JP6373691B2 - 鉄筋接合用工具 - Google Patents
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Description
鉄筋には、主筋として用いられる柱筋や、柱筋同士を囲むように接合される帯筋がある。
継ぎ足しの際には、クランプ部材により挟持されている2本の鉄筋の端面同士を突き当てた状態で加熱および加圧して端面同士が互いに接合される。
端面同士を接合する場合には、端面同士の中心位置を一致させることが必要となる。これは、端面同士の接触面積が最大となるように位置決めして接合後の引張り強度を確保するためである。
従来、端面同士の中心位置を一致させる方法として、鉄筋同士の芯合わせ作業を行うことが知られている。
この構成は、支持体に対して摺動可能な摺動部とクランプ部を一体化する連結部を備えるとともに、摺動部を基端側として連結部を水平面内で摺動方向と直角な方向に押し動かす量を調整可能なネジを備えた構成である。
この構成では、ネジの進退量に応じて連結部に一体のクランプ部を鉄筋の端面と平行する方向に移動させて鉄筋同士の芯合わせができるようになっている。
端面と平行する方向で鉄筋同士の芯合わせが行われると、クランプされる鉄筋の種類が変わるまでの間、芯合わせされたクランプ部同士の対向関係が維持されるため、鉄筋を交換することによって次々に鉄筋の接合作業を行うことができる。
図6(A)には、鉄筋a,b同士の端面をバーナーにより加熱しながら加圧力を作用させて突き当て接合を行う状態が示されている。
経時的な変化として、鉄筋同士の軸線が図6(B)に示す作業開始時に対して、図6(C)に示すように横方向でずれてしまう横ずれ状態や、図6(D)に示すように傾きが生じる折れ曲がり状態が発生する。
つまり、ネジの進退量に応じてクランプ部を移動させる場合には、ネジを用いたピボット支承構造と同じ構造となり、上記隙間内で摺動部もクランプ部も共にネジの位置を支点として相反する方向に揺動し、シーソー運動する。このため、クランプ部の揺動による傾きは、ネジが位置する支点から隙間が存在する位置までの距離に依存することとなり、距離が大きければ、クランプ部側での傾きも大きくなってしまう。よって、経時的な変化で現れる傾きの変化が大きくなると横ずれや折れ曲がりが顕著となり、芯合わせの精度が崩れて悪化する。
図1において鉄筋接合用工具10は、中空状の支持体1(以下、便宜上、中空状支持体1ともいう)に固定されている固定クランプ部2と、中空状支持体1の長手方向に沿って摺動可能な摺動クランプ部3とを備えている。
固定クランプ部2は、中空状支持体1の長手方向一方側の端部の外周面に固定されて接合対象である鉄筋の一方を挟持するために用いられる。
摺動クランプ部3は、中空状支持体1内で摺動自在の円柱状の摺動体3Aの外周面に一体でその外周面から外側に向け延長された延長部3A1の先端に位置して接合対象である鉄筋の他方(便宜上、(図1(B)において符号Aで示す)を挟持するために用いられる。
摺動体3Aは、中空状支持体1の周面の一部に形成された長穴(便宜上、図1(B)において符号1Aで示す)から外側に向けて延長部3A1を突出させている。延長部3A1は、摺動体3Aと摺動クランプ部3とを連結した部分であり、その先端には、上述した摺動クランプ部3が備えられている。
摺動体3Aは、図示しない油圧シリンダのプランジャによって中空状支持体1の長手方向と平行になるように摺動体3にクランプされる鉄筋の他方Aの長手方向に中空支持体1内を摺動できる部材である。摺動クランプ部3と異なり固定クランプ部2は、中空状支持体1の内部からではなく、中空状支持体1の外周面に一体化された延長部の先端に設けられている。
摺動クランプ部3は、鉄筋Aの外周面を保持するための凹状曲面3B1と、この凹状曲面3B1に対向して図1(B)において垂直方向の内壁面を有する縦壁面3B2とを備えている。縦壁面3B2には、固定用ネジ4が挿通されている。固定用ネジ4を凹状曲面3B1側に向け進出させると、固定用ネジ4の先端が鉄筋Aに突き当たり、凹状曲面3B1に鉄筋Aを押しつけることができるので、鉄筋Aが挟持状態に維持される。なお、図1(A)に示すように、固定クランプ部2における凹状曲面および縦壁面は、符号2B1,2B2で示してある。
この場合にいう、断面中心の位相をずらすとは、図1(B)において摺動体3Aの真円状の断面の中心を通り紙面に垂直な軸を揺動中心として摺動クランプ部3が紙面の左右方向に揺動する動作に相当している。この動作により、固定クランプ部2側での鉄筋の中心位置に対して摺動クランプ部3での鉄筋Aの中心位置を整合させることができる。鉄筋同士の中心位置合わせ、いわゆる芯合わせが行われた固定クランプ部2と摺動クランプ部3との対向関係は、クランプされる鉄筋のサイズが変更されるまでの間又は経時的変化による横ずれや折れ曲がりが顕著となるまでの間、維持されることになる。
中空状支持体1の内面と摺動体3Aの外周面との間には、摺動体3Aの摺動を許容するためにわずかな隙間δ1が設けられている。この隙間δ1の存在により、図2(B)に示す従来構造では、ピボット支承構造であるために、調節ネジ60が当接する延長部3A1の位置P1を支点として隙間δ1がなくなるまでの揺動量θ2が発生する。この揺動量θ2は、符号P1で示す支点からの半径に影響される。このため、摺動クランプ部3側での揺動量も上述した半径に比例して大きくなり、鉄筋同士のずれも大きくなる。
これにより、隙間δ1がなくなるまで延長部3A1を揺動したとしても、図2(A)中、符号P0で示す揺動支点を基準とする揺動量θ1が得られる半径が、図2(B)中、符号P1で示す従来の場合の揺動支点を基準とする揺動量θ2が得られる半径よりも短いことが理由となって、符号θ1で示す揺動量が、符号θ2で示す揺動量に比較して少なくなる。
しかも、調整ネジ6の当接位置が延長部3A1の延長方向に複数あることにより、仮に符号P0で示す調整ネジ6の当接位置を支点として揺動が生じる場合でも、支点P0の下方に位置する調整ネジ6の当接により摺動クランプ3側での揺動を抑えることができる。換言すれば、支点P0を基準とした延長部3A1のシーソー運動が阻止されることになる。よって、摺動クランプ部3側での揺動量が小さく抑えられることになる。摺動クランプ3側での揺動量が抑えられると、固定クランプ部2側の鉄筋との芯合わせに要する調整ネジ6の調整量も少なくてすむことになり、作業性を向上させることができる。
調整ネジ6の挿通位置に関しては、図2に示した延長部3A1の延長方向に複数設けることに限らず、摺動体3Aの摺動方向に複数設けることも対象となる。このため、図1において中空状支持体1の長手方向と平行する摺動体3Aの摺動方向を対象とする傾きに関し、調整ネジ6を1カ所設けたピボット支承構造と調整ネジ6を複数箇所に設けた支承構造との違いも、図2に示した場合と同様な結果が得られる。
図3は、外径が大きい鉄筋A(外径が(D(A)φ))の場合(図3(A)参照)と、これよりも外径が小さい鉄筋A’(外径が(D(A’)φ))の場合(図3(B)参照)とをそれぞれ対象として接合後に発生した横ずれおよび折れ曲がりの状態を示している。
なお、図3には、鉄筋Aと鉄筋A’との外径の大きさの関係が、D(A)φ>D(A’)φという関係式で示してある。
横ずれ量が大径、小径いずれの場合にも2mmであるとすると、大径(D(A)φ)に比べて小径(D(A’)φ)の場合には外径に対するずれ量の占める割合が大径よりも大きくなり、ずれていることが目立ちやすい。また傾きに関しても同じ理由により小径の方が、目立ちやすい。
図4は、支持片部5Aに形成される締結部5Bの類別を示している。なお、以下の説明では、表裏の関係に位置する支持片部5Aに形成される締結部を符号5Bと5B’とで区別して示す。
図4において、(A−1)〜(A−3)は、前述した摺動方向および延長方向にそれぞれ2列を対象として締結部5B,5B’を設ける場合を示し、(B−1)〜(B−3)は、摺動方向に3列、延長方向に2列を対象として締結部5B,5B’を設ける場合を示している。また、図4(A−1)〜(A−3),(B−1)〜(B−3)のいずれにおいても、2つの支持片部5A,5Aのうちの一方の側から見た状態での締結部5B,5B’の配置位置を示している。
図4の(A−1)は、摺動方向および延長方向の表裏各面の支持片部5Aにおける同じ位置に締結部5B,5B’が設けられている場合を示し、図4の(A−2)は、摺動方向および延長方向で各締結部5B,5B’が設けられる4隅を結ぶ対角線の一つを対象として表裏各面の支持片部5Aの同じ位置にそれぞれ締結部5B,5B’が設けられている場合を示している。また、図4の(A−3)は、摺動方向および延長方向で締結部5B,5B’が設けられる4隅を結ぶ対角線の双方を対象として一方の対角線では表裏一方側の支持片部5Aに締結部5Bが、そして他方の対角線では表裏他方側の支持片部5Aに締結部5B’が設けられている場合を示している。
図4の(B−1)は、摺動方向および延長方向における締結部5B,5B’を設ける位置全てを対象として表裏各面の支持片部5A,5Aの同じ位置にそれぞれ締結部5B,5B’が設けられている場合を示し、図4の(B−2)は、摺動方向および延長方向で互い違いとなる関係を持たせて表裏各面の支持片部5A,5Aにおける同じ位置にそれぞれ締結部5B,5B’を設けた場合を示している。また図4(B−3)は、(B−2)に示した場合と同様に、摺動方向および延長方向で互い違いとなる関係を持たせて支持片部5Aの表裏各面で互い違いの位置にそれぞれ締結部5B,5B’を設けた場合を示している。
従って、図4(A−1),(B−1)では、各支持片部5Aの摺動方向及び延長方向に複数の締結部5B,5B’が設けられており、図4(A−2),(A−3),(B−2),(B−3)では、各支持片部5Aの摺動方向と延長方向とのいずれか一方を含む方向に沿った方向で複数の締結部5B,5B’が設けられている。
いずれの場合も、各支持片部5Aの摺動方向と延長方向とのうちの少なくとも延長方向を含む方向に沿って締結部5B,5B’が複数箇所に形成されている。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
2 固定クランプ部
3 摺動クランプ部
3A 摺動体
3A1 延長部
5 調整部材
5A 片部
5B,5B’ 締結部
5C 案内部材
6 ネジ
A 鉄筋の他方
Claims (4)
- 接合対象である一対の鉄筋の一方を挟持するために支持体に固定されている固定クランプ部と、
前記支持体に対して摺動する摺動体と一体で前記支持体に対して移動する、前記鉄筋の他方を挟持する摺動クランプ部と、
前記摺動体と前記摺動クランプ部とを連結した延長部と、
前記延長部を挟んで設けられ、該延長部を該延長部の厚さ方向に押し動かすことで前記摺動クランプ部に挟持されている前記鉄筋の断面中心の位相をずらす調整部材と、を備え、
前記調整部材は、前記厚さ方向両面に対向する片部と、該片部において前記摺動体の摺動方向と前記延長部の延長方向とのうちの少なくとも前記延長方向を含む方向に沿って複数箇所に形成され、ネジの先端が前記延長部に向けて挿通される締結部とを有する鉄筋接合用工具。 - 前記締結部は、前記片部の両方で同じ位置にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1記載の鉄筋接合用工具。
- 前記締結部は、前記片部の双方で互い違いとなる位置にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1記載の鉄筋接合用工具。
- 前記ネジの先端には、前記延長部に面接触させる案内部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一つに記載の鉄筋接合用工具。
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