JP6374717B2 - 抗微生物性材料 - Google Patents

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Description

本発明は、抗微生物性材料に関し、より詳細には、粗面化処理を施した樹脂性基材層上に銅‐錫系合金の薄膜が設けられた抗微生物性材料に関する。
物品の衛生を維持するために、抗微生物性を有する物質を物品表面に設けることがある。例えば、食品を扱う事業所や一般家庭の調理場、医療施設などにおいて、床や壁などの内装、機器、什器などに付着した有害微生物(病原菌など)に起因した接触感染や中毒を防止するため、これらの内装、機器、什器の表面を無菌状態に保つことが求められている。また、高湿で換気の少ない住宅の押入れや食品保管庫、結露の多い浴室等の水周り、空調機器、冷蔵庫の内部などでは、かびの発生や食品等の腐敗を有効に防ぐ必要があり、壁紙などの建材や、食品保存容器および浴室用品などの物品表面にも有害微生物低減効果を付与することが求められている。
有害微生物低減効果を付与する方法として、物品表面に抗菌剤を練りこんだり、抗菌剤を含む塗料を塗布することが広く行われている。抗菌剤には、有機系の抗菌剤と無機系の抗菌剤とがある。特に無機系抗菌剤は、有機系の抗菌剤と比べてより広範囲の有害微生物に効果を発揮し、かつ人体への毒性が低いことから着目されている。
無機系の抗菌剤としては、銀、銅やその合金が知られている。これらの金属を加工した物品の例としては、流し台に置く銅製の塵芥容器(いわゆる三角コーナー)や黄銅製の建具などがある。かかる物品は、その全面において殺菌活性を有するため、効果的に抗菌性を発揮することができる。しかしながら、銀や銅などの金属は比重が大きいため、物品が重くなり、さらにコストも高くなる。また、水分や酸、塩分等との接触によって変色しやすく、外観の品位が低下しやすい。
上記の重さ、コストおよび外観の問題を解決するために、例えば、特許文献1では、抗菌性を有する金属薄膜として、1〜10質量%のSnOを含むSn−Cu合金薄膜を基材上に設ける技術が提案されている。しかしながら、特許文献1では、抗菌性を損なうことなく、水分や塩分による腐食を抑制できる金属薄膜について具体的な検討は行われていない。
特許文献2では、抗菌性、耐食性および耐摩耗性に優れた抗微生物性材料として、樹脂からなる基材層と銅‐錫合金層(銅:60原子%超90原子%以下、錫:10原子%以上40原子%未満)とを含む抗微生物性材料が開示されている。しかし、特許文献2の抗微生物性材料は、人の手や物品が頻繁に接触するような用途に適用すると長期間による使用により表面の銅‐錫合金層が摩耗して基材が表面に現れ、その結果、抗菌性も損なわれるという問題があった。
特許文献3では、抗菌性、耐食性および耐摩耗性に優れた抗微生物性材料として、基材層と銅‐錫合金層(銅:60原子%超90原子%以下、錫:10原子%以上40原子%未満)とを含む抗微生物性材料であって、銅‐錫合金層がCu41Sn11結晶相とCuSn結晶相とを適度な含有比率で含む抗微生物性材料が開示されている。しかし、特許文献3では、銅‐錫合金層の蒸着前に基材を特定の温度に加熱することによって、Cu41Sn11結晶相とCuSn結晶相の含有比率をコントロールしなければならないため、生産性が低いという問題や、基材の種類や大きさが制限されるという問題があった。
特許文献4では、所定の表面粗さを有する延伸プラスチックフィルムを開示している。特許文献4のプラスチックフィルムによれば、小さな無機化合物粒子がプラスチックフィルム表面凹部に密着するように入りこんで、そこから抜け出にくくなるので、フィルムと抗菌剤との密着性が高い。しかし、特許文献4の抗菌延伸プラスチックフィルムの場合、基材プラスチックフィルムにバインダーを介して無機粒子を定着させるため、凹部に入り込んだ無機化合物粒子は、外部と接触することができず、抗菌性に寄与することができないという問題があった。更に、バインダーを介して無機粒子を定着させることで、プラスチックフィルム表面が平滑となり、表面全体が摩擦される問題もあった。
特開2006−342418号公報 特許第4778123号 特許第5166651号 特開平9−57893号公報
従って、本発明の目的は、抗菌性および耐摩耗性に優れた抗微生物性材料を提供することである。
本発明によれば、樹脂製基材層と銅‐錫系合金薄膜とを含み、該銅‐錫系合金薄膜は、前記樹脂製基材層上に配置され、銅と錫を原子比で50:50〜95:5の割合で含有し、前記樹脂製基材層の銅‐錫系合金薄膜側表面には、該銅‐錫系合金薄膜側表面の表面粗さが最大高さ(Rz)で表して1.5〜14.0μmとなるように粗面化処理が施されており、前記銅‐錫系合金薄膜の厚さが2〜1500nmであり、表面粗さが、最大高さ(Rz)で表して1.5〜14.0μmであることを特徴とする抗微生物性材料が提供される。
前記粗面化処理が、ヘアライン加工またはサンドブラスト加工によって施されている抗微生物性材料は、本発明の好ましい態様である。
前記樹脂製基材層が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドおよびエチレンビニルアルコール共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂より形成される抗微生物性材料は、本発明の好ましい態様である。
平均厚み12.5〜200μmのフィルムである抗微生物性材料は、本発明の好ましい態様である。
前記樹脂製基材層の銅‐錫系合金薄膜側表面には、銅‐錫系合金薄膜側表面の表面粗さが最大高さ(Rz)で表して3.0〜4.7μmとなるように粗面化処理が施されており、表面粗さが、最大高さ(Rz)で表して3.0〜4.7μmである抗微生物性材料は、本発明の好ましい態様である。
前記銅‐錫系合金薄膜の厚さが3〜100nmである微生物性材料は、本発明の好ましい態様である。
本発明によれば、予想外に優れた抗菌性および耐摩耗性を有する抗微生物性材料が提供される。
本発明の抗微生物性材料の耐摩耗性の効果を説明する図である。 銅および錫の蒸気圧の温度依存性を示すグラフである。 実施例1で得られた抗微生物性材料の表面を示すSEM写真である。 実施例1で得られた抗微生物性材料の耐摩耗性試験後の表面を示すSEM写真である。
本発明の抗微生物性材料は、粗面化処理が施された基材層と、かかる基材層上に配置される銅‐錫系合金薄膜とを含み、必要に応じて他の層をさらに含んでもよい。
<基材層>
本発明の基材層は樹脂製であるが、かかる樹脂としては、特に制限はなく、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても使用することができるが、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂およびポリアミド樹脂を用いることが好ましく、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂を用いることが特に好ましい。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートを挙げることができる。ポリオレフィン樹脂とは、具体的には、α−オレフィンの単独重合体や、α−オレフィンと他の共重合モノマーとの共重合体を意味する。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレンを挙げることができ、即ち、ポリオレフィン樹脂の例には、ポリエチレンやポリプロピレン(PP)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)などが含まれる。ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66を挙げることができる。
上述の樹脂のうち、ASTM−D648−56に準拠して荷重1820kPaにて測定される荷重たわみ温度が115℃以下である樹脂がより好ましく、90℃以下である樹脂が特に好ましい。荷重たわみ温度が115℃以下である樹脂は、加工性が良好であり、得られるフィルムの可撓性も良好だからである。荷重たわみ温度は、ASTM−D648−56に準拠した方法で測定される。具体的には、荷重たわみ温度は、試験片をフラットワイズ用の装置にセットし、昇温速度2℃/分で昇温したときに、荷重1820kPaで曲げ歪が0.2%になるときの温度である。試験片の大きさは、縦80mm、横10mm、厚さ4mmとし、支点間距離は64mmとしうる。
基材層の形状は、本発明の抗微生物性材料の用途に応じて適宜決定すればよく、例えばメッシュ状構造体、フィルム状等であればよいが、一般的には、フィルム状をしている。基材の片面もしくは両面には、装飾性を高めるため、または情報を付与するために印刷が施されていてもよい。
本発明においては、基材層に粗面化処理を施すことが重要な特徴である。即ち、基材層に粗面化処理を施し、その上に薄い銅‐錫系合金薄膜を設けることにより、本発明の抗微生物性材料の表面は、基材層の粗面に対応する凹凸を有することとなり、その結果、表面全体における実際に摩擦を受ける部分の面積を減らすことができる。さらに、粗面化処理には、表面積を増加させる効果もある。こうした効果が組み合わさって、本発明の抗微生物性材料は非常に優れた耐摩耗性を示し、高い抗微生物性を長期に亘って発揮することができる。
粗面化処理を施された基材層の表面粗さは、最大高さ(Rz)で表して、1.5〜14.0μmの範囲にあることが好ましく、2.5〜10.5μmの範囲にあることがより好ましく、3.5〜9.5μmの範囲にあることが特に好ましい。表面粗さがこの範囲内にあると、抗微生物性材料に人の手指が触れるとき(抗微生物性材料表面に対して略垂直に力が加わるよう触れるとき)、抗微生物性材料の凹部まで手指が入るので優れた抗微生物性を発揮することができる。しかし、抗微生物性材料表面で手指を動かすとき(抗微生物性材料に対して略平行に手指を動かすとき)には、手指が凹部にほとんど入らないので、凹部内に存在する銅‐錫系合金薄膜が摩耗されにくい。基材層の表面粗さ(Rz)が小さすぎると、抗微生物性材料表面の表面粗さも小さくなり、抗微生物性材料が例えば人の指が擦れるなどして摩擦を受ける際に表面凹部にまで指が接触し、十分な耐摩耗性を発揮することができなくなる。一方、Rzが大きすぎると、手指等との接触が抗微生物性材料の凸部にのみ集中して、銅‐錫系合金薄膜が残存する凹部には手指等が接触しなくなってしまうため、抗微生物効果が減衰する虞が生じる。また、摩擦を受ける際にも、凸部だけが局部的に激しく磨滅してしまう。
尚、最大高さ(Rz)は、基材フィルムについて、ISO 4287に定義された最大高さを基準長さ10ミリメートルで測定した値である。この最大高さ(Rz)は、表面粗さ測定器(例えば、株式会社ミツトヨ製SJ−411)を用いて測定することができる。
基材層の厚みは、抗微生物性材料の用途に応じて適宜決定すればよいが、一般には、平均厚みが5〜700μmの範囲にあればよいが、好適には、12.5〜200μmの範囲にある。基材層の厚みが過剰に厚いと、抗微生物性材料が重くなり、薄すぎる場合には抗微生物性材料の機械的強度が低下する。なお、基材層の平均厚みは、例えば、ISO 4593に従って測定される。
<銅‐錫系合金薄膜>
本発明においては、図1に示されているように、上記の粗面化処理が施された樹脂製基材層3の上に、銅及び錫を含有する銅‐錫系合金の薄膜5が設けられている。銅‐錫系合金薄膜5は、本発明に抗菌性を付与する機能を有するので、本発明の抗微生物性材料1の最表面に配置されることが好ましい。
銅‐錫系合金薄膜は、銅と錫を原子比で50:50〜95:5の割合で含有し、好適には、銅と錫を60:40〜90:10の比率で含有し、特に好適には、銅と錫を65:35〜85:15の比率で含有する。銅‐錫系合金薄膜中の錫の含有量が少なすぎると、水や塩水、体液などとの接触により腐食または変色して外観変化が生じる虞がある。一方、錫の含有量が過剰の場合、銅の含有量が少なくなるため、抗微生物性能が不十分となる。本発明において、銅‐錫系合金薄膜に含まれる金属成分中の、銅および錫の合計の好ましい含有量は、75原子%〜100原子%である。好適には、80原子%〜100原子%であり、特に好適には、90原子%〜100原子%である。銅‐錫系合金薄膜は銅‐錫系合金の薄膜が酸化されたものであってもよい。
本発明において、銅‐錫系合金薄膜は、前述の銅および錫の含有量を満たす限りにおいて、他の元素をさらに含んでもよい。これにより、経済性、各種液体との親和性、基材との親和性、金属薄膜の色調などが調整されうる。かかる他の元素としては、例えば、溶融状態での蒸気圧が銅に近いアルミニウム、ゲルマニウム、ベリリウム、ニッケル、シリコンなどが挙げられる。また、耐食性を損なわない範囲で亜鉛、銀、ニッケルなどの抗微生物性を有する他の金属が含有されていてもよい。また、酸化などにより酸素が含有されていてもよい。銅‐錫系合金薄膜中に含まれる金属成分の質量%は70質量%〜100質量%が好ましく、より好ましくは80質量%〜100質量%である。
従来から、バルク金属材料分野において、銅に錫を加えて合金化し、耐食性を向上させることは広く行われてきた。ところが、青銅として古代より利用されている銅‐錫合金における錫含有量の上限は、銅と錫の含有量の合計に対して現在でも約10原子%である。錫含有量が10原子%を超える銅‐錫合金は、脆性が増すため、鋳物として使われることはあるが、後に塑性加工を施されるような板材や棒材などには通常用いられない。
本発明の抗微生物性材料における銅合金は、薄膜として基材層に積層されるので、銅‐錫系合金の錫の含有量が10原子%を超える銅‐錫系合金であっても、加工性や使用時の耐久性を有する。
本発明において、銅‐錫系合金膜が薄いことは重要な特徴である。銅‐錫系合金膜を薄膜とすることで、本発明の抗微生物材料の表面が基材層表面の凹凸に対応した粗面となるからである。具体的には、銅‐錫系合金膜の厚みは、2〜1500nmであり、好ましくは、3〜1000nmであり、特に好適には5〜200nmである。銅‐錫系合金膜の厚みが厚すぎると、抗微生物性材料の表面に基材の凹凸が現れないだけでなく、合金薄膜と基材の間の内部応力により製品に反りが生じる、銅‐錫系合金薄膜が基材から剥離しやすくなる等の問題が生じる虞がある。一方、銅‐錫系合金薄膜の厚みを過度に薄くすると、銅‐錫系合金薄膜の耐食性が低下する虞がある。
尚、銅‐錫系合金薄膜の厚みは、例えば蛍光X線分析によって行うことができる。詳述すると、蛍光X線分析によって銅‐錫系合金を付着させた領域10mm四方以上における銅、錫それぞれの単位面積あたりの付着量を求め、続いて、得られた値を以下の式に代入し、厚みを算出することができる。
厚み(nm)={(Wc/8900)+(Ws/7300)}×10−9
式中、
Wcは、銅の単位面積あたりの付着量(kg/m)を表し、
Wsは、錫の単位面積あたりの付着量(kg/m)を表す。
また、銅‐錫系合金薄膜のQ値(Ω/(nm・Cu原子%))は、0.001〜0.007であることが好ましく、0.003〜0.005であることがより好ましい。Q値とは、シート抵抗(Ω)を、銅−錫系合金層の厚み(nm)とそれに含まれる銅と錫の合計量に対する銅原子量(Cu原子%)で除して得られる値のことである。銅‐錫系合金薄膜のQ値を上記範囲とするためには、例えば銅‐錫系合金薄膜をスパッタリングではなく蒸着法により形成することが好ましい。
<その他の層>
本発明の抗微生物性材料においては、基材層の銅‐錫系合金薄膜が形成された面とは反対側に、粘着層を設けてもよい。粘着層を設けることで、本発明の抗微生物性材料を、たとえば家具等の表面に貼り付けて使用することができる。粘着層は、一旦物品表面に貼り付けられた抗微生物性材料を剥離することができるような粘着層(再剥離可能な粘着層)であることが好ましい。表面に汚れなどが付着して抗微生物性などの特性が低下した場合や、外観が損なわれた場合などには、抗微生物性材料を剥がす必要があるからである。
粘着層を構成する粘着剤の種類は特に限定されず、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等を使用することができる。
本発明の抗微生物性材料は、必要に応じて、他の層をさらに含んでいてもよい。他の層としては、例えば、吸水性、撥水性、光散乱性、平滑性、意匠性(例えば色彩や光沢)などの機能を有する層を挙げることができる。
<抗微生物性材料>
本発明の抗微生物性材料は、上述のように、粗面を有する樹脂製基材層と、薄い銅‐錫系合金薄膜と、必要に応じて更に他の層とを有する構造をしていればよい。全体としての形状は用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、メッシュ状構造体やフィルム状をしていればよいが、本発明の効果が最大限に発揮されるという観点から、フィルム状をしていることが好ましく、具体的には、平均厚みが5〜700μmの範囲にあればよく、平均厚み12.5〜200μmのフィルム状をしていることが好ましい。更に本発明の抗微生物性材料は、フィルム状とした後で裁断して、織布等の形状とすることができ、かかる形状の場合にも、十分な抗微生物性や耐摩耗性を発揮する。尚、平均厚みは、蛍光x線による測定から求めることができる。
本発明の抗微生物性材料の表面は、銅‐錫系合金薄膜が非常に薄いので基材層表面の凹凸を反映した粗面となっており、即ち、好適には、1.5〜14.0μm、より好適には、2.5〜10.5μm、特に好適には、3.5〜9.5μmの表面粗さを有している。
このように、本発明は、粗面を有することによって優れた耐摩耗性を有することができるのであるが、単に抗微生物性材料の表面(即ち、銅‐錫系合金層の表面)だけを粗面化するのではなく、基材層の表面を粗面化させ、その粗面を銅‐錫系合金薄膜を介して抗微生物性材料の表面に反映させることによって、極めて優れた耐摩耗性を実現している。即ち、抗微生物性材料の表面を粗面化する方法としては、基材層を粗面化せずに銅‐錫系合金層の表面を直接粗面化する方法も考えられるが、かかる方法によって得られた抗微生物性材料では、銅‐錫系合金層の摩耗が一度始まると、抗微生物性材料の表面が徐々に平滑になっていき、人の手等と実際に接触する面積割合が加速度的に増えていく。さらに、銅‐錫系合金層を直接粗面化するのであれば、粗面化前の銅‐錫系合金層はある程度の厚みを有していなければならず、製造コストの増大を招く。しかし、本発明のように、基材層の表面を粗面化しておけば、たとえ銅‐錫系合金薄膜の一部で摩耗が開始したとしても、基材表面の凹凸が抗微生物性材料(銅‐錫系合金薄膜)の表面に反映されたままなので、より長い時間摩耗を防ぐことができるし、また、銅‐錫系合金薄膜も必要な厚みだけ成膜すればよいので、コストも抑制できる。
また、本発明の抗微生物性材料が粗面であるということは、即ち、本発明の抗微生物性材料の表面積が大きいことも意味する。銅などの無機系抗菌剤が発揮する抗微生物性は、外部に露出している銅の量に依存することから、本発明の抗微生物性材料においては、高い抗微生物性を発揮することができるのである。さらに、上述のように、本発明の抗微生物性材料は摩擦を受けても摩耗しにくいので、高い抗微生物性を長期にわたって持続することができる。
更に、本発明の抗微生物性材料の銅‐錫系合金薄膜は、成膜後に外気に触れると徐々に透明になることが確認されている。即ち、成膜直後の銅‐錫系合金薄膜は、金属色に由来する黒味がかった色を呈しているが、外気にさらすうちに、この黒みがかった色が徐々に薄くなっていき、透明度が増していくのである。その結果、製造後適当な時間を経過させた本発明の抗微生物性材料は、高い全光線透過率を有するのである。このように、経時とともに全光線透過率が向上する理由は定かではないが、おそらく、本発明の銅‐錫系合金薄膜は非常に薄いため、外気に触れると層全体で徐々に酸化が進むせいであると考えられる。本発明の抗微生物性材料の全光線透過率は、製造から120時間以上経過したときに60%以上であることが好ましい。全光線透過率が低すぎると、本発明の抗微生物性材料を適用する用途が制限されてしまう。尚、全光線透過率は、製造から120時間以上経過したフィルム状の抗微生物材料について、JIS K 7105に準じて測定される。
さらにまた、本発明の抗微生物性材料は、後述する成膜工程においてアニール処理を行わない場合には、反りが少ないことも確認されている。従って、本発明の抗微生物性材料の用途によっては、成膜工程においてアニール処理を行わないことで、反りを少なくすることが好ましく、具体的には、幅4cm、長さ10cm、厚み25μmのフィルムとしたときの反り量が2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましい。尚、フィルムの反り量は、薄膜形成後、23℃、50%RHで24時間放置した後の(薄膜形成前の)フィルムに対する反り量として求められる。
<抗微生物性材料の製造方法>
本発明の抗微生物性材料は、(1)樹脂製基材層の表面に粗面化処理を施す粗面化処理工程および(2)基材層上に銅‐錫系合金薄膜を成膜する成膜工程を経て製造することができる。
(1)粗面化処理工程
本発明の抗微生物性材料を製造するにあたっては、まず、公知の方法に従って、粗面化処理の施されていない樹脂製フィルム(以後、これを樹脂製基材層前駆体と呼ぶことがある。)を用意し、かかる樹脂製基材層前駆体表面に粗面化処理を施す。粗面化処理の方法としては、マット剤練り込み、サンドブラスト加工、ヘアライン加工、マットコーティング、エッチング等の他、サンドペーパーを用いて削る、或いは研磨剤を用いて研磨する等の方法等が挙げられるが、加工容易性の観点からは、サンドブラスト加工が好ましく、また、加工コストが安価であり且つ意匠性に優れているという観点からは、ヘアライン加工が好ましい。
サンドブラスト加工とは、たとえば、砂やガラスビーズなどの研磨材を、ショットブラスト(遠心式ブラスト)で回転するインペラーからブレードに供給し、遠心力で投射する処理方法である。一方、ヘアライン加工とは、ヘアライン加工機を用い、不織布に砥粒を付着させたヘアライン用研磨材や金属ブラシなどにより、基材層表面にスジ状の模様(ヘアライン模様)を形成する加工である。処理条件は、樹脂製基材層の表面粗さ(最大高さRz)が上述した範囲となるように適宜決定される。
なお、従来公知の表面処理化方法には、上記の方法のほかに、プラズマ処理、コロナ処理、蒸着処理、CVD処理なども存在する。しかし、これらの方法では、本発明で求めるミクロンオーダーの粗面を形成することができず、即ち、これらの方法によって表面処理が施された基材層を有する抗微生物性材料では、本発明の目的を達成することはできない。従って、(1)粗面化処理工程で用いる粗面化処理方法として、これらの方法は好ましくない。なお、本段落の記載は、その他の目的のためにこれらの方法を採用することを何ら制限するものではない。
(2)成膜工程
次に、得られた樹脂製基材層の表面に銅‐錫系合金薄膜を形成する。銅‐錫系合金薄膜の成膜方法は、特に限定されず、物理的成膜法、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、レーザー蒸着法、アーク蒸着法、溶射法、溶融めっき法など;や、化学的成膜法、例えば、プラズマCVD法、熱CVD法など;を用いることができる。かかる成膜方法のうち、生産性に優れているという観点から、真空蒸着法およびイオンプレーティング法が好ましい。
尚、(2)成膜工程では銅と錫の合金の薄膜を形成するのであるが、真空蒸着法およびイオンプレーティング法は、従来、合金薄膜の製造への適用が困難であることが知られている。しかしながら、本発明においては、かかる問題を懸念することなく、これらの方法を好適に採用することができる。以下に、その理由を説明する。
まず、一般に、上記好適な成膜方法により合金薄膜を製造することが困難であるとされてきた背景を説明する。例えば真空蒸着法やイオンプレーティング法で合金薄膜を形成する場合、合金の各構成元素の蒸発速度が一定の比率になるように調整する必要がある。一般に特定の温度における金属の蒸気圧は元素によって大きく異なるため、蒸発速度も大きく異なるからである。つまり、合金蒸発源を加熱溶融させると、蒸気圧の高い元素(A元素)だけが先に蒸発し、A元素がほぼ蒸発しきって蒸発源の中にA元素がほとんど残らない状況になった後に、蒸気圧の低い元素(B元素)の蒸発速度が徐々に高まって、最後にはB元素だけが蒸発する。従って、真空蒸着法やイオンプレーティング法では、一定範囲の組成に制御された合金を得ることができないのである。一定範囲の組成に制御された合金を得るためには、例えばアニール(加熱)により合金化させるという方法があるが、高温を必要とするため、基材の選択の自由度を狭めてしまう。また、一定範囲の組成に制御された合金を得るための別の方法として、2つ以上の蒸発源を独立して用意し、それぞれの蒸発源に合金の構成元素を1種類ずつ入れて独立に加熱温度を制御するという方法があるが、合金構成元素同士の蒸発速度比を制御しなければならず、製造方法が煩雑である。さらに、2つ以上の蒸発源を設けることができる製造装置は、価格が非常に高い。それゆえ、一般に、真空蒸着法およびイオンプレーティング法は、合金薄膜の製造への適用が困難であると言われている。
しかしながら、本発明の抗微生物性材料を製造する場合には、上記問題を懸念することも上記制御方式を採用することもなく、真空蒸着法およびイオンプレーティング法を好適に用いることができる。以下にその理由を説明する。
本発明の抗微生物性材料が有する合金層は、銅と錫の合金層(薄膜)である。図2に示すように、銅と錫は、1050〜1500℃の広い範囲で非常に近い蒸気圧を有する。そのため、銅と錫以外の合金系の場合とは異なり、単一の銅‐錫合金の蒸発源を用いても、比較的一定範囲の組成に制御された銅と錫の合金蒸着膜を得ることができる。
銅と錫の合金系では、錫が原子数比率で15%以上の場合には、蒸発源の組成と蒸着膜の組成が近似することが確認されている。また、一般には合金蒸発源を用いて蒸着を連続的に行うと、合金のうちの一部の成分元素のみが先に多く蒸発することで、残った蒸発源の組成が元の組成からずれていくことにより、徐々に蒸着膜の組成もずれていくことも知られているが、その組成のずれの大きさも、蒸着膜中の錫の原子数比率が15%以上の場合には比較的小さくできることも確認されている。例えば合金蒸着源の組成が錫の原子数比率24%〜33%の場合に、蒸着を開始した時点での蒸着膜組成と、蒸発源を約3分の2消費した時点での蒸着膜組成とが、いずれも本発明の抗微生物性金属の組成範囲に収まっている。そのため、蒸着工程の進行中に何れかの成分金属を追加するなどの特段の追加的措置を実施しなくても、効率よく抗微生物性金属薄膜を形成することができる。
従って、銅と錫の合金蒸着膜は、単一の合金蒸着源から成膜した場合でも均一な合金組成を有することができる。それ故、本発明の抗微生物性材料の製造方法においては、銅と錫の単一の合金蒸着源を採用することによって、真空蒸着法およびイオンプレーティング法を特に好適に使用することができる。具体的には、銅‐錫系合金からなる蒸着源を準備する工程と;基材を、銅‐錫系合金からなる蒸着源に対向するように配置する工程と;銅‐錫系合金からなる蒸着源を気化させて金属蒸気を発生させる工程と;金属蒸気を基材に接触させて、基材上に銅‐錫系合金層を形成する工程とを経て成膜が行われることが好ましい。
単一の蒸着源によって、真空蒸着法またはイオンプレーティング法により銅‐錫系合金薄膜を成膜する場合、2以上の蒸着源によって銅‐錫系合金薄膜を成膜する場合に比べて、製造コストを抑えることができる。また、単一の蒸着源によって、真空蒸着法或いはイオンプレーティング法により銅‐錫系合金薄膜を成膜する場合と、金属成分ごとに薄膜を形成した後;これらを合金化させるためのアニール処理を行う場合とを比較すると、単一の蒸着源を用いて真空蒸着などを行う場合のほうが、基材層の形成に用いる樹脂の自由度が大きくなる。アニール処理を行わないため、耐熱性の低い樹脂製の基材層上にも、銅と錫の合金蒸着薄膜を直接形成できるからである。
蒸着源は、銅を60原子%を超えて85原子%以下含有し、かつ錫を15原子%以上40原子%未満含有する銅‐錫系合金からなる蒸着源であることが好ましい。特に、銅を67〜76原子%含有し、且つ、錫を24〜33原子%含有する銅‐錫系合金からなる蒸着源であることが好ましい。前述した量の銅および錫を含有する銅‐錫系合金薄膜を得るためである。
尚、上述のように、本発明の抗微生物性材料を製造する場合には、錫が原子数比率で15%以上の場合には、蒸発源の組成と蒸着膜の組成が近似することが確認されているが、蒸着膜の組成には、双方の金属の蒸気圧以外にも溶融状態での比重など複数の因子が影響を及ぼすので、実際に成膜を行う前に、蒸発源の組成と蒸着膜の組成との関係を十分に検討・確認することが推奨される。
(3)その他の工程
本発明の抗微生物性材料がさらに他の層を有する場合、他の層と基材層とは、公知の積層方法によって積層されうる。積層方法の例には、基材層と他の層とを共押出する方法;ラミネートする方法などが含まれる。ラミネートは、必要に応じて接着剤などを用いて行ってもよい。
本発明の抗微生物性材料を織布状にする場合には、樹脂フィルムに銅‐錫系合金薄膜を形成した後;得られる銅‐錫系合金薄膜付きフィルムを断裁すればよい。例えば、表面に銅‐錫系合金薄膜を形成したポリエステルフィルムを裁断して、抗微生物性を有するポリエステルスリット糸を作製し;ポリエステルスリット糸同士またはポリエステルスリット糸と他の糸とを紡糸し;さらに紡糸された糸単独または紡糸された糸と他の糸とを用いて織布を作製することができる。これにより、吸水性、風合い、硬さ、耐久性、および耐熱性などが調整された繊維製品を容易に得ることができる。
また、表面に銅‐錫系合金薄膜を形成したフィルムを断裁して砕片とした後;抄紙原料と混合して、抗微生物性を有する紙を得ることもできる。さらにまた、表面に銅‐錫系合金薄膜を形成したプラスチックフィルム等の基材を破砕したものを、プラスチック材料に混合して;押出成形、射出成形、トランスファー成形等の方法によって所望の形状に成形して、抗微生物性材料を得ることもできる。これらのような、銅‐錫系合金薄膜を形成した基材を細断もしくは破砕した後、物品製造の際に配合する方法には、種々の形態の抗微生物性を有する物品を容易に製造できるという利点がある。一方で、このようにして得られる物品は、表面の全面が銅と錫の合金で被覆されているわけではないため、表面の微生物の低減効果は、物品の表面全面を銅と錫の合金で被覆した物品に比べて低くなる。
<抗微生物性材料の用途>
本発明の抗微生物性材料は、前述の通り、優れた抗菌性と耐摩耗性とを有する。このため、本発明の抗微生物性材料は、各種抗微生物性資材として好ましく用いられる。抗微生物性資材の例には、医療用資材、家庭用資材、浄化資材、農業用資材および各種表面保護フィルムなどが含まれる。
医療用資材の例には、医療器具、薬剤容器、感染防止用個人防護具(マスクなどを含む)、包帯、創傷用ドレッシングフィルム、および絆創膏等が含まれる。家庭用資材の例には、食品、飲料水、生活用水および花卉用などの保存容器または包装資材;まな板や食品塵芥捕集用資材などの台所用資材;洗面器および腰掛等の浴室用資材;手巾、布巾および雑巾等の清拭用資材;衣服、履物およびかばん等の服飾装飾用資材;カーテン、敷物、網戸、寝具および寝装品等の住宅用資材;マスク、簡易便器、便座用シート、紙おむつおよび生理用品等の衛生用資材等が含まれる。浄化資材の例には、気体浄化フィルターや液体浄化フィルターなどが含まれる。農業用資材の例には、マルチシート、水耕栽培用フィルター、育苗箱用シート、果実掛袋および果実色付け用光反射シート等が含まれる。表面保護フィルムの例には、表示装置のタッチパネル画面の表面に貼り付けられるタッチパネル用保護フィルム等が含まれる。
本発明の抗微生物性材料は、必要に応じて適切な形状に加工されて、各種建造物の表面に貼り付けられる建築用資材としても用いられる。このような建築用資材の例には、各種施設の洗面所、便所、浴室、シャワー室、洗濯室および給湯室;食品を扱う事業所の厨房;医療施設における一般病棟と隔離病棟の境界部、集中治療室の前室、および医療用機器;半導体製造工場のクリーンルーム前室;各種建造物のエントランスや下足室などの建造物、あるいは建造物の壁面、床面、建具表面またはこれらに設置された扉、窓、手すり、電気スイッチ、調理台、流し台、水栓、浴槽、便器、家具や什器などの表面に貼り付けられる建築用資材などが含まれる。
以下、実施例および比較例を参照して本発明をさらに説明する。本発明の技術的範囲はこれらによって限定されるものではない。
実施例および比較例では、以下の方法に従って、各種測定や試験を行った。
(1)最大高さ(Rz)
実施例および比較例で用いた基材フィルムの最大高さ(Rz)について、ISO 4287に定義された最大高さを基準長さ10ミリメートルで測定した。測定には、表面粗さ測定器(例えば、株式会社ミツトヨ製SJ−411)を用いた。
(2)金属組成分析
実施例および比較例で得られたフィルムについて、蛍光X線分析によって銅‐錫系合金を付着させた領域10mm四方以上における銅、錫それぞれの単位面積あたりの付着量を求めた。得られた付着量から、銅と錫の原子比率を求めた。
(3)銅‐錫系合金薄膜の平均厚み
実施例および比較例で得られたフィルムについて、蛍光X線分析によって銅‐錫系合金を付着させた領域10mm四方以上における銅、錫それぞれの単位面積あたりの付着量を求めた。得られた値を以下の式に代入し、銅‐錫系合金薄膜の厚さを算出した。
厚さ={(Wc/8900)+(Ws/7300)}×10−9
式中、
Wcは、銅の単位面積あたりの付着量(kg/m)を表し、
Wsは、錫の単位面積あたりの付着量(kg/m)を表す。
(4)耐摩耗性試験
実施例および比較例で得られたフィルムを、幅4cm、長さ10cmに切り出してサンプルフィルムを得た。かかるサンプルフィルム上に形成された銅‐錫系合金薄膜の表面を、水で濡れたフェルト布を用いて3kgf荷重の条件下で擦り、基材層の色がみえるまでに擦った回数を測定した。基材層の色がみえるまでに擦った回数が多いほど、銅‐錫系合金薄膜の耐摩耗性が高いことを示す。
(5)摩擦後抗菌性試験
実施例および比較例で得られたフィルムについて、(4)耐摩耗性試験を行った。試験後のフィルムを、一辺が50ミリメートルの正方形に切り出してサンプルフィルムとした。このサンプルフィルムについて、黄色ブドウ球菌を用いて、JIS Z 2801に準拠した抗菌性試験を実施した。
試験後に検出された菌のコロニー数を、24時間後の菌数(A)として表2に記載した。なお、菌が全く検出されなかった場合を「<10」として表2に記載した。また、同時に試験した対照品であるポリエチレン板上で検出された菌のコロニー数を(A)で割った値の常用対数値を、抗菌活性値として表2に記載した。
(6)全光線透過率
各実験例で得られたフィルムについて、製造から120時間以上経過した後で、JIS K 7105に準じ、分光光度計(東京電色技術センター社製、TC−HIIIDPK)を用い、積分球式測定法により波長450〜600nmの範囲で全光線透過率を測定した。実施例および比較例において、波長500nmにおける全光線透過率を示した。
(実施例1)
表1に示すように、基材フィルムとして、厚さ100μmのPETフィルム(テイジンデュポン製 荷重たわみ温度(荷重1820kPa時):104℃)を準備した。この基材フィルムの表面はサンドブラストにより粗面化処理されており、表面粗さ(最大高さRz)4.5μmを有していた。この基材フィルムを、蒸着装置の蒸発源から400mm上方にセットした。
また、大きさ1〜3mmの粒状の純銅(純度99.9%)60gと大きさ1〜2mmの粒状の純錫(純度99.9%)40gとを合計で100g秤量し、これらを金属容器内に入れてよく混合して、銅74原子%、錫26原子%(銅60重量%、錫40重量%)の蒸発源とした。この蒸発源を、蒸着装置のルツボに入れて10−3Pa以下の圧力になるまで真空排気した。次いで、蒸発源が大きく飛散しないようにゆっくりと、電子ビームでルツボおよび蒸発源を加熱し、ルツボ中の蒸発源を完全に融解させて合金蒸発源とした。この合金蒸発源を一旦真空中で放冷した後、再度電子ビームにより加熱し、蒸発源から約400mm上方に設置された基材フィルムの粗面化処理面上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。成膜速度は毎秒10〜15nmとした。得られた銅‐錫系合金薄膜の厚みは100nmであった。上述の各種測定および試験を行い、結果を表2に示した。
(実施例2)
表1に示すように、純銅55gと純錫45gとを秤量し合計で100gとした点、および基材フィルムの表面粗さを4.3μmとした点以外は実施例1と同様にして、PETフィルムの上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。上述の各種測定および試験を行い、結果を表2に示した。
(実施例3)
表1に示すように、銅‐錫系合金薄膜の厚みを3nmに変えた点、および基材フィルムの表面粗さを4.0μmとした点以外は実施例1と同様にして、PETフィルムの上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。上述の各種測定および試験を行い、結果を表2に示した。
(実施例4)
表1に示すように、PET基材層の表面粗さ(Rz)を3.0μmに変えた点以外は実施例1と同様にして、PETフィルム上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。上述の各種測定および試験を行い、結果を表2に示した。
(実施例5)
表1に示すように、PET基材層にヘアライン加工を施した点、および基材フィルムの表面粗さを3.5μmとした点以外は実施例1と同様にして、PETフィルム上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。上述の各種測定および試験を行い、結果を表2に示した。
(比較例1)
表1に示すように、基材フィルムの表面をサンドブラストにより粗面化処理しなかった点、厚みが1nmの銅‐錫系合金薄膜を形成した点、および成膜方法を蒸着からスパッタリングに変えた点以外は実施例1と同様にして、抗微生物性材料を製造した。各種測定および試験を行い、結果を表2に示した。
(比較例2)
表1に示すように、純銅40gと純錫60gとを秤量し、合計で100gとした点以外は実施例1と同様にして、抗微生物性材料を製造した。各種測定および試験を行い、結果を表2に示した。
実施例1で得られた抗微生物性材料の耐摩耗性試験前後の表面について、走査型電子顕微鏡(JEOL社製、JSM−7001F)により、300倍、2000倍の条件でSEM写真を取得した。耐摩耗性試験前のSEM写真を図3に、耐摩耗性試験後のSEM写真を図4に示す。
(7)摩擦前抗菌性試験
得られたフィルムを摩擦せずに試験に供した点以外は、(5)摩擦後抗菌性試験と同様にして、抗菌活性値を測定した。
(実施例6)
純銅70gと純錫30gを秤量し、合計で100gとした点以外は実施例1と同様にして、PETフィルムの上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。
(比較例3)
純銅95gと純錫5gを秤量し、合計で100gとした点以外は実施例1と同様にして、PETフィルムの上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。
(実施例7)
銅‐錫系合金薄膜の厚さを7nmとした点以外は実施例1と同様にして、PETフィルムの上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。
(実施例8)
銅‐錫系合金薄膜の厚さを50nmとした点以外は実施例1と同様にして、PETフィルムの上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。
実施例1、2、6〜8および比較例3で得られたフィルムについて、上述の(7)摩擦前抗菌性試験を行い、結果を表3に示した。
(8)500回摩擦前後抗菌性試験
得られたフィルムを500回擦り、擦る前のフィルムと擦った後のフィルムそれぞれを試験に供した点以外は、(5)摩擦後抗菌性試験と同様にして、抗菌活性値を測定した。
(実施例9)
銅-錫系合金薄膜の厚みを10nmとした点以外は実施例1と同様にして、PETフィルムの上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。
(実施例10)
サンドブラストではなくヘアライン処理を行った点、および銅-錫系合金薄膜の厚みを10nmとした点以外は実施例1と同様にして、PETフィルムの上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。
(実施例11)
基材樹脂をPETではなくPPにした点、および銅-錫系合金薄膜の厚みを10nmとした点以外は実施例1と同様にして、PPフィルムの上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。
(実施例12)
基材樹脂をPETではなくEVOHにした点、および銅-錫系合金薄膜の厚みを10nmとした点以外は実施例1と同様にして、EVOHフィルムの上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。
(比較例4)
サンドブラスト処理を行わなかった点、および銅-錫系合金薄膜の厚みを10nmとした点以外は実施例1と同様にして、PETフィルムの上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。
(比較例5)
サンドブラストではなくプラズマ処理とコロナ処理を行った点、および銅-錫系合金薄膜の厚みを10nmとした点以外は実施例1と同様にして、PETフィルムの上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。
(比較例6)
基材樹脂をPETではなくPPとした点、サンドブラスト処理を行わなかった点、および銅-錫系合金薄膜の厚みを10nmとした点以外は実施例1と同様にして、PPフィルムの上に銅‐錫系合金薄膜を形成した。
実施例9〜12および比較例4〜6で得られたフィルムについて、上述の(8)500回摩擦前後抗菌性試験を行い、結果を表4に示した。
1;抗微生物性材料
3;樹脂製基材層
5;銅‐錫系合金薄膜

Claims (7)

  1. 樹脂製基材層と銅‐錫系合金薄膜とを含み、
    該銅‐錫系合金薄膜は、前記樹脂製基材層上に配置され、銅と錫を原子比で50:50〜95:5の割合で含有し、
    前記樹脂製基材層の銅‐錫系合金薄膜側表面には、該銅‐錫系合金薄膜側表面の表面粗さが最大高さ(Rz)で表して1.5〜14.0μmとなるように粗面化処理が施されており、
    前記銅‐錫系合金薄膜の厚さが2〜1500nmであり、
    表面粗さが、最大高さ(Rz)で表して1.5〜14.0μmであることを特徴とする抗微生物性材料。
  2. 前記粗面化処理が、ヘアライン加工によって施されている、請求項1に記載の抗微生物性材料。
  3. 前記粗面化処理が、サンドブラスト加工によって施されている、請求項1に記載の抗微生物性材料。
  4. 前記樹脂製基材層が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドおよびエチレンビニルアルコール共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂より形成される、請求項1〜の何れかに記載の抗微生物性材料。
  5. 平均厚み12.5〜200μmのフィルムである、請求項1〜の何れかに記載の抗微生物性材料。
  6. 前記樹脂製基材層の銅‐錫系合金薄膜側表面には、銅‐錫系合金薄膜側表面の表面粗さが最大高さ(Rz)で表して3.0〜4.7μmとなるように粗面化処理が施されており、
    表面粗さが、最大高さ(Rz)で表して3.0〜4.7μmである、請求項1〜5の何れかに記載の抗微生物性材料。
  7. 前記銅‐錫系合金薄膜の厚さが3〜100nmである、請求項1〜6の何れかに記載の抗微生物性材料。
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