以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るロータ2を備える回転電機100を回転軸に垂直な方向に切断した断面を示す断面図である。
回転電機100は、モータ及び発電機の少なくとも一方として機能する。回転電機100は、回転可能な回転軸としてのシャフト1と、シャフト1に一体的に固定されるロータ2と、ロータ2の外周側にロータ2と所定の空隙を介して配設されるステータ3と、を備える。
ロータ2は、シャフト1の外周に固定されてシャフト1とともに回転するロータコア21と、ロータコア21の外周面に周方向に亘って等間隔で配設される永久磁石22と、永久磁石22が取り付けられたロータコア21を収容するロータカバー23と、を備える。
ステータ3は、ロータ2と所定の空隙を介してロータ2を取り囲むように配設される円環状のステータコア31と、ステータコア31に巻装される巻線32と、を備える。
ステータコア31は、環状のヨーク部33と、ヨーク部33から径方向内側に向けて突設され周方向に所定の間隔で配置される複数のティース34と、隣接するティース34によってヨーク部33の内周側に画成されるスロット35と、を有する。
巻線32は、ステータコア31のティース34に巻回され、各ティース34にはコイルが形成される。巻線32の端末は、ステータ3に設けられる電極(図示せず)に接続される。電極を介してコイルに電力が供給されるとステータコア31が磁化し、ロータ2の永久磁石22との作用によってロータ2がシャフト1を軸として回転する。
図2は、本実施形態におけるロータ2を示す斜視図である。図3は、ロータ2をシャフト1の回転軸を含む平面で切断した断面を示す断面図である。
ロータカバー23は、永久磁石22が取り付けられたロータコア21を収容する非磁性のステンレス鋼から成る有底筒状に形成される。ロータカバー23は、ロータコア21の外周を覆う円筒状の円筒部24と、ロータコア21の軸方向一方側(図3中右側)の端部に当接する底部25と、ロータコア21の軸方向他方側(図3中左側)の端部に当接する上面部26と、を有する。
底部25は、軸方向に垂直な面を有するとともに中央にシャフト1より大径の孔25aを有する円環状に形成される。円筒部24の端部と底部25の外周端とは、円筒部24の端部から軸方向に突出する突出部27を介して接続される。
上面部26は、軸方向に垂直な面を有するとともに中央にシャフト1より大径の孔26aを有する円環状に形成される。上面部26は、円筒部24の軸方向他方側の端部を径方向内側に折り曲げて形成される。円筒部24と上面部26との間には円環状の角部28が形成され、角部28には周方向に隣接する永久磁石22間に溝部29(図2参照)が窪んで形成される。溝部29は、角部28を形成する際にともに形成され、ロータコア21に対するロータカバー23の回り止めとして機能する。
また、底部25の孔25a及び上面部26の孔26aはロータコア21より大径に形成される。底部25及び上面部26は、永久磁石22の側面を覆い隠すように延設される。
次に、図4から図8を参照して、ロータ2を製造するロータ製造装置10について説明する。図4は、ロータ製造装置10を示す構成図であり、ロータカバー23の上面部26を形成する前の状態を示す図である。
ロータ製造装置10は、図4に示すように、油圧によって略鉛直方向に駆動されるスライド部12が金型部40を押圧することにより、ロータカバー23の上面部26を形成する油圧プレス装置である。ロータ製造装置10は、他の液圧プレス装置でもよく、機械プレス装置でもよい。また、ロータ製造装置10は、空気圧によって駆動されるプレス装置でもよい。
ロータ製造装置10は、略水平に設けられるボルスタ11と、ボルスタ11に対して略鉛直方向に沿って上下動するスライド部12と、ボルスタ11に載置されスライド部12の移動によってロータカバー23の上面部26を形成する金型部40と、を備える。
スライド部12は、動力源としての油圧を伝達する駆動機構(図示せず)により、ボルスタ11に対して略鉛直方向(図4中上下方向)に沿って駆動される。スライド部12は、下方に向かうにつれて径が大きくなる曲面状のスライドテーパ面13aを内側に有して環状に形成されると共に金型部40に当接するスライド当接部13を有する。駆動機構によりスライド部12が下方に移動し、スライド当接部13を介して金型部40が押圧されることにより、ロータカバー23の上面部26が形成される。
金型部40は、ボルスタ11に載置されロータカバー23を収容する規制部材としての外型41と、ロータカバー23における軸方向端部を径方向内側へ向けて押圧して円環状の角部28を形成する押圧部材としての複数の外側コレット42と、ロータカバー23の軸方向端部の内周を径方向外側へ向けて押圧して保持する保持部材としての複数の内側コレット43と、を備える。
外型41は、内径がロータカバー23の円筒部24の外径とほぼ等しく設定された円筒状部材であり、後述するロータカバー23の押し込み時にロータカバー23の円筒部24が径方向外側に膨出することを規制する。外型41の内側には、ロータカバー23が載置されるカラー部材41aが設けられる。カラー部材41aの厚さを調整することにより、外型41の軸方向端部から突出するロータカバー23の突出量及び外型41の上端とロータコア21の上端との間のクリアランスが調整される。
外側コレット42は、周方向に分割され環状に並べられて外型41に載置される。図5(A)に示すように、外側コレット42の外周は、下部に向かうにつれて外径が大きくなるように中心軸から傾斜する曲面状の外側テーパ面42aとして形成される。各外側コレット42は、隣り合う外側コレット42が互いに当接した状態で円錐台形状になるように形成される。スライド部12の下方への移動によりスライド当接部13が外側コレット42の外側テーパ面42aをロータコア21へ向かって図4中下方へ押圧することによって、外側コレット42は外型41の上部において径方向内側へ向かって移動する。これにより、外側コレット42は、ロータカバー23における軸方向端部を径方向内側へ向けて押圧する。外側コレット42が円錐台形状に形成され、スライド当接部13のスライドテーパ面13aと外側テーパ面42aとが当接することにより、スライド当接部13と外側コレット42の周方向の位置合わせをする必要がなく、容易にスライド当接部13によって外側コレット42を押圧することができる。
なお、複数の外側コレット42の外周面は、図5(B)に示すように、曲面ではなく、それぞれ平面状の押圧テーパ平面42bとして形成されてもよい。この場合には、曲面の加工と比較して、外側コレット42及びスライド当接部13を形成する加工が容易となる。また、スライド当接部13に平面状のテーパ面を形成することにより、外側コレット42とスライド当接部13とは平面で接触する。これにより、曲面で接触する場合と比較してスライド当接部13から外側コレット42への押圧力の伝達が容易となり、より大きな押圧力を外側コレット42に付与することができる。したがって、ロータカバー23の上面部26を形成する加工速度を上昇させ、サイクルタイムを向上させることができる。
図6(A)は図5(A)におけるA−A線に沿った断面図であり、図6(B)は図5(A)におけるB矢視図である。外側コレット42は、ロータカバー23と接触する面とロータコア21に対向する面との間に形成される第1外側面取り部42cと(図6(A)参照)、ロータカバー23と接触する面と隣り合う外側コレット42に対向する面との間に形成される第2外側面取り部42dと(図6(B)参照)、を有する。第1外側面取り部42c及び第2外側面取り部42dは、R面取りとして形成される。外側コレット42が第1外側面取り部42c及び第2外側面取り部42dを有することにより、面取りされていない角を有する場合と比較して、ロータカバー23が押し込まれる際に、外側コレット42とロータカバー23との接触が滑らかになる。これにより、外側コレット42によってロータカバー23を径方向内側に向けて押し込む際のロータカバー23の破断を防止することができる。第1外側面取り部42c及び第2外側面取り部42dは、R面取りに限らず、C面取りとして形成してもよい。
内側コレット43は、図4及び図7に示すように、周方向に分割されて環状に並べられて、ロータカバー23に収容されたロータコア21の上部に設けられる。内側コレット43は、ロータカバー23の軸方向端部の内周を径方向外側へ向けて押圧することにより、外側コレット42との間でロータカバー23を保持する。内側コレット43の内周側には、ロータコア21へ向かうにつれて径が小さくなる曲面状のテーパ面43aが形成される。
図8(A)は図7(A)におけるC−C線に沿った断面図であり、図8(B)は図7(A)におけるD矢視図である。内側コレット43は、ロータカバー23と接触する面とロータコア21に対向する面との間に形成される第1内側面取り部43bと(図8(A)参照)、ロータカバー23と接触する面と隣り合う内側コレット43に対向する面との間に形成される第2内側面取り部43cと(図8(B)参照)、を有する。第1内側面取り部43b及び第2内側面取り部43cは、R面取りとして形成される。内側コレット43が第1内側面取り部43b及び第2内側面取り部43cを有することにより、面取りされていない角部を有する場合と比較して、外側コレット42によってロータカバー23が押し込まれる際に、内側コレット43とロータカバー23との接触が滑らかになる。これにより、外側コレット42によってロータカバー23を径方向内側へ押し込む際のロータカバー23の破断を防止することができる。第1内側面取り部43b及び第2内側面取り部43cは、R面取りに限らず、C面取りとして形成してもよい。
ロータ製造装置10は、図4に示すように、ロータコア21に対する外側コレット42の軸方向の位置を規定する押圧補助部材14と、ロータコア21に対する内側コレット43の軸方向の位置を規定する当接部材としての円錐部15と、をさらに備える。
押圧補助部材14は、ボルスタ11に対して上下動可能に設けられ、外側コレット42の上面に当接することによりロータコア21に対する外側コレット42の軸方向の位置を規定する。押圧補助部材14は、スライド部12とは連動せず、独立してボルスタ11に対して上下動する。押圧補助部材14は、複数の外側コレット42の上面全てに当接する円盤状部材である。押圧補助部材14が外側コレット42の上面に当接することにより、ロータカバー23を径方向内側に押し込む際に、外側コレット42がロータコア21から軸方向に離れて浮き上がることが防止される。
円錐部15は、内側コレット43に形成されるテーパ面43aに対応した外周面としての当接テーパ面15aを有する。円錐部15は、当接テーパ面15aが内側コレット43のテーパ面43aに当接した状態で、内側コレット43に収容される。円錐部15は、内側コレット43に収容された状態で先端におもり15bが取り付けられ、自重及びおもり15bの重さによって内側コレット43をロータコア21に向かって(図4中下方向)押圧する。内側コレット43は、テーパ面43aによって円錐部15と当接するため、ロータコア21に向かって押圧されると共に、径方向外側(図4中左右方向)に向かって押圧される。これにより、ロータコア21から軸方向に離れる内側コレット43の浮き上がりが防止されると共に、ロータカバー23を外側コレット42及び内側コレット43によって所定の保持力で保持することができる。このように、円錐部15は、内側コレット43をロータコア21へ向かって下方へ押圧することにより、ロータコア21に対する内側コレット43の軸方向の位置を規定する。
次に、ロータ2の製造方法について図9〜図21を参照しながら説明する。なお、図12〜図14、図17、図18、図20、及び図21では、外側コレット42における外側テーパ面42aの図示を省略する。
初めに、ロータコア21の外周面に複数の永久磁石22を取り付ける。永久磁石22は、周方向に亘って等間隔に配置されるように接着剤などを用いて取り付けられる。
続いて、図9に示すように、予め底部25が形成されたロータカバー23の開口端から、永久磁石22が取り付けられたロータコア21を入れてロータカバー23内に収容する。この段階ではまだ上面部26が形成されていないので、ロータコア21をロータカバー23の底部25に当接するまで入れると、図10に示すように、ロータカバー23の開口端はロータコア21の上端より上方に位置することになる。
続いて、図11に示すように、ロータカバー23を外型41に収容して、カラー部材41a(図4参照)上に載置する。カラー部材41aの厚さを調整することにより、外型41の上端とロータコア21の上端との間のクリアランス、即ち外型41の高さ位置と外型41内のロータコア21の高さ位置との差が調整される。外型41の上端とロータコア21の上端との間のクリアランスは、加工前のロータカバー23の板厚以下に設定され、外型41の高さとロータコア21の高さとがほぼ同一になるように調整される(図4参照)。これにより、後述する上面部26の形成後における軸方向のがたの発生を防止することができる。
続いて、図12(A)に示すように、外型41の上部に周方向に分割された複数の外側コレット42を環状に並べて配置する。各外側コレット42は、周方向に所定の隙間を有した状態でロータカバー23の開口端の外周面に当接するように配置される。
さらに、周方向に分割された複数の内側コレット43をロータコア21の上部であってロータカバー23の内周側に環状に並べて配置する。各内側コレット43は、周方向に所定の隙間を有した状態でロータカバー23の開口端の内周面に当接するように配置される。
各外側コレット42及び各内側コレット43は、それぞれ永久磁石22の個数の半分の数に分割されている。すなわち、各外側コレット42及び各内側コレット43は永久磁石22の2つ分の大きさである。図13に示すように、各外側コレット42の隙間及び各内側コレット43の隙間は、それぞれロータコア21の周方向に隣接する永久磁石22間に位置する。さらに、各外側コレット42の隙間と各内側コレット43の隙間とは、それぞれ周方向に永久磁石22一つ分ずつずれて配置される。なお、各外側コレット42及び各内側コレット43は、それぞれ永久磁石22の個数の半分の数に限らず、任意の数に分割されてもよい。例えば、各外側コレット42及び各内側コレット43は、永久磁石22と同数に分割されてもよい。それぞれ永久磁石22と同数に分割される場合には、各外側コレット42間の隙間は、ロータカバー23を挟んで各内側コレット43の周方向中央に対向して、各内側コレット43間の隙間とは周方向にずれて配置される。
次に、図13に示すように、内側コレット43のテーパ面43aと円錐部15の当接テーパ面15aとが当接するように、円錐部15を内側コレット43の内側に収容する。円錐部15が内側コレット43の内側に収容されると、円錐部15の先端におもり15bが取り付けられる(図4参照)。これにより、円錐部15は、内側コレット43をロータコア21へ向かう方向(図4中下方向)及び径方向外側(図4中左右方向)へ向かって押圧する。このため、内側コレット43がロータコア21から軸方向に離れる浮き上がりが防止されると共に、内側コレット43によってロータカバー23に径方向外側へ向かう押圧力が付与される。円錐部15がロータカバー23へ付与する押圧力は、おもり15bの重さを変更することで調整される。円錐部15によるロータカバー23への押圧力は、おもり15bを使用せず円錐部15の自重のみによって付与されるものでもよいし、アクチュエータ等によりおもり15b以外の手段によって付与されるものでもよい。
次に、押圧補助部材14を下方に移動させて、各外側コレット42の上部に当接させる(図4参照)。押圧補助部材14は、外側コレット42に当接した状態で、上下方向に移動しないように固定される。これにより、外側コレット42のロータコア21に対する軸方向の位置が規定される。このように、押圧補助部材14が外側コレット42の上部に当接することにより、ロータカバー23を径方向内側に押圧する際におけるロータコア21から軸方向に離れるような外側コレット42の浮き上がりが防止される。押圧補助部材14は、アクチュエータ等によって移動するものでもよいし、ねじ機構等によって手動で移動するものでもよい。
続いて、円錐部15により内側コレット43を径方向外側に向けて押圧した状態で、スライド部12を下方に移動させてスライド当接部13のスライドテーパ面13aを外側コレット42の外側テーパ面42aに当接させる。スライド当接部13のスライドテーパ面13aと外側コレット42の外側テーパ面42aとが当接した状態で、スライド部12をさらに下方に移動させることにより、外側コレット42を径方向内側に向けて押圧する。このとき、外側コレット42に作用する径方向内側への押圧力は、内側コレット43に作用する径方向外側への押圧力を上回るように設定される。これにより、外側コレット42が径方向内側へ移動し、外側コレット42の移動に伴い円錐部15が上方に移動して内側コレット43が径方向内側へ移動する。
よって、ロータカバー23の開口端は、内側コレット43によって内周側から保持された状態で外側コレット42によって径方向内側へ向けて押し込まれる。この際、外側コレット42は押圧補助部材14によって軸方向の位置が規定され、内側コレット43は円錐部15によって軸方向の位置が規定される。したがって、外側コレット42及び内側コレット43は、それぞれ押圧補助部材14及び円錐部15によってロータコア21から軸方向に離れるような浮き上がりが防止された状態で、ロータカバー23を径方向内側へ押圧する。
ロータカバー23の径方向内側へ向けて押し込まれる部分は、外側コレット42及び内側コレット43によって径方向内側へ引っ張られるだけであってもよいし、引き抜き加工のように引き伸ばされてもよい。引っ張りとするか引き伸ばしとするかは、外側コレット42及び内側コレット43の押圧力の関係によって調整される。言い換えれば、外側コレット42及び内側コレット43の押圧力がしわ押さえ力としてロータカバー23に付与されながら、ロータカバー23の軸方向端部が径方向内側へ折り曲げられるものでもよいし、外側コレット42及び内側コレット43の押圧力によってロータカバー23の板厚を積極的に減少させるものでもよい。引っ張り又は引き伸ばしに際して、ロータカバー23の径方向内側へ向けて押し込まれる部分には、しわが形成されていてもよいし、形成されなくてもよい。
また、外側コレット42は、径方向内側に向けて押圧されるのに加えて軸方向下方にも押圧される。これにより、上面部26が完成した際のスプリングバックを低減することができる。外側コレット42の軸方向下方への押圧は、外側コレット42の自重又は外部応力の付加によって行われ、外側コレット42が径方向内側に充分移動した後に行われる。
ロータカバー23の開口端は、図14に示すように、外側コレット42及び内側コレット43の各隙間が減少するように径方向内側に押し込まれる。これにより、外側コレット42及び内側コレット43を取り除くと、図15に示すように、ロータカバー23の開口端は円筒部24より径方向内側に折り曲げられて円環状の角部28が形成される。さらに、円環状の角部28が形成されると共に、ロータカバー23の開口端の一部が角部28における隣接する永久磁石22間に入り込み溝部29が形成される。溝部29は、隣接する永久磁石22間の境界に形成される。
このように、ロータコア21の端部から軸方向に突出するロータカバー23の軸方向端部を径方向内側へ向けて押圧する外側コレット42のロータコア21に対する軸方向位置を押圧補助部材14で規定しながら、ロータカバー23に円環状の角部28とロータカバー23における周方向に隣接する永久磁石22間に窪む溝部29とが形成される。
なお、溝部29は、図2及び図15に示すように、ロータカバー23の開口端であって円筒部24より径方向内側に折り曲げられた部分から軸方向及び径方向に形成されていてもよいし、径方向のみに形成されていてもよい。図16は、図15の範囲Eを拡大して外型41を取り外した状態を示す拡大図であり、溝部29が径方向のみに形成される場合を示す図である。この場合、しわ部71が上面部26に形成され、このしわ部71の形成時に余った肉が軸方向に逃げる力で窪むことで溝部29が形成される。溝部29には、図16に示すように、溝部29の両縁に形成される2つの溝72間から突出するしわ部71が形成される。
続いて、図17に示すように、外側コレット52をロータカバー23の開口端の外周側に配置するとともに、内側コレット53をロータカバー23の開口端の内周側に配置する。ここで、ロータカバー23の開口端は図13から図14へ移行する間に外側コレット42及び内側コレット43によって径方向内側に折り曲げられて縮径されているので、外側コレット52は、図13における外側コレット42より径方向の厚みが大きくなるように設定され、内側コレット53は、図13における内側コレット43より径方向の寸法が小さくなるように設定される。
各外側コレット52及び各内側コレット53は、それぞれ永久磁石22の個数の半分の数に分割されている。すなわち、各外側コレット52及び各内側コレット53は永久磁石22の2つ分の大きさである。図17に示すように、各外側コレット52の隙間及び各内側コレット53の隙間は、それぞれロータコア21の周方向に隣接する永久磁石22間に位置する。さらに、各外側コレット52の隙間と各内側コレット53の隙間とは、それぞれ周方向に永久磁石22一つ分ずつずれて配置される。さらに、外側コレット52の隙間は図13における外側コレット42の隙間とは周方向にずれて配置され、内側コレット53の隙間は図13における内側コレット43の隙間とは周方向にずれて配置される。
次に、内側コレット53の内側に円錐部15を収容する。これにより、上述したように、ロータコア21に対する内側コレット53の軸方向の位置が規定されると共に、ロータカバー23に径方向外側への押圧力が付与される。これに続いて、押圧補助部材14を移動させて、外側コレット52の上部に当接させ、ロータコア21に対する外側コレット52の軸方向の位置を規定する。
続いて、内側コレット53を径方向外側に向けて押圧した状態で外側コレット52を径方向内側に向けて押圧する。この際、上記角部28を形成する工程と同様に、外側コレット52の押圧力は内側コレット53の押圧力を上回るように設定される。これにより、ロータカバー23の開口端は、内側コレット53によって内周側から保持された状態で外側コレット52によって径方向内側へ向けて押し込まれる。
また、この際においても、上記角部28を形成する工程と同様に、ロータカバー23の径方向内側へ向けて押し込まれる部分は、外側コレット52及び内側コレット53によって径方向内側へ引っ張られるだけであってもよいし、引き抜き加工のように引き伸ばされてもよい。引っ張りとするか引き伸ばしとするかは、外側コレット52及び内側コレット53の押圧力の関係によって調整される。また、引っ張り又は引き伸ばしに際して、ロータカバー23の径方向内側へ向けて押し込まれる部分にしわが形成されていてもよいし、形成されなくてもよい。
また、外側コレット52は、径方向内側に向けて押圧されるのに加えて軸方向下方にも押圧される。これにより、上面部26が完成した際のスプリングバックを低減することができる。外側コレット52の軸方向下方への押圧は、外側コレット52の自重又は外部応力の付加によって行われ、外側コレット52が径方向内側に充分移動した後に行われる。
ロータカバー23の開口端は、図18に示すように、外側コレット52及び内側コレット53の各隙間が減少するように径方向内側に押し込まれる。これにより、外側コレット52及び内側コレット53を取り除くと、図19に示すように、ロータカバー23の開口端は円筒部24よりさらに径方向内側に押し込まれる。このとき、ロータカバー23の開口端の一部が角部28における隣接する永久磁石22間に入り込み溝部29が形成される。溝部29は、隣接する永久磁石22間の境界に形成される。
続いて、図20に示すように、外側コレット62をロータカバー23の開口端の外周側に配置する。ここで、ロータカバー23の開口端は図17から図18へ移行する間に外側コレット52及び内側コレット53によって径方向内側に押し込まれて縮径されているので、外側コレット62は、図17における外側コレット52より径方向の厚みが大きくなるように設定される。
各外側コレット62は、永久磁石22の個数の半分の数に分割されている。すなわち、各外側コレット62は永久磁石22の2つ分の大きさである。図20に示すように、各外側コレット62の隙間は、それぞれロータコア21の周方向に隣接する永久磁石22間に位置する。さらに、外側コレット62の隙間は図17における外側コレット52の隙間とは周方向に永久磁石22一つ分ずつずれて配置される。
次に、押圧補助部材14を移動させ、外側コレット62の上部に当接させて、ロータコア21に対する外側コレット62の軸方向の位置を規定する。
続いて、外側コレット62を径方向内側に向けて押圧する。これにより、ロータカバー23の開口端は、外側コレット62によって径方向内側へ向けてさらに押し込まれる。このとき、上記角部28を形成する工程と同様に、ロータカバー23の径方向内側へ向けて押し込まれる部分は、外側コレット62によって径方向内側へ引っ張られるだけであってもよいし、引き抜き加工のように引き伸ばされてもよい。また、引っ張り又は引き伸ばしに際して、ロータカバー23の径方向内側へ向けて押し込まれる部分にしわが形成されていてもよいし、形成されなくてもよい。
また、外側コレット62は、径方向内側に向けて押圧されるのに加えて軸方向下方にも押圧される。これにより、上面部26が完成した際のスプリングバックを低減することができる。外側コレット62の軸方向下方への押圧は、外側コレット62の自重又は外部応力の付加によって行われ、外側コレット62が径方向内側に充分移動した後に行われる。
ロータカバー23の開口端は、図21に示すように、外側コレット62の隙間が減少するように径方向内側に押し込まれる。これにより、外側コレット62を取り除くと、図22に示すように、ロータカバー23の開口端は円筒部24よりさらに径方向内側に押し込まれて上面部26が形成される。このとき、ロータカバー23の開口端の一部が角部28における隣接する永久磁石22間に入り込み溝部29が形成される。
続いて、外型41が取り外され、ロータコア21の中央にシャフト1が挿入される。これにより、図2に示すように、シャフト1を有するロータ2が完成する。
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
ロータカバー23の円環状の角部28が形成される時に永久磁石22間に溝部29が窪んで形成されるので、ロータカバー23の周方向の回転を規制することができる。よって、ロータカバー23の回り止めを行いながらロータ2製造時の工数の増加を抑えることができる。
さらに、ロータ2が単一のロータカバー23から構成されるので、ロータ2の製造コストを低減することができる。
さらに、溝部29は、角部28における隣接する永久磁石22間に形成される。ロータカバーの内周面にロータコアとの回り止めを別途加工する場合には、ロータカバーを被せるための内径クリアランスに加えて、ロータカバーとロータコアとを周方向に引っ掛ける部分に対してのクリアランスを取ることが必要となり、ロータカバーをセットした場合にロータコアに完全にフィットさせることは困難である。これに対して、第1実施形態では、ロータカバー23を周方向から絞り加工のように押圧してロータコア21の外周の永久磁石22に密着させるので、永久磁石22の軸方向端部付近においてはロータカバー23の内径クリアランスがなくなるように加工される。よって、加工時に形成される溝部29は、クリアランスをなくすような働きを有するので、ロータカバー23の回り止めをより確実に行うことができる。さらに、溝部29は、角部28における隣接する永久磁石22間に形成されるので、角部28及び上面部26によってロータカバー23が軸方向に対して磁石にフィットする。よって、ロータカバー23における軸方向のずれ及びがたの発生を防止することができる。
さらに、ロータカバー23の上面部26の内径はロータコア21の外径より小さいので、永久磁石22が破損した際に破片が飛散することを防止することができる。
さらに、ロータカバー23の開口端を全周から径方向内側へ向けて押圧する外側コレット42、52、62によってロータカバー23の開口端を径方向内側に折り曲げて円環状の角部28とロータカバー23における周方向に隣接する永久磁石22間に窪む溝部29とを形成するので、ロータカバー23内にロータコア21を収容してロータカバー23の開口端を径方向内側に折り曲げるだけでロータカバー23の回り止めを行うことができる。よって、ロータカバー23の回り止めのために新たな加工を施す必要がないのでロータ2の製造コストを低減することができる。
さらに、外側コレット42、52、62によってロータカバー23の開口端を径方向内側に折り曲げる際に、外型41をロータカバー23の外周に配置することでロータカバー23の円筒部24が径方向外側に膨出することを規制するので、ロータカバー23が変形してロータ2の外径が大きくなることを防止することができる。
さらに、外側コレット42、52、62によってロータカバー23の開口端を径方向内側に折り曲げる際に内側コレット43によってロータカバー23の開口端の内周を全周に亘って保持するので、ロータカバー23の開口端が径方向内側に折り曲げられる際にロータカバー23に生じるしわを低減することができる。
さらに、外側コレット42、52、62の隙間と内側コレット43の隙間とが対向する場合には、ロータカバー23の肉が外側コレット42、52、62の隙間及び内側コレット43の隙間に噛み込まれるおそれがある。これに対して、本実施形態では、周方向に隣接する外側コレット42、52、62間の隙間と周方向に隣接する内側コレット43間の隙間とは周方向にずれている。よって、ロータカバー23の肉が外側コレット42、52、62の隙間及び内側コレット43の隙間に噛み込まれることを防止することができる。
さらに、外側コレット42、52、62は周方向に隣接する外側コレット42、52、62間の隙間が周方向に隣接する永久磁石22間に位置するように配置され、内側コレット43は周方向に隣接する内側コレット43間の隙間が周方向に隣接する永久磁石22間に位置するように配置されるので、ロータカバー23の肉の逃げ部が永久磁石22間に配置されることで永久磁石22間に溝部29をより確実に形成することができる。
さらに、図4に示すように、外型41の高さは、ロータコア21の高さとほぼ同一に設定されるので、外側コレット42の高さ方向の位置決めを行うことができる。これにより、外側コレット42を径方向内側に向けて押圧する工程を安定して行うことができる。さらに、外側コレット42、52、62は、径方向内側に向けて押圧させるのに加えて軸方向下方にも押圧させるので、ロータカバー23の上面部26のスプリングバックを低減することができる。
さらに、外側コレット42、52、62及び内側コレット43、53は、押圧補助部材14及び円錐部15によってそれぞれロータコア21に対する軸方向の位置が規定される。このため、外側コレット42、52、62及び内側コレット43、53によってロータカバー23を径方向内側に押し込む際に、ロータコア21から軸方向に離れて浮き上がることが防止され、ロータカバー23の上面部26を精度よく形成することができる。
さらに、円錐部15は、内側コレット43、53の内側のテーパ面43aに対応する外周面を有する円錐状に形成されるため、ロータコア21へ向かう方向及び径方向外側の両方に向かって内側コレット43、53を押圧することができる。したがって、ロータコア21に対する内側コレット43、53の軸方向の位置を規定すると共に、ロータカバー23に径方向外側へ向かう押圧力をしわ押さえ力として付与することができる。
さらに、外側コレット42、52、62は、R面取りとして形成される第1外側面取り部42c及び第2外側面取り部42dを有する。また、内側コレット43、53は、R面取りとして形成される第1内側面取り部43b及び第2内側面取り部43cを有する。このため、外側コレット42、52、62及び内側コレット43、53は、ロータカバー23に接触しながら径方向内側に滑らかに移動することができる。したがって、外側コレット42、52、62及び内側コレット43、53によりロータカバー23を径方向内側に向けて押し込む際のロータカバー23の破断を防止することができる。
(第2実施形態)
次に、図23を参照して本発明の第2実施形態に係るロータ製造装置110ついて説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態のロータ製造装置10と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
第1実施形態では、当接部材は、内側コレット43、53の内側に形成されるテーパ面43aに対応する外周面を有する円錐部15である。第1実施形態の円錐部15は、内側コレット43、53の内側に収容されて、ロータコア21へ向かう方向及び径方向外側へ向かう方向に内側コレット43、53を押圧する。
これに対して、第2実施形態に係るロータ製造装置110の当接部材は、図24に示すように、外側コレット42に設けられロータコア21とは反対側の内側コレットの端面に当接する突起部115である。この点において、第2実施形態に係るロータ製造装置110は、ロータ製造装置10とは相違する。
突起部115は、外側コレット42の上部内側から径方向内側に向かって突出して内側コレット43の上面に当接する。押圧補助部材14によってロータコア21に対する軸方向の外側コレット42の位置が規定されることにより、外側コレット42に形成される突起部115によってロータコア21に対する内側コレット43の軸方向の位置も規定される。このように、内側コレット43は、突起部115がロータコア21とは反対側の端面に当接することにより、ロータコア21に対する軸方向の位置が規定される。なお、突起部115は、内側コレット43が軸方向に浮き上がるような状態になると内側コレット43に当接するものであればよく、上面部26の加工を行う前の外側コレット42を外型41に載置した状態では、内側コレット43との間に隙間を有するものでもよい。
ロータ製造装置110は、図23に示すように、当接部材として、突起部115に加え、上記第1実施形態に係るロータ製造装置10の円錐部15をさらに有していてもよい。この場合には、例えば、円錐部15の当接テーパ面15aにおける中心軸からのテーパ角を小さくすることにより円錐部15は主として内側コレット43を介してロータカバー23を径方向外側へ押圧し、突起部115が主として内側コレット43の浮き上がりを防止する当接部材の機能を発揮するものでもよい。これにより、おもり15b等によって円錐部15に付与する外力を小さくすることができるため、ロータ製造装置110を小型化することができる。このように、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせてもよい。
以上の第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏する。
以下に、各実施形態についての構成、作用、及び効果について説明する。
上記各実施形態では、ロータ製造方法は、シャフト1に一体回転可能に固定され周方向に亘って複数の永久磁石22が取り付けられたロータコア21を備えるロータ2を製造するロータ製造方法であって、円筒状のロータカバー23をロータコア21の外周に被せる工程と、ロータコア21に対する軸方向の位置が押圧補助部材14で規定されながら移動する複数の外側コレット42によってロータコア21の端部から軸方向に突出するロータカバー23の軸方向端部を径方向内側へ向けて押圧してロータカバー23に円環状の角部28とロータカバー23における周方向に隣接する永久磁石22間に窪む溝部29とを形成する工程と、を含むことを特徴とする。
この構成では、ロータカバー23の円環状の角部28が形成される時に永久磁石22間に溝部29が窪んで形成されるので、ロータカバー23の周方向の回転が規制される。
この構成によれば、ロータカバー23の回り止めを行いながらロータ2製造時の工数の増加を抑えることができる。
また、この構成によれば、外側コレット42は、押圧補助部材14によってロータコア21に対する軸方向の位置が規定される。このため、外側コレット42によってロータカバー23を径方向内側に押し込む際に、ロータコア21から軸方向に離れて浮き上がることが防止され、ロータカバー23の上面部26を精度よく形成することができる。
また、上記各実施形態では、角部28と溝部29とを形成する工程では、ロータカバー23の軸方向端部の内周を径方向外側へ向けて押圧する保持部材を配置した状態でロータカバー23を径方向内側へ向けて押圧し、保持部材のロータコア21に対する軸方向の位置は、保持部材に当接する当接部材によって規定されることを特徴とする。
この構成では、外側コレット42によってロータカバー23の軸方向端部を径方向内側に押圧する際に保持部材によってロータカバー23の軸方向端部の内周を全周に亘って保持する。保持部材は、当接部材によってロータコア21に対する軸方向の位置が規定される。
この構成によれば、ロータカバー23の軸方向端部が径方向内側に押圧される際にロータカバー23に生じるしわを低減することができる。また、保持部材がロータコア21から軸方向に離れて浮き上がることが防止され、ロータカバー23を精度よく形成することができる。
また、上記各実施形態では、保持部材が、周方向に分割されて環状に並べられる複数の内側コレット43を有し、内側コレット43の内周側には、ロータコア21へ向かうにつれて径が小さくなるテーパ面43aが形成され、当接部材としての円錐部15が、内側コレット43のテーパ面43aに対応した外周面15aを有し、内側コレット43は、円錐部15の外周面15aが内側コレット43のテーパ面43aに当接して、ロータコア21に向かって押圧されると共に、径方向外側に押圧されることを特徴とする。
この構成では、円錐部15が内側コレット43のテーパ面43aに対応する外周面15aにおいて内側コレット43に当接するため、内側コレット43はロータコア21へ向かう方向及び径方向外側の両方に向かって押圧される。
この構成によれば、ロータコア21に対する内側コレット43の軸方向の位置を規定すると共に、ロータカバー23に径方向外側へ向かう押圧力をしわ押さえ力として付与することができる。
また、上記第2実施形態では、内側コレット43は、当接部材としての突起部115がロータコア21とは反対側の端面に当接することによってロータコア21に対する軸方向の位置が規定されることを特徴とする。
この構成では、突起部115が内側コレット43におけるロータコア21とは反対側の端面に当接することにより、ロータコア21に対する内側コレット43の軸方向の位置が規定される。
この構成によれば、内側コレット43がロータコア21から軸方向に離れて浮き上がることが防止され、ロータカバー23を精度よく形成することができる。
また、上記各実施形態では、ロータ製造装置10、110は、周方向に亘って複数の永久磁石22が取り付けられたロータコア21を備えるロータ2を製造するロータ製造装置であって、円筒状のロータカバー23における軸方向端部を径方向内側へ向けて押圧する押圧部材と、ロータコア21に対する押圧部材の軸方向の位置を規定する押圧補助部材14と、を備えることを特徴とする。
この構成では、ロータカバー23の円環状の角部28が形成される時に永久磁石22間に溝部29が窪んで形成されるので、ロータカバー23の周方向の回転が規制される。
この構成によれば、ロータカバー23の回り止めを行いながらロータ2製造時の工数の増加を抑えることができる。
また、この構成によれば、押圧部材は、押圧補助部材14によってロータコア21に対する軸方向の位置が規定される。このため、押圧部材によってロータカバー23を径方向内側に押し込む際に、ロータコア21から軸方向に離れて浮き上がることが防止され、ロータカバー23の上面部26を精度よく形成することができる。
また、上記各実施形態では、ロータ製造装置10、110は、ロータカバー23の軸方向端部の内周を保持する保持部材と、保持部材に当接しロータコア21に対する保持部材の軸方向の位置を規定する当接部材と、をさらに備えることを特徴とする。
この構成では、押圧部材によってロータカバー23の軸方向端部を径方向内側に押圧する際に保持部材によってロータカバー23の軸方向端部の内周を全周に亘って径方向外側へ押圧して保持する。保持部材は、当接部材によってロータコア21に対する軸方向の位置が規定される。
この構成によれば、ロータカバー23の軸方向端部が径方向内側に押圧される際にロータカバー23に生じるしわを低減することができる。また、保持部材がロータコア21から軸方向に離れて浮き上がることが防止され、ロータカバー23を精度よく形成することができる。
また、上記各実施形態では、ロータ製造装置10、110は、保持部材が、周方向に分割されて環状に並べられる複数の内側コレット43を有し、内側コレット43の内周側には、テーパ面43aが形成され、当接部材は、内側コレット43のテーパ面43aに対応した外周面15aを有する円錐状の円錐部15を有し、内側コレット43は、円錐部15の外周面15aが内側コレット43のテーパ面43aに当接して、ロータコア21に向かって押圧されると共に、径方向外側に押圧されることを特徴とする。
この構成では、円錐部15が内側コレット43のテーパ面43aに対応する外周面15aにおいて内側コレット43に当接するため、内側コレット43はロータコア21へ向かう方向及び径方向外側の両方に向かって押圧される。
この構成によれば、ロータコア21に対する内側コレット43の軸方向の位置を規定すると共に、ロータカバー23に径方向外側へ向かう押圧力をしわ押さえ力として付与することができる。
また、上記第2実施形態では、ロータ製造装置110は、当接部材が、押圧部材に設けられロータコア21とは反対側の内側コレット43の端面に当接する突起部115を有することを特徴とする。
この構成では、突起部115が内側コレット43におけるロータコアと21は反対側の端面に当接することにより、ロータコア21に対する内側コレット43の軸方向の位置が規定される。
この構成によれば、内側コレット43がロータコア21から軸方向に離れて浮き上がることが防止され、ロータカバー23を精度よく形成することができる。
また、上記各実施形態では、押圧部材が、ロータコア21に向かうにつれて外径が大きくなるように中心軸から傾斜する外側テーパ面42aを外周に有すると共に周方向に分割される複数の外側コレット42を有することを特徴とする。
この構成では、外側コレット42は、外側テーパ面42aがロータコア21に向かって押圧されることによりロータカバー23を径方向内側に押圧する。
また、上記各実施形態では、ロータ製造装置10、110は、押圧部材が周方向に分割された複数の外側コレット42を有し、外側コレット42は、ロータカバー23と接触する面とロータコア21に対向する面との間に形成される第1外側面取り部42cと、ロータカバー23と接触する面と隣り合う外側コレット42に対向する面との間に形成される第2外側面取り部42dと、を有し、内側コレット43は、ロータカバー23と接触する面とロータコア21に対向する面との間に形成される第1内側面取り部43bと、ロータカバー23と接触する面と隣り合う内側コレット43に対向する面との間に形成される第2内側面取り部43cと、を有することを特徴とする。
この構成では、外側コレット42及び内側コレット43は、ロータカバー23に接触しながら径方向内側に滑らかに移動する。
この構成によれば、外側コレット42及び内側コレット43によりロータカバー23を径方向内側に向けて押し込む際のロータカバー23の破断を防止することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記各実施形態は本発明の適用例の一つを示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記各実施形態では、溝部29が角部28における隣接する永久磁石22間に形成されているが、ロータカバー23の円筒部24に別途溝部29を形成することで回り止めの効果を向上させてもよい。また、上記各実施形態では、円環状のロータコア21の外周面に永久磁石22が密に配設されるロータ2を例示したが、ロータコア21の外周面に周方向に亘って複数の凸部が形成され、永久磁石22が凸部間に配設されるタイプのロータにも本実施形態は適用可能である。この場合、溝部29は、永久磁石22間ではなく、永久磁石22と隣接する凸部との間に形成される。
さらに、上記各実施形態では、ロータカバー23の上面部26は角部28から永久磁石22を覆い隠すまで径方向内側に延設されているが、永久磁石22の一部が露出するように延設されていてもよい。
さらに、上記各実施形態では、有底筒状のロータカバー23の一端に上面部26を形成したが、底部25を有していない筒状のロータカバー23にロータコア21を入れてからロータカバー23の両端に上面部26を形成してもよい。
さらに、上記各実施形態では、ロータカバー23の上面部26を形成するに当たって外型41を円筒部24の外周全体に配置したが、外型41を一部、又は、用いなくてもよい。
さらに、上記各実施形態では、外側コレット42、52、62を用いて3回に亘って徐々に上面部26を形成しているが、1回で上面部26を形成してもよいし、2回又は4回以上に亘って徐々に上面部26を形成してもよい。また、上記各実施形態では、外側コレット62によってロータカバー23の開口端を縮径させる場合には内側コレットを用いていないが、内側コレット43及び内側コレット53と同様に内側コレットを用いてもよい。
さらに、上記各実施形態では、外側コレット42、52、62と内側コレット43、53とを用いて上面部26を形成しているが、外側コレット62のみを用いて上面部26を形成してもよい。
さらに、上記各実施形態では、周方向に隣接する外側コレット42、52、62間の隙間と周方向に隣接する内側コレット43、53間の隙間とは周方向にずれているが、互いに対向するように配置してもよい。
さらに、上記各実施形態では、外側コレット42、52、62は周方向に隣接する外側コレット42、52、62間の隙間が周方向に隣接する永久磁石22間に位置するように配置され、内側コレット43、53は周方向に隣接する内側コレット43、53間の隙間が周方向に隣接する永久磁石22間に位置するように配置されているが、外側コレット42、52、62間の隙間及び内側コレット43、53間の隙間は、隣接する永久磁石22間に配置されていなくてもよい。
さらに、上記各実施形態では、ロータカバー23が、非磁性のステンレス鋼から構成されるとして説明したが、アルミ等の他の非磁性金属から構成されていてもよい。
さらに、上記各実施形態では、ロータカバー23の角部28には永久磁石22間に溝部29が窪んで形成されることでロータカバー23の回り止めを行っているが、溝部29を形成した後、ロータカバー23の外周面に永久磁石22間に沿って軸方向に溝を加工してもよい。
ロータカバーをロータコアの外周に被せただけの構造では、ロータカバーの外側から永久磁石間の位置を確認することができないため、永久磁石22間に沿って軸方向に溝を後加工することは困難である。しかし、上記各実施形態では、ロータカバー23を装着後であっても溝部29が永久磁石22間に形成されるため、永久磁石22間の位置を確認でき、永久磁石22間に沿って軸方向に溝を後加工することができる。これにより、後加工された溝によってロータカバー23と永久磁石22とのクリアランスがさらに小さくなるので、ロータカバー23の回り止めをより確実に行うことができる。
また、上記各実施形態において、上面部26を形成した後には、ロータカバー23の底部25からロータカバー23の内側に向かって軸方向に突出する突起部(図示省略)を形成してもよい。突起部は、例えば、ポンチなどの先端に凸部を有する打刻工具(図示省略)をロータカバー23の外側から内側(図3中右側から左側)に向かって底部25に打ち込むことにより形成される。また、突起部は、ロータコア21の端面に当接して、上面部26との間でロータコア21を挟み込むように形成される。これにより、突起部及び上面部26とロータコア21との間の摩擦力が増加し、ロータカバー23の回り止めをより確実に行うことができる。突起部は、上面部26に形成されてもよい。
また、上記各実施形態では、ロータカバー23を初めに押圧する各外側コレット42は、中心軸に垂直な断面が略円弧状に形成される(図6(B)参照)。これに対し、各外側コレット42は、図24(A)、図24(B)、及び図24(C)に示すように、環状に並べられた状態で隣り合う外側コレット42と当接可能な当接部141と、当接部141よりも径方向内側においてロータカバー23を押圧する押圧部142と、を有していてもよい。この場合には、隣り合う外側コレット42の押圧部142によって、ロータカバー23の外周に対向するコレット凹部143が形成される。より具体的に説明すると、各外側コレット42は、図24(A)に示すように、コレット凹部143が曲面と平面とによって形成されてもよいし、図24(B)に示すように、コレット凹部143が曲面のみによって形成されてもよい。また、各外側コレット42は、図24(C)に示すように、コレット凹部143が平面のみによって形成されてもよい。
外側コレット42が押圧部142を有さず、隣り合う外側コレット42が当接するまでロータカバー23を径方向内側へ押圧すると、外側コレット42間の隙間に対向するロータカバー23は、外側コレット42間の隙間に入り込んで周方向に折り曲げられる。このように周方向に折り曲げられた折曲部は、径方向の剛性が高くなる。よって、折曲部がロータカバー23に形成されると、さらに径方向内側へロータカバー23を押圧した際に、剛性が高い折曲部が変形せず、角部28や上面部26が引き伸ばされて、破断するおそれがある。
これに対し、外側コレット42が当接部141及び押圧部142を有する場合には、外側コレット42によってロータカバー23を押圧すると、コレット凹部143に対向するロータカバー23の一部が、径方向外側に膨らむ膨出部(図示省略)として形成される。膨出部は折曲部と比較して径方向の剛性が低い。このため、膨出部が形成されることにより、さらにロータカバー23を径方向内側へ押圧する際に、角部28や上面部26が引き伸ばされて破断することを防止することができる。