JP6377971B2 - 車両の挙動制御装置及び車両の挙動制御方法 - Google Patents

車両の挙動制御装置及び車両の挙動制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、車両の挙動制御装置及び車両の挙動制御方法に関する。
近時においては、後輪をモータで独立駆動するトルクベクタリング制御などにより、ハンドル操舵系と異なるヨーレート発生機構を用いた車両が知られている。このようなヨーレート発生機構を用いた車線追従制御、コーナーリングアシスト制御では、ドライバーのハンドル操作との直接的な干渉を生じることがないため、ハンドル操舵角によらず所望のヨーレートを得ることができる。
例えば、下記の特許文献1には、ドライバーの操舵から独立して車両状態量を変化させることが可能な自動操舵制御装置を備えた車両において、自動操舵制御がドライバーの操舵に応じたドライバー操舵へ切り替わる場合に、自動操舵制御により生じた第1状態量(第1ヨーレート)と、検出されたハンドル角に対し生じるべき第2状態量(第2ヨーレート)とが一致するように制御することが記載されている。
特開2012−232676号公報
ドライバーの操舵から独立して車両状態量を変化させる車線追従制御を行っている際に、進行路の修正などでドライバーがハンドル操舵をして車線追従制御を中断する場合がある(以下、このような動作をオーバーライドとも称する)。車線追従制御を中断すると、ドライバーのハンドル操作による操舵に切り換わるが、切り換わった時点で車両が発生しているヨーレートに対してハンドル操舵角に相当するヨーレートが一致していないと、急激なヨー変化が発生し、操舵フィーリングに違和感が生じる場合がある。
上記特許文献1に記載された技術では、自動操舵制御からドライバーの操舵に応じた制御へ切り換わる場合に、自動操舵制御により発生する第1ヨーレートと、検出されたハンドル角に対し生じるべき第2ヨーレートとが一致するように制御しているが、両者が一致するまでの間は、ドライバーの意思による操舵入力と実際の車両の挙動が対応しない。このため、自動操舵制御からドライバーの操舵に応じた制御へ切り換わる場合に、ドライバーは操舵フィーリングに違和感を覚えしまい。自動操舵制御からドライバーによる操舵への切り換え時に違和感が発生する問題を回避することは困難である。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ハンドル操舵系とは独立してヨーレートを発生させる車線追従制御が、ハンドル操舵による制御に切り換わる際に、車両の挙動に違和感が発生することを確実に抑止することが可能な、新規かつ改良された車両の挙動制御装置及び車両の挙動制御方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、推定走行路に基づいて、車線追従ヨーレートを算出する車線追従ヨーレート算出部と、ハンドル操舵角に変換ゲインを乗算して得られるタイヤ舵角に基づいて、車両規範ヨーレートを算出する車両規範ヨーレート算出部と、前記車線追従ヨーレートに基づく車線追従制御が中断されたことを判定する判定部と、前記車線追従制御が中断されたことが判定された時点で検出される車両のヨーレートに基づいて、ハンドル操舵角からタイヤ舵角へ変換する仮想的な変換ゲインを算出する変換ゲイン算出部と、前記車線追従制御が行われている場合は前記車線追従ヨーレートを目標ヨーレートとして選択し、前記判定部により前記車線追従制御が中断されたことが判定された場合に、前記仮想的な変換ゲインを用いて算出されたタイヤ舵角に基づいて前記車両規範ヨーレート算出部が算出した車両規範ヨーレートを目標ヨーレートとして選択する目標ヨーレート選択部と、前記目標ヨーレートに基づいて、ハンドル操舵系とは独立して車両のヨーレートを制御する制御部と、を備える、車両の挙動制御装置が提供される。
前記判定部は、運転者によるハンドル操舵トルクと操舵反力トルクとの比較に基づいて、前記車線追従制御が中断されたか否かを判定するものであっても良い。
また、前記車両規範ヨーレート算出部は、前記車線追従制御の中断が継続している場合は、前記車線追従制御が中断されたことが判定された時点で算出された前記仮想的な変換ゲインを用いて、前記車両規範ヨーレートを算出するものであっても良い。
また、前記車線追従ヨーレート算出部は、カメラで撮像した画像から得られる推定走行路に基づいて、車線追従ヨーレートを算出するものであっても良い。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車線追従制御が行われている場合に、推定走行路に基づいて、車線追従ヨーレートを算出するステップと、前記車線追従ヨーレートに基づく車線追従制御が中断されたことを判定するステップと、前記車線追従制御が中断されたことが判定された時点で検出される車両のヨーレートに基づいて、ハンドル操舵角からタイヤ舵角へ変換する仮想的な変換ゲインを算出するステップと、前記仮想的な変換ゲインを用いてタイヤ舵角を算出するステップと、前記タイヤ舵角に基づいて車両規範ヨーレートを算出するステップと、前記車線追従制御が行われている場合は前記車線追従ヨーレートを目標ヨーレートとして選択し、記車線追従制御が中断されたことが判定された場合に、前記車両規範ヨーレートを目標ヨーレートとして選択するステップと、前記目標ヨーレートに基づいて、ハンドル操舵系とは独立して車両のヨーレートを制御するステップと、を備える、車両の挙動制御方法が提供される。
以上説明したように本発明によれば、ハンドル操舵系とは独立してヨーレートを発生させる車線追従制御が、ハンドル操舵による制御に切り換わる際に、車両の挙動に違和感が発生することを確実に抑止することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る車両の構成を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る車両の挙動制御装置の構成を示す模式図である。 車線追従ヨーレート算出部による車線追従ヨーレートYtg1の算出方法を説明するための模式図である。 車線追従ヨーレートYtg1に基づいて、カメラシステムにより得られる推定進行路に沿って車両が走行している状態を示す模式図である。 トルクベクタリング制御を行った場合に、ドライバーが同じハンドル操舵角θhを設定したにも関わらず、異なるヨーレートが発生する状態を示す特性図である。 トルクベクタリング制御を行った場合に、ドライバーが同じハンドル操舵角θhを設定したにも関わらず、異なるヨーレートが発生する状態を示す特性図である。 本実施形態に係る車両の挙動制御装置における処理を示すフローチャートである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る車両1000の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る車両1000を示す模式図である。図1に示すように、車両1000は、前輪100,102、後輪104,106、後輪104,106を駆動するモータ110,112、パワーステアリング機構(P/S)120、舵角センサ130、ステアリング132、インバータ140,142、バッテリー150、ヨーレートセンサ160、車速センサ170、カメラシステム180、制御装置(ECU)200を有して構成されている。
本実施形態に係る車両1000は、後輪104,106のそれぞれを駆動するためにモータ110,112が設けられている。このため、後輪104,106毎に駆動トルクを制御することができる。従って、前輪100,102の操舵によるヨーレート発生とは独立して、後輪104,106のそれぞれを駆動することで、トルクベクタリング制御によりヨーレートを発生させることができる。後輪104,106は、制御装置200の指令に基づき、後輪104,106に対応するインバータ140,142が制御されることで、駆動トルクが制御される。各インバータ140,142にはバッテリー150から電力が供給される。
パワーステアリング機構120は、トルク制御又は角度制御により前輪100,102の舵角を制御する。舵角センサ130は、運転者がステアリング132を操作して入力した舵角θhを検出する。ヨーレートセンサ160は、車両1000のヨーレートYawを検出する。車速センサ170は、車両1000の車両速度Vを検出する。
図2は、本発明の一実施形態に係る車両の挙動制御装置の構成を示す模式図である。図2に示すように、本実施形態に係る車両の挙動制御装置は、カメラシステム180、車線追従ヨーレート算出部204、車両規範ヨーレート算出部206、オーバーライド判定部208、変換ゲイン算出部210、目標ヨーレート選択部212、トルクベクタリングモータ制御部214、変換ゲイン乗算部216を有して構成されている。図2に示す構成のうち、カメラシステム180以外の構成は、制御装置200から構成される。
図2に示す構成において、車線追従ヨーレート算出部204は、カメラシステム180から取得した推定進行路情報と車両速度Vとに基づいて、車線追従ヨーレートYtg1を算出する。車両規範ヨーレート算出部206は、車両速度Vとタイヤ舵角とに基づいて、車両規範ヨーレートYtg2を算出する。
オーバーライド判定部208は、ドライバー(運転者)によるハンドル操舵トルクTq_hと、操舵反力トルクとの比較に基づいて、ドライバー(運転者)により車線追従制御のオーバーライドが行われたか否かを判定する。より具体的には、オーバーライド判定部208は、ハンドル操舵トルクTq_hが操舵反力トルクよりも大きい場合にオーバーライドが行われたことを判定する。ハンドル操舵トルクTq_hは、パワーステアリング機構120に含まれるセンサより検出することができる。また、操舵反力トルクは、ハンドル舵角θhと車両速度Vに応じて操舵反力トルクを規定するマップから求めることができる。
また、オーバーライド判定部208は、ドライバーのステアリング操作による舵角θhの向きと、カメラシステム180から得られる、後述する進行路との横偏差εとの向きとを比較し、両者の向きが一致していない場合はオーバーライドが行われたと判定しても良い。
変換ゲイン算出部210は、オーバーライド判定部208によりオーバーライドが行われたことが判定された場合に、ハンドル操舵角からタイヤ舵角へ変換する変換ゲインGhを算出する。
目標ヨーレート選択部212には、車線追従ヨーレートYtg1と車両規範ヨーレートYtg2が入力される。目標ヨーレート選択部212は、オーバーライドの判定結果に基づいて、車線追従制御のオーバーライドが行われた場合は車両規範ヨーレートYtg2を目標ヨーレートYtgとして選択する。また、目標ヨーレート選択部212は、車線追従制御のオーバーライドが行われていない場合は、車線追従ヨーレートYtg1を目標ヨーレートYtgとして選択する。目標ヨーレート選択部212は、選択により得られた目標ヨーレートYtgをトルクベクタリング制御部214へ出力する。トルクベクタリングモータ制御部214は、入力された目標ヨーレートYtgに基づいて、モータ110,112のトルクベクタリング制御を行い、車両ヨーレートYawが目標ヨーレートYtgとなるように制御する。
車両規範ヨーレートYtg2は、車両規範ヨーレート算出部206において、一般的な平面2輪モデルを表す以下の式(1)から算出することができる。車両規範ヨーレートYtg2は、平面2輪モデルの(1)式における車両ヨーレートγに相当する。
Figure 0006377971
なお、(1)〜(3)式において、変数、定数は以下の通りである。
<変数>
γ:車両ヨーレート
V:車両速度
δ:タイヤ舵角
θh:ハンドル操舵角
Gh:ハンドル操舵角からタイヤ舵角への変換ゲイン
<定数>
l:車両ホイールベース
:車両重心点から前輪中心までの距離
:車両重心点から前輪中心までの距離
m:車両重量
:コーナリングパワー定数(フロント)
:コーナリングパワー定数(リア)
G_h0:ハンドル操舵角からタイヤ舵角への変換ゲインの初期値(ステアリングギヤ比)
車両規範ヨーレートYtg2(=γ)は、車両速度V、及びタイヤ舵角δを変数として、(1)式から算出される。(1)式のタイヤ舵角δは、直接センシングできないため、(2)式から、ハンドル操舵角θhに変換ゲインGhを乗じることで算出される。通常時には、変換ゲインGhとして、ステアリングギア比G_h0が用いられる。ステアリングギヤ比G_h0は、例えば1/15程度の値である。また、(1)式における定数Aは車両の特性を表す定数であり、(3)式から求められる。
図3は、車線追従ヨーレート算出部204による車線追従ヨーレートYtg1の算出方法を説明するための模式図である。カメラシステム180は、CCDセンサ、CMOSセンサ等の撮像素子を有する左右1対のカメラを有して構成され、車両外の外部環境を撮像し、自車両が走行するレーンの白線Wを画像情報として認識することができる。また、カメラシステム180は、撮像した左右1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって対象物までの距離情報を生成して取得することができる。また、カメラシステム180は、三角測量の原理によって生成した距離情報に対して、周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理した距離情報を予め設定しておいた三次元的な立体物データ等と比較することにより、立体物データや白線データ等を検出する。これにより、カメラシステム180は、先行車両や走行レーンを示す白線Wの他、一時停止の標識、停止線、ETCゲートなども認識することもできる。
図3に示すように、ステレオカメラシステム180は、車両1000が走行する走行レーンの白線Wを検出し、カメラシステム180から前方に向かって前方視点距離Lだけ離れた直線L1と白線Wとの交点P1,P2で白線座標を求める。そして、交点P1,P2の中点P3で進行路座標を求める。また、カメラシステム180の前方向と直線L1との交点P4(前方注視点)の座標を求める。
図3において、進行路との偏差ε’は進行路との横偏差ε(P3−P4間の距離)で近似することができるため、ε’→εとする。そして、カメラシステム180で事前に検知した進行路との横偏差εと前方注視点距離Lとから、操舵量に相当するパラメータ(=旋回支援角度α[rad])を算出する。旋回支援角度αは、以下の式(4)から算出することができる。
α=2×sin−1(ε/2L) ・・・・(4)
コーナー進入時、コーナー走行時等にステアリング132による操舵量が不足した場合には、旋回支援角度αによるリアトルクベクタリング制御(プレビューコーナーリングアシスト制御)を実施する。車線追従ヨーレートYtg1は、旋回支援角度αを平面2輪モデルの(1)式のδに代入することで、求めることができる。すなわち、車線追従ヨーレートYtg1は、以下の式(5)から算出することができる。
Figure 0006377971
なお、本実施形態では、カメラシステム180で撮像した画像から得られる推定走行路に基づいて車線追従ヨーレートを算出するが、他の情報から推定走行路を取得して車線追従ヨーレートYtg1を算出しても良い。
目標ヨーレート選択部212は、入力された車線追従ヨーレートYtg1と車両規範ヨーレートYtg2とを比較し、オーバーライド判定の結果に応じていずれか一方を選択する。
図4は、車線追従ヨーレートYtg1に基づいて、カメラシステム180による推定進行路に沿って車両1000が走行している状態を示す模式図である。図3で説明したように、カメラシステム180により走行レーンを示す白線Wが検出され、旋回支援角度αが求まる。そして、車両速度Vと旋回支援角度αとから車線追従ヨーレートYtg1が算出される。上述したように、本実施形態の車両1000は、ハンドル操作系とは異なるヨーレート発生機構を備えており、後輪104,106のそれぞれを独立のモータ110,112で駆動することにより、車線追従ヨーレートYtg1に基づくトルクベクタリング制御を行うことができる。この場合、ドライバーの操作によるハンドル操舵角θhによらず、所望のヨーレートを得ることができる。
図5及び図6は、トルクベクタリング制御を行った場合に、ドライバーが同じハンドル操舵角θhを設定したにも関わらず、異なるヨーレートが発生する状態を示す特性図である。図5及び図6において、縦軸はハンドル操舵角及び車両ヨーレートを、横軸は時間をそれぞれ示している。ここで、図5は、車線追従制御を行わない場合を示している。図5に示す期間T1では、ハンドル操舵角が−15[deg]程度であり、ヨーセンサにより検出された車両ヨーレートは0.075[rad/sec]となっている。
一方、図6は、車線追従制御を行った場合を示している。図6に示す期間T2では、車両ヨーレートは図5の期間T1と同じ0.075[rad/sec]程度であるが、ハンドル操舵角が−6[deg]程度であり図5よりも小さくなっている。従って、車線追従制御を行わない場合(図5)と、車線追従制御を行った場合(図6)とでは、同じ車両ヨーレートであるにも関わらず、ハンドル操舵角が異なっていることが判る。
換言すれば、図5に示す期間T1と図6に示す期間T2では、車両ヨーレートが同一であるため、同じ半径のカーブを走行しているが、ハンドル操舵角は図6の方がより小さくなっている。これは、車線追従制御を行った場合は、後輪のトルクベクタリング制御により、より少ないハンドル操舵角でコーナーを曲がることができるためである。
図4に示す車両1000が矢印A1方向に進む場合、後輪のトルクベクタリング制御により、白線Wに従って推定走行路に応じた車線追従制御が行われる。従って、矢印A1方向に進む場合は、ドライバーに違和感を生じさせることなく車両1000が走行することになる。
一方、ドライバーが車両1000を矢印A2方向に操舵しようとすると、車線追従制御による操舵がオーバーライドされて、ハンドル操舵による制御に切り換わる。つまり、白線Wに基づく推定走行路に応じた車線追従制御が終了し、ドライバー自身のハンドル操舵による制御が行われる。
上述したように、車線追従制御が行われている場合は、後輪のトルクベクタリング制御により、車線追従制御が行われていない場合よりも少ないハンドル操舵角で車両1000を矢印A1方向に走行させることができる。一方、車線追従制御による操舵がオーバーライドされると、後輪のトルクベクタリング制御が終了するため、車線追従制御におけるオーバーライド前のハンドル操舵角でドライバーが車両1000を走行させると、後輪のトルクベクタリングによる旋回が無い分だけ旋回半径が大きくなり、車両1000は外側に向かって(より直進方向に)走行する。つまり、オーバーライド後は、オーバーライド前と同じハンドル操舵角ではオーバーライド前と同じ方向に進めないことになる。これにより、ドライバーは、車両1000の挙動に違和感を覚えてしまう。
このため、本実施形態に係る車両の挙動制御装置は、車線追従制御からハンドル操舵による追従制御へオーバーライドが行われた場合は、車線追従ヨーレートYtg1に基づく制御から車両規範ヨーレートYtg2に基づく制御に切り換えるとともに、ハンドル操舵角からタイヤ舵角への変換ゲインGhをオーバーライドが生じたタイミングの変換ゲインに維持する制御を行う。
上述したように、図4に示すようなカーブを走行中に、車線追従ヨーレートYtg1に基づく制御から車両規範ヨーレートYtg2に基づく制御に切り換えると、ドライバーの想定よりもタイヤ舵角が小さくなり、ドライバーが意図する方向よりも外側へ車両1000が進もうとする。本実施形態では、オーバーライドが発生したタイミングでハンドル舵角からタイヤ舵角への変換ゲインを算出し、オーバーライドが生じた後は算出した変換ゲインに基づいて仮想的なタイヤ舵角を算出する。
例えば、車線追従制御を行わない場合に、ハンドル舵角からタイヤ舵角への変換ゲイン(ステアリングギヤ比G_h0)が1/15であるものとする。車線追従制御を行う場合、図4において、オーバーライド前に車線追従制御により車両1000が矢印A1方向に進んでいる場合に、ハンドル舵角からタイヤ舵角Ghへの仮想的な変換ゲインが、1/10であるものとする。ここで、仮想的な変換ゲインとは、車線追従制御を行っている際の車両1000の進行方向から推定される仮想的なタイヤ舵角に基づいて算出され、ハンドル舵角に対する仮想的なタイヤ舵角の比である。車両1000の進行方向から推定される仮想的なタイヤ舵角は、ハンドル舵角による旋回と、後輪のトルクベクタリングによる旋回とによって定まる。
この場合に、本実施形態では、オーバーライドが行われると、オーバーライド開始時の仮想的な変換ゲインGh(上述の例では、Gh=1/10)を逆計算し、この仮想的な変換ゲインGhにより車両規範ヨーレートYtg2を算出し、ハンドル操舵制御を行う。これにより、ハンドル舵角に対してステアリングギヤ比G_h0よりも大きな仮想的な変換ゲインGhによりタイヤ舵角への変換が行われるため、ハンドル舵角によって定まる車両の進行方向が、オーバーライド前とオーバーライド後で一致し、オーバーライド開始時に車両の挙動に違和感が生じることを確実に抑止することができる。
仮想的な変換ゲインGhの算出方法は以下の通りである。先ず、オーバーライド判定が行われた場合、車線追従ヨーレートYtg1に基づく制御から、車両規範ヨーレートYtg2に基づく制御への切り換えが行われる。この際、オーバーライド開始時に発生している車両ヨーレートYawをヨーレートセンサ160から検出して(1)式のγに代入し、車両速度Vを(1)式に代入することで、タイヤ舵角δが求まる。そして、求めたタイヤ舵角δと、オーバーライド開始時のハンドル操舵角θhとを(2)式に代入することで、オーバーライド開始時の仮想的な変換ゲインGhが求まる。
そして、車両規範ヨーレートYtg2に基づく制御への切り換えが行われた後、仮想的な変換ゲインGhに基づいて、(1)式、(2)式から車両規範ヨーレートYtg2(=γ)を求め、求めた車両規範ヨーレートYtg2に基づいてトルクベクタリングモータ制御部114が制御を行う。これにより、オーバーライド開始時に求められた仮想的な変換ゲインに基づいてハンドル操舵制御が行われるため、車線追従ヨーレートYtg1に基づく制御から、車両規範ヨーレートYtg2に基づく制御への切り換えを行った際に、ハンドル操舵角からタイヤ舵角への変換ゲインが最適に調整されることになり、ドライバーのハンドル操舵入力に対応した車両挙動を得ることができる。これにより、オーバーライド時に、車両が発生させているヨーレートに対してハンドル操舵角が小さい場合であっても、ハンドル操舵角からタイヤ舵角への変換ゲインが最適に調整されるため、車両挙動の変化を抑制することができ、車両の挙動に違和感が生じることを確実に抑止することが可能である。従って、ドライバーは、ハンドル操舵入力に対応した車両挙動を得ることが可能である。
仮想的な変換ゲインGhは、ヨーレートセンサ160から求まる車両ヨーレートYawから逆演算されるため、オーバーライド開始時には、車両規範ヨーレートYtg2は車両ヨーレートYawと等しくなる。その後のオーバーライドの係属中には、ドライバーのハンドル操作に応じて、仮想的な変換ゲインGhに基づいて車両規範ヨーレートYtg2が算出される。従って、目標となる車両規範ヨーレートYtg2の連続性を確保することが可能である。
前述した特許文献1に記載された手法では、例えばカーブを走行中に自動操舵制御からドライバーの操舵に応じた制御へ切り換わると、自動操舵制御により発生する第1ヨーレートと、検出されたハンドル角に対し生じるべき第2ヨーレートとが一致するように制御が行われるため、ハンドル舵角が一定であっても車両のヨーレートが刻々と変化し、ドライバーに違和感が生じてしまう。一方、本実施形態によれば、オーバーライド開始時点で仮想的な変換ゲインGhを求めるため、オーバーライド開始時点でハンドル操舵角θhから車両規範ヨーレートYtg2が一義的に求まり、以降も仮想的な変換ゲインGhに基づいて車両規範ヨーレートYtg2が算出される。従って、ハンドル操舵角に対して車両挙動が一致しない過渡的な期間が発生することがなく、ドライバーがハンドルをきっていれば、ハンドル操舵角に応じて車両ヨーレートが発生し続けることなる。これにより、車両挙動に違和感が生じることを確実に抑止できる。
なお、本実施形態では、後輪104,106の独立駆動によるトルクベクタリングを用いた車線追従制御を行う車両1000を例示したが、本実施形態に係る車両の挙動制御装置は、ドライバーのハンドル操作とは独立したヨーレート発生機構を有する構成に広く適用することができる。ドライバーのハンドル操作とは独立したヨーレート発生機構としては、本実施形態のように後輪104,106を独立して駆動するものの他、トルクベクタリングデファレンシャルによるもの、後輪操舵機構(4WS)によるもの、摩擦ブレーキによるもの、等を挙げることができる。
図7は、本実施形態に係る車両の挙動制御装置における処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS10では、ドライバーのハンドル操作によりオーバーライドが行われたか否かを判定する。オーバーライドが行われていない場合は、ステップS12へ進み、推定進行路に基づく車線追従ヨーレートYtg1を演算する。ステップS12の後はステップS14へ進み、目標ヨーレートYtgを車線追従ヨーレートYtg1とする。ステップS14の後はステップS16へ進み、目標ヨーレートYtgに基づきトルクベクタリングの制御目標値を設定する。トルクベクタリングモータ制御部214は、制御目標値として設定された目標ヨーレートYtgに基づいてモータ110,112を駆動し、車両ヨーレートYawを目標ヨーレートYtgへ制御する。
一方、ステップS10でオーバーライドが行われたことが判定された場合は、ステップS18へ進む。ステップS18では、既にオーバーライドが継続中であるか否かを判定し、既にオーバーライドが継続中でない場合、すなわち、オーバーライドが開始した時点の場合は、ステップS20へ進む。ステップS20では、オーバーライド開始時点のハンドル舵角θh、車速V、および車両発生ヨーレートYaw(=γ)を用いて、(1)式、(2)式から仮想的な変換ゲインGhを逆演算する。具体的には、車両1000が備えるヨーレートセンサにより車両発生ヨーレートYaw(=γ)を検出し、車速Vとともに(1)式へ代入することでタイヤ舵角δが求まる。このタイヤ舵角δとハンドル舵角θhを(2)式へ代入することで、仮想的な変換ゲインGhを演算することができる。
ステップS20の後はステップS22へ進み、(2)式に基づいて、ハンドル操舵角θhに仮想的な変換ゲインGhを乗算して得られる仮想タイヤ舵角δを算出し、この仮想タイヤ舵角θhを(1)式に代入して、車両規範ヨーレートYtg2(=γ)を求める。次のステップS24では、目標ヨーレートYtgを車線追従ヨーレートYtg2とする。ステップS24の後はステップS16へ進み、目標ヨーレートYtgに基づきトルクベクタリングの制御目標値を設定する。トルクベクタリングモータ制御部214は、制御目標値として設定された目標ヨーレートYtgに基づいてモータ110,112を駆動し、車両ヨーレートYawを目標ヨーレートYtgへ制御する。
また、ステップS18において、既にオーバーライドが継続中の場合は、ステップS20をとばしてステップS22へ進む。この場合、オーバーライド開始時に算出された仮想的な変換ゲインGhを用いてステップS22の処理が行われる。このように、ステップS20における仮想的な変換ゲインの演算は、オーバーライド開始時に1回のみ行われる。
以上説明したように本実施形態によれば、車線追従制御からハンドル操舵による追従制御へオーバーライドが行われた場合に、その時点で発生している車両ヨーレートYawとハンドル舵角θhに基づいて仮想的な変換ゲインGhを算出し、以降の処理では仮想的な変換ゲインGhから車両規範ヨーレートYtg2を算出してハンドル操舵による追従制御を行う。これにより、オーバーライド開始時点のハンドル操舵角と車両ヨーレートの関係性を維持したモデルにより、車両規範ヨーレートYtg2を目標値としてハンドル操舵による追従制御を行うことが可能となり、車線追従制御からハンドル操舵による追従制御へ切り換わる際の車両挙動に違和感が生じてしまうことを確実に抑止できる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
180 カメラシステム
200 制御装置
204 車線追従ヨーレート算出部
206 車両規範ヨーレート算出部
208 オーバーライド判定部
210 変換ゲイン算出部
212 目標ヨーレート選択部
214 トルクベクタリングモータ制御部

Claims (5)

  1. 推定走行路に基づいて、車線追従ヨーレートを算出する車線追従ヨーレート算出部と、
    ハンドル操舵角に変換ゲインを乗算して得られるタイヤ舵角に基づいて、車両規範ヨーレートを算出する車両規範ヨーレート算出部と、
    前記車線追従ヨーレートに基づく車線追従制御が中断されたことを判定する判定部と、
    前記車線追従制御が中断されたことが判定された時点で検出される車両のヨーレートに基づいて、ハンドル操舵角からタイヤ舵角へ変換する仮想的な変換ゲインを算出する変換ゲイン算出部と、
    前記車線追従制御が行われている場合は前記車線追従ヨーレートを目標ヨーレートとして選択し、前記判定部により前記車線追従制御が中断されたことが判定された場合に、前記仮想的な変換ゲインを用いて算出されたタイヤ舵角に基づいて前記車両規範ヨーレート算出部が算出した車両規範ヨーレートを目標ヨーレートとして選択する目標ヨーレート選択部と、
    前記目標ヨーレートに基づいて、ハンドル操舵系とは独立して車両のヨーレートを制御する制御部と、
    を備えることを特徴とする、車両の挙動制御装置。
  2. 前記判定部は、運転者によるハンドル操舵トルクと操舵反力トルクとの比較に基づいて、前記車線追従制御が中断されたか否かを判定することを特徴とする、請求項1に記載の車両の挙動制御装置。
  3. 前記車両規範ヨーレート算出部は、前記車線追従制御の中断が継続している場合は、前記車線追従制御が中断されたことが判定された時点で算出された前記仮想的な変換ゲインを用いて、前記車両規範ヨーレートを算出することを特徴とする、請求項1に記載の車両の挙動制御装置。
  4. 前記車線追従ヨーレート算出部は、カメラで撮像した画像から得られる推定走行路に基づいて、車線追従ヨーレートを算出することを特徴とする、請求項1に記載の車両の挙動制御装置。
  5. 車線追従制御が行われている場合に、推定走行路に基づいて、車線追従ヨーレートを算出するステップと
    記車線追従ヨーレートに基づく車線追従制御が中断されたことを判定するステップと、
    前記車線追従制御が中断されたことが判定された時点で検出される車両のヨーレートに基づいて、ハンドル操舵角からタイヤ舵角へ変換する仮想的な変換ゲインを算出するステップと、
    前記仮想的な変換ゲインを用いてタイヤ舵角を算出するステップと、
    前記タイヤ舵角に基づいて車両規範ヨーレートを算出するステップと、
    前記車線追従制御が行われている場合は前記車線追従ヨーレートを目標ヨーレートとして選択し、記車線追従制御が中断されたことが判定された場合に、前記車両規範ヨーレートを目標ヨーレートとして選択するステップと、
    前記目標ヨーレートに基づいて、ハンドル操舵系とは独立して車両のヨーレートを制御するステップと、
    を備えることを特徴とする、車両の挙動制御方法。
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