JP6359299B2 - 摺動部材 - Google Patents

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Description

本発明は、カム等の部材と摺動する摺動部材に関し、特に、直打式動弁機構に用いられるバルブリフタ冠面の表面構造に関する。
エネルギー、環境問題に対応して燃費を向上させるため、内燃機関の摩擦損失の低減は重要な課題となっている。内燃機関の主要な摺動部としては、動弁系、ピストン系、クランクシャフト系が挙げられる。摩擦損失はこれらの主要摺動部で75〜90%を占めており、中高速回転域ではピストンリング、ピストン、コンロッドの割合が高く、低速回転域では動弁系のフリクションの占める割合が高い。これらの摩擦損失を低減する技術は、基本的に摺動面の表面粗さを低減して摩擦抵抗を低くすること、潤滑の観点から保油性を向上した表面構造とすることを基本に様々な改良が成されている。
内燃機関の典型的な動弁系の1つにバルブリフタがある。バルブリフタは、カムとバルブとの間に配置され、カムの回転運動をバルブの開閉運動に変換する部材である。図1(A)は、バルブリフタの動弁系の一例を示す概略断面図、図1(B)は、バルブリフタが上昇しバルブが閉じたときの断面図、図1(C)は、バルブリフタが降下しバルブが開いたときの断面図である。シリンダヘッド10に形成されたボア12内に適度なクリアランスで上下動可能にバルブリフタ14が配置される。バルブリフタ14の冠面と摺動するカム16は、カムシャフト18に取付けられ、カムシャフト18はチェーン等の駆動系20によって回転される。カムシャフト18内の空間18Aに供給された潤滑油は、孔22を介してカムジャーナル部24、カムジャーナルキャップ26に供給され、さらにカムジャーナル部24を潤滑した潤滑油は、間接的にその外周部に散布され、一部がバルブリフタ14の潤滑に利用される。
カム16によって摺動されるバルブリフタ14の冠面には、摺動特性や耐摩耗性を改善させるために、イオンプレーティング法により窒化チタン膜などがコーティングされる。イオンプレーティング法により窒化チタン膜をコーティングすると、表面にはドロップレットと呼ばれる微小な突起が形成される。ドロップレットの発生は、バルブリフタ冠面の表面を粗くするが、このような表面粗さをもつバルブリフタとカムとを初期摺り合わせ運転させることで、バルブリフタとカムとの双方の接触面を短時間で鏡面化させる方法が開示されている(特許文献1)。
図2(A)は、ドロップレットが形成されたコーティング層の模式的な断面図、図2(B)は、そのX−X線で切断された平面図である。イオンプレーティング法によって基材30の表面に窒化チタンのコーティング層34を形成するとき、基材30の表面に金属の塊のような微小な突起であるドロップレット32が形成される。ドロップレット32の高さまたは大きさを制御することは難しいので、特許文献1は、ドロップレット32の発生密度を電流密度によって制御し、単位面積当たりのドロップレット32の数を管理している。
特開平7−118832号
上記したように、バルブリフタ等の摺動部材には、低フリクション、耐摩耗性等の向上を目的として窒化チタン膜の硬質被膜のコーティングが行われているが、近年ではさらに、高硬度で自己潤滑性に優れた非晶質硬質炭素皮膜のコーティングも行われつつある。非晶質硬質炭素は、一般にダイヤモンド・ライク・カーボン(以下「DLC」と記す。)、水素化アモルファスカーボン(a-C:H)、i-カーボン或いはダイヤモンド状炭素などと呼ばれ、構造的に炭素の結合がダイヤモンド構造の結合(sp3型結合)とグラファイト構造の結合(sp2型結合)が混在したものであり、ダイヤモンドに類似した高い硬度、耐摩耗性、熱伝導性及び化学安定性を有することを特徴としている。
DLC被膜は、イオンプレーティング法、CVD法、PACVD法などにより形成することができるが、特にイオンプレーティング法によってDLC被膜を形成すると、窒化チタン膜のときと同様に、数ミクロン程度の高さのドロップレットが形成される。DLC被膜のドロップレットは、非常に硬くて脆い性質を有するので、この微小突起(ドロップレット)が形成された摺動面を利用して、相互に摺動する部材間の初期摺り合わせまたは慣らし込みを行うことが可能である。例えば、バルブリフタの冠面にDLC被膜を形成し、バルブリフタとカムとの初期摺り合わせを行えば、カムとバルブリフタ冠面の双方に摩擦抵抗が少ない鏡面状態の摺動面を短時間で得ることが可能になる。
他方、DLC被膜の微小突起(ドロップレット)は、非常に硬いので、ドロップレットの高さや密度にバラツキが大きいと、初期摺り合わせ運転においてカム表面が不均一に研削されてしまい、望ましい鏡面状態の摺動面を得ることができなかったり、あるいはカム表面を余分に研磨してしまい著しい磨耗を生じさせてしまう。従って、初期摺り合わせに用いるためには、DLC被膜のドロップレットの高さないし密度を適切に制御することが望まれる。
本発明は、このような従来技術の課題を解決し、摺動面の微小突起が適切に制御された摺動部材、摺動部材の摺動面の加工方法、摺動部材の初期摺り合わせ方法を提供することを目的とする。
本発明に係る摺動面が形成された摺動部材は、前記摺動面には、非晶質硬質炭素被膜が形成され、前記非晶質硬質炭素被膜が形成される下地の表面粗さが一定以下であり、前記非晶質硬質炭素被膜に含まれる微小突起の数が単位長さ当たり一定範囲内にあり、かつ微小突起の高さが一定以下となるように、前記非晶質硬質炭素被膜が平坦化処理されている。
好ましくは前記下地の表面粗さ(算術平均粗さ)Raが0.01μm以下であり、微小突起の数が単位長さ当たり20〜80の範囲内である。好ましくは前記下地の表面粗さRaが0.005μm以下であり、微小突起の数が単位長さ当たり30〜50の範囲内である。好ましくは前記微小突起は、イオンプレーティング法によって前記非晶質硬質炭素被膜を形成する際に形成されたドロップレットである。
本発明に係る、カムと、カムの回転動作をバルブのリフト動作に変換するバルブリフタとを備えた組み合わせにおいて、前記バルブリフタの冠面には、非晶質硬質炭素被膜が形成され、前記非晶質硬質炭素被膜が形成される下地の表面粗さが一定以下であり、前記非晶質硬質炭素被膜に含まれる微小突起の数が単位長さ当たり一定範囲内にあり、かつ微小突起の高さが一定以下となるように、前記非晶質硬質炭素被膜が平坦化処理され、前記カムは、バルブリフタの冠面と摺動する。好ましくはカムの表面は、前記非晶質硬質炭素被膜によって研磨される。
本発明に係る、摺動面が形成された摺動部材の摺動面の加工方法は、前記摺動面の下地の表面粗さRaを0.01μm以下にし、アークイオンプレーティング法により前記下地上に非晶質硬質炭素被膜を形成し、前記非晶質硬質炭素被膜に含まれる微小突起の数が単位長さ当たり一定範囲内にあり、かつ微小突起の高さが一定以下となるように、前記非晶質硬質炭素被膜が平坦化処理する工程を含む。好ましくは前記下地の表面粗さRaが0.005μm以下であり、微小突起の数が単位長さ当たり30〜50の範囲内である。
本発明に係る、第1の摺動部材の第1の摺動面と第2の摺動部材の第2の摺動面との初期摺り合わせ方法は、第1の摺動面には、非晶質硬質炭素被膜が形成され、前記非晶質硬質炭素被膜が形成される下地の表面粗さが一定以下であり、前記非晶質硬質炭素被膜に含まれる微小突起の数が単位長さ当たり一定範囲内にあり、かつ微小突起の高さが一定以下となるように、前記非晶質硬質炭素被膜が平坦化処理され、前記第1の摺動面によって第2の摺動面を研磨する。好ましくは第1の摺動部材は、バルブリフタであり、第2の摺動部材は、カムである。
本発明によれば、非晶質硬質炭素被膜を平坦化処理することで、そこに含まれる微小突起の数と高さを制御するようにしたので、摺動面の表面の粗さを容易に調整することができる。さらに、摺動面の表面の粗さを調整することで、初期摺り合わせ運転において他の部材の摺動面の粗さを精度良く短時間で調整することができる。
図1(A)は、バルブリフタの動弁系の概略を示す断面図、図1(B)は、バルブリフタが上昇しバルブが閉じたときの断面図、図1(C)は、バルブリフタが降下しバルブが開いたときの断面図である。 イオンプレーティング法により形成されるドロップレットを説明する図であり、図2(A)は、摺動部材の模式的な断面図、図2(B)は、そのX−Xで切断したときの模式的な平面図である。 図3(A)は、本発明の実施例に係るバルブリフタの平面図、図3(B)は、そのA−A線断面図である。 本発明の実施例に係るバルブリフタ冠面の仕上げ処理を説明するフローチャートである。 図4に示す平坦化処理の動作を説明するフローチャートである。 図6はドロップレット数のカウント方法を示した図である。 図7(A)は、バルブリフタの冠面の粗さとドロップレットの数との関係を示すグラフ、図7(B)は、冠面粗さRvk(突出谷深さ)とドロップレットの数Pcとの関係を示すグラフである。 図8(A)は、カムの粗さRaとドロップレットの数Pcの関係を示すグラフ、図8(B)は、冠面−カムの二乗平均(RMS)の粗さとドロップレットの数Pcの関係を示すグラフである。 バルブリフタとカム間の摩擦トルクとドロップレットの数Pcとの関係を示すグラフである。
本発明は、カムなどの部材と摺動する摺動面を備えた摺動部材に適用される。摺動部材は、例えば、カムと摺動するバルブリフタやシムである。以下の説明では、バルブリフタについて図面を参照して説明する。なお、図面のスケールは、発明の特徴を分かり易くするために強調しており、必ずしも実際の装置や部品のスケールと同一ではないことに留意すべきである。
本発明の実施例に係るバルブリフタは、内燃機関の直打式動弁機構において、バルブステムとカムとの間に配置されカムのリフト動作をバルブに伝達する機能を有する。さらにバルブリフタは、その内部に油圧のON−OFFの制御によりバルブステムのリフト動作を休止させあるいは動作させる休止機構を備えるものであってもよい。例えば、内燃機関が低速運転されるとき、カムのリフト動作がバルブに伝達されないように休止させ、中高速運転されるとき、カムのリフト動作がバルブに伝達されるようにする。
図3(A)は、本実施例に係るバルブリフタの概略平面図、図3(B)は、そのA−A線断面図である。本実施例に係るバルブリフタは、概して倒立カップ形状のバルブリフタ本体100を有し、バルブリフタ本体100は、カムとの摺動面を提供する円形状の冠面110と、冠面110の外周からほぼ垂直方向に下方に延びる円周状のスカート部120とを有する。冠面110の裏面側には、肉厚のボス122が形成され、当該ボス122は、バルブステムまたはその間に介在されるシムに当接される。ここには詳細に示さないが、スカート部120内の空間に、上記したバルブ休止機構を配置させることができる。
バルブリフタ本体100の材質には、JIS規格によるSCM材を浸炭処理したものを用いることができるほか、他の鋼材、鋳物、鉄系合金、チタン合金、アルミ合金及び高強度樹脂等を用いることができる。
冠面110の表面には、高硬度で摩擦特性に優れた非晶質硬質炭素被膜、すなわちDLC被膜112が形成される。DLC被膜112は、基材表面に直接形成してもよいが、密着性を向上させるために、窒化処理により窒化層、Crめっき被膜、窒化チタン又は窒化クロムなどの中間層を介して形成してもよい。
DLC被膜112は、PVD法、PACVD法などによって形成することができる。例えば、アークイオンプレーティング法によりDLC被膜112を形成するとき、水素含有量が0.5原子%以下であるものが硬度及び耐摩耗性の観点で好ましい。DLC被膜112の膜厚は、例えば、PVD法であれば、0.3〜1.5μm、PACVD法であれば、20μm程度の膜厚を有することができる。
次に、本実施例のバルブリフタ冠面の仕上げ処理について図4のフローチャートを参照して説明する。先ず、DLC被膜112を形成する前に、バルブリフタ冠面の下地の表面粗さRaを一定以下にする(S100)。下地の表面の粗さRaは、ドロップレットの高さに影響を与えることになるので、後述するように、Ra0.01μm以下であることが望ましく、より好ましくはRa0.005μm以下であることが望ましい。
次に、イオンプレーティング法によって、バルブリフタ冠面に一定膜厚のDLC被膜112を形成する(S110)。電流密度を適切に選択することにより、単位長さ当たりに形成されるドロップレットの数が調整される。ドロップレットの高さは、例えば、2〜3ミクロン程度である。ドロップレットの発生により、DLC被膜112の表面は、下地の表面粗さRaよりも粗くなる。また、個々のドロップレットの高さは、ランダムである。
次に、DLC被膜112の表面を平坦化処理する(S120)。図5は、平坦化処理の工程を説明するフローチャートである。まず、バルブリフタ冠面のDLC被膜112に形成されたドロップレットの高さを一定以下に規制するためのしきい値を設定する(S200)。
次に、バルブリフタを所定の装置に取付け、バルブリフタ本体100を一定の速度で回転させる(S210)。例えば、冠面110が上方を向いて露出されるように、バルブリフタ本体100のスカート部120を冶具により固定する。
次に、研削工具を用い、ステップS200で設定されたしきい値に従い、バルブリフタ冠面110を研磨する(S220)。研削工具は、公知のものを用いることができ、例えば、ペーパーラップ、バフ研磨、CMP(Chemical Mechanical Polishing)研磨などを用いることができる。さらに、研削工具は、物理的な研削を行うものに限らず、例えば、レーザー光を照射してドロップレットの先端を丸めるような処理を行うものであってもよい。
図6に単位長さ当たりのドロップレットのカウント方法を示す。図6(A)、(B)は、粗さ計を用いてDLC被膜の表面を測定したときの粗さ波形を示しており、図6(A)は、平坦化処理前の状態、図6(B)は、平坦化処理後の状態を示している。図6(A)において、ステップS200で設定されるしきい値Sは、DLC被膜112の表面の粗さの中心値(平均値)Cから距離で表わされる。故に、ステップS220による研磨によって、しきい値Sよりも大きいドロップレット130の先端が研磨され、図6(B)のような状態になる。
次に、単位長さ当たりのドロップレットの数がカウントされる。本明細書におけるドロップレットとは、粗さ計を用いてDLC被膜112の表面を測定したときに、チャート上の測定線が粗さチャートの中心値(平均値)Cを通過した後に、粗さチャートの中心値(平均値)CからDp=0.05μm以上突出した箇所と定義される。また、本例における単位長さ当たりのドロップレット数Pcは、粗さ計による測定長さを1.25mmとしたときの突出箇所の数としている。但し、単位長さは、任意に設定し得る値である。
図6(B)に示されるように、中心値CからDp=0.05μmよりも高いドロップレットの数がカウントされ(図の例では、単位長さ当たりのドロップレット数Pc=7)、中心値Cを超えても高さDPを超えない微小突起は、ドロップレットとしてカウントされない。
このようにして、ドロップレットの平坦化処理(研磨)を行った後に、単位長さ当たりドロップレットの数Pcをカウントし(S230)、カウント結果に基づき良否判定を行う(S240)。カウントされたドロップレットの数Pcが一定の範囲、すなわち、最小数min<Pc<最大数maxの範囲にあれば、良品と判定され、範囲外であれば、不良品と判定される。
本実施例により平坦化処理されたDLC被膜は、単位長さ当たりに一定範囲内のドロップレットの数を含み、かつそれらのドロップレットの高さ(または突出谷深さ)は一定以下に制限される。このような表面構造に冠面を有するバルブリフタをカムとの初期摺り合わせ運転に用いれば、カムの表面がほぼ均一に研磨され、これにより、カムとバルブリフタ冠面の双方に接触抵抗または摩擦抵抗の小さい摺動面を短時間で得ることができる。
次に、本実施例に係るバルブリフタの実験結果について説明する。図7(A)は、バルブリフタ冠面のDLC被膜の形成後の粗さRa(算術平均粗さ)と、DLC被膜の平坦化処理を行った後の単位長さ当たりのドロップレットの数Pcとの関係を示すグラフである。図中の●、■、▲は、下地の粗さRa0.02μm、0.01μm、0.004μmをそれぞれ示し、3種類の下地の粗さRaで実験が行われた。同グラフに示すように、下地の粗さが小さいほど、冠面の粗さも小さくなる傾向にあるが、ドロップレットの数Pcが80に増加したとき、▲と■の関係が逆転している。また、ドロップレットの数Pcが増加するにつれ、▲と■では、冠面の粗さRaが徐々に大きくなるが、●では、ドロップレットの数Pcが増加しても、冠面の粗さRaがほとんど変化しない。
図7(B)は、冠面粗さRvk(突出谷深さ)とドロップレットの数Pcとの関係を示すグラフである。同グラフに示すように、下地の粗さが小さいほど、冠面の粗さRvkは小さくなる。また、ドロップレットの数Pcが約60ぐらいまで増加するにつれ、粗さRvkが徐々に小さくなる傾向があるが、ドロップレットの数Pcが60を超えると、今度は粗さRvkが大きくなる。
図8(A)は、カムの粗さRaとドロップレットの数Pcの関係を示すグラフである。同グラフに示すように、ドロップレットの数Pcが約20のとき、冠面の粗さRaが大きい方がカムの粗さRaが小さくなるが、ドロップレットの数Pcが約40以上になると、冠面の粗さRaに依存せず、カムの粗さRaはほぼ一定であることがわかる。
図8(B)は、冠面−カムの二乗平均(RMS)の粗さとドロップレットの数Pcの関係を示すグラフである。同グラフに示すように、ドロップレットの数Pcが約60ぐらいまでは二乗平均粗さが一定であるが、約60を越えると、▲と■の関係が逆転している。すわわち、下地の粗さが小さくても、ドロップレットの数が一定より大きくなると、粗さが大きくなることが分かる。
図9は、バルブリフタとカム間の摩擦トルクとドロップレットの数Pcとの関係を示すグラフである。同グラフに示すように、ドロップレットの数Pcが約20のとき、▲の摩擦トルクが一番大きい。すなわち、下地の粗さが一番小さく、冠面の粗さRa(図7(A)を参照)が一番小さいものの摩擦トルクが一番大きい。ドロップレットの数Pcが約40に増加すると、今度は、▲の摩擦トルクが一番小さくなり、その関係はPcが約80まで増加しても変わらない。また、■では、ドロップレットの数Pcが約60までは低い摩擦トルクを示し、Pcが80になると、摩擦トルクが幾分上昇する。●では、ドロップレットの数の変化に大きな影響を受けることなく比較的に大きな摩擦トルクを示している。
これらの実験結果を評価すると、下地の粗さRaを0.01μm以下、好ましくは0.005μm以下としたとき、単位長さ当たりのドロップレットの数Pcを20ないし80、特に30〜50にすると、バルブリフタとカムとの間の摩擦トルクを顕著に小さくすることができる。従って、バルブリフタ冠面の表面構造である、下地の粗さおよびドロップレットの数を上記のように管理することで、バルブリフタとカムとの初期摺り合わせ運転、または慣らし効果において、バルブリフタ冠面およびカムの双方において接触抵抗または摩擦抵抗が小さい摺動面を短時間で得ることができる。
上記実施例では、摺動部材としてバルブリフタとカムの組み合わせを例示したが、本発明は、これ以外にも、他の摺動部材の組み合わせにも適用することができる。特に、摺動部材間の初期摺り合わせ、または慣らし効果により相互の摺動面を鏡面状態にする場合に本発明の摺動部材は効果的である。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
30:基材
32:ドロップレット
34:コーティング層
100:バルブリフタ本体
110:冠面
112:DLC被膜
120:スカート部
122:ボス

Claims (9)

  1. 摺動面が形成された摺動部材であって、
    前記摺動面には、非晶質硬質炭素被膜が形成され、
    前記非晶質硬質炭素被膜が形成される下地の表面粗さが一定以下であり、
    前記非晶質硬質炭素被膜に含まれる微小突起の数が単位長さ当たり一定範囲内にあり、かつ微小突起の高さが一定以下となるように、前記非晶質硬質炭素被膜が平坦化処理されており、
    前記下地の表面粗さがRa0.01μm以下であり、前記非晶質硬質炭素被膜の粗さを測定したときの中心値から0.05μmを越える微小突起の数が単位長さ1.25mm当たり20〜80の範囲内である、摺動部材。
  2. 前記下地の表面粗さがRa0.005μm以下であり、微小突起の数が単位長さ当たり30〜50の範囲内である、請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記微小突起は、イオンプレーティング法によって前記非晶質硬質炭素被膜を形成する際に形成されたドロップレットである、請求項1または2に記載の摺動部材。
  4. カムと、カムの回転動作をバルブのリフト動作に変換するバルブリフタとを備えた組み合わせであって、
    前記バルブリフタの冠面には、非晶質硬質炭素被膜が形成され、
    前記非晶質硬質炭素被膜が形成される下地の表面粗さが一定以下であり、
    前記非晶質硬質炭素被膜に含まれる微小突起の数が単位長さ当たり一定範囲内にあり、かつ微小突起の高さが一定以下となるように、前記非晶質硬質炭素被膜が平坦化処理され、
    前記下地の表面粗さがRa0.01μm以下であり、前記非晶質硬質炭素被膜の粗さを測定したときの中心値から0.05μmを越える微小突起の数が単位長さ1.25mm当たり20〜80の範囲内であり、
    前記カムは、バルブリフタの冠面と摺動する、カムとバルブリフタの組み合わせ。
  5. カムの表面は、前記非晶質硬質炭素被膜によって研磨される、請求項に記載のカムとバルブリフタとの組み合わせ。
  6. 摺動面が形成された摺動部材の摺動面の加工方法であって、
    前記摺動面の下地の表面粗さをRa0.01μm以下にし、
    アークイオンプレーティング法により前記下地上に非晶質硬質炭素被膜を形成し、
    前記非晶質硬質炭素被膜に含まれる微小突起の数が単位長さ当たり一定範囲内にあり、かつ微小突起の高さが一定以下となるように、前記非晶質硬質炭素被膜が平坦化処理する工程を含み、
    前記非晶質硬質炭素被膜の粗さを測定したときの中心値から0.05μmを越える微小突起の数が単位長さ1.25mm当たり20〜80の範囲内である、摺動面の加工方法。
  7. 前記下地の表面粗さがRa0.005μm以下であり、微小突起の数が単位長さ当たり30〜50の範囲内である、請求項に記載の摺動面の加工方法。
  8. 第1の摺動部材の第1の摺動面と第2の摺動部材の第2の摺動面との初期摺り合わせ方法であって、
    第1の摺動面には、非晶質硬質炭素被膜が形成され、
    前記非晶質硬質炭素被膜が形成される下地の表面粗さが一定以下であり、
    前記非晶質硬質炭素被膜に含まれる微小突起の数が単位長さ当たり一定範囲内にあり、かつ微小突起の高さが一定以下となるように、前記非晶質硬質炭素被膜が平坦化処理され、
    前記下地の表面粗さがRa0.01μm以下であり、前記非晶質硬質炭素被膜の粗さを測定したときの中心値から0.05μmを越える微小突起の数が単位長さ1.25mm当たり20〜80の範囲内であり、
    前記第1の摺動面によって第2の摺動面を研磨する、初期摺り合わせ方法。
  9. 第1の摺動部材は、バルブリフタであり、第2の摺動部材は、カムである、請求項に記載の初期摺り合わせ方法。
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