次に、本発明についての一実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態では、回路基板に電子部品を装着する電子部品装着機を例に挙げて説明する。図1は、その電子部品装着機を示した一部を透視させた外観斜視図である。ここで示すものは、複数の電子部品装着機1が幅方向に並べられ、各電子部品装着機1の内部を回路基板が順番に搬送され、各々において所定の電子部品が装着されるものである。図1では、ベース100上に2台の電子部品装着機1を設置したものを示しているが、電子部品装着機1の台数は製造内容によって自由に変更可能である。
電子部品装着機1は、幅が狭く、その幅方向に複数台の電子部品装着機1が並べられてシステム全体がコンパクトに構成される。電子部品装着機1は、幅方向側面に大きな開口部を有し、その開口部を通して隣り合う電子部品装着機1との間で回路基板の受け渡しが行われる。なお、以下の説明の中で示す方向については、図1に示すように、回路基板を搬送する方向である電子部品装着機1の幅方向をX軸方向とし、それに直交する電子部品装着機1の長手方向をY軸方向、更に、電子部品装着機1の高さ方向をZ軸方向とする。
電子部品装着機1は、その機体を長手方向であるY軸方向に見た場合に、中央部に回路基板を搬送する基板搬送装置2があり、図面に表現した手前側(電子部品装着機1の前方側)の位置に電子部品を供給する部品供給装置3が構成されている。また、部品供給装置3の設置位置とは反対の機体後方側には電子部品の装着作業を実行する装着ヘッド15が配置されており、その装着ヘッド15を移動させ、部品供給装置3から取り出した電子部品を基板搬送装置2上の回路基板へと装着する部品装着装置4が構成されている。
電子部品装着機1は、基板搬送装置2、部品供給装置3及び部品装着装置4などが装着機本体101上に組み付けられ、それらを覆う本体カバー102が装着機本体101と一体に形成されている。そして、基板搬送装置2、部品供給装置3及び部品装着装置4などは次のように構成されている。
先ず、基板搬送装置2は、同じ構成の2つの搬送部201,202が並設され、回路基板の搬送や、その回路基板に対する電子部品の装着作業が2箇所で行われるようになっている。搬送部201,202は、共に回路基板の幅寸法に合わせて一対のガイドが平行に設置され、そのガイドに沿ってX軸方向に移動させるためのコンベアが設けられている。コンベアは、回路基板のY軸方向両端部を下から支えるベルトが配置され、複数のプーリに掛けられた当該ベルトには駆動モータによって回転が与えられる。また、この基板搬送装置2には、搬送された回路基板を位置決めするため、搬送部201,202のそれぞれにクランプ機構が設けられている。
部品供給装置3は、装着機本体101の前方部分に複数のテープフィーダ11が搭載されている。電子部品装着機1は、本体カバー102の前方部分に開口部が形成され、その開口部には、テープフィーダ11などのデバイスを着脱可能にする支持台としてのデバイステーブル12が設置されている。デバイステーブル12には、複数のテープフィーダ11が装着されている。テープフィーダ11は、電子部品を収容したテープの巻かれたリール13を保持し、送り出し機構によってリール13からテープが巻き出されるようになっている。テープの巻出しは、電子部品が1ピッチずつY軸方向に送り出されるように行われ、電子部品が一つずつ機内の部品供給位置へと供給される。
部品供給装置3によって供給された電子部品は、部品装着装置4によって取り出されて回路基板へと装着される。その部品装着装置4は、移動可能な装着ヘッド15を有しており、装着ヘッド15には電子部品を吸着保持することが可能な吸着ノズルが設けられている。その装着ヘッド15は、X軸方向とY軸方向に移動可能であり、Z軸方向は装着ヘッド15に設けられた昇降機構によって吸着ノズルが上下動するように構成されている。なお、装着ヘッド15には、昇降機構のほかに回転機構も組み込まれており、吸着ノズルは、装着ヘッド15に対して昇降と回転が可能な構成となっている。
装着ヘッド15をY軸方向に移動させるY軸移動機構は、本体カバー102の天井側にY軸方向に沿って2本のY軸レール16が平行に固定され、そのY軸レール16に対してY軸スライダ17が摺動自在に取り付けられている。そして、Y軸スライダ17にはナット18が固定され、Y軸サーボモータ19に連結されたネジ軸20がナット18を貫通して螺合している。また、Y軸スライダ17にはX軸レール21が形成され、そのX軸レール21に対してX軸スライダ22が摺動自在に取り付けられている。装着ヘッド15は、このX軸スライダ22に搭載されている。そして、Y軸スライダ17に搭載されたX軸サーボモータにネジ軸23が連結され、そのネジ軸がX軸スライダ22に固定されたナット24に螺合している(図2参照)。
装着ヘッド15には、作業位置に搬送された回路基板を撮像するためのマークカメラ66(図7参照)が設けられている。このマークカメラ66は回路基板を上から撮像するものであり、その画像データからは回路基板の種類や停止位置が確認できるようになっている。また、基板搬送装置2と部品供給装置3との間にはパーツカメラ25が設けられている。パーツカメラ25は、吸着ノズルに保持された電子部品を下から撮像するものであり、その画像データからは電子部品の破損や、吸着ノズルに保持された電子部品の保持位置誤差などが確認できるようになっている。
基板搬送装置2と部品供給装置3との間には、パーツカメラ25の他に複数の吸着ノズルを収容するノズルステーション26が設けられている。ノズルステーション26は、装着ヘッド15に対して吸着ノズルの交換を行う場所であり、特に本実施形態では吸着ノズルの口径調整を行う場所でもある。すなわち、ノズルステーション26には、異なるサイズの口径に変化させることが可能な吸着ノズルが収容されており、吸着ノズルを交換の際、或いは吸着ノズルが装着ヘッド15に装着されている状態で、吸着口の口径調整がこのノズルステーション26で行われるようになっている。
続いて、装着ヘッド15の構造について詳しく説明する。図2は、装着ヘッド15の内部構造を示した図である。装着ヘッド15は、X軸スライダ22に対してZ軸スライダ31が不図示のガイドレールを介して昇降可能に取り付けられている。このZ軸スライダ31は、ボールネジ機構によって昇降可能なものであり、そのためX軸スライダ22には、上下に配置された軸受によってネジ軸32が回転支持されている。ネジ軸32の上端部にはプーリ33が固定され、昇降用モータ63(図7参照)からの回転を伝達するための回転ベルト34が掛けられている。そのネジ軸32には、Z軸スライダ31側に固定されて回転の制限された昇降ナット35が螺合している。
従って、ネジ軸32の回転により、その軸線に沿って昇降ナット35及びZ軸スライダ31が上下方向に移動することとなる。昇降用モータ63にはサーボモータが使用され、その回転角度制御によりZ軸スライダ31の高さ調整が可能になっている。Z軸スライダ31には、上部側が軸受けによって回転支持された中空のスプライン軸37が、下方に延びるようにして取り付けられている。中空のスプライン軸37内には非回転の中管38が挿入され、その上端部がZ軸スライダ31に固定されている。そのため、スプライン軸37と中管38とによって、中心部の内側流路36aと外周部の外側流路36bとが構成されている。
スプライン軸37は、円筒状の回転体39を貫くように配置されている。回転体39は、下端側にギヤ部395が一体に形成され、そのギヤ部395が回転用モータ41の回転軸に固定されたギヤ42と噛み合っている。回転体39は、内周面に軸方向(Z軸方向)に沿ってキー溝391が形成されたボス部材であり、その中を貫通するスプライン軸37には、キー溝391に嵌り込むキー突起371が形成されている。従って、スプライン軸37と回転体39とは、軸方向には相対的に移動可能であり、回転方向には連れ回りしてトルクの伝達が可能な構成になっている。なお、回転用モータ41にもサーボモータが使用され、その回転角度制御によりスプライン軸37の回転角度調整が可能である。
X軸スライダ22は、Z軸スライダ31の下方側に支持部43が水平に張り出している。支持部43に対し、ネジ軸32の下端側が回転支持され、回転体39が回転可能に取り付けられ、更に回転用モータ41が固定されている。図2では、Z軸スライダ31が上昇した状態を示しているが、下降することにより、スプライン軸37及び中管38が支持部43の下方に更に突き出ることとなる。スプライン軸37の下端部には、吸着ノズル50を保持するためのノズルホルダ45が固定されている。ノズルホルダ45は、吸着ノズル50の上端面との間に閉空間451を形成し、外側通路36bを介して行われる真空引きによって吸着ノズル50を吸着保持するようにしたものである。
ノズルホルダ45には流路453が形成され、閉空間451と外側通路36bとが連通している。そして、その外側通路36bには、開閉弁47を介して真空ポンプ49が接続されている。一方、内側流路36aは、ノズルホルダ45に装着された吸着ノズル50のノズル孔に連通する。そして、その内側流路36aは、切換弁46を介してコンプレッサ48と真空ポンプ49とに接続され、切換弁46の切り換えにより、正圧状態と負圧状態の切り換えおよび、大気解放が可能になっている。各流体機器の制御により、吸着ノズル50が装着ヘッド15に装着されるとともに、その吸着ノズル50による電子部品の吸着保持や解放が可能になっている。
ところで、取り替え可能な吸着ノズル50は、前述したように図1に示すノズルステーション26に複数が収容され、取り扱う電子部品に応じて取り換えられる。しかし、そのノズルステーション26のスペースには制限があり、搭載できる吸着ノズルの数にも限界がある。そこで、本実施形態では、一つで複数の吸着ノズルの役割を果たすことができるように、口径可変の吸着ノズル50を採用している。図3は、口径可変の吸着ノズル50を示した断面図である。また、図4は、吸着ノズル50を示した図3のA−A矢視図であり、図5は、吸着ノズル50を示した図3のB−B矢視図である。
本実施形態の吸着ノズル50は、吸着口531の口径を変化させるための可変機構によって構成されている。その可変機構は、スプライン軸37に連結され、そこからの回転を受けて作動するものである。従って、その回転を出力し且つ伝達する構成、すなわち図2に示す装着ヘッド15の回転用モータ41、ギヤ42、回転体39及びスプライン軸37が可変機構を作動させるための作動機構に相当する。ただし、この作動機構は、吸着ノズル50の吸着口531を可変させるだけではなく、吸着保持した電子部品の姿勢を調整するため吸着ノズル50自体を回転させる回転機構でもある。
吸着ノズル50は、スプライン軸37の回転を受けて支持部材52を変位させる変位部材51と、カバー部材53を内側から支持する支持部材52と、その支持部材52に被せられてノズル先端部を形作るカバー部材53と、各部材51,52,53を関連付ける係合部材54などを備えたものであり、これらによって吸着口531の口径を変化させる可変機構が構成されている。
変位部材51は、ノズルホルダ45との間で閉空間451を形成するためのフランジ部511を有し、その下方には雄ネジ部512とテーパ部513が一体に形成され、上方には連結部514が形成されている。連結部514は、図5に示すように円筒形をした突部であり、円周上の2箇所にはキー溝515が形成され、スプライン軸37の下端に形成されたキー突起375が嵌り込むようになっている。従って、キー溝515とキー突起375を介してスプライン軸37の回転が変位部材51に伝達される。また、連結部514の内部には、変位部材51を軸方向に貫くノズル孔516が形成されている。従って、連結部514に中管38の先端部が入り込むことにより、その中管38を介して、ノズル孔516がコンプレッサ48や真空ポンプ49に接続される。
変位部材51は、雄ネジ部512が係合部材54の雌ネジ部541に螺合している。係合部材54は、図4に示す六角形のフランジ部542を有し、その上部に雌ネジ部541が形成されている。一方、図1に示すノズルステーション26には、同じ六角形をした凹状の収容部が形成され、そこにフランジ部542が嵌り込むようにして吸着ノズル50が収容される。従って、収容された状態で変位部材51に回転が与えられても係合部材54の連れ回りが制限され、静止した雌ネジ部541に対して雄ネジ部512が回転することとなる。これにより、回転の与えられた変位部材51は上方或いは下方に移動することとなる。なお、フランジ部542は、六角形に限らず四角形や五角形或いは楕円形など、変位部材51の回転によって係合部材54が連れ回りしないものであればよい。
変位部材51の上下動により、そのテーパ部513に当たっている支持部材52が径方向に移動することとなる。支持部材52は、図4に示すように4カ所に設けられ、それぞれが係合部材54に対して径方向に摺動自在に取り付けられている。係合部材54は、フランジ部542の下面に中板542aが固定され、その中板542aには径方向にガイド溝543が形成されている。支持部材52は、このガイド溝543に対してスライド板521が摺動自在に嵌め込まれている。そして、スライド板521の下面には、径方向に沿った径方向板522が固定され、その径方向板522に対し湾曲した周方向板523が固定されている。なお、中板542aには、ガイド溝543の部分に、径方向板522が移動するためのスリット544が形成されている。
径方向板522は、径方向の内側上部端面にテーパ面522aが形成され、そのテーパ面522aに対して変位部材51のテーパ部513が当てられている。支持部材52には、ノズル先端部を構成するカバー部材53が取り付けられている。カバー部材53は、4つの周方向板523に被せられるように略円筒形状をしたものであり、下端側には吸着口531が形成され、上端側は外側に広がって先端部分に固定部532が形成されている。固定部532は、フランジ部542の中板542aと下板542bに挟まれるようにして固定されている。
カバー部材53は、伸縮性のあるゴム材によって形成されている。そのため、支持部材52は、常にテーパ部513に押し当てられるように付勢されている。よって、変位部材51が上下方向に移動することにより、支持部材52が追随して径方向に移動することとなる。そして、支持部材52の移動によりカバー部材53の筒状部533及び吸着口531が径方向に拡張し、或いは収縮する。
吸着ノズル50は、吸着口531に電子部品が押し当てられ、真空引きによってカバー部材53内の空間が負圧になることにより電子部品の吸着保持が可能になっている。吸着口531の口径調整は、雄ネジ部512と雌ネジ部541との相対的な位置関係によって決められる。すなわち、雄ネジ部512が上昇した図6(A)の状態では吸着口531の口径はD1と小さく、雄ねじ部512が下降するに従い図6(B)から図6(C)に示すように吸着口531の口径はD2,D3と大きくなっていく。
雄ネジ部512と雌ネジ部541との相対的な位置関係は、両者の摩擦抵抗によって一義的に決められる。そして、その関係は変位部材51と係合部材54の各フランジ部511,542の関係に置き換えることができる。そこで本実施形態では、図5に示すように、係合部材54のフランジ部542に、二次元コードなどの識別部材55が周方向に一定の間隔で複数表示されている。そして、変位部材51のフランジ部511には、その識別部材55が上方から確認できるように切欠き511aが形成されている。各々の識別部材55には、その表示位置に対応した吸着口531の情報(ここでは口径)が書き込まれており、装着ヘッド15に設けられたノズル用カメラ65(図7参照)により識別部材55の情報が読み取れるようになっている。
本実施形態の電子部品装着機1では、以上のような吸着ノズル50がノズルステーション26に複数収容されている。例えば、ノズルステーション26には6本の吸着ノズル50が収容可能であり、各々の吸着ノズル50は、吸着口531の口径を5段階に変化させることが可能である。従って、6本の吸着ノズル50は、その可変可能な口径が全て異なる大きさになるように設計されているものであるとすれば、従来の吸着ノズルの30本分に相当することとなる。
次に、電子部品装着機1には、各装置の駆動を制御するための制御装置が設けられている。図7は、その制御装置の概略を示したブロック図である。制御装置5は、CPUのほかにROMやRAM、不揮発性メモリといった記憶装置などを備えたコンピュータを主体とするコントローラ61を有し、基板搬送装置2、部品供給装置3および部品装着装置4を構成するサーボモータなどの駆動手段を駆動させる各々の駆動回路62が設けられている。コントローラ61は、駆動回路62を介して各装置の駆動手段に接続されている。
コトローラ61では、CPUによって様々なデータ処理が行われ、記憶装置であるROMにはシステムプログラムが格納されている。システムプログラムがCPUによって読み出されることにより、電子部品装着機1の駆動部全体について制御管理が行われる。RAMは、計算データや表示データが一時的に記憶されるものであり、また同じ記憶装置である不揮発性メモリには、生産対象となる電子回路基板を作成するための部品装着プログラムや各種パラメータなどが格納されている。特に本実施形態では、吸着ノズル50の口径調整を実行するためのプログラムや各吸着ノズル50の識別部材55に関連する吸着ノズル情報が記憶されている。
また、図1に示すように電子部品装着機1の前部には、本体カバー102に表示装置6が設けられ、コントローラ41に接続されている。表示装置6は、液晶表示部を備える表示手段と、タッチパネル式やボタン式の入力手段を有し、作業情報や操作画面などを表示したり、作業者によって口径調整プログラムや吸着ノズル情報などの各種情報入力が可能なものである。
続いて、本実施形態の電子部品装着機1の作用について説明する。電子部品装着機1に投入された回路基板は、基板搬送装置2によって作業位置まで搬送されて位置決めされる。そして、装着ヘッド15がY軸移動機構やX軸移動機構の駆動により所定の位置に移動するとともに、昇降機構によって吸着ノズル50が昇降することにより、部品供給装置3から電子部品が取り出され、回路基板への装着が行われる。その際、装着ヘッド41に取り付けられたマークカメラ66によって回路基板が撮像され、その撮像データから回路基板の種類や停止位置が確認される。このとき回路基板の停止位置が予定されている位置からずれているような場合には、その誤差を算出した補正処理が行われ、回路基板の適切な位置に電子部品が装着される。
電子部品の装着は、対象とする回路基板に応じて電子部品の種類が異なっている。そこで部品供給装置3では、複数ある中から該当する電子部品を収容したテープフィーダ11が駆動制御され、電子部品の供給が行われる。そして、部品装着装置4では、装着する電子部品の種類に応じて吸着ノズル50の選択及び口径調整が行われる。これまでの電子部品装着機では、サイズなどが異なる電子部品に対しては、別の吸着ノズルに交換することが必須であった。しかし、本実施形態では、そうした場合でも吸着ノズル50を取り換えることなく対応が可能である。ただし、装着ヘッド15に装着されている吸着ノズル50の口径調整で対応できない場合には、ノズルステーション26に収容されている他の吸着ノズル50との交換が行われる。
吸着ノズル50の現在の口径は、ノズル用カメラ65によって識別部材55を撮像することにより、情報を読み取って確認することができる。そこで、その情報を基に口径を変更する必要があると判断された場合には、装着ヘッド15がノズルステーション26に一旦戻され、吸着ノズル50のフランジ部542が六角形の凹状収容部に嵌め込まれる。そうして係合部54の回転が制限された状態で、変位部材51に回転が与えられる。すなわち、回転用モータ41の回転出力が回転体39に伝達され、スプライン軸37が回転し、そのスプライン軸37を介して変位部材51に回転が与えられる。
変位部材51に与えられる回転は、現在の口径からどれだけ変化させるかによって、回転方向と回転角度とが制御装置5によって算出される。変位部材51が回転することにより、係合部材54に対して変位部材51が上方又は下方に所定量だけ移動する。その際、上下方向の移動に追随してスプライン軸37及び中管38を移動させるべく、昇降用モータ63が駆動制御され、ネジ軸32の回転に伴うZ軸スライダ31の昇降が調整される。そして、テーパ部513の上下動により支持部材52が径方向に移動することで、カバー部材53が伸縮して吸着口531の径が変化し、電子部品に対応した口径調整が行われる。
吸着ノズル50は、閉空間451が負圧になってノズルホルダ45に吸着保持され、装着ヘッド15の上昇によりノズルステーション26から離脱する。その際、雄ネジ部512と雌ネジ部541との相対的な位置関係は両者の摩擦抵抗によって変化すこることはない。そのため、吸着ノズル50の口径も次の変更まで一定の状態が保たれる。そして、スプライン軸37が回転や昇降すれば、吸着ノズル50は口径を一定に保ったまま同じように回転や昇降することとなる。口径調整の行われた吸着ノズル50は、吸着口531に電子部品が押し当てられ、真空引きによってカバー部材53内の空間が負圧になることで電子部品が吸着保持される。電子部品は、部品供給装置3から取り出され、回路基板へと送られて装着されるが、その際、カバー部材53内の空間が正圧に切り換えられて解放される。
以上、本実施形態の電子部品装着機1によれば、これまで複数の吸着ノズルで行っていた様々な部品の吸着保持を、吸着ノズル50一つで対応させることができる。そのため、機内にそれ程広いスペースが取れないノズルステーション26であっても、数個の異なる吸着ノズル50を収容することで、同じスペースでありながら従来と比べて何倍もの吸着ノズルを収容したと同じ効果を得ることができる。よって、従来であれば異なる吸着ノズルを使用するために電子部品装着機の数を増やさなければならない場合であっても、1台の電子部品装着機1で済ますことが可能になる。つまり、電子部品装着機1を含む生産ラインをコンパクトにすることができ、コスト低下にも寄与する。
また、本実施形態の電子部品装着機1では、装着ヘッド15に従来から備わっている構成、すなわちスプライン軸37を回転させるための構成を作動機構として吸着ノズル50の口径調整を可能にしている。そのため、大幅な設計変更などを必要とせず、従来の電子部品装着機1に対する僅かな改良で実施できるようにした点で、上記効果を達成するための実施が容易であり、且つ低コストでの実施が可能である。そして、吸着ノズル50の可変機構により、調整した吸着口531の口径を一定に保つことができるため、吸着口531の微妙な口径調整について正確な制御が可能である。
ところで、吸着ノズル50の口径調整は、変位部材51の上下方向の移動が支持部材52の径方向の移動に変換されることにより行われる。従って、変位部材51の回転運動は、支持部材52の変位に直接関係することはなく、むしろ径方向以外の方向に力が作用するため、支持部材52の動きの妨げになる。そこで例えば、径方向板522のテーパ面522aを曲面にし、テーパ部513との間で生じる回転方向の摺動抵抗を小さくすることが好ましい。更には、図8に示すように、支持部材51に回転運動が作用しない構造にするようにしてもよい。図8は、口径可変の吸着ノズルを示した第2実施形態の断面図であり、前記第1実施形態の吸着ノズル50と同じ構成については同じ符号を付して説明する。
この吸着ノズル56は、吸着ノズル50の変位部材51を改良したものである。すなわち、この変位部材71は、フランジ部711、雄ネジ部712、テーパ部713及び連結部714を備えているが、テーパ部713が別部材になって雄ネジ部712と分離し、ラジアル軸受717を介して連結されている。従って、変位部材71が回転しながら上下方向に移動しても、テーパ部713は、支持部材52との摩擦抵抗によって回転することなく単に上下方向に移動することとなる。よって、支持部材52の径方向の移動がスムーズになり、口径調整自体もスムーズに行われる。
次に、前記第1、第2実施形態の吸着ノズル50,56は、吸着口531が円形である。しかし、電子部品によっては円形以外の吸着口が要求されることもある。従って、円形以外の吸着口の大きさを変化させるものや、吸着口の形を様々に変化できるようにしたものについて提案する。図9は、長円形をした吸着口の吸着ノズルを示した第3実施形態の図であり、図4と同じ位置で表したものである。なお、前記第1、第2実施形態の吸着ノズル50,56と同じ構成については同じ符号を付して説明する。
この吸着ノズル57も、吸着ノズル50の変位部材51を改良したものである。すなわち、詳しく図示しないが、変位部材72は、図3に示す第1実施形態のフランジ部511、雄ネジ部512、連結部514を有し、テーパ部723が別部材になって雄ネジ部512と分離し、図8に示す第2実施形態と同様にラジアル軸受717を介して連結されている。そして、そのテーパ部723は、軸方向(図面を貫く方向)の断面形状が図9に示すように楕円形をしている。そこで、例えば図6(A)から(C)に示す変位部材51のように、変位部材72が段階的に下降したならば、支持部材52a,52cよりも支持部材52b,52dの移動量が大きいため、吸着口は、ほぼ円の形から徐々に短径と長径との差が大きくなる長円形へと変化することとなる。
こうして、円形ではなく長円形の吸着口が必要な電子部品には本実施形態の吸着ノズル57が使用される。その他、第1実施形態では周方向板523によって吸着口531が円形になるようにしたが、湾曲した周方向板523に代えて、周方向に折り曲げられた平板を使用すれば、吸着口を四角形にすることができる。そして、この点については、本実施形態でも支持部材52a,52cと支持部材52b,52dとで折り曲げ角度を変えた板材とすれば、吸着口を菱形のようにすることができる。
一方、図9に示す第3実施形態では、テーパ部723が非回転である構成として説明したが、第1実施形態のように回転するような構成、すなわち変位部材72が一つの部材として構成されたものであってもよい。この場合は、楕円形をしたテーパ部723の長径と短径とが回転することになり、支持部材52a,52b,52c,52dの径方向移動がより複雑になり、吸着口531を様々な形に変化させることができる。また、このとき大きさの変化を必要としないのであれば、テーパ部723のように傾斜した面とせず、軸方向に同一断面の楕円形部材としてもよい。
更に、吸着口の形状を変化させるものとしては、図10に示すようなものであってもよい。図10は、吸着ノズルを示した第4実施形態の断面図であり、前記第1実施形態の吸着ノズル50と同じ構成については同じ符号を付して説明する。この吸着ノズル58は、吸着ノズル50の変位部材51を改良したものである。すなわち、変位部材74は、テーパ部743の形状が回転軸Oに対して非対称になっている。テーパ部743は、その表面(テーパ面)を同一高さで円周方向の各個所で見た場合に回転軸Oからの距離がそれぞれ異なる非円形形状断面である。
従って、変位部材74が回転しながら上下方向に移動した場合、テーパ部743の表面に当たる4つの支持部材52(図9に示す支持部材52a,52b,52c,52dを参照)は、回転軸Oからの距離がそれぞれ異なり、吸着口531の形状が様々に変化することとなる。その際、支持部材52の周方向板523の形を変えれば、更に吸着口531の形を変化させることができる。本実施形態を含む前記各実施形態では、変化する吸着口531の径の大きさや形は係合部材54のフランジ部541に表示された各々の識別部材55に書き込まれている。従って、ノズル用カメラ65によって識別部材55を撮像することにより、情報を読み取って確認することができ、適切な口径(又は口形)の調整に関する制御が可能である。
以上の実施形態で示した吸着ノズル50,56,57,58は、いずれの可変機構も軸方向の移動を径方向の移動に変換させるものであった。しかし、可変機構は、これ以外に図11に示すような構造のものであってもよい。図11は、口径可変の吸着ノズルを示した第5実施形態の断面図である。なお、前記第1実施形態の吸着ノズル50と同じ構成については同じ符号を付して説明する。
この吸着ノズル80は、図1に示すスプライン軸37の回転を受けて支持部材82を変位させる変位部材81と、カバー部材83を内側から支持する支持部材82と、その支持部材82に被せられてノズル先端部を形作るカバー部材83と、これら各部材81,82,83を関連付ける係合部材84などを備えたものであり、これらによって吸着口831の径を変化させる可変機構が構成されている。
変位部材81は、フランジ部811の下方に雄ネジ部812が形成され、その下端には卵型ブロックの案内部813が着脱可能な構造で一体に形成されている。そして、上方には連結部814が形成され、その中心にはノズル孔816が軸方向に貫いている。雄ネジ部812が係合部材84の雌ネジ部841に螺合し、下方に案内部813が位置している。第1実施形態の変位部材51と比べた場合、案内部813以外は同様な構成である。そして、その案内部813を包むように支持部材82及びカバー部材83が設けられている。
支持部材82は、外側に向けて膨らむように湾曲した複数の揺動板821によって構成されている。揺動板821は、その上端部がフランジ部842の下面側に、径方向と直交する方向を軸線とした軸822によって揺動可能に支持されている。そして、複数の揺動板821は、円周方向に一部が重なるようにして配列され、窄んだ花弁のようになっている。支持部材82には、伸縮性のあるゴム材などからなるカバー部材83が取り付けられている。カバー部材83は、略円筒形状をしたものであり、複数の揺動板821を覆うように被せられている。
カバー部材83は、下端に吸着口831が形成され、上端側が係合部84のフランジ部842に固定されている。揺動板821は、カバー部材83によって内側に付勢されて案内部813へ常に押し当てられている。そのため、案内部813が上下動することにより、湾曲した揺動板821が揺動して吸着口831の大きさが変化する。係合部材84のフランジ部842に、図5に示す識別部材55が周方向に一定の間隔で複数表示され、変位部材81の回転と吸着口831の大きさとが対応付けられている。
よって、本実施形態でも、これまで複数の吸着ノズルで行っていた様々な部品の吸着保持を、吸着ノズル80一つで対応させることができる。そして、吸着ノズル80の可変機構により調整した吸着口831の口径を一定に保つことができるため、吸着口831の微妙な口径調整について正確な制御が可能である。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前記実施形態では、1本の吸着ノズルを搭載するシングルノズルの装着ヘッド15を示したが、複数の吸着ノズルを搭載可能なマルチノズルの装着ヘッドであってもよい。
また、前記実施形態では、作動機構としてスプライン軸37を回転させる機構を例に挙げて説明したが、例えば、スプライン軸37を昇降させる機構を含めて作動機構とし、その出力に対応するように、吸着ノズル側の可変機構を前記実施形態とは別機構によって構成したものであってもよい。
また、前記第5実施形態は吸着口831を円形のものとして説明したが、例えば、揺動板を平板にして四方に配置することで四角い吸着口にするようにしてもよい。
また、吸着口531などの口径や形の確認を識別部材55で行うようにしたが、パーツカメラ25によって吸着口531を撮像して確認し、それを基に口径調整を制御するようにしてもよい。