この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は自動車のシート支持構造を示し、図1は自動車の下部車体構造を上方から見た要部を示す平面図、図2は図1中のA−A線矢視の要部に対して斜め上方から見た斜視断面図、図3は図1中のB−B線矢視の要部断面図、図4は車体右側の外側シート支持ブラケットおよびその周辺部分の外観図、図5は図4においてブラケット上部をブラケット下部に対して分離した状態を示す外観図、図6は後側クロスメンバおよび車幅方向外側のシート支持ブラケットを後方斜め上方から見た斜視図、図7は車体右側の内側シート支持ブラケットの分解斜視図を示す。
なお、図2、図5においてフロントシートおよびシートレールは図示省略している。また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Uは車両上方を示し、矢印Rは車両右側を示し、矢印Lは車両左側を示し、矢印INは車幅方向内側を示し、矢印OUTは車幅方向内側外側(車両右側)を示す。
まず、本実施例のシート支持構造を適用した自動車の下部車体構造について説明する。下部車体構造は略左右対称形状であるため、車両右側の構成を中心に説明する。さらに図2、図4〜図6中の「×」印は、シート支持ブラケットのブラケット上部とブラケット下部とのスポット溶接箇所、並びにシート支持ブラケットと後側クロスメンバおよびサイドシルインナの夫々とのスポット溶接箇所を示している。
図1に示すように、自動車の下部車体構造には、車室の床面を形成するフロアパネル1が設けられ、このフロアパネル1の車幅方向中央には、車室内へ突出して車両の前後方向へ延びるトンネル部2(いわゆるフロアトンネル)を一体または一体的に形成している。このトンネル部2は車体剛性の中心となるものである。
フロアパネル1は、車幅方向に延びるリヤクロスメンバ3(いわゆるNo.3クロスメンバ)を介して前後各側に連設されたフロントフロア部1aとリヤフロア部1bとを備えており、図1では、フロアパネル1の主に前側部位に形成されたフロントフロア部1aを示している。
フロアパネル1の車幅方向両サイドには、車両の前後方向に延びる車体剛性部材としてのサイドシル4,4を設けている。このサイドシル4は、図3に示すように、サイドシルインナ4aと、サイドシルレインフォースメント4bと、サイドシルアウタ4cとを接合固定して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面4dを備えた強度部材である。
図2、図3に示すように、フロアパネル1の車幅方向外端は、サイドシル4インナパネルの車幅方向内側に形成される縦壁4eに接合されている。
ところで、フロアパネル1の上部のトンネル部2と、サイドシル4との間には、図1に示すように、車幅方向に延びる前側クロスメンバ5(いわゆるNo.2クロスメンバ)を設けている。
また、フロアパネル1の上部のトンネル部2と、サイドシル4との間であって、この前側クロスメンバ5と離間する後方位置には、車幅方向に延びる後側クロスメンバ6(いわゆるNo.2.5クロスメンバ)を設けている(図1参照)。
これら前後各クロスメンバ5,6とフロアパネル1の上面との間には、閉断面5s,6sが形成されている。
図2、図3に示すように、フロアパネル1の下部であって、サイドシルインナ4aとトンネル部2の縦壁部2aとの車幅方向中間位置には、後方程車幅方向外側に延びる左右一対のフロアフレーム7,7が配設されるとともに、トンネル部2の車幅方向外側には、フロアフレーム7の車幅方向内側の位置でトンネル部2に沿って延びる左右一対のトンネルサイドフレーム8,8が配設されている。フロアフレーム7およびトンネルサイドフレーム8の夫々とフロアパネル1の下面との間には閉断面7a,8aが形成されている。
上述した前後各クロスメンバ5,6のうち、後側クロスメンバ6は、図1〜図6に示すように、上壁部6aと、前壁部6bと、該前壁部6bの下端から前方に折曲げ形成された接合フランジ6dと、後壁部6c(図4参照)と、該後壁部6cの下端から後方に折曲げ形成された接合フランジ6eとでその車幅方向の直交断面がハット形状に形成されている。さらに、後側クロスメンバ6は、その下部の接合フランジ6d,6eがフロアパネル1の上面にスポット溶接等により接合固定されており、該フロアパネル1と後側クロスメンバ6との間には、閉断面6s(図3参照)が形成されている。
なお、図2、図3に示すように、後側クロスメンバ6は、その車幅方向外端が、サイドシルインナ4aの縦壁4eと非結合状態であるとともに、該後側クロスメンバ6の車幅方向内端が、トンネル部2の縦壁2aと非結合状態でフロアパネル1上面に設置されている。すなわち、サイドシル4とトンネル部2との間に設置された後側クロスメンバ6は、サイドシル4とトンネル部2との各縦壁4e,2aに対して僅かな隙間をあけて設置されている。
ところで、図1、図3において仮想線にて示すように、フロアパネル1の前方部位に位置するフロントフロア部1aにはフロントシート100(前席)を備え、該フロントシート100のシートクッション部101は、シートレール102を介して前後にスライド可能に前後各クロスメンバ5,6に支持されている。
フロントシート100は、左右一対(一方が運転席シートであり、他方が助手席シートである)を備え、夫々車幅方向に並んで配設されている。なお、フロアパネル1上におけるフロントシート100の車両後側には、リヤシートが配設されているが本実施例においては図示省略している。
一方、図1、図3に示すように、後側クロスメンバ6の車幅方向の外内各側(車幅方向のサイドシル4側およびトンネル部2側)の上部には、乗員用シートとしてのフロントシート100(前席)のシートクッション部101を、図3に示すように支持するシート支持ブラケット10(10A,10B)が設けられている。シートレール102の後部は、シート支持ブラケット10にボルトB及びナットN等の取付手段により取り付けられており、このシート支持ブラケット10を介して後側クロスメンバ6に支持されている。
図1〜図3、図6に示すように、シート支持ブラケット10は、後側クロスメンバ6の車幅方向のサイドシル4側に備え、フロントシート100を該サイドシル4側から支持する外側シート支持ブラケット10Aと、車幅方向のトンネル部2側に備え、フロントシート100を該トンネル部2側から支持する内側シート支持ブラケット10Bとを備えている。
外側シート支持ブラケット10Aは、後側クロスメンバ6の車幅方向のサイドシル4側端部と、サイドシル4におけるサイドシルインナ4aの縦壁4e(側壁)とを連結するものであり、内側シート支持ブラケット10Bは、後側クロスメンバ6の車幅方向のトンネル部2側端部と、トンネル部2の縦壁2a(側壁)とを連結するものである。
図4、図6に示すように、外側シート支持ブラケット10Aは、上壁部10aと、この上壁部10aの前端から下方に折曲げ形成された前壁部10bと、上壁部10aの後端から下方に折曲げ形成された後壁部10cと、上壁部10aの車幅方向内端から下方に折曲げ形成された内壁部10dとで箱型形状に形成され、さらに、この内壁部10dの下端から水平方向に折曲げ形成された接合フランジ10gと、前壁部10bの下端および後壁部10cの下端から前後各側に向けて折曲げ形成された接合フランジ10e,10fと、上述の上壁部10a、前壁部10bおよび後壁部10cのそれぞれの車幅方向外端から折曲げ形成された接合フランジ10h,10i,10jとを一体に形成したものである。
図3に示すように、外側シート支持ブラケット10Aは、箱型に形成したその上部が下部よりも厚肉に形成されている。なお図3は、外側シート支持ブラケット10Aの上部と下部との肉厚の違いを強調して図示したものである。
本実施例においては、図5に示す上述の外側シート支持ブラケット10Aの分解斜視図のように、外側シート支持ブラケット10Aは、下側に有するブラケット下部材12Pと、該ブラケット下部12よりも厚肉に形成されるとともに上側に有するブラケット上部材11Pとの2部材を備え、これら別体(別部材)で形成した部材11P,12P同士を互いに接合することで、図3、図4に示すように、ブラケット上部11がブラケット下部12よりも厚肉に形成したものである。
図5、図6に示すように、ブラケット上部材11Pは、車幅方向外端から折曲げ形成された上記の接合フランジ10hを備えた上記の上壁部10aと、この上壁部10aの前端から下方に折曲げ形成された接合フランジ11eを備えた前壁上部11bと、上壁部10aの後端から下方に折曲げ形成された接合フランジ11fを備えた後壁上部11c(図6参照)と、上壁部10aの車幅方向内端から下方に折曲げ形成された接合フランジ11gを備えた内壁上部11dとで一体に形成されている。
このブラケット上部材11Pは、絞り成形により、箱型形状の外側シート支持ブラケット10Aよりも浅い箱型形状に形成されている。
また図5、図6に示すように、ブラケット下部材12Pは、前後各側の前壁下部12bおよび後壁下部12cと、これら前壁下部12bと後壁下部12cとの各車幅方向内端を一体に連結する内壁下部12dと、内壁下部12dの下端から折曲げ形成された上記の接合フランジ10gと、前壁下部12bおよび後壁下部12cのそれぞれの上側部分の車幅方向外端から前後各側に折曲げ形成された上記の接合フランジ10i,10jと、前壁下部12bおよび後壁下部12cのそれぞれの車幅方向内側部分の下端から前後各側に折曲げ形成された上記の接合フランジ10e,10fとで曲げ加工等により一体に形成されている。
さらに図5に示すように、ブラケット下部材12Pは、その前壁下部12bおよび後壁下部12cのそれぞれの下側部分の車幅方向外端が、サイドシル4の縦壁4eと接合しておらず、該下側部分の車幅方向外端から車幅方向内側に有する接合フランジ10e,10fの形成部位手前までの範囲に板厚方向に貫通する切欠き部13(エグリ部)を設けている。
この切欠き部13は、箱型形状に形成した外側シート支持ブラケット10Aの下部を脆弱化して衝撃吸収部とするものである。
上述したブラケット上部材11Pとブラケット下部材12Pとを互いに接合固定することで外側シート支持ブラケット10Aが構成される。具体的には図4、図5に示すように、前壁上部11bの接合フランジ11eが前壁下部12bの上側部分にスポット溶接等により接合固定されることで前壁部10bが形成され、後壁上部11cの接合フランジ11fが後壁下部12cの上側部分にスポット溶接等により接合固定されることで後壁部6cが形成され(図6参照)、内壁上部11dの接合フランジ11gが内壁下部12dの上側部分にスポット溶接等により接合固定されることで内壁部10dが形成される。
さらに、図4に示すように、ブラケット上部材11Pの接合フランジ10hは、サイドシル4インナの縦壁4eにスポット溶接等により接合固定され、ブラケット下部材12Pの接合フランジ10i,10jは、サイドシル4インナの縦壁4eにスポット溶接等により接合固定され、ブラケット下部材12Pの前側の接合フランジ10eは、後側クロスメンバ6の前側の接合フランジ6dを介してフロアパネル1の上面にスポット溶接等により接合固定され、ブラケット下部材12Pの後側の接合フランジ10fは、後側クロスメンバ6の後側の後壁部6cを介してフロアパネル1の上面にスポット溶接等により接合固定され(図6参照)、ブラケット下部材12Pの車幅方向内側の接合フランジ10gは、後側クロスメンバ6の上壁部6aの上面にスポット溶接等により接合固定される。
ここで図4に示すように、外側シート支持ブラケット10Aの上下方向におけるブラケット上部材11Pとブラケット下部材12Pとを接合固定した部分よりも上側部分を、ブラケット上部11に設定するとともに、上記の接合固定した部分を含めた下側部分をブラケット下部12に設定する。
上述したように、外側シート支持ブラケット10Aが後側クロスメンバ6に接合された状態においてブラケット上部11は、後側クロスメンバ6に非接合状態であり、該後側クロスメンバ6に対して上方に離間した状態で配設される。すなわち、ブラケット上部11(又はブラケット上部材11P)は、ブラケット下部12(又はブラケット下部材12P)を介して後側クロスメンバ6に接合固定されている。
また、上述したように、ブラケット上部11は、接合フランジ10hを介してサイドシル4の縦壁4eに接合され、ブラケット下部12は、接合フランジ10i,10jを介してサイドシル4の縦壁4eに接合されており、夫々がサイドシル4の縦壁4eに接合固定されている。
具体的には、ブラケット上部11は、前壁部10b、内壁部10dおよび後壁部10cとで車幅方向外側へ開放したコ字状に形成され、接合フランジ10hを介して上壁部10aをサイドシル4の縦壁4eに接合することで、該サイドシル4の縦壁4eと協働して箱型形状を構成している。
一方、図4、図5に示すように、ブラケット下部12は、その上側部分において、前壁部10bおよび後壁部10cが各接合フランジ10i,10jを介してサイドシル4の縦壁4eに接合しつつ、これら前壁部10bおよび後壁部10cと内壁部10dとサイドシル4の縦壁4eとで協働して四辺からなる筒型形状を構成している。
すなわち、ブラケット上部11と、ブラケット下部12の上側部分とは、いずれも閉断面を構成するための車幅方向外側の壁部として、サイドシル4の縦壁4eを利用しており、これによりブラケット上部11は箱型形状を構成するとともに、ブラケット下部12は筒型形状を構成している。
また図4、図5に示すように、ブラケット下部12は、前壁部10bおよび後壁部10cのそれぞれの車幅方向外端の下側部分には、切欠き部13を設けているため、外側シート支持ブラケット10Aをサイドシル4と後側クロスメンバ6とに接合した状態においてブラケット下部12の下側部分はサイドシル4の縦壁4eと結合されずに前壁部10bおよび後壁部10cのそれぞれの下側部分の車幅方向外端がサイドシル4の縦壁4eに対して所定範囲で車幅方向内側へ離間している。
換言すると、ブラケット下部12の下側部分の切欠き部13に相当する部位は、後側クロスメンバ6と結合されておらず、該後側クロスメンバ6に対して所定範囲で上方へ離間している。
これにより、ブラケット下部12の下側部分は、前壁部10bおよび後壁部10cと、これらの車幅方向内端を連結する内壁部10dとで平面視で車幅方向外側に向けて開放した開放断面を有するコ字状に形成している。
すなわち、外側シート支持ブラケット10Aのブラケット下部12においては、薄肉に形成することに加えて上側部分のみを接合フランジ10i,10jを介してサイドシル4の縦壁4eに接合することによっても該ブラケット下部12を脆弱化している。
さらに本実施例においては、サイドシル4の縦壁4eと接合フランジ10i,10jとは1箇所のみをスポット溶接した溶接部により接合固定している(図4、図5参照)。
また、ブラケット下部12の上側部分は、前壁部10bおよび後壁部10cが各接合フランジ10i,10jを介してサイドシル4の縦壁4eに接合しているが(図5参照)、ブラケット下部12の前壁部10bおよび後壁部10cの切欠き部13の上側部分に相当する部位z(図4、図5参照)は、下側に切欠き部13が形成されているが故に、切欠き部13が形成していない車幅方向内側部位よりも上下方向に幅小に形成されている。すなわち、外側シート支持ブラケット10Aの当該接合フランジ10i,10jはブラケット下部12の上側部分にのみに形成されている。
このため本実施例では、ブラケット上部材11Pの前壁上部11bと後壁上部11cの各接合フランジ11e(図5参照),11f(図6参照)は、該各接合フランジ11e,11fを、ブラケット下部材12Pの前壁下部12bおよび後壁下部12cと接合した状態において、ブラケット下部12の前壁部10bおよび後壁部10cの上側部分における、少なくとも切欠き部13の上側部分に相当する幅小部位zに重合するように下方へ延ばして形成するとともに、スポット溶接等により接合固定することによってブラケット下部12の上側部分の幅小部位zを補強している。
具体的に本実施例では、ブラケット上部材11Pの前後各壁上部の接合フランジ11e,11fとブラケット下部材12Pの前後各壁下部12b,12cとは、車幅方向に並ぶ3箇所によりスポット溶接されており、このうち、車幅方向の外側の箇所は、ブラケット下部12の上側部分の幅小部位zと、これに重合するブラケット上部11の接合フランジ11e,11fとを溶接するものである。
また上述した内側シート支持ブラケット10Bは、外側シート支持ブラケット10Aと略対称形状であるため、以下では内側シート支持ブラケット10Bの構成について外側シート支持ブラケット10Aとは異なる部分を中心に図1〜図3、図6、図7を参照しながら説明し、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
外側シート支持ブラケット10Aにおいては、接合フランジ10h,10i,10jを車体剛性部材としてのサイドシル4の縦壁4eに接合したが、内側シート支持ブラケット10Bは、トンネル部2の縦壁2aに接合フランジ10h,10i,10jを接合している(図1、図2、図6参照)。
さらに、内側シート支持ブラケット10Bは、ブラケット下部12の下側部分に切欠き部13を形成しておらず、車幅方向外端の接合フランジ10i,10jを上側部分だけでなく下側部分にかけても形成している。そしてブラケット下部12は、接合フランジ10i,10jを介してトンネル部2の縦壁2aに上下2箇所でスポット溶接により接合している。
このように、ブラケット下部12は、その上側部分だけでなく下側部分においても、前壁部10bおよび後壁部10cが各接合フランジ10i,10jを介してトンネル部2の縦壁2aに接合固定されているため、前壁部10bおよび後壁部10cと内壁部10dとトンネル部2の縦壁2aとで協働して四辺からなる筒型形状としている。
なお、内側シート支持ブラケット10Bは、切欠き部13を形成していないため、この切欠き部13に相当する分だけ外側シート支持ブラケット10Aよりも車幅方向に短く形成している。
上述した本実施例の自動車のシート支持構造は、車幅方向に離間した一対の車体剛性部材としてのサイドシル4とトンネル部2と、これらサイドシル4とトンネル部2に横架されるクロスメンバとしての後側クロスメンバ6と、該後側クロスメンバ6とフロントシート100との間に介在し、該フロントシート100をシートレール102を介して支持するシート支持ブラケット10(10A,10B)とを備えた自動車のシート支持構造であって(図1〜図3参照)、シート支持ブラケット10のうち外側シート支持ブラケット10Aは、サイドシル4の縦壁4eと後側クロスメンバ6とに連結されるとともに(図1〜図6参照)、内側シート支持ブラケット10Bは、トンネル部2の縦壁2aと後側クロスメンバ6とに連結され(図1〜図3、図6、図7参照)、これら外内各側のシート支持ブラケット10A,10Bは、箱型であるとともにそのブラケット上部11がブラケット下部12よりも厚肉に形成したものである(図3、図5、図7参照)。
上記構成によれば、シート支持ブラケット10は、ブラケット上部11がブラケット上部11よりも厚肉の箱型に形成することにより、フロントシート100のシートクッション部101からのシート荷重をシートレール102を介して集中的に受けるブラケット上部11については厚肉に形成してしっかりとシート荷重を受け止めつつ、ブラケット下部12については、ブラケット上部11よりも薄肉に形成することでブラケット上部11から後側クロスメンバ6へ積極的にシート荷重を分散、伝達してシート荷重を効率よく受け止めてすることができる。従ってシート支持剛性を高めることができる。
さらに、シート支持ブラケット10は、ブラケット上部11がブラケット下部12よりも厚肉の箱型であるため、特に外側シート支持ブラケット10Aにおいては、側突時にそのブラケット上部11でサイドシル4の車幅方向内側への倒れ込みを受け止めながら側突荷重をブラケット下部12へ効果的に伝達することができる。
しかも、特許文献1に開示のナット支持板等のような補強部材を削減または減縮することが可能となるとともにシート支持ブラケット10全体を厚肉に形成したものよりも軽量化することができる。
従って効率よく軽量化を図りつつ、側突時におけるサイドシル4から後側クロスメンバ6への荷重伝達性を確保することができる。
且つ、シート支持ブラケット10のブラケット下部12を薄肉にすることで側突時に、車体剛性部材(サイドシル4、トンネル部2)の縦壁4e,2aからシート支持ブラケット10(10A,10B)のブラケット上部11に伝達された側突荷重をブラケット下部12を介して確実に後側クロスメンバ6に伝達することができる。これにより、後側クロスメンバ6や、シート支持ブラケット10の車体剛性部材との接合箇所における応力集中を抑制することができ、これら後側クロスメンバ6や接合部の負担を軽減することができる。すなわち、シート支持ブラケット10の補強に伴って後側クロスメンバ6等の車体剛性部材や、シート支持ブラケット10の車体剛性部材との接合箇所の更なる補強による車体の重量化を防ぎつつ、側突に対する剛性およびシート支持剛性を高めることができる。
この発明の態様として、シート支持ブラケット10は、別体で形成されたブラケット上部材11Pとブラケット下部材12Pとを接合したものであり(図2〜図7参照)、該ブラケット上部11が後側クロスメンバ6と離間されたものである(図2〜図4、図6参照)。
上述したようにシート支持ブラケット10を、ブラケット上部11とブラケット下部12とを別体で形成することで、ブラケット上部11が厚肉の箱型であっても絞り成形等により容易に成形することができる。
具体的には、板厚が厚いシート支持ブラケット10を製造する際には、所望の成形性を確保することが困難となるおそれがあるため、特許文献1の結合部材のように、接合フランジを側壁としての所定の壁部の端部に設け、この接合フランジにより隣接する壁部同士を接合することで箱型に形成していた(特許文献1中の図10参照)。しかし、このような構成においては箱型に加工する際には、上壁部に対して側壁(前壁、後壁、内壁)を構成する各壁部を曲げ加工することに加えて接合フランジも曲げ加工する等、2段階に折曲げ加工する必要があり、成形性の観点で改善の余地があった。
これに対して本実施例のシート支持ブラケット10は、ブラケット上部11とブラケット下部12とが別体で接合されたものであるため、シート支持ブラケット10のブラケット上部11は、ブラケット下部12よりも厚肉の箱型であるが、その深さ(上下方向の長さ)が浅く(短く)することにより、絞り成形等によって容易に成形することができる。
またこの発明の態様として、外側シート支持ブラケット10Aのブラケット上部11とブラケット下部12は夫々サイドシル4の縦壁eに連結されるとともに(図1〜図5参照)、内側シート支持ブラケット10Bのブラケット上部11とブラケット下部12は夫々トンネル部2の縦壁2aに連結されたものである(図1〜図3参照)。
上記構成によれば、シート支持ブラケット10(10A,10B)のブラケット下部12は、接合フランジ10i,10jを有する前後各壁部10b,10cと内壁部10dとで形成され、車体剛性部材(サイドシル4、トンネル部2)の縦壁4e,2aと協働して平面視筒型を構成するとともに、シート支持ブラケット10のブラケット上部11は、前後各壁部10b,10cと内壁部10dと、接合フランジ10hを有する上壁部10aとで形成され、車体剛性部材4,2の縦壁4eと協働して箱型を構成することができる。
このようにシート支持ブラケット10のブラケット上部11とブラケット下部12とは、夫々が縦壁4eを利用して閉断面を構成することができるため、効率よく軽量化できるとともに高剛性化を図ることができる。
上壁部10aを有する箱型の厚肉のブラケット上部11を薄肉のブラケット下部12に接合して後側クロスメンバ6に取り付けることでシート支持剛性を高めることができるとともに衝突時の応力集中も防ぐことができる。つまり、衝突性能に悪影響を与えることなく、軽量化しつつフロントシート100の支持剛性を高めることができる。
また本実施例においては、ブラケット下部材12Pの下端を含む下側部分は、サイドシル4の縦壁4eと接合しておらず、車幅方向外端に切欠き部13を形成することによって該下側部分を開放断面としている。しかも、ブラケット下部材12Pは、上側部分のみに設けた接合フランジ10i,10jをサイドシル4の縦壁4eに1箇所のみのスポット溶接により接合固定したものである。
これにより、側突時には、サイドシル4からの伝達荷重がブラケット下部12の接合フランジ10i,10jとサイドシル4の縦壁4eとの接合部に集中することを緩和することができ、ブラケット下部12の荷重分散性を確保できる。
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、この発明の車体剛性部材は、サイドシル4およびトンネル部2に対応し、以下同様に、
クロスメンバは、後側クロスメンバ6に対応し、
シートは、フロントシート100に対応し、
シート支持ブラケットの上部は、ブラケット上部11に対応し、
シート支持ブラケットの下部は、ブラケット下部12に対応するも、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば本実施例においては、外側シート支持ブラケット1Aを後側クロスメンバ6の車幅方向のサイドシル4側に設けるとともに、内側シート支持ブラケット1Bをトンネル部2側に設けたが、本発明のシート支持ブラケットはこれに限定せず、サイドシル4側とトンネル部2側とのうち少なくとも一方に設けた構成とすることができる。
さらに、シート支持ブラケット10は、後側クロスメンバ6だけでなく、前側クロスメンバ5と後側クロスメンバ6とのうち少なくとも一方に設けてもよい。言うまでもなく、シート支持ブラケット10を前側クロスメンバ5に設ける場合においても、前側クロスメンバ5の車幅方向のサイドシル4側とトンネル部2側とのうち少なくとも一方に設けることができる。
上述した実施例のシート支持ブラケット10は、別体であるブラケット上部材11Pとブラケット下部材12Pとを接合したものであるが、本発明のシート支持ブラケットはこれに限定せず、ブラケット上部11とブラケット下部12とを一体又は一体的に形成したものであってもよい。
例えば、シート支持ブラケットは、テーラードブランク工法等のプレス成形により、その上部を構成する厚肉部材と下部を構成する薄肉部材とを1つのブランク材として一体的に形成してもよい。その他にも鋳造や削出しで一体に形成することができる。
また本実施例では、シート支持ブラケット10における別体で形成したブラケット上部材11Pとブラケット下部材12Pとの接合や、シート支持ブラケット10の車体剛性部材2,4への接合は、スポット溶接で接合したが、本発明ではこれに限定せず、例えば、アーク溶接、レーザー溶接、プラズマ溶接等の高密度エネルギー熱源を利用して接合する、或いはリベット接合やボルトおよびナット等の締結により接合してもよい。
また本実施例においてシート支持ブラケット10は、シートレール102を介してフロントシート100のシートクッション部101を支持する構成としたが、本発明ではこれに限らず、シートクッション部101を、図外のブラケットを介して支持したり、シートレール102やブラケットを介さずに直接支持する構成としてもよい。
前後各クロスメンバ5,6は、車幅方向に延びるとともに車幅方向の直交断面が断面ハット状の部材をフロアパネル1の上面に接合して設けたものであるがこれに限らず、前後各クロスメンバ5,6に相当する形状になるようにフロアパネル1の一部を上方へ凸のビード状に設けたクロスメンバ部として形成してもよい。