本発明の一実施例について以下説明する。
図1は、本発明の一実施例による検体処理システムの平面図である。図1では、検体ラックの投入と収納を行うサンプラユニット100、サンプラユニットと各機能モジュールとの間で検体ラックを搬送するラック搬送ユニット200と、ラック搬送ユニット200に沿って配置される、ラック搬送ユニット200との間で検体ラックの移載を行い、また一時的に検体ラックを待機させるバッファユニット300a,300b、バッファユニット300a,300b各々と対をなしバッファユニットの右側に配置される機能モジュール400a,400b、バッファユニット300aの左側に配置される付属モジュール500で構成されるシステムを例に示している。
図2は図1におけるシステムを機能別に分類して示したものである。この場合システムは、バッファユニット300a,機能モジュール400a,付属モジュール500からなり検体の分析や前処理などを行う機能ブロック1、バッファユニット300b,機能モジュール400bからなる機能ブロック2、サンプラユニット100,ラック搬送ユニット200からなる検体ラックの搬送を行う搬送ブロック3に分類することができ、機能ブロック1,機能ブロック2と搬送ブロック3は各々接点4,接点5で検体ラックの受け渡しを行っている。
なお本実施例では、機能ブロックがバッファユニットと機能モジュールと2つのユニットから構成されているが、バッファユニットを内部に包含する機能モジュールも本発明に含まれる。
また機能ブロック1,機能ブロック2,搬送ブロック3は、電源供給や純水供給,廃液排水などを各々が必要とする入出力が独立して施設の設備側と接続されるよう構成されており、各々の間での検体ラックの受け渡しに関する処理、すなわち検体ラックの物理的な移動や検体に関する処理依頼,結果送信などの情報受け渡し等を除いては、完全に独立して動作可能であるように構成されている。
以下、各々のシステム構成ユニットについての説明と、システム全体の動作について説明を行う。
図3にサンプラユニット100の構成を示す。
サンプラユニット100は、検体ラックをシステムに投入するための投入部101,検体ラックをシステムから取り出すための収納部102,投入部からの検体ラックをラック搬送ユニット200に搬送する投入ラック移動ユニット103,検体ラックのIDを識別するためのラックID識別ユニット104,検体ラックに検体容器が架設されているかの確認と検体容器の高さを検出するための検体容器高さ検出ユニット105,検体ラックに架設された検体容器に貼り付けられた検体IDを識別するための検体ID識別ユニット106,検体ID識別の際に検体容器を回転させる検体容器回転ユニット107,ラック搬送ユニット200からのラックを収納部102まで移動する収納ラック移動ユニット108,緊急検体ラック、あるいは本システムより上流側に接続される検体搬送システムからの検体ラックを本システムに投入するための緊急検体投入部109,本システムより上流側に接続される検体搬送システムに検体ラックを搬出するラック搬出ユニット110を備えている。
投入部101は、検体ラックを複数架設し持ち運びができる検体ラックトレイを架設する投入トレイ架設部121と、トレイ架設部と投入ラック移動ユニット103の間の投入バッファ部122からなる。また駆動機構として、Y方向に検体ラックを搬送するための投入レバー123と、投入レバーをY方向軸に対して回転させることができる投入機構124(図4)を備えている。
投入トレイ架設部121に検体ラックトレイが架設されると、投入機構部124は投入レバー123を回転用モータ125により回転し、移動用モータ126を駆動しY方向に検体ラックを移動するよう動作し、検体ラックは投入バッファ部122を経て投入ラック移動ユニット103に搬送される。投入バッファ部122の全てのラックがなくなったのち、投入機構部124は投入レバー123を回転し、検体ラックトレイ位置まで戻り、次の検体ラックトレイが架設されるまで待機する。
検体ラックトレイは、架設されている検体ラックが全て投入バッファ部122に移動した時点で取外しが可能であり、別の新しい検体ラックトレイを架設することが可能である。この場合、通常は投入機構部124の投入レバー123は投入バッファ部122にある全てのラックがなくなるまで検体ラックを送り出した後、新たに架設された検体ラックトレイ上のラック送り処理を行うが、図示しないサンプラユニット100上のスイッチ、もしくは操作部画面上からのオペレータ指示により、投入バッファ部上の検体ラック送り処理を中断し、投入レバー123を投入トレイ架設部121位置まで戻して、検体ラックトレイ上のラック送り動作を再開することも可能である。
また、本実施例では検体投入部は2つあり、一方の検体ラック送り処理が終了してラックがなくなった時点でもう一方の検体ラック送り処理が行われる。なお本実施例では検体投入部が2つであるが、2つ以上の場合も同様に順に処理を行っていく。
投入ラック移動ユニット103は、投入部から移動されたラックをラックID識別ユニット104に移動してラックIDの読取りを行った後、検体容器高さ検出ユニット105に移動する。
検体容器高さ検出ユニットでは、検体ラックの各ポジションに検体容器が架設されているか否かの確認と検体容器の高さを検出する。
その後検体ラックは検体ID読取り位置に移動され、検体ID識別ユニット106による検体IDの読取りが行われる。この検体ID読取り位置には検体容器回転ユニット107が備わっている。
検体IDは一般的にはバーコードが利用され、検体容器としてはカップ,試験管,試験管の上にカップを載せたものなど様々な種類のものが利用されている。検体IDとしてのバーコードは、必要な情報量を持つための必要サイズから試験管に対してのみ貼り付けられているのが通常であり、前述のラックID識別情報と検体容器高さ情報により、検体IDの読取り、および検体容器回転の必要性を判断して処理が行われる。
以上のラックID、および検体IDの情報に基づき、検体ラックに対して必要な処理が決定され、搬送先である機能モジュールが決定される。
投入ラック移動ユニット103は検体ラックの搬送先が決定された後、ラック搬送ユニット200に検体ラックを移動させる。
緊急検体ラック、あるいはサンプラユニットの上流側に接続された検体搬送システムは、緊急検体投入部109からサンプラユニット100に投入される。緊急検体投入部109から投入されたラックは、前述の検体投入部101からのラックと同様の処理が行われた後に、ラック搬送ユニット200に移動される。
また、各機能モジュールでの必要な処理が終わった検体ラックは、収納ラック移動ユニット108により収納部102位置まで移動する。
収納部102は、投入部101と同様に検体ラックを複数架設し持ち運びができる検体ラックトレイを架設する収納トレイ架設部131と、収納トレイ架設部と投入ラック移動ユニット103の間の収納バッファ部132からなる。駆動機構としては、Y方向に検体ラックを搬送するための収納レバー133を備えている。
収納ラック移動ユニット108により収納部102前まで搬送された検体ラックは、収納レバー133により、投入ラック移動レーンを横切り、収納バッファ部132に移動し、収納バッファ部132に検体ラックトレイに架設できる検体ラック数と同数の検体ラックがたまった時点で、検体ラックトレイにラックを移動する。
また、図示しないサンプラユニット100上のスイッチ、もしくは操作部画面上からのオペレータ指示により、収納バッファ部132の検体ラックを収納トレイ架設部131の検体ラックトレイに移動することも可能である。
また、本システムの上流側に接続された検体搬送システムに検体ラックを搬出するためのラック搬出ユニット110を備える。ラック搬出ユニット110は1ラックを保持できるサイズであり、また検体搬送システム側へのY方向のラック搬出位置を変更できるよう、Y方向にスライド可能な構造となっている。
図1のラック搬送ユニット200は、2つのラック搬送レーン、すなわちサンプラユニット100から各機能モジュール400a,400bに検体ラックを搬送する送りレーン201と、各機能モジュール400a,400bからサンプラユニット100に検体ラックを搬送する戻りレーン202を備え、機構としてはベルト機構210,ストッパ機構220,シャッタ機構230(図5)からなる。
ベルト機構210は、送りレーン201と戻りレーン202においてサンプラユニット100と各機能モジュール400a,400bとの間で検体ラックの搬送をコンベアベルトにより行うものである。本実施例においては、コンベアベルトは送りレーン,戻りレーン各1本で構成しており、コンベアベルト駆動用のモータ211とベルト張力機構212はラック搬送ユニット200の終端に備えており、本方式は検体ラックの高速搬送が可能である。また本方式は検体ラックが複数の機能モジュールにランダムに、またシステム上流側と下流側に配置された機能モジュール間で双方向に搬送されるようなシステムに適している。なお本実施例では述べないが、検体前処理システムのように同一検体ラックが複数の機能モジュールに立ち寄りながら処理が行われる、すなわち遠心分離,開栓,分注といったようにシステムの上流側から下流側に向かって順番に立ち寄りながら処理が行われていくシステムにおいては、各機能モジュールと同等の幅となるような長さのコンベアベルトを複数直列に配置し、隣接するコンベアベルト間で検体ラックの受け渡しを行いながら処理する方が適している場合もある。よってシステムの構成と必要な処理能力に応じてベルト機構構成の選択が可能であることが望ましい。
ストッパ機構220は、各機能モジュールの検体ラック搬入位置で検体ラックを所定の位置に停止させるためのものであり、送りレーン201用に220a、戻りレーン202用に220bが備わっている。
またシャッタ機構230は、送りレーン201のラックガイド用として2枚、戻りレーン202のラックガイド用として1枚の合計3枚の上下動するラックガイド板を備え、各機能モジュールへの検体ラック搬出あるいは各機能モジュールからの検体ラック搬入時にのみ下降動作する。
図5にバッファユニット300の構成を示す。
バッファユニット300は、ラック搬入出待機部301,バッファ部302,保冷部303,モジュール搬入出待機位置304,ラック搬送部310,1ラック投入取り出し部320,ID読取り部321から構成し、駆動機構としてラック移載機構330,ラック移動機構360,ラック搬出機構370,371により検体ラックの移動を行う。
ラック搬入出待機部301は、1ラックを待機させるスペースを有し、ラック搬送ユニット200からの検体ラックをバッファユニット300に移載する位置であり、かつバッファユニット300からラック搬送ユニット200に搬出する検体ラックを待機させる位置である。
バッファ部302は、検体ラックを一時的に待機させることができる独立した複数のスロットで構成される。
保冷部303は、精度管理検体などが定期的に機能モジュールでの処理が必要とされる検体が架設された検体ラックを複数個待機させることが可能であり、検体の蒸発を防止するための保冷機能を備えている。
モジュール搬入出待機位置304は、1ラックを待機させるスペースを有し、バッファユニット300からの検体ラックを機能モジュール400に搬出する位置であり、かつ機能モジュールで処理が終わった検体ラックをバッファユニット300に搬入する位置である。
ラック搬送部310は、モジュール搬入出待機位置304と機能モジュール400との間で検体ラックの搬送を行う部分である。
1ラック投入取り出し部320は、ラック搬送ユニット200を介さずに機能モジュールでの検体ラック処理を行うための検体投入取り出し部となっている。
ラック移載機構330は、ラック搬入出待機部301と前述のラック搬送ユニット200の送りレーン201との間、および戻りレーン202との間でY方向に双方向に検体ラックの移載を行うものである。通常、一方向だけにラックを移載する場合は、移動後の検体ラック搬送面高さを移動前のラック搬送面高さよりわずかに低く設定することにより、検体ラックを水平に移動させることが可能であるが、本システムでは双方向に移動が必要であり、かつ戻りレーン202との間で検体ラックを移動させる際には送りレーン201を横断する必要があることから、移載機構330はZ方向にラックを持ち上げる機能が必要となる。
図6から図10を用い、ラック搬送ライン200の送りレーン201からラック搬入出待機部301にラックを移載する動作を例に、ラック移載機構330の詳細について説明する。
ラック移載機構330は、ラックを把持するための2枚のグリップ板をY方向に開閉させ、またラックを把持した後にZ方向に持ち上げる機能を持つグリップ機構部340と、グリップ機構部をY方向に移動させるY移動機構部350から構成されている。
グリップ機構部340はモータ341とベルト342により駆動力を伝達するプーリ343,プーリの回転軸344,カムフォロア345が付きZ方向に上下動できる2枚のグリップ板346,グリップ板346を引き付ける方向に働くバネ347から構成される。またプーリ343には2つのベアリング348,プーリの回転軸344には段付きのカム349が取り付けられている。
バッファユニット300は、検体ラックの搬入のためラック移載機構330のY移動機構部350の駆動モータ351を駆動し、グリップ機構部340をラック搬送ライン200の送りレーン201上に移動させる。このとき、グリップ機構340は開いた状態、すなわちプーリ343に取り付けられた2つのベアリング348が2枚のグリップ板346を押し開いた状態となっており、カムフォロア345とカム349は接触しない状態となっている。
ラック搬送ユニット200は、バッファユニット300のラック移載位置に配置されたストッパ機構220aを駆動しストッパを送りレーン201上に突出させた後にベルト機構210のモータ211aを駆動させ、検体ラックを移動させる。
グリップ機構部340は移載位置に停止した検体ラックを把持するため、モータ341を駆動してプーリ343を回転させる。これによりベアリング348の位置が移動し、2枚のグリップ板346はバネ347の引力によりY方向に閉じ、検体ラックを把持する(図7)。更にモータ341を回転させるとベアリング348はグリップ板346と接触し
ない状態となり、カムフォロア345がカムの高い段の部分に乗り上げる(図8)ことにより、2枚のグリップ板346は上昇し、ラックをZ方向に持ち上げることが可能である(図9)。
グリップ機構340が検体ラックを把持しZ方向に持ち上げた後、ラック搬送ユニット200はシャッタ機構230のモータを駆動させ、シャッタ231を下降させる。
ラック移載機構330はシャッタ231が下降した後、Y移動機構のモータ351を駆動し、検体ラックをラック搬入出待機部301にY方向に移載する。
ラック搬送ユニット200は、検体ラックの移載が完了した後にストッパ220aを送りレーン上から戻し、シャッタ230を上昇させて次の検体ラックの搬送処理が可能となる。
また、グリップ機構部340はラック搬入出待機部301に移動した後に検体ラックの把持を開放する。この場合の動作は、ラックを把持する場合と逆方向にモータ341を回転させることにより行われ、把持動作と逆の順序にて行われる。
なお、実施例ではグリップ機構は1つのモータで駆動し、グリップ板開閉動作に連動して検体ラックを持ち上げるように構成したが、グリップ板開閉動作とラックを持ち上げるモータを独立して有するように構成しても同じ効果が得られる。
ラック移動機構360は、1ラックを保持しY方向に移動可能なバケット361と、バケットとともにY方向に移動しバケット内のラックをX方向に移動するためのX機構362、X機構に取り付けられた上下動するキャリッジ363で構成される。
ここでは、ラック搬入出待機部301の検体ラックをバッファ部302に移動する動作を例に、ラック移動機構の詳細について図11〜図14を用いて説明する。
まずラック移動機構360はY駆動モータ364を駆動しバケット361をラック搬入出待機部301の位置に移動する(図11)。また同時にX駆動モータ365を駆動し、X機構362に取り付けられたキャリッジ363をラック搬入出待機部301の検体ラック下まで移動し、検体ラックの底部の溝にキャリッジ363が入り込む位置に移動した時点でZ駆動モータ366を駆動し、キャリッジ363を上昇させる(図12)。
バケット361,ラック搬入出待機部301の検体ラック搬送面にはキャリッジ363が上昇したままX方向に移動可能であるようにスリット367が設けられている。なお、スリットはバッファ部302,保冷部303など、ラック移動機構360を用いて検体ラックを移動する部位にも同様に設けられている。
次にX駆動モータ365を駆動してキャリッジ363をバケット361下まで移動することにより検体ラックをバケット上に移動する(図13)。
バケット361上に検体ラックを移動した後、Y駆動モータ364を駆動し、移動先のバッファ部302のスロット位置までバケット361を移動する。このときバケット上のラックがX方向に動き、バケットから飛び出すのを防止するため、キャリッジ363は上昇したままである。
バッファ部302のスロット位置まで移動した後、X駆動モータ365を駆動し、キャリッジ363をスロット下に移動することで検体ラックをバッファ部302のスロットに移動する(図14)。
本実施例では、ラック搬入出待機部301からバケット361上へのラック移動について説明したが、バッファ部302,保冷部303などからバケット361上に検体ラックを移動する場合も同様である。またバケット361上からバッファ部302へのラック移動について説明したが、保冷部303,モジュール搬入出待機位置304などに検体ラックを移動する場合も同様であり、バッファ部302などのように検体ラックを待機させるスロットを独立して設けることにより、任意の検体ラックにランダムにアクセスが可能である。
次にバッファユニット300から機能モジュール400への検体ラック搬送動作について図15を用いて説明する。
機能モジュール400に搬送される検体ラックは、ラック移動機構360によりモジュール搬入出待機位置304に移動され、ラック搬出機構370によりラック搬送部310に移動される。
ラック搬送部310は各機能モジュールに適した機構構成となる。本実施例では機能モジュール400が、ラック搬送部からのラックを機能モジュール内に検体ラックを引き込み、分注などの処理が終了した後にラック搬送部に検体ラックを戻すタイプの場合を例に説明する。また本実施例での機能モジュールは、内部に複数ラックを直列に保持できるバッファを有する。
ラック搬出機構370によりラック搬送部310に移動された検体ラックは、ラック移動機構により機能モジュールの検体ラック搬入位置401まで移動される。ここでラック移動機構は前述のラック搬送ライン200のようなベルト機構でも良いし、キャリッジのようなものでも良い。
機能モジュール400の図示しないラック搬入機構により機能モジュール内に引き込まれた検体ラックは、分注などの処理が行われる処理位置402まで移動され、必要な処理が行われる。この間、バッファユニット300は、次に機能モジュール400で処理すべき検体ラックがあれば同様の手順にてラック搬送部を介して機能モジュールに検体ラックを移動し、機能モジュールはモジュール内バッファ位置403に検体ラックを待機させる。
機能モジュール400で処理が終了した検体ラックは、図示しないラック搬出機構により再びラック搬送部310のラック搬出位置404に戻される。ラック移動機構は機能モジュール400に検体ラックを搬送したときと逆の方向に検体ラックを移動し、バッファユニット300のモジュール搬入出待機位置304に検体ラックを搬出する。
本実施例では、バッファユニット300とラック搬送部310との間で検体ラックが双方向に移動し、機能モジュール400のバッファで保持できるラック数に応じて、バッファユニット300でのラックの搬入出が制御される。すなわち、機能モジュール400のバッファが満杯になるまではバッファユニット300からの検体ラック搬出が継続されるが、バッファが満杯になった後は、機能モジュール400から戻ってくる検体ラックをバッファユニット300に搬入するため、モジュール搬入出待機位置304は空きの状態としておき、機能モジュール400から戻ってきた検体ラックをバッファユニット300内で移動した後、次の検体ラックをモジュール搬入出待機位置304に移動し、ラック搬送部310を介して機能モジュール400に搬送する処理が行われる。
なお本実施例では、機能モジュールが内部に複数ラックを処理位置に対して直列に保持できるバッファ機能を有する場合を例に説明したが、例えば機能モジュールへの検体ラック搬入とラック搬出位置が一箇所である機能モジュールやラック搬入出を行わず、搬送ライン上で分注などの処理を行う機能モジュールであっても、ラック搬送部310の搬送機構構成を変更することにより、バッファユニット300やラック搬送理論を変更することなく対応が可能である。
次にバッファユニット300から付属モジュール500へのラック搬送動作について図16を用いて説明する。本実施例における付属モジュール500は、バッファユニット300の左側に配置され、独立した検体ラックの搬入位置と搬出位置を有している。
付属モジュール500へ搬出する検体ラックはラック移動機構360のバケット361上に移動され、ラック移動機構360のY駆動モータ364を駆動し付属モジュール500のラック搬入位置501に移動する。その後ラック搬出機構371はバケット361上の検体ラックを付属モジュールの搬入ラインに押し出して搬出する。
付属モジュールに搬入された検体ラックは、処理位置502で分注などの処理が行われた後、搬出ラインのラック搬出待機位置503に移動する。
ラック搬出待機位置503からの検体ラック搬出要求により、バッファユニット300のラック移動機構360はY駆動モータ364を駆動し、付属モジュールのラック搬出位置503にバケット361を移動する。その後付属モジュールのラック搬出機構504により、検体ラックはバケット361上に移動する。
次に1ラック投入取り出し部320から投入された検体ラックの搬送動作について説明する。
オペレータにより1ラック投入取り出し部320に検体ラックが架設されると、ラック移動機構360はY駆動モータ364を駆動しバケット361を1ラック投入取り出し部位置320に移動し、X駆動モータ365を駆動しキャリッジ363を検体ラック位置まで移動し上昇させる。その後、ID識別ユニット372位置に検体ラックを移動させてラックID読取りを行い、続いて検体ラックを移動させて検体容器有無検出器373による検体容器架設有無の確認と検体IDの読取りを行う。読取りを行ったラックIDおよび検体IDの情報を元に機能モジュールでの処理内容が決定される。検体IDの読取りが終了した検体ラックは、バケット361上に移動され、前述の搬送動作にしたがい、機能モジュールや付属モジュールへの搬送が行われ処理が行われる。処理が終了した検体ラックは、同様にバケット361を介して1ラック投入取り出し部320へ搬出され処理が終了する。
本実施例に示す1ラック投入取り出し部320のような検体ラック投入取り出し部をバッファユニットに備え、また前述のように電源,純水の供給などが独立して供給される構成とすることにより、前述のサンプラユニット100やラック搬送ライン200が障害等により動作することができない場合であっても、機能モジュールでの処理を行うことが可能であり、またバッファユニット300内のバッファ部302等に待機していた検体ラックも、図示しないスイッチや操作部からオペレータが搬出指示を入力することにより1ラック投入取り出し部320から搬出することが可能である。
次に精度管理検体を待機させる保冷部303について説明する。
精度管理検体は分析装置における測定結果の正当性を確認するため、測定値が決まっている検体であり、分析装置での測定結果を確認することで装置の安定性を確認するためのものである。精度管理検体は各分析項目で定期的に、すなわち設定された時間間隔で測定される。
精度管理検体が架設された検体ラックはサンプラユニット100から投入され、バッファユニット300のラック移載機構330によりバッファユニット内に搬入される流れについては前述と同様である。
バッファユニット300に搬入された精度管理検体ラックの分析がすぐに必要である場合は機能モジュール400に搬送され分析が行われる。分析がすぐに必要ではない場合、あるいは機能モジュール400での分析が行われた後の精度管理検体ラックは、保冷部303内に待機する。
前述の通り精度管理検体は測定値が決まったものであるため、装置内に長時間待機させることによる蒸発により測定値が変動する。そのため保冷部303は精度管理検体の蒸発を抑制するための保冷機能を有している。
一般検体の分析がある一定時間行われ、ある項目に対して精度管理検体を測定すべく設定された時間に到達すると、保冷部303に待機していた精度管理検体ラックは保冷部303から機能モジュール400に搬送され分析が行われる。分析が行われた後は、再び保冷部303に搬送され、次の精度管理検体測定要求があるまでの間待機する。
保冷部303に待機する精度管理検体ラックは、操作部からのオペレータ指示により保冷部303から搬出され、ラック搬送ユニット200の戻りレーン202を通ってサンプラユニット100の収納部102に収納される。
次にシステム全体の動作について以下に説明する。
図17は検体ラック搬送経路の決定方法を示すフローチャートを示している。
検体ラックの搬送経路は、サンプラユニット100のラックID識別ユニット104、および検体ID識別ユニット106でID認識が行われた時点、機能モジュールでの処理が終了し、バッファユニット300のモジュールラック搬出位置404に検体ラックが搬出された時点、および1ラック投入取り出し部320から投入された検体ラックのID読取り部321でID認識が行われた時点で決定される。
図示しないシステムの制御部は、システムを構成する機能モジュールの負荷情報、すなわち各機能モジュールで処理しなければならない検体数や分析項目数の管理を行っており、上述のタイミングで最も負荷の低い機能モジュールの検索と、その機能モジュールで処理することができる項目の検索を行う。ここでいう負荷とは、各機能モジュールが処理しなければならない項目数だけでなく各機能モジュールの処理能力まで含むものであり、例えば各機能モジュールがすでに割り当てられているタスクを完了するまで時間、すなわち処理項目数に各処理に要する時間を乗じて計算した時間などによるものである。
制御部は当該ラックに対して必要な処理が、抽出した機能モジュールで行うことができるかの判定を行う。ここで抽出した機能モジュールでの処理が必要である場合には当該ラックの移動先として決定しラックの搬送を行う。
検索を行った結果、負荷が同一である機能モジュールが複数存在し、またいずれの機能モジュールでも当該ラックに対して処理が必要である場合には、移動距離が最短となる機能モジュールが当該ラックの移動先として決定される。
また、負荷が低いとして抽出した機能モジュールでの処理が不要である場合には、次に負荷が低い機能モジュールの検索と、その機能モジュールで処理することができる項目の検索を行い、再度当該ラックに対して必要な処理が行えるかの判定を行う。以上の手順を繰り返すことにより全ての機能モジュールに対して当該ラックの移動先となり得るかの判定を行う。
最終的にいずれも当該ラックの移動先に適合しない場合は、次に当該ラックに対して自動再検が必要であるかの判定を行う。ここで自動再検が必要である場合は、当該ラックはバッファユニットのバッファ部に移動され、分析結果が出力されるまでの間待機する。分析結果が出力された後、再検が必要である場合には、バッファ部から機能モジュールの処理位置に再び当該ラックは搬送され、処理が行われた後にバッファユニットから搬出され、ラック搬送部の戻りレーンを通ってサンプラユニットの収納部に収納される。また、自動再検が不要である場合、および自動再検が必要であると判定されバッファ部に待機させたが、出力された結果から再検が不要であると判定された検体ラックも同様に、バッファユニットから収納部に収納される。
なお、各機能モジュールの負荷情報は負荷が変化した時点、すなわち検体ラックの新たな移動先として決定された時点、あるいは機能モジュールでの処理が終了しバッファユニットのモジュールラック搬出位置に検体ラックが搬出された時点で更新される。
以下、実際の検体ラックフローの一実施例について説明する。図18,図19はサンプラユニット100,ラック搬送ライン200と、3台のバッファユニット300a,300b,300c、機能モジュール400a,400b,400c、付属モジュール500で構成されるシステムの簡略図である。
一例として、検体ラックが機能モジュール400aと付属モジュール500での処理が必要で、かつ各機能モジュールと付属モジュールの負荷は、400aが最も小さく、また自動再検は不要である場合について図18を用いて説明する。
この場合、サンプラユニット100に投入された検体ラックは、ラックID,検体IDの情報により処理すべき項目が決定されるのは前述の通りである。この時点で、制御部は負荷の小さい機能モジュールの検索、その機能モジュールで処理可能な項目の検索を行う。負荷の情報から最初に機能モジュール400aが抽出され、当該ラックは機能モジュール300aでの処理が必要であることから搬送先に400aが決定される。この決定に従い、検体ラックはラック搬送ユニット200の送りレーン201を通り、ラック搬入出位置203aからバッファユニット300aの移載機構によりバッファユニット内に移動する。
このとき、機能モジュール400aが移載した検体ラックの処理をすぐに行える状態、すなわち、機能モジュール400a内のバッファ403aが満杯でない状態であれば、検体ラックは機能モジュール400aに搬送される。また機能モジュール400aが移載した検体ラックをすぐに処理できない状態の場合は、検体ラックはバッファ部302aに搬送され待機する。
上記の検体ラックがバッファユニット300aに移動した後、サンプラユニットからは次の検体ラックについて同様に搬送経路の決定が行われる。次の検体ラックも同様に機能モジュール400aが搬送先として決定された場合、その時点でバッファユニット300aと機能モジュール400a,付属モジュール500、およびその間の搬送路上にある検体ラック数の総和がバッファユニット300aのバッファ部302aのスロット数未満であれば、バッファユニット300aへの検体ラック搬入は継続して行われ、バッファ部302aの空きスロットに検体ラックは待機する。また上記検体ラック数の総和がバッファ部スロット数に達している場合は、バッファユニット300aから搬送ユニット200への検体ラックの搬出が行われるまで、検体ラックはサンプラユニットで待機する。
バッファ部302aに待機させた検体ラックは、機能モジュール400aのバッファ403aに空きができた時点で機能モジュールに搬送され、順次処理が行われ、バッファユニット300aのモジュールラック搬出位置404aに搬出される。この時点で当該ラックに対して次の搬送経路の決定がなされる。このときの各機能モジュールおよび付属モジュールの負荷状態は、300b,500,300cの順に小さいものとすると、制御部は機能モジュール300bを抽出するが、当該ラックは300bでの処理が必要ないため、制御部は再度負荷の小さい付属モジュール500を抽出する。当該ラックは付属モジュール500での処理が必要であることから、次の搬送先は付属モジュール500に決定される。
このとき、付属モジュール500が当該ラックをすぐに処理できる場合は直接付属モジュール500にラックが搬送され、すぐに処理できない状態であれば、一旦バッファ部302aで待機し、処理が行える状態になった後に付属モジュール500に搬送される。
付属モジュール500での処理が終了した当該ラックは付属モジュールラック搬出位置503に搬出される。ここで再度次の搬送経路の決定がなされるが、当該ラックに対して必要な処理は全て終了しているため、搬送先にサンプラユニット100の収納部102が決定される。この決定に基づきバッファユニット300aは移載機構によりラック搬送ユニット200の戻りレーン202のラック搬入出位置204aにラックを移動し、ラック搬送ユニット200は収納部に当該ラックを収納する。
別の一例として、検体ラックが機能モジュール400a,400b,400cでの処理が必要で、かつ各機能モジュールと付属モジュールの負荷は、400cが最も小さく、また機能モジュール400bで自動再検が必要である場合について図19を用いて説明する。
サンプラユニット100に投入された検体ラックは、図17のフローに従い、はじめに負荷の低い機能モジュール400cを搬送先に決定される。当該検体ラックはラック搬送ユニット200の送りレーン201によりラック搬入出位置203cに移動され、バッファユニット300cを介して機能モジュール400cでの処理が行われ、終了後、モジュールラック搬出位置404cで次の搬送経路が決定される。
この時点での各機能モジュールの負荷は、400aと400bで同一であるとすると、検体ラックの搬送先は機能モジュール400cからの移動距離が小さい機能モジュール400bに決定される。よって当該ラックは、バッファユニット300cを介してラック搬送ユニット200の戻りレーン202のラック搬入出位置204cに搬出され、戻りレーン202を通って、バッファユニット300bのラック搬入出位置204bに移動、バッファユニット300bを介して機能モジュール400bで処理が行われる。処理終了後、モジュールラック搬出位置404bで次の搬送経路が決定される。
この時点での各機能モジュールの負荷は400aが低いとすると、同様に搬送先は400aに決定され、当該検体ラックはバッファユニット300bを介してラック搬送ユニット200の戻りレーン202のラック搬入出位置204bに搬出され、戻りレーン202を通って、バッファユニット300aのラック搬入出位置204aに移動、バッファユニット300aを介して機能モジュール400aで処理が行われる。処理終了後、モジュールラック搬出位置404aで次の搬送経路が決定される。
この時点で同様に図17のフローに従い搬送先の抽出が行われる。このとき機能モジュール400bでの初回測定結果が出ており再検が必要であると判明している場合は機能モジュール400bが搬送先として決定される。また初回測定結果が出ておらず再検の要否が不明である場合は、バッファユニット300aのバッファ部302aで待機する。
再検を行う場合、当該ラックはバッファユニット300aを介してラック搬送ユニット200の送りレーン201のラック搬入出位置203aに搬出され、送りレーン201を通ってバッファユニット300bのラック搬入出位置203bに移動後、機能モジュール400bで再検処理が行われる。処理終了後、モジュールラック搬出位置404bで次の搬送経路が決定される。
ここでも同様に図17のフローに従い搬送先の抽出が行われるが、当該ラックに対する処理は全て完了しているため、搬送先はサンプラユニット100の収納部102が決定される。よって当該ラックはバッファユニット300bを介してラック搬送ユニット200の戻りレーン202のラック搬入出位置204bに搬出され、送りレーン202を通ってサンプラユニット100の収納部102に収納される。
また再検を行わない場合は、バッファユニット300aのバッファ部302aで待機していた当該ラックの搬送先はサンプラユニット100の収納部102に決定され、同様にラック搬送ユニット200の戻りレーン202のラック搬入出位置204aに搬出され、送りレーン201を通ってサンプラユニット100の収納部102に収納される。
次に緊急検体が投入された場合の処理について図20を用いて説明する。ここでは簡単のため、緊急検体は機能モジュール400aでのみ処理が必要である場合について説明する。
サンプラユニット100の緊急検体投入部109に投入された緊急検体ラック553はID読取り後、搬送先に機能モジュール400aが決定され、バッファユニット300aのラック搬入出位置203aから、バッファユニット300aのラック搬入出待機位置301aに搬入される。バッファユニット300a、および機能モジュール400aでは、緊急検体が搬送されてくることが分かった時点で、搬送経路中にある一般検体ラック550,551,552をバッファ部302aに移動する動作を開始する。緊急検体ラック553は、機能モジュール400aまでの搬送経路が使用可能となり次第、機能モジュール400aに搬送され、処理が行われる。一方、バッファ部302aに一時退避した一般検体ラック550,551,552は、緊急検体ラック553が機能モジュール400aに搬送され次第、再び機能モジュール400aに搬送され、処理が再開される。処理の終了した緊急検体ラック553は前述の流れにより収納部102に収納される。