JP6369218B2 - 架橋樹脂粒子含有分散体の製造方法、および塗膜の製造方法 - Google Patents
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Description
架橋樹脂粒子は、乳化剤を用い、架橋剤の存在下、水中でモノマーを重合させた後、加熱噴霧してポリマーを粉体化することで得られる。架橋樹脂粒子を塗膜の形成に用いる際には、このポリマーを有機溶媒に分散させて分散体の状態で用いるのが一般的であった。また、粉体化したポリマーは有機溶媒に分散しにくいため、通常、乳化剤を用いてポリマーを有機溶媒に分散させていた。
[1] 乳化剤を用い、架橋剤の存在下、アクリル系モノマーを含む単量体成分を水中で重合して、架橋樹脂粒子が水に分散した水性ラテックスを得る重合工程と、得られた水性ラテックスに凝集剤を添加する添加工程と、凝集剤を添加した水性ラテックスに、さらに有機溶媒を添加して架橋樹脂粒子を水から有機溶媒に移行させる移行工程とを有する架橋樹脂粒子含有分散体の製造方法であって、前記乳化剤はアニオン系乳化剤またはカチオン系乳化剤であり、前記凝集剤は重合工程で用いる乳化剤と逆電荷であり、前記有機溶媒は水と分離し、かつ、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭素数が4以上のアルコール系溶媒からなる群より選ばれる1種以上である、架橋樹脂粒子含有分散体の製造方法。
[2] 前記乳化剤がアニオン系乳化剤であり、前記凝集剤がドデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドからなる群より選ばれる1種以上のカチオン系凝集剤である、[1]に記載の架橋樹脂粒子含有分散体の製造方法。
[3] 前記乳化剤がカチオン系乳化剤であり、前記凝集剤がドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ジナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、ジ−2−エチルへキシルスルホコハク酸ナトリウムからなる群より選ばれる1種以上のアニオン系凝集剤である、[1]に記載の架橋樹脂粒子含有分散体の製造方法。
[4] [1]〜[3]のいずれか1つに記載の架橋樹脂粒子含有分散体の製造方法により架橋樹脂粒子含有分散体を製造する分散体製造工程と、得られた架橋樹脂粒子含有分散体とバインダーとを混合して塗膜形成組成物を調製する組成物調製工程と、得られた塗膜形成組成物を用いて塗膜を形成する塗膜形成工程とを有する、塗膜の製造方法。
また、本発明の塗膜の製造方法によれば、本発明の架橋樹脂粒子含有分散体を塗料やコーティング剤に用いた場合に耐傷付き性に優れた塗膜を形成できる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」は、メタクリル酸およびアクリル酸の総称であり、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートおよびアクリレートの総称である。
また、以下の明細書において、「塗膜」とは、本発明の架橋樹脂粒子含有分散体の製造方法により製造された架橋樹脂粒子含有分散体を用いて形成された塗膜のことである。
本発明の架橋樹脂粒子含有分散体の製造方法は、以下に示す重合工程と、添加工程と、移行工程とを有する。
重合工程は、乳化剤を用い、架橋剤の存在下、アクリル系モノマーを含む単量体成分を水中で重合して、架橋樹脂粒子が水に分散した水性ラテックスを得る工程である。
乳化剤としては、アニオン系乳化剤またはカチオン系乳化剤を用いる。
アニオン系乳化剤としてはアニオン系界面活性剤が挙げられ、具体的には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ジナトリウム等のアルキル(もしくはアリール)スルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等のアルキル(もしくはアルケニル)硫酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキル(もしくはアルケニル)エーテル硫酸塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジ−2−エチルへキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸エステル塩、またはこれらの誘導体類などが挙げられる。これらの中でも、重合時において架橋樹脂粒子が形成されやすく、また形成された架橋樹脂粒子が水中に安定に分散するという観点から、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ジナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、ジ−2−エチルへキシルスルホコハク酸ナトリウムが好ましい。
これらアニオン系乳化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらカチオン系乳化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
このような架橋剤としては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、デカエチレングリコールジメタクリレート、ペンタデカエチレングリコールジメタクリレート、ペンタコンタヘプタエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;N,N−ジビニルアニリン;ジビニルエーテル;ジビニルサルファイド;ジビニルスルホン酸;ポリブタジエン;ポリイソプレン不飽和ポリエステルなどが挙げられる。
これら架橋剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アクリル系モノマーとしては、単官能(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)プロピル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
これらアクリル系モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他のモノマーとしては、アクリル系モノマーと共重合可能であれば特に制限されないが、例えば芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリルなどが挙げられる。
芳香族ビニルモノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレンなどが挙げられる。
乳化重合には、重合開始剤を用いる。重合開始剤としては、例えばペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、過酸化水素等の無機過酸化物などが挙げられる。
これら重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋樹脂粒子の平均粒子径は、10〜800nmが好ましく、30〜500nmがより好ましい。架橋樹脂粒子の平均粒子径が10nm以上であれば、塗膜の耐傷つき性がより高まる。一方、架橋樹脂粒子の800nm以下であれば、塗膜の外観を良好に維持できる。
ここで「平均粒子径」とは、体積基準のメジアン径のことであり、具体的にはレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した値である。
添加工程は、重合工程で得られた水性ラテックスに凝集剤を添加する工程である。
添加工程では、重合工程で用いる乳化剤と逆電荷の凝集剤を水性ラテックスに添加する。重合工程で用いる乳化剤と逆電荷の凝集剤を水性ラテックスに添加することで、架橋樹脂粒子が凝集し、後述する移行工程において架橋樹脂粒子が水から有機溶媒に移行する。
重合工程で用いる乳化剤と同じ電荷の凝集剤を水性ラテックスに添加すると、架橋樹脂粒子が凝集しにくく、移行工程において有機溶媒に移行しにくくなる。
カチオン系凝集剤としては、カチオン系乳化剤の説明において先に例示したカチオン系界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、凝集性に優れる観点から、ドデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドが好ましい。
これらカチオン系凝集剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらカチオン系凝集剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
移行工程は、添加工程において凝集剤を添加した水性ラテックスに、さらに有機溶媒を添加して架橋樹脂粒子を水から有機溶媒に移行させる工程である。
ここで、「水と分離する」とは、水と有機溶媒とを1:1で混合したときに、水層と有機層との境界線(界面)ができることを意味する。
これらエステル系溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらケトン系溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらエーテル系溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらアルコール系溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
一方、上述したエステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭素数が4以上のアルコール系溶媒は、適度に極性を有する有機溶媒であるため、架橋樹脂粒子が移行しやすい。
以上説明した本発明の架橋樹脂粒子含有分散体の製造方法によれば、重合工程で得られた水性ラテックスに凝集剤を添加した後に、特定の有機溶媒を添加して架橋樹脂粒子を水から有機溶媒に移行させる。このとき、重合工程で使用した乳化剤、重合開始剤、および未反応の架橋剤や単量体成分は水中に溶解または分散したままであり、有機溶媒には移行しにくい。よって、不純物となる乳化剤、重合開始剤、および未反応の架橋剤や単量体成分の割合が少ない架橋樹脂粒子含有分散体が得られる。
このように、本発明では、重合工程の後、半透析膜やイオン交換樹脂等を用いて水性ラテックスを処理することなく、水性ラテックスに凝集剤を添加するので、架橋樹脂粒子含有分散体を簡便に製造できる。
本発明の塗膜の製造方法は、以下に示す分散体製造工程と、組成物調製工程と、塗膜形成工程とを有する。
分散体製造工程は、上述した本発明の架橋樹脂粒子含有分散体の製造方法により、架橋樹脂粒子が有機溶媒に分散した架橋樹脂粒子含有分散体を製造する工程である。
組成物調製工程は、分散体製造工程により得られた架橋樹脂粒子含有分散体と、バインダーとを混合して塗膜形成組成物を調製する工程である。
バインダーとしては、例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレンまたはその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体等のスチレン系共重合体などが挙げられる。
また、上述した以外にも、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロインデン樹脂、石油系樹脂などをバインダーとして用いることができる。
添加剤としては、例えば顔料、充填剤、可塑剤、表面調整剤、分散剤、塗面調製剤、界面活性剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
組成物調製工程で用いる有機溶媒は、移行工程で用いる有機溶媒と同じ種類の溶媒であってもよいし、異なる種類の溶媒であってもよい。
また、組成物調製工程で用いる有機溶媒は、架橋樹脂粒子含有分散体とバインダーとを混合した混合物に添加してもよいし、予めバインダーに添加しておいてもよい。
組成物調製工程で用いる有機溶媒の添加量は、塗膜形成組成物が所望の固形分濃度となる量であれば特に制限されない。塗膜形成組成物の固形分濃度は、通常、20〜40質量%が好ましい。
塗膜形成工程は、組成物調製工程により得られた塗膜形成組成物を用いて塗膜を形成する工程である。
塗膜は、例えば基材上に塗膜形成組成物を塗布し、乾燥することで得られる。
金属基材の材質としては、例えばアルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、チタン、銅、銀、亜鉛、スズ、インジウム、マグネシウム、これらの酸化物、およびこれらの合金などが挙げられる。
一方、プラスチック基材の材質としては、例えばポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。
また、塗膜との密着性を高める観点から、塗膜が形成される基材表面は、コロナ放電処理やプラズマ処理など前処理が施されていてもよい。
塗膜の膜厚は、5〜50μmが好ましく、10〜40μmがより好ましい。
また、基材から塗膜を剥がし、塗膜単体を光学フィルムとして用いることもできる。
以上説明した本発明の塗膜の製造方法であれば、本発明の架橋樹脂粒子含有分散体の製造方法により得られる架橋樹脂粒子含有分散体を用いるので、耐傷付き性に優れた塗膜を形成できる。
なお、実施例1、3〜7は参考例である。
<架橋樹脂粒子含有分散体の製造>
フラスコに、単量体成分としてメチルメタクリレート(MMA)0.45質量部と、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)0.05質量部と、純水380質量部と、重合開始剤としてペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)0.3質量部と、乳化剤としてアニオン系界面活性剤(ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ジナトリウム)0.4質量部とを仕込み、さらに窒素を供給して10分間バブリングを行い、フラスコ内を脱気した。フラスコ内が75℃になるよう加温し、75℃に到達した時点でその温度を10分間維持しながら、メチルメタクリレート89.55質量部と、エチレングリコールジメタクリレート9.95質量部との混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、フラスコ内の温度を75℃に維持しながら2時間撹拌して乳化重合を行い、架橋樹脂粒子が水に分散した水性ラテックス(水分散体)を得た(重合工程)。
なお、水性ラテックス中の架橋樹脂粒子の平均粒子径を、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定したところ、200nmであった。
ついで、撹拌下で有機溶媒として酢酸ブチル340質量部を添加し、2時間撹拌し、架橋樹脂粒子を水層から有機層へ移行させた(移行工程)。
その後、静置し、透明な水層と白濁した有機層とに分離したのを確認し、水層をデカンテーションにより除去し、架橋樹脂粒子が有機溶媒に分散した架橋樹脂粒子含有分散体を得た。
アクリル樹脂ワニス(三菱レイヨン株式会社製の「ダイヤナールBR−85」20質量部を、メチルエチルケトン30質量部に混合溶解させたもの)50質量部と、先に得られた架橋樹脂粒子含有分散体50質量部とを混合し、均一になるまで攪拌して塗膜形成組成物を得た。
ABS板に、アプリケータを用いて乾燥膜厚が100μmになるように塗膜形成組成物を塗布し、室温で10分間養生した。その後、70℃で30分間焼付け乾燥を行い、さらに1日養生して、ABS板上に塗膜が形成された積層体(試験片)を得た。
得られた試験片について、以下に示す条件にて耐傷付き性を評価した。結果を表1に示す。
試験片を平面摩擦試験機(株式会社大栄科学精器製作所製「PA−2A」)に設置し、摩耗材として幅2cmのガラスビーズ(株式会社不二製作所製「FGB60」、粒度範囲250〜355μm)を用いて、荷重19.6N、作動幅10cm、スピード10cm/秒の条件で塗膜表面を50往復擦る摩耗試験を行った。擦った箇所のL値(明度)を測色計(スガ試験機株式会社製、「SMカラーメーター SM−T」)を用いて測定した。摩耗試験前の塗膜のL値を予め測定しておき、摩耗試験前後のL値の差(ΔL)を算出した。ΔLが小さいほど耐傷付き性に優れていることを意味し、ΔLが3未満の場合を耐傷付き性に優れ、フィルムとしての安定性も良好であると判断した。
重合工程において、乳化剤としてカチオン系界面活性剤(ドデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライド)を用い、添加工程において、凝集剤としてアニオン系界面活性剤(ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ジナトリウム)を用いた以外は、実施例1と同様にして架橋樹脂粒子含有分散体を製造した。
得られた架橋樹脂粒子含有分散体を用い、実施例1と同様にして塗膜形成組成物の調製し、塗膜を形成して、耐傷付き性を評価した。結果を表1に示す。
移行工程において、表1に示す種類の有機溶媒を用いた以外は、実施例1と同様にして架橋樹脂粒子含有分散体を製造した。
得られた架橋樹脂粒子含有分散体を用い、実施例1と同様にして塗膜形成組成物の調製し、塗膜を形成して、耐傷付き性を評価した。結果を表1に示す。
実施例1と同様にして水性ラテックスを得た。
得られた水性ラテックスを、スプレードライ法により含水分量が2質量%以下になるまで粉体化し、乾燥凝集体を得た。
得られた乾燥凝集体20質量部をメチルエチルケトン80質量部に添加し、さらにノニオン系乳化剤としてソルビタンモノラウレート1質量部を添加し、ホモジナイザーを用い、回転数200rpmで5分間撹拌し、架橋樹脂粒子が有機溶媒に分散した架橋樹脂粒子含有分散体を得た。
得られた架橋樹脂粒子含有分散体を用い、実施例1と同様にして塗膜形成組成物の調製し、塗膜を形成して、耐傷付き性を評価した。結果を表1に示す。
重合工程において、乳化剤としてノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)を用いた以外は、実施例1と同様にして水性ラテックスを得た。
得られた水性ラテックスに、凝集剤としてノニオン系界面活性剤(α−[5メチル2,3−2(2−フェニルエチル)フェニル]−ω−ヒドロキシポリエチレンオキサイド)を添加した以外は、実施例1と同様にして添加工程を行ったが、架橋樹脂粒子は凝集しなかった。さらに酢酸ブチルを添加して移行工程を行ったが、架橋樹脂粒子は有機層に移行しなかった。
実施例1と同様にして重合工程および移行工程を行った。
ついで、撹拌下で有機溶媒としてイソプロパノール340質量部を添加し、2時間撹拌したが相分離は起こらなかった。
実施例1と同様にして重合工程および移行工程を行った。
ついで、撹拌下で有機溶媒としてトルエン340質量部を添加し、2時間撹拌したところ、相分離は起こったが、架橋樹脂粒子は有機層に移行しなかった。
実施例1と同様にして重合工程および移行工程を行った。
ついで、撹拌下で有機溶媒としてヘキサン340質量部を添加し、2時間撹拌したところ、相分離は起こったが、架橋樹脂粒子は有機層に移行しなかった。
一方、比較例1で得られた塗膜は、耐傷付き性に劣っていた。また、比較例2〜5の場合、架橋樹脂粒子が有機層に移行しなかったため、塗膜を形成することができず、耐傷付き性を評価できなかった。
Claims (2)
- 乳化剤を用い、架橋剤の存在下、アクリル系モノマーを含む単量体成分を水中で重合して、架橋樹脂粒子が水に分散した水性ラテックスを得る重合工程と、
得られた水性ラテックスに凝集剤を添加する添加工程と、
凝集剤を添加した水性ラテックスに、さらに有機溶媒を添加して架橋樹脂粒子を水から有機溶媒に移行させる移行工程とを有する架橋樹脂粒子含有分散体の製造方法であって、
前記乳化剤はカチオン系乳化剤であり、
前記凝集剤はドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ジナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム、ジ−2−エチルへキシルスルホコハク酸ナトリウムからなる群より選ばれる1種以上のアニオン系凝集剤であり、
前記有機溶媒は水と分離し、かつ、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭素数が4以上のアルコール系溶媒からなる群より選ばれる1種以上である、架橋樹脂粒子含有分散体の製造方法。 - 請求項1に記載の架橋樹脂粒子含有分散体の製造方法により架橋樹脂粒子含有分散体を製造する分散体製造工程と、
得られた架橋樹脂粒子含有分散体とバインダーとを混合して塗膜形成組成物を調製する組成物調製工程と、
得られた塗膜形成組成物を用いて塗膜を形成する塗膜形成工程とを有する、塗膜の製造方法。
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