JP4005393B2 - 抗菌効果に優れる銀系ガラス質抗菌剤の製造方法 - Google Patents

抗菌効果に優れる銀系ガラス質抗菌剤の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は銀および亜鉛を含有するガラス質抗菌剤およびその製造方法に関する。
本発明の抗菌剤は、抗菌効果に優れ、且つ加工時、保存時及び使用時に経時的に変色が極めて少なく、各種の樹脂に配合して、防かび性、防藻性及び抗菌性を有する抗菌性樹脂組成物とし、これを加工して繊維製品、塗料製品、成形製品等に使用可能なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から無機系の抗菌剤として、銀や銅等の抗菌性金属をアパタイト、ゼオライト、ガラス、リン酸ジルコニウム、シリカゲル等に担持させたものが知られている。これらは有機系の抗菌剤と比較して、安全性が高いうえ、揮発及び分解しないため抗菌効果の持続性が長く、しかも耐熱性にすぐれる特徴を有している。そのため、これらの抗菌剤と各種高分子化合物とを混合して得られた抗菌性樹脂組成物を用いて繊維状、フィルム状又は各種成形体等に加工した抗菌加工製品として、各種用途に用いられている。
【0003】
なかでも、銀、銅および亜鉛等の抗菌性金属を含有するガラス質抗菌剤は、ガラスの粒度、屈折率及び抗菌性金属の溶出性等を目的に応じて容易に制御することができる特性を活かし、各種用途の抗菌性樹脂組成物中に配合され、利用されている。
【0004】
例えば、銀を含有するガラス質抗菌剤として特公平4−74453号が提案され、亜鉛を高濃度で含有するガラス質抗菌剤として特開2001−26438号が提案されている。
しかし、従来の銀を含有するガラス質抗菌剤(銀系ガラス質抗菌剤とも称する)は、銀含有量が比較的低濃度でも抗菌効果が高い利点を有する反面、樹脂に練り込み加工する際の熱や樹脂加工後の紫外線暴露等の影響で、樹脂自体の変質や劣化を促進したり、樹脂加工製品が変色するなど、樹脂加工製品の本来の優れた特性を損なうことが多いという問題があった。また、抗菌性成分として銀のみを含有したガラス質抗菌剤は、ABS樹脂やアクリル樹脂等の特定の樹脂に対して練り込み加工した場合、抗菌効果が発現しにくいことがあった。
【0005】
一方、亜鉛のみを高濃度で含有したガラス質抗菌剤は、樹脂に練り込み加工した際に樹脂の変質、劣化および変色は殆どないものの、銀を含有するガラスと比較して抗菌性が低い場合があり、樹脂組成物において抗菌効果を十分発揮させようとすると、樹脂への添加量を多くせざるを得ず、やはり本来の樹脂物性を低下させてしまう問題があった。
【0006】
これらの問題を解決できる抗菌剤として、銀および亜鉛を同時に含有するガラス質抗菌剤が提案されている。
例えば、特開2000−191339号公報には、Ag2Oを0.2〜5重量%、ZnOを1〜50重量%、P25を30〜80重量%、CaOを1〜20重量%、CeO2を0.1〜5重量%含有するガラス質抗菌剤が提案されている。また、特開2000−281380号公報には、B23を20〜50重量%、ZnOを50〜80重量%、アルカリ土類金属酸化物を10重量%以下、Ag2Oを2重量%含有する溶解性ガラス質抗菌剤が提案されている。
【0007】
しかし、Ag2Oを含有しP25を主成分とするガラス質抗菌剤は、耐温水性に劣ることが知られている。たとえば、このような抗菌剤を樹脂に練り込み加工した樹脂加工製品を50℃を超える温度の熱水等に長時間浸漬すると樹脂加工製品が変色したり製品表面が腐食されてザラザラに荒れる問題があった。一方、B23を主成分とするガラスは硬度が硬いため、樹脂に練り込み加工する際に用いる混合機や樹脂成形機の金属表面を研磨し、削れた金属粉が樹脂組成物中に混合することによって、最終樹脂製品を暗色化するという問題が生じる。また、B23も多量にガラスに含有させると、P25同様に耐温水性に劣ることに起因する問題が生じることがあった。
【0008】
様々な樹脂の加工製品に対応できるような高い抗菌効果を発現するためには、できるだけ高濃度で亜鉛を含有し、さらに銀を適量含有するガラス組成が有効である。しかし、ガラス骨格形成成分であるP25およびB23をできるだけ低濃度に保たなければ、相対的にZnO濃度を多く含有することができないうえ、樹脂加工製品に配合した際の耐温水性や変色性、硬度などの不具合を解決することはできない。また、高濃度に亜鉛を含有し、さらに還元されやすい銀を配合した組成物は非常にガラス化しにくく、ガラス骨格形成成分を低濃度に保ちながら高性能の抗菌剤を得ることは容易ではなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、様々な樹脂に配合して高い抗菌性を発揮すると共に耐変色性、耐温水性等にも優れたガラス質抗菌剤を提供することを課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ZnOを高濃度で含有し、さらにAg2O、SiO2、B23、アルカリ土類金属酸化物およびNa2Oの含有量を適度に調製した特定の組成のガラス質抗菌剤が高い抗菌効果を有しており、耐温水性および耐変色性にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
○抗菌剤
本発明の抗菌剤は、Ag2Oを0.1〜5質量%、ZnOを60〜70質量%、SiO2を5〜10質量%、B23を15〜20質量%、アルカリ土類金属酸化物を1〜10質量%、Na2Oを6〜15質量%含有するガラス質抗菌剤である。
【0012】
本発明のガラス質抗菌剤中で抗菌性能を付与する成分であるAg2Oの含有割合は、0.1〜5質量%であり、好ましくは0.5〜2質量%である。Ag2Oは5質量%より多く配合すると、ガラス化しなかった金属銀によりガラスを着色させやすいうえ、ガラス化が極めて難しい。一方、Ag2Oが0.1質量%より少ないと本発明のガラスの抗菌性が不十分となる場合がある。
【0013】
本発明のガラス質抗菌剤中でAg2Oとともに抗菌性能を付与する成分であるZnOの含有割合は、60〜70質量%であり、好ましくは61〜66質量%である。ZnOを70質量%より多く配合すると、ガラス化が極めて難しくなる。一方、ZnOが60質量%より少ないと本発明のガラスの抗菌性が不十分となる場合がある。
【0014】
本発明のガラス質抗菌剤中のSiO2成分はガラスの骨格を形成する成分であり、本発明のガラス中のSiO2の含有割合は5〜10質量%であり、好ましくは6〜8質量%である。SiO2を10質量%より多く配合すると、これを配合した樹脂加工製品の抗菌性、特に耐水性試験後の抗菌性が発現しにくくなる。即ち、耐水性が悪いものとなる場合が有る。一方、SiO2が5質量%より少ない場合には、ガラス化が困難となる場合がある。
【0015】
本発明のガラス質抗菌剤中のB23成分はガラスの骨格を形成する成分であり、本発明のガラス中のB23の含有割合は15〜20質量%であり、好ましくは16〜18質量%である。B23を20質量%より多く配合すると、これを配合した樹脂加工製品の色彩が黒ずみ暗色化する傾向がある。さらに抗菌性、特に温水または熱水処理後の抗菌性が発現しにくくなる。一方、B23が15質量%より少ない場合には、ガラス化が困難となる場合がある。
【0016】
本発明のガラス質抗菌剤中のNa2Oの含有割合は6〜15質量%であり、好ましくは7〜11質量%である。Na2Oを15質量%より多く含有するガラスは相対的に抗菌成分であるZnOなどの割合を低下させることで抗菌効果が発現しにくくなったり、B23およびSiO2のガラス骨格形成成分の割合を低下させることでガラス化が困難となる。一方、Na2Oが6質量%未満では抗菌効果が不十分となる場合がある。
【0017】
本発明のガラス質抗菌剤中のアルカリ土類金属酸化物にはMgO、CaO、SrOおよびBaOなどがあげられ、ガラス化のしやすさおよびガラス自体の耐着色性を考慮すると好ましくはBaOである。ガラス質抗菌剤中のアルカリ土類金属酸化物の含有割合は1〜10質量%であり、好ましい割合は3〜7質量%である。アルカリ土類金属酸化物が10質量%より多く含有するガラスは抗菌成分であるZnOなどの割合を低下させることで抗菌効果が発現しにくくなったり、B23およびSiO2のガラス骨格形成成分の割合を低下させることでガラス化が困難となる。一方、アルカリ土類金属酸化物が1質量%未満でもガラス化が困難となる場合がある。
【0018】
本発明におけるガラス質抗菌剤は、ガラス骨格形成成分が少ないためガラス化し難く、特に還元されやすいAg2Oを配合することで着色したりガラス化し難い傾向がある。そこでガラス原料調合物に特定の酸化剤を加えることでAg2Oを還元させにくくし、着色がなくかつ抗菌活性が安定したガラスを調製することが可能となった。
この酸化剤の好ましい成分は硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸亜鉛、硝酸銀、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム等の硝酸塩、酸化アンチモン、砒素化合物があげられるが、安全性やガラスに残存して影響を及ぼすことがないことから硝酸塩が最も好ましい。酸化剤の配合割合は、ガラス原料調合物100重量部に対して0.5〜15重量部が好ましく、特に好ましくは2〜10重量部である。また、ガラス原料調合物を調製するAg2O、ZnO、SiO2、B23、アルカリ土類金属酸化物、Na2Oなどの各原料にこの酸化剤を入れておいてもよい。
【0019】
本発明における必須のガラス形成成分は、Ag2O、ZnO、SiO2、B23、アルカリ土類金属酸化物およびNa2Oなどであるが、上記各ガラス成分が本発明の組成範囲内であれば、所望によりその他のガラス形成成分を追加することができる。その好ましい例として、ZrO2、TiO2等があり、所望により、Li2OおよびK2O並びにフッ化ナトリウムおよびフッ化アルミニウム等のフッ素化合物等の所謂「修飾成分」も適宜含有させることができる。これらは、ガラスの溶融や成形性を容易にするのに有効であるが、ガラス形成成分も合せて多量に含有させると、ガラスの耐水性が低下したり本発明における特徴が損なわれる恐れがあるので、多くとも2質量%以下とするのが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
【0020】
本発明のガラス質抗菌剤を樹脂に配合するときは、通常粉末状で使用され、一般的には樹脂への分散加工上、平均粒径で20μm以下のものが好ましく、特に繊維製品や塗料、フィルム等に加工する場合には、製品の物性低下を生じさせないために平均粒径5μm以下、最大粒径20μm以下のものが好ましい。
【0021】
本発明のガラス質抗菌剤の製造に当たっては、既知の製造方法を採用できる。一般には、ガラスの原料調合物またはこの原料調合物に酸化剤を加えたものを溶融釜で1000〜2000℃で溶融した後、溶融物を急冷して、得られた塊状ガラスを粉砕することにより所望のガラス粉末を得ることができる。
【0022】
本発明の抗菌剤は、従来と比較して優れた抗菌性を発揮させるために、ZnOの含有量が多く、ガラス骨格形成成分であるSiO2およびB23濃度が従来のガラス質抗菌剤に比較して低いので、ガラス化が難しい。適当な溶融温度で溶解し、溶融物の冷却特性に合った急冷手段を用いる必要があり、冷却スピードが遅いと一部成分が析出して部分的にガラスでなくなり、不均一な組成物となってしまう場合がある。
【0023】
冷却効果を高めるには、溶融物と冷却体との接触面積を大きくすることが有効であり、例えば水等の冷媒で冷却された2個の回転する金属ローラー間にガラスの溶融物を高速で通すことにより、極めて大きな冷却効果が得られ、この冷却方法を用いれば、ガラス化は容易となる。又、この方法により冷却すると、ローラー間から出たガラスは薄い板状に成形されているので、粉末状に粉砕することも極めて容易に行うことができる。
【0024】
本発明の抗菌剤を樹脂に練り込んだ場合、抗菌性能は樹脂成形品の表面に存在する抗菌剤により発現するが、樹脂成形品を摩擦、洗浄または洗濯等を行う際に、この抗菌剤が樹脂成形品の表面から脱落することがある。脱落が著しい場合には抗菌効果が低下し、極めて短期間に効果が消失してしまう場合もある。
本発明の抗菌剤を樹脂等に練り込み加工する場合、抗菌剤と樹脂との密着性または接着性を向上させることによって、抗菌剤の分散性の向上および樹脂組成物表面からの抗菌剤の脱落を防止することができる。この場合は、シランカップリング剤やシリコーンオイル等表面処理剤によりガラス質抗菌剤粉末の表面を処理することが好ましい。
【0025】
本発明に用いられる表面処理剤は、用途や樹脂の種類、加工方法等により適宜最適なものを選択すればよく、従来より無機粉体の表面処理に用いられる処理剤であればいずれも使用可能であり、特に制限はない。
表面処理剤の具体例としてビニルトリエトキシシランやビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシランやγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシシラン又はグリシドキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタン、アルミニウムエチラート等のカップリング剤、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、反応性シリコーン、非反応性シリコーン等のシリコーンオイル等が挙げられる。
【0026】
表面処理の方法は、特に制限はなく、従来より無機系紛体の表面処理法として知られているいかなる方法でもよい。例えば、乾式法、湿式法、スプレー法、ガス化法等がある。効率的な表面処理方法としては、ガラスを粉末状に粉砕する際に塊状のガラスと一緒に表面処理剤を混合したものを粉砕機で粉砕すると表面処理も同時に実施することができる。
【0027】
本発明の抗菌剤は、単独で用いることができるが、他の抗菌剤と併用すると、様々な加工や要求性能に見合うように抗菌性を一層高めることができる。
本発明の抗菌剤と併用する抗菌剤は、有機系の抗菌剤を用いることができるが、銀および/または亜鉛を担持させた無機化合物が好ましい。銀または亜鉛を担持させる無機化合物としては、例えば以下のものがある。即ち、活性アルミナ、シリカゲル等の無機系吸着剤、ゼオライト、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイト等の無機イオン交換体がある。また、酸化亜鉛や本発明のガラス質抗菌剤とはガラス組成の異なるガラス質抗菌剤でも粒径や溶解性等が異なるものを配合することにより抗菌効果がさらに向上する場合もある。
【0028】
本発明の抗菌剤には、樹脂への練り込み加工性やその他の物性を改善するため、必要に応じて種々の添加剤を混合することもできる。具体例としては顔料、染料、酸化防止剤、耐光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、耐衝撃強化剤、ガラス繊維、金属石鹸等の滑剤、防湿剤及び増量剤、カップリング剤、核剤、流動性改良剤、消臭剤、木粉、防汚剤、防錆剤、金属粉、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤などがある。
【0029】
また、有機系抗菌・防カビ剤を添加することにより、効果の速効性、防カビ効果向上をはかることもできる。
本発明の抗菌剤に混合する有機系の抗菌または防カビ化合物の好ましい例として、第4アンモニウム塩系化合物、グリセリン脂肪酸エステル(例えば脂肪酸モノグリセライド)、ビグアナイド類化合物、ブロノポ−ル、フェノ−ル系化合物、アニリド系化合物、ヨウ素系化合物、イミダゾ−ル系化合物、チアゾ−ル系化合物、イソチアゾロン系化合物、トリアジン系化合物、ニトリル系化合物、キトサン、トロポロン系化合物及び有機金属系化合物(ジンクピリチオン、OBPA)等のものがある。
【0030】
本発明の抗菌剤を樹脂と配合することにより抗菌性樹脂組成物を容易に得ることができる。用いることができる樹脂の種類に特に制限はなく、天然樹脂、合成樹脂、半合成樹脂のいずれであってもよく、また熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。具体的な樹脂としては成形用樹脂、繊維用樹脂、ゴム状樹脂のいずれであってもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ABS樹脂、AS樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアセタ−ル、ポリカ−ボネイト、PBT、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタンエラストマ−、ポリエステルエラストマ−、メラミン、ユリア樹脂、四フッ化エチレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、レ−ヨン、アセテ−ト、アクリル、ポリビニルアルコ−ル、キュプラ、トリアセテ−ト、ビニリデン等の成形用または繊維用樹脂、天然ゴム、シリコ−ンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム、ブタジエンゴム、合成天然ゴム、ブチルゴム、ウレタンゴムおよびアクリルゴム等のゴム状樹脂がある。また、本発明の抗菌剤を天然繊維の繊維と複合化させて、抗菌繊維を作製することもできる。
【0031】
本発明の抗菌剤の抗菌性樹脂組成物における配合割合は、抗菌性樹脂組成物100質量部に対して0.03〜5質量部が好ましく、0.05〜2質量部がより好ましい。0.03質量部より少ないと抗菌性樹脂組成物の抗菌性が不十分である場合があり、一方、5質量部より多く配合しても抗菌効果の向上がほとんどなく非経済的な上、樹脂物性の低下が著しくなる場合がある。
【0032】
本発明の抗菌剤を樹脂へ配合し樹脂成形品とする加工方法は、公知の方法がどれも採用できる。例えば、▲1▼抗菌剤粉末と樹脂とが付着しやすくするための添着剤や抗菌剤粉末の分散性を向上させるための分散剤を使用し、ペレット状樹脂またはパウダー状樹脂をミキサーで直接混合する方法、▲2▼前記のようにして混合して、押し出し成形機にてペレット状に成形した後、その成形物をペレット状樹脂に配合する方法、▲3▼抗菌剤をワックスを用いて高濃度のペレット状に成形後、そのペレット状成形物をペレット状樹脂に配合する方法、▲4▼抗菌剤をポリオ−ル等の高粘度の液状物に分散混合したペ−スト状組成物を調製後、このペーストをペレット状樹脂に配合する方法等がある。
【0033】
上記の抗菌性樹脂組成物の成形には、各種樹脂の特性に合わせてあらゆる公知の加工技術と機械が使用可能であり、適当な温度又は圧力で加熱及び加圧又は減圧しながら混合、混入又は混練りの方法によって容易に調製することができ、それらの具体的操作は常法により行えば良く、塊状、スポンジ状、フィルム状、シート状、糸状またはパイプ状或いはこれらの複合体等の種々の形態に成形加工できる。
【0034】
この様にして得られた抗菌性樹脂成形品は、その配合成分である本発明の抗菌剤が優れた抗菌性と耐変色性を有しているため、抗菌剤と樹脂との混合した時、及びその後の抗菌性樹脂組成物の保存または使用時に劣化することがない。
【0035】
本発明の抗菌剤の使用形態には特に制限はなく、樹脂成形品や高分子化合物に配合することに限定されることはない。防黴性、防藻性および抗菌性が必要とされる用途に応じて適宜他の成分と混合したり、他の材料と複合させることができる。例えば、粉末状、粉末分散液状、粒状、エアゾ−ル状等の種々の形態で用いることができる。
【0036】
○用途
本発明の抗菌剤は、防カビ、防藻及び抗菌性を必要とされる種々の分野、即ち電化製品、台所製品、繊維製品、住宅建材製品、トイレタリー製品、紙製品、玩具、皮革製品、文具およびその他の製品として利用することができる。
さらに具体的用途を例示すると、電化製品としては食器洗浄機、食器乾燥機、冷蔵庫、洗濯機、ポット、テレビ、パソコン、CDラジカセ、カメラ、ビデオカメラ、浄水器、炊飯器、野菜カッタ−、レジスタ−、布団乾燥器、FAX、換気扇、エア−コンデショナ−等があり、台所製品としては、食器、まな板、押し切り、トレ−、箸、給茶器、魔法瓶、包丁、おたまの柄、フライ返し、弁当箱、しゃもじ、ボ−ル、水切り篭、三角コ−ナ−、タワシいれ、ゴミ篭、水切り袋等がある。
【0037】
繊維製品としては、シャワ−カ−テン、布団綿、エアコンフィルタ−、パンスト、靴下、おしぼり、シ−ツ、布団カバー、枕、手袋、エプロン、カ−テン、オムツ、包帯、マスク、スポ−ツウェア等があり、住宅・建材製品としては、化粧板、壁紙、床板、窓用フィルム、取っ手、カ−ペット、マット、人工大理石、手摺、目地、タイル、ワックス等がある。またトイレタリー製品としては、便座、浴槽、タイル、おまる、汚物いれ、トイレブラシ、風呂蓋、軽石、石鹸容器、風呂椅子、衣類篭、シャワ−、洗面台等があり、紙製品としては、包装紙、薬包紙、薬箱、スケッチブック、カルテ、ノート、折り紙等があり、玩具としては、人形、ぬいぐるみ、紙粘土、ブロック、パズル等がある。
【0038】
さらに皮革製品としては、靴、鞄、ベルト、時計バンドなど、内装品、椅子、グロ−ブ、吊革等があり、文具としては、ボ−ルペン、シャ−プペン、鉛筆、消しゴム、クレヨン、用紙、手帳、フレキシブルディスク、定規、ポストイット、ホッチキス等がある。
その他の製品としてはインソ−ル、化粧容器、タワシ、化粧用パフ、補聴器、楽器、タバコフィルタ−、掃除用粘着紙シ−ト、吊革握り、スポンジ、キッチンタオル、カ−ド、マイク、理容用品、自販機、カミソリ、電話機、体温計、聴診器、スリッパ、衣装ケ−ス、歯ブラシ、砂場の砂、食品包装フィルム、抗菌スプレ−等がある。
【0039】
○作用
高濃度のZnOおよび適量のAg2Oを含有する本発明のガラス質抗菌剤は高い抗菌効果を有しており、様々な樹脂種類に対応可能な抗菌剤として有用である。特にZnOは広範囲の樹脂種類に効果を発現するとともに黄色ブドウ球菌に対する効果が発現しやすく、Ag2Oは、樹脂種類ではオレフィン系樹脂、菌種では大腸菌に特に効果が発現しやすい傾向があり、この両抗菌成分を有することで高い抗菌効果を発現すると考えられる。しかし、ガラス化するためのガラス骨格形成成分として必要なSiO2およびB23は、高い抗菌効果の発現を阻害する傾向がある。そこで、鋭意検討した結果、これら2成分の配合割合を極力低濃度に抑え、アルカリ土類金属酸化物およびNa2Oを適量配合することで高い抗菌効果を有したガラス質抗菌剤を得ることができた。また、ガラス化しにくく還元されやすいAg2Oをさらにガラス原料配合物に配合するため、これに酸化剤を使用することで安定してガラス質抗菌剤を得ることができるようになった。
【0040】
○実施形態
ガラス質抗菌剤を製造するときのガラス原料配合物100重量部に対して0.5〜15重量部の酸化剤を含有するガラス質抗菌剤の製造方法。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0042】
○実施例1(ガラス質抗菌剤の調製)
表1に示した実施例1の組成からなるガラス原料調合物100質量部に酸化剤として硝酸アンモニウムを2質量部加えたものを1000〜1300℃で加熱溶融した。溶解後冷却し、得られたガラスをボ−ルミルにて乾式粉砕して平均粒径約5μmのガラス質抗菌剤粉末を得た。
【0043】
○実施例2(ガラス質抗菌剤の調製)
表1に示した実施例2の組成からなるガラス原料調合物100質量部に酸化剤として硝酸アンモニウムを2質量部加えたものを1000〜1300℃で加熱溶融した。溶解後冷却し、得られたガラスをボ−ルミルにて乾式粉砕して平均粒径約5μmのガラス質抗菌剤粉末を得た。
【0044】
○比較例1〜7
比較例1〜5は、表1に示した組成の各原料調合物を用いた以外は実施例1と同様の製造方法を行いガラス質の粉末を得た。
また、比較例6および7は、表1に示した組成の原料調合物を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い製造を試みたが、ガラス化しなかった。
【0045】
○比較例8
比較例8は、酸化剤を含まない以外は実施例2の組成と同じで、これと同様の製造操作を行ったが、部分的にしかガラス化せず、しかもガラス化した所が着色していた。
【0046】
【表1】
Figure 0004005393
【0047】
○実施例3(試験用成形プレートの調製、着色性、抗菌性試験、耐水性試験)
テクノポリマー株式会社製透明性ABS樹脂(商品名JSR55)、三菱レイヨン株式会社製アクリル樹脂(商品名アクリペットVHS)およびグランドポリマー株式会社製ポリプロピレン樹脂(グランドポリプロJ105)に対し、実施例1、2及び比較例1〜5で得たものを0.5質量%配合し、名機製作所株式会社製射出成形機M−50AII−DMを用いて成形温度240℃で射出成形し、11cm×11cm×1mmの評価用成形プレート(試作No.1〜21)を作製した。
【0048】
比較のため、ガラスを一切配合せずABS樹脂のみ、アクリル樹脂のみまたはポリプロピレン樹脂のみで比較用成形プレート(試作No.ア、イ、ウ)を同様に射出成形した。
また、作製した各種樹脂成形プレートの着色性を目視で観察した。さらに、同成形プレートの抗菌力(初期抗菌効果)を、JIS Z2801に準拠して評価した。抗菌力評価方法の具体的な操作は以下のようである。
【0049】
各種樹脂成形プレートを5cm×5cmに切断し、その表面をエタノールで拭いたものを評価用検体とした。被検菌には大腸菌および黄色ブドウ球菌を用い、普通ブイヨン培地を精製水を用いて500分の1に希釈した溶液に菌数が2.5〜10×105個/mlとなるように調整したものを接種用試験菌液として用いた。接種用試験菌液0.4mlを検体表面に滴下し、その上から4.0cm×4.0cmのポリエチレン製フィルムを被せ、表面に一様に接触させ、温度35℃、湿度95RH%で24時間保存した。保存開始から0時間後(理論添加菌数)及び24時間保存した後に、菌数測定用培地(SCDLP液体培地)10mlで検体上の生残菌を洗い出し、この洗液について、標準寒天培地を用いる混釈平板培養法(37℃2日間)により生菌数を測定して、検体1枚当りの生菌数に換算した。上記のようにして得られた抗菌評価結果を、各成形プレートの生菌数の対数値と各樹脂の比較用成形プレートNo.ア、イまたはウの生菌数の対数値との差である増減値差で表記し、表2に示した。増減値差は値が大きいほど抗菌効果が高いことを示している。なお、理論添加菌数は検体1枚あたり大腸菌は2.4×105、黄色ブドウ球菌は3.1×105、比較用成形プレートNo.アの大腸菌および黄色ブドウ球菌の生菌数は各々、2.0×107、2.0×105、No.イの大腸菌および黄色ブドウ球菌の生菌数は各々、1.9×107、2.2×105、No.ウの大腸菌および黄色ブドウ球菌の生菌数は各々、2.1×107、3.3×105であった。
【0050】
○熱水処理後の抗菌効果
50℃のイオン交換水に16時間浸漬後の成形プレートを検体として用い、同様に抗菌力を評価し、この結果を表2に示した。初期効果と比較し、耐水性試験後の抗菌効果の低下度合いにより抗菌効果の耐久性を判定した。
【0051】
【表2】
Figure 0004005393
【0052】
本発明の実施例1および2のガラスからなる抗菌剤を配合した成形プレート(試作No.1、2、8、9、15および16)は抗菌性、耐着色性とも優れた性能を有していた。
本発明の抗菌剤に比べ、Ag2Oを含有しない比較例1のガラスからなる抗菌剤を配合した成形プレート(試作No.3、10および17)は、抗菌効果がやや劣り、特にポリプロピレン樹脂(試作No.17)に対する初期抗菌効果および耐水試験後の効果が低下していた。
ZnO含有量がやや低くSiO2とB23を多く含有する比較例2、3及び4のガラスからなる抗菌剤を配合した成形プレート(試作No.4〜6、11〜13および18〜20)も抗菌効果がやや劣り、特にABS樹脂およびアクリル樹脂(試作No.4〜6および11〜13)に対する初期抗菌効果および耐水試験後の効果が低下していた。また、比較例4のガラスからなる抗菌剤を配合した成形プレート(試作No.6、13および20)の色彩は黒ずみが見られ暗色化していた。
【0053】
本発明の抗菌剤とAg2OおよびZnO含有量がほぼ同じであるがSiO2とB23をやや多く含有する配合の比較例5のガラスからなる抗菌剤を配合した成形プレート(試作No.7、14および21)は、抗菌効果がやや低く、かつ耐水試験後の抗菌効果の低下が顕著であった。また、成形プレートの色彩がやや暗色化していた。
【0054】
【発明の効果】
本発明の抗菌剤は、高い抗菌効果を有しており、様々な樹脂種類に対し抗菌効果を長時間持続させることができるとともに耐着色性も有しているため抗菌剤として極めて有用である。また、硝酸塩に代表される酸化剤をガラス原料調合物に配合することにより、銀系ガラス質抗菌剤が容易に製造できるようになった。
本発明の抗菌剤を樹脂に配合することにより、抗菌性、耐変色性及び耐久性に優れた抗菌性樹脂組成物を容易に得ることができる。

Claims (4)

  1. ガラス原料配合物または原料中に酸化剤を含有することを特徴とする、Ag2Oを0.1〜5質量%、ZnOを60〜70質量%、SiO2を5〜10質量%、B23を15〜20質量%、アルカリ土類金属酸化物を1〜10質量%、Na2Oを6〜15質量%含有するガラス質抗菌剤の製造方法。
  2. 酸化剤に硝酸塩を用いることを特徴とする請求項1のガラス質抗菌剤の製造方法
  3. アルカリ土類金属酸化物にBaOを用いることを特徴とする請求項1に記載のガラス質抗菌剤の製造方法。
  4. 酸化剤に硝酸塩を用いることを特徴とする請求項3のガラス質抗菌剤の製造方法。
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