〔実施形態1〕
以下、本実施形態における加熱調理器1Aついて、図1〜図4を参照しながら説明する。
(加熱調理器1Aの構成)
加熱調理器1Aの構成について、図1〜図3を参照しながら説明する。図1は、加熱調理器1Aの構成を示すブロック図である。図2は、加熱調理器1Aの構成を示す正面図である。図3は、加熱調理器1Aの構成を示すものであり、図2に示した加熱調理器1AにおけるA−A線矢視断面図である。
なお、図2では、加熱調理器1Aの構造をわかりやすく示すため、前扉13を除去した状態を示している。また、図2には、水蒸気供給部20の一部を破線で示している。
加熱調理器1Aは、図2および図3に示すように、加熱調理器1Aの筐体を構成する外壁11と、外壁11の内側に設けられる内壁12と、加熱調理器1Aの開閉を行うための前扉13とを有し、内壁12と前扉13とによって形成される空間が調理室14となっている。
調理室14の内部には、調理する食品、例えば食パン15を載置するための焼き網16が設けられている。焼き網16の上には、図2に示すように、例えば2枚の食パン15を左右に並べて配置できるようになっている。
内壁12の天面12aの下(調理室14内の上部)には、2本の上部ヒーター(加熱部、上部加熱部)17が設けられている。これら上部ヒーター17は、平行に配置され、加熱調理器1Aの長手方向である横方向、すなわち食パン15を並べる方向へ延びている。上部ヒーター17は、調理室14内に配置された食品を加熱するためのヒーターであり、本実施形態では熱強化結晶化ガラスを用いたセラミック系ヒーターにて構成されている。
また、内壁12の底面12b(調理室14内の下部)には、2本の下部ヒーター(加熱部、下部加熱部)18が設けられている。これら下部ヒーター18は、平行に配置され、加熱調理器1Aの長手方向である横方向、すなわち食パン15を並べる方向へ延びている。下部ヒーター18は、調理室14内に配置された食品を加熱するためのヒーターであり、本実施形態ではセラミック系ヒーターにて構成されている。なお、加熱調理器1Aでは、上部ヒーター17および下部ヒーター18がセラミック系ヒーターにて構成されているが、本発明の加熱調理器はこれに限定されない。本発明の加熱調理器は、例えば、上部ヒーターおよび下部ヒーターがシーズヒーターなどの他の加熱手段にて構成されてもよい。
また、加熱調理器1Aは、調理室14内に水蒸気(過熱水蒸気)を供給するための水蒸気供給部20を備えている。水蒸気供給部20は、水タンク21と、チューブ22と、ポンプ23と、水蒸気発生エンジン24と、水タンク挿入部25とを備えている。
水タンク21は、水蒸気発生エンジン24が発生させる過熱水蒸気の原料となる水を格納するための円柱形状のタンクである。水タンク挿入部25は、外壁11の天面11aの長手方向の一方の側(図2における右側)に設けられた、円柱形の凹部である。水タンク21は、水タンク挿入部25に脱着可能に設けられている。水タンク挿入部25の底部には、円筒形の凸状の嵌合凸部25aが設けられ、水タンク21の下部には、嵌合凸部25aが嵌合する嵌合凹部21aが設けられている。嵌合凸部25aには、水蒸気発生エンジン24に水を供給するためのチューブ22が接続されている。したがって、水タンク21を水タンク挿入部25に挿入した時に、嵌合凸部25aに嵌合凹部21aが嵌合するようになっている。
ポンプ23および水蒸気発生エンジン24は、外壁11と内壁12の背面12cとの間にある空間に設けられている。
ポンプ23は、チューブ22を介して水タンク21に格納されている水を水蒸気発生エンジン24に供給するためのものである。
水蒸気発生エンジン24は、水タンク21より供給された水を加熱し、過熱水蒸気を発生させるためのものであり、ヒーター(不図示)を備えている。水蒸気発生エンジン24は、供給された水をヒーターにより加熱し、約120〜130℃の過熱水蒸気を発生させる。水蒸気発生エンジン24は、発生させた過熱水蒸気を、内壁12の背面12cに設けられた水蒸気噴出孔26から調理室14に供給する。
加熱調理器1Aの内壁12の天面12aには、温度センサ(温度測定部)27が設けられている。温度センサ27は、例えばサーミスタからなり、調理室14内の温度を測定するためのセンサである。具体的には、温度センサ27は、調理室14内の温度を測定し、測定した調理室14内の温度情報を後述する加熱制御部31Aに出力する。加熱制御部31Aは、温度センサ27から入力された温度情報に基づいて調理室14内の温度(調理室14の中央部の温度)を算出する。
外壁11の前面における水タンク21が設けられている側(図2における右側)には、指示受付部28が設けられている。指示受付部28は、加熱調理器1Aに対するユーザの指示を受け付ける。指示受付部28は、円形状の押ボタン28aと、該押ボタン28aの周囲に設けられたダイアル28bとによって構成されている。ダイアル28bは、回転することにより調理時間や調理モードなどのユーザの設定・選択を受け付けるための部材であり、押ボタン28aは、押下されることによりダイアル28bによりユーザが選択した調理モードなどの決定を受け付けるための部材である。指示受付部28は、受け付けたユーザの指示を後述する加熱制御部31Aへ出力する。
また、加熱調理器1Aは、図1に示すように、制御部30Aを備えている。制御部30Aは、加熱調理器1Aの各部の動作を制御するブロックであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータやマイクロプロセッサなどによって実現される。制御部30Aは、加熱制御部31Aを備えている。
加熱制御部31Aは、水蒸気供給部20の駆動を制御する。具体的には、加熱制御部31Aは、指示受付部28からユーザの調理開始の指示を受信すると、例えばユーザが設定した調理時間に応じた所定時間だけ、過熱水蒸気を調理室14に供給するように水蒸気供給部20に対して指示を出す。なお、上記所定時間は、調理内容(調理モード)ごとに予め設定されていてもよい。
また、加熱制御部31Aは、上部ヒーター17および下部ヒーター18の駆動を制御する。具体的には、加熱制御部31Aは、温度センサ27が測定した調理室14内の温度に基づいて、調理室14内の温度を、例えば指示受付部28から受信したユーザの指示する温度(目標温度)になるように上部ヒーター17および下部ヒーター18の駆動を制御する。なお、上記目標温度は、例えば、調理内容(調理モード)ごとに予め設定されていてもよい。
加熱調理器1Aの調理では、後述するように、調理開始から調理終了までの時間を2つの期間(前段期間および後段期間)に分けた場合、加熱制御部31Aは、前段期間においては、上部ヒーター17または下部ヒーター18のいずれかのヒーターを駆動させ、後段期間においては、加熱制御部31Aは、上部ヒーター17および下部ヒーター18を共に駆動させるように、上部ヒーター17および下部ヒーター18の駆動を制御する。
(加熱制御部31Aによる具体的な制御)
次に、加熱調理器1Aにおける加熱制御部31Aによる具体的な制御について説明する。ここでは、加熱調理器1Aの調理開始から調理終了までの時間を2つの期間(前段期間および後段期間)に分けて説明する。前段期間では、加熱制御部31Aにより調理室14内の温度が前段期間における目標温度(前段目標温度T1)となるように制御し、後段期間では、加熱制御部31Aにより調理室14内の温度が後段期間における目標温度(後段目標温度T2)となるように制御する。なお、後段目標温度T2は前段目標温度T1よりも高く設定され、また、前段目標温度T1および後段目標温度T2は水蒸気供給部20が供給する過熱水蒸気の温度よりも高く設定される。前段目標温度T1および後段目標温度T2は、ユーザが設定する調理モードや調理温度によって設定される。
<前段期間>
前段期間は、調理開始から所定の時間までの期間である。前段期間では、加熱制御部31Aは、調理室14内に過熱水蒸気が供給されるように水蒸気供給部20を制御するとともに、調理室14内の温度が前段目標温度T1となるように上部ヒーター17および下部ヒーター18を制御する。なお、過熱水蒸気を供給する期間は、前段期間に含まれる一部の期間(時間)であってもよい。
前段期間では、調理室14に過熱水蒸気を供給することにより、食品の表面および内部に効率よく熱を伝えることができる。また、調理室14に供給された過熱水蒸気は、食品表面で凝縮し、一部食品に水分を供給する。これにより、食品が過剰に乾燥することを抑制することができる。さらに、食品を連続して調理する場合、調理室14内に過熱水蒸気を供給することにより、2回目以降の調理において、上部ヒーター17および下部ヒーター18から供給される熱量のうち一部が過熱水蒸気の加熱に使用されるため、食品が部分的に過加熱になるのを抑制することができる。また、食品表面に凝縮した水分によって、食品が焦げることを抑制することができる。
<後段期間>
後段期間は、前段期間終了時点から調理終了までの期間である。後段期間では、加熱制御部31Aは、調理室14内の温度が後段目標温度T2となるように上部ヒーター17および下部ヒーター18を制御する。
後段期間では、調理室14内の温度を前段目標温度T1よりも高い後段目標温度T2にすることにより、食品を短時間で加熱調理することができる。
なお、前段期間における前段目標温度T1、および後段期間における後段目標温度T2は、それぞれの期間において変化させてもよい。ただし、その場合には、各後段目標温度は、各前段目標温度よりも高い温度に設定する。
(加熱調理器1Aの調理動作)
次に、加熱調理器1Aにおける調理動作の手順について、図4を参照しながら説明する。図4は、加熱調理器1Aにおける調理動作の手順を示すフローチャートである。
なお、加熱調理器1Aにおける調理の前段期間は、図4におけるステップS2〜S7であり、後段期間は、図4におけるステップS8〜S12である。以下の説明では、調理開始から前段期間終了までの時間を時間t1、調理開始から後段期間終了までの時間(すなわち、調理開始から調理終了までの時間)を時間t2として説明する。
加熱調理器1Aにおける調理では、図4に示すように、指示受付部28がユーザからの調理開始の指示を受け付けると(S1)、指示受付部28は当該指示の情報(例えば、調理時間や調理モード)を加熱制御部31Aへ送信する。加熱制御部31Aは、受信した情報から時間t1、時間t2、前段目標温度T1、および後段目標温度T2を設定する。なお、調理開始の指示を受け付ける前には、ユーザによって水タンク21に水が補給され、水が格納された水タンク21が水タンク挿入部25に挿入される。
なお、加熱調理器1Aでは、ダイアル28bによるユーザからの調理時間の設定を受け付けてから所定の時間(例えば、1秒間)、ダイアル28bの回転がない(すなわち、ユーザが調理時間の設定を変更しない)場合に加熱調理を開始するように構成されている。すなわち、ダイアル28bが回転した時点から加熱調理が行われる構成ではない。これにより、加熱調理を行う時間をユーザが指示した設定時間に正確に合わせることができるようになっている。
次に、指示受付部28からの調理開始指示を受信した加熱制御部31Aは、水蒸気供給部20を駆動させる。これにより、ポンプ23が駆動し、水タンク21に格納されている水が水蒸気発生エンジン24に供給される。そして、水蒸気発生エンジン24のヒーターにより水が加熱され、調理室14内への過熱水蒸気の供給が開始される。(S2)。
次に、加熱制御部31Aは、温度センサ27が測定した調理室14内の温度情報を温度センサ27から受信し、調理室14内の温度が前段目標温度T1以下であるかどうかを判定する(S3)。
調理室14内の温度が前段目標温度T1以下である場合(S3でYES)、加熱制御部31Aは、上部ヒーター17または下部ヒーター18のいずれかを駆動させる。より詳細には、加熱制御部31Aは、上部ヒーター17および下部ヒーター18を交互に一定時間(例えば、10秒間)駆動させる。
一方、調理室14内の温度が前段目標温度T1よりも高い場合(S3でNO)、加熱制御部31Aは、上部ヒーター17および下部ヒーター18の駆動を共に停止させる。
次に、加熱制御部31Aは、調理開始から時間t1が経過したかどうかを判定する(S6)。
調理開始から時間t1が経過していない場合(S6でNO)、加熱制御部31AはステップS3〜S5を繰り返す。
一方、調理開始から時間t1が経過した場合(S6でYES)、加熱制御部31Aは、水蒸気供給部20を停止させる。これにより、調理室14内への過熱水蒸気の供給が停止する(S7)。以上で、前段期間が終了する。
次に、加熱制御部31Aは、温度センサ27が測定した調理室14内の温度情報を温度センサ27から受信し、調理室14内の温度が後段目標温度T2以下であるかどうかを判定する(S8)。
調理室14内の温度が後段目標温度T2以下である場合(S8でYES)、加熱制御部31Aは、上部ヒーター17および下部ヒーター18を共に駆動させる。
一方、調理室14内の温度が後段目標温度T2よりも高い場合(S8でNO)、加熱制御部31Aは、上部ヒーター17および下部ヒーター18の駆動を共に停止させる。
次に、加熱制御部31Aは、調理開始から時間t2が経過したかどうかを判定する(S11)。
調理開始から時間t2が経過していない場合(S11でNO)、加熱制御部31AはステップS8〜S10を繰り返す。
一方、調理開始から時間t2が経過すると(S11でYES)、1回目の調理が終了する。
次に、指示受付部28が次の調理を受け付けなかった場合(S13でNO)、すべての調理が終了する。
一方、指示受付部28が次の調理を受け付けた場合(S13でYES)、ステップS2〜S12を繰り返す。なお、次の調理を行う際には、ユーザによって水タンク21に水が補給される。
(加熱調理器1Aの利点)
加熱調理器1Aでは、前段期間において、調理室14に過熱水蒸気を供給することにより、食品の表面および内部に効率よく熱を伝えることができる。また、調理室14に供給された過熱水蒸気は、食品表面で凝縮し、一部食品に水分を供給する。これにより、食品が過剰に乾燥することを抑制することができる。また、食品を連続して調理する場合、調理室14内に過熱水蒸気を供給することにより、2回目以降の調理において、上部ヒーター17および下部ヒーター18から供給される熱量のうち一部が過熱水蒸気の加熱に使用されるので、連続して食品を加熱調理する場合に、調理開始時に調理室14内の温度が高くなっていても、食品の温度上昇を抑え、食品を過加熱する事態を防ぐことができる。また、後段期間において上部ヒーター17および下部ヒーター18により食品を高温で加熱調理する。その結果、2回目以降の調理時間を1回目と同じ調理時間に設定した場合に、食品の2回目以降の調理による仕上がりを、1回目の調理と同様の仕上がりにすることができる。したがって、連続して食品を加熱調理する場合に、同じ調理時間で食品の仕上がりをほぼ一定にすることができる。
また、加熱調理器1Aでは、加熱制御部31Aは、前段期間のうちの、調理室14内の温度が所定の前段目標温度T1よりも高い期間、上部ヒーター17および下部ヒーター18の駆動を停止させる。これにより、前段期間において、調理室14内の温度を早く前段目標温度T1にすることができる。
また、加熱調理器1Aでは、前段期間において上部ヒーター17と下部ヒーター18とを交互に駆動させる。これにより、前段期間において調理室14内の温度を均一にし、かつ食品を上方および下方から均一に加熱することができる。
また、加熱調理器1Aでは、後段期間において上部ヒーター17と下部ヒーター18とを同時に駆動させる。これにより、後段期間において早く後段目標温度T2にし、食品を効率よく加熱調理することができる。
また、加熱調理器1Aでは、加熱制御部31Aは、調理室14内の温度が、前段期間には前段目標温度T1となり、後段期間には前段目標温度T1よりも高い後段目標温度T2となるように、上部ヒーター17および下部ヒーター18の駆動を制御する。
上記の構成によれば、調理室14内の温度は、前段期間には、調理終了時点付近の後段目標温度T2よりも低い前段目標温度T1となり、後段期間には、前段目標温度T1よりも高い後段目標温度T2となる。すなわち、調理室14内の温度を、前段期間には調理終了時点付近の後段目標温度T2よりも低い前段目標温度T1に低下させ、後段期間には調理終了時点付近の後段目標温度T2に上昇させることができる。これにより、複数の食品を連続して調理した場合に、各調理において、同じ調理時間で食品の仕上がりをほぼ一定にする調理を効率よく行うことができる。
また、加熱調理器1Aでは、水蒸気供給部20は、前段目標温度T1よりも低い過熱水蒸気を供給する。これにより、水蒸気供給部20は、前段目標温度T1よりも低い過熱水蒸気を供給するので、調理室14内の温度を前段目標温度T1よりも低下させ、かつ食品を加熱することが可能となる。
また、加熱調理器1Aでは、調理開始から調理終了までの時間が固定された時間とすることができる。これにより、加熱調理時間が一定であるため、調理している間にユーザが食品の調理状況を確認する必要がないため、ユーザにとって便利性の高い加熱調理器とすることができる。
なお、加熱調理器1Aでは、後段期間において、調理室14内に過熱水蒸気を供給しない構成となっていたが、本発明の加熱調理器はこれに限られない。例えば、後段期間において比較的長い時間(例えば、5分以上)加熱調理する場合には、断続的に(例えば、20秒毎に2秒間)調理室14内に過熱水蒸気を供給する構成であってもよい。これにより、食品が含有する水分の蒸発による食品の乾燥を抑制することができるとともに、供給された過熱水蒸気によって調理室14内の酸素濃度を通常よりも低くすることができるため、比較的低酸素状態で加熱調理を行うことができ、食品が焦げることを防ぐことができる。
なお、加熱調理器1Aでは、水蒸気供給部20により調理室14内に過熱水蒸気を供給する構成であったが、本発明の加熱調理器はこれに限られない。すなわち、本発明の加熱調理器は、水蒸気供給部により調理室14内に過熱水蒸気ではない水蒸気(例えば略100℃)を供給する構成であってもよい。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図5および図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
加熱調理後の食品の状態によっては、ユーザが過熱水蒸気を用いない加熱調理(すなわち、後段期間の調理)を延長したい場合がある。しかしながら、実施形態1における加熱調理器1Aでは、加熱調理が終了した後、次の加熱調理を行う際には、過熱水蒸気を用いた加熱調理が行われるので、過熱水蒸気を用いない加熱調理のみを追加することができない。
そこで、本実施形態の加熱調理器1Bでは、加熱調理後に、ユーザの次の加熱調理の指示を受け付けた際に、一定の条件を満たす場合には、過熱水蒸気を用いない加熱調理を行う構成となっている。
(加熱調理器1Bの構成および利点)
加熱調理器1Bの構成について、図5および図6を参照しながら説明する。図5は、加熱調理器1Bの構成を示すブロック図である。図6は、加熱調理器1Bの構成を示す正面図である。
加熱調理器1Bは、図6に示すように、加熱調理器1Aの構成に加えて、水タンク挿入検知部50を備えている。また、加熱調理器1Bは、図5に示すように、加熱調理器1Aにおける制御部30Aの代わりに、制御部30Bを備えている。
水タンク挿入検知部50は、ユーザによる水タンク21の水タンク挿入部25への挿入を検知するための例えばスイッチである。
制御部30Bは、制御部30Aにおける加熱制御部31Aの代わりに、加熱制御部31Bを備えている。
加熱制御部31Bは、実施形態1における加熱制御部31Aの機能に加えて、以下の機能を備えている。すなわち、加熱制御部31Bは、水タンク挿入検知部50により水タンク21が水タンク挿入部25に挿入されているかどうかを検知することができるようになっている。また、加熱制御部31Bは、加熱調理が終了した後、次の加熱調理のユーザの指示を指示受付部28にて受け付けると、以下の条件(1)〜(3)を満たしている場合には、水蒸気供給部20を駆動させず、上部ヒーター17および下部ヒーター18のみを駆動させる。
条件(1)調理終了後から次の調理開始の指示を受け付けるまでの時間が所定時間(例えば、3分間以内)である。
条件(2)調理室14内の温度が所定の温度よりも高い。
条件(3)調理終了後から次の調理開始の指示を受け付けるまでの間に、水タンク21の抜き差しを検出しない。
上記の条件(1)〜(3)を満たす状態におけるユーザの調理の指示は、前回に加熱調理した食品をさらに加熱調理(過熱水蒸気を用いない調理)するための指示である。したがって、上記の条件(1)〜(3)を満たす状態においては、加熱制御部31Bは、水蒸気供給部20を駆動させず、上部ヒーター17および下部ヒーター18のみを駆動させる。これにより、加熱調理器1Bでは、ユーザが過熱水蒸気を用いない加熱調理を延長したい場合に、通常の加熱調理(すなわち、実施形態1において説明した過熱水蒸気を用いた調理)ではなく、過熱水蒸気を用いない調理を自動的に行うことができる。
なお、加熱調理器1Bでは、条件(2)について、上記の所定の温度を約124℃に設定している。これは、(i)初回の加熱調理において加熱調理開始後30秒以上が経過した後、または、連続して加熱調理する2回目以降の加熱調理の途中に、次の加熱調理のユーザの指示を受け取った場合、3分間前扉13を開いた状態にしたとしても、調理室14内の温度が高く、ある程度食品の調理状態も進行しているため過熱水蒸気を用いない調理を行うようにするため、および、(ii)初回の加熱調理において加熱調理開始後30秒未満のうちに次の加熱調理のユーザの指示を受け取った場合、調理室14内の温度が低く、食品の調理状態もあまり進行していないため過熱水蒸気を用いない調理に入らないようにするためである。
また、加熱調理器1Bでは、加熱制御部31Bは、水タンク挿入検知部50により水タンク21が水タンク挿入部25に挿入されていることを検知しているときには、水抜きモード(チューブ22に存在する水をポンプ23により水蒸気発生エンジン24へ移動させ、水蒸気発生エンジン24により上記水を加熱するモード)を選択することができず、一方、水タンク挿入検知部50により水タンク21が水タンク挿入部25に挿入されていないことを検知しているときには、水抜きモードを選択できるようになっている。
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、図7および図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
従来、加熱調理器が誤って動作することを防ぐために、調理休止状態からの復帰を検知するためのドアスイッチを備えている加熱調理器が知られている。このような加熱調理器では、調理室内に食品を載置し扉を閉めると、ドアスイッチが加熱調理器の調理休止状態からの復帰を検知し、ユーザの調理の指示を受け付けることができるようになっている。
しかしながら、オーブントースターなどのドアスイッチを備えていない加熱調理器では、加熱調理器が誤って動作することを防ぐために、調理休止状態から調理開始までに複数の操作を設定する必要がある。そのため、ユーザが複数の操作を行うことに対する面倒さを感じてしまうという問題があった。
そこで、本実施形態の加熱調理器1Cでは、水タンクを水タンク挿入部に挿入する操作を検知することによりユーザの操作を受け付けることができる構成となっている。
(加熱調理器1Cの構成)
加熱調理器1Cの構成について、図7および図8を参照しながら説明する。図7は、加熱調理器1Cの構成を示すブロック図である。図8は、加熱調理器1Cの構成を示す正面図である。
図7および図8に示すように、加熱調理器1Cは、加熱調理器1Bの構成に加えて、音声出力部51を備えている。また、加熱調理器1Cは、加熱調理器1Bの指示受付部28および制御部30Bの代わりに、指示受付部52および制御部30Cを備えている。
音声出力部51は、音声(音)を出力するためのものである。
指示受付部52は、加熱調理器1Cに対するユーザの指示を受け付ける。指示受付部52は、円形状の押ボタン52aと、該押ボタン52aの周囲に設けられたダイアル52bと、発光部55とによって構成されている。発光部55は、発光素子からなり、押ボタン52aおよびダイアル52bに設けられ、発光することにより押ボタン52aおよびダイアル52bを発光(点灯)させる。
制御部30Cは、実施形態2における制御部30Bの構成に加えて、音声制御部53Aと、受付制御部54とを備えている。
音声制御部53Aは、水タンク挿入検知部50が水タンク挿入部25への水タンク21の挿入を検知した場合に、上記状態をユーザへ知らせる音を出力するように音声出力部51を制御する。
受付制御部54は、水タンク挿入検知部50が水タンク挿入部25への水タンク21の挿入を検出した場合に、指示受付部52によるユーザの指示操作の受け付けを許可する。また、受付制御部54は、水タンク挿入検知部50が水タンク挿入部25への水タンク21の挿入を検出した場合に、発光部55を発光させ、押ボタン52aおよびダイアル52bを点灯させる。
(加熱調理器1Cの利点)
加熱調理器1Cでは、水タンク21が水タンク挿入部25へ挿入されると、指示受付部52によるユーザの指示の受け付けが許可される。すなわち、水タンク21を水タンク挿入部25へ挿入するという加熱調理器1Cを使用する場合に行われる動作を利用して、指示受付部52によるユーザの指示の受け付け許可するようにしている。この構成によれば、水蒸気供給部20を用いて調理を行う加熱調理器1Cにおいて、通常ユーザが行う操作である水タンク21を水タンク挿入部25へ挿入するという操作を、加熱調理器1Cが誤って動作することを防ぐための操作の1つとすることができる。したがって、ユーザが面倒さを感じることなく、加熱調理器1Cが誤って動作することを防ぐことができるようになっている。
また、水タンク21が水タンク挿入部25へ挿入されると、音声出力部51がその状態を示す音を出力し、押ボタン52aおよびダイアル52bが点灯する。これにより、加熱調理器1Cがユーザの指示を受け付けることができる状態になったことを、ユーザに音と表示(光)により認識させることができる。
なお、加熱調理器1Cでは、指示受付部52の押ボタン52aおよびダイアル52bが点灯する構成であったが、これに限定されるものではない。例えば、外壁11の、指示受付部52が設けられている箇所以外の領域に、発光素子を設け、該発光素子を発光させる構成であってもよい。
また、加熱調理器1Cは、コンセントから供給される電力を受け取るためのプラグ(不図示)を備えており、上記プラグをコンセントに挿入した際に、音声出力部51から報知音が出力されるようになっている。これにより、加熱調理器1Cの電源が入ったことを音によりユーザに認識させることができる。
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、図9および図10に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
本実施形態の加熱調理器1Dでは、加熱調理器1Dに何らかのエラー(故障)が発生した場合に、エラーが発生したこと、および当該エラーの種類をユーザに報知することができるようになっている。
(加熱調理器1Dの構成および利点)
加熱調理器1Dの構成について、図9および図10を参照しながら説明する。図9は、加熱調理器1Dの構成を示すブロック図である。図10は、加熱調理器1Dの構成を示す正面図である。
図9および図10に示すように、加熱調理器1Dは、加熱調理器1Cの構成に加えて、エラー種類表示部56を備えている。また、加熱調理器1Dは、加熱調理器1Cの制御部30Cの代わりに、制御部30Dを備えている。
エラー種類表示部56は、加熱調理器1Dに何らかのエラー(故障)が発生した場合に、当該エラーの種類を報知するためのものである。エラー種類表示部56は、発光素子としての発光ダイオード(LED、Light Emitting Diode、不図示)を備えており、発光ダイオードの発光(点灯)は、後述するエラー通知制御部57により制御されている。本実施形態では、エラー種類表示部56は、3つの表示部を備えており、3つの表示部の点灯の組み合わせにより、エラーの種類をユーザに報知することができるようになっている。ただし、エラー種類表示部が備える表示部の数は3つに限られるものではなく、表示したいエラーの種類の数に応じて適宜決めることができる。
制御部30Dは、実施形態3における制御部30Cの構成に加えて、エラー通知制御部57を備えている。
エラー通知制御部57は、加熱調理器1Dの各構成要素(例えば、上部ヒーター17、下部ヒーター18、水蒸気供給部20)にエラーが発生したことを検知した場合、ユーザに対してエラーの発生、およびエラーの種類をユーザに報知する。具体的には、エラー通知制御部57は、加熱調理器1Dにエラーが発生した場合に、指示受付部52のダイアル52bを点滅させるように発光部55を制御するとともに、エラーの種類に応じてエラー種類表示部56のLEDを点灯させる。
以上のように、加熱調理器1Dでは、加熱調理器1Dに何らかのエラー(故障)が発生した場合に、エラー通知制御部57は、ダイアル52bを全点滅させる(ダイアル52bは、通常時には、ユーザの設定した調理時間に応じて部分的に点灯するようになっている)とともに、エラーの種類に応じてエラー種類表示部56のLEDを点灯させる構成となっている。これにより、エラーの発生をユーザに認識させるとともに、当該エラーの種類をユーザに報知することができる。
また、加熱調理器1Dでは、発光部55およびエラー種類表示部56は、発光素子にて構成されている。そのため、数字や文字を表示するための表示部(例えば、液晶画面)のような複雑な構成ではなく、簡易な構成にてユーザにエラーの発生および種類を報知することができる。
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、図11に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
本実施形態の加熱調理器1Eでは、ダイアル52bにて調理モードや調理時間などのユーザの選択を受け付けるときに、ダイアル52bの回転位置に応じた音程の音を音声出力部51から出力するようになっている。
(加熱調理器1Eの構成および利点)
加熱調理器1Eの構成について、図11を参照しながら説明する。図11は、加熱調理器1Eの構成を示すブロック図である。
図11に示すように、加熱調理器1Eは、実施形態4における加熱調理器1Dの制御部30Dの代わりに、制御部30Eを備えている。制御部30Eは、制御部30Dの音声制御部53Aの代わりに、音声制御部53Bを備えている。
音声制御部53Bは、音声制御部53Aの機能に加えて、指示受付部52のダイアル52bにて受け付けた調理モードや調理時間などのユーザの選択情報を受信し、音声出力部51に対して該選択情報に応じた音程の音を出力させる機能を有している。
例として、ユーザが調理時間の選択をするために指示受付部52のダイアル52bを回転させる場合について説明する。ダイアル52bを回転させて調理時間を増加させる場合、音声制御部53Bは、ダイアル52bの回転に伴い、高い音程の音を出力する指示を音声出力部51に出す。逆に、ダイアル52bを回転させて調理時間を減少させる場合、音声制御部53Bは、ダイアル52bの回転に伴い、低い音程の音を出力する指示を音声出力部51に出す。これにより、ダイアル52bの回転位置すなわちダイアル52bの設定位置をユーザに視覚だけでなく聴覚によっても認識させることができる。また、目の不自由な人に、調理時間をどのように選択しているかを認識させることができる。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る加熱調理器1A〜1Eは、調理室14内に配置された食品を加熱する加熱部(上部ヒーター17、下部ヒーター18)と、調理開始から調理終了までの時間を前段期間と後段期間とに分けた場合に、前記前段期間に含まれる時間に、前記調理室14内に水蒸気を供給する水蒸気供給部20と、前記調理室14内の温度を測定する温度測定部(温度センサ27)と、前記温度測定部が測定した温度に基づき、前記調理室14内の温度が所定の温度になるように前記加熱部の駆動を制御する加熱制御部31A・31Bと、を備え、前記加熱制御部31A・31Bは、前記前段期間のうちの、前記調理室14内の温度が所定の前段目標温度T1よりも高い期間、前記加熱部の駆動を停止させる。
上記の構成によれば、前段期間において、調理室に水蒸気を供給することにより、食品の表面および内部に効率よく熱を伝えることができる。また、調理室に供給された水蒸気は、食品表面で凝縮し、一部食品に水分を供給する。これにより、連続して食品を加熱調理する場合に、調理開始時に調理室14内の温度が高くなっていても、食品の温度上昇を抑え、食品を過加熱する事態を防ぐことができる。また、前段期間において、前記調理室14内の温度が所定の前段目標温度T1よりも高い期間、前記加熱部の駆動を停止させるので調理室内の温度を早く低下させることができる。さらに、後段期間において上部ヒーター17および下部ヒーター18により食品を高温で加熱調理する。その結果、2回目以降の調理時間を1回目と同じ調理時間に設定した場合に、食品の2回目以降の調理による仕上がりを、1回目の調理と同様の仕上がりにすることができる。したがって、連続して食品を加熱調理する場合に、同じ調理時間で食品の仕上がりをほぼ一定にすることができる。
本発明の態様2に係る加熱調理器1A〜1Eは、上記態様1において、前記加熱部は、前記調理室14内の上部に設けられた上部加熱部(上部ヒーター17)と、前記調理室14内の下部に設けられた下部加熱部(下部ヒーター18)とを含んでおり、前記加熱制御部31A・31Bは、前記前段期間において前記上部加熱部と前記下部加熱部とを交互に駆動させる構成であることが好ましい。
上記の構成によれば、前段期間において調理室内の温度を均一にすることができる。さらに、前段期間においては、水蒸気供給部が駆動していることにより電力消費が大きくなっているので、上部加熱部と下部加熱部とを交互に駆動させることにより、水蒸気供給部、上部加熱部、および下部加熱部が同時に駆動して消費電力が大きくなることを防ぐことができる。
本発明の態様3に係る加熱調理器1A〜1Eは、上記態様2において、前記加熱制御部31A・31Bは、前記後段期間において前記上部加熱部と前記下部加熱部とを同時に駆動させる構成であることが好ましい。
上記の構成によれば、後段期間において早く調理室内の温度を上昇させることができるので、食品を効率よく加熱調理することができる。
本発明の態様4に係る加熱調理器1A〜1Eは、上記態様1〜3のいずれかにおいて、前記加熱制御部31A・31Bは、前記調理室14内の温度が、前記前段期間には前段目標温度T1となり、前記後段期間には前記前段目標温度T1よりも高い後段目標温度T2となるように、前記加熱部の駆動を制御する構成であることが好ましい。
上記の構成によれば、調理室内の温度は、前段期間には、調理終了時点付近の後段目標温度よりも低い前段目標温度となり、後段期間には、前段目標温度よりも高い後段目標温度となる。すなわち、調理室内の温度を、前段期間には調理終了時点付近の後段目標温度よりも低い前段目標温度に低下させ、後段期間には調理終了時点付近の後段目標温度に上昇させることができる。これにより、複数の食品を連続して調理した場合に、各調理において、同じ調理時間で食品の仕上がりをほぼ一定にする調理を効率よく行うことができる。
本発明の態様5に係る加熱調理器1A〜1Eは、上記態様1〜4のいずれかにおいて、前記水蒸気供給部20は、前記前段目標温度T1よりも低い温度の水蒸気を供給する構成であることが好ましい。
上記の構成によれば、水蒸気供給部は、前段目標温度よりも低い水蒸気を供給するので、調理室内の温度を前段目標温度よりも低下させ、かつ食品を加熱することが可能となる。
本発明の態様6に係る加熱調理器1A〜1Eは、上記態様1〜5のいずれかにおいて、前記調理開始から調理終了までの時間が固定された時間である構成であってもよい。
上記の構成によれば、加熱調理時間が一定であるため、調理している間にユーザが食品の調理状況を確認する必要がないため、ユーザにとって便利性の高い加熱調理器とすることができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
本発明の一実施例について図12〜図14に基づいて説明すれば以下のとおりである。
本実施例では、本発明の加熱調理器を用いて、食パンを5回連続して加熱調理した。なお、1回の加熱調理につき、食パンを2枚調理した。本実施例では、上部ヒーターおよび下部ヒーターとして、出力が350Wのセラミック系ヒーターをそれぞれ2本備え、出力が700Wの水蒸気発生エンジンを備えた加熱調理器を使用した。
本実施例では、5回の加熱調理はすべて以下の条件で行った。すなわち、
前段目標温度T1:190℃
前段期間の長さ :130秒
後段目標温度T2:250℃
後段期間の長さ :80秒
とした。これにより、実施形態1において説明した、調理開始から前段期間終了までの時間である時間t1は130秒となり、調理開始から後段期間終了までの時間(すなわち、調理開始から調理終了までの時間)である時間t2は210秒となる。また、各回の調理の間の間隔を60秒とした。
本実施例における実験の様子について、図12および図13を参照しながら説明する。図12は、本実施例における実験の様子を示すものであり、(a)は、温度センサにより測定した温度測定を示すグラフであり、(b)は、加熱調理器への入力電力を示すグラフである。図13は、本実施例における実験の様子を示すものであり、(a)は、上部ヒーターの駆動のON・OFFを示すグラフであり、(b)は、下部ヒーターの駆動のON・OFFを示すグラフである。なお、図12の(a)で示す温度は、温度センサが設置されている加熱調理器の側面周辺の温度を示しており、図12の(a)で示す温度が約150℃である場合には調理室の中央部の温度は約190℃となっており、また図12の(a)で示す温度が約210℃である場合には調理室の中央部の温度は約250℃となっている。また、図12の(b)に示す加熱調理器への入力電力は、上部ヒーター、下部ヒーター、および水蒸気発生エンジンへ入力する電力を合わせたものである。
<1回目の加熱調理>
まず、1回目の加熱調理の前段段階(0秒〜130秒)について説明する。1回目の加熱調理の前段段階では、図12および図13に示すように、調理を開始した時点では調理室内の温度が低いため、加熱制御部の指示により、水蒸気発生エンジンが調理室へ過熱水蒸気を供給するとともに、上部ヒーターおよび下部ヒーターを交互に一定時間(10秒間)駆動した。これにより、食パンを加熱するとともに、食パンに水分を供給した。
次に、1回目の加熱調理の後段段階(130秒〜210秒)について説明する。1回目の加熱調理の後段段階では、加熱制御部の指示により、水蒸気発生エンジンの駆動を停止するとともに、上部ヒーターおよび下部ヒーターを共に駆動した。これにより、調理室内の温度を上昇させ、食パンを焼きあげた。
<2回目の加熱調理>
まず、2回目の加熱調理の前段段階(270秒〜400秒)について説明する。2回目の加熱調理の前段段階の初期段階(約320秒まで)では、調理室内の温度が前段目標温度(190℃)よりも高くなっているため、加熱制御部の指示により、上部ヒーターおよび下部ヒーターの駆動を停止するとともに、水蒸気発生エンジンを駆動し、調理室内に過熱水蒸気を供給した。調理室内に供給する過熱水蒸気の温度は約120〜130℃であるため、調理室内に過熱水蒸気を供給することにより調理室内の温度を下げることができる。また、調理室内に過熱水蒸気を供給することにより食パンに水分を供給した。
次に、調理室内の温度が前段目標温度(190℃)付近になった後の期間(約320秒〜400秒)では、調理室内の温度が前段目標温度(190℃)になるように制御した。具体的には、調理室内の温度が前段目標温度(190℃)以下になった場合には、加熱制御部の指示により、水蒸気発生エンジンを駆動しながら、上部ヒーターまたは下部ヒーターを駆動した。一方、調理室内の温度が前段目標温度(190℃)よりも高くなった場合には、加熱制御部の指示により、水蒸気発生エンジンを駆動し、上部ヒーターおよび下部ヒーターの駆動を停止した。
次に、2回目の加熱調理の後段段階(400秒〜480秒)について説明する。2回目の加熱調理の後段段階では、加熱制御部の指示により、水蒸気発生エンジンの駆動を停止するとともに、上部ヒーターおよび下部ヒーターを共に駆動した。これにより、調理室内の温度を上昇させ、食パンを焼きあげた。
3〜5回目の加熱調理は、2回目の加熱調理と同様の加熱調理を行った。・
図14は、本実施例において、各回の加熱調理で得られた食パンの重量変化率を示す表である。図14に示すように、1〜5回目の加熱調理で得られた食パンは、いずれも重量変化率が約95%となっていた。すなわち、連続して食パンを加熱調理した場合に、同じ調理時間で食パンの仕上がりをほぼ一定にすることができた。また、従来のオーブントースターで得られる食パンの重量変化率は約91%であるのに対し、本発明の加熱調理器で得られた食パンの重量変化率は約95%と高くなった。食パンの重量変化率は、食パンに含まれる水分量に依存する。すなわち、重量変化率が高いことは、食パンに含まれる水分量が高いことを示している。したがって、本発明の加熱調理器を用いることにより、表面が十分加熱されたカリッとした食感であるとともに、内部が水分の含有率の高いもちっとした食感の食パンを得ることができた。
また、比較的長い時間(例えば、5分以上)加熱調理する場合は、食品が乾燥しやすくなるため、断続的に水蒸気または過熱水蒸気を調理室内に供給するようにしてもよい(例えば、20秒毎に2秒間水蒸気または過熱水蒸気を供給する)。そうすることで、食品の乾燥を抑制すると共に、供給された水蒸気または過熱水蒸気によって調理室内の酸素濃度が通常よりも低くなり、比較的低酸素状態で加熱調理することができる。