM2が破断及び変形していない状態では、マウント機構M1及びM2、及び案内部材90bにより燃料電池50を安定して支持できる。
図12は、第3変形例の案内部材90cの説明図である。図12は、上面図であり、案内部材90cに加えてサスペンションメンバ40、燃料電池50、タンク20を示している。図13は、図12のD−D断面図である。案内部材90cは、棒体91c1及び91c2、受け板92c、支え板93c、押え板94c1及び94c2、を含む。押え板94c1及び94c2は、それぞれ棒体91c1及び91c2の後方側の端部に設けられ、互いに接合はされていない。押え板94c1及び94c2には、口金部22の外周面に沿った円弧状の切欠部95c1及び95c2が形成されている。切欠部95c1及び95c2は、協働で口金部22の外周面の略半周に沿った円弧状である。従って、切欠部95c1及び95c2のそれぞれは、中心角が略90度の円弧状である。
受け板92cは、棒体91c1及び91c2の前方側の端部に設けられている。換言すると、受け板92cには、2つの棒体91c1及び91c2が接続されている。棒体91c1及び91c2は、それぞれ押え板94c1及び94c2から受け板92cに向けて車幅方向に離れるように延びている。このため、受け板92c及び支え板93cは、上述した受け板92及び支え板93よりも、車幅方向での幅が大きく形成されている。
次に、車体2がオフセット衝突した場合について説明する。図14は、オフセット衝突時の燃料電池50の挙動の説明図である。オフセット衝突時には、燃料電池50には回転しながら後退する。図14の例では、燃料電池50は反時計方向に回転しようとするため、燃料電池50及びタンク20間に配置された棒体91c1が受ける荷重は、燃料電池50及びタンク20間に配置された棒体91c2が受ける荷重よりも大きい。このため、棒体91c1が押え板94c1を支点として回転して、燃料電池50はタンク20の上方側に案内される。
これに対して、棒体91c2には棒体91c1よりも大きな荷重は受けないため、棒体91c1により燃料電池50がタンク20の上方側に案内されている間に押え板94c2は口金部22から離脱する。また、オフセット衝突時に燃料電池50が上面視で時計方向に回転しながら後退する場合は、棒体91c2により燃料電池50はタンク20の上方側に案内される。このようにオフセット衝突時での燃料電池50の挙動に対応するように、2つの棒体91c1及び91c2が設けられている。尚、オフセット衝突ではない前面衝突の場合には、棒体91c1及び91c2が回転して燃料電池50をタンク20の上方側に案内する。
次に、電力変換器がタンク20の前方側に配置される場合について説明する。図15Aは、タンク20の前方側にコンバータ60が配置される場合の説明図である。図15Bは、タンク20の前方側にPCU70が配置される場合の説明図である。何れの場合においても、案内部材90によりクラッシュストロークを確保できる。尚、この場合、燃料電池50は、車体2の後方側のモータMの上側に配置してもよい。図15Aに示した例では、コンバータ60は前方側部材の一例である。図15Bに示した例では、PCU70は前方側部材の一例である。このように、燃料電池50のみならず、ある程度重量があり車両前後方向にある程度の長さを有したコンバータ60やPCU70がタンク20の前方側に配置される場合に、案内部材90〜90cの何れかを採用することによりクラッシュストロークを確保できる。
尚、上記実施例及び変形例では、タンク20の前方側をフロアパネル11に固定するバンド80は、タンク20の下方側の移動を許容するが、このような構成に限定されない。即ち、タンク20の前方側についても、後方側と同様に、バンド80aによりフロアパネル11に固定され、タンク20の前方側の下方側の移動が規制されていてもよい。この場合であっても、案内部材90が回転することにより燃料電池50等の前方側部材をタンク20の上方側に案内でき、クラッシュストロークを確保できるからである。
図16は、第4変形例の案内部材90dの説明図である。案内部材90dは、タンク20と、タンク20の後方側に配置されたクロスメンバ18との間に配置されている。クロスメンバ18は、タンク20の口金部23よりも後方側であって上方側に位置している。クロスメンバ18は、角筒状であるがこれに限定されない。ここで、クロスメンバ18は、車体2の一部を構成する部材であり、不図示の一対のサイドメンバを車幅方向に繋いでいる。一対のサイドメンバは、車体2の一部を構成する部材であり、車幅方向に間隔を空けて前後方向に延びている。
案内部材90dは、棒体91、受け板92d、支え板93d、押え板94を含む。押え板94は、口金部23上に配置されている。受け板92d及び支え板93dは、それぞれクロスメンバ18の前側面と下側面とを支持している。
タンク20の前方側はバンド80aによりフロアパネル11に固定され、後方側はバンド80により固定されている。従って、例えば前面衝突時に何らかの部材がタンク20に衝突してタンク20に後方側へ荷重が作用した場合には、案内部材90dが受け板92d又は支え板93dを支点として回転する。これにより、タンク20は案内部材90dにより下方側への荷重が作用して、タンク20の後方側のバンド80が前述したようにタンク20の下方側に移動を許容するように変形する。更に案内部材90dが回転するため、タンク20は水平方向に後退することが規制される。これにより、タンク20は斜め下方側に後退するように案内される。従って、前面衝突時にタンク20が水平方向に直線状に後退してタンク30に最短距離で衝突することが抑制される。このため、案内部材90dが設けられていない場合と比較して、クラッシュストロークを確保できる。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
1 燃料電池車
2 車体
11 フロアパネル
20 タンク
22 口金部
40 フロントサスペンションメンバ
50 燃料電池
55 後側面
56 下側面
80 バンド
90 案内部材
91 棒体(延在部)
92 受け板(支持部)
93 支え板(支持部)
94 押え板(被支持部)
95 切欠部
B ボルト(固定部)
SB ボルト(脆弱固定部)
M1、M2 マウント機構(締結部)

Claims (5)

  1. 車体と、
    前記車体に搭載された走行用のモータと、
    燃料電池に供給される燃料を貯蔵し、車体前方側に口金部を有したタンクと、
    前記モータに供給される電力を発電する前記燃料電池、及び前記燃料電池からの電力を変換して前記モータに供給する電力変換器、の何れか一方であり、前記タンクよりも車体前方側に間隔を空けて配置され、前記タンクと水平方向に部分的に重なる前方側部材と、
    前記前方側部材を前記車体に締結し、所定以上の荷重が作用した場合に破断又は変形する締結部と、
    前記口金部に支持された被支持部と、前記前方側部材の後側面及び下側面に沿った支持部と、前記被支持部から前記支持部に向けて水平方向よりも斜め上方に延びた延在部と、を含む案内部材と、を備え、
    前記車体の前面衝突時に前記締結部が破断又は変形して前記前方側部材が車体後方側に移動する場合、前記前方側部材が車体後方側へ移動するにつれて、前記延在部は前記被支持部を支点として車体前方側から車体後方側に回転し、前記支持部は前記前方側部材を前記タンクの上方側に案内する、燃料電池車。
  2. 前記タンクを前記車体のフロアパネルの下面側に固定したバンドと、
    前記バンドの両端を前記フロアパネルに固定した固定部と、
    前記固定部よりも内側で前記バンドを前記フロアパネルに固定し、前記固定部よりも脆弱な脆弱固定部と、を備え、
    前記案内部材を介して前記前方側部材から前記タンクに下方側へ所定以上の荷重が加わった場合に、前記固定部は破断せずに前記脆弱固定部が破断して前記タンクの下方側への移動を許容するように前記バンドが変形する、請求項1の燃料電池車。
  3. 前記被支持部は、前記口金部の外周面の上方側に係合した切欠部が形成されている、請求項1又は2の燃料電池車。
  4. 前記被支持部及び支持部は、それぞれヒンジ部を介して回転可能に前記延在部に接続されている、請求項1又は2の燃料電池車。
  5. 前記締結部が破断及び変形していない場合には、前記前方側部材は、前記締結部に加えて、前記タンクに支持された前記案内部材により支持される、請求項1乃至4の何れかの燃料電池車。
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