JP6373173B2 - 変性y型ゼオライト製除湿剤 - Google Patents
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Description
また、特許文献2にはゼオライトを酸処理して非晶質化した変性アルミノケイ酸を乾燥剤として用いることが提案されている。
しかしながら、特許文献3のゼオライト変性物からなる除湿剤においても、吸着水分の低温放出性については更なる向上が求められている。
また、この除湿剤はNa/Alモル比が0.28〜0.70(特に0.30〜0.50)の範囲にある。このことは、この変性物中のNaがイオン交換されて一部除去されていることを示している。
また、上記Y型ゼオライトの変性物は、結晶度が20〜90%(特に40〜80%)の範囲にある。このことは、Y型ゼオライトに特有のX線回折ピーク強度が消失しない程度に減少し、結晶構造が適度に崩壊し変性されていることを意味する。ところで、このような変性は水溶液中でアンモニウムイオン交換された後、比較的高温での焼成でなされる。即ち、Y型ゼオライトは一般的に耐熱性が高く、イオン交換を行わない場合は800℃の温度で焼成してもほとんど変性が見られない。また、アンモニウムイオン交換した場合には、500℃程度の焼成において、結晶構造を破壊しないまま、アンモニウムイオンが分解しアンモニアを放出する(一般的に、この状態を水素Y型ゼオライトと呼ぶ)。
このため、Y型ゼオライトを焼成により変性せしめるためには、前段階で水溶液中でのアンモニウムイオン交換による、一部Naイオンの除去が必要であり、かつ600〜800℃程度の高温の焼成が必要なわけである。なお公知のように900℃程度の焼成を行うと、Y型ゼオライトは相転移を起こし、吸放湿性をほとんど持たない非晶質になってしまう。
こうして、イオン交換と焼成の工程を経たY型ゼオライトは、結晶構造の適度な破壊がもたらされることにより、そのY型ゼオライトの優れた吸湿性能が維持したまま低温で吸湿した水分を放出できる能力が向上するものと思われる。
Y型ゼオライトの吸湿容量が低下していない証明として、本発明のY型ゼオライトの変性物は、水蒸気BET法で測定した親水性比表面積が1000m2/g以上(特に1050〜1300m2/g)の範囲にあり、かつ水蒸気吸着等温線のP/P0=0.9以上から求められる全細孔容積が0.30〜0.40cm3/gの範囲にある。この親水性比表面積は、窒素吸着の代わりに水蒸気吸着を利用して測定したものであり、この方法により測定された比表面積は、親水性や水分吸着性を示す。即ち、この比表面積が上記範囲内にあることは、このY型ゼオライト変性物が、未変性のY型ゼオライトと同等レベルの水分吸着性を有していることを示しており、Y型ゼオライトの吸着性能が低下していないことを裏付けられている。
このように、除湿剤として用いる本発明のY型ゼオライト変性物は、Y型ゼオライトの細孔構造をある程度維持したまま、水分放出に寄与する細孔部分に変化が持たされていると考えられ、この結果、水分吸着性に優れているばかりか、低温での水分放出性も改善されているわけである。
本発明の除湿剤は、Y型ゼオライトの変性物であるが、この変性物は、Y型ゼオライトを水溶液中でカチオン交換した後、焼成することにより得られる。
変性に供されるY型ゼオライトとしては、それ自体公知のものの中でも水分吸着性に優れたものが使用される。このようなY型ゼオライトは、例えば特許第4589044号等により所謂Na−Y型ゼオライトとして公知であるが、その代表的組成等は、以下のとおりである。
SiO2/Al2O3(モル比):3.0〜5.5
Na2O:10.0〜16.0質量%
強熱減量(1050℃):12.0〜19.0質量%
親水性比表面積(水蒸気BET法):1050〜1200m2/g
全細孔容積(水蒸気吸着等温線P/P0=0.9以上)
:0.30〜0.40cm3/g
本発明では、上記のY型ゼオライトの中から、SiO2/Al2O3(モル比)が前述した範囲(4.0より大きく且つ5.0以下)の範囲にあるものを選択し、これを後述するカチオン交換に供する。例えば、酸処理などによってモル比の調整を行った場合には、結晶構造や細孔構造の破壊が生じてしまい、目的とする変性物を得ることができない。
焼成に先立って行われるカチオン交換は、Y型ゼオライト中のNaイオンを水溶液中でアンモニウムイオンに交換するものである。即ち、Na‐Y型ゼオライトは耐熱性に優れているため、これを焼成によって変性するには、焼成温度を著しく高い温度とすることが必要であり、Y型ゼオライトの結晶構造を大きく破壊せずに水分吸着性を維持し得る程度の適度な変性が困難となってしまう。しかるに、Naイオンをアンモニウムイオンに交換しておけば、加熱によってアンモニウムイオンが分解した部分の細孔を後述するようにさらに高温の焼成で容易に変性することが出来るため、Y型ゼオライトの細孔構造を大きく破壊せず、適度に変性することが可能となる。
また、かかるカチオン交換処理は、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩の水溶液を使用し、上述したY型ゼオライトと該水溶液とを、室温で撹拌混合すればよいが、60℃程度に加熱すると反応をより迅速に行うことも可能である。処理時間は、アンモニウム塩の種類や水溶液のアンモニウム塩濃度によっても異なるが、一般に、2〜40質量%濃度の塩化アンモニウム水溶液を用いた場合で0.5〜24時間程度である。
上記のようにしてカチオン交換処理が行われた後は、ろ過及び水洗を行い、未反応の塩化アンモニウムや生成したNa塩を除去した後、焼成を行い、Y型ゼオライトの適度な変性を行う。
なお、本発明において結晶度とは、X線回折において、標準物質(触媒学会のJRC−Z−Y4.8)の特定の5つの面指数のピーク強度の和を100%とし、このピーク強度の和に対する変性ゼオライトのピーク強度の和の相対比である(詳細は、後述の実施例を参照)。
上記のような適度な焼成によって得られたY型ゼオライトの変性物は、SiO2/Al2O3(モル比)が4.0〜5.5の範囲にあり、出発原料として用いたY型ゼオライトと実質的に同じである。即ち、この変性物は、Y型ゼオライトに特有の結晶構造は大きく失われてはおらず、その結晶度は、焼成の項でも説明したように、20〜90%、特に40〜80%の範囲にある。
かかるY型ゼオライト変性物からなる除湿剤は、粒状物の使用に供することもできるし、樹脂バインダと混合し、所定の形状に成形して使用に供することもできる。
かかる除湿剤は、水分に対して優れた吸着性を示すばかりか、低温での吸着水分の放出性が向上しており、低温領域での加熱により吸着水分を放出せしめて再生することができる。従って、一般家庭の空調用として好適使用することができ、例えば、特許文献1の除湿ロータなどに設けられている除湿層中に配合して使用することが可能である。或いは、除湿剤を担体に担持して除湿用部材として用いる事もでき、担体はハニカム構造を有していることが好適である。
また、この除湿剤は、水分の吸着及び脱着の何れもが容易に行われるため、空気を利用した蓄熱システム(例えばヒートポンプ)に用いる吸着剤などの用途にも使用することができる。
さらに、この除湿剤は、湿度調節用シートまたは湿度調節壁材として使用することも可能である。
なお、実施例における各種試験は下記の方法で行った。
強熱減量(Ig-Loss)は、試料を1050℃で一時間焼成後放冷し減量から定量した。また、他の元素分析については、(株)リガク製Rigaku RIX2100を用い、ターゲットはRh、分析線はKαで、その他は以下の条件で測定を行った。
なお、試料は110℃で3時間乾燥した物を基準とする。
相対湿度90%に調湿済みのデシケーター中に乾燥試料を入れ、室温下で48時間以上静置し、水分を飽和量吸着させる。取出した試料を、X線回折測定する。同一条件で測定した標準物質(触媒学会のJRC−Z−Y4.8)のXRDにおいて、ICDD39−1380で(331)、(440)、(533)、(642)、(555)と示される5つの面指数のピーク強度の和を100%とした時の、測定試料の同一面指数ピーク強度の和の相対比を結晶度とする。
なお、X線回折測定はリガク社製のultima4を用いて、Cu−Kαにて下記の条件で測定を行った。
ターゲット:Cu
フィルター:湾曲結晶グラファイトモノクロメーター
検出器:SC
電圧:40kV
電流:40mA
ステップサイズ:0.02°
計数時間:0.6sec/step
スリット:DS2/3° RS0.3mm SS2/3°
日本ベル社のBelsorp Maxを用いて測定を行った。前処理は、真空条件下で200℃、3時間の条件で行った。平衡判定時間は300秒とした。親水性比表面積を測定するに当たり、BET法の適用範囲はP/P0=0.01〜0.1とし、解析ソフトBel Masterにより解析した。
上記Belsorp Maxの測定の、P/P0=0.90〜0.92の範囲における吸着容量から、解析ソフトBel Masterにより全細孔容積を求めた。
まず、事前に110℃で1時間乾燥したシャーレΦ100mmの質量を測定する(w1)。このシャーレに、約2gの除湿剤を測り取り、イオン交換水を10ml加えてスラリー化する。このスラリーを、予め150℃に温めておいた卓上乾燥機で、2時間前処理乾燥する。乾燥後、シャーレと除湿剤の合計質量(w2)を測定し、硫酸希釈液により、25℃でRH=90%となるように調節したデシケーター内で16時間かけ飽和吸湿させる。吸湿16時間後のシャーレと除湿剤の合計質量(w3)を測定し、以下の式により吸着容量(150℃乾燥質量基準)を求めた。
吸湿容量[質量%]=(w3−w2)/(w2−w1)× 100
吸湿容量の評価を前処理とする。飽和吸湿したシャーレと除湿剤を、あらかじめ90℃に温めておいた卓上乾燥機で、90分間乾燥する。この乾燥したシャーレと除湿剤の合計質量(w4)を測定する。同様に110℃、150℃の順で同様の操作を繰り返し、それぞれの質量を測定する(w5、w6)。以下の式により、それぞれの温度で、吸湿した水分を放出させた時の脱着量(RH=90% 吸湿質量基準)を求めた。
脱着量(90℃)[質量%]=(w3−w4)/(w3−w1)×100
脱着量(110℃)[質量%]=(w3−w5)/(w3−w1)×100
脱着量(150℃)[質量%]=(w3−w6)/(w3−w1)×100
水澤化学工業株式会社製ナトリウムY型ゼオライトであるミズカシーブスY−500(SiO2/Al2O3=4.7)を使用した。この結晶度は110.1%であった。なお、ミズカシーブスは水澤化学工業株式会社の登録商標である。
水澤化学工業株式会社製ナトリウムY型ゼオライトであるミズカシーブスY−400(SiO2/Al2O3=3.8)を使用した。この結晶度は104.0%であった。
(アンモニウムイオン交換工程)
比較例1のY型ゼオライト200g(110℃乾燥質量)に対して1800gの水を加えて10%スラリーとし、200gの塩化アンモニウムを加え、撹拌しながら室温で3時間イオン交換反応を行った。その後、濾過水洗を行った後に110℃で一晩乾燥を行った。
(焼成工程)
乾燥品20gを蒸発皿に測り取り、電気炉で700℃、3時間焼成することで除湿剤を得た。
塩化アンモニウムの量を45gにし、焼成温度を750℃とした以外は、実施例1と同様の処理で除湿剤を得た。
焼成温度を500℃とした以外は、実施例1と同様の作業で除湿剤を得た。
市販品であるCOSMO製(韓国)10Mを使用した。
特許文献3の実施例1に従い、除湿剤を得た。
比較例1の代わりに比較例2を用い、焼成温度を650℃とした以外は、実施例1と同様の作業で除湿剤を得た。
Claims (6)
- SiO2/Al2O3(モル比)が4.0より大きく且つ5.5以下、Na/Alモル比が0.28〜0.70、結晶度が20〜90%、及び水蒸気BET法で測定した親水性比表面積が1000m2/g以上であるY型ゼオライトの変性物からなることを特徴とする除湿剤。
- 水蒸気吸着等温線のP/P0=0.9以上から求められる全細孔容積が0.30〜0.40cm3/gであることを特徴とする請求項1記載の除湿剤。
- 請求項1又は2のいずれか1項に記載の除湿剤が担体に担持されていることを特徴とする除湿用部材。
- 前記担体が、ハニカム構造であることを特徴とする請求項3記載の除湿用部材。
- 請求項1又は2のいずれか1項に記載の除湿剤を使用することを特徴とするヒートポンプ。
- 請求項1又は2のいずれか1項に記載の除湿剤を使用することを特徴とするデシカント除湿機。
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