JP6364297B2 - 導電性積層体およびそれを用いるタッチパネル - Google Patents

導電性積層体およびそれを用いるタッチパネル Download PDF

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Description

本発明は、ポリカーボネート基材の少なくとも一方の面上に、ハードコート層および導電層を積層した導電性積層体、特に高い視認性および良好な硬度を有すると共に、伸長性をも有し、且つポリカーボネート基材との優れた密着力を発揮するハードコート層を有する導電性積層体、およびそれを用いるタッチパネルに関する。
液晶表示装置(液晶ディスプレイ)は、薄型、軽量、低消費電力などの利点を有しており、コンピュータ、ワードプロセッサ、テレビジョン、携帯電話、携帯情報端末機器等の様々な分野で使用されている。またこれらの液晶表示装置において、画面上の表示を押さえることによって機器を操作する機構を有する、いわゆるタッチパネルが急速に普及している。このようなタッチパネルは、その優れた操作性により、例えば、スマートフォンなどの携帯電話、タブレットPC、携帯情報端末機器、銀行ATM、自動販売機、携帯情報端末(PDA)、複写機、ファクシミリ、ゲーム機、博物館およびデパートなどの施設に設置される案内表示装置、カーナビゲーション、マルチメディアステーション(コンビニエンスストアに設置される多機能端末機)、鉄道車両のモニタ装置などにおいて広く用いられている。
タッチパネルにおいては、一般に、透明基材上に設けられた透明導電層を有する透明導電性積層体が一般に用いられている。透明導電層の形成は、一般に、インジウム−スズ酸化物(ITO)などが用いられている。
透明導電層を有するフィルムを構成する基材フィルムとしては、透明性の高さおよび価格などの点から、PETフィルム、ポリカーボネートフィルムなどのフィルムが用いられることが多い。そしてこれらの基材フィルムには、耐擦傷性および耐久性などを向上させることを目的として、透明ハードコート層が設けられることがある。一方で、透明基材フィルム上に透明ハードコート層を設けることによって、干渉縞が発生するという問題がある。この干渉縞の発生は、視認性の低下をもたらす。
干渉縞の発生は、本発明者等はすでに特開2013−209481号公報(特許文献1)や特開2013−209482号公報(特許文献2)によりハードコーティング組成物を提案して、屈折率がポリカーボネート基材に近いもの提供し、解消した。また、本発明者らは、上記ハードコーティング組成物の密着性を改良するために新たな提案を行い、既に特許を得た(特許第5490954号公報(特許文献3)および特許第5490955号公報(特許文献4))。
上記2件の特許は、前述のように密着性の改良が行われたものであり、その密着性能は十分使用に耐えるものであった。しかし、2件の特許の密着性は、湿熱条件下(即ち、高温度高湿度条件下)で長時間耐えられるものではなかった。現実には、高湿度(85%)高温(80℃)で750時間の密着試験にも耐えなければならないが、上記2件の特許の技術ではそれが不足していた。
特開2013−209481号公報 特開2013−209482号公報 特許第5490954号公報 特許第5490955号公報
本発明は上記の問題点を解決することを課題とする。より特定すれば、本発明は、これまで本発明者等が開発した導電性積層体において、ハードコート層を改善して、基材であるポリカーボネート基材との密着性をより高くし、湿熱条件下でも長期間密着性が維持できるようにすることを課題とする。
本発明は、ポリカーボネート基材の少なくとも一方の面上に、ハードコート層、導電層が積層された導電性積層体であり、
前記ハードコート層が、
(A)側鎖にアクリレート基を有し、そのアクリレート基当量が500〜2000g/molを有するアクリル樹脂、
(B)2またはそれ以上のアクリレート基を有する、フェノールノボラック型アクリレート(C)炭素数2または3のアルキレンオキシド単位をモノマー一分子中に2〜4モル当量有する、ビスフェノール骨格含有ジアクリレート、および
(D)3またはそれ以上のアクリレート基を有する多官能アクリレート
を含有するハードコーティング組成物から形成され、
前記ハードコーティング組成物中に含まれる全樹脂成分100質量部に対して、成分(A)は10〜30質量部、成分(B)は15〜25質量部、成分(C)は20〜40質量部、成分(D)は5〜55質量部含まれることを特徴とする導電性積層体を提供するものであり、これにより上記課題が解決される。
前記アクリル樹脂(A)は、好ましくはアクリレート当量700〜1500g/molを有する。
前記アクリル樹脂(A)は、下記式(a)と下記式(b)で表される共重合体であるのが好ましい:
Figure 0006364297

(I)
[式中、RとRは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基または炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、Rは水素原子またはメチル基である。mとnは二重結合当量で変動する値である。]
好ましくは、前記ハードコーティング組成物は、酸化防止剤を全樹脂成分100質量部に対して1.1〜1.9質量部含み、前記酸化防止剤が下記一般式(II)を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤である。
Figure 0006364297
(II)
前記ハードコート層は屈折率1.535〜1.545を有するのが好ましい。
前記ハードコート層は、ZnO、TiO、CeO、SnO、ZrOまたはインジウム−スズ酸化物を実質上含まず、それらの総含有量がハードコート層の固形分重量の0.0001質量%以下であるのが好ましい。
前記導電層の厚さは、好ましくは5〜100nmである。
本発明では、好ましくは、前記ハードコート層および導電層以外に、色差調整層がハードコート層側に存在し、
色差調整層が、硬化性樹脂(i)および平均一次粒子径100nm以下の金属酸化物粒子(ii)または平均一次粒子径100nm以下の金属フッ化物粒子(iii)のいずれか一方または両方を含有する組成物から形成され、
粒子(ii)および(iii)の総質量は、硬化樹脂(i)100質量部に対して0〜200質量部であり、
導電性積層体に対して波長500〜750nmの範囲の光を照射した場合における反射率(R1)、および、導電性積層体を12N塩酸、16N硝酸および水を12N塩酸:16N硝酸:水=3.3:1.0:7.6の質量比で混合して得られた強酸水溶液中に40℃で3分間浸漬した後、乾燥させた後の導電性積層体に対して波長500〜750nmの範囲の光を照射した場合における反射率(R2)とした場合に、R1およびR2の差ΔRが1以下である導電性積層体を提供する。
前記導電層の上部に、更に補助電極層が存在し、導電層と補助電極層の総膜厚が20〜500nmであるのが好ましい。
本発明では、ポリカーボネート基材のハードコート層がない方の面上に、アンチブロッキング層が形成され、
前記アンチブロッキング層が、不飽和二重結合含有アクリル共重合体である第1成分および多官能性アクリレートである第2成分を含み、
第1成分のSP値(SP1)および第2成分のSP値(SP2)の差ΔSPが1〜2の範囲であるアンチブロッキング層形成組成物から形成され、
前記アンチブロッキング層形成組成物を塗装した後に、第1成分と第2成分が層分離を生じ、表面に微細な凹凸が形成されるのが好ましい。
本発明は、更に、少なくとも片面に導電層が設けられた電極基盤を用いたタッチパネルにおいて、少なくとも1枚の電極基板として上記の導電性積層体を用いるタッチパネルを提供する。
本発明の導電性積層体は、特定組成のハードコーティング組成物をポリカーボネート基材に塗布することにより形成されるハードコート層を有している。本発明のハードコート層は、良好な硬度を有すると共に、高い視認性および伸長性を有することを特徴とする。本発明のハードコート層は、平滑性が非常に高い。その為、ポリカーボネートフィルムなどの屈折率が高い基材フィルム上に、本発明におけるハードコート層を設けた場合であっても、干渉縞が発生しないという利点がある。
本発明のハードコート層は、金属酸化物などの高屈折率剤を含まないことを特徴とする。そのため、得られるハードコート層は、高い伸長性を有するという特徴がある。
本発明は、上記特許文献4の改良であり、特許文献4に配合しているエステル骨格を有する多官能ウレタンアクリレートを、本発明では側鎖にアクリレート基を有し、そのアクリレート基当量が500〜2000g/molを有するアクリル樹脂に変更した。特許文献4の多官能ウレタンアクリレートは、その骨格がエステル骨格であり、酸素や水で加水分解する傾向がある。本発明ではこの成分を、アクリル骨格を有するアクリル樹脂に変更することにより、加水分解による影響を抑え、高温高湿度の湿熱条件下でも長期間密着性を確保することができる。
本発明のハードコート層を形成するハードコーティング組成物中には、特定のアクリル樹脂が含まれており、上述のようにより高いレベルの密着性試験においても高い密着性(特に、湿熱条件下でも長期間の密着性)が確保でき、しかもポリカーボネート基材上にハードコート層を形成した場合においても高い平滑性を有しているので干渉縞を発生させない効果が得られる。本発明で用いるハードコーティング層は、1.535−1.545という屈折率を有していても、干渉縞を発生させない効果が見られる。
エッチング処理された透明導電性積層体を示す概略説明図である。
本発明の導電性積層体は、ポリカーボネート基材の少なくとも一方の面上に、ハードコート層、色差調整層および導電層が積層された、導電性積層体である。尚、色差調整層は、形成されない場合も本発明に含まれるが、便宜上色差調整層が存在する態様について説明する。また、各層の形成順序も必ずしもこの順序に特定されないが、説明を簡単にするため、この順序で形成する態様について説明する。更に、本発明の導電性積層体は、基本的に透明な導電性積層体として用いられる場合が多いと考えるが、必ずしも透明である態様に限定されず、導電層などは不透明なものであっても本発明の範囲に含まれる。以下、本発明の導電性積層体を構成する各層について説明する。
ポリカーボネート基材
本発明の導電性積層体に用いるポリカーボネート基材としては、透明であるものが一般的であるが、上述のように本発明の導電性積層体は透明で無いものもふくまれるので、必ずしも透明でなくても良い。透明の場合、光学的に複屈折の少ないもの、あるいは位相差を波長(例えば550nm)の1/4(λ/4)や波長の1/2(λ/2)に制御したもの、さらには複屈折をまったく制御していないものを、用途に応じて適宜選択することができる。ここで言うように用途に応じて適宜選択を行う場合としては、例えば液晶ディスプレイに使用する偏光板や位相差フィルム、インナー型のタッチパネルのように、直線偏光、楕円偏光、円偏光などの偏光によって機能を発現するディスプレイと共に、本発明の透明導電性積層体を用いる場合をあげることができる。
ポリカーボネート基材の屈折率は、その構成モノマーによって変化するが、通常は1.5以上1.6未満程度である。また、ポリカーボネートフィルムの位相差R(550)は0〜160nmであって、下記式(1)、(2)を満たすフィルムであることが望ましい。
0.60<R(450)/R(550)<1.20 (1)
0.80<R(650)/R(550)<1.40 (2)
(但し、R(450)、R(550)およびR(650)は夫々、波長450nm、550nm、650nmにおけるフィルム面内の位相差である。)
ポリカーボネート基材の屈折率は、好ましくは1.56以上1.60未満を満たすフィルムであることが望ましい。さらに好ましくは、屈折率1.57以上1.59未満であって、位相差R(550)は0〜10nmであって、下記式(3)、(4)を満たすフィルムであることが望ましい。
1.01<R(450)/R(550)<1.20 (3)
0.80<R(650)/R(550)<0.99 (4)
ポリカーボネート基材の厚さは適宜に決定し得るが、一般には強度や取扱性等の作業性などの点より10〜500μm程度であり、特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
ハードコート層
本発明の導電性積層体が有するハードコート層は、
(A)側鎖にアクリレート基を有し、そのアクリレート基当量が500〜2000g/molを有するアクリル樹脂、
(B)2またはそれ以上のアクリレート基を有する、フェノールノボラック型アクリレート、
(C)炭素数2または3のアルキレンオキシド単位をモノマー一分子中に2〜4モル当量有する、ビスフェノール骨格含有ジアクリレート、および
(D)3またはそれ以上のアクリレート基を有する多官能アクリレート
を含むハードコーティング組成物を塗装して硬化させることによって得られたハードコー
ト層である。ここで、前記ハードコーティング組成物中に含まれる全樹脂成分100質量部に対して、成分(A)は10〜30質量部、成分(B)は15〜25質量部、成分(C)は20〜40質量部、成分(D)は5〜55質量部含まれることを条件とする。
(A)側鎖にアクリレート基を有し、そのアクリレート基当量が500〜2000g/molを有するアクリル樹脂
本発明のハードコーティング組成物は、側鎖にアクリレート基を有し、そのアクリレート基当量が500〜2000g/molを有するアクリル樹脂(A)を含む。この特定のアクリル樹脂(A)を含むことによって、得られるハードコート層がポリカーボネート基材へ十分な密着性と平滑性を発揮し、また、形成するハードコート層の屈折率が1.535−1.545であっても、干渉縞を防ぐことができる。アクリレート基の当量は、500〜2000g/molであり、好ましくは700〜1500g/molである。アクリレート基の当量が500g/molより少ないと、硬化収縮による密着性が低下し、アクリレート基の当量が2000g/molより大きすぎると、反応性が低下し、密着性を低下させる懸念がある。
本発明で用いるアクリル樹脂(A)は、好ましくは重量平均分子量5000〜100000、より好ましくは10000〜20000を有するが、必ずしもこれらに限定されない。分子量が高くなり過ぎると、粘度が高くなる傾向があり、平滑性が損なわれ干渉縞が悪化し、分子量が低すぎると、粘度が下がる傾向があり、塗面の平滑性が保てず干渉縞が悪化する。
本明細書において、各成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定することができる。重量平均分子量の測定においては、HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)などの高速GPC装置などを用いることができる。HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)を用いた、重量平均分子量の具体的な測定条件として、試験サンプル2gを秤量し、真空乾燥機内にて40℃2時間処理し水分を除去した後、THF溶液にて0.2%の濃度となるように希釈し、カラム注入量:10μl、流速:0.35ml/minの条件で測定する態様が挙げられる。
前記アクリル樹脂(A)は、上記のアクリレート基当量を満たし、かつアクリル骨格を有すれば特に限定的ではないが、好ましくは前記アクリル樹脂(A)が下記式(a)と(b)で表されるような繰返し単位を有する共重合体である
Figure 0006364297
(I)
[式中、RとRは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基または炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、Rは水素原子またはメチル基である。mとnは整数であるが、二重結合当量で変動する値であり、重合度により変化する値である。]
上記アクリル樹脂(A)の繰返し単位(a)は、(メタ)アクリル酸とアルキルアルコールとのエステル(以下、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)」と言う。)から誘導される部分であり、アルキルアルコールは炭素数1〜12直鎖または分岐鎖アルキルアルコールまたは炭素数3〜10のシクロアルキルアルコールである。(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)の例としては、たとえば(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸n−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸i−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸t−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸イソボニルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステルなどが挙げられる。また(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
上記アクリル樹脂(A)の繰返し単位(b)は、(メタ)アクリル酸とグリシジルアルコールとの反応により、(メタ)グリシジル酸グリシジルエステルを得て、それと上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)と反応して共重合体を得た後に、共重合体中に存在するグリシジル基と(メタ)アクリル酸とを反応することにより形成する。
本発明においては、ハードコーティング組成物中に含まれる全樹脂成分100質量部に対して、成分(A)のアクリル樹脂は10〜30質量部含まれることを条件とする。成分(A)の量が10質量部より少ないもしくは30質量部を超える場合は、密着力を損なう。
(B)2またはそれ以上のアクリレート基を有する、フェノールノボラック型アクリ
レート
上記ハードコーティング組成物は、成分(B)2またはそれ以上のアクリレート基を有する、フェノールノボラック型アクリレートを含む。ハードコーティング組成物がフェノールノボラック型アクリレート(B)を含むことによって、得られるハードコート層が、透明であり、かつ、高い硬度を有する高屈折率層となる。
フェノールノボラック型アクリレート(B)は、下記式(III)
Figure 0006364297
(III)
[式(III)中、Rは、HまたはCHOHであり、Rは、HまたはOHであり、kは2〜5であり、pは0〜5である。]
で示される、フェノールノボラック型アクリレートであるのが好ましい。上記式(III)中、mは2〜4でありpは0〜3であるであるのがより好ましく、mは2〜4でありpは0〜1であるのがさらに好ましい。
フェノールノボラック型アクリレート(B)の重量平均分子量は、400〜2500であるのが好ましく、450〜2000であるのがさらに好ましい。また、フェノールノボラック型アクリレート(B)の水酸基価は、100〜180mgKOH/gであるのが好ましく、120〜160mgKOH/gであるのがさらに好ましい。
上記フェノールノボラック型アクリレート(B)は、ハードコーティング組成物中に含まれる樹脂成分100質量部に対して15〜25質量部含まれることを条件とする。フェノールノボラック型アクリレート(B)の量が15質量部未満である場合、得られるハードコート層の屈折率が低くなることで視認性の悪化、フェノールノボラック型アクリレート(A)の量が25質量部を超える場合は、ポリカーボネートフィルムとの密着性が低下する不具合がある。
(C)炭素数2または3のアルキレンオキシド構造を分子中に2〜4mol有する、ビスフェノール骨格含有のジアクリレート
本発明のハードコーティング組成物は、(C)アルキレンオキシド構造を分子中に2〜4mol有する、ビスフェノール骨格含有のジアクリレートを含む。このジアクリレート(C)は、ビスフェノール骨格を含有することでポリカーボネートフィルムなどポリカーボネート基材との濡れ性を向上させ、ハードコート層との密着力を高める利点がある。ジアクリレート(C)の具体例は、ビスフェノールAをエチレンオキシドで鎖延長し、それに(メタ)アクリル酸を反応したものが挙げられる。
本発明においては、ハードコーティング組成物中に含まれる樹脂成分100質量部に対して、成分(C)は20〜40質量部含まれることを条件とする。成分(C)の量が20質量部より少ない場合は、密着性の低下及び得られるハードコート層の屈折率が低下し、視認性を損なう不具合があり、(C)の量が40質量部を超える場合は、反応性の低下による密着力が損なう不具合がある。
(D)3またはそれ以上のアクリレート基を有する多官能アクリレート
本発明のハードコーティング組成物は、3またはそれ以上のアクリレート基を有する多官能アクリレートを含む。この多官能アクリレートは通常モノマーと言われる分子量であるが、2以上の分子が結合したオリゴマーであっても良い。これらの多官能アクリレートモノマーは、ハードコーティング組成物を塗装した後の活性エネルギー線の照射により、(メタ)アクリロイル基の反応に基づく硬化反応が生じ、高硬度を有するハードコート層が得られるという利点がある。
3またはそれ以上のアクリレート基を有する多官能アクリレートの例としては、例えば、ヒドロキシプロピル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、およびこれらのオリゴマーなどが挙げられる。これらの多官能アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明においては、ハードコーティング組成物中に含まれる樹脂成分100質量部に対して、成分(D)は5〜55質量部含まれることを条件とする。成分(D)の量が5質量部より少ない場合は、ポリカーボネートフィルムなどの透明高分子基材との密着力が低下する不具合があり、成分(D)の量が55質量部を超える場合は、得られるハードコート層の屈折率が低下し、視認性を損なう。
光重合開始剤など
本発明のハードコーティング組成物は光重合開始剤を含むのが好ましい。光重合開始剤が存在することによって、紫外線などの活性エネルギー線照射により樹脂成分が良好に重合することとなる。光重合開始剤の例として、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤などが挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤として、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。チタノセン系光重合開始剤として、例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。オキシムエステル系重合開始剤として、例えば、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
上記光重合開始剤のうち、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどがより好ましく用いられる。
光重合開始剤の好ましい量は、上記成分(A)、(B)、(C)および(D)100質量部に対して、0.01〜20質量部であり、より好ましくは1〜10質量部である。
本発明で用いられるハードコーティング組成物は、溶媒を含んでもよい。溶媒は、特に限定されるものではなく、組成物中に含まれる成分、塗装される基材の種類および組成物の塗装方法などを考慮して適時選択することができる。用いることができる溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。これらの溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましく使用される。
本発明のハードコーティング組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤として、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤などの常用の添加剤が挙げられる。
上記添加剤の中で酸化防止剤は、種々の公知のものを使用することができるが、例えばフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤またはリン系酸化防止剤等種々のものが用いられるが、それらの中でヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、更に下記化学式(II)を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤が最も好ましい。
Figure 0006364297
(II)
上記化学式(II)のヒンダードフェノール系酸化防止剤は、全樹脂成分100質量部に対して1.1〜1.9質量部の量でハードコーティング組成物中に配合することにより、湿熱密着性試験で750時間を超えて、1500時間でも密着性が維持できるようになる。
上記ハードコーティング組成物は、上記構成によって、ZnO、TiO、CeO、SnO、ZrOまたはインジウム−スズ酸化物などの金属酸化物からなる高屈折率剤などを含ませなくても、高い屈折率を有するハードコート層を形成することができることに特徴がある。そのため、上記ハードコーティング組成物は、ZnO、TiO、CeO、SnO、ZrOおよびインジウム−スズ酸化物からなる群から選択される金属酸化物などの高屈折率剤を含まないのが好ましい。より詳しくは、上記ハードコーティング組成物を用いて形成されるハードコート層中に含まれる、ZnO、TiO、CeO、SnO、ZrOおよびインジウム−スズ酸化物の総含有量がハードコート層中の0.0001質量%以下であるのが好ましい。金属酸化物などの高屈折率剤が、ハードコート層中に存在する場合は、樹脂成分のみの層と比較して、一般に伸長性および耐屈曲性が劣ることとなるためである。
上記ハードコーティング組成物を用いて設けられるハードコート層は、高い視認性および良好な硬度といったハードコート層において求められる性能に加えて、高い伸長性とポリカーボネート基材に対する高い密着性を有することも特徴とする。そしてこの伸長性の高さによって、透明な導電性積層体の視認性が飛躍的に向上するという利点がある。透明導電性積層体の製造において、透明導電層を設けるための加工処理時において、ハードコート層を有する基材フィルムに部分的負荷が生じる傾向がある。例えば、ハードコート層を有する基材フィルムにおいて、部分的負荷がかかることによって、ハードコート層と基材フィルムとの間における熱収縮率・熱膨張率の相違に基づくフィルムのうねり・よれが生じることがある。これらのフィルムのうねり・よれが、ITOなどの透明導電層が存在する部分と存在しない部分とが視覚的に区別される視認性低下をもたらすこととなる。これは、タッチパネルなどにおいて視認性を大きく低下することとなる。
本発明において用いられるハードコーティング組成物を用いて設けられるハードコート層は、高い視認性および良好な硬度といったハードコート層において求められる性能に加えて、高い伸長性を有することを特徴とする。本発明におけるハードコート層が高い伸長性を有することによって、透明導電層を設ける段階における加熱などにより、基材フィルムが局所的に熱膨張した場合であっても、ハードコート層が良好に追随し、その結果、ITOなどの透明導電層が存在する部分と存在しない部分とが視覚的に区別される視認性低下の不具合が解消されるという利点がある。また、本発明の導電性積層体はポリカーボネート基材との密着性が高く、高度な密着性試験(湿熱密着性試験で750時間を超える高度な密着性)でも良好な状態を確保する。
ハードコート層は、ポリカーボネート基材上に、上記のハードコーティング組成物を塗布することにより形成される。ハードコーティング組成物の塗布方法は、ハードコーティング組成物および塗装工程の状況に応じて適時選択することができ、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)などにより塗布することができる。
ハードコート層の厚みは、特に制限されるものではなく、種々の要因を考慮して適時設定することができる。例えば、0.01〜20μmのハードコート層が得られるようにハードコーティング組成物を塗布することができる。
ハードコーティング組成物の塗布により得られた塗膜を硬化させることによって、ハードコート層が形成される。この硬化は、必要に応じた波長の活性エネルギー線を発する光源を用いて照射することによって行うことができる。照射する活性エネルギー線として、例えば露光量0.1〜1.5J/cmの光、好ましくは0.3〜1.5J/cmの光を用いることができる。またこの照射光の波長は特に限定されるものではないが、例えば360nm以下の波長を有する照射光などを用いることができる。このような光は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯などを用いて得ることができる。
本発明のハードコート層は、ガラス転位温度60〜80℃を有するのが好ましい。この範囲にあると、タッチパネル電極を製造する工程にて高い伸張性を発揮し、透明導電層のパターンを見えにくくする利点を有する。ハードコート層のガラス転位温度が60℃より低いと、ハードコート膜に十分な硬度が得られず、透明導電層の製膜時に白化を発生させる。逆に、ハードコート層のガラス転位温度が80℃より高いと、伸張性が損われ、透明導電層のパターンを見えにくくする効果が得られなくなる。
色差調整層
本発明の導電性積層体は、ハードコート層の上に色差調整層を形成してもよい。色差調整層は、ハードコート層と透明導電層の間に存在するのが好ましい。色差調整層は、1層であってもよく、2層またはそれ以上からなる層であってもよい。色差調整層は、層間の密着性および透明導電性積層体の光学特性(透過率および色調など)を改良する層である。
本発明において、この色差調整層は、
硬化樹脂成分(i)、そして
平均一次粒子径100nm以下である金属酸化物粒子(ii)および/または平均一次粒子径100nm以下である金属フッ化物粒子(iii)
を含む層である。ここで、色差調整層中における粒子(ii)および(iii)の総質量は、硬化樹脂成分(i)100質量部に対して0〜200質量部の範囲内であることを条件とする。
上記硬化樹脂成分(i)として、紫外線硬化型樹脂または熱硬化型樹脂を用いることができる。本発明における色差調整層は、硬化樹脂成分(i)として、紫外線硬化型樹脂を用いるのがより好ましい。
紫外線硬化型樹脂は、紫外線硬化性能を有するモノマーを含む組成物によって得ることができる。紫外線硬化性能を有するモノマーとしては、例えば、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、変性スチレンアクリレート、メラミンアクリレート、シリコン含有アクリレートなどの単官能および多官能アクリレートが挙げられる。
具体的なモノマーとしては、例えばトリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性アクリレート、イソシアヌール酸アルキレンオキサイド変性アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリプロピレングリコールトリアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エポキシ変性アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどのウレタン変性アクリレート、エポキシ変性アクリレートなどの多官能モノマーが挙げられる。これらのモノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの紫外線硬化性能を有するモノマーの中でも、ウレタン変性アクリレートが好ましい。ウレタン変性アクリレートは市販品を使用することができ、例えば、日本合成化学工業(株)製の紫光シリーズ、例えば、UV1700B、UV6300B、UV765B、UV7640B、UV7600Bなど;根上工業(株)製のアートレジンシリーズ、例えば、アートレジンHDP、アートレジンUN9000H、アートレジンUN3320HA、アートレジンUN3320HB、アートレジンUN3320HC、アートレジンUN3320HS、アートレジンUN901M、アートレジンUN902MS、アートレジンUN903など;新中村化学工業(株)製のUA100H、U4H、U6H、U15HA、UA32P、U6LPA、U324A、U9HAMIなど;ダイセル・ユーシービー(株)製のEbecrylシリーズ、例えば、1290、5129、254、264、265、1259、1264、 4866、9260、8210、204、205、6602、220、4450など;荒川化学工業(株)製のビームセットシリーズ、例えば、371、371MLV、371S、577、577BV、577AKなど;三菱レイヨン(株)製のRQシリーズなど;DIC(株)製のユニディックシリーズなど;DPHA40H(日本化薬(株)製)、CN9006、CN968(SARTOMER社製)などを用いることができる。
硬化樹脂成分(i)が、紫外線硬化型樹脂である場合は、色差調整層を形成する組成物が光重合開始剤を含むのが好ましい。光重合開始剤として、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾイルベンゾエート、チオキサンソンなどの、一般的に用いられる光重合開始剤を用いることができる。
色差調整層を形成する組成物はさらに、光増感剤を含んでもよい。光増感剤として、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィンなどの一般的に用いられる光増感剤を用いることができる。
色差調整層を形成する組成物はさらに、各種アルコキシシランの加水分解物を含んでもよい。
硬化樹脂成分(i)が、熱硬化性樹脂である場合は、色差調整層を形成する組成物は、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのシラン化合物をモノマーとしたオルガノシラン系熱硬化性モノマー、エーテル化メチロールメラミンなどをモノマーとしたメラミン系熱硬化性モノマー、イソシアネート系熱硬化性モノマー、フェノール系熱硬化性モノマー、エポキシ系熱硬化性モノマー、などの熱硬化性モノマーを含んでもよい。これらの熱硬化性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記熱硬化性モノマーに加えて、必要に応じた熱可塑性樹脂成分を含んでもよい。
硬化樹脂成分(i)が、熱硬化性樹脂である場合は、色差調整層を形成する組成物は、反応促進剤または硬化剤を含むのが好ましい。反応促進剤としては、例えば、トリエチレンジアミン、ジブチル錫ジラウレート、ベンジルメチルアミン、ピリジンなどが挙げられる。硬化剤としては、例えば、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォンなどが挙げられる。
本発明において、色差調整層は、上記硬化樹脂成分(i)に加えて、平均一次粒子径100nm以下である金属酸化物粒子(ii)および/または平均一次粒子径100nm以下である金属フッ化物粒子(iii)が含まれる。そしてこれらの粒子(ii)および(iii)の総質量は、硬化樹脂成分(i)100質量部に対して0〜200質量部の範囲内であることを条件とする。粒子(ii)および(iii)の総質量は、所望の光学特性を得るために(i)、(ii)、(iii)それぞれの屈折率に応じ適宜調整できるが、硬化後の膜強度の観点から硬化樹脂成分(i)100質量部に対して0〜150質量部の範囲内であるのが好ましく、0〜100質量部の範囲内であるのがより好ましい。
色差調整層中における粒子(ii)および(iii)の総質量が200質量部を超える場合は、層間密着性が劣る不具合がある。
上記金属酸化物粒子(ii)の具体例として、例えば、ZnO、TiO、CeO、SnO、ZrOおよびインジウム−スズ酸化物などが挙げられる。これらの金属酸化物粒子(ii)は何れも、高屈折率を有することを特徴とする。そのため、金属酸化物粒子(ii)が含まれる色差調整層は、基本的には、高屈折率層となる。この金属酸化物粒子(ii)として、ZnO、TiO、ZrOが、より好ましく用いられる。金属酸化物粒子(ii)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、上述の通り、これらの金属酸化物粒子(ii)は、いずれも、平均一次粒子径が100nm以下であることを条件とする。平均一次粒子径が100nmを超える場合は、色差調整層形成時に粒子の凝集等により、視認可能なサイズとなりやすいため、ヘイズ値が上昇するまたは異物状の外観欠点となるなどの不具合がある。本明細書において、平均一次粒子径は、粒子をn−BuOH等の溶媒に分散した液体を粒度分布計で測定した時の50%体積粒子径を表す。
上記金属フッ化物粒子(iii)を構成する金属の具体例として、例えば、カルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウムなどが挙げられる。これらの金属の中でも、マグネシウムであるのがより好ましい。これらの金属フッ化物粒子(iii)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、必要に応じて、上記金属フッ化物粒子(iii)とSiOとを組みあわせて用いてもよい。
これらの金属フッ化物粒子(iii)は何れも、低屈折率を有することを特徴とする。そのため、金属フッ化物粒子(iii)が含まれる色差調整層は、基本的には、低屈折率層となる。なお、上述の通り、これらの金属フッ化物粒子(iii)は、いずれも、平均一次粒子径が100nm以下であることを条件とする。平均一次粒子径が100nmを超える場合は、色差調整層形成時に粒子の凝集等により、視認可能なサイズとなりやすいため、ヘイズ値が上昇するまたは異物状の外観欠点となるなどの不具合がある。
本発明における色差調整層は、1層で構成されていてもよく、2層以上で構成されていてもよい。例えば色差調整層が1層である場合は、上記金属酸化物粒子(ii)を含む高屈折率層であるのが好ましい。他の態様として、例えば、上記金属酸化物粒子(ii)および金属フッ化物粒子(iii)の両方を含む態様が挙げられる。色差調整層が1層である場合における色差調整層の厚さは、30〜300nmであるのが好ましく、50nm〜200nmであるのがより好ましい
また、例えば色差調整層が2層である場合は、上記金属酸化物粒子(ii)を含む高屈折率層および上記金属フッ化物粒子(iii)を含む低屈折率層からなる2層構造であるのが好ましい。この場合においては、ハードコート層と高屈折率層とが接する態様であるのがより好ましい。色差調整層が一層の高屈折率層および一層の低屈折率層からなる2層で構成される場合は、色差調整層全体の厚さは、30〜300nmであるのが好ましく、50nm〜200nmであるのがより好ましい。
色差調整層の形成は、例えば、紫外線硬化性能を有するモノマー、そして上記金属酸化物粒子(ii)および/または金属フッ化物粒子(iii)を含む組成物を、ハードコート層を有する透明高分子基材のハードコート層上に塗装し、次いで、紫外線などの活性エネルギー線を照射して硬化させることによって形成することができる。あるいは、熱硬化性モノマー、そして上記金属酸化物粒子(ii)および/または金属フッ化物粒子(iii)を含む組成物を、ハードコート層を有する透明高分子基材のハードコート層上に塗装し、次いで加熱硬化させることによって形成することができる。
色差調整層が2層である場合の一例として、まず、金属酸化物粒子(ii)を含む組成物をハードコート層上に塗装して硬化させた後、金属フッ化物粒子(iii)を含む組成物を塗装して硬化させることによって、2層からなる色差調整層を形成することができる。
色差調整層が2層である場合の他の一例として、まず、金属フッ化物粒子(iii)を含む組成物を塗装して硬化させた後、金属酸化物粒子(ii)を含む組成物をハードコート層上に塗装して硬化させることによって、2層からなる色差調整層を形成することができる。
上記組成物を塗装する方法として、ドクターナイフ、バーコーター、グラビアロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター、スピンコーターなどの当業者において通常行われる塗工機械を用いる塗装方法、スプレーを用いた塗装方法、浸漬による塗装方法などが挙げられる。
また、上記組成物は、必要に応じた有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒として、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、リグロイン、シクロヘキサノンなどの炭化水素系溶媒、メチルイソブチルケトン、酢酸イソブチルなどのケトン系溶媒、キシレン、トルエンなどの芳香族系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
紫外線硬化性能を有するモノマーを含む組成物を硬化させる場合は、この硬化は、必要に応じた波長の活性エネルギー線を発する光源を用いて照射することによって行うことができる。照射する活性エネルギー線として、例えば露光量0.1〜1.5J/cmの光、好ましくは0.3〜1.5J/cmの光を用いることができる。またこの照射光の波長は特に限定されるものではないが、例えば360nm以下の波長を有する照射光などを用いることができる。このような光は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯などを用いて得ることができる。
また、熱硬化性モノマーを含む組成物を硬化させる場合は、例えば、60〜140℃で1〜60分間加熱することによって硬化させることができる。ここで、加熱温度および加熱時間は、組成物に含まれる熱硬化性モノマーの種類に応じて選択することができる。
導電層および導電性積層体
本発明の導電性積層体は、通常、ハードコート層の上、または色差調整層の上に、導電層が形成されている。導電層は、導電性積層体の全体が透明の時は、透明導電層であり、透明でない場合は通常の金属の導電層であっても良い。透明導電層の構成材料としては、特に制限は無いが、例えば、金属層、または金属化合物層を挙げることができる。透明導電層を構成する成分としては、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫等の金属酸化物の層が挙げられる。これらのうち酸化インジウムを主成分とした結晶質の層であることが好ましく、特に結晶質のITO(Indium Tin Oxide)からなる層が好ましく用いられる。
また、透明導電層が結晶質ITOの場合、結晶粒径は、特に上限を設ける必要はないが500nm以下であることが好ましい。結晶粒径が500nmを超えると屈曲耐久性が悪くなるため好ましくない。ここで結晶粒径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)下で観察される多角形状または長円状の各領域における対角線または直径の中で最大のものと定義される。透明導電層が非晶質ITOの場合には、環境信頼性が低下することがある。
導電層は、公知の手法にて形成することが可能であり、例えばDCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、パルスレーザーデポジション法等の物理的形成法等を用いることができる。大面積に対して均一な膜厚の金属化合物層を形成するという工業生産性に着目すると、DCマグネトロンスパッタリング法が望ましい。なお、上記物理的形成法(PVD)のほかに、化学気相堆積法、ゾルゲル法などの化学的形成法を用いることもできるが、膜厚制御の観点からはやはりスパッタリング法が望ましい。
導電層の膜厚は、導電性の点から5〜50nmであることが好ましい。更に好ましくは5〜30nmである。導電層の膜厚が5nm未満では抵抗値の経時安定性に劣る傾向があり、また50nmを超えると屈曲耐久性の低下のためタッチパネルとして好ましくない。
本発明の導電性積層体をタッチパネルに用いる場合、タッチパネルの消費電力の低減と回路処理上の必要等から、膜厚10〜40nmにおいて透明導電層の表面抵抗値が10〜2000Ω/□、より好ましくは30〜1000Ω/□の範囲を示す透明導電層を用いることが好ましい。
なお、導電層が透明の場合、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、導電性酸化物微粒子等を分散した分散液を高分子基材上に湿式法(例えば、スピンコート法、グラビア、スロットダイ、印刷など)によって形成した層を用いることもできる。
こうして形成された導電層は、エッチング処理によるパターン形成が行われる。このエッチング処理は、一般に、導電層を、パターン形成マスクで覆い、次いで酸性水溶液などのエッチング液を用いて導電層をエッチングすることによって行われる。エッチング液として、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸などの有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液が挙げられる。より具体的なエッチング液として、12N塩酸、16N硝酸および水を12N塩酸:16N硝酸:水=3.3:1.0:7.6の質量比で混合して得られる強酸水溶液が挙げられる。
なお、導電層をパターン化する前もしくは後に、必要に応じて、熱処理してもよい。導電層が熱処理により結晶化するITOの場合、熱処理を行うことによって、透明性および導電性を向上させることができるという利点がある。熱処理は、例えば、100〜150℃で、15〜180分加熱することによって行うことができる。
本発明の導電性積層体は、導電性積層体に対して波長500〜750nmの範囲の光源を照射した場合における反射率(R1)、および、導電性積層体を、12N塩酸、16N硝酸および水を12N塩酸:16N硝酸:水=3.3:1.0:7.6の質量比で混合して得られた強酸水溶液中に40℃で3分間浸漬した後、乾燥させた後の導電性積層体に対して、波長500〜750nmの範囲の光源を照射した場合における反射率(R2)において、R1およびR2の差△Rが1以下であることを特徴とする。
上記強酸水溶液は、エッチング処理において一般的に用いられる、いわゆる王水と言われる強酸水溶液である。上記強酸水溶液を用いてエッチング処理を行うことによって、導電層はエッチングされることとなる。図1は、エッチング処理された導電性積層体を示す概略説明図である。導電性積層体(10)は、ポリカーボネート基材(1)の一方の面上に、ハードコート層(3)、色差調整層(5)および透明導電層(7)が順次積層された構造を有する。ここで、(11)で示される部分が、エッチング処理によるパターニングによって、導電層(7)が取り除かれた部分であり、そして(13)で示される部分が、エッチング処理においてマスクされていた部分であり、導電層がそのまま残された部分である。ここで、上記反射率R1は、図1中の(13)の部分における反射率を意味し、そして上記反射率R2は、図1中の(11)の部分における反射率を意味する。そして本発明の導電性積層体においては、波長500〜750nmの範囲の光源を照射した場合における反射率において、R1およびR2の差△Rが1以下であることを特徴とする。つまり、本発明の導電性積層体においては、導電層(7)が存在する部分および存在しない部分において、反射率の差がほとんど生じていない。これにより、極めて高い視認性が達成されることとなった。
導電性積層体の反射率の測定は、例えば日立製作所U−3000などの分光光度計を用いて、入射角10度における分光反射率をJIS K5600−4−5に準拠して測定することができる。
アンチブロッキング層
本発明の導電性積層体は、ポリカーボネート基材の一方の面上に、ハードコート層、色差調整層および導電層が順に積層された構造を有する。この導電性積層体は、必要に応じて、ポリカーボネート基材の他の一方の面上に、アンチブロッキング層が形成されていてもよい。他の一方の面上にアンチブロッキング層を形成することによって、導電性積層体の製造工程におけるブロッキング現象の発生を抑えることができ、製造時における保存安定性が向上するという利点がある。
アンチブロッキング層を形成する組成物として、例えば、第1成分および第2成分を含むアンチブロッキング層形成組成物が挙げられる。第1成分のSP値(SP1)および第2成分のSP値(SP2)の差△SPが1〜2の範囲内であり、アンチブロッキング層形成組成物を塗装した後に、第1成分と第2成分が相分離を生じ、表面に微細な凹凸を有するアンチブロッキング層が形成される、アンチブロッキング層形成組成物であるのがより好ましい。
第1成分として、不飽和二重結合含有アクリル共重合体が用いられる。不飽和二重結合含有アクリル共重合体は、例えば(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合およびエポキシ基を有するモノマーとを反応させた樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合およびイソシアネート基を有するモノマーとを反応させた樹脂などにアクリル酸やグリシジルアクリレートなどの不飽和二重結合を有しかつ他の官能基を有する成分を付加させたものなどが挙げられる。これらの不飽和二重結合含有アクリル共重合体は1種を単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。この不飽和二重結合含有アクリル共重合体は、重量平均分子量で2000〜100000であるのが好ましく、5000〜50000であるのがより好ましい。
第2成分のモノマーまたはオリゴマーとして、多官能性不飽和二重結合含有モノマーまたはそのオリゴマーであるのがより好ましい。なお、本明細書でいう「オリゴマー」とは、繰り返し単位を有する重合体であって、この繰り返し単位の数が3〜10であるものをいう。多官能性不飽和二重結合含有モノマーとして、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリレートとの脱アルコール反応物である多官能アクリレート、具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。この他にも、ポリエチレングリコール#200ジアクリレート(共栄社化学(株)社製)などの、ポリエチレングリコール骨格を有するアクリレートモノマーを使用することもできる。これらの多官能性不飽和二重結合含有モノマーは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。第2成分は、多官能アクリレートであるのがより好ましい。
第1成分および第2成分が上記組み合わせである場合に好ましい有機溶媒として、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒;アニソール、フェネトールプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、また2種以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
上記アンチブロッキング層形成組成物は、光重合開始剤を含むのが好ましい。光重合開始剤として、例えば、2−ヒドロキシ−2メチル−1フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタンノン−1などが挙げられる。
上記アンチブロッキング層形成組成物は、第1成分および第2成分それぞれのSP値の差によって相分離がもたらされる。この相分離によって、表面に微細な凹凸を有するアンチブロッキング層が形成されることとなる。第1成分のSP値と第2成分のSP値との差は1以上であるのが好ましく、1〜2の範囲内であるのがより好ましい。第1成分のSP値と第2成分のSP値との差が1以上ある場合は、互いの樹脂の相溶性が低く、それによりアンチブロッキング層形成組成物の塗布後に第1成分と第2成分との相分離がもたらされると考えられる。
SP値とは、solubility parameter(溶解性パラメーター)の略であり、溶解性の尺度となるものである。SP値は数値が大きいほど極性が高く、逆に数値が小さいほど極性が低いことを示す。
例えば、SP値は次の方法によって実測することができる[参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A−1、5、1671〜1681(1967)]。
測定温度:20℃
サンプル:樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶媒10mlをホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解する。
溶媒:
良溶媒…ジオキサン、アセトンなど
貧溶媒…n−ヘキサン、イオン交換水など
濁点測定:50mlビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とする。
樹脂のSP値δは次式によって与えられる。
Figure 0006364297
Figure 0006364297
Figure 0006364297
Vi:溶媒の分子容(ml/mol)
φi:濁点における各溶媒の体積分率
δi:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
上記アンチブロッキング層形成組成物は、必要に応じて、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤などの常用の添加剤を含んでもよい。
アンチブロッキング層形成組成物には、上記の第1成分および第2成分のほかに、通常使用される樹脂が含まれてもよい。上記アンチブロッキング層形成組成物は、上記のような第1成分および第2成分を用いることによって、樹脂粒子などを含ませなくても、凹凸を有する樹脂層を形成することができることに特徴がある。そのため、上記アンチブロッキング層形成組成物は、樹脂粒子を含まないのが好ましい。しかしながら、上記アンチブロッキング層形成組成物は、必要に応じて、無機粒子または有機粒子、若しくはそれらの複合物を少なくとも一種以上含んでもよい。これらの粒子は、特に表面に凹凸を形成する目的のために添加されるのではなく、相分離や析出を制御して、より均一で微細な凹凸を形成する為に添加される。これらの粒子の粒径は、平均粒径で0.5μm以下、好ましくは0.01〜0.3μmである。0.5μmを超えると、若干透明性が低下する。
無機粒子の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ゼオライト、雲母、合成雲母、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウムおよび酸化アンチモンからなる群から選択される少なくとも1種類が挙げられる。
有機粒子の例としては、アクリル、オレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ウレタン、ポリエステル、シリコーン、ポリシラン、ポリイミドおよびフッ素粒子からなる群から選択される少なくとも1種類が挙げられる。
上記アンチブロッキング層形成組成物は、第1成分および第2成分、そして必要に応じた溶媒、光重合開始剤、触媒、光増感剤などの添加剤を混合することにより調製される。アンチブロッキング層形成組成物中における第1成分と第2成分との比率は、0.1:99.9〜50:50が好ましく、0.3:99.7〜20:80がより好ましく、0.5:99.5〜10:90がさらに好ましい。重合開始剤、触媒および光増感剤を用いる場合は、第1成分および第2成分そして必要に応じた他の樹脂(これらを合わせて「樹脂成分」という。)100質量部に対して、0.01〜20質量部、好ましくは1〜10質量部加えることができる。溶媒を用いる場合は、上記樹脂成分100質量部に対して、1〜9900質量部、好ましくは10〜900質量部加えることができる。
上記アンチブロッキング層形成組成物を塗装し、次いで硬化させることによって、表面に微細な凹凸を有するアンチブロッキング層を形成することができる。アンチブロッキング層形成組成物の塗装方法として、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法などが挙げられる。アンチブロッキング層の厚さとして、例えば、0.01〜20μmの厚さである態様が挙げられる。
アンチブロッキング層形成組成物を塗装した後、光を照射することによって、相分離および硬化させることができる。照射する光として、例えば露光量0.1〜3.5J/cmの光、好ましくは0.5〜1.5J/cmの光を用いることができる。またこの照射光の波長は特に限定されるものではないが、例えば、360nm以下の波長を有する照射光などを用いることができる。このような光は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯などを用いて得ることができる。このように光を照射することによって、相分離および硬化が生じることとなる。
タッチパネル
本発明のタッチパネルは、透明な導電性積層体を有する。本発明のタッチパネルとして、例えば、静電容量方式のタッチパネルが挙げられる。また、本発明の透明な導電性積層体を、抵抗膜方式のタッチパネルに用いてもよい。
タッチパネル
本発明のタッチパネルは、透明な導電性積層体を有する。本発明のタッチパネルとして、例えば、静電容量方式のタッチパネルが挙げられる。また、本発明の透明な導電性積層体を、抵抗膜方式のタッチパネルに用いてもよい。
本発明の透明な導電性積層体をタッチパネル用基板として用いる場合における、具体的な層構成として、例えば下記の層構成が挙げられる:
透明導電層/色差調整層/ハードコート層/ポリカーボネート基材、
透明導電層/ハードコート層/ポリカーボネート基材、
透明導電層/色差調整層/ハードコート層/ポリカーボネート基材/アンチブロッキング層、
透明導電層/ハードコート層/ポリカーボネート基材/アンチブロッキング層、
透明導電層/色差調整層/ハードコート層/ポリカーボネート基材/ハードコート層/色差調整層/透明導電層、
透明導電層/ハードコート層/ポリカーボネート基材/ハードコート層/色差調整層/透明導電層、
補助電極層/透明導電層/色差調整層/ハードコート層/ポリカーボネート基材、
補助電極層/透明導電層/ハードコート層/ポリカーボネート基材、
補助電極層/透明導電層/色差調整層/ハードコート層/ポリカーボネート基材/アンチブロッキング層、補助電極層/透明導電層/色差調整層/ハードコート層/透明高分子基材/アンチブロッキング層、
補助電極層/透明導電層/色差調整層/ハードコート層/ポリカーボネート基材/ハードコート層/色差調整層/透明導電層/補助電極層、
補助電極層/透明導電層/ハードコート層/ポリカーボネート基材/ハードコート層/透明導電層/補助電極層。尚、上記層構成は、最上層から最下層に向けて層を順に記載している。上記透明導電層のすぐ下層に、色差調整のためまたは密着性を改善するために金属酸化物層(具体的には、二酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化モリブデンなど金属酸化物からなる層)を形成してもよい。最上層の透明導電層のさらに上層に表面保護を目的としたハードコート層を設けても良い。その場合、ハードコート層は、本発明のハードコート層であっても良いが、本発明以外の通常のハードコート層であっても良い。
ここで言う補助電極層とは、配線用の電極材として使用可能な層を意味する。補助電極層の材料としては、比抵抗が1×10−6Ωcm以上1×10−4Ωcm以下のものが望ましい。比抵抗が1×10−6Ωcm未満の金属材料を使用すると用途機能上では不安定であり、薄膜として形成することが難しくなる。一方、比抵抗が1×10−4Ωcmより大きい金属材料を使用すると、抵抗値が高すぎるために、細線加工した際に抵抗値が高くなってしまう。以上の理由から、実使用に適する金属は、Cu、Ag、Al、Au、Ni、Ni/Cr、Ti群から選ばれる単一金属、または複数種からなる合金が推奨される。特に、電気導電性が高く、パターンエッチング、電気メッキ等の加工性に優れる金属で、電極と回路等のリード部との電気的機械的接続性(ハンダ、異方導電性コネクター等)が良く、曲げに強く、熱伝導性が高い上に、安価という点においてCu、Al等が好ましく、特にCuが好ましい。
補助電極層の厚さとしては、特に限定されるものではないが、通常の設計仕様として0.001〜100μm、好ましくは0.01〜25μmの範囲が推奨される。補助電極の形成には、公知の処理方法を使用できるが、スパッタリング法で形成することが好ましい。また、必要に応じてその後電解・無電解湿式金属メッキ等でさらに膜厚を厚くして導電性を上げても良い。
また、必要に応じて、上記補助電極層の保護(主に酸化防止)を目的に、補助電極層の上下層にNi、Ni/Cr、Cr、Ti、Mo他からなる高融点金属層およびこれらの酸化物層を設けても良い。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
製造例1 アクリル樹脂(1)の製造
撹拌羽根、温度計、滴下装置、温度制御装置、ガス導入口および冷却管を備えた反応装置に、酢酸ブチル70部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌下110℃まで昇温した。次に、グリシジルメタクリレート15.3部、メチルメタクリレート76.8部、n−ブチルアクリレート7.9部からなる混合物と、パーブチルO(日本油脂社製)2.0部を酢酸ブチル25.0部に溶解した溶液とを、反応装置中に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成させ、さらに、パーブチルO(日本油脂社製)1.0部を酢酸ブチル25.0部に溶解した溶液を、反応装置中に1時間かけて滴下した。滴下終了後1時間110度を維持した後、120℃に昇温し更に2時間熟成させ反応を完結させた。次に窒素ガスから空気に変更して90℃まで攪拌下冷却しアクリル酸7.8部、P−メトキシフェノール0.3部を仕込んだ。更に臭化テトラブチルアンモニウム0.6部を酢酸ブチル3.0部に溶解した溶液を投入して105℃まで昇温して反応させた。反応は酸価によりモニタリングし、固形分の酸価が5以下になるまで反応させた。尚、酸価はJIS−5601−2−1に準じて行い、反応溶液を0.1N-水酸化カリウム溶液で滴定して次式により計算した。
酸価={(KOH溶液の滴下量[mL])×(KOH溶液のモル濃度[mol/L])}/(固形分の重量[g])
反応終了後、酢酸ブチルを12.0部投入して冷却し、アクリル当量1000のアクリル樹脂(1)を得た。105℃×3時間後の不揮発分は45.1%であった。
製造例2〜5 アクリル樹脂(2)〜(5)の製造
上記製造例1と同様な方法で表1に示す配合にてアクリル樹脂(2)〜(5)を製造した。
Figure 0006364297
製造例6 フェノールノボラック型アクリレートの製造
攪拌装置、温度計、滴下漏斗および還流装置のついた反応装置に、フェノールノボラック樹脂(重量平均分子量700〜900、エポキシ当量150〜200)150gおよびエピクロルヒドリン550gを混合し、100℃、100〜200mgの減圧条件下にて48.5%の水酸化ナトリウム水溶液110gを2時間かけて滴下した。反応終了後、温度を室温まで冷却し過剰の水酸化ナトリウム水溶液を酸で中和、減圧下にて加熱し過剰のエピクロルヒドリンを除去した後、生成物をメチルイソブチルケトンに溶解させ、水洗濾別により副生成塩を除去してフェノールノボラック型のエポキシ樹脂溶液を得た。
得られたフェノールノボラック型のエポキシ樹脂の固形分100重量部に対し、メトキノン1000ppm、トリフェニルホスフィン2000ppmを加え、100℃にてアクリル酸を滴下し、酸価が1mgKOH/g以下になるまで反応させフェノールノボラック型エポキシアクリレート(1)を得た。
得られたフェノールノボラック型エポキシアクリレートは、重量平均分子量が950であり、水酸基価は140mgKOH/g、屈折率は1.572であった。
製造例7 多官能ウレタンアクリレートの製造
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた1Lの4口フラスコに1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとのポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製PCDL T−5652、数平均分子量:2000)341gと、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物(昭和高分子社製リポキシSP−16LDA)17gと、イソホロンジイソシアネート43gと、ジブチルスズジラウレート(反応触媒)0.2g、メチルエチルケトン(有機溶媒)400gとを投入し、70℃において約24時間攪拌し、反応させた。反応後、赤外線吸収スペクトルによりイソシアネート残基が観測されなくなったのを確認した。このようにして、数平均分子量30000、不飽和度0.23mol/kgの不飽和基含有ウレタン樹脂を得た。
実施例1
ハードコーティング組成物の調製
成分(A)として、製造例1で得られたアクリル樹脂(1)、成分(B)として、製造例6で得られたフェノールノボラック型エポキシアクリレート(1)を、成分(C)として、ビスフェノールAエチレンオキサイド2mol変性ジアクリレート、成分(D)として、ペンタエリスリトールトリアクリレートを用いてハードコーティング組成物を調製した。表1に示された原料を、表1に示された固形分質量で順次混合し、撹拌して、ハードコーティング組成物を得た。
ハードコートフィルムの作成
得られたハードコーティング組成物を、帝人化成製100μm光学用PCフィルム(ピュアエース)上に滴下し、バーコーター#9を用いて塗工した。塗工後、70℃にて1分間乾燥させ、紫外線照射機(Fusion製)にて350mJの紫外線を照射し、ポリカーボネートフィルムおよび膜厚3.0μmのハードコート層を有するハードコートフィルムを得た。ハードコート層の屈折率は、JIS K0062に準拠した方法により、アッベ屈折率計を用いて測定し、1.542であった。
透明導電性積層体の作成
得られたハードコートフィルムのハードコート層上に、酸化インジウムと酸化錫が重量比95:5の組成で充填密度98%の酸化インジウム−酸化錫ターゲットを用いるスパッタリング法によって、ITO層を形成し、可動電極基板となる透明導電性積層体を作製した。形成されたITO層の膜厚は約30nm、製膜後の表面抵抗値は約150Ω/□であった。
実施例2〜20
成分(A)の種類および量を表2に記載されたものに変更し、また成分(B)〜(D)の量を表2に記載されたものに変更し、実施例1と同様にして、ハードコーティング組成物を調製した。得られたハードコーティング組成物を用いて、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。ハードコート層の膜厚は3.0μmで、屈折率はJIS K0062に準拠するアッベ屈折率計で測定して1.542であった。得られたハードコートフィルムのハードコート層上に、酸化インジウムと酸化錫が重量比95:5の組成で充填密度98%の酸化インジウム−酸化錫ターゲットを用いるスパッタリング法によって、ITO層を形成し、可動電極基板となる透明導電性積層体を作製した。形成されたITO層の膜厚は約30nm、製膜後の表面抵抗値は約150Ω/□であった。
比較例1
この例では、特許文献4の発明に該当する組成で、本願のアクリル樹脂に代えて製造例7で得られたポリエステル系ウレタンアクリレートを用いた例を示す。その組成は表3の比較例1の配合でハードコーティング組成物を調製し、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。ハードコート層の膜厚は3.0μmで、屈折率はJIS K0062に準拠するアッベ屈折率計で測定して1.542であった。得られたハードコートフィルムのハードコート層上に、酸化インジウムと酸化錫が重量比95:5の組成で充填密度98%の酸化インジウム−酸化錫ターゲットを用いるスパッタリング法によって、ITO層を形成し、可動電極基板となる透明導電性積層体を作製した。形成されたITO層の膜厚は約30nm、製膜後の表面抵抗値は約150Ω/□であった。
比較例2〜10
表3の比較例2〜10に示された配合により、ハードコーティング組成物を、実施例1と同様にして調製した。得られたハードコーティング組成物を用いて、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。ハードコート層の膜厚は3.0μmで、屈折率はJIS K0062に準拠するアッベ屈折率計で測定して1.542であった。得られたハードコートフィルムのハードコート層上に、酸化インジウムと酸化錫が重量比95:5の組成で充填密度98%の酸化インジウム−酸化錫ターゲットを用いるスパッタリング法によって、ITO層を形成し、可動電極基板となる透明導電性積層体を作製した。形成されたITO層の膜厚は約30nm、製膜後の表面抵抗値は約150Ω/□であった。
上記実施例1〜20および比較例1〜10において得られたハードコーティング組成物、ハードコートフィルムおよび透明導電性積層体について、下記評価を行った。評価結果を表2および3に示す。
反射率の差△Rの測定
上記実施例1〜20および比較例1〜10において得られた透明導電性積層体の反射率を、分光光度計(日立製作所U−3000)を用いて、入射角10度でJIS K5600−4−5に準拠して、反射率R1を測定した。反射率の測定において用いた光源の波長は500〜750nmであった。
次いで、得られた透明導電性積層体を、12N塩酸、16N硝酸および水を12N塩酸:16N硝酸:水=3.3:1.0:7.6の質量比で混合して得られた強酸水溶液中に40℃で3分間浸漬し、乾燥させた。この透明導電性積層体に対して、波長500〜750nmの光を照射し、反射率R2を測定した。なお、反射率R1は、図1中の(13)の部分に示されるような、透明導電層が存在する部分の反射率を意味し、反射率R2は、図1中の(11)の部分に示されるような、透明導電層が存在しない部分の反射率を意味する。
こうして得られたR1およびR2の差を△Rとした。波長500〜750nmの間で△Rが最大値となった△Rの値を表1、2に示した。
干渉縞評価
ポリカーボネート基材上に各実施例1〜20または比較例1〜10のハードコーティング組成物をバーコーターで塗工した後、70℃の乾燥炉に1分間放置し、更にFusion−H光源で露光してそれぞれの実施例または比較例に対応する試験片を得た。得られた試験片を100×100mmの黒色アクリル板に光学フィルム用粘着剤を用いハードコート塗工面が表面にくるように貼り合せた。スタンド式3波長蛍光灯(TWINBARD製 SLH−399型)の蛍光管から垂直下10cmの距離にサンプルを設置して目視観察をし、評価結果が○以上のサンプルについては、更に太陽光下での目視観察を実施し、下記の評価基準に基づき、判定した。
◎ : 干渉縞(干渉模様)が3波長蛍光灯下でも太陽光下でも視認されない。
○ : 3波長蛍光灯下で干渉縞(干渉模様)が視認されないが太陽光下では僅かに視認される。
△ : 干渉縞(干渉模様)が僅かに視認される。
× : 干渉縞(干渉模様)がはっきりと視認される。
エッチングマーク(目視評価)
上記実施例1〜20および比較例1〜10において得られた透明導電性積層体を、塩酸(12規定):硝酸(16規定):純水を質量比で3.3:1.0:7.6の割合で混合した強酸中に40℃で3分間浸漬し、エッチング処理して、パターニングを施したサンプルを用いて、スタンド式3波長蛍光灯(TWINBARD製 SLH−399型)の蛍光管から垂直下10cmの距離にサンプルを設置して目視観察をし、評価結果が○以上のサンプルは更に、太陽光の下で目視観察をし、下記基準で見た目の評価を行った。
◎:太陽光下及び3波長蛍光灯下でパターン部と非パターン部の判別が困難
○:太陽光下ではパターン部と非パターン部の判別がわずかに可能だが、3波長蛍光灯下ではパターン部と非パターン部の判別が困難
△:3波長蛍光灯下でパターン部と非パターン部の判別がわずかに可能
×:3波長蛍光灯下でパターン部と非パターン部の判別が容易に可能
密着性試験1(密着性 [初期])
JIS K5400に準拠して密着性試験を実施した。上記実施例1〜20および比較例1〜10において得られた透明導電性積層体に、カッターナイフを用いて、1mmのカット(碁盤目)が100個できるようにクロスカットを施した。次いで、作成した碁盤目の上にセロハン粘着テープを完全に付着させ、テープの一方の端を持ち上げて上方に剥がした。この剥離動作を同一箇所で3回実施した。その後、剥がれた碁盤目の数を、以下に記載の基準に沿って判定した。下記評価基準で8以上を合格とする。
10:剥がれなし
8:剥がれが5目以内である
6:剥がれが5目を超えて15目以内である
4:剥がれが15目を超えて35目以内である
2:剥がれが35目を超えて65目以内である
0:剥がれが65目を超えて100目以内である
湿熱密着性試験(85℃×85%×500H後)
実施例1〜20及び比較例1〜10で得られたハードコートフィルムを、85℃×85%RHの湿熱試験にて500時間処理した。湿熱処理1時間後にカッターナイフを用いて、1mmのカット(碁盤目)が100個できるようにクロスカットを施した。次いで、作成した碁盤目の上にセロハン粘着テープを完全に付着させ、テープの一方の端を持ち上げて上方に剥がした。この剥離動作を同一箇所で3回実施した。その後、剥がれた碁盤目の数を、密着性試験1と同様の基準にて6段階評価で判定した。
湿熱密着性試験(85℃×85%×750H後)
実施例1〜20及び比較例1〜10で得られたハードコートフィルムを、85℃×85%RHの湿熱試験にて750時間処理した。湿熱処理1時間後にカッターナイフを用いて、1mmのカット(碁盤目)が100個できるようにクロスカットを施した。次いで、作成した碁盤目の上にセロハン粘着テープを完全に付着させ、テープの一方の端を持ち上げて上方に剥がした。この剥離動作を同一箇所で3回実施した。その後、剥がれた碁盤目の数を、密着性試験1と同様の基準にて6段階評価で判定した。
湿熱密着性試験(85℃×85%×1500H後)
実施例1〜20及び比較例1〜10で得られたハードコートフィルムを、85℃×85%RHの湿熱試験にて1500時間処理した。湿熱処理1時間後にカッターナイフを用いて、1mmのカット(碁盤目)が100個できるようにクロスカットを施した。次いで、作成した碁盤目の上にセロハン粘着テープを完全に付着させ、テープの一方の端を持ち上げて上方に剥がした。この剥離動作を同一箇所で3回実施した。その後、剥がれた碁盤目の数を、密着性試験1と同様の基準にて6段階評価で判定した。
Figure 0006364297
Figure 0006364297
上記表2および表3中
・ビスフェノールA EO変性(2mol)ジアクリレート:東亜合成株式会社製、アロニックスM−211B、ビスフェノールA EO(2mol)変性ジアクリレート
・イルガキュアー184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、光重合開始剤
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)イルガノックス1726
このヒンダードフェノール系酸化防止剤(1)は以下の化学式(I)を有する:
Figure 0006364297
(II)

・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(2)イルガノックス1010を示す。
実施例のハードコーティング組成物を用いて形成されたハードコート層を有するハードコーティングフィルムは、何れも、干渉縞の発生がなく、良好な硬度を有していた。さらに得られたハードコーティングフィルムは、伸長性および耐屈曲性も高く、初期密着性の他、ハードコートフィルムとしての密着性、湿熱密着性試験においても750時間を超えても密着性に問題の無いものであった。実施例14〜20は、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤を含むものであるが、上記の化学式(II)を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の量が適量の場合(実施例15〜17)、湿熱密着性が1500時間を超えてもよい状態が続いていることがわかる。
比較例1は本発明の先願である特許文献4の実施例を示すものであるが、湿熱密着性試験で500時間後では良い性能であるものの、750時間を超える湿熱密着性試験では悪い結果が出ている。比較例2は、製造例4のアクリレート基の当量が2200g/molであるアクリル樹脂(4)を用いたものであり、湿熱密着性試験で750時間を超える時に密着性が劣った。比較例3では、製造例5のアクリレート樹脂のアクリレート基当量が400g/molであるアクリル樹脂(5)を用いたもので、湿潤密着性試験で750実感を超える時に密着性が劣る。比較例4は、成分(B)のフェノールノボラック型アクリレートの量が10重量部と少ない場合であり、やはり湿潤密着性試験で750時間を超えると、密着性が劣る。比較例5は、成分(A)のアクリル樹脂と成分(C)のビスフェノール骨格含有ジアクリレートの量が本発明の範囲より少ない場合の例であり、やはり湿熱密着性試験で750時間を超えると、密着性が劣る。比較例6および7は、成分(A)のアクリル樹脂が本発明の範囲より少ない場合(比較例6)および多い場合(比較例7)を示す例であり、共に湿熱密着性試験で750時間を超えると密着性が悪くなる。比較例8は成分(D)の多官能アクリレートを含まない態様であり、密着性が初期から悪い。比較例9と10は、共に成分(A)が共に本発明の範囲より少なく、かつ成分(B)の量が多い場合(比較例9)と成分(C)の量が多い場合(比較例10)の態様であり、共に湿熱密着性試験で750時間を超えると密着性が悪くなる。
また、これらの実施例および比較例の結果からも、本発明によって得られるハードコート層において、優れた干渉縞抑制効果、高い密着性効果(特に湿熱密着性試験で750時間を超える密着性)が達成されていることがわかる。
本発明は、高い視認性および良好な硬度を有すると共に、伸長性をも有し、且つポリカーボネート基材との優れた密着力を発揮するハードコート層を提供する。本発明のハードコーティング組成物によって形成される透明ハードコート層は、平滑性が非常に高いことを特徴とする。そのため、ポリカーボネートフィルムなどの屈折率が高い基材フィルム上に、本発明における透明ハードコート層を設けた場合であっても、干渉縞が発生せず、かつ、高い伸長性が達成されているという利点があり、高い密着性を発現することから、湿熱密着性試験でも750時間を超えて耐えることができ、使用用途が大きく広がる。
1… ポリカーボネート基材
3… ハードコート層
5… 色差調整層
7… 導電層
10… 導電性積層体
11… 反射率R2を示す部分
13… 反射率R1を示す部分

Claims (11)

  1. ポリカーボネート基材の少なくとも一方の面上に、ハードコート層、導電層が積層された導電性積層体であり、
    前記ハードコート層が、
    (A)側鎖にアクリレート基を有し、そのアクリレート基当量が500〜2000g/molを有するアクリル樹脂、
    (B)2またはそれ以上のアクリレート基を有する、フェノールノボラック型アクリレート、
    (C)炭素数2または3のアルキレンオキシド単位をモノマー一分子中に2〜4モル当量有する、ビスフェノール骨格含有ジアクリレート、および
    (D)3またはそれ以上のアクリレート基を有する多官能アクリレートを含有するハードコーティング組成物から形成され、
    前記ハードコーティング組成物中に含まれる全樹脂成分100質量部に対して、成分(A)は10〜30質量部、成分(B)は15〜25質量部、成分(C)は20〜40質量部、成分(D)は5〜55質量部含まれることを特徴とする導電性積層体。
  2. 前記アクリル樹脂(A)がアクリレート当量700〜1500g/molを有する請求項1記載の導電性積層体。
  3. 前記アクリル樹脂(A)が下記式(a)と下記式(b)で表される共重合体である、請求項1または2記載の導電性積層体:
    Figure 0006364297

    (I)
    [式中、RとRは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基または炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、Rは水素原子またはメチル基である。mとnは二重結合当量で変動する値である。]
  4. 前記ハードコーティング組成物が酸化防止剤を全樹脂成分100質量部に対して1.1〜1.9質量部含み、前記酸化防止剤が下記一般式(II)を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤である、請求項1〜3いずれかに記載の導電性積層体。
    Figure 0006364297
    (II)
  5. 前記ハードコート層が屈折率1.535〜1.545を有する、請求項1〜4いずれかに記載の導電性積層体。
  6. 前記ハードコート層がZnO、TiO、CeO、SnO、ZrOまたはインジウム−スズ酸化物を実質上含まず、それらの総含有量がハードコート層の固形分重量の0.0001質量%以下である、請求項1〜5いずれかに記載の導電性積層体。
  7. 前記導電層の厚さが5〜100nmである、請求項1〜6いずれかに記載の導電性積層体。
  8. 前記ハードコート層および導電層以外に、色差調整層がハードコート層側に存在し、
    色差調整層が、硬化性樹脂(i)および平均一次粒子径100nm以下の金属酸化物粒子(ii)または平均一次粒子径100nm以下の金属フッ化物粒子(iii)のいずれか一方または両方を含有する組成物から形成され、
    粒子(ii)および(iii)の総質量は、硬化樹脂(i)100質量部に対して0〜200質量部であり、
    導電性積層体に対して波長500〜750nmの範囲の光を照射した場合における反射率(R1)、および、導電性積層体を12N塩酸、16N硝酸および水を12N塩酸:16N硝酸:水=3.3:1.0:7.6の質量比で混合して得られた強酸水溶液中に40℃で3分間浸漬した後、乾燥させた後の導電性積層体に対して波長500〜750nmの範囲の光を照射した場合における反射率(R2)とした場合に、R1およびR2の差ΔRが1以下であることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の導電性積層体。
  9. 前記導電層の上部に、補助電極層が存在し、導電層と補助電極層の総膜厚が20〜500nmである請求項1〜8いずれかに記載の導電性積層体。
  10. ポリカーボネート基材のハードコート層がない方の面上に、アンチブロッキング層が形成され、
    前記アンチブロッキング層が、不飽和二重結合含有アクリル共重合体である第1成分および多官能性アクリレートである第2成分を含み、
    第1成分のSP値(SP1)および第2成分のSP値(SP2)の差ΔSPが1〜2の範囲であるアンチブロッキング層形成組成物から形成され、
    前記アンチブロッキング層形成組成物を塗装した後に、第1成分と第2成分が層分離を生じ、表面に微細な凹凸が形成されることを特徴とする請求項1〜9いずれかに記載の導電性積層体。
  11. 少なくとも片面に導電層が設けられた電極基盤を用いたタッチパネルにおいて、少なくとも1枚の電極基板として請求項1〜10いずれかに記載の導電性積層体を用いることを特徴とするタッチパネル。
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