JP4037038B2 - ガラス系抗菌剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は酸化亜鉛を高濃度で含有するガラス系無機抗菌剤及び該抗菌剤と樹脂とからなる抗菌性樹脂成形体に関する。
無機抗菌剤は、樹脂、合成繊維の成形時に練り込み、プラスチック成形品や繊維製品等の表面に付着した細菌を死滅させたりその増殖を抑制するために使用され、あるいはコーテング材料中に分散させてプラスチック成形品、繊維製品、木工製品、紙製品、セラミック製品等各種の成形物に塗布し、その表面に抗菌性さらには又防かび性や防藻性を付与するなどの目的で使用されている。
本発明の無機抗菌剤は、これら抗菌、防黴、防藻製品の製造に有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から無機系の抗菌剤として、銀や銅等の抗菌性金属をアパタイト、ゼオライト、ガラス、リン酸ジルコニウム、シリカゲル等に担持させたものが知られている。これらは有機系の抗菌剤と比較して安全性が高いうえ、溶出し難く、揮発及び分解しないため抗菌効果の持続性が長く、しかも耐熱性にすぐれる特長を有している。そのため、これらの抗菌剤は各種高分子化合物に混合することにより、繊維、フィルム又は各種成形体等の抗菌性樹脂製品の製造に、広い用途で用いられている。
【0003】
中でも、ガラス中に銀、銅又は亜鉛等の抗菌性金属を含有させたガラス系抗菌剤は、粒度の調節が容易であり、ガラス成分の組成を種々変更させることによって屈折率及び抗菌性金属の溶出速度等を目的に応じて容易に制御することができるという特性を有している。
【0004】
銀を含有するガラスからなる抗菌剤に関し特公平4−74453号公報、銀又は銅を含有するガラスからなる抗菌剤に関し特開平2−307968号公報および亜鉛を含有するガラスからなる抗菌剤に関し特開平7−257938号公報において各発明が提案されている。
しかし、従来の銀含有ガラスからなる抗菌剤は、抗菌効果が高い利点を有する反面、樹脂に練り込み加工する際に加えられる熱や成形後の紫外線暴露等の影響で、樹脂加工製品が変色したり、樹脂自体が変質する等の劣化が起こりやすいという問題があった。
【0005】
また、銅含有ガラスからなる抗菌剤は青く着色しており、これを練り込み加工した樹脂成形品をも青変させてしまうため、白色・淡色製品への使用が困難であり、それ以外の色彩の製品でも色合わせに支障をきたす等使用範囲が限定される問題があった。
さらにまた、銅または亜鉛を含有するガラスからなる抗菌剤は、銀を含有するガラスと比較して抗菌性が低いため、樹脂組成物において抗菌効果を十分発揮させようとすると、樹脂への添加量を多くせざるを得ず、本来の樹脂物性を低下させてしまう問題があった。
【0006】
これらの問題を解決するために、P2O5を40〜55モル%、ZnOを35〜45モル%、Al2O3を5〜15モル%、B2O3を1〜10モル%含むガラス100重量部に対して、Ag2Oを0.01〜1.0重量%含有する抗菌剤が提案されている(特開平8−175843号公報)。しかし、この抗菌剤の抗菌性能を高めるため加えられているAg2Oは、銀イオンに起因する変色を抑制するために添加量が制限されている点で、抗菌性が今一歩である。また、ここで用いたガラスは、抗菌性金属(Zn)の溶出速度が大きく、初期の抗菌性は高いものの、抗菌効果の持続性が十分ではない。
【0007】
また、特開平11−29343号公報には、ZnO−B2O3−SiO2系(ZnO 25〜80モル%、B2O3 5〜50モル%、SiO2 1〜70モル%であり、実施例1〜9におけるこれら3成分の合計は72.5〜100モル%である。)の組成からなり、Na2Oの含有量が4モル%以下である抗菌性ガラス粉末が提案されている。Na2Oを含有量を4モル%以下にすることにより、ガラス粉末を混合した樹脂製品の外観、すなわちざらつき感や経時的な光沢の低下を改善しようとするものである。その反面で結合力の低いガラス網目修飾成分であるアルカリ金属イオンを極少量しか含んでいないため、ガラスの溶解性が低く、抗菌性が十分ではない。。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、樹脂に配合して優れた抗菌性を発揮すると共に耐変色性、耐水性、外観にも優れたガラスからなる抗菌剤を提供することを課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ZnOを極めて高濃度で含有するとともに、SiO2、B2O3及び、アルカリ金属酸化物を特定濃度含有するケイ酸塩系ガラスは、抗菌性が高く、また、懸念される耐変色性、耐水性にも優れ、上記の課題をことごとく解消する優れた抗菌剤であることを見出し、本発明を完成させるに到った。
即ち、本発明は、ZnOを54〜60モル%、B2O3を25〜32モル%、SiO2を7〜12モル%、アルカリ金属酸化物を5〜8モル%を含有するガラスからなる抗菌剤である。
以下、本発明における上記ガラスを抗菌ガラスという。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
○抗菌ガラス
本発明の抗菌ガラスは、ZnOを54〜60モル%、B2O3を25〜32モル%、SiO2を7〜12モル%、アルカリ金属酸化物を5〜8モル%を含有するガラスである。
一般にガラスに含まれる酸化物成分は、骨組みとなるガラス網目を形成する成分とそのすきまに位置する網目修飾成分及び両者の中間的成分とに分けられることが知られている。
本発明の抗菌ガラスにおいて、ガラス網目形成成分であるB203とSiO2は主として安定したガラス骨格を保つために作用し、中間成分であるZnOは、主として抗菌作用の発現に寄与し、網目修飾成分であるアルカリ金属酸化物は、ガラスの溶融や成形性を容易にし、溶解性の調整などに寄与すると考えられる。
好ましいZnOの含有割合は、55〜58モル%である。B2O3の好ましい含有割合は26〜29モル%であり、SiO2の好ましい含有割合は8〜11モル%であり、アルカリ金属酸化物の好ましい割合は6〜8モル%である。
【0011】
ZnO、B2O3、SiO2及びアルカリ金属酸化物の好ましい含有割合は、それぞれの成分ごとに決まるのではなく、ZnO、B2O3、SiO2及びアルカリ金属酸化物の4成分が上記の特定割合の時のみ、抗菌性が高く、耐変色性、耐水性にも優れるのである。これらの範囲をはずれた場合、抗菌力が不十分であったり、抗菌剤を添加した樹脂成型品の耐水性や耐変色性が低下したりする。
【0012】
すなわち、本発明のガラス中のZnOの含有割合は54〜60モル%であるが、54モル%未満では抗菌性が低下し、60モル%を超えると安定したガラス網目が形成しにくい。P2O5の含有割合は20〜35モル%であるが、20モル%未満では安定したガラス網目が得られず、25モル%を超えるとガラスの耐水性が損なわれる。またアルカリ金属酸化物の含有割合は5〜15%であるが、5モル%未満ではガラスの溶解性が小さくなりすぎ十分な抗菌性が発現できず、15モル%を超えると逆に溶解性が大きすぎ耐水性が損なわれる。
本発明の抗菌ガラスに含まれるアルカリ金属の好ましい例としてLi、Na、K等があるが、Naが特に好ましい。
【0013】
本発明における抗菌ガラスに含まれるガラス網目形成成分は、SiO2が必須であるが、所望によりその他のガラス網目形成成分をも一部追加することができる。SiO2以外のガラス網目形成成分の好ましい例として、ZrO2、TiO2、P2O5、Al2O3等がある。本発明の特徴である優れた抗菌性、耐水性、耐変色を損なわないために、SiO2以外のガラス網目形成成分の含有割合は、合計で5モル%以下が好ましい。
【0014】
本発明の抗菌ガラスを樹脂に配合する際、通常粉末状とし、一般的には平均粒径で20μm以下のものが樹脂への分散加工上好ましく、繊維製品や塗料、フィルム等に加工する場合には、物性低下を生じさせないために平均粒径5μm以下、最大粒径20μm以下のものが好ましい。
【0015】
本発明の抗菌ガラスを製造する方法に制限はなく、既知の製造方法を採用できる。一般には、ガラスの原料調合物を溶融釜で1000〜2000℃で溶融した後、溶融物を急冷して、ガラスを調製後、得られた塊状ガラスを粉砕することにより粉末状のガラスを容易に得ることができる。
【0016】
本発明の抗菌ガラスは、格段に優れた抗菌性を発揮させるように、従来のガラス系抗菌剤に比較すると酸化亜鉛(融点:約2000℃)を多量に含んでいるため、ガラス網目骨格を形成し難い性質をもつが、適当な溶融温度を選択し、溶融物の冷却特性に合った急冷手段を用いることによって、本発明の組成を有するガラスを得ることができる。
【0017】
急冷効果を高めるには、溶解物と冷却体との接触面積を大きくすることが有効であり、例えば水等の冷媒で冷却された2個の回転する金属ローラー間にガラスの溶解物を高速で通すことにより、極めて大きな冷却効果が得られ、この冷却方法を用いれば、ガラス化は極めて容易である。又、この方法により冷却すると、ローラー間から出たガラスは薄い板状に成形されているので、粉末状に粉砕することも極めて容易に行うことができる。
【0018】
本発明の抗菌ガラスを樹脂や繊維に練り込んだ場合、抗菌性能は樹脂成形品や繊維の表面に存在する抗菌剤により発現するが、摩擦、洗浄、洗濯等により抗菌ガラスが表面から脱落することがある。脱落が著しい場合には抗菌効果が低下し、極めて短期間に効果が消失してしまう例もある。
本発明の抗菌ガラスを樹脂等に練り込み加工する場合に、密着性や接着性を向上させ、脱落を防止するためには、シランカップリング剤等により抗菌ガラス自体の表面処理をすることが好ましい。
【0019】
本発明の抗菌ガラスの性能向上のため用いられる表面処理剤は、用途や樹脂の種類、加工方法等により適宜最適なものを選択すればよく、従来より無機粉体の表面処理用のカップリング剤として使用されているものはいずれも使用可能であり、特に制限はない。
表面処理剤の具体例としてビニルトリエトキシシランやビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシランやγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシシランあるいはグリシドキシラン、テトラエトキシシラン、シリコーンオイル、テトライソプロポキシチタン、アルミニウムエチラート等が挙げられる。
表面処理の方法は、特に制限はなく、従来より無機系紛体の表面処理法として知られているいかなる方法、例えば、乾式法、湿式法、スプレー法、ガス化法等が使用できる。
【0020】
本発明の抗菌ガラスを各種樹脂に配合することにより、抗菌性樹脂組成物を容易に得ることができる。使用できる樹脂の種類に制限はなく、天然樹脂、合成樹脂、半合成樹脂のいずれであってもよく、また熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。具体的な樹脂としては成形用樹脂、繊維用樹脂、ゴム状樹脂のいずれであってもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアセタ−ル、ポリカ−ボネイト、PBT、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタンエラストマ−、ポリエステルエラストマ−、メラミン、ユリア樹脂、四フッ化エチレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、レ−ヨン、アセテ−ト、アクリル、ポリビニルアルコ−ル、キュプラ、トリアセテ−ト、ビニリデン等の成形用又は繊維用樹脂、天然ゴム、シリコ−ンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム、ブタジエンゴム、合成天然ゴム、ブチルゴム、ウレタンゴムおよびアクリルゴム等のゴム状樹脂がある。
【0021】
抗菌性樹脂組成物中に含まれる抗菌ガラスの好ましい配合割合は、抗菌性樹脂組成物100部当たり0.01〜10部、より好ましくは0.1〜5部である。0.01部より少ないと抗菌性樹脂組成物の抗菌性が不充分となる恐れがあり、一方10部より多く配合しても抗菌効果のそれ以上の向上はほとんどない。
成形時、抗菌ガラスの分散性を高めるため、抗菌ガラスと樹脂の混合物をそのまま成形機に投じることをせず、抗菌ガラスを最終製品中の濃度より高濃度となるよう樹脂を予め混合したマスターバッチといわれる中間製品を調製し、このマスターバッチと抗菌ガラスを配合していないストレート樹脂とを成形機に投入することによって抗菌性成形物を得ることが好ましい。この場合マスターバッチ中の本発明に係る抗菌ガラスの好ましい配合割合は、マスターバッチ100重量部当たり10〜200重量部、より好ましくは10〜40重量部である。
【0022】
本発明の抗菌ガラスを樹脂に配合する際、樹脂への練り込み加工性やその他の物性を改善するために、必要に応じて種々の添加剤を樹脂に混合することができる。
添加剤の具体例としては顔料、染料、酸化防止剤、耐光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、耐衝撃強化剤、ガラス繊維、金属石鹸、防湿剤及び増量剤、カップリング剤、流動性改良剤、消臭剤、木粉、防汚剤、防錆剤などがある。
本発明の抗菌ガラスはそれ自身単独で用いることができるが、抗菌性を一層高めるため他の無機系抗菌剤と併用することができる。特に銀系無機抗菌剤との併用は、本発明の抗菌ガラス中の亜鉛イオンと銀系無機抗菌剤中の銀イオンとの相乗効果によって、抗菌効果の向上が著しい。
【0023】
本発明の抗菌ガラスに有機系抗菌・防カビ剤を併用することにより、抗菌性能の速効効果を発揮したり、抗菌・防カビ効果の向上を図ることもできる。
本発明の抗菌ガラスに併用する有機系抗菌防カビ化合物の好ましい例として、第4アンモニウム塩系化合物、脂肪酸エステル系化合物、ビグアナイド類化合物、ブロノポ−ル、フェノ−ル系化合物、アニリド系化合物、ヨウ素系化合物、イミダゾ−ル系化合物、チアゾ−ル系化合物、イソチアゾロン系化合物、トリアジン系化合物、ニトリル系化合物、フッ素系化合物、キトサン、トロポロン系化合物及び有機金属系化合物(ジンクピリチオン、OBPA)等がある。
【0024】
本発明の抗菌ガラスを樹脂へ配合する方法は公知の方法が採用できる。例えば、▲1▼抗菌ガラスの粉末を、添着剤や分散剤とともに、ペレット状またはパウダー状の樹脂にミキサーで直接混合する方法、▲2▼押し出し成形機により抗菌ガラスと樹脂を含むペレット状組成物を予め成形した後、そのペレット状組成物を抗菌ガラスを含まないストレート樹脂に混合する方法、▲3▼ワックスと高濃度の抗菌ガラスを含むペレット状組成物を成形後、そのペレット状成形物を抗菌ガラスを含まないストレート樹脂に配合する方法、▲4▼抗菌ガラスをポリオ−ル等の高粘度液状物に分散混合したペ−スト状組成物を抗菌ガラスを含まないストレート樹脂に配合する方法等がある。
【0025】
上記で得られた抗菌ガラスと樹脂とからなる配合物の成形には、各種樹脂の特性に合わせてあらゆる公知の加工技術と機械が使用可能であり、成形は適当な温度で加熱し又は適当な圧力で加圧もしくは減圧しながら常法により行えば良く、成形物の形態は塊状、スポンジ状、フィルム状、シート状、糸状又はパイプ状或いはこれらの複合体等の種々の形態が可能である。
【0026】
この様にして得られた抗菌性樹脂成形体は、優れた抗菌性と耐変色性を有する本発明の抗菌ガラスが配合されているため、抗菌性が高く成形時及びその後の保存中又は使用中に劣化、変色することがない。
【0027】
本発明の抗菌ガラスの使用形態には特に制限はなく、上述のように樹脂に混合して使用する以外に、そのまま粉末状、粒状で用いることができる他、用途に応じて適宜他の成分と混合したり、他の材料と複合させ、例えば、液状分散体や塗料状にしたりエアゾ−ル状等の種々の形態で用いることができる。
【0028】
○用途
本発明の抗菌ガラスは、抗菌、防かび、及び防藻を必要とされる種々の分野で利用することが出来る。具体的用途としては、例えば、食器洗浄機、食器乾燥機、冷蔵庫、洗濯機、ポット、テレビ、パソコン、CDラジカセ、カメラ、ビデオカメラ、浄水器、炊飯器、野菜カッタ−、レジスタ−、布団乾燥器、FAX、換気扇、エアコンデョナ−等の電化製品、食器、まな板、押し切り、トレ−、箸、旧茶器、魔法瓶、包丁、おたまの柄、フライ返し、弁当箱、しゃもじ、ボ−ル、水切り篭、三角コ−ナ−、タワシいれ、ゴミ篭、水切り袋等の台所用品、シャワ−カ−テン、布団綿、エアコンフィルタ−、パンスト、靴下、おしぼり、シ−ツ、布団側地、枕、手袋、エプロン、カ−テン、オムツ、包帯、マスク、スポ−ツウェア等の繊維製品、化粧板、壁紙、床板、窓用フィルム、取っ手、カ−ペット、マット、人工大理石、手摺、目地、タイル、ワックス等の住宅・建材製品、便座、浴槽、タイル、おまる、汚物いれ、トイレブラシ、風呂蓋、軽石、石鹸容器、風呂椅子、衣類篭、シャワ−、洗面台等のトイレタリー製品、薬包紙、薬箱、スケッチブック、カルテ、折り紙等の紙製品、人形、ぬいぐるみ、紙粘土、ブロック、パズル等の玩具、靴、鞄、ベルト、時計バンド、内装、椅子、グロ−ブ、吊革等の皮革製品、ボ−ルペン、シャ−プペン、鉛筆、消しゴム、クレヨン、用紙、手帳、フロッピ−ディスク、定規、ポストイット、ホッチキス等の文具、その他にもインソ−ル、化粧容器、タワシ、化粧用パフ、補聴器、楽器、タバコフィルタ−、掃除用粘着紙シ−ト、吊革握り、スポンジ、キッチンタオル、カ−ド、マイク、理容用品、自販機、カミソリ、電話機、体温計、聴診器、スリッパ、衣装ケ−ス、歯ブラシ、砂場の砂、食品包装フィルム、スプレ−等の製品がある。
【0029】
【作用】
本発明の抗菌ガラスが優れた抗菌性、耐変色性を有する機構については、以下のように推定される。
ZnO-SiO2系ガラスは結晶を生成し易いので、ガラス状態としての安定性を得るためにB2O3の添加が必要である。ZnO-B2O3-SiO2系のガラスは、一般的によく知られており、電子材料等で用いられている。これらのガラスにはZnOを高濃度含有しているが十分な溶解性がないため抗菌性能が発揮されず抗菌剤には適さない。しかしながら、本発明の抗菌ガラスにはアルカリ金属が適度に加えられているため、適当な溶解性が生じ、抗菌剤として優れたガラスが得られる。即ち、本発明における抗菌ガラス中に含まれる高濃度のZnイオンが、特定量のアルカリ金属酸化物の存在によって、適度の速度で溶解するため、抗菌性が高く抗菌性の持続性も高いという特長を有しているのである。
また銀を含まず、アルカリ分が過剰に含まれていないため、高温で樹脂と混合し成形した際や、成形物に光が照射された際にも変色が生じ難く耐変色性を有するのである。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
○ 実施例1(抗菌ガラスの調製)
表1に示した組成(抗菌ガラスNo.A,B)の原料調合物を1000〜1400℃で加熱溶融した後冷却し、得られたガラスをボ−ルミルにて粉砕して平均粒径約8μのガラスからなる粉末状の抗菌剤を得た。
【0031】
○ 実施例2
実施例1で得た抗菌ガラスNo.A 5kgをヘンセルミキサーに入れ、攪拌しながらγ−アミノプロピルトリメトキシシラン50gを含むエタノール溶液200gを噴霧し、取り出した後、120℃で12時間加熱処理することにより表面処理を行なった(処理後の抗菌ガラスを試料No.Cという)。
【0032】
○ 比較例1(抗菌ガラスの調製)
実施例1における抗菌ガラスNo.A,Bの代わりに、実施例1と同様の方法により、表1記載の組成をもつ抗菌ガラスD〜Fを調製した。
【0033】
【表1】
【0034】
○試験例1
微粒子シリカを配合したイソフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対して、実施例1、実施例2及び比較例1にて調製した各種抗菌剤(抗菌ガラスNo.A〜F)を各々1.0重量部添加、混合した後、さらに硬化剤としてメチルエチルケトンパーオキサイド、及び硬化促進剤としてナフテン酸コバルトを各々に所定量添加し、ゲルコート用塗料組成物No.1〜6を得た。比較として抗菌ガラスを配合しない塗料組成物No.7を調製した。成型型の内側にスプレーガンにより上記の塗料組成物を厚さが約0.5mmとなるように塗布し、室温で硬化させた。引き続き水酸化アルミニウムを50重量%含有するイソフタル酸系不飽和ポリエステル基材樹脂組成物を型内に注入、室温で硬化、脱型させることによりゲルコート層を表面に有する人工大理石成型体を得た。作製した成型体の色彩を目視で確認することで外観評価とした。
【0035】
また、作製した成型体の抗菌力を、以下の方法により評価した。抗菌性人工大理石成型体を5cm×5cmに切断し人工大理石サンプルとした、サンプル1枚当りの菌数が105〜106個となるように黄色ブドウ球菌液0.5mlをサンプル表面に滴下し、その上から4.5cm×4.5cmのポリエチレン製フィルムを被せ表面に一様に接触させ、温度35℃、湿度95RH%で24時間保存した。保存開始から0時間後(理論添加菌数)及び24時間保存した後に、菌数測定用培地(SCDLP液体培地)にサンプル上の生残菌を洗い出し、この洗液について、普通寒天培地を用いる混釈平板培養法(37℃2日間)により生菌数を測定して、サンプルプレートの5cm×5cm当りの生菌数に換算した。なお、初発菌数は2.2×105であり、サンプルに接触させずに同様の操作を行った24時間後の対照菌液中の菌数は2.5×105であった。さらに、試験片を、50℃の温水に500時間浸漬させた後の外観、及び90℃の温水に16時間浸漬させた後の抗菌力を評価した。上記の試験の結果を合わせて表2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】
【発明の効果】
本発明の抗菌ガラスは、優れた抗菌性、耐変色性及び耐水性を有しており、抗菌効果を長時間持続させることができる抗菌剤として極めて有用である。 又、本発明の抗菌ガラスを樹脂に配合し成形した抗菌性樹脂成型体は、成形加工時および長期間の保存時及び使用時における変色等外観劣化が極めて少なく、かつ安定した抗菌効果を示す優れた抗菌性製品となる。
Claims (2)
- 構成成分の合計量を基準として、
ZnOを54〜60モル%、
B2O3を25〜32モル%、
SiO2を7〜12モル%、
Na 2 Oを5〜8モル%を含有する
ガラスからなる抗菌剤。 - 請求項1記載の抗菌剤と樹脂とからなる抗菌性樹脂成形体。
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