JP3963671B2 - 耐久性に優れる抗菌剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は亜鉛と珪素を含有する抗菌性リン酸塩系ガラス及び特定の抗菌性リン酸塩化合物からなる抗菌剤組成物に関する。
本発明の抗菌剤組成物は、抗菌性能に優れ、且つ加工時、保存時及び使用時に経時的に変色が極めて少ないため、この抗菌剤組成物を各種樹脂に配合した樹脂組成物を加工することにより、防かび性、防藻性及び抗菌性に優れかつその耐久性を有すると共に、透明性を発揮したり、着色した場合の色彩が鮮やかな繊維製品、塗料製品、成形製品等を得ること可能となる。
【0002】
【従来の技術】
従来から無機系の抗菌剤として、銀や銅等の抗菌性金属をアパタイト、ゼオライト、ガラス、リン酸ジルコニウム、シリカゲル等に担持させたものが知られている。これらは有機系の抗菌剤と比較して安全性が高いうえ、揮発及び分解しないため抗菌効果の持続性が長く、しかも耐熱性にすぐれる特徴を有している。そのため、これらの抗菌剤と各種高分子化合物とを混合し得られた抗菌性樹脂組成物を用いて繊維状、フィルム状又は各種成形体等に加工した抗菌加工製品として、各種用途に用いられている。
【0003】
なかでも、銀、銅又は亜鉛等の抗菌性金属を含有するガラスからなる抗菌剤は、粒度、屈折率及び抗菌性金属の溶出性等を目的に応じて容易に制御することができる特性を活かし、各種樹脂組成物に配合され、利用されている。
【0004】
例えば、銀を含有するガラスからなる抗菌剤として特公平4−74453号が提案され、亜鉛を含有するガラスからなる抗菌剤として特開平7−257938号が提案されている。
しかし、従来の銀含有ガラスからなる抗菌剤は、抗菌効果が高い利点を有する反面、樹脂に練り込み加工する際の熱や樹脂加工後の紫外線暴露等の影響で、樹脂自体の変質や劣化を促進したり、樹脂加工製品が変色するなど、樹脂加工製品の本来の優れた特性を損なうことが多いという問題があった。
【0005】
また従来の亜鉛含有ガラスからなる抗菌剤は、樹脂に練り込み加工した際に樹脂の変質、劣化および変色は極めて少いものの、銀を含有するガラスと比較して抗菌性が低いため、樹脂組成物において抗菌効果を十分発揮させようとすると、樹脂への添加量を多くせざるを得ず、やはり本来の樹脂物性を低下させてしまう問題があった。
【0006】
これらの問題を解決するために高濃度で亜鉛を含有するガラスからなる抗菌剤や、亜鉛や銀を同時に配合したガラスからなる抗菌剤が提案されている。
例えば、特開平11−100227号公報には、P2O5を5〜50モル%、ZnOを46〜80モル%、B2O3+SiO2を0〜30モル%、RO(ROはMgO、CaO、SrO、BaOの中から選ばれる1種以上)を0〜40モル%、R2O(R2OはLi2O、Na2O、K2Oの中から選ばれる1種以上)を0〜20モル%を含むガラスからなる抗菌剤、特開2001−26439号公報には、B2O3を20〜40モル%、ZnOを50〜70モル%、P2O5を1〜5モル%、SiO2を0〜20モル%、アルカリ金属酸化物を0〜1モル%を含むガラスからなる抗菌剤が提案されている。
【0007】
しかし、これらの抗菌剤はいずれも亜鉛を高濃度で含有しているためガラスの屈折率が高くなり、樹脂に練り込み加工した成形品の白色度が増加してしまう。従って、透明性の高い樹脂にこの抗菌剤を配合した場合は樹脂本来の透明性を損ない白濁してしまうため、透明性を必要とする用途の成形品では好ましくない。そして透明性を要する用途以外でも、着色した樹脂成形品に配合した場合に鮮明な色彩が出しにくく、色合わせが難しいなどの問題が生じる。また、B2O3を主成分として含有するガラスはP2O5を主成分として含有するガラスよりも硬度が高いため、このガラス系抗菌剤を樹脂に混合し練り込み加工する際に用いるステンレス製混合機や樹脂成形機の金属表面を研磨し、削れた金属粉が樹脂加工品に混合することによって、最終樹脂製品を暗色化するという問題が生じる。
【0008】
一方、特開平8−175843号公報にはP2O5を40〜55モル%、ZnOを35〜45モル%、Al2O3を5〜15モル%、B2O3を1〜10モル%含むガラス100重量部に対して、Ag2Oを0.01〜1.0重量%含有する抗菌剤が提案されている。しかし、ここに示される抗菌剤において十分な抗菌性を発揮させるために加えられているAg2Oは、銀イオンに起因する変色を抑制するため添加量が制限されており、実質的には抗菌性が満足できるものではない。
さらに、従来のガラス系抗菌剤を樹脂に練り込み加工した樹脂加工製品は、加工直後の抗菌効果は十分あるが、加工製品を使用する際の水や市販洗剤等の薬品に触れることにより効果が極めて低下する問題があり、抗菌効果の耐久性の点では十分でないという問題もあった。
【0009】
他方、銀、銅、亜鉛などの抗菌性金属イオンをリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン等のリン酸塩化合物などを樹脂に配合した抗菌性樹脂組成物が知られている。これらのリン酸塩系化合物からなる抗菌剤は、樹脂に練り込み加工した際に樹脂の変質、劣化および変色は極めて少いもののガラス系抗菌剤と比較して高価であり、かつ樹脂成形体においては、例えば0.1〜1.0wt%のリン酸塩系抗菌剤を、単に混合して成形した場合、その樹脂成形物は本来抗菌剤が有する優れた抗菌性及び耐久性を十分発揮させることができない場合があるという問題点を有しており、少量で抗菌効果を十分させるための改善が望まれていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、樹脂に配合した場合に優れた抗菌性、耐変色性、耐着色性、及び抗菌効果の耐久性に優れたガラスとリン酸塩化合物とからなる抗菌剤組成物を提供することを課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ZnO−P2O5−SiO2系ガラス50〜95質量%と、特定のリン酸塩化合物5〜50質量%からなる抗菌剤組成物は抗菌効果の耐久性に優れ、しかも耐変色性および耐着色性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記のガラス及びリン酸塩化合物はそれぞれ単独でも抗菌剤としての性能を有するものであるが、これらを一定比率で組み合わせることにより、上記問題点を解決する優れた性能を有する抗菌剤組成物であることを見出したものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
○ZnO−P2O5−SiO2系ガラス
本発明の抗菌剤組成物に使用されるZnO−P2O5−SiO2系ガラスは、ZnOを5〜40モル%、P2O5を45〜55モル%、SiO2を1〜30モル%を含有するガラスである。このZnO−P2O5−SiO2系ガラスにおいて、抗菌性能を付与する成分であるZnOの含有割合は、5〜40モル%であり、好ましくは20〜38モル%である。ZnOを40モル%より多く配合すると、ガラスの屈折率が高くなり、このガラスを樹脂に練り込んだ成形品が白く着色し、透明性が低下したり、着色品の色合わせが難しくなる。また、ZnOが40モル%より多いとガラス製造工程中で、安定したガラスが得られにくく、また相対的にP2O5の配合量が減少することによりガラスの溶解性が低下し、結果として本発明の抗菌剤組成物を配合した樹脂加工品の抗菌性能の耐久性が不十分となる問題を生じる。一方、ZnOが5モル%より少ないと本発明のガラスの抗菌性が不十分となる。
【0013】
本発明の抗菌剤組成物に配合されるガラス中のP2O5成分はガラスの骨格を形成する成分である。ガラス中のP2O5の含有割合は45〜55モル%である。P2O5を55モル%より多く配合すると、本発明の抗菌剤組成物に配合されるガラスの吸湿性が高くなって、ガラスが経時的に潮解し、抗菌剤組成物が固化しやすく、粉末として使用できなくなる問題が生じる。一方、P2O5が45モル%より少ないとガラスの溶解性が低下し、抗菌剤組成物を配合した樹脂製品の抗菌性能の耐久性が低下するという問題が起きる。
【0014】
本発明の抗菌剤組成物に配合されるガラス中のSiO2成分の含有割合は1〜30モル%であり、好ましい配合割合は3〜10モル%である。SiO2はガラスの骨格を形成する成分であり、またガラスの屈折率を下げ、それによってガラスを配合した樹脂の白色度を低下させる効果が期待できる。SiO2の含有割合が1モル%より少ない場合には強固なガラス骨格を形成することができない。SiO2の含有割合が30モル%を超えると、ガラスの溶解性が低下し、抗菌剤組成物を配合した樹脂製品の耐久性が低下するという問題がある。
本発明の抗菌剤組成物中に配合されるガラスにはAl2O3を0〜20モル%、又はMgOとCaOの合計割合で0〜20モル%を含有することが好ましい。これら三成分を含まないガラスでも本発明は実施可能であるが、ガラスの性質を更に改良したり、ガラスの製造が容易にするためにこの三成分を配合することが出来る。
【0015】
一般にP2O5を多く含有するガラスは吸湿性が高く、空気中の水分を吸収し凝集する性質がある。このガラスに、ガラスの骨格を形成する成分であるAl2O3を一定濃度含有することにより、ガラスの吸湿性を低下し凝集しにくい安定な骨格を形成することが可能となる。しかし、Al2O3を20モル%以上配合すると、屈折率が高くなるうえガラスが不安定になるという問題が生じる。またMgO及びCaOはガラス化する際の溶融温度範囲を調整するために配合できる。ZnOおよびP2O5を多量に含有する本発明のガラス組成物は、原料混合物を溶融しガラス化させる温度条件が狭い傾向があるが、これにMgOまたはCaOを配合することによって溶融温度を低下させガラス化する組成範囲が広くなり、製造がしやすくなる。MgO+CaOの好ましい含有割合は、1〜10モル%である。MgO+CaOが20モル%以上の場合では、ガラスが不安定となり抗菌効果の耐久性が損なわれてしまう。
【0016】
本発明に使用されるガラスにおける必須のガラス骨格形成成分は、P2O5、ZnO、SiO2である。ガラス組成を大きく変更しない範囲であれば所望によりその他のガラス骨格形成成分を追加することができる。その好ましい例として、ZrO2、TiO2、B2O3等がある。又、所望により、Li2O、Na2O、K2O、F2等の所謂「修飾成分」を適宜含有させることができる。これら修飾成分は、ガラスの溶融や成形性を容易にするのに有効である。本発明のガラスの必須3成分及びAl2O3、MgO、CaO以外の成分を多量に含有させると、ガラスの耐水性が低下したり本発明における特徴が損なわれる恐れがあるので、多くとも2モル%以下とするのが好ましく、より好ましくは1モル%以下である。
【0017】
○リン酸塩化合物
本発明における下式〔1〕で示されるリン酸塩化合物は銀イオンを溶出することを特徴とする銀系無機抗菌剤である。
AgxHyAz M2 (PO4 )3 〔1〕
(Aはアルカリ金属イオン、MはZrイオン又はTiイオンであり、x、y及びzは各々1未満の正数であり、かつx+y+z=1である。)
【0018】
上式〔1〕におけるAは、アルカリ金属イオンであり、好ましい具体例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンである。
また、上式〔1〕におけるMは、ジルコニウムイオン又はチタンイオンから選ばれる4価金属イオンである。
【0019】
〔1〕の好ましい具体例として、以下のものがある。
Ag0.01H0.95Li0.04 Zr2 (PO4 )3
Ag0.05H0.85Li0.10Zr2 (PO4 )3
Ag0.10H0.80Li0.10Ti2 (PO4 )3
Ag0.20H0.75 Na0.05Ti2 (PO4 )3
Ag0.30H0.45Na0.25 Zr2 (PO4 )3
Ag0.50H0.40 Na0.10Zr2 (PO4 )3
Ag0.70H0.25K0.05Ti 2(PO4 )3
Ag0.92H0.05Li0.03Zr 2(PO4)3
【0020】
本発明の抗菌剤組成物に用いられるリン酸塩化合物〔1〕におけるxおよびyの値は大きい方が、高い抗菌性、防黴性を発揮できるので、上式〔1〕におけるzの値は小さい方が良く、0.3未満の値とすることが好ましい。また、アルカリイオンとHイオンとのイオン交換反応の容易性から下限は0.05以上とするのが好ましい。xの値が極めて小さい場合でも防黴性、抗菌性を発揮できるが、0. 001未満であると、長時間防黴性及び抗菌性を発揮させることが困難となるおそれがあることと、経済性をも考慮すると0.01以上かつ0.5未満とすることが好ましい。
なお、yの値は(1−x−z)に等しい値であるので、上記のようにx及びzの値を好ましい範囲にすればyの範囲は0.2より大きく0.94以下の値と自ら決定される。
【0021】
本発明におけるZnO−P2O5−SiO2系ガラスとリン酸塩化合物の好ましい配合割合は、ZnO−P2O5−SiO2系ガラスが50〜95質量%、リン酸塩化合物が5〜50質量%である。ZnO−P2O5−SiO2系ガラスの配合割合が50質量%より少ないと、ガラスとリン酸塩化合物の共存による抗菌力の向上及び耐久性を発揮させることが困難となる恐れがあり、ガラスの配合割合が95質量%より多くても、共存による抗菌力の向上及び耐久性を発揮させることが困難となる。より好ましいガラスの配合割合は60〜90質量%である。
【0022】
また、本発明の抗菌剤組成物に加えて、ゼオライト、アルミノケイ酸塩、活性炭、アパタイト等の化合物に、銀イオンを付加した銀系無機抗菌剤を必要に応じて併用することが出来る。
【0023】
本発明の抗菌剤を樹脂に配合する際、通常粉末状とし、一般的には平均粒径で20μm以下のものが樹脂への分散加工上好ましく、繊維製品や塗料、フィルム等に加工する場合には、物性低下を生じさせないために平均粒径5μm以下、最大粒径20μm以下のものが好ましい。
【0024】
本発明のガラスの製造に当たっては、既知の製造方法を採用できる。一般には、ガラスの原料調合物を溶融釜で1000〜2000℃で溶融した後、溶融物を急冷して、ガラスを調製後、得られた塊状ガラスを粉砕することにより粉末状のガラスを得ることができる。
【0025】
本発明の抗菌剤組成物を樹脂に練り込んだ場合、抗菌性能は樹脂成形品の表面付近に存在する抗菌剤組成物により発現しているが、樹脂成形品を摩擦、洗浄、洗濯等をする際、この抗菌剤組成物が樹脂成形品の表面から脱落することがある。脱落が著しい場合には抗菌効果が低下し、極めて短期間に効果が消失してしまう。
本発明の抗菌剤組成物を樹脂等に練り込み加工する場合に、分散性の向上や密着性または接着性を向上させることで樹脂からの脱落を防止するために、シランカップリング剤やシリコーンオイル等表面処理剤によりガラス粉末表面を処理してもかまわない。
【0026】
本発明の抗菌剤組成物の表面処理に用いられる表面処理剤は、用途や樹脂種類、加工方法等により適宜最適なものを選択すればよく、従来より無機粉体の表面処理用にもちいられる処理剤であればいずれも使用可能であり、特に制限はない。
表面処理剤の具体例としてビニルトリエトキシシランやビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシランやγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシシランあるいはグリシドキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタン、アルミニウムエチラート等のカップリング剤、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、反応性シリコーン、非反応性シリコーン等のシリコーンオイル等が挙げられる。
【0027】
表面処理の方法は、特に制限はなく、従来より無機系紛体の表面処理法として知られているいかなる方法でもよい。例えば、乾式法、湿式法、スプレー法、ガス化法等がある。効率的な表面処理方法としては、例えばガラスを粉末状に粉砕する際に塊状のガラスと一緒に表面処理剤を混合したものを粉砕機で粉砕すると表面処理も同時に実施することができる。
【0028】
本発明の抗菌剤組成物には、樹脂への練り込み加工性やその他の物性を改善するために、必要に応じて種々の他の添加剤を混合することもできる。具体例としては顔料、染料、酸化防止剤、耐光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤、耐衝撃強化剤、ガラス繊維、金属石鹸等の滑剤、防湿剤及び増量剤、カップリング剤、核剤、流動性改良剤、消臭剤、木粉、防汚剤、防錆剤、酸化亜鉛、金属粉、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤、などがある。
【0029】
また、有機系抗菌・防カビ剤をさらに添加することにより、効果の速効性、防かび効果向上をはかることもできる。
本発明の抗菌剤組成物に混合する有機系抗菌防カビ化合物の好ましい例として、第4アンモニウム塩系化合物、脂肪酸エステル系化合物、ビグアナイド類化合物、ブロノポ−ル、フェノ−ル系化合物、アニリド系化合物、ヨウ素系化合物、イミダゾ−ル系化合物、チアゾ−ル系化合物、イソチアゾロン系化合物、トリアジン系化合物、ニトリル系化合物、フッ素系化合物、キトサン、トロポロン系化合物及び有機金属系化合物(ジンクピリチオン、OBPA)等がある。
【0030】
本発明の抗菌剤組成物を含有させることができる樹脂の種類には特に制限はなく、天然樹脂、合成樹脂、半合成樹脂のいずれであっても使用できる。また成形用樹脂、繊維用樹脂、ゴム状樹脂のいずれであってもよく、これらの樹脂に本発明の抗菌剤組成物を、既存の混合方法で配合することにより、抗菌性樹脂組成物を容易に得ることができる。
【0031】
具体的な樹脂としては例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ユリア樹脂、メラミン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアセタ−ル、PBT、フッ素樹脂、ポリウレタンエラストマ−、ポリエステルエラストマ−、四フッ化エチレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、レ−ヨン、アセテ−ト、ポリビニルアルコ−ル、キュプラ、トリアセテ−ト、ビニリデン等の成形用または繊維用樹脂、天然ゴム、シリコ−ンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム、ブタジエンゴム、合成天然ゴム、ブチルゴム、ウレタンゴムおよびアクリルゴム等のゴム状樹脂がある。
【0032】
抗菌性樹脂組成物における本発明の抗菌剤組成物の好ましい配合割合は、0.01〜15質量%、より好ましくは0.1〜3質量%である。0.01質量%より少ないと抗菌性樹脂組成物の抗菌性が不充分であり、一方15質量%より多く配合しても抗菌効果の向上がほとんどなく、樹脂物性の低下が著しくなる。
【0033】
本発明の抗菌剤組成物を樹脂へ配合し樹脂成形品とする方法は公知の方法をどれも採用できる。例えば、▲1▼抗菌剤組成物の粉末が樹脂とを付着しやすくするための添着剤や抗菌剤組成物粉末の分散性を向上させるための分散剤を使用し、ペレット状樹脂またはパウダー状樹脂とミキサーで直接混合する方法、▲2▼前記のようにして混合して、押し出し成形機にてペレット状に成形した後、その成形物をペレット状樹脂に配合する方法、▲3▼抗菌剤組成物をワックスを用いて高濃度でペレット状に成形後、その成形物をペレット状樹脂に配合する方法、▲4▼抗菌剤組成物をポリオ−ル等の高粘度の液状物に分散混合したペ−スト状組成物を調製後、このペーストをペレット状樹脂に配合する方法等がある。
【0034】
上記の抗菌性樹脂組成物の成形には、各種樹脂の特性に合わせてあらゆる公知の加工技術と機械が使用可能であり、適当な温度又は圧力で加熱及び加圧又は減圧しながら混合、混入又は混練りの方法によって容易に調製することができ、それらの具体的操作は常法により行えば良く、塊状、スポンジ状、フィルム状、シート状、糸状またはパイプ状或いはこれらの複合体等の種々の形態に成形することができる。
【0035】
この様にして得られた抗菌性樹脂成形品は、その配合成分である抗菌剤組成物が優れた抗菌性と耐変色性を有しているため、抗菌剤組成物と樹脂との混合時、及びその後の抗菌性樹脂成形品の保存時又は使用時に劣化することがない。
【0036】
本発明の抗菌剤組成物の使用形態には特に制限はなく、樹脂中に配合しても良いし、樹脂に配合せず使用することもできる。防黴性、防藻性および抗菌性が必要とされる用途に応じて適宜他の成分と混合したり、他の材料と複合させることができる。例えば、粉末状、粉末分散液状、粒状、塗料状、繊維状、紙状、フィルム状、エアゾ−ル状等の種々の形態で用いることができる。
【0037】
○用途
本発明の抗菌剤組成物を配合した抗菌性製品は、防かび、防藻及び抗菌性を必要とされる種々の分野、即ち電化製品、台所製品、繊維製品、住宅建材製品、トイレタリー製品、紙製品、玩具、皮革製品、文具およびその他の製品として利用することができる。
さらに具体的用途を例示すると、電化製品としては食器洗浄機、食器乾燥機、冷蔵庫、洗濯機、ポット、テレビ、パソコン、CDラジカセ、カメラ、ビデオカメラ、浄水器、炊飯器、野菜カッタ−、レジスタ−、布団乾燥器、FAX、換気扇、エア−コンデショナ−等があり、台所製品としては、食器、まな板、押し切り、トレ−、箸、給茶器、魔法瓶、包丁、おたまの柄、フライ返し、弁当箱、しゃもじ、ボ−ル、水切り篭、三角コ−ナ−、タワシいれ、ゴミ篭、水切り袋等がある。
【0038】
繊維製品としては、シャワ−カ−テン、布団綿、エアコンフィルタ−、パンスト、靴下、おしぼり、シ−ツ、布団側地、枕、手袋、エプロン、カ−テン、オムツ、包帯、マスク、スポ−ツウェア等があり、住宅・建材製品としては、化粧板、壁紙、床板、窓用フィルム、取っ手、カ−ペット、マット、人工大理石、手摺、目地、タイル、ワックス等がある。またトイレタリー製品としては、便座、浴槽、タイル、おまる、汚物いれ、トイレブラシ、風呂蓋、軽石、石鹸容器、風呂椅子、衣類篭、シャワ−、洗面台等があり、紙製品としては、薬包紙、薬箱、スケッチブック、カルテ、折り紙等があり、玩具としては、人形、ぬいぐるみ、紙粘土、ブロック、パズル等がある。
【0039】
さらに皮革製品としては、靴、鞄、ベルト、時計バンド、内装、椅子、グロ−ブ、吊革等があり、文具としては、ボ−ルペン、シャ−プペン、鉛筆、消しゴム、クレヨン、用紙、手帳、フロッピ−ディスク、定規、ポストイット、ホッチキス等がある。その他の製品としてはインソ−ル、化粧容器、タワシ、化粧用パフ、補聴器、楽器、タバコフィルタ−、掃除用粘着紙シ−ト、吊革握り、スポンジ、キッチンタオル、カ−ド、マイク、理容用品、自販機、カミソリ、電話機、体温計、聴診器、スリッパ、衣装ケ−ス、歯ブラシ、砂場の砂、食品包装フィルム、スプレ−等がある。
【0040】
【作用】
本発明の抗菌剤組成物が優れた抗菌性能、耐変色性及び耐着色性を有し、また当該抗菌剤樹脂組成物が高い耐久性を持つ抗菌性能を発揮する機構について、以下のように推定される。高濃度のP2O5及びZnOを含有するガラスは配合した樹脂組成物の抗菌性能の耐久性が優れた抗菌剤として使用可能なものである。しかし、これら2成分ではガラス化は不可能で、適当な成分および含有割合を選定しないとガラスが形成されないし、吸湿性(凝集性)と屈折率の増加による問題で抗菌剤として好ましい性能が発現しない。そこで、適度な溶解性を有したまま吸湿性(凝集性)および屈折率の増加を抑制する成分としてSiO2の配合を必須成分とした。また本発明のZnO−P2O5−SiO2系ガラスに式〔1〕のリン酸塩化合物を混合することによって、抗菌性能に有効な成分が、ZnO−P2O5−SiO2系ガラスとリン酸塩化合物の両方から溶出し、それらの相互作用によって低添加量で初期の高い抗菌性能が得られるとともに、樹脂組成物の抗菌性能の耐久性が得られるようになる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
○実施例(抗菌剤組成物の調製)
表1に示した組成(試料No.1〜3)の原料調合物を1000〜1300℃で加熱溶融しガラスを作製後、得られたガラスをボ−ルミルにて乾式粉砕して平均粒径約5μmのガラス粉末を得た。この粉末に式〔1〕中のMがZrであるリン酸塩化合物a(リン酸塩化合物中のAg濃度が約10質量%であり、化学組成は、Ag0.49Na0.38H0.13Zr2(PO4)3である)及び同じくリン酸塩化合物b(リン酸塩化合物中のAg濃度が約3.5質量%であり、化学組成は、Ag0.16Na0.35H0.49Zr2(PO4)3である)を、表1に示した割合でミキサー混合し、抗菌剤組成物を得た。
【0042】
○比較例(抗菌剤組成物の調製)
表1に示した組成(試料No.4〜8)の原料調合物を用いた以外は実施例1と同様にしてガラス粉末を得た。このガラス粉末に実施例1と同様にリン酸塩化合物a又はbを、表1に示した割合でミキサーで混合し、抗菌剤組成物を得た。
【0043】
【表1】
【0044】
○試験用成形プレートの調製及び抗菌性試験、耐久性試験
グランドポリマー株式会社製PP樹脂(商品名グランドポリプロJ105)に対し、抗菌剤組成物(実施例1〜3及び比較例1〜)を0.3質量%配合し、名機製作所株式会社製射出成形機M−50AII−DMを用いて成形温度220℃で射出成形し、11cm×11cm×2mmの評価用成形プレート(試作No.1〜8)を作製した(但し、各試作番号の成形プレートは試作番号と同じ試料番号の試料を用いたものであり、以下同じ。)。
比較のため、抗菌剤組成物を配合せずPP樹脂のみの比較用成形プレート(試作No.0)を同様に射出成形した。
【0045】
成形プレートの抗菌力(初期抗菌効果)を、JIS Z2801に準拠して評価した。PP樹脂成形プレートを5cm×5cmに切断し、その表面をエタノールで拭いたものを評価用検体とした。被検菌には大腸菌を用い、滅菌水を用いて普通ブイヨン培地を500分の1に希釈した溶液に菌数が2.5〜10×105個/mlとなるように調整したものを菌液として用いた。菌液0.4mlを検体表面に滴下し、その上から4.0cm×4.0cmのポリエチレン製フィルムを被せ、表面に一様に接触させ、温度35℃、湿度95RH%で24時間保存した。保存開始から0時間後(理論添加菌数)及び24時間保存した後に、菌数測定用培地(SCDLP液体培地)10mlで検体上の生残菌を洗い出し、この洗液について、標準寒天培地を用いる混釈平板培養法(37℃2日間)により生菌数を測定して、検体1枚当りの生菌数に換算した。
【0046】
上記のようにして得られた抗菌評価結果を各成形プレートの生菌数の対数値を比較用成形プレートNo.0の生菌数の対数値との差である増減値差で表記し表2に示した。増減値差は値が大きいほど抗菌効果が高いことを示している。なお、理論添加菌数は検体1枚あたり2.5×105、比較用成形プレートNo.0の生菌数は1.6×107であった。
さらに成形プレートを50℃に加熱した脱イオン水に16時間浸漬した後、この成形プレートを検体として用いて、同様に抗菌力を評価した結果を表2に示した。初期効果と比較し、水浸漬後の抗菌効果の低下度合いにより抗菌効果の耐久性を判定した。
【0047】
【表2】
【0048】
本発明の抗菌剤組成物(実施例1〜3)を配合した成形プレート(試作No1〜3)は抗菌性、耐久性とも優れた性能を有している。
本発明の抗菌剤組成物のうち、ガラス剤のみを用い、リン酸塩化合物を配合していない成形プレート(試作No.4〜6)は初期効果は十分あるものの、抗菌効果の耐久性が著しく低下している。さらにP2O5を含まずB2O3を多く含有するガラス及びそのガラスとリン酸塩化合物である無機抗菌剤aとを配合した成形プレート(試作No.7及び8)は、リン酸塩化合物aの混合の有無に関わらず、抗菌効果の耐久性が著しく低下している。
【0049】
【発明の効果】
本発明の抗菌剤組成物は、初期抗菌性能、耐着色性に優れ、更に樹脂に配合した際に優れた抗菌効果の耐久性を有した抗菌性樹脂組成物を得ることができるため、極めて有用なものである。
Claims (1)
- ZnOを5〜40モル%、P2O5を45〜55モル%、SiO2を1〜30モル%含有するZnO−P2O5−SiO2系ガラス50〜95質量%と、下式〔1〕で示されるリン酸塩化合物5〜50質量%とからなる抗菌剤組成物。
AgxHyAz M2 (PO4 )3 〔1〕
(Aはアルカリ金属イオン、MはZrイオン又はTiイオンであり、x、y及びzは各々1未満の正数であり、かつx+y+z=1である。)
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