JP6376343B2 - 製紙用添加剤および該添加剤を用いて得られる紙 - Google Patents

製紙用添加剤および該添加剤を用いて得られる紙 Download PDF

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Description

本発明は、製紙用添加剤および該添加剤を用いて得られる紙に関する。
紙力増強剤、濾水向上剤などの製紙用添加剤では、例えば、アクリルアミド系重合体や澱粉が主に使用されている。アクリルアミド系重合体は、澱粉と比べて高価格であるが、パルプへの定着性が高く少量添加でも優れた紙力効果や濾水性を示す。一方、澱粉は安価であるが、ポリアクリルアミド系重合体に比べてパルプへの定着性が低いために、高い紙力効果や濾水性を発揮するためには添加量を多くする必要がある。
そこで、アクリルアミド系重合体と澱粉の各長所を活かすため両者を併用することにより、比較的安価で高性能な製紙用添加剤を提供しようとする検討が種々行われている。
例えば、澱粉などの水分散性多糖類を含有する水分散液中でアクリルアミドを必須成分とするモノマー混合物を重合して得られる多糖類−アクリルアミド系重合体を主成分とする製紙用添加剤(特許文献1)や、カチオン化澱粉を含有する水溶液中で、アクリルアミド、アニオン性ビニルモノマー、カチオン性ビニルモノマーおよび架橋性ビニルモノマーからなるモノマー混合物を重合して得られる製紙用添加剤(特許文献2)が開示されている。
また、カチオン化澱粉を酵素により変性した低粘度カチオン化澱粉水溶液中で、アクリルアミドを必須成分とするビニルモノマー類を重合して得られる水溶性重合体を有効成分とする製紙用紙力増強剤(特許文献3)や、予め特定の連鎖移動性置換基を側鎖に有するビニルモノマーを構成成分とするアクリルアミド系重合体を製造しておき、これと水分散性多糖類をグラフト重合させて得られるグラフト構造の多糖類−アクリルアミド系重合体も開示されている(特許文献4)。
前記文献記載の発明によれば、価格や性能面である程度の改善は可能であるものの、一層の低価格化や性能の向上を達成せんとする近時の製紙業界の要求を満足できない。そのため、比較的安価で高性能である製紙用添加剤が求められている。
特開平8−60591号公報 特許第2928785号公報 特許第3876522号公報 特許第3371931号公報
本発明は、従来の澱粉−アクリルアミド系重合体よりも紙力強度に優れた安価な製紙用添加剤、および該添加剤を用いて得られる紙を提供することを目的とする。
本発明者らは前記課題に着目して鋭意検討した結果、アクリルアミド系重合体、特定のビニルモノマーおよび澱粉を過酸化物の存在下に反応させて得られる反応生成物が、前記課題の解決に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、アクリルアミド系重合体(A)に連鎖移動性置換基を有するビニルモノマー(B)および澱粉(C)を、過酸化物の存在下で反応させて得られる反応生成物(D)を主成分として含有する製紙用添加剤に関する。また本発明は、該添加剤を用いて得られる紙に関する。
本発明の製紙用添加剤は、アクリルアミド系重合体に比べて安価であり、かつ紙力効果の点でも遜色がないものである。
本発明の製紙用添加剤は、アクリルアミド系重合体(A)(以下、重合体(A)という。)、前記ビニルモノマー(B)(以下、ビニルモノマー(B)という。)および澱粉(C)からなる反応生成物(D)(以下、成分(D)という。)を主成分として含むものである。
重合体(A)は、非イオン性アクリルアミド系重合体、アニオン性アクリルアミド系重合体、カチオン性アクリルアミド系重合体及び両性アクリルアミド系重合体から選ばれる少なくとも1種である。
重合体(A)は、アクリルアミド類(a1)(以下、成分(a1)という。)を必須成分とするが、重合体(A)の種類(前記イオン性など)に応じて、アニオン性ビニルモノマー(a2)(以下、成分(a2)という。)、カチオン性ビニルモノマー(a3)(以下、成分(a3)という。)からなるモノマー混合物を適宜に選択使用する。また、これらのモノマー混合物には、あらかじめ架橋性ビニルモノマー(a4)(以下、成分(a4)という。)又は/および連鎖移動剤(a5)(以下、成分(a5)という。)が配合されていてもよい。
成分(a1)としては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられ、これらは、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
成分(a2)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸等のジカルボン酸;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などの有機スルホン酸、または前記各種有機酸のナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらの中でも重合性の面からアクリル酸、イタコン酸が好ましい。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、成分(a3)としては、アミノ基や第4級アンモニウム基などのカチオン性官能基を少なくとも1つ有し、かつラジカル重合性を有するものであれば、特に限定されず、各種公知のものを使用することができる。例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第3級アミノ基含有ビニルモノマーまたはそれらの塩、および前記第3級アミノ基含有ビニルモノマーと4級化剤を反応させてなるビニルモノマーの第4級アンモニウム塩などが挙げられる。また、該ビニルモノマー塩としては、塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩であっても、酢酸塩等の有機酸塩であってもよい。また、反応させる4級化剤としては、メチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリン等が挙げられる。これらの中では、重合性の面から、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
重合体(A)の構成モノマーである成分(a1)、(a2)および(a3)の比率としては、特に限定されないが、全モノマー成分中、(a1)成分は十分な紙力効果を確保する観点から、通常、50〜100重量%、好ましくは65〜98重量%、より好ましくは70〜95重量%である。また、(a2)成分は通常、0〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量%、より好ましくは1〜20重量%であり、(a3)成分は、パルプへの定着性の観点から、通常、0〜50重量%、好ましくは1〜35重量%、より好ましくは3〜25重量%である。
成分(a4)としては、特に限定されないが、分子内に連鎖移動性置換基を有するものや、分子内に複数のラジカル重合性官能基を有するものであれば、特に制限なく公知のものを使用できる。
連鎖移動性置換基を有するビニルモノマーとしては、N−置換アミド基、アリル基又はポリアルキレングリコール基を有するものが挙げられる。
連鎖移動性置換基として、N−置換アミド基を有するビニルモノマーには、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ダイアセトンアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩が挙げられる。これらの中でも、紙力効果の点からN,N−ジメチルアクリルアミドがより好ましい。アリル基を有するビニルモノマーには、例えば、アリル(メタ)アクリレート、N−アリル(メタ)アクリルアミド、N−ジアリル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。また、ポリアルキレングリコール基を有するビニルモノマーには、少なくとも2個のオキシアルキレン基の繰り返し単位を有するものが挙げられる。具体例としては、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、重合体(A)の製造において、分岐および架橋反応を促進させる点から、N,N−ジメチルアクリルアミドを使用することが望ましい。
また、分子内に複数のラジカル重合性官能基を有するビニルモノマーとしては、メチロールアクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、エポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類、ジビニルベンゼン、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリアリルアミン、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリラートなどが挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上、又は前段落記載の架橋性モノマーと組み合わせて使用しても良い。
成分(a4)の構成比率としては、特に限定されないが、通常は0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜3重量%である。なお、成分(a4)を用いる際は、成分(a1)〜(a4)の合計が100重量%となるように各モノマー成分の使用量を適宜調整する。成分(a4)の使用量が、0.001重量%に満たない場合は、重合体(A)の分子量が上がらずに、紙力効果や濾水性が不十分となりやすく、10重量%を超える場合には、反応中に高分子量化が急激に進行することで粘度が高まり、反応制御が困難となる傾向がある。
本発明の重合体(A)の重合に際しては、連鎖移動剤(a5)を必ずしも使用する必要はないが、連鎖移動剤を用いることで、形成されるポリマー鎖がより短くなり、比較的低粘度の重合体(A)を得ることができる。連鎖移動剤の使用態様については特に限定されないが、通常は、予め原料モノマー混合物に添加し、重合に供せられる。
成分(a5)としては、例えば、2−メルカプトエタノール、n−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、メタリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸カリウムやメタリルスルホン酸アンモニウムなどのメタリルスルホン酸塩、エタノール、イソプロピルアルコールやペンタノール等のアリル基を有さないアルコール類、四塩化炭素、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、クメン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられるが、これらの中では、水との混和性から、メタリルスルホン酸ナトリウム、2−メルカプトエタノールが好ましい。
モノマー混合物に対する成分(a5)の使用量は、特に限定されないが、通常は0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。20重量%を超えると、形成されるポリマー鎖が短くなりすぎ、結果として低分子量のポリマーが生成されやすくなり、十分な紙力効果を発揮しにくくなる。なお、成分(a5)を用いる際は、成分(a1)〜(a5)の合計が100重量%となるように各モノマー成分の使用量を適宜調整する。
重合体(A)で用いる原料モノマー混合物においては、本発明の目的を損なわない範囲で、成分(a1)〜(a5)以外のラジカル重合性ビニルモノマーを併用しても良い。具体的には、芳香族ビニルモノマー、アルキル(メタ)アクリレート類、カルボン酸ビニルエステル類、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの分子中に芳香環を有する単官能モノマー類が挙げられる。また、アルキル(メタ)アクリレート類としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの単官能モノマー類が挙げられる。カルボン酸ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。
重合体(A)は、従来公知のモノマー滴下重合法、モノマー溶液を一括して仕込む同時重合法、又はこれらを組み合わせた重合方法で合成することができる。なお、モノマー混合液に用いる溶媒としては、各構成成分を溶解又は分散させ、重合反応に悪影響を与えないものであれば、特に限定されないが、通常、水を用いることが好ましい。
上記方法で得られる重合体(A)の平均重量分子量は、通常は100,000〜10,000,000であり、好ましくは500,000〜7,000,000であり、より好ましくは1,000,000〜5,000,000である。また、重合体(A)の形態としては、水溶液であることが望ましい。該分子量が100, 000未満の場合には、十分な紙力強度が得られ難くなり、また、10,000,000を超える場合には、ゲルが発生し生産が困難となる傾向がある。
また、重合体(A)の粘度としては、濃度20重量%の水溶液(温度60℃)で、通常は10〜100,000mPa・s程度であり、好ましくは50〜40,000mPa・sである。該粘度が10mPa・s未満の場合、最終的に得られる反応生成物(D)の紙力効果が低くなりやすく、また、100,000mPa・sを超える場合には、反応生成物(D)を取出し難くなる等の取り扱い面で不利となりやすい。
前記ビニルモノマー(B)としては、連鎖移動性置換基を有するものであれば、格別限定されないが、得られる反応生成物(D)を含む製紙用添加剤の紙力効果が発揮されやすくなることから、N−置換基アミド基を有するビニルモノマーを使用することが好ましい。具体例としては、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ダイアセトンアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩が挙げられる。これらの中でも、紙力効果の点からN,N−ジメチルアクリルアミドがより好ましい。
なお、反応生成物(D)の製造においては、得られる反応生成物(D)の諸性能を損なわない限り、他のビニルモノマーを前記ビニルモノマー(B)と併用しても差し支えはない。該他のビニルモノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート類、N,N−ジメチルアミノアルキルアクリレート類、カルボン酸ビニルエステル類、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられ、これらは単独または2種以上を適宜に組み合わせて使用できる。アルキル(メタ)アクリレート類としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの単官能モノマー類が挙げられる。N,N−ジメチルアミノアルキルアクリレート類としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の第3級アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマー、前記第3級アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマーの塩、および前記第3級アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマーと四級化剤を反応させて得られる第4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリル系モノマーなどが挙げられる。前記の塩としては、塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩であっても、酢酸塩等の有機酸塩であってもよい。また、4級化剤としては、メチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリン等が挙げられる。カルボン酸ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等などが挙げられる。該他のビニルモノマーの使用量としては、重合体(A)100重量部(固形分換算)に対して、30重量部以下である。
前記澱粉(C)としては、各種公知のものが使用でき、例えば、コーン、馬鈴薯、タピオカ、小麦、米、サゴヤシ、ワクシーメイズから得られる各種の澱粉類の他、カチオン化澱粉、酸化澱粉、リン酸変性澱粉、カルボキシメチル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、カルバミルエチル化澱粉、シアノエチル化澱粉、ジアルデヒド化澱粉、酢酸変性澱粉等の澱粉誘導体などが挙げられる。また、市販品を使用しても差支えない。また、未変性澱粉又は変性澱粉等を減成処理したものを使用することもできるが、澱粉(C)の重合体(A)への添加等の取り扱いの利点から、減成処理を施したものを使用することがより好ましい。
該減成処理としては、前記原料澱粉に無機過酸化物を作用させて酸化処理する方法(以下、方法1という。)、前記原料澱粉を酵素で処理する方法(以下、方法2という。)などがある。該減成処理澱粉においては、澱粉及び減成剤からなる水溶液を60〜100℃で30〜60分加熱撹拌することで製造できる。
前記方法1で用いる無機過酸化物としては、特に限定されないが、例えば、次亜塩素酸塩、ペルオキソ二硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなど)、過酸化水素などが挙げられる。当該過酸化物は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。さらに、過酸化水素に、硫酸鉄および硫酸銅のうちの少なくとも1種の水溶性重金属塩を組み合わせても使用できる。これらの中でも過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムのうちのいずれか少なくとも1種を好ましく使用できる。方法2では、変性酵素として、各種細菌、動植物の生産するαアミラーゼが好ましく使用される。
本発明の製紙用添加剤に含まれる反応生成物(D)は、重合体(A)、ビニルモノマー(B)および澱粉(C)を、過酸化物の存在下に反応させることにより得られる。
反応生成物(D)の製造に用いる過酸化物としては、ペルオキソ二硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなど)、過酸化水素などが挙げられるが、これらの中でも、価格や入手容易性の点から、過硫酸アンモニウム又は過硫酸カリウムを用いることが望ましい。
反応生成物(D)の製造における前記各成分の使用割合(固形分換算)は、格別限定されず、反応生成物(D)の粘度、得られる製紙用添加剤の紙力効果などを考慮して適宜に決定できる。ビニルモノマー(B)の使用割合は、重合体(A)100重量部に対して、通常は0.01〜80重量部、好ましくは0.05〜40重量部、より好ましくは0.25〜10重量部である。同様にして、澱粉(C)の使用割合は、通常は5〜1000重量部、好ましくは25〜400重量部、より好ましくは25〜100重量部である。ビニルモノマー(B)の使用割合が0.01重量部未満となると、紙力効果が不十分となり、80重量部を超えると反応中に架橋による高分子量化が急激に進行することで粘度が高まり、反応制御が困難となる傾向がある。また、澱粉(C)の使用割合が5重量部未満となると、重合体(A)またはビニルモノマー(B)の比率が増加するため、コストの面で不利となり易く、1000重量部を超えると重合体(A)の比率が減るため、紙力効果が低下する傾向となる。また、過酸化物の使用割合は反応の開始点を効果的に生成し架橋反応を十分に進行させるために、重合体(A)100重量部に対して、通常は0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、より好ましくは0.1〜2重量部とされる。過酸化物の使用割合が0.01重量部未満となると、架橋反応の反応点を十分に生成させることができず反応が遅くなり、5重量部を超えると架橋による高分子量化が急激に進行することで粘度が高まり、反応制御が困難となりやすい。
前記反応生成物(D)の製造に際しては、重合体(A)、ビニルモノマー(B)、澱粉(C)および過酸化物を混合して、50〜95℃の温度で15分〜5時間程度、重合反応を行えばよい。前記各成分の仕込み方法としては格別限定されず、反応装置や反応系内の発熱などを考慮して適宜に選択することができる。該方法としては、例えば、一括または逐次に添加することができ、また、該逐次添加としては、例えば連続滴下や分割添加などが挙げられる。
反応生成物(D)の製造は、必要に応じて、窒素などの不活性ガスの気流下に行うこともできる。また、有機過酸化物のラジカル発生を容易にし、水素引抜き効果を促進できる点で還元剤を併用しても良い。還元剤としては、亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸水素塩、トリエタノールアミンや硫酸第一銅などが挙げられる。なお、当該製造における反応の詳細については不明な点もあるが、水素引き抜き反応が進行し、ビニルモノマー(B)を介して、重合体(A)と澱粉(C)の相互間でグラフト化しているものと推察される。
また、反応生成物(D)の製造では、ビニルモノマー(B)の反応性などの点から、アルカリ調整剤を用いて、反応系内のpHを調整しても良い。該アルカリ調整剤としては、アルカリ金属類〔水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等〕、アンモニア類〔アンモニア、炭酸アンモニウム等〕、炭素数1〜12程度の脂肪族アミン類〔モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノブチルアミン等〕、脂環族アミン類〔シクロヘキシルアミン等〕、芳香族アミン類〔アニリン等〕が例示できる。
かくして得られた反応生成物(D)を含有する本発明の製紙用添加剤は、濃度は特に限定されないが、通常10〜30重量%であり、好ましくは15〜25重量%である。濃度は10重量%より低い場合、輸送コストが嵩み好ましくなく、30重量%を越えると重合反応時の粘度および製品粘度が高くなり、ハンドリングが困難となる傾向がある。また、粘度としては、反応生成物(D)を取出し難くなる等の取り扱い面から、濃度20重量%の水溶液(温度25℃)における粘度が、通常は500〜20,000mPa・s程度が好ましく、2,500〜15,000mPa・s程度であることがより好ましい。
本発明の製紙用添加剤には、本発明の目的・効果を逸脱しない限り、前記反応生成物(D)の他に、必要に応じて、各種添加剤を配合して調製できる。該添加剤としては、消泡剤、防腐剤、キレート剤、水溶性アルミニウム化合物、ボウ硝、尿素、多糖類等が挙げられる。
本発明の製紙用添加剤は、主に紙力増強剤として利用できる。該紙力増強剤の適用方法としては、原料パルプスラリー中に内添する方法、原紙表面に塗工する方法およびこれらの組合せ方法などが挙げられる。
内添の場合においては、本発明の紙力増強剤をパルプスラリーに添加し抄紙する。紙力増強剤の使用量は特に限定されないが、パルプの乾燥重量に対して、通常は0.01〜4.0重量%程度である。また、パルプの種類も特に限定されず、LBKP、NBKP等の化学パルプや、GP、TMPなどの機械パルプや古紙パルプ等が挙げられる。前記紙力増強剤を内添する際は、その他に、定着剤として硫酸バンドや水酸化アルミニウム等、pH調整剤に硫酸や水酸化ナトリウム等、サイズ剤や湿潤紙力剤、填料として、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン及び炭酸カルシウム等を添加できる。
表面塗工の場合は、本発明の紙力増強剤を水などで希釈した溶液で使用して、各種公知の手段により原紙表面に塗工する。原紙の種類としては、木材セルロース繊維を原料とする未塗工の紙を用いることができ、塗工手段としては特に限定されず、例えば、バーコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、キャレンダー、ゲートロールコーター、ブレードコーター、2ロールサイズプレスやロッドメタリングなどが挙げられる。また、紙力増強剤の塗布量(固形分)も特に限定されないが、通常、0.001〜2g/m程度、好ましくは0.005〜0.5g/m程度である。
本発明の紙は、様々な製品に供せられ、例えば、コート原紙、新聞用紙、ライナー、中芯、紙管、印刷筆記用紙、フォーム用紙、PPC用紙、インクジェット用紙、感熱紙等として利用できる。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、部および%はいずれも重量基準による。なお、便宜上単量体等については、下記のように略語で示す。
AM:アクリルアミド
AA:アクリル酸
IA:イタコン酸
DM:N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート
DML:DMの塩化ベンジル4級化物
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
SMAS:メタリルスルホン酸ナトリウム
APS:過硫酸アンモニウム
(粘度)
ブルックフィールド型粘度計(東機産業(株)製)を用いて、25℃に調整したサンプルの粘度を測定した。
(分子量)
ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法により、以下の測定条件で分子量を測定した。
GPC本体:東ソー(株)製
カラム:東ソー(株)製ガードカラムPWXL1本およびGMPWXL2本(温度40℃)
溶離液:0.5mol/l酢酸緩衝液(0.5mol/l酢酸(和光純薬工業(株)製)+0.5mol/l酢酸ナトリウム(キシダ化学(株)製)水溶液、pH約4.2)
流速:0.8ml/分
検出器:
ビスコテック社製TDA MODEL301(濃度検出器および90°光散乱検出器および粘度検出器(温度40℃))RALLS法
測定サンプル:サンプル濃度を0.5%に調整した後、pH10〜12になるまで水酸化ナトリウム水溶液を添加し、80℃以上の湯浴に1時間浸した後、硫酸でpH6〜8に調整し、溶離液で0.025%に希釈して測定した。
合成例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応装置に、固形分濃度88%のコーン澱粉(商品名『コーンスターチ』、王子コーンスターチ(株)製)100.0部、αアミラーゼ(商品名『クライスターゼL1』、天野エンザイム(株)製)0.03部、およびイオン交換水480部を加えて、75℃に昇温し、40分撹拌後、90℃に昇温して更に10分間撹拌した。濃度が15.0%となるようにイオン交換水で希釈して、澱粉(C−1)を得た。得られた澱粉(C−1)の粘度を表1に示す(以下同様)。
合成例2
合成例1において、減成剤の使用量を0.01部に変えて合成し、澱粉(C−2)を得た。
合成例3
合成例1において、減成剤を用いずに合成し、澱粉(C−3)を得た。
合成例4
合成例1において、αアミラーゼ0.03部をAPS1.0部に変えて合成し、澱粉(C−4)を得た。
合成例5
合成例1において、原料澱粉を酸化澱粉(商品名『王子エースA』、王子コーンスターチ(株)製)に変えて合成し、成分(C−5)を得た。
※減成剤の使用量については、澱粉有姿に対する数値で示す。
実施例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および2つの滴下ロートを備えた反応装置に、イオン交換水300.0部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、85℃まで加熱した。別途、滴下ロート(1)に50%のAM水溶液377.0部、IA7.5部、80%のAA12.5部、DM25部、60%のDML20.8部、SMAS5.25部、DMAA1.25部およびイオン交換水180.0部を仕込んだ。また、滴下ロート(2)にAPS0.2部とイオン交換水60部を仕込んだ。次に、滴下ロート(1)および(2)より反応装置に3時間かけて滴下した。滴下終了後、APS0.1部とイオン交換水5.0部を入れ1時間撹拌した。これにビニルモノマー(B)として、DMAA0.625部および先に調製した澱粉(C−1)416.6部を添加した後、75℃にてAPS0.1部とイオン交換水5.0部を入れ1時間撹拌した後、濃度が20.0%となるようにイオン交換水で希釈し、反応生成物(D−1)を得た。得られた反応生成物の該物性値を表2に示す(以下同様)。
実施例2〜10
実施例1において、モノマー成分の種類または使用量を表2に示すように変えて合成し、反応生成物(D−2)〜(D−10)を得た。
実施例11〜14
実施例1において、澱粉(C)の種類を表2に示すように変えて合成し、反応生成物(D−11)〜(D−14)を得た。
実施例15〜17
実施例1において、ビニルモノマー(B)の使用量を表2に示すように変えて合成し、反応生成物(D−15)〜(D−17)を得た。
実施例18
実施例1において、ビニルモノマー(B)又は澱粉(C)の使用量を表2に示すように変えて合成し、反応生成物(D−18)を得た。
実施例19〜23
実施例1において、ビニルモノマー(B)又は澱粉(C)の使用量を表2に示すように変えて合成し、濃度が15.0%である反応生成物(D−19)〜(D−23)を得た。
比較例1
実施例1において、ビニルモノマー(B)を用いずに合成し、反応生成物(D−24)を得た。
比較例2、3
実施例21、22において、ビニルモノマー(B)を用いずにそれぞれ合成し、濃度15.0%である反応生成物(D−25)〜(D−26)を得た。
比較例4
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および3つの滴下ロートを備えた反応装置に、澱粉(C−1)416.5部、イオン交換水300.0部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、85℃まで加熱した。滴下ロート(1)に50%のAM水溶液377.0部、IA7.5部、80%のAA12.5部、DM25部、60%のDML20.8部、SMAS5.25部、DMAA1.25部およびイオン交換水180.0部を仕込んだ。また、滴下ロート(2)にAPS0.2部とイオン交換水60部を仕込んだ。次に、滴下ロート(1)および(2)より反応装置に3時間かけて滴下した。滴下終了後、APS0.1部とイオン交換水5.0部を入れ1時間撹拌した後、濃度が20.0%となるようにイオン交換水で希釈し、反応生成物(D−27)を得た。
※ビニルモノマー(B)および澱粉(C)の使用量については、重合体(A)100重量部(固形分換算)に対する数値で示す。
性能評価方法
段ボール古紙をナイアガラ式ビーターにて叩解し、カナディアン・スタンダード・フリーネス(C.S.F)370mlに調整したパルプに硫酸バンドを1.5%添加して、pH調整のために5%水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH6.7とした。次に上記の各実施例及び比較例で得られた各反応生成物(D−1)〜(D−27)を紙力増強剤として対パルプ1.0%を添加して、撹拌した後、タッピ・シートマシンにて、坪量180g/mとなるよう抄紙し5kg/cmで2分間プレス脱水をした。次いで、回転型乾燥機で105℃において3分間乾燥し、温度20℃、湿度65%の条件下にて24時間調湿した。
(比破裂強度)
前記方法で得られた各試験用紙を用い、JIS P 8131に準拠して測定し、比破裂強度(kPa・m/g)で示した。結果を表3に示す。
(比引張強度)
前記方法で得られた各試験用紙を用い、JIS P 8113に準拠して測定し、比引張強度(N・m/g)で示した。結果を表3に示す。
(比圧縮強度)
前記方法で得られた各試験用紙を用い、JIS P 8126に準拠して測定し、比圧縮強度(N・m/g)で示した。結果を表3に示す。
表3の結果より、本発明で得られる反応生成物(D)は比較評価例に比べて、比破裂強度、比引張強度、比圧縮強度のいずれについても優れた効果を示した。

Claims (12)

  1. アクリルアミド系重合体(A)に連鎖移動性置換基を有するビニルモノマー(B)および澱粉(C)を、過酸化物の存在下で反応させて得られる反応生成物(D)を主成分として含有する製紙用添加剤。
  2. 各成分の使用割合(固形分換算)が、アクリルアミド系重合体(A)100重量部に対して、前記ビニルモノマー(B)0.01〜80重量部、前記澱粉(C)5〜1000重量部を用いる請求項1に記載の製紙用添加剤。
  3. アクリルアミド系重合体(A)がアクリルアミド類50〜100重量%、アニオン性ビニルモノマー0〜50重量%及び/又はカチオン性ビニルモノマー0〜50重量%を含むモノマー混合物を重合して得られるものである請求項1又は2に記載の製紙用添加剤。
  4. 前記モノマー混合物が架橋性ビニルモノマーを含むものである請求項3に記載の製紙用添加剤。
  5. 前記モノマー混合物が連鎖移動剤を含むものである請求項3又は記載の製紙用添加剤。
  6. アクリルアミド系重合体(A)の重量平均分子量が100,000〜10,000,000である請求項1〜5のいずれかに記載の製紙用添加剤。
  7. 前記ビニルモノマー(B)の連鎖移動性置換基がN−置換アミド基である請求項1又は2に記載の製紙用添加剤。
  8. 前記ビニルモノマー(B)がN,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ダイアセトンアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載の製紙用添加剤。
  9. 前記澱粉(C)が減成処理澱粉である請求項1又は2に記載の製紙用添加剤。
  10. 反応生成物(D)の濃度20重量%(温度25℃)における粘度が100〜100,000mPa・sである請求項1〜9のいずれかに記載の製紙用添加剤。
  11. 紙力増強剤として用いられる請求項1〜10のいずれかに記載の製紙用添加剤。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の製紙用添加剤を用いて得られる紙。
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