ところで、近年、上記車両用シートとしては、シートクッション(着座部)およびこのシートクッションに対して揺動軸を介して車両前後方向に揺動可能に連結されたシートバック(背もたれ部)を有するシート本体と、上記シート本体の高さを調節するために4節リンクにより上記シート本体を前方に移動させながらリフトアップするリフタ機構と、シートバックの傾斜角度を調節するために上記シートクッションの後端部に設けられたリクライニング機構とを備えたものが周知である(以下の説明では、これらの機構を総称して「シート位置調節機構」と称する場合がある)。
上記リクライニング機構は、上記揺動軸のセンタピラー側の端部に設けられており、車幅方向における上記シートクッションのセンタピラー側に位置するギア機構、ばね、およびリクライニングレバー等により構成されている。
車両衝突時の安全性を確保しながら、乗員の着座姿勢を快適な状態に保つために、特許文献1に記載のシートベルト装置と、上記シート位置調節機構とを車両に設けることを想定した場合には、以下の問題が生じる虞がある。
すなわち、上記タングと上記バックルとの係合を解除して上記連結部をシートバックの前端より後側に位置させた状態で、上記リフタ機構によりシート本体をリフトアップすると、シート本体とともにリクライニング機構が前方へ移動し、連結部にリクライニング機構が干渉し、この干渉により、リクライニング機構の動作が阻害される虞がある。
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、シート本体をリフトアップする際にラップアウタプリテンショナの連結部がリクライニング機構と干渉するのを防止することができる車両用シートを提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明は、シートクッションと、当該シートクッションの後端部に対して車両前後方向に揺動可能に連結されたシートバックとを有するシート本体と、前記シートクッションの後端部のうち車幅方向における前記シートクッションの車外側の側面に配置され、前記シートバックの傾斜角度を調節するリクライニング機構本体と、前記シートクッションの車外側の側面から車幅方向車外側に間隔を隔てて配置され、前記リクライニング機構本体を操作するためのリクライニングレバーとを有するリクライニング機構と、車両床部に固定されるとともに車両前後方向に延びる左右一対のロアレールと、これらロアレールに対して車両前後方向にスライド移動可能に組み付けられて前記シート本体を支持する左右一対のアッパレールとを有するスライド機構と、前記シート本体および前記リクライニング機構を、前記アッパレールに対して、車両前側に移動させながらリフトアップするシート高さ調節機構と、シートベルトの一端部が連結されるとともに車幅方向における前記シートバックと前記リクライニングレバーとの間に配置される連結部と、当該連結部に連結されたワイヤを含み車両衝突時に前記ワイヤを引き込むプリテンショナ本体とを有し、前記アッパレールに固定されるラップアウタプリテンショナと、前記シートクッションの車外側の側面のうち、前記リクライニング機構本体よりも車両前側の所定位置に配置され、前記シート本体がリフトアップされた状態で、前記連結部が前記所定位置よりも前記リクライニング機構本体に接近することを規制する規制部と、前記シートクッションを構成するシートクッションフレームを車幅方向における車外側から覆うシートクッションフレームカバーと、を備え、前記シートクッションフレームカバーは、前記連結部が挿通される開口部を有し、前記規制部は、前記開口部の内周縁とは別に設けられていることを特徴とする車両用シートを提供する。
本発明によれば、スライド機構を備えることにより、シート本体の位置を車両前後方向に調節することができる。さらに、プリテンショナ本体が、上記スライド機構のアッパレールに固定されているので、シートベルトで乗員を拘束した際のシートベルトの快適性を向上させることができる。
詳しく説明すると、従来のラップアウタプリテンショナにおいては、プリテンショナ本体が車両床部に直接固定されていたが、この場合に、上記スライド機構によりシート本体を車両床部に対して前進させると、シート本体の前進にプリテンショナ本体が追従せず、これに伴ってシートベルトも追従を抑制されるため、シートベルトで乗員を拘束した際のシートベルトの締まり具合が必要以上に強くなる等して、快適性が低下する虞がある。これに対し、本発明では、上記スライド機構により車両前後方向におけるシート本体の位置を調節すると、その調節によるシート本体の動きにプリテンショナ本体およびシートベルトが追従するので、シートベルトで乗員を拘束した際にシートベルトの締まり具合が必要以上に強くなる等の不都合が解消され、これによりシートベルトの快適性を向上させることができる。
さらに、本発明によれば、シートクッションの車外側の側面のうち、リクライニング機構本体よりも車両前側の所定位置に配置され、シート本体がリフトアップされた状態で、ラップアウタプリテンショナの連結部が上記所定位置よりもリクライニング機構に接近することを規制する規制部を備えているので、シート本体をリフトアップする際にラップアウタプリテンショナの連結部がリクライニング機構と干渉するのを防止することができる。
詳しく説明すると、ラップアウタプリテンショナの連結部は、ワイヤと連結されているため、当該連結部は、シートベルトの位置に応じて、車両前後方向に回動することが可能となっている。このため、本発明における規制部が設けられていない場合には、連結部がシートバックの前端よりも後側に位置しているときに、シート本体のリフトアップに伴いリクライニング機構が連結部に向かって前進してくると、連結部がリクライニング機構と干渉する虞がある。
これに対し、本発明では、ラップアウタプリテンショナの連結部が、車幅方向におけるシートバックとリクライニングレバーとの間に配置されているため、連結部はリクライニングレバーとは干渉しない。しかも、シート高さ調節機構の動作により、リクライニング機構本体がラップアウタプリテンショナの連結部に対して後側かつ下側から近づくように移動する場合に、規制部によりリクライニング機構本体に対する連結部の接近が規制されるので、連結部がリクライニング機構本体と干渉することが防止され、これにより、リクライニング機構によるリクライニング操作(シートバックの傾斜角度調節操作)が阻害されるのを防止することができる。
また、連結部がリクライニング機構に接近するのを規制部が規制する際に、連結部と規制部との接触による異音が発生するのを抑制することができる。詳しく説明すると、規制部がシートクッションフレームカバーにおける開口部の内周縁である場合には、規制部と連結部が接触する際にシートクッションフレームカバー内部で接触音が反響して比較的大きな異音が発生する虞があるが、このような構造としないことで、連結部と規制部とが接触する際の異音の発生を抑制することができる。
本発明においては、前記連結部は、前記シートクッションが前記シート高さ調節機構によって上下方向に移動可能な範囲における最下端に位置している状態で、前記シートバックの前端よりも後側に移動可能に設けられていることが好ましい。
この構成によれば、シートクッションが上下方向移動可能範囲における最下端に位置している状態で乗員が車両に対して乗り降りする際に、その乗り降りを連結部が阻害するのを防止することができる。
本発明においては、前記規制部は、前記シートクッションが前記シート高さ調節機構によって上下方向に移動可能な範囲における最上端に位置し、かつ、前記連結部が前記シートバックの前端よりも後側に位置している状態で、前記連結部が前記所定位置よりも前記リクライニング機構に接近するのを規制することが好ましい。
この構成によれば、シートクッションが上下方向移動可能範囲における最上端に位置している状態で乗員が車両に対して乗り降りする際に、その乗り降りを連結部が阻害するのを防止することができる。
本発明においては、前記規制部は、前記連結部が前記シートバックよりも前側に位置している状態で、前記連結部と干渉しないことが好ましい。
この構成によれば、例えば、乗員がシートベルトを着用することにより、ラップベルトがシートバックよりも前側に位置し、これに伴い連結部がシートバックよりも前側に位置している場合に、規制部が連結部と干渉しない。このため、車両衝突時に連結部がワイヤとともにプリテンショナ本体側へ移動するときに、規制部がその移動を阻害するのを防止することができ、ラップアウタプリテンショナを適切に作動させることができる。
また、本発明は、シートクッションと、当該シートクッションの後端部に対して車両前後方向に揺動可能に連結されたシートバックとを有するシート本体と、前記シートクッションの後端部のうち車幅方向における前記シートクッションの車外側の側面に配置され、前記シートバックの傾斜角度を調節するリクライニング機構本体と、前記シートクッションの車外側の側面から車幅方向車外側に間隔を隔てて配置され、前記リクライニング機構本体を操作するためのリクライニングレバーとを有するリクライニング機構と、車両床部に固定されるとともに車両前後方向に延びる左右一対のロアレールと、これらロアレールに対して車両前後方向にスライド移動可能に組み付けられて前記シート本体を支持する左右一対のアッパレールとを有するスライド機構と、前記シート本体および前記リクライニング機構を、前記アッパレールに対して、車両前側に移動させながらリフトアップするシート高さ調節機構と、シートベルトの一端部が連結されるとともに車幅方向における前記シートバックと前記リクライニングレバーとの間に配置される連結部と、当該連結部に連結されたワイヤを含み車両衝突時に前記ワイヤを引き込むプリテンショナ本体とを有し、前記アッパレールに固定されるラップアウタプリテンショナと、前記シートクッションの車外側の側面のうち、前記リクライニング機構本体よりも車両前側の所定位置に配置され、前記シート本体がリフトアップされた状態で、前記連結部が前記所定位置よりも前記リクライニング機構本体に接近することを規制する規制部と、を備え、前記規制部は、車幅方向における前記シートバックの車外側の側面から車外側に突出する突起部であることを特徴とする車両用シートを提供する。
この構成によれば、シート本体をリフトアップする際にラップアウタプリテンショナの連結部がリクライニング機構と干渉するのを防止することができる、という上述した車両用シートと同等の作用効果を享受できる。また、比較的簡単に規制部を構成することができ、製造コストを低減することができる。
以上説明したように、本発明によれば、シート本体をリフトアップする際にラップアウタプリテンショナの連結部がリクライニング機構と干渉するのを防止することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について詳述する。
なお、以下の説明では、「右」、「左」、「前」、「後」という文言を、車両を基準として使用する。また、以下の説明では、車両の左側に配置された車両用シートを例に挙げて説明する。従って、車両用シートよりも左側に車体のセンタピラー(図示略)が配置されている。
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート1は、シート本体50と、シートベルト(ウエビング)4と、リトラクタ2と、タングプレート5と、バックル6と、ショルダアンカ3と、リクライニング機構31と、スライド機構32と、シート高さ調節機構30と、ラップアウタプリテンショナ21(図2参照)と、規制部47(図6参照)と、シートクッションフレームカバー11と、を備えている。
図1に示されるように、シート本体50は、シートクッション(着座部)23と、このシートクッション23の後端部に対して支軸29(図4参照)を介して車両前後方向に揺動可能に連結されたシートバック(背もたれ部)9とを備えている。
図6に示されるように、シートクッション23は、骨格材として、このシートクッション23の左右で車両前後方向に延びる板状のサイドフレーム34(本発明における「シートクッションフレーム」に相当する)を備えている。左右のサイドフレーム34は、各々、サイドフレーム34の車両前後方向全体に亘って車両床部F(図2参照)と略平行に延びる板状のメインフレーム55(図6参照)と、このメインフレーム55の後端部の上側に連結(ボルト締結)され、メインフレーム55の後端部から上側に延出する板状のリクライニング用ブラケット36とを有している。
このリクライニング用ブラケット36は、シートバック9を揺動可能に支持する部材である。リクライニング用ブラケット36は、図6に示されるように、上記支軸29を挿通させる貫通孔(図示略)が中央部に形成された板状のブラケット本体36bと、後述の渦巻きばね37を支持するばね支持部36aとを有している。ブラケット本体36bは、その周縁部に、センタピラー側(車幅方向車外側、図6に示される例では左側)に屈曲してセンタピラー側に延出する延出部36cを有している。この延出部36cは、リクライニング用ブラケット36の剛性を高めるフランジ部の役割を果たしている。ばね支持部36aは、上記貫通孔よりも上側に位置しており、ブラケット本体36bのセンタピラー側の面からセンタピラー側に突出している。このばね支持部36aは、渦巻きばね37の中心部を支持している。
図1に示されるように、シートバック9は、乗員Hの背中を支持する背もたれ部8と、この背もたれ部8の車幅方向両端部に連続して形成されるとともに背もたれ部8よりも車両前側に膨出するサイドサポート部7とを備えている。このサイドサポート部7は、車両のコーナリング時等において、乗員Hの上体部側面を支持する。図4に示されるように、サイドサポート部7は、骨格材として、その内部で上下方向に延びるシートバックフレーム35を備えている。このシートバックフレーム35の下部とシートクッション23のリクライニング用ブラケット36とが、車幅方向に延びる支軸29を介して連結され、この支軸29を中心として、シートバック9が車両前後方向に揺動可能となっている。
図1に示されるように、シートベルト4は、乗員Hの上体を拘束するショルダベルト(ショルダウエビング)4aと、乗員Hの腰部を拘束するラップベルト(ラップウエビング)4bとを備えている。乗員Hがシートベルト4を着用した状態において、シートベルト4におけるリトラクタ2からタングプレート5にかけての部分がショルダベルト4aとされ、シートベルト4におけるタングプレート5からラップアウタプリテンショナ21にかけての部分がラップベルト4bとされる。
リトラクタ2は、車両衝突時にショルダベルト4aを引き込むリトラクタプリテンショナ(図示略)を備えた自動ロック式のシートベルトリトラクタ(ALR)であり、車幅方向においてシート本体50よりもセンタピラー側(車幅方向においてシート本体50よりも車外側)に配置されている。
タングプレート5は、シートベルト4に摺動可能に支持されている。
バックル6は、タングプレート5と係脱可能に構成されており、乗員Hがシートベルト4を着用する際には、上記タングプレート5と係合され、乗員Hがシートベルト4の着用を解除する際には、タングプレート5との係合が解除される。
ショルダアンカ3は、車体のセンタピラー等に取り付けられており、リトラクタ2から引き出されたショルダベルト4aが乗員Hの上体の適切な位置に配置されるように、ショルダベルト4aを摺動可能にガイドする。
リクライニング機構31は、シートバック9の傾斜角度を調節するものであり、図1に示されるように、シートクッション23の後端部のうち車幅方向におけるシートクッション23のセンタピラー側の側面に配置されている。図4に示されるように、リクライニング機構31は、上記シートクッション23における左右のリクライニング用ブラケット36(図4には左側のリクライニング用ブラケット36のみを示す)の各々の反シートクッション側の面、具体的には、上記ばね支持部36aに設けられるとともにシートバック9を前傾方向に付勢する渦巻きばね37と、センタピラー側のリクライニング用ブラケット36における上記ブラケット本体36bのセンタピラー側の面に設けられるとともにシートバック9の傾斜角度をロックするロック機構51と、支軸29のセンタピラー側の端部に接続されるとともに、ロック機構51によるロック状態を解除して、これにより渦巻きばね37の弾性力によるシートバック9の前傾方向の移動および渦巻きばね37の弾性力に抗したシートバック9の後傾方向の移動を可能にするための操作が可能なリクライニングレバー10とを備えている。上記渦巻きばね37および上記ロック機構51により、リクライニング機構本体56(図4参照)が構成されており、上記リクライニングレバー10により、上記リクライニング機構本体56を操作することが可能となっている。
リクライニングレバー10は、支軸29を中心として上下方向に揺動して操作できるようにロック機構51と連結されており、図4に示されるように、シートバック23の側面、具体的にはサイドフレーム34におけるリクライニング用ブラケット36のセンタピラー側の側面からセンタピラー側に間隔Dを隔てて配置されている。リクライニング用ブラケット36とリクライニングレバー10との車幅方向の間隔Dは、これらの間に後述の連結部53を配置できるような間隔に設定されている。
このリクライニング機構31においては、リクライニングレバー10を上側に揺動操作してロック機構51によるロック状態を解除することにより、シートバック9の傾斜角度を調節することができる。そして、シートバック9の傾斜角度を調節した後に、リクライニングレバー10を下側に揺動操作してロック機構51をロック状態にすることで、傾斜角度が固定される。
図2,3に示されるように、スライド機構32は、車両床部Fにボルト18により固定されるとともに車両前後方向に延びる左右一対のロアレール17(図2,3には左側のリアレール17のみを示す)と、これらロアレール17に対して車両前後方向にスライド移動可能に組み付けられてシート本体50を支持する左右一対のアッパレール20(図2,3には左側のアッパレール20のみを示す)と、左右のアッパレール20を車幅方向に連結する連結板28と、ロアレール17に対するアッパレール20の車両前後方向の位置をロックするロック機構(図示略)と、このロック機構によるロック状態を解除する操作が可能なロック解除レバー19とを有する。なお、図2に示される例においては、車両床部Fは、前側が後側に対して高くなるように水平面に対して傾斜している。これに伴い、スライド機構32も、前側が後側に対して高くなるように配置されている。
図10に示されるように、シート高さ調節機構30は、シート本体50およびリクライニング機構31を、アッパレール20に対して、前側に移動させながらリフトアップさせたり、後側に移動させながらリフトダウンさせるものである。図2,3,8〜10に、シート本体50およびリクライニング機構31が高さ調節範囲の最上端までリフトアップされた状態を示し、図5〜7に、シート本体50およびリクライニング機構31が高さ調節範囲の最下端までリフトダウンされた状態を示している。
図10に示されるように、シート高さ調節機構30は、シートクッション23における左右のサイドフレーム34(メインフレーム55)の前部とアッパレール20の前部とをそれぞれ回転可能にリンク連結する左右一対のフロントリンク38と、左右のサイドフレーム34(メインフレーム55)の後部とアッパレール20の後部とをそれぞれ回転可能にリンク連結する左右一対のリアリンク25とを有する四節リンク機構40と、リアリンク25を起倒回転させる駆動装置とを備えている。図10に示されるように、上記フロントリンク38の下端部は、アッパレール20の前部に設けられたフロントブラケット44に回動自在にピン接合されている。上記リアリンク25の下端部は、上記連結板28の上面から上側に突出する突出部28aに固定されたリアブラケット42に回動自在にピン接合されている。図3に示されるように、リアリンク25の上部には、後述のピニオンギア26aと噛み合うラック部25aが形成されている。
上記駆動装置は、図3に示されるように、センタピラー側のメインフレーム55に設けられた電動モータ26と、この電動モータ26の回転軸に設けられたピニオンギア26aと、シート本体50をリフトアップさせるときには電動モータ26を正方向に回転させ、シート本体50をリフトダウンさせるときには電動モータ26を逆方向に回転させるための操作が可能なシート高さ調節レバー15(図1,2参照)とを備えている。シート高さ調節レバー15は、車両前後方向に延びるとともにその後端部を中心として上下方向に揺動可能に設けられている。シート高さ調節レバー15を上側に揺動させると、電動モータ26が正方向に回転し、これに伴いリアリンク25およびフロントリンク38が前側へ起立するように揺動する一方、シート高さ調節レバー15を下側に揺動させると、電動モータ26が逆方向に回転し、これに伴いリアリンク25およびフロントリンク38が後側へ倒れるように揺動する。リアリンク25およびフロントリンク38がともに起立することにより、シート本体50が、アッパレール20に対して、前側に移動しながらリフトアップし(図8〜10参照)、リアリンク25およびフロントリンク38がともに倒れることにより、シート本体50が、アッパレール20に対して、後側へ移動しながらリフトダウンする(図5〜7参照)。
図5に示されるように、ラップアウタプリテンショナ21は、図1に示すシートベルト4(ラップベルト4b)の一端部が連結された連結部53と、この連結部53に連結された屈曲可能なワイヤ24を含み車両衝突時に当該ワイヤ24を引き込むプリテンショナ本体52とを有し、このプリテンショナ本体52がアッパレール20に固定されている。
上記連結部53は、図1に示すラップベルト4bの一端部が連結されたプリテンショナ用タングプレート13と、このプリテンショナ用タングプレート13に係脱可能に連結された直方体状のプリテンショナ用バックル14と、このプリテンショナ用バックル14とワイヤ24とを連結する管状の取付部54とを有している。この連結部53は、車幅方向におけるシートバック9とリクライニングレバー10との間に配置される。この連結部53は、後述するように、シートクッションフレームカバー11における開口部12の内周縁にガイドされながら、車幅方向におけるシートバック9とリクライニングレバー10との間で車両前後方向に揺動可能となっている。
図2に示されるように、上記プリテンショナ用タングプレート13は、ラップベルト4bの一端部が挿通されるベルト挿通孔13aを有している。このベルト挿通孔13aにラップベルト4bの一端部を挿通して当該一端部を折り返し、ラップベルト4bにおける当該一端部よりも他端側の部分と当該一端部とを縫い合わせることにより、プリテンショナ用タングプレート13とラップベルト4bの一端部とが連結される。
上記取付部54は、プリテンショナ用バックル14に固定されている。取付部54は、ワイヤ24の一端部を被覆するようにワイヤ24に固定される金属製の第1管状部49と、ゴム等の軟質性材料からなるとともに上記第1管状部49のプリテンショナ用バックル側部分を被覆する第2管状部48とにより構成されている。第1管状部49の内側にワイヤ24の一端部が挿入された状態で、第1管状部49を外側からかしめることにより、ワイヤ24の一端部に第1管状部49が固定されている。
プリテンショナ本体52は、上記ワイヤ24の他端部に固定されたピストン(図示略)を内部に摺動可能に有するシリンダ部22と、このシリンダ部22に接続され、車両衝突時にガスを発生させてそのガスの圧力により上記ピストンを車両前後方向の後側から前側に移動させるガス発生器39と、上記シリンダ部22よりも後側に設けられ、ピストンから延出するワイヤ24を上向きに方向転換させるようにガイドするガイド部材27とを有する。ガイド部材27は、車幅方向に互いに間隔を隔てて配置された2つのガイド板41と、これらガイド板41の間に車幅方向に架け渡されたガイドピン43とで構成されている。シリンダ部22から後側に延出するワイヤ24は、ガイドピン43の下側および後側の周面に当接して上側に湾曲しながら上斜め前方に向かって延びるように配置される。ワイヤ24は、ラップベルト4bの位置に応じて、連結部53とともに、ガイドピン43を中心として車両前後方向に揺動する(図7,10参照)。
図7,10において、実線で示すワイヤ24(ガイドピン43より上側の部分)および連結部53は、タングプレート5とバックル6との係合が解除されてシートベルト4がリトラクタ2に巻き取られることで、連結部53がシートバック9の前端7aより後側に位置している状態を示している。また、図7,10において、矢印J1で指し示される二点鎖線で記載されたワイヤ24(ガイドピン43より上側の部分)および連結部53は、タングプレート5とバックル6とが係合されてシートベルト4が乗員Hに着用され、車両前後方向において連結部53がシートバック9とシートクッション23との間に位置している状態を示している。また、図7,10において、矢印J2で指し示される二点鎖線で記載されたワイヤ24(ガイドピン43より上側の部分)および連結部53は、タングプレート5とバックル6とが係合されてシートベルト4が乗員Hに着用され、車両衝突(前方衝突)によりワイヤ24が後述のようにシリンダ部22内に引き込まれて、ラップベルト4bが乗員Hの腰部を強く拘束し、連結部53が上記矢印J1で示す状態よりも前側へ移動している状態を示している。
上記ラップアウタプリテンショナ21においては、車両衝突時には、ガス発生器39からガスが発生し、このガスの圧力によりピストンが車両前側に移動し、これに伴い、ワイヤ24がシリンダ部22内に引き込まれて、ラップベルト4bが乗員Hの腰部を迅速かつ強く拘束する。
図6に示されるように、規制部47は、車幅方向におけるシートクッション23のセンタピラー側(車幅方向における車外側)の側面のうち、上記リクライニング機構本体56(渦巻きばね37およびロック機構51)よりも前側の所定位置に配置されている。図6に示される例では、規制部47は、リクライニング機構本体56よりも前側でかつ下側に配置されている。また、図6に示される例では、規制部47は、車幅方向におけるシートクッション23のセンタピラー側の側面、具体的にはリクライニング用ブラケット36におけるブラケット本体36bの周縁部からセンタピラー側に突出する突起部であり、リクライニング用ブラケット36における延出部36cの一部(延出部36cのうち延出長さが最も大きな部分)として構成されている。規制部47は、ブラケット本体36bと同一材料(例えば、アルミニウム合金等の金属)により一体に成型されている。
図10に示されるように、規制部47は、シート本体50がシート高さ調節機構30によりリフトアップされた状態で、ラップアウタプリテンショナ21の連結部53が上記所定位置よりもリクライニング機構本体56に接近することを規制する。具体的には、規制部47は、図10に示されるように、シートクッション23がシート高さ調節機構30により上下方向に移動可能な範囲における最上端に位置し、かつ、ラップアウタプリテンショナ21の連結部53がシートバック9(サイドサポート部7)の前端7a(図2参照)よりも後側に位置している状態で、上記連結部53が上記所定位置よりもリクライニング機構本体56に接近するのを規制する。規制部47に連結部53が当接することにより、具体的には、規制部47に第2管状部48が当接することにより、規制部47は、連結部53が上記所定位置よりもリクライニング機構本体56に接近することを規制する。
なお、規制部47は、図7に示されるように、シートクッション23がシート高さ調節機構30により上下方向に移動可能な範囲における最下端に位置している状態で、ラップアウタプリテンショナ21の連結部53がシートバック9(サイドサポート部7)の前端7aよりも後側に移動可能(図7において実線で示す連結部53を参照)となる位置に設けられている。つまり、シートクッション23がシート高さ調節機構30により上下方向に移動可能な範囲における最下端に位置している状態において、規制部47は、ラップアウタプリテンショナ21の連結部53がサイドサポート部7の前端7aよりも後側に移動することを妨げない。
また、規制部47は、図6,9に示されるように、ラップアウタプリテンショナ21の連結部53がシートバック9の前端7aよりも前側に位置している状態で、上記連結部53と干渉しない位置に配置されている。
シートクッションフレームカバー11(図1参照)は、シートクッション23のセンタピラー側(車幅方向における車外側)のサイドフレーム34をセンタピラー側から覆うものである。図2に示されるように、このシートクッションフレームカバー11は、サイドフレーム34のメインフレーム55からセンタピラー側に間隔を隔てた位置に配置されてメインフレーム55の全体に沿って車両前後方向に延びるメインカバー部11aと、このメインカバー部11aの後端部上側に連続して設けられ、リクライニング用ブラケット36からセンタピラー側に間隔を隔てた位置に配置されてリクライニング用ブラケット36の全体を覆うブラケットカバー部11bとを備えている。
ブラケットカバー部11b(図2参照)は、車両前後方向において、リクライニング用ブラケット36(図6参照)よりも若干前側の位置からリクライニング用ブラケット36よりも若干後側の位置まで配置されている。
図3に示されるように、ブラケットカバー部11bは、リクライニングレバー10よりも反センタピラー側に位置するとともにリクライニングレバー10と対向するレバー側カバー部11cと、このレバー側カバー部11cの上縁から反センタピラー側に延出する上縁部11dとを有している。
図1,2に示されるように、この上縁部11dにおける渦巻きばね37(図6参照)よりも前側の部分には、連結部53のプリテンショナ用バックル14が車両前後方向に移動可能な状態で挿通配置される開口部12が形成されている。この開口部12は、車幅方向におけるサイドフレーム34とリクライニングレバー10との間で車両前後方向に延びており、その車幅方向の幅は、連結部53を構成するプリテンショナ用バックル14の車幅方向の厚みよりも若干大きい幅に設定されている。また、図2に示されるように、この開口部12は、シートバック9(サイドサポート部7)の前端7aよりも前側の位置から当該前端7aよりも後側の位置まで形成されている。これにより、開口部12内に位置するプリテンショナ用バックル14が、車両前後方向における開口部12の内周縁にガイドされながら、サイドフレーム34とリクライニングレバー10との間で、シートバック9の前端7aよりも前側の位置から当該前端7aよりも後側の位置までの範囲に亘り車両前後方向に揺動できるようになっている。なお、車両衝突時にワイヤ24がシリンダ部22に引き込まれた際には、プリテンショナ用バックル14は、ワイヤ24の移動に伴い、開口部12よりも下側に移動する。
なお、この開口部12の後端部の位置は、連結部53がシートバック9の前端7aよりも後側に位置して、当該連結部53が規制部47に当接した状態(図10において実線で示す連結部53参照)において、開口部12の後端部が連結部53と当接しない位置に設定されている。これにより、連結部53が開口部12の後端部に衝突して、その衝突による異音が発生することが防止される。
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
すなわち、本実施形態によれば、スライド機構32を備えることにより、シート本体50の位置を車両前後方向に調節することができる。しかも、プリテンショナ本体52が、スライド機構32のアッパレール20に固定されているので、シートベルト4で乗員を拘束した際のシートベルト4の快適性を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、シート高さ調節機構30の動作により、シートクッション23が上下方向移動可能範囲における最下端に位置している状態(図7参照)、および、シートクッション23が上下方向移動可能範囲における最上端に位置している状態(図10参照)の双方において、連結部53をシートバック9の前端7aよりも後側に位置させることができるので、乗員Hが車両に対して乗り降りする際に、その乗り降りを連結部53が阻害するのを防止することができる。シートクッション23が上下方向移動可能範囲における最下端と最上端の間に位置している場合も同様である。
さらに、本実施形態によれば、シートクッション23のセンタピラー側の側面のうち、リクライニング機構本体56よりも車両前側の所定位置に配置され、シート高さ調節機構30の動作により、シート本体50がリフトアップされた状態で、ラップアウタプリテンショナ21の連結部53が上記所定位置よりもリクライニング機構本体56に接近することを規制する規制部47を備えているので、シート本体50をリフトアップする際にラップアウタプリテンショナ21の連結部53がリクライニング機構本体56と干渉するのを防止することができる。
つまり、本実施形態では、ラップアウタプリテンショナ21の連結部53が、車幅方向におけるシートバック9とリクライニングレバー10との間に配置されているため、連結部53はリクライニングレバー10とは干渉しない。しかも、シート高さ調節機構30の動作により、リクライニング機構本体56がラップアウタプリテンショナ21の連結部53に対して後側かつ下側から近づくように移動する(前進しながらリフトアップされる)場合に、規制部47によりリクライニング機構本体56に対する連結部53の接近が規制されるので、連結部53がリクライニング機構本体56と干渉することが防止され、リクライニング機構31による傾斜角度調節操作が阻害されるのを防止することができる。
また、本実施形態によれば、乗員Hがシートベルト4を着用することにより、ラップベルト4bがシートバック9よりも前側に位置し、これに伴い連結部53がシートバック9よりも前側に位置している場合に、規制部47が連結部53と干渉しない。このため、車両衝突時に連結部53がワイヤ24とともにプリテンショナ本体52側へ移動するときに、規制部47がその移動を阻害するのを防止することができ、ラップアウタプリテンショナ21を適切に作動させることができる。
また、本実施形態によれば、規制部47は、リクライニング用ブラケット36から突出する突起部であるので、規制部47を比較的簡単に規制部を構成することができ、製造コストを低減することができる。
また、本実施形態によれば、連結部53がリクライニング機構31に接近するのを規制部47が規制する際に、連結部53と規制部47との接触による異音が発生するのを抑制することができる。詳しく説明すると、規制部47がリクライニング機構31との接近を規制する際に、規制部47が当接する連結部53の取付部54は外側が軟質性材料で構成されているので、規制部47と取付部54が当接する際に異音が発生するのを抑制することができる。
なお、上記実施形態においては、規制部47がリクライニング用ブラケット36のブラケット本体36bと同一材料により一体に成型されているが、ブラケット本体36bとは別体に構成して、ブラケット本体36bに取り付けられていてもよい。また、規制部47は、リクライニング用ブラケット36以外の部材、例えば、メインフレーム55に設けられていてもよい。
また、上記実施形態においては、規制部47を連結部53の取付部54に当接させることで、連結部53がリクライニング機構31と干渉するのを防止しているが、規制部47を連結部53のプリテンショナ用バックル14に当接させることで、連結部53がリクライニング機構31と干渉するのを防止してもよい。