以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
図1〜図3は、本発明の第一実施形態に基づく包装体を示している。本実施形態の包装体A1は、台材1、包装フィルム2、封止部材3、被包装物4および積層部材5を備えている。図1は、包装体A1を斜め下方から見た斜視図である。図2は、包装体A1を斜め上方から見た斜視図である。図3は、図1のIII−III線に沿う断面における断面図である。
本発明で言う台材としては、被包装物4を適切に保持しつつ、後述する脱気を適切に行いうるものであればよく、一般的な、所謂ノンコート紙と呼ばれる厚紙、普通紙、合成紙等からなる台紙の他に、一部に切り欠き(単なる孔やミシン目などを含み、その形状は特に限定されない)が設けられた、表面に樹脂層が設けられた所謂コート紙、合成樹脂シート、発泡シート、あるいは多孔質シートなどを採用しうる。これらは単層シート、およびこれらの2以上のシートが積層接着された積層シートなどの各種シート材を用いることができる。台紙として厚紙が用いられる場合、その厚みは、特に限定されないが、たとえば、0.1mm〜1.0mmである。また、台紙として普通紙、合成紙、コート紙が用いられる場合、その目付量は、特に限定されないが、たとえば、好ましくは50g/m2〜600g/m2であり、さらに好ましくは270g/m2〜500g/m2である。台紙として合成樹脂シートまたは発泡シートが用いられる場合、その厚みは、特に限定されないが、たとえば、40μm〜200μm程度である。本実施形態においては、台材1として略長矩形状の厚紙からなる台紙を用いる場合を例として説明する。
台材1は、表面11および裏面12を有しており、窓部13、フランジ部14および一対の延出片15が形成されている。表面11および裏面12は、台材1の厚さ方向において互いに反対側を向く面である。上述した材質および厚さとされた台材1は、後述する包装フィルム2よりも剛性が高い。
窓部13は、台材1の一部が切り取られるなどによって形成されており、台材1の厚さ方向に貫通する孔である。窓部13の形状は特に限定されず、本実施形態においてはたとえば長矩形状とされている。本実施形態の窓部13の周縁は、一対の対向辺13aおよび一対の対向辺13bを含んでいる。一対の対向辺13aは、互いに離間して対向しており、一対の対向辺13bよりも長い。一対の対向辺13bも、互いに離間して対向しており、一対の13aに対して略直角である。本実施形態においては、窓部13は、一対の対向辺13aが延びる方向を長手方向とする形状である。なお、窓部13の周縁が長辺としての一対の対向辺13aを含む形状としては、長矩形状の他に、たとえば一対の対向辺13aとこれらに繋がる一対の半円形状部分とを有する角丸長方形状であってもよい。
フランジ部14は、窓部13を取り囲む環状部分であり、平板状である。フランジ部14の表面11には、包装フィルム2が接合されている。
一対の延出片15は、窓部13の周縁からフランジ部14に対して交差する方向に演出しており、より具体的には、台材1の表面11から裏面12へと向かう方向に延出している。本実施形態の一対の延出片15は、一対の対向辺13aの各々から延出している。延出片15の形状は特に限定されないが、本実施形態においては、延出片15は、対向辺13aが延びる方向を長手方向とする長矩形状である。また、延出片15は、対向辺13aの長手方向中央に重なる位置に設けられており、図示された例においては、延出片15の長手方向中央と対向辺13aの長手方向中央とが、互いに略一致している。なお、本実施形態においては、延出片15は、積層部材5を兼ねている。積層部材5の詳細については、後述する。
台材1には、被包装物4の商品名や商品情報が印刷されていてもよい。このような印刷のための領域としては、一対の延出片15を用いることができる。
包装フィルム2は、周囲部21およびカップ部22を有している。周囲部21は、カップ部22を取り囲む環状部分であり、台材1のフランジ部14の表面11に接合されている。カップ部22は、被包装物4を収容する部位であり、包装フィルム2が部分的に延伸されることにより被包装物4を収容可能な形態とされている。本実施形態においては、カップ部22は、台材1の表面11側から裏面12側へと窓部13を通じて膨出している。カップ部22の形状は特に限定されず、本実施形態においては、ゆるやかなテーパ角を有する角錐台形状とされている。包装フィルム2のうち、少なくともカップ部22は、可撓性を有することにより屈曲自在とされている。なお、屈曲自在とは、典型的には、たとえば一般的な購入者の手によって容易にその形状が変形し、各所が屈曲することにより速やかに押しつぶされることが可能な程度であることを意味する。一方、包装体A1として被包装物4が収容されている場合においては、被包装物4によって補助されることにより、カップ部22が自立姿勢を保つこともあり得る。本実施形態のカップ部22においては、テーパ角がたとえば2°〜15°である。なお、カップ部22のサイズおよび形状は、被包装物4に応じて台材1および後述する包装体A1の製造方法に用いられる金型のサイズおよび形状によって適宜設定可能である。
包装フィルム2としては、単層構成または一種あるいは二種以上の複層構成の合成樹脂製フィルムが用いられる。また、適宜必要に応じて、ガスバリアー性や遮光性等の各種機能を有する周知のフィルムを用いることもできる。包装フィルム2の厚みは、通常30μm〜300μm、好ましくは60μm〜200μmである。
包装フィルム2の材質としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、軟質塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、たとえば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂、プロピレン−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸−不飽和カルボン酸エステル共重合体などの各種共重合体が挙げられ、好ましくは、ポリエチレン系樹脂であり、特に好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレンである。これらは単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族ポリアミド重合体、ナイロン6−66(ナイロン6とナイロン66の共重合体を表す。以下同様に表記する)、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン6−69、ナイロン6−610、ナイロン66−69などの脂肪族ポリアミド共重合体を例示することができる。なかでも、脂肪族ポリアミド共重合体が好ましく、特にナイロン6−66、ナイロン6−10またはナイロン6−12が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
ポリエステル系樹脂としては、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート/イソフタレート)、ポリ(エチレングリコール/シクロへキサンジメタノール/テレフタレート)などが代表格としてあげられ、更にこれらの重合体に共重合成分としてエチレングリコール、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオールなどのジオール類、あるいはイソフタール類、ベンゾフェノンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、プロピレンビス(フェニルカルボン酸)、ジフェニルオキサイドジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、サバチン酸、ジエチルコハク酸などのジカルボン酸を含有せしめたものが使用できる。
本発明においては、包装フィルム2として、融点の異なる樹脂を少なくとも二層以上有する複層構成のフィルムが好ましい。具体的には、たとえば、高融点の樹脂(即ち耐熱性を有し、低融点の樹脂よりも強度のある樹脂)を中間層とし、該中間層の樹脂よりも低融点の樹脂を表裏層とする二種三層で構成されたフィルムや、高融点の樹脂と低融点の樹脂とが交互に複数積層された積層部(通常、高融点の樹脂と低融点の樹脂が一層ずつ積層された複層部を3以上含む)を有するフィルム等が挙げられる。台材1への接着に寄与する低融点の樹脂よりも耐熱性を有する樹脂を積層することにより、スキンパックフィルムの特性として必要な延伸性を低融点の樹脂である程度担保しつつ、高融点の樹脂で包装フィルム2の強度を向上することができる。また、低融点の樹脂を供えることで台材1と包装フィルム2の接着性を強固にしつつ、高融点の樹脂によりフィルムの強度を向上できる。
二種三層で構成されたフィルムとしては、たとえば、ポリオレフィン系樹脂(低融点)/ポリオレフィン系樹脂(高融点)/ポリオレフィン系樹脂(低融点)、ポリオレフィン系樹脂/ポリアミド系樹脂/ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂/ポリエステル系樹脂/ポリオレフィン系樹脂、等が挙げられ、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂/ポリアミド系樹脂/ポリオレフィン系樹脂である。なかでも、ポリオレフィン系樹脂が直鎖状低密度ポリエチレンまたは低密度ポリエチレンのいずれかであり、ポリアミド系樹脂が脂肪族ポリアミド共重合体であることが特に好ましい。また、積層部を有するフィルムとしては、上記二種三層で構成されたフィルムと同様の高融点の樹脂および低融点の樹脂が用いられるが、たとえば、ポリアミド系樹脂(高融点)/ポリオレフィン系樹脂(低融点)からなる複層部を4〜8含む積層部を中間層とし、表層にポリアミド系樹脂を、裏層に直鎖状低密度ポリエチレンを積層したフィルムが好適に用いられる。本実施形態においては、ポリアミド系樹脂(高融点)/ポリオレフィン系樹脂(低融点)からなる複層部を少なくとも4以上含む多層のフィルムを使用した。
台材1と包装フィルム2とを接合するために、たとえば台材1の表面11に接着剤層が設けられている。この接着剤層は、ベタ状に設けられていてもよいし、断続的に設けられていてもよい。また、この接着剤層が、包装フィルム2の片面に設けられていてもよい。包装フィルム2の片面に接着剤層が設けられている場合、台材1側には接着剤層を設ける必要性はない。接着剤層の厚みは、特に限定されないが、たとえば、10μm〜100μmである。本実施形態においては、台材1の表面11に接着剤層が設けられている場合を例として説明する。
感熱性接着剤は、室温では固化しており且つ加熱されることによって活性化して接着性を発現し、冷却によって固化して部材間を接着する接着剤である。感熱性粘着剤は、室温では固化しており且つ加熱されることによって活性化して接着性を発現して部材間を接着し、冷却後も粘着性が持続する接着剤である。
感熱性接着剤等の種類としては、たとえば、ディレードタック型、エマルジョン型、溶剤型、ホットメルト型などが挙げられる。
ディレードタック型は、室温で接着性を示さず、加熱することによって接着性を示し且つ冷却後長時間に亘ってその接着性が持続するものであり、グラビアコーティングなどの印刷によって塗工可能なものである。ディレードタック型としては、たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、合成ゴムなどのベース樹脂に粘着付与剤及び固体可塑剤が配合されたものなどが例示される。
エマルジョン型または溶剤型は、たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの熱接着性樹脂と粘着付与剤などを、水または有機溶剤などに溶解または分散させた溶液を、グラビアコーティングなどの印刷によって塗工可能であり、塗工後乾燥して使用するものである。これらも、乾燥後は接着性を示さず、加熱することによって接着性を示すものである。
ホットメルト型は、ホットメルトコーター、エクストルージョンラミネーターなどによって加熱溶融して塗工するものである。この例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレンアクリル酸共重合体などのエチレン系樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などのベース樹脂に粘着付与剤などの添加剤が配合されたものが挙げられる。
使用される感熱性接着剤等は、通常、軟化点60℃〜180℃のものが用いられ、好ましくは、軟化点70℃〜140℃である。このような軟化点の接着剤を用いることにより、包装フィルム2を軟化させるために加熱した際に、その熱で接着剤層の接着剤を活性化させることができる。なお、前記軟化点は、JIS K 6863に準じて測定できる。
以上の構成により、図3によく表れているように、台材1のフランジ部14の表面11および一対の延出片15のうち表面11に繋がる面に、包装フィルム2が接合されている。すなわち、一対の延出片15は、包装フィルム2のカップ部22の一部に積層され、且つ接合された部材となっており、本発明における積層部材5を構成している。本実施形態においては、上述した通り、延出片15が対向辺13aの中央に位置している。このため、カップ部22のうち長辺である対向辺13aから深さ方向に広がる部分に、一対の延出片15が接合された構成となっている。また、本実施形態においては、延出片15は、カップ部22の外面に接合されている。
封止部材3は、カップ部22を塞いでおり、本実施形態においては、包装フィルム2の周囲部21に接合されている。包装フィルム2のカップ部22と封止部材3とは、被包装物4を収容するための収容空間を規定している。また、包装フィルム2と封止部材3との接合部分は、良好な気密性を有することが好ましい。封止部材3には、被包装物4の商品名や商品情報が適宜印刷されていてもよい。封止部材3の材質は特に限定されず、たとえば合成紙、普通紙、表面に樹脂層が設けられた所謂コート紙などの紙材、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などの比較的軟質なフィルム、比較的硬質なプラスチックなどからなるシート、あるいはカップ部22を封止可能な形状に成形された成型材などが適宜用いられる。なお、封止部材3が成型材からなる場合、封止部材3は、台材1に対して嵌め込まれることによって固定される構成であってもよい。以下においては、封止部材3がフィルムからなる場合を例に説明する。包装フィルム2と封止部材3とは、種々の手法によって接合され、たとえば接着剤や粘着剤等を介在させて接合され、或いはシーラント層を介してヒートシール(熱溶着)によって接合される。このヒートシールの具体例としては、たとえば凝集剥離タイプ、層間剥離タイプおよび界面剥離タイプが挙げられる。凝集剥離タイプは、前記シーラント層が包装フィルム2側と封止部材3側とに分離されることによって開封されるタイプである。層間剥離タイプは、前記シーラント層と封止部材3とが剥離することによって開封されるタイプである。界面剥離タイプは、前記シーラント層と包装フィルム2とが剥離することによって開封されるタイプである。なお、以上の説明おける前記シーラント層は、たとえば後述する包装フィルム材料20に含まれる最外層として構成されていてもよい。前記シーラント層の厚みは、たとえば30μm〜80μm程度である。
被包装物4は、包装フィルム2のカップ部22と封止部材3とによって囲まれた前記収容空間に収容されている。被包装物4の種類や数量などは限定されず、様々な態様の被包装物4を採用することができる。本実施形態においては、粉体あるいは顆粒体からなる被包装物4を例として示している。
次いで、包装体A1の製造方法の一例について説明する。なお、以降の説明においては、1つの包装体A1を製造する場合を例に説明するが、これとは異なり、たとえば複数の包装体A1を一括して製造してもよい。
図4は、包装体A1の製造方法に用いられる台紙材料10を示す平面図である。台紙材料10は、包装体A1の台材1となるものであり、本例においては上述した台紙からなる。台紙材料10は、フランジ部14および一対の延出片15を有しており、窓部130が形成されている。窓部130は、台紙材料10の一部が切断により切り取られたものである。窓部130の周縁は、一対の対向辺13bを含んでいる。また、台材1がいまだ形成されていない状態においては、窓部130の周縁は、一対の延出片15の外縁を含んでいる。一対の延出片15とフランジ部14との間には、一対の折り曲げ線130aが設けられている。折り曲げ線130aは、フランジ部14に対して一対の延出片15を折り曲げるために設けられている。折り曲げ線130aは、たとえばミシン目線や押し罫線によって構成される。あるいは、折り曲げ線130aは、折り曲げることが想定された仮想線であってもよい。台紙材料10を用意した後は、台紙材料10の一対の折り曲げ線130aを折り曲げる。これにより、台紙材料10に台材1と同様の一対の対向辺13aが形成される。なお、台紙材料10は、台材1となる部分の外側に余白部分を有するものであってもよい。
次いで、図5に示すように、金型8を用意する。金型8は、台紙材料10を保持するとともに、包装フィルム材料20に対して後述する脱気工程を施すためのものである。金型8は、保持部81および複数の凸部82を有している。保持部81は、台紙材料10のフランジ部14の裏面12を保持する部分であり、図中上面を向く平面を有している。複数の凸部82は、平面視において台紙材料10の複数の窓部13と一致しうる位置に設けられており、図中上方に突出している。各凸部82の形状は特に限定されず、本実施形態においては、上述した包装フィルム2のカップ部22の形状に対応して円錐台形状とされている。凸部82のテーパ角は、片側がたとえば2°〜5°程度である。
また、金型8は、複数の吸引孔84、複数の吸引孔85、吸引経路86および吸引経路87を有している。複数の吸引孔84は、各々が保持部81の上面に開口しており、吸引経路86に繋がっている。複数の吸引孔85は、各々が凸部82の頂面に開口しており、吸引経路87に繋がっている。吸引経路86は、複数の吸引孔84から脱気するための経路であり、図示しないポンプなどの吸引源に接続されている。吸引経路87は、複数の吸引孔85から脱気するための経路であり、図示しない前記ポンプに接続されている。また、吸引経路86と吸引経路87とは、同一の前記ポンプに対してたとえば図示しないバルブを介して接続されている。このバルブを開閉操作することにより、複数の吸引孔84および複数の吸引孔85の双方から脱気するモードと、複数の吸引孔85のみから脱気し複数の吸引孔84から脱気しないモードとをとることができるように構成されている。
次いで、金型8の複数の凸部82を台材1の複数の窓部13に通すようにして、台紙材料10を金型8に装着する。この際、台紙材料10の裏面12を金型8の保持部81の上面に対面させる。また、一対の延出片15を凸部82に沿うように起立させておく。そして、包装フィルム材料20を金型8および台紙材料10の上方に位置される。なお、包装フィルム材料20は、スムーズに変形することが容易となる程度に加熱しておくことが好ましい。
次いで、図6に示すように脱気工程を行う。吸引経路86および吸引経路87を介して上述したポンプ(図示略)による吸引を開始すると、金型8および台紙材料10と包装フィルム材料20との間の空間が複数の吸引孔84および複数の吸引孔85からの吸引によって脱気される。これにより、加熱された包装フィルム材料20が金型8および台紙材料10に沿うように延伸されながら密着する。この際、包装フィルム材料20は、全体的に延伸され、特に、凸部82の側面に沿う部分が相当な度合いで延伸される。また、包装フィルム材料20のうち凸部82に沿う部分のなかでも、対向辺13aの中央付近が最も延伸の度合いが大きいことが、発明者らの試験によって判明している。
包装フィルム材料20のうち台紙材料10の表面11に接した部分は、表面11に設けられた前記接着剤層を加熱により活性化させ、接着力を発現させる。これにより、包装フィルム材料20のうち台紙材料10の表面11に接した部分が、台紙材料10の表面11に接合される。また、一対の延出片15のうち表面11に繋がる面には、前記接着剤層が設けられている。これにより、包装フィルム材料20と一対の延出片15とが積層されるように接合される。
次いで、図7に示すように、金型8の吸引経路87に繋がる複数の吸引孔85からの吸引のみを継続し、吸引経路86に繋がる複数の吸引孔84からの吸引を停止する。そして、金型8を台紙材料10から裏面12が向く方向(図中下方)に離間させる。複数の吸引孔85からの吸引が継続されているため、包装フィルム材料20の前述した延伸された部分(凸部82に密着した部分)のうち凸部82の頂面に接する部分が、金型8の下降に伴って引き下げられる。この結果、包装フィルム材料20の前記延伸された部分(凸部82に密着した部分)と一対の延出片15とが台紙材料10の表面11側から裏面12側へと窓部13を通じて折り返されるように引き出される格好となる。これにより、台紙材料10の表面11側から裏面12側へと窓部13を通じて膨出するカップ部22が形成される。また、包装フィルム材料20のうちカップ部22を囲む部分であって、台紙材料10の表面11に接合された部分は、周囲部21となる。カップ部22は上述した包装フィルム材料20のうち延伸された部分からなるため、相対的に薄肉となっている。包装フィルム材料20の材料選定および延伸後の厚さを適宜設定することにより、カップ部22は、明瞭な可撓性を有するものとなり、屈曲自在である。なお、本図に示す包装フィルム材料20を裏返すことによってカップ部22を形成する工程は、金型8を利用する手法のほかに、たとえば台紙材料10および包装フィルム材料20を金型8から離脱させた後に、手作業によって行ってもよい。
この後は、カップ部22に被包装物4を挿入し、カップ部22を覆うように封止部材3を包装フィルム材料20の周囲部21に接合する。そして、台紙材料10、包装フィルム材料20および封止部材3の余剰部分を適宜切断することにより、包装体A1が得られる。
なお、図7に示す工程においては、金型8全体を一括して台紙材料10から離間させる手法に限定されない。本工程においては、金型8のうち少なくとも凸部82を台紙材料10から離間させればよい。このため、たとえば、保持部81に対して凸部82が着脱自在となった金型8を用いてもよい。この場合、図7に示す工程に相当する工程においては、凸部82が下方に離間する一方、保持部81は、台紙材料10を保持し続けることとなる。このため、台紙材料10が不当に垂れ下がってしまうことを防止するのに適している。また、保持部81が台紙材料10および包装フィルム材料20を保持し続けるため、たとえばカップ部22への被包装物4の挿入や、封止部材3の接合を容易に行うことができる。
また、図7において、包装フィルム材料20のうち凸部82の頂部に接する部分を引き下げるために、複数の吸引孔85からの吸引を維持する手法を採用しているが、これ以外の手法を採用してもよい。たとえば、凸部82の側面の頂面付近に溝部が設けられていてもよい。この溝部は、たとえば凸部82の側面全周にわたって形成される。上述した脱気工程においては、包装フィルム材料20のうち凸部82に密着する部分が、前記溝部において局部的にくびれた形状となる。このくびれ形状が設けられたことにより、上述した複数の吸引孔85からの吸引を継続しなくても、凸部82を台紙材料10から離間させると、包装フィルム材料20のうち凸部82に密着していた部分が引き下げられ、図7に示す例と同様のカップ部22が形成される。
次に、包装体A1の作用について説明する。
本実施形態によれば、図1〜図3に示すように、カップ部22の一部に積層部材5としての延出片15が積層され、且つ接合されている。これにより、まず、カップ部22の強度を延出片15によって補強することができる。本実施形態のように、包装フィルム2の一部が延伸されることによってカップ部22が形成されている場合、カップ部22が減肉していることが一般的である。この減肉によるカップ部22の強度低下を、積層部材5としての延出片15によって抑制することができる。また、延出片15に商品情報等を印刷することにより、包装体A1全体を大型化すること無く、印刷のための領域を拡大することができる。
また、図5〜図7に示した製造方法によって製造された包装体A1においては、カップ部22のうち台材1の窓部13に近い部分が顕著に減肉される。延出片15は、窓部13から延出しているため、カップ部22のうち窓部13に近い部分を適切に補強することができる。特に、窓部13およびカップ部22が一対の対向辺13aを長辺とする形状である場合、一対の対向辺13aの中央付近において、底部22aの減肉が最大となる傾向があることが、発明者らの試験によって判明した。この点、一対の延出片15は、一対の対向辺13aの中央に重なる位置に設けられており、さらに延出片15と対向辺13aとが、互いの中央が略一致する構成とされている。このような構成は、カップ部22の減肉部分を補強するのに好適である。
積層部材5を構成する一対の延出片15は、台材1の一部として形成されている。このため、積層部材5を構成するための専用の別部材を用意する必要がない。また、図4に示すように、台紙材料10においては、廃棄される分量を一対の延出片15に相当する分量だけ削減することが可能である。
図6に示す製造工程によれば、包装フィルム材料20を不当に破断すること無く、カップ部22を比較的深い形状に仕上げることが可能である。そして、図7に示す製造工程を経ることにより、包装体A1においては図3に示すように、封止部材3が包装フィルム2の周囲部21に接合される構成となる。包装フィルム2と封止部材3とは、比較的気密性を高く接合しやすいという利点があり、被包装物4の保護に好ましい。また、一対の延出片15がカップ部22の外面に接合される。たとえば、被包装物4の種類などによって台材1と接触させることが好ましくない場合などには、このような構成が適している。
図8〜図24は、本発明の他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
図8は、本発明の第二実施形態に包装体を示している。本実施形態のA2は、二対の延出片15を有している。図9は、包装体A2の製造に用いられる台紙材料10を示している。台紙材料10は、一対の折り曲げ線130aおよび一対の折り曲げ線130bと二対の延出片15とを有している。一対の折り曲げ線130bにおいて折り曲げることにより、一対の対向辺13bが現出する。
本実施形態においても、台材1の全体形状および窓部13は、平面視長矩形状である。窓部13の周縁は、長辺としての一対の対向辺13aと短辺としての対向辺13bとを有している。そして、一対の延出片15が一対の対向辺13aから延出しており、他の一対の延出片15が一対の対向辺13bから延出している。また、二対の延出片15は、互いの干渉を避けるために、包装体A1における延出片15よりも傾斜角が大きい台形状とされている。
本実施形態によっても、減肉によるカップ部22の強度低下を、積層部材5としての延出片15によって抑制することができる。特に、カップ部22のうち一対の対向辺13a付近の部分に加えて、一対の対向辺13b付近の部分を補強することができる。また、包装体A2全体を大型化すること無く、印刷のための領域を拡大することができる。また、本実施形態から理解される通り、延出片15の個数は特に限定されない。この点は、後述する実施形態についても同様である。さらに、図9から理解されるように、台紙材料10の形成において廃棄される分量をより削減することができる。
図10は、本発明の第三実施形態に基づく包装体を示している。本実施形態の包装体A3は、台材1、包装フィルム2および封止部材3の形状が上述した実施形態と異なっている。本実施形態においては、台材1および封止部材3の全体形状と窓部13は、略正方形状である。これに対応して、カップ部22も平面視略正方形状である。台材1は、一対の対向辺13aから延出する一対の延出片15を有している。なお、本実施形態においては、一対の対向辺13aと一対の対向辺13bとは、略同じ長さである。なお、本実施形態においても、上述した包装体A3と同様に、二対の延出片15を有する構成であってもよい。
本実施形態によっても、減肉によるカップ部22の強度低下を、積層部材5としての延出片15によって抑制することができる。また、包装体A3全体を大型化すること無く、印刷のための領域を拡大することができる。
図11は、本発明の第四実施形態に基づく包装体を示している。本実施形態の包装体A4は、包装フィルム2が3つのカップ部22を有している。また、台材1には、3つの窓部13が形成されている。台材1には、3つのカップ部22に対応して三対の延出片15が形成されている。なお、1つのカップ部22に二対の延出片15が形成されていてもよい。なお、各カップ部22の形状は、包装体A2におけるカップ部22の形状に限定されず、様々な形状としうる。また、3つのカップ部22が互いに異なる形状であってもよい。また各カップ部22に対応する延出片15の形状や個数は、互いに異なっていてもよい。
本実施形態によっても、減肉によるカップ部22の強度低下を、積層部材5としての延出片15によって抑制することができる。また、包装体A4全体を大型化すること無く、印刷のための領域を拡大することができる。
図12は、本発明の第五実施形態に基づく包装体を示している。本実施形態の包装体A5においては、台材1が1つの延出片15を有している。延出片15は、くびれ部15aおよび拡大領域部15bを有している。くびれ部15aは、対向辺13aに繋がる部分であり、たとえば上述した実施形態における延出片15と比べて、対向辺13aに対する大きさ(幅)が小とされている。拡大領域部15bは、くびれ部15aの先端に繋がっており、くびれ部15aよりも面積が大とされた部位である。
図13は、包装体A5の製造に用いられる台紙材料10を示している。この台紙材料10においては、拡大領域部15bが窓部130の過半を占める程度の大きさとされており、拡大領域部15bが窓部130のほぼ中央に位置している。同図に示す台紙材料10から形成される台材1においては、拡大領域部15bの大きさが窓部13を一回り小さくした程度の大きさであり、図12に示すように、拡大領域部15bがカップ部22の側部の相当部分を覆う構成となっている。また、拡大領域部15bの形状は特に限定されないが、本実施形態においては、所謂花型形状とされている。
本実施形態によっても、減肉によるカップ部22の強度低下を、積層部材5としての延出片15によって抑制することができる。また、包装体A5全体を大型化すること無く、印刷のための領域を拡大することができる。特に、拡大領域部15bを設けることにより、印刷領域を格段に増大させることができる。また、図13から理解されるように、台紙材料10を形成する際に廃棄される分量を、顕著に削減することができる。
図14は、本発明の第六実施形態に基づく包装体を示している。本実施形態の包装体A6は、台材1、包装フィルム2および封止部材3の形状が上述した実施形態と異なっている。本実施形態においては、台材1および封止部材3の全体形状と窓部13は、略円形状である。これに対応して、カップ部22も平面視略円形状である。台材1は、窓部13の周縁から延出する複数の延出片15を有している。複数の延出片15は、窓部13の周縁の全周にわたって設けられている。各延出片15は、台紙材料10において隣接する延出片15との干渉を回避するために、略三角形状とされている。
本実施形態によっても、減肉によるカップ部22の強度低下を、積層部材5としての延出片15によって抑制することができる。特に、本実施形態によれば、複数の延出片15によって、カップ部22の根元部分を略全周にわたって補強することができる。また、包装体A6全体を大型化すること無く、印刷のための領域を拡大することができる。
図15および図16は、本発明の第七実施形態に基づく包装体を示している。本実施形態の包装体A7は、カップ部22に対する延出片15の接合形態、および封止部材3の接合形態が上述した実施形態と異なっている。本実施形態においては、図16に示すように、包装フィルム2の周囲部21が台材1のフランジ部14の裏面12に接合されている。また、一対の延出片15がカップ部22の内面に接合されている。そして、封止部材3は、台材1のフランジ部14の表面11に接合されている。このような構成の包装体A7は、たとえば、図5および図6に示した製造工程と類似の工程を終えた後に、図7に示す包装フィルム材料20を裏返す工程を省略することによって製造することができる。なお、図15および図16においては、便宜上表面11および裏面12をカップ部22に対する位置を基準に設定している。このため、包装体A7の製造方法においては、図5よび図6における表面11および裏面12の関係が逆となる。また、台材1の裏面12には、包装フィルム2との接合を実現するための上述した接着剤層を設けておく。また、表面11には、封止部材3を高い気密性で接合可能なコーディング等の処理を施しておくことが好ましい。
本実施形態によっても、減肉によるカップ部22の強度低下を、積層部材5としての延出片15によって抑制することができる。また、包装体A7全体を大型化すること無く、印刷のための領域を拡大することができる。なお、包装体A7の構成は、上述した包装体A2〜A6に適用可能であることはもちろんである。
図17および図18は、本発明の第八実施形態に基づく包装体を示している。本実施形態の包装体A8は、積層部材5が台材1とは別体として構成されている点が、上述した実施形態と異なっている。
台材1の全体形状はたとえば矩形状であり、窓部13はたとえば平面視円形状である。カップ部22は、略ドーム形状であり、底部22aを有している。積層部材5は、底部22aの外面に積層され、且つ接合されている。本実施形態においては、積層部材5は台材1とは別体とされているため、積層部材5の材質は様々に設定可能である。台材1の材質となりうる台紙、所謂コート紙、合成樹脂シート、発泡シート、あるいは多孔質シートなどを採用しうる。また、積層部材5は、金属製であってもよい。なお、本実施形態においては、積層部材5が台材1と同一の材質によって構成されている場合を例に説明する。このような例においては、台材1の窓部13を形成する際に生じる余剰部分を用いて積層部材5を形成可能であり、廃棄物の削減を図ることができる。また、積層部材5の外面は、たとえば被包装物4の原材料や使用上の注意などの商品情報を印刷するための領域として用いることができる。
本実施形態においては、包装フィルム2の周囲部21は、台材1のフランジ部14の表面11に接合されている。また、封止部材3は、包装フィルム2の周囲部21に接合されている。この接合関係は、上述した包装体A1〜A6と同様である。
図19は、包装体A8の製造方法の一例を示している。まず、金型8に台紙材料10および積層部材5を載置し、その上方に加熱された包装フィルム材料20を配置する。本実施形態に用いられる金型8は、保持部81および凹部83を有している。保持部81は、上述したとおり台紙材料10のフランジ部14の裏面12を保持する平面を有する部分である。凹部83は、保持部81に囲まれており、図中下方に凹んだ部分である。すなわち、凹部83は、保持部81に台紙材料10のフランジ部14が保持された状態において、台紙材料10の裏面12が向く方向に凹んでいる。また、金型8は、複数の吸引孔84を有している。これらの吸引孔84は、保持部81の上面および凹部83の内面に開口しており、1つの吸引経路86に繋がっている。凹部83の底面は、積層部材5を安定して保持すべく、周囲部分よりも若干凹んだ平面とされている。
次いで、脱気工程を行う。この脱気工程においては、複数の吸引孔84によって金型8および台紙材料10と包装フィルム材料20との間が脱気される。この脱気工程においては、包装フィルム材料20が金型8に密着する際の挙動が、上述した包装体A1の製造方法における挙動と異なる。脱気によって包装フィルム材料20が金型8および台紙材料10に接近すると、包装フィルム材料20は、台紙材料10のフランジ部14の表面11に接する。表面11には上述した接着剤層が設けられているため、包装フィルム材料20とフランジ部14とが接合される。一方、包装フィルム材料20のうち平面視において窓部13と重なる部分は、フランジ部14の表面11には接合されない。そして、この包装フィルム材料20のうち窓部13と重なる部分が、複数の吸引孔84からの吸引力により、凹部83に沿うように延伸される。この延伸された部分が、図12および図13に示すカップ部22となる。このような包装体A1と包装体A8の製造方法の相違から理解されるように、仮に本実施形態におけるカップ部22と上述した包装体A1におけるカップ部22とを同じサイズとした場合、本実施形態におけるカップ部22は、包装体A1におけるカップ部22よりも、包装フィルム材料20のより小さい部分が延伸されることにより形成される。この結果、本実施形態のカップ部22は、相対的に薄い構成となる。特に、カップ部22の底部22aが、最も薄い部分となりやすい。この底部22aは、凹部83の底面に配置された積層部材5と積層され、且つ接合される。なお、積層部材5には、たとえば台材1の裏面12に設けられた接着剤層と同様の接着剤層が設けられていることが好ましい。
本実施形態によっても、減肉によるカップ部22の強度低下を、積層部材5としての延出片15によって抑制することができる。特に、図19に示した製造方法によって製造された包装体A8においては、カップ部22のうち底部22aが顕著に減肉されることが、発明者らの試験によって判明した。本実施形態によれば、積層部材5によって減肉された底部22aを適切に補強することができる。また、積層部材5が台材1と別体であることにより、カップ部22の補強などの目的に適した材質を、より自由に選定できるという利点がある。また、包装体A8全体を大型化すること無く、印刷のための領域を拡大することができる。
図20および図21は、本発明の第九実施形態に基づく包装体を示している。本実施形態の包装体A9においては、積層部材5は、台材1とは別体とされており、所謂インモールドラベルと称されるものである。ただし、包装体A9全体としては、上述した包装体A1に類似した構成となっており、包装体A1における一対の延出片15を有していない点が包装体A1と相違する。
インモールドラベルとしての積層部材5は、矩形や円形等、種々の形状に形成された枚葉タイプのものであって、たとえばラベル基材と、該ラベル基材の表側に形成されたニス層と、該ラベル基材に形成された印刷層と、該ラベル基材の裏側に形成された接着剤層とを備えている。前記印刷層は、前記ラベル基材の表側と裏側のどちらに印刷されていてもよいが、表側に印刷される場合は前記ラベル基材と前記ニス層との間に、裏側に印刷される場合は前記ラベル基材と前記接着剤層との間に、それぞれ設けられる。
前記ラベル基材は、プラスチックフィルムや紙、合成紙、発泡樹脂シート、不織布等の種々のフィルム乃至シート又はこれらの積層体から形成できるが、特にプラスチックフィルムから形成されることが好ましい。プラスチックフィルムの材質としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等、種々の公知のものが使用できる。また、カップ部22の成形時の熱によって収縮しない未延伸フィルムであってもよいし、熱収縮する延伸フィルムであってもよい。また、プラスチックフィルムの厚さは、通常10μm〜100μmであるが、好ましくは10μm〜50μm、特に好ましくは10μm〜30μmという薄手のものである。このような薄手のものであれば、凸型の金型を用いた製造方法の場合に、カップ部22を反転させる際にも同時に反転させることが容易となる。また、このような薄手のプラスチックフィルムを使用するとカップ部の形状に対する追従性にも優れる。
前記印刷層は一層であっても二層以上であってもよく、その形成方法も種々の方法であってよいが、通常、例えばグラビア印刷やフレキソ印刷、凸輪印刷等の印刷手法により形成される。また、使用するインキはそれらの印刷手法に対応したものを採用すればよい。また、金属箔を転写した層を単独あるいは上記印刷手法によって形成した印刷層と合わせて使用してもよい。
前記ニス層は、主として、複数の積層部材5を重ね合わせた際における前記接着剤層との間のブロッキングを防止することと、表印刷の場合は前記印刷層の保護を主たる目的として形成される。前記ニス層は、前記印刷層の上にその形状に合わせて積層してもよいが、積層部材5の表面全体に前記ニス層を形成してもよい。該ニス層も前記印刷層と同様に印刷手法によって形成することができ、従って、前記印刷層と前記ニス層を同一印刷ライン上で連続して形成することができる。その場合、前記印刷層のインキと前記ニス層のニスは何れもUV硬化型のものを使用することが好ましい。
前記接着剤層は感熱接着剤から形成されている。該感熱接着剤には50℃〜80℃の範囲で活性化するものを用いることが好ましく、特に60℃〜70℃の範囲で活性化するものが特に好ましい。高い温度、例えば90℃〜100℃程度で活性化して所定の接着力を生じる感熱接着剤では、カップ部を成形するときの包装フィルムの蓄熱温度で活性化し難い。一方、低過ぎる温度、例えば30℃〜40℃で活性化するものの場合にはその保管、管理が困難である。
感熱性接着剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、熱可塑性エラストマー(合成ゴム系、エチレン−αオレフィン等のオレフィン系、ウレタン系等の熱可塑性エラストマー)等のベース樹脂に、石油系、テルペン系、テルペンフェノール系、クロマン−インデン系等の粘着付与剤、ワックスや滑剤等の添加剤(ワックスとしては例えば高級脂肪酸系、ポリエチレン系等、滑剤としては例えばアミド系等)が配合されたものが挙げられる。感熱性接着剤は、ホットメルトコーター、押し出しラミネーター等によって加熱溶融して塗工される接着剤である。ベース樹脂は、一種単独で又は二種以上併用できる。好ましくは、感熱接着剤のベース樹脂は、エチレン系共重合体とオレフィン系エラストマーとを含み、より好ましくはエチレン−酢酸ビニル共重合体とオレフィン系エラストマーとを含む。かかる感熱接着剤は、比較的低い温度で活性化する。また、ベース樹脂がエチレン系共重合体(好ましくはエチレン−酢酸ビニル共重合体)とオレフィン系エラストマーとを含む場合、その含有比は特に限定されない。感熱接着剤中のエチレン系共重合体の含有量は例えば20〜60重量%(好ましくは25〜55重量%)で、同様にオレフィン系エラストマーの含有量は例えば10〜50重量%(好ましくは15〜45重量%)で、同様に粘着付与剤の含有量は例えば1〜40重量%(好ましくは5〜35重量%)である。また、ベース樹脂がエチレン系共重合体(好ましくはエチレン−酢酸ビニル共重合体)とオレフィン系エラストマーとを含むもので融点が80℃程度と低いものが好ましい。なお、上述した包装体A8における積層部材5にインモールドラベルとしての構成を適用してもよい。
本実施形態の積層部材5は、カップ部22の側部外面に接合されている。積層部材5の外面には、たとえば商品名称やロゴマーク等が上述した印刷の手法によって表れている。なお、本実施形態においては、1つの積層部材5が、カップ部22の側部外面に設けられているが、2つ以上の積層部材5がカップ部22の側部外面や底部外面に設けられていてもよい。
包装体A9の製造方法においては、たとえば図5に示す金型8の凸部82の側面に、積層部材5を予め保持させておく。そして、図6および図7に示す包装体A1の製造方法と同様の工程を経ることにより、図20および図21に示す包装体A9が得られる。なお、図7に示す工程を経ることにより、図6においてカップ部22の内面に設けられた積層部材5が、カップ部22が反転されることに伴ってカップ部22の外面に設けられる。このような製造方法を経る場合、積層部材5としては、上述したように、反転に適した薄手のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。なお、図7に示す反転を伴わない場合、積層部材5は、カップ部22の内面に設けられた構成であってもよい。さらに、図19に示した凹型の金型8を用いた製造方法を採用してもよい。
本実施形態によれば、積層部材5を設けることによって、比較的大面積の印刷領域を確保することができる。また、インモールドラベルとしての積層部材5は、包装フィルム材料20と異なり、金型8の凸部82などに密着するように顕著に収縮する性質は求められない。このため、積層部材5は、多彩な印刷を施す媒体として、包装フィルム材料20よりも殊のほか好ましい仕様のものを採用することができる。したがって、包装体A9は、大面積とされた積層部材5に鮮やかな印刷が施された外観が達成され、販売促進効果が期待できる。
図22は、本発明の第十実施形態に基づく包装体を示している。本実施形態の包装体A10は、包装体A9におけるインモールドラベルとしての積層部材5に加えて、包装体A1における一対の延出片15(積層部材5)を備えている。すなわち、包装体A10は、複数種類の積層部材5を備えた構成とされている。なお、延出片15の構成は、包装体A1における構成に限定されず、包装体A2,A6などに示す構成をはじめ様々な構成を取りうる。また、たとえば、図22に示す積層部材5とは反対側に、包装体A5における延出片15が設けられた構成としてもよい。
本実施形態によれば、インモールドラベルによる印刷態様の多彩化と、延出片15による包装フィルム2の補強とを実現することができる。
図23および図24は、本発明の第十一実施形態に基づく包装体を示している。本実施形態の包装体A11は、延伸阻害層28を備えている。包装体A11のその他の構成および製造方法は、上述した包装体A1と同様であるとして、以下に説明する。ただし、延伸阻害層28以外の構成は、上述した包装体A2〜A10の構成を適宜採用できることはもちろんである。
延伸阻害層28は、フィルム包装体A11の製造工程において、包装フィルム2となる包装フィルム材料の延伸を阻害する機能を果たす層である。すなわち、包装フィルム2のうち延伸阻害層28が設けられている領域は、この領域に隣接する他の領域よりも包装フィルム2の延伸度合いが小となっている。延伸阻害層28は、包装フィルム2の適所に積層されており、少なくともその一部がカップ部22に重なっている。本実施形態においては、延伸阻害層28は、周囲部21とカップ部22との境界に重なっており、より具体的には、周囲部21とカップ部22との境界のすべてに重なっている。また、延伸阻害層28は、包装フィルム2のうち台材1に接する側の面に積層されている。一対の延出片15がカップ部22の周方向の一部に重なっているのに対し、延伸阻害層28は、カップ部22の根元側部分の全周にわたって重なっている。また、カップ部22の深さ方向において、延伸阻害層28は、一対の延出片15よりもさらに深い領域にも設けられている。なお、延伸阻害層28を設ける領域は、本実施形態の領域に限定されず、後述する延伸阻害層28が奏しうる効果等の観点から、適宜設定される。
延伸阻害層28は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂またはその混合物から形成される。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸およびその誘導体の重合物が挙げられ。ウレタン系樹脂としては、ポリエステルまたはポリエーテルとイソシアネートとの重合物が挙げられる。また、延伸阻害層28には必要に応じて、滑剤や粒子等を添加してもよい。滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィン等の合成ワックスやワセリン等の天然ワックスが挙げられる。粒子としては、例えば、シリカ、タルク、雲母、酸化チタン等の無機粒子やポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン等の有機粒子が挙げられる。
延伸阻害層28は、通常、上述のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂またはその混合物を主成分として調整された印刷インキをグラビア印刷等の公知の印刷手法によって包装フィルム2上に単層或いは二層以上の複層として設けられる。印刷インキは、顔料や染料が含まれている有色インキ(黒色インキ、白色インキを含む)でも、含まれていない無色インキ(通常、ニスとも呼ばれる)でもよく、また、紫外線硬化型のインキでもよい。延伸阻害層28の厚みは通常0.1μm〜10μm、好ましくは0.2μm〜5μmである。このように、延伸阻害層28としては、上述した包装フィルム材料の延伸を意図した程度に阻害しうるものであれば種々の材質からなる層を用いることができる。なお、図23および図24に示す延伸阻害層28は一例であり、その構成は種々に設定される。図23および図24においては、包装フィルム2のカップ部22における外面に延伸阻害層28が設けられているが、延伸阻害層28は、包装フィルム2のカップ部22における外面および内面のいずれか一方、もしくは双方に設けられてもよい。また、延伸阻害層28が包装フィルム2の片面に設けられる場合であっても、上述したように二層以上の複層によって構成してもよい。
包装体A11の製造方法においては、たとえば図5および図6に示す製造方法と同様の製造方法が採用され、この製造方法に用いられる包装フィルム材料20に予め延伸阻害層28が設けられる。延伸阻害層28が設けられる位置および大きさは、図6に示す脱気工程における包装フィルム材料20の延伸度合いを考慮して設定される。
本実施形態によっても、減肉によるカップ部22の強度低下を、積層部材5としての延出片15によって抑制することができる。さらに、包装フィルム2のうち延伸阻害層28が積層された領域は、これ以外の領域と比較して延伸が阻害される。このため、カップ部22が形成される脱気工程においては、包装フィルム2のうち延伸阻害層28が積層された領域の厚さが減肉してしまうことを抑制可能である。このように、積層部材5としての延出片15と延伸阻害層28との機能が相まって、カップ部22の強度をさらに高めることができる。
本発明に係る包装体は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る包装体の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。