JP6317199B2 - 除湿剤 - Google Patents
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Description
また、特許文献2にはゼオライトを酸処理して非晶質化した変性アルミノケイ酸を乾燥剤として用いることが提案されている。
しかしながら、特許文献3のゼオライト変性物からなる除湿剤においても、吸着水分の低温放出性については更なる向上が求められている。
(1)Y型ゼオライト変性物の、水蒸気BET法で測定した親水性比表面積が900m2/g以上であること、
(2)水蒸気吸着等温線のP/P0=0.9以上から求められる全細孔容積が0.30cm3/g以上であること、
が好ましい。
このようなY型ゼオライト変性物は、Y型ゼオライトをアンモニウムイオン交換した後に焼成することで得られる。
かかる除湿用部材において、担体は、ハニカム構造を有していることが好ましい。
さらに、本発明によれば、上記除湿剤を使用したヒートポンプ或いはデシカント除湿機が提供される。
因みに、前述した特許文献3で提案されている除湿剤(比較例5)では、湿度30%での水分吸着容量は、約25質量%と高いが、60℃での水分放出量は約6質量%程度であり、本発明の約半分程度に過ぎない。また、本出願人が提案した特願2013−187569号のX型ゼオライト変性物の除湿剤(比較例6)では、低温下での吸着水分放出性は極めて良好で、60℃で約13質量%であるが、低湿度下での水分吸着性が低く、湿度30%での水分吸着容量が約16質量%程度に過ぎない。
このように、本発明の除湿剤は、湿度60%以下、特に30%程度の低湿度下での水分吸着性に優れているばかりか、60℃程度の低温でも多量の吸着水分を放出することができるため、吸着水分の放出のために高温に加熱する必要がなく、容易に再生して再利用することができ、特に、一般家庭での使用には最適である。
例えば、図2のような水蒸気吸着等温線と合わせて考えると、本発明の出発物質であるY型ゼオライトは、均一で数Åの非常に小さな細孔を持つため、極めて低湿度側で水分が吸着された後は、ほとんど水分の吸着が起きない。なお、一般的なゼオライトの再生に数百度という高温が必要であるのも、細孔が小さいほど吸着水分の放出にエネルギーが必要であるためであると理解される。
これに対し、本発明の材は、適切なアンモニウムイオン交換と焼成により、ゼオライトの持つ細孔が拡大されており、原料となるY型ゼオライトのSiO2/Al2O3(モル比)が低くなるほど調製後の材の持つ細孔が大きくなっているため、水蒸気吸着等温線に変化をもたらし、さらには、大きい細孔の方が水分を放出しやすいため、低温での吸着水分放出性にも優れる。
後述する図3で示された窒素吸着法による細孔分布の測定で示されるように、SiO2/Al2O3(モル比)が小さくなるほど(実施例4、実施例3、実施例2、実施例1の順で)、細孔の分布が大きい方にシフトしており、このことも上記した材の細孔変化に関すると考えられる。
また、この除湿剤はNa/Alモル比が0.25〜0.60(特に0.35〜0.45)の範囲にある。このことは、当該変性処理に伴いY型ゼオライトのNaがイオン交換されて一部除去されていることを示している。
このため、Y型ゼオライトを焼成により変性せしめるためには、前段階で水溶液中でのアンモニウムイオン交換による、一部Naイオンの除去が必要であり、かつ350〜600℃程度の焼成が必要なわけである。なお公知のように900℃程度の焼成を行うと、Y型ゼオライトは相転移を起こし、吸放湿性をほとんど持たない非晶質になってしまう。
こうして、イオン交換と焼成の工程を経たY型ゼオライトは、結晶構造の適度な変性がもたらされることにより、そのY型ゼオライトの優れた吸湿性能をある程度維持したまま低温で吸着した水分を放出する能力が向上するものと思われる。
Y型ゼオライトの吸湿性が大きく低下していない証明として、本発明のY型ゼオライト変性物は、水蒸気BET法で測定した親水性比表面積が900m2/g以上(特に900〜1200m2/g)の範囲にあり、かつ水蒸気吸着等温線のP/P0=0.9以上から求められる全細孔容積が0.30cm3/g以上である。この親水性比表面積は、一般的に比表面積測定に利用される窒素吸着の代わりに水蒸気吸着を利用して測定したものであり、この方法により測定された比表面積は、親水性や水分吸着性と密接に関係する。即ち、この比表面積が上記範囲内にあることは、このY型ゼオライト変性物が、未変性のY型ゼオライトと同等レベルの水分吸着性を有していることを示しており、Y型ゼオライトの吸着性能がほとんど低下していないことを裏付けている。
このように、除湿剤として用いる本発明のY型ゼオライト変性物は、Y型ゼオライトの構造をある程度維持したまま、水分放出に寄与する細孔部分に変化がもたらされていると考えられ、この結果、水分吸着性に優れているばかりか、低温での水分放出性も改善されているわけである。
本発明の除湿剤は、Y型ゼオライトの変性物であるが、この変性物は、Y型ゼオライトを水溶液中でイオン交換した後、焼成することにより得られる。
変性に供されるY型ゼオライトとしては、それ自体公知のものの中でも水分吸着性に優れたものが使用される。このようなY型ゼオライトは、例えば特許第4589044号等により所謂Na−Y型ゼオライトとして公知であるが、その代表的組成等は、以下のとおりである。
SiO2/Al2O3(モル比):3.0〜5.5
Na2O:10.0〜16.0質量%
強熱減量(1050℃):12.0〜19.0質量%
親水性比表面積(水蒸気BET法):1050〜1200m2/g
全細孔容積(水蒸気吸着等温線P/P0=0.9以上):
0.30〜0.40cm3/g
本発明では、上記のY型ゼオライトの中から、SiO2/Al2O3(モル比)が前述した範囲(3.0より大きく且つ4.0以下)の範囲にあるものを選択し、これを後述するイオン交換に供する。
例えば、酸処理などによってモル比の調整を行った場合には、一般的に脱アルミニウムと呼ばれる構造破壊が起き、さらに本願のように、比較的モル比の低いゼオライトを酸処理に供ずると、骨格の破壊が起きてしまい、目的とする変性物を得ることが困難である。
焼成に先立って行われるイオン交換は、Y型ゼオライト中のNaイオンを水溶液中でアンモニウムイオンに交換するものである。即ち、Na‐Y型ゼオライトは耐熱性に優れているため、これを焼成によって変性するには、焼成温度を著しく高い温度とすることが必要であり、Y型ゼオライトの結晶構造を大きく破壊せずに水分吸着性を維持し得る程度の適度な変性が困難となってしまう。しかるに、Naイオンをアンモニウムイオンに交換しておけば、加熱によってアンモニウムイオンが分解した部分の細孔を、後述するように焼成で容易に変性することが出来るため、Y型ゼオライトを適度に変性することが可能となる。
また、かかるイオン交換処理は、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩の水溶液を使用し、上述したY型ゼオライトと該水溶液とを、室温で撹拌混合すればよいが、この際60℃程度に加熱するとイオン交換をより迅速に行うことも可能である。処理時間は、アンモニウム塩の種類や水溶液のアンモニウム塩濃度によっても異なるが、一般に、2〜40質量%の塩化アンモニウム水溶液を用いた場合で0.5〜24時間程度である。
上記のようにしてイオン交換処理が行われた後は、ろ過及び水洗を行い、未反応の塩化アンモニウムや生成したNa塩を除去した後、焼成を行い、Y型ゼオライトの適度な変性を行う。
なお、本発明において結晶度とは、X線回折において、標準物質(触媒学会のJRC−Z−Y4.8)の特定の5つの面指数のピーク強度の和を100%とし、このピーク強度の和に対する変性ゼオライトのピーク強度の和の相対比である。
上記のような適度な焼成によって得られたY型ゼオライトの変性物は、SiO2/Al2O3(モル比)が3.0より大きく且つ4.0以下の範囲にあり、出発原料として用いたY型ゼオライトと実質的に同じモル比である。即ち、この変性物は、Y型ゼオライトに特有の結晶構造はある程度維持されており、その結晶度は、焼成の項でも説明したように、40〜90%、特に40〜70%の範囲にある。
かかるY型ゼオライト変性物からなる除湿剤は、粒状物の使用に供することもできるし、樹脂バインダと混合し、所定の形状に成形して使用に供することもできる。
かかる除湿剤は、水分に対して優れた吸着性を示すばかりか、低温での吸着水分の放出性が向上しており、低温領域での加熱により吸着水分を放出せしめて再生することができる。従って、一般家庭の空調用として好適使用することができ、例えば、特許文献1の除湿ロータなどに設けられている除湿層中に配合して使用することが可能である。或いは、除湿剤を担体に担持して除湿用部材として用いる事もでき、担体はハニカム構造を有していることが好適である。
また、この除湿剤は、水分の吸着及び脱着の何れもが容易に行われるため、空気を利用した蓄熱システム(例えばヒートポンプ)に用いる吸着剤などの用途にも使用することができる。
さらに、この除湿剤は、湿度調節用シートまたは湿度調節壁材として使用することも可能である。
なお、実施例における各種試験は下記の方法で行った。
元素分析については、(株)リガク製Rigaku RIX2100を用い、ターゲットはRh、分析線はKαで、その他は以下の条件で測定を行った。
なお、試料は110℃で3時間乾燥した物を基準とする。
相対湿度90%に調湿済みのデシケーター中に乾燥試料を入れ、室温下で48時間以上静置し、水分を飽和量吸着させる。取出した試料を、X線回折測定する。同一条件で測定した標準物質(触媒学会のJRC−Z−Y4.8)のXRDにおいて、ICDD39−1380で(331)、(440)、(533)、(642)、(555)と示される5つの面指数のピーク強度の和を100%とした時の、測定試料の同一面指数ピーク強度の和の相対比を結晶度とする。
なお、X線回折測定はリガク社製のultima4を用いて、Cu−Kαにて下記の条件で測定を行った。
ターゲット:Cu
フィルター:湾曲結晶グラファイトモノクロメーター
検出器:SC
電圧:40kV
電流:40mA
ステップサイズ:0.02°
計数時間:0.6sec/step
スリット:DS2/3° RS0.3mm SS2/3°
日本ベル社のBelsorp Maxを用いて測定を行った。前処理は、真空条件下で200℃、3時間の条件で行った。平衡判定時間は300秒とし、吸着温度は25℃とした。また、吸着質は脱泡処理を施した脱イオン水とした。親水性比表面積を測定するに当たり、BET法の適用範囲はP/P0=0.01〜0.1とし、解析ソフトBel Masterを用いた。
上記Belsorp Maxの測定の、P/P0=0.90〜0.92の範囲における吸着容量から、解析ソフトBel Masterにより全細孔容積を求めた。
上記Belsorp Maxの測定の、P/P0=0.29〜0.31の範囲における測定点の吸着容量を、湿度30%における吸着容量とした。
まず、事前に110℃で1時間乾燥したシャーレΦ100mmの質量を測定する(w1)。このシャーレに、約2gの除湿剤を測り取り、イオン交換水を10ml加えてスラリー化する。このスラリーを、予め150℃に温めておいた卓上乾燥機で、2時間前処理乾燥する。乾燥後、シャーレと除湿剤の合計質量(w2)を測定し、硫酸希釈液により、25℃でRH=90%となるように調節したデシケーター内で16時間以上かけ飽和吸湿させる。吸湿16時間後のシャーレと除湿剤の合計質量(w3)を測定し、以下の式により吸着容量(150℃ 乾燥質量基準)を求めた。
吸着容量[質量%]=(w3−w2)/(w2−w1)×100
吸着容量の評価を前処理とする。飽和吸湿したシャーレと除湿剤を、あらかじめ60℃に温めておいた卓上乾燥機で、90分間乾燥する。この乾燥したシャーレと除湿剤の合計質量(w4)を測定する。同様に90℃、110℃、150℃の順で同様の操作を繰り返し、それぞれの質量を測定する(w5、w6)。以下の式により、それぞれの温度で、吸湿した水分の放出量(RH=90%吸湿質量基準)を求めた。
放出量(60℃)[質量%]=(w3−w4)/(w3−w1)×100
放出量(90℃)[質量%]=(w3−w5)/(w3−w1)×100
放出量(110℃)[質量%]=(w3−w6)/(w3−w1)×100
放出量(150℃)[質量%]=(w3−w7)/(w3−w1)×100
(Y型ゼオライトの合成)
従来公知の方法で、Y型ゼオライトの合成を行った。なお、原料は3号ケイ酸ソーダ(SiO2=22.9質量%、Na2O=7.4質量%、H2O=69.7質量%)、アルミン酸ソーダ(Al2O3=23.0質量%、Na2O=19.2質量%、H2O=57.8質量%)、49質量%NaOHおよび水を使用し、反応液の組成はSiO2:Al2O3:Na2O:H2O=4:1:3.8:197.6となるように調整した。反応にはステンレス容器を使用し、卓上乾燥機を熱源として95℃、18時間、静置反応することでSiO2/Al2O3(モル比)=3.1のY型ゼオライトを得た。
(アンモニウムイオン交換工程)
合成したSiO2/Al2O3(モル比)=3.1のY型ゼオライト200g(110℃乾燥質量)に対して1800gの水を加えて10%スラリーとし、100gの塩化アンモニウムを加え、撹拌しながら室温で3時間イオン交換反応を行った。その後、濾過水洗を行った後に110℃で一晩乾燥し一部を乳鉢と乳棒で粉砕した。
(焼成工程)
粉砕品20gを蒸発皿に測り取り、電気炉で450℃、3時間焼成することで除湿剤を得た。
合成反応液の組成をSiO2:Al2O3:Na2O:H2O=4:1:3.3:202.1、焼成を400℃とした以外は、実施例1と同様の操作でSiO2/Al2O3(モル比)=3.2の除湿剤を得た。
合成反応液の組成をSiO2:Al2O3:Na2O:H2O=8:1:5.6:240.8とした以外は、実施例1と同様の操作でSiO2/Al2O3(モル比)=3.5の除湿剤を得た。
合成反応液の組成をSiO2:Al2O3:Na2O:H2O=8:1:5.2:239.2とした以外は、実施例1と同様の操作でSiO2/Al2O3(モル比)=3.7の除湿剤を得た。
水澤化学工業株式会社製Na−Y型ゼオライトであるミズカシーブスY−400(SiO2/Al2O3=3.8)を使用した。この結晶度は104.0%であった。なお、ミズカシーブスは水澤化学工業株式会社の登録商標である。
焼成温度を700℃とした以外は、実施例1と同様の操作で除湿剤を得た。
Na−Y型ゼオライトとして水澤化学工業株式会社製ミズカシーブスY−500(SiO2/Al2O3=4.8)を使用した。Y型ゼオライト200g(110℃乾燥質量)に対して1800gの水を加えて10%スラリーとし、200gの塩化アンモニウムを加え、撹拌しながら室温で3時間イオン交換反応を行った。その後、濾過水洗を行った後に110℃で一晩乾燥し一部を乳鉢と乳棒で粉砕した。粉砕品20gを蒸発皿に測り取り、電気炉で500℃、3時間焼成することで除湿剤を得た。
焼成温度を700℃とした以外は比較例3と同様の操作で除湿剤を得た。
特許文献3の実施例1に従い、除湿剤を得た。
5Lのステンジョッキに、655gの3号ケイ酸ソーダ(SiO2=22.9mass%、Na2O=7.4mass%、H2O=69.7mass%)を測り取り、718gの水を加えてシリカ側原料とした。3Lポリジョッキに382gのアルミン酸ソーダ(Al2O3=23.0mass%、Na2O=19.2mass%、H2O=57.8mass%)を測り取り、191gの49mass%NaOHおよび718gの水を加えてアルミ側原料を調整した。なお、仕込み原料のSiO2/Al2O3(モル比)は2.9である。シリカ側原料とアルミ側原料を室温で混合し、この混合液を1時間撹拌した。撹拌終了後95℃まで昇温し、撹拌を止めて95℃で18時間反応し、濾過水洗した。得られたケーキを110℃で一晩乾燥することで、X型ゼオライトを得た。
得られたX型ゼオライトの化学組成解析を行ったところ、SiO2/Al2O3は2.5であり、結晶度は102.4%だった。
このゼオライト200g(110℃乾燥質量)に対して1800gの水を加えて10%スラリーとし、116gの塩化アンモニウムを加え、撹拌しながら室温で3時間イオン交換反応を行った。その後、濾過水洗を行った後に110℃で一晩乾燥を行った。最後に、乾燥品20gを蒸発皿に測り取り、電気炉で400℃、3時間焼成することで除湿剤を得た。
Claims (8)
- SiO2/Al2O3(モル比)が3.0より大きく4.0以下であり、Na/Alモル比が0.25〜0.60及び結晶度が40〜90%であるY型ゼオライト変性物からなることを特徴とする除湿剤。
- Y型ゼオライト変性物の、水蒸気BET法で測定した親水性比表面積が900m2/g以上である請求項1に記載の除湿剤。
- 水蒸気吸着等温線のP/P0=0.9以上から求められる全細孔容積が0.30cm3/g以上である請求項1または2に記載の除湿剤。
- Y型ゼオライト変性物が、Y型ゼオライトをアンモニウムイオン交換した後に焼成することで得られる請求項1〜3のいずれか1項に記載の除湿剤。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の除湿剤が担体に担持されている除湿用部材。
- 前記担体が、ハニカム構造である請求項5記載の除湿用部材。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の除湿剤を使用するヒートポンプ。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の除湿剤を使用するデシカント除湿機。
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