実施例1の自律走行型掃除機101を図1〜5を用いて説明する。図1は、本実施例の自律走行型掃除機101の斜め上方からの外観図り、図2は、底面を示す底面図、図3は、幅方向の略中央で切断したときの左から見た断面図、図4、本体内部を上方より見た上面図、図5は、制御装置のブロック図である。
自律走行型掃除機101は、自律的に部屋の中を走行しながら、塵埃を回収することで部屋の中を掃除する機器である。その主な構成は、図1に示す、本体1をなす上ケース2a、下ケース2b、バンパー3と、図2に示す、下ケース2bの底面に設けられた自律走行用の左右の駆動輪4a、4bと、塵埃を床面から回収する吸口5と、下ケース2bの左右前方に配したサイドブラシ6a、6bと、図示しない、本体内部に納められた制御装置7である。
バンパー3は本体1の前方で前後方向に揺動できる機構を備えており、下ケース2より2つのバンパーバネ8a、8bで支持され、前方からの押付け力により後方に揺動し、押付け力から開放されるとバネの力により元の位置に戻る。バンパーバネ8a、8bは薄い金属板の板バネであり、下ケース2の外周前面の左右に固定され、それぞれ本体1の外周側面方向に伸び、バンパー3に接している。バンパー3がスムーズに揺動できるように、バンパーバネ6a、6bの先端は湾曲しており、その湾曲部でバンパー3の内面と接している。また、バンパー3の正面からの押付け力だけでなく左右どちらから押付け力が作用しても、バンパー3がスムーズに揺動できるように、2つのバンパーバネ8a、8bは離れてバンパー3に接している。バンパー3の右側より押付け力が作用したらバンパー3の右側のほうが大きく揺動し、バンパー3に左側より押付け力が作用したらバンパー2の左側のほうが大きく揺動するように、図4のように本体1の前方斜め45度付近でバンパー内面に接するほうが望ましい。このようにすることにより、たとえば右側から押付け力がかかると、右側のバンパーバネ8aは容易にたわむが、左側のバンパーバネ8bはたわみ難く、その先端湾曲部でバンパー3を受け止めるようになり、結果右側のほうが大きく揺動する。
また、バンパー3の動きを検知するバンパーセンサー9a、9bが下ケース2の左右に固定されている。バンパーセンサー9a、9bはマイクロスイッチであり、バンパー3の内側の左右に設けられたバンパー凸部3a、3bの先端に、マイクロスイッチの可動接点側が接している。バンパー3が後ろ側に押されるとマイクロスイッチの接点が接触し、バンパー3に押付け力が作用していることを検知する。これにより、障害物の有無を検知している。バンパーセンサー9aは右側にあり、主にバンパー3の右側に押付け力が作用した場合に検知し、バンパーセンサー9bは左側にあり、主にバンパー3の左側に押付け力が作用した場合に検知する。バンパー3の中央付近に押付け力が作用した場合はバンパーセンサー9a、9bがともに検知し、中央付近に押付け力がかかったことがわかる。バンパーセンサー9a、9bは前からの押付け力および側面からの押付け力をともに検知できるように、右側のバンパーセンサー9aは正面から右外側へ、左側のバンパーセンサー9bは正面から左外側へ傾けて設置したほうが望ましい。また、バンパーセンサー9a、9bにあわせてバンパー凸部3a、3bも斜め内側に突き出しているほうが望ましい。また、バンパー凸部3a、3bはバンパーバネ8a、8bが接する位置より後ろ側に設けられ、側面から押付け力が作用してもバンパーセンサー9a、9bが反応しやすいようになっている。たとえば右側面から押付け力が作用する場合、バンパー3はバンパーバネ8aと接する位置より後ろ側で押付け力を受け、バンパー3は左に動くとともに、バンパーバネ8aを中心に右回りに回転する。そのためバンパー3は、バンパーバネ8aと接する位置より後ろ側ではより大きく動く。その動きを検知するためにはバンパーバネ8aより後ろ側で検出することが望ましく、バンパー凸部3aはバンパーバネ8aより後ろ側に設けたほうがよい。
また、下ケース2には左右対称に2つの独立した駆動輪4a、4bを有している。2つの駆動輪4a、4bをそれぞれ独立に駆動することによって、直進、後退、回転を行うことが可能となっている。それぞれの駆動輪4a、4bの表面は凹凸をつけたゴムやエラストマー材で覆われており、走行時に滑りにくくしている。
また、それぞれの駆動輪4a、4bは複数段のギアで構成された減速機10a、10bを介して走行モーター11a、11bから動力が伝えられている。減速機10a、10bは走行音を低下させるために斜歯歯車であることが望ましい。特に、回転数の高い走行モーター11a、11bから1段目の歯車は低騒音化の効果が大きいため、斜歯であることが望ましい。走行モーター11a、11bにはそれぞれ走行モーター用エンコーダー38a、38b(図5)が取り付けられ、回転速度、回転角度がわかり、減速機10a、10bおよび駆動輪4a、4bの径より本体の移動速度、移動距離が把握できる。また、駆動輪4a、4b、走行モーター11a、11b、減速機10a、10bは左右それぞれで一塊のユニットとなっており、このユニットがサスペンション(図示せず)を介して下ケース2に取り付けられている。自律走行型掃除機101が走行中の段差をスムーズに乗り降りするために、走行面に駆動輪4a、4bが接触している状態をできるだけ維持する必要があり、サスペンションにより駆動輪4a、4bが上下に揺動できるようになっている。
また、下ケース2の底面前方および後方の左右には合計3つの補助輪12a、12b、12cが設けられている。底面前方の補助輪12aは他の補助輪12b、12cに比べて低く取り付けられており、平らな床面では底面前方の補助輪12aと駆動輪4a、4bにより自律走行型掃除機を支え、下ケース2の底面は床面から約10mmの高さで保たれている。また、段差等に乗り上げるときには、前方が持ち上げられ、底面後方の左右に設けた補助輪12b、12cが床面に接し、スムーズに段差を乗り越えることが可能となる。
自律走行型掃除機の中央付近に床面に対して略矩形に開口した吸口5を持つ。吸口5は駆動輪4aの中心と駆動輪4bの中心とを結ぶ直線近傍に位置している。吸口5には吸口ブラシ13が組み込まれており、その吸口ブラシ13は吸口ブラシ用モーター14によって回転され、床面上の塵埃を効率的にかき込むことができる。
吸口5の後方上部には開口部5aが設けられ、その後ろ側に集塵部が構成されている。
集塵部は集塵ケース15と集塵フィルタ16で構成されている。集塵ケース15は開口部5aに対峙する位置に開口部を有し、その間はパッキンで繋がれており、吸口5から回収した塵埃は開口部5aを通って集塵ケース15に導かれる。集塵ケース15の後ろに位置するとともに、集塵ケース15の後方の壁を兼ねる集塵フィルタ16は、空気と塵埃を分離し、塵埃を集塵ケース15に集積させ、空気を集塵フィルタ16へ通過させる。この集塵ケース15は上ケース1に設けた蓋17を開けることで脱着できる。
また、集塵フィルタ16の後方で本体幅方向の略中央に電動送風機18が設けられている。電動送風機18は下ケース2b内で弾性体を介して配される。弾性体を介することで電動送風機18が発生させる振動を本体1外郭をなす上ケース2a、下ケース2bに伝えにくくし、振動騒音を低減させている。この電動送風機18により吸引力が発生し、床面にある塵埃は吸口5から吸い込まれ、集塵ケース15内を通過し、集塵フィルタ16でせき止められ、集塵ケース15に集積される。そして、空気のみが電動送風機18に吸い込まれ、電動送風機18の側面より吐出され、下ケース2bの後方に設けた格子状の排気口19から本体外側へ排気される。
排気口19は格子状のプラスチックでできており、その格子によって形成される空気の通過する穴は後ろ斜め上方へ向かうように作られている。そのため、電動送風機18からの排気は斜め後ろ上方へ向かって排出され、床面の塵埃を巻き上げないようにしている。
また、下ケース2bの底面には駆動輪4a、4bの前側にサイドブラシ6a、6bが回転可能に設けられている。これらサイドブラシ6a、6bは3束の刷毛で構成されており、それら3束の刷毛は放射状に略等間隔にブラシホルダー20a、20bに取り付けられている。ブラシホルダー20a、20bは下ケース2bの底面に回転可能に取り付けられ、その回転軸は減速機21a、21bを介してサイドブラシ用モーター22a、22bにつながっており、サイドブラシ用モーター22a、22bによって回転させられる。また、サイドブラシ6a、6bの刷毛は先端に行くほど下方になるように傾斜しており、先端は床面に接している。サイドブラシ6aとサイドブラシ6bは互いに逆の方向に回転しており、前側にある塵埃を吸口5に送り込むように、上から見たときに右側のサイドブラシ6aは左回りに、左側のサイドブラシ6bは右回りに回転している。
また、サイドブラシ6a、6bの刷毛の長さは、本体1の前面の横幅(左右方向)の中央部に略外接する矩形で囲んだときにできる隅部(図4のA部分)まで届く長さを有している。ただし、刷毛の全ての毛が長い毛でなく、短い毛も有しているほうが望ましい。長い毛は隅部まで届き、溜まった塵埃をかき出すことができるが、本体1の側面に近い壁(側壁)の際(図4のB部分)に対しては長すぎるため、毛が大きくたわみ、壁面に沿って上方に向いてしまい床面に接しない状態になり、壁際の塵埃をかき出せない場合がある。
そのために長い毛だけでなく、短い毛も有しているほうが望ましい。また、本実施例では3束の刷毛で構成しているが、2束、4束、5束でもよく、束ごとに長さを異ならせても良い。また、複数の束にまとめずに、サイドブラシホルダー20a、20bの全周に渡って毛を広げたサイドブラシでもよく、その場合は長さを異ならせた毛を全周に渡って配してもよく、また、短い毛の領域と長い毛の領域を分けて配してもよい。
なお、本実施例ではサイドブラシは左右2つ設けているが、右側、左側のどちらか片方だけでもよい。また、本実施例では刷毛が直線的な毛の束で構成されているが、湾曲している、もしくは折れ曲がっている、もしくは蛇行している毛で構成されていても良い。直線的な毛の場合、上記したように本体1側面に近いところでは床面に接しない状況が起こり得るが、あらかじめ曲がっている毛、もしくは蛇行している毛の場合はその曲がり部を中心にしてたわむことで、床面から毛の先端が離れる事を防ぐことができる。また、じゅうたんの毛足等に絡みにくくするために、刷毛の先端側はサイドブラシ6a、6bの回転方向とは反対方向に湾曲、もしくは折れ曲がっているほうが望ましい。
また、サイドブラシホルダー20a、20bは刷毛より硬い略円形の樹脂でできており、本体1外周の内側に収まる大きさであるが、できるだけ本体1の外周近傍まで達しているほうが望ましい。サイドブラシ6a、6bは塵埃をかき出すためのものであり、本実施例のサイドブラシ6a、6bの刷毛は長いため、刷毛がたわみやすく、塵埃をかき出す性能が弱くなりがちである。そのためサイドブラシホルダー20a、20bを大きくして、できるだけ刷毛の部分を短くし、刷毛のたわみを小さくすることが望ましい。しかし本体1外周より外側に突出していると、回転しているサイドブラシホルダー20a、20bが障害物等に接触して傷を付ける可能性があるため、本体1の外周より内側に収める。
また、駆動輪4a、4bにより自律的に本体1を移動させるが、本体1が部屋の壁や家具等の障害物に衝突することを防ぐために、本体1前面から側面にかけて複数の測距センサー23a〜23gが設けられている。本実施例では本体の正面に1つ(23d)とその左右両側に側面に向けて3つずつ、計7つの測距センサー23a〜23gを設けている。
これら測距センサー23a〜23gは赤外線による測距センサーであり、赤外線を発光させる発光部とその赤外線が対象物に反射して戻ってくる反射光を受光する受光部とからなっており、反射光の強さを検知することで反射したものまでの距離を計測するセンサーである。これらの測距センサー23a〜23gは下ケース2の外周近傍に、外側に向かってそれぞれ異なる角度で配置されており、バンパー3を通して距離を検出している。そのためバンパー3は少なくとも測距センサー23a〜23gの近傍は赤外線が透過できるような樹脂もしくはガラスでできている。また、測距センサー23a〜23gによる距離計測のノイズを低減するために、バンパー3の赤外線を通過させる樹脂もしくはガラスは、赤外線より短い波長である可視光を遮断させるような特性を有しているほうが望ましい。
測距センサー23a〜23gの検出方向はそれぞれ異なっている。具体的には側面に配置されている測距センサーほど側面を向くように設けられている。測距センサーの全部が異なる方向を向いている必要はないが、中央のセンサーと最も側面にあるセンサーは異なる方向を向いている必要あり、少なくとも異なる3方向を検知できるようになっている。
また、自律走行型掃除機は前方に直進することが多く、前方を監視することが重要であり、特に測距センサー23a〜23gのうち本体の前方正面に対して左右に約50度以内に設置している測距センサー23b〜23fに対しては本体1の外周に対して法線方向ではなく、法線方向より正面を向くように設置することが望ましい。
また、測距センサー23a〜23gは自律走行型掃除機101の高さ方向の略中央に位置することが望ましい。低すぎると床面を障害物と判断してしまう恐れがあり、高すぎるとベッドやソファーの底面を障害物と判断してしまい、その下の空間に入り込んで掃除することができない恐れがある。
また、測距センサー23a〜23gは反射光の強さを検知するタイプでなく、受光部における反射光の受光位置を計測し、その位置から対象物までの距離を計測するタイプでも良いし、赤外線でなく、可視光でもよい。可視光を用いた測距センサーの場合、バンパー3は可視光が透過できる樹脂で作られている必要がある。また、赤外線センサーでなく、超音波を用いた測距センサーでも良い。超音波センサーの場合、バンパー3は超音波が通過できるように孔があけられている必要がある。また、これらのセンサーを組み合わせてもよい。
また、測距センサー23a〜23gにより障害物までの距離を把握して適切に回避するためにも、測距センサー23a〜23gは距離に応じてセンサーの出力が変化することが望ましく、障害物の有無だけを判断する2値的なセンサーでなく、連続的もしくは多段に変化するほうが望ましい。
また、床までの距離を計測する複数の床面用測距センサー24a〜24cが下ケース2の下面に設けられている。下ケース2の前側に24b、駆動輪4a、4bの前方でかつ外周近傍に24a、24cがそれぞれ下方に向けて設けられている。これらの床面用測距センサー24a〜24cも赤外線を用いた測距センサーであり、赤外線の発光部と受光部を有している。これらの床面用測距センサー24a〜24cは床面までの距離を計測しており、進行方向に階段等の大きな段差を検出するために設けられ、本体がその段差から落下することを回避している。段差が小さければ、落下しても再びその段差を乗り越えて戻ってきて掃除を続行することができるが、乗り越えられない段差より大きな段差で落下した場合、元の床面に戻ることができず、掃除が途中で終了することになる。そのような事態を回避するために乗り越えられない段差より大きな段差を見つけ、落下しないように走行し続ける必要がある。具体的には30mm程度の段差を検知することを目的とし、段差を検知したら後退して進行方向を転換させて回避する。よって床面用測距センサー24a〜24cは30mm未満と30mm以上を区別できれば良いため、センサーの出力値が距離に応じて連続的に変化するセンサーでなく、2値的に変化するセンサーでよい。
また、上ケース1の上面には表示パネル25と掃除の開始、終了を指示するスタートボタン26と自律走行の走行モードを変更するための走行モード選択ボタン27と電源ボタン28を有している。表示パネル25は複数のLEDと7セグメントディスプレイで構成され、運転状態等を表示する。
これら操作ボタン26〜28からの指示と上述した複数のセンサーからの情報をもとに制御装置7は走行モーター11a、11b、吸口ブラシ用モーター14、電動送風機18、サイドブラシ用モーター22a、22bを駆動する。制御装置7の構成を示すブロック図を図5に示す。
制御装置7は制御基板31上に構成され、走行モーター11a、11bを回転させる走行モーター駆動装置33a、33bと電動送風機18を回転させる電動送風機駆動装置34と吸口ブラシ用モーター14を回転させる吸口ブラシ用モーター駆動装置35とサイドブラシ用モーター22a、22bを回転させるサイドブラシ用モーター駆動装置36a、36b、表示パネル駆動装置37を有し、マイコン32から制御される。また、さらにマイコン32にはバンパーセンサー9a、9b、測距センサー23a〜23g、床面用測距センサー24a〜24c、走行モーター11a、11bの回転を検知する走行モーター用エンコーダー38a、38b、走行モーター11a、11bの電流を計測する走行モーター用電流計測装置39a、39b、電動送風機用電流計測装置40、吸口ブラシ用モーター用電流計測器41、サイドブラシ用モーター用電流計測装置42a、42b、操作ボタン26〜28が接続されている。
これらのセンサー値や電流値がマイコン32に入力され、その都度マイコン32が状況を判断し、各駆動装置に対して指示している。各電流値は各種モーターのロック状態を検知するものであり、ロック状態のままモーターに通電させているとモーターの破損につながる恐れがあり、これを防止する制御に用いられる。
また、下ケース2は駆動輪4a、4bと補助輪12aの間に電池格納部51を有しており、その内部に電力を供給する電池52を備えている。電池52および電池格納部51は下ケース2の左右方向略中央となるよう配置されている。電池52には充電による再利用が可能な二次電池を使用する。この電池52により各駆動装置、各センサーおよび制御装置7に電力が供給され、自律走行および掃除が行われる。
このような構成の自律走行型掃除機101は主に部屋の中で使用され、人に代わってその部屋を自動で掃除する。自律走行しながら床の上の埃やごみを吸口ブラシ13でかき込むと同時に電動送風機18で吸引し、自律走行型掃除機101の吸口5から集塵ケース15へ回収していく。また、このときサイドブラシ6a、6bを内側に向けて回転させることで吸口5より外側にある埃やごみを吸口5の前へと移動させることができ、より多くの埃やごみを回収できる。
自律走行の様子を図6〜8に示す。図6〜8は部屋を上方から示す図であり、部屋の右上には棚55、左側の略中央にはソファー56が配置されている。これら棚55、ソファー56は自律走行型掃除機101にとっては障害物となる。また、図中の点線は自律走行型掃除機101の走行軌跡を示している。
図6は壁や障害物に接触もしくは接近すると進行方向を変えながら掃除する反射走行パターンを示している。この走行パターンは部屋全体を掃除させるときに適した走行パターンである。壁や障害物は測距センサー23a〜23gおよびバンパーセンサー9a、9bで検出され、接触、もしくは所定の距離以下まで近づいたら、それらから遠ざかるように走行モーター11a、11bを制御する。具体的には壁や障害物が検出されたら、走行モーター11a、11bを停止させた後、走行モーター11a、11bを互いに逆方向に回転させることで、本体1をその場で回転させ、方向転換する。方向転換させる角度は障害物の大きさ、および本体1からの位置などによって異ならせるとともに、無作為的にも変化させている。方向転換後は前進させ、再び壁や障害物が検出されたら同様に走行モーター11a、11bを制御して方向転換させる。このときの方向転換させる角度は前回の方向転換させる角度と異なっていることが望ましい。同じ角度で方向転換させていると、障害物の配置によっては、同じところを何度も行き来する場合があり、これを回避するためにも無作為的に方向転換させる角度を変化させたほうが良い。
また、図7は壁や障害物に接触もしくは接近すると進行方向を平行に移動させながら掃除する平行走行パターンを示している。この走行パターンも部屋全体を掃除させるときに適した走行パターンである。壁や障害物を検出したら、走行モーター11a、11bを停止させた後、走行モーター11a、11bを互いに逆方向に回転させ、本体1をその場で約90度回転させる。その後、吸口5の幅分程度の距離を前進させたら停止させ、本体1をその場でさらに約90度回転させる。この動作により壁や障害物を検知する前とくらべると吸口5の幅だけ横にずれた位置に移動し、進行方向が反対を向いた状態になる。この状態から再び前進させ、壁や障害物が検出されたら同様に走行モーター11a、11bを制御して方向転換させ、部屋の中を規則的に平行に掃除する。
また、図8は部屋の壁際を掃除させるときの走行軌跡を示し、壁や障害物に沿って掃除する壁際走行パターンを示している。本体1の側面を壁もしくは障害物から15mm程度離れて隣接させた状態を維持しながら走行させる。この走行パターンでは、本体1を前進させるとともに、測距センサー23a〜23gのうち側面付近に配された測距センサー23aもしくは23gにより壁や障害物までの距離が一定になるように走行モーター11a、11bを制御する。
壁際を右回りに走行している場合を想定して具体的に説明する。まず、測距センサー23a〜23gおよびバンパーセンサー9a、9bにより壁を検知した時点で走行モーター11a、11bを停止させて、壁近傍に本体1を位置させる。その後、走行モーター11a、11bを互いに逆方向に回転させ、本体をその場で回転させる。このとき本体1左側面の測距センサー23gが壁を検知できる状態まで回転させ、本体1の左側面が壁に隣接する状態にする。その後、走行モーター11a、11bの両方を前進方向に回転させ、前進させる。このとき測距センサー23gが所定の値になるように走行モーター11a、11bの速度をそれぞれ調整しながら前進させる。測距センサー23gの値が前記所定の値より大きい場合は、本体1が壁から遠ざかっているため、右側の走行モーター11aを左側の走行モーター11bより速く回転させ、本体1が左前に進むようにして壁に近づける。逆に、測距センサー23gの値が前記所定の値より小さい場合は、本体1が壁に近づいているため左側の走行モーター11bを右側の走行モーター11aより速く回転させ、本体1を右前に進むようにして壁から遠ざけるようにする。なお本体1と壁との距離は、近いほうが壁際の掃除性能を向上できるので、右側の走行モーター11aの回転速度を速くするのはごく短時間とするのが好ましい。また、壁際走行中の本体1の向きを変えるとき、左右の走行モーター11a、11bのいずれかの一方の走行モーターの回転速度だけを速くする、もしくは遅くしてもよいが、左右両方の走行モーターの回転速度の一方を速くさせ、もう一方を遅くてもよい。このような制御により、本体1の向きを時々刻々右前、左前へと向きを変えながら前進し、壁際に沿った走行が可能となる。
自律走行型掃除機101は前記反射走行パターンもしくは前記平行走行パターンのうち、どちらか一つの走行パターンと、前記壁際走行パターンの少なくとも2つの走行パターンを有しており、特にユーザーが走行パターンを指示しないで掃除させたときの自動モードは、少なくともこれら2つの走行パターンを組み合わせた走行モードとなっている。また、走行パターンを組み合わせずに、前記反射走行パターンによる部屋全体を手早く掃除することを目的とした快速モードと、前記平行走行パターンによる部屋を丁寧に掃除することを目的とした丁寧モードと、前記壁際走行パターンによる壁際に溜まったごみをしっかりと掃除することを目的とした壁際モードの3つの個別走行モードも有している。これらの走行モードは走行モード選択ボタン27にて選択できる。
従来、このような自律走行型掃除機101は、前記壁際走行パターン時もしくは平行走行パターン時において壁際を走行中に、隅部で方向転換することで隅部を掃除している。
具体的には、本体1の側面を壁(側壁111)に隣接した状態で走行中に、本体1の前側に壁(前壁112)を検知したら、その前壁112の手前で停止させ、本体1をその場で約90度回転させ、前壁112に沿って壁際走行させることにより隅部を通過させているが、この隅部の通過時にサイドブラシ6a、6bにより隅部を掃除している。
しかし、方向転換時に側壁111および前壁112に接触させないように本体1の外形を円形にすると、その円形の本体1に略外接する矩形で囲んだときにできる隅部は、その本体1の外周から離れており、本体1の前方斜め45度付近に設けているサイドブラシ6a、6bの刷毛を隅部まで到達させることができず、隅部手前までしか掃除できない。さらに隅部の手前でさえ、本体1の隅部近傍での停止時の向きによっては掃除が不十分になる可能性がある。上記したとおり、壁際走行時には側壁111に対して隣接した状態のまま、進行方向を変えずに前進しているのではなく、側壁111との距離を調整するために進行方向を右前、左前へと変えてながら前進している。よって、前壁112を検出して停止させたときの本体1の向き、つまりは駆動輪4a、4bの向きは、側壁111に対して平行ではなく傾いている場合も有り、その場合はサイドブラシ6a、6bの先端から隅部までの距離はさらに遠くなってしまい、掃除が不十分になる。
隅部までサイドブラシ6a、6bを届かせようと、サイドブラシ6a、6bの刷毛を長くすると、サイドブラシ6a、6bの刷毛は駆動輪4a、4bに踏まれ、踏まれた刷毛によって駆動輪4a、4bはその回転を止められ、走行に支障をきたすことになる。そのためサイドブラシ6a、6bの刷毛の長さは駆動輪4a、4bに踏まれない長さとなっており、隅部まで届く長さにすることが困難である。
そのため、隅部の掃除性能を向上させるためにはサイドブラシ6a、6bを隅部に近づけることが重要であり、特許文献1のように本体からサイドブラシ自体が離れるようにし、サイドブラシを移動させて隅部に近づけることが提案されている。しかし、サイドブラシを分離するために複雑な機構を設けたり、動かすために複雑な制御を施したりする必要がある。また、掃除機はごみや埃を集めるため、可動部や伸縮機構にゴミや埃が溜まると動作できなくなる可能性もあり、望ましくない。また、複雑にすれば、その分部品も増えるためコスト高になることも考えられる。そこで、上記のような複雑な機構および制御をより容易にすることにより、動作の信頼性や低コスト性を向上させながら、隅部の掃除性能を向上させるために、本体1の形状を円形ではなく、隅部に近づけた形状にして、サイドブラシ6a、6bを隅部に近づけるようにする。
しかし、単純に本体1の形状を隅部に近づけることを考えると、方向転換時に壁に接触しやすくなってしまう。例えば、本体形状を矩形にした場合、本体の角を隅部にほぼ合致させることができるが、その状態から方向転換すると、隅部近傍の角が前壁112に接触してしまう。それを回避しようとすると本体1を大きく後ろに後退させる必要がある。また、さらに、方向転換時に本体1後方の角が側壁111に接触してしまう。それを回避するためには本体1を側壁111から遠ざける必要があるが、駆動輪4a、4bの向きは真横に向かないため、斜め後ろに下がるようにするが、今度は前側の角が側壁111に接触する可能性があり、あまり大きく本体1を斜めに向けられない。そのため側壁111を回避するためにも複雑な制御が必要となる。このように単純に本体1形状を隅部に近づけると掃除性能は向上できるが、走行性能に課題が生じてしまう。
そこで、本実施例では、本体1の外周を形成する曲面のうち、主に移動させる方向となる前側の曲面の曲率半径を、後側の曲面の曲率半径よりも大きくしている。そして、この前側の曲面は、本体の中央正面から左右に45度付近まで広がっており、その幅は前記後側の曲面の幅よりも狭い形状となっている。このような形状にすることで本体1に略外接する矩形で囲んだときにできる隅部に対して、本体1の外周を近づけることができる。また、本体1の外周が壁方向に近づくことで、より確実に隅部までサイドブラシ6a、6bを届かせることができ、より隅部を掃除することができる。
本実施例の本体1の形状について図9を用いて詳しく説明する。図9は本体1の外周形状を模式的に示す図であり、この図に示すように、本体1の外周は前側の円弧C1、後側の円弧C3、右前側面の円弧C2、左前側面の円弧C4の4つの円弧による曲面に大きく分けられる。
後側の円弧C3は、その曲率半径が160mmの半円である。また、前側の円弧C1は、その中心が後側の円弧C3と同じ位置にあり、円弧C3より大きな曲率半径の190mmの円弧である。また、前側の円弧C1の弧の広がりは半円形状までは広がっておらず、後側の円弧C3の直径、つまり本体1の横幅より狭く、円弧C1の正面を中心として左右斜め前に約45度、合計約90度の広がりであり、より厳密に表すと円弧C1の中心と本体1に略外接する矩形で囲んだときにできる隅部を結ぶ直線L1、L2近傍まで広がっている。よって本体1の前後方向の長さは350mmであり、横幅は320mmとなる。また、右前側面、左前側面を形成する円弧C2、C4は、それぞれ前側の円弧C1と後側の円弧C3をつないでいる。方向転換時に壁や障害物に接触させにくくするためにも、それぞれの円弧C1〜C4は角ができないように滑らかにつながっているほう望ましい。特に、接続部に凹部が存在すると、その凹んだ部分に細い障害物が挟まり込み、時計回りにも反時計回りにも向きが変えられなくなる恐れがあり望ましくない。よって、円弧C1と円弧C2、ならびに円弧C1と円弧C4は、円弧C1より小さな円弧で滑らかに接続されている。また、左右前側面の円弧C2、C4の中心は後側の円弧C3の端と円弧C3の中心を結ぶ直線の略延長線上に設けられ、円弧C2と円弧C3、ならびに円弧C4と円弧C3が接続する点における円弧の接線はそれぞれほぼ同一であり、それぞれの円弧同士は滑らかにつなげられている。
なお、本実施例では左右前側面の円弧C2、C4は同じ曲率をもつ円弧であるが、異なる曲率の円弧でもかまわない。また、本実施例では円弧C2、C4はともに単一の円弧であるが、複数の異なる曲率の円弧をつないだ形状でもよく、また、多項式を用いたスプライン曲線の形状でもよい。また、円弧C2、C4は曲線でなく、直線でもかまわない。これらのような場合においても、円弧C2、C4もしくは円弧C2、C4に相当する部分は円弧C3に滑らかに接続するように円弧C1より小さな円弧で接続されているほうが望ましい。
上記のような外周形状で作られた本体1に略外接する矩形で囲んだときにできる隅部までの距離は、円形状に略外接する矩形で囲んだときにできる隅部までの距離にくらべて近くなる。本体1の横幅は後側の円弧C3の直径であり、前側の円弧C1の曲率半径で仮想的に円形状を描いたときの横幅より狭い分、隅部までの距離を近づけることができる。具体的に式で表すと、半径Rfの円形状における隅部までの距離L1は数式1で表され、本実施例のような前側の円弧の半径をRf、後側の円弧の半径をRbとした形状における隅部までの距離L2は数式2で表される。
数1、数2を較べると(Rb/Rf)が1より小さい場合、つまりはRfがRbより大きい場合、隅部までの距離L2はL1より短くなることがわかる。ただし、前側の円弧C1は左右に45度近傍、より厳密に表すと前側の円弧C1の中心と隅部を結ぶ直線L1、L2近傍まで円弧C1まで広がっていることが必要である。
また、別な見方として、後側の小さな円弧C3を基準に考えると、後側の円弧の半径、つまりは本体1の横幅の半分を半径とする仮想円S1を本体1の前面に合わせて描いたときに、本実施例は本体1の前方の左右斜め45度近傍が仮想円S1より外側に出るような形状と考えられる。ただし、円弧C1は前方斜め45度近傍までしか広がっておらず、本実施例の本体1の幅は仮想円S1の横幅と同じであり、隅部までの距離も仮想円S1の場合と同じである。そのため、本実施例の本体1の形状は仮想円S1と比較しても、本体外周から隅部までの距離は近づいていることがわかる。よって、上記のような本体1の形状にすることにより、本体1、サイドブラシ6a、6bの回転中心となる特にサイドブラシホルダー20a、20bを隅部に近づけることができ、隅部の掃除性能を向上させることができる。
また、本体形状が矩形の場合と比較すると、矩形の方が隅部までの距離を近づけることができるが、上記したように矩形の場合、方向転換時に後方の角が側壁111に接触してしまうため、壁際走行の時点であらかじめ側壁から距離を離しておく必要があり、隅部に本体を近づけにくく、隅掃除ならびに壁際掃除が不十分になる恐れがある。
また、障害物に斜めに近づく場合と正面から近づく場合とで、本体と障害物との間の隙間の面積が大きく異なるため、掃除性能にばらつきが生じやすい。特に、障害物に斜めに近づくと、本体と障害物との間の隙間の面積が広く、障害物近傍の掃除性能が低くなってしまう。しかし、本実施例のように本体1前方が大きな円弧で、本体1斜め前方約45度まで広がっている場合には、障害物に斜めに近づく場合と正面から近づく場合とで、本体と障害物との間の隙間の面積が大きく異ならず、掃除性能にばらつきが生じにくく、斜めから障害物に近づいても障害物近傍の掃除性能が低くなることがない。
また、本体形状が矩形の場合、障害物に斜めから接近すると角が接触しやすく、障害物に強い衝撃力を与えやすいが、本実施例のように本体1前方が大きな円弧、特に本体1斜め前方が大きな円弧であるため障害物への衝撃を小さくすることができる。
このような円形状でない本体1の形状による課題である走行性能について、隅部における方向転換を例に挙げて考える。隅部については、壁際走行中に前方に前壁112を検知することにより、隅部を検知する。隅部掃除については後述するが、隅部掃除終了後に、本体1を方向転換させ、前壁112沿って壁際を走行させる。このときの方向転換は、左右の駆動輪4a、4bを互いに反対方向に同じ速度で回転させることにより、左右の駆動輪4a、4bをむすぶ直線の中央点を回転中心として本体1をその場で回転させて、方向転換させる。
しかし、本実施例では本体1が隅部に近づくように前側の円弧C1の曲率半径を後側の円弧C3のそれより大きくしており、外周形状は円形状ではないため、上記したように方向転換させると周りの壁に接触する恐れがある。たとえば本体1の左右方向の中央でかつ前後方向の中央(本体1の全長は前側の円弧C1の曲率半径190mmと後側の円弧C3の曲率半径160mmの合計350mmであり、本体1外周前面から175mm後方の位置)を回転中心として本体1を回転させた場合、前側の円弧C1の中心より前側に回転中心があることになり、時計回りに回転させると本体1の左前側、つまりは円弧C1の左端近傍が前壁112に接触しやすくなる。これは、円弧C1の端が前記回転中心から本体1の前面までの長さ(175mm)を半径とする円弧の外側にあるためである。
また、側壁111に対しても後側の円弧C3が接触しやすくなる。前記回転中心から本体1の側面までの距離は後側の円弧C3の半径160mmであるが、前記回転中心から真後ろ(円弧C3の中央)の本体外周までの距離は175mmであり、側面までの距離より15mm長く、90度回転させると15mm側壁111との距離が狭くなるためである。
そこで、本実施例では図9のように回転中心となる左右の駆動輪4a、4bを結ぶ直線の中央点を前側の円弧C1の中心、および円弧C3の略中心に位置させる。具体的には、本体1の全長は350mmであるのに対して、回転中心は本体1の前方より190mm後方の位置であり、本体1の全長の前後方向の中心より後方に位置させる。
このような位置を回転中心として回転させたときの模式図を図10に示す。前記回転中心から本体1の正面(円弧C1の中央)までの長さ(190mm)を半径とする円弧上に本体1の前方外周をなす円弧C1があるため、前壁112に接触せずに回転させることができる。つまりは方向転換時において、本体1前側の曲面の曲率半径と同じもしくはその曲率半径に近い回転半径で本体1前側を回転させることができ、本体1の前側を前壁112に接触させにくくなっている。また、前記回転中心から本体1の側面までの距離は160mmであり、前記回転中心から本体1の後方外周をなす円弧C3までの距離も160mmであるため、側壁111に接触せずに回転させることができる。
上記のように、前側の円弧C1の中心と後側の円弧C3の中心をほぼ同じ位置にして、その位置からほぼ左右等距離の位置に駆動輪4a、4bを設けることで、隅部を構成する前壁112、および側壁111などの障害物に接触せずに方向転換ができる。また、本実施例は隅部における方向転換だけでなく、反射走行、平行走行中における一方向の壁などの障害物回避のための方向転換においても接触しにくい本体形状であることがわかる。
また、障害物を検知するために、測距センサー23a〜23gを設けているが、走行中および方向転換中に障害物により接触させにくくするために、測距センサー23a〜23gのうち何個かを本体1の円弧C1と円弧C2、C4との接続点付近に配することが望ましい。これらの接続点は異なる半径の円弧が接続しており、本体1の形状が大きく変化する箇所であり、走行中および方向転換中に接触しやすい箇所である。よって、本実施例では測距センサー23bを右側の接続点付近に、測距センサー23fを左側の接続点付近に配することが望ましい。
また、本実施例のように本体1の後側の円弧C3の中心と回転中心がほぼ同位置の場合、本体1の後方が方向転換時に接触し難いため、本体1の後方に測距センサーを配す必要が無く、安価に構成させることができる。
また、本実施例の本体1の形状は、円形状の場合にくらべて前方斜め45度近傍が隅部に近づくとともに、サイドブラシ6a、6bも斜め前に移動しており、駆動輪4a、4bからより遠ざけることができ、走行中にサイドブラシ6a、6bが駆動輪4a、4bに踏まれにくくなり、スムーズな走行が可能となる。さらに、本実施例のように左右の駆動輪4a、4bを本体1前後方向の中央より後方に配することにより、サイドブラシ6a、6bとの距離がさらに遠くなり、サイドブラシ6a、6bが駆動輪4a、4bに踏まれにくくなり望ましい。
このような自律走行型掃除機による隅部の掃除について図11を用いて説明する。図11は時計回りに壁際を走行している場合を示す。
まず、図11(a)は側壁111に沿って本体1を移動させて壁際走行をしている様子を示す。このときは主に側面の測距センサー23gを用いて、側壁111と本体1との距離を略一定に保つように走行モーター11a、11bを制御しながら前進させている。このとき、サイドブラシ6a、6bは反射走行や平行走行時と同じ速度である毎分約300回転の速度で回転させており、壁際の塵埃を吸口に向かってかき集めている。
次に、図11(b)は本体1前方に側壁111とは別の前壁112に近づき、測距センサー23a〜22fもしくはバンパーセンサー9a、9bにより前壁112を検知し、隅部であることを検知して停止させた状態である。サイドブラシ6a、6bの先端は隅部まで届いており、この状態を1〜5秒間保ち、隅部の塵埃113をかき出す。このとき、サイドブラシ6a、6bはより塵埃113を効率よくかき出すために速度を速めて回転させるほうが望ましく、毎分約400回転の速度で回転させる。
続いて、より確実に隅部の塵埃113をかき出すために図11(c)、(d)のようにサイドブラシ6a、6bを回転させながら、本体1を左右に揺動させる。隅部を検知して停止させたときの本体1の向き、つまりは駆動輪4a、4bの向きが側壁111に対して平行ではなく、右前、左前を向いている場合、サイドブラシ6bから隅部までの距離は最短ではなく、隅部にサイドブラシ6bの先端が届かない恐れがある。そのため、小刻みに本体1を時計回りと反時計回りに交互に回転させる。まず本体1を隅部側である左側に約30度回転させ、その後時計回りに約60度回転させることで、左右に約30度ずつ揺動させる。この揺動動作により、たとえ隅部を検知して停止させたときの本体1の向きが側壁111に対して平行でなく、サイドブラシ6bが隅部から遠ざかっていたとしても、サイドブラシ6bの位置が移動することで、隅部に近づくことができ、隅部までサイドブラシ6bの先端が届き、隅部の塵埃113をかき出すことが可能になる。この揺動動作を約0.5秒周期で、10往復程度行い、合計5秒程度行う。なお、上記揺動動作中もサイドブラシ6a、6bは反射走行時、平行走行時よりも速く回転させ、毎分約400回転の速度で回転させる。
サイドブラシ6bの回転に対して、非常に速く揺動させると、前記揺動動作を一往復させる間に、回転しているサイドブラシ6bの刷毛が隅部に近づけない場合がある。揺動動作一往復の間に少なくとも1回はサイドブラシ6bの刷毛を隅部に近づけた状態にすることが望まれ、サイドブラシ6bの束の数や回転速度を考慮すると、揺動動作の周期は約0.2秒以上必要と考える。また、揺動動作の周期を長くすれば、サイドブラシ6bの刷毛が隅部に近づいた状態になる回数を増やせるが、頻度よくサイドブラシ6a、6bの向きを変えることにより、床面の凹凸などに引っかかり、サイドブラシ6a、6bを一方向から当てるだけではかき出しにくい塵埃に対して、サイドブラシ6a、6bを異なる角度で頻度よく当ててかき出すためにも、ゆっくりとした揺動動作ではなく、5秒以下の周期で揺動させたほうが望ましい。
また、時間をかければより塵埃はかき出されるが、電池52の限られた電池容量の中で部屋全体を掃除するためには、同じ場所で留まる時間は短いほうがよい。そのためにも上記した隅部での塵埃のかき出し動作は、少なくとも自律走行型掃除機101が方向転換時に90度回転するのに要する平均的な時間以上で、なおかつ、部屋を構成する向かい合う壁と壁の間を自律走行型掃除機101が一往復するのに要する時間程度以下であることが望ましく、2〜20秒程度が望ましい。なお本実施例では時計回り、反時計回りに約30度ずつ揺動させたが、揺動動作の時間を効率的に短くするためにも、より小さな角度で揺動させてもかまわない。
このように所定の時間、隅部で塵埃をかき出した後、図11(e)のように進行方向が前壁112に略平行になるように、少なくとも左側面の測距センサー23gを監視しながら、本体1を約90度時計回りに回転させる。その後、サイドブラシ6a、6bは反射走行時、平行走行時と同様な速度である毎分約300回転の速度に戻し、前壁112に対して壁際走行を継続する。
本実施例として時計回りに壁際を走行したときの動作を示したが、反時計回りの場合は、主に右側面の測距センサー23aを用いて壁際を走行するとともに、本体1の回転方向を逆にして、右側のサイドブラシ6aにより隅部の掃除をさせる。
また、上記隅掃除運転に関して、必ずしも上記一連の動作である必要はなく、例えば、隅部まで到達してすぐに揺動動作に移っても良いし、逆に揺動動作をせずに停止状態を保持するだけよい。また、隅部においてサイドブラシ6a、6bの回転速度を速くしているが、速くしなくても良いし、床面の状況などに合わせて回転速度を変化させても良い。
また、上記隅部掃除に関して、壁際走行中もしくは平行走行中だけでなく、反射走行中に隅部であると判断したときにも上記の隅部掃除動作を行ってもよい。
また、本実施例では駆動輪4a、4bの中心の位置を、本体1の前側の円弧C1の中心で、かつ後側の円弧C3の中心に配したが、その位置に限定せずに、前側の円弧C1の中心より前側でもかまわない。駆動輪4a、4bの位置を前に移動しても、本体形状は変わらないため、隅部の掃除性能は同じである。しかし、方向転換時に一端後退させる必要がある。ただし、本実施例は前方が大きな円弧で構成されており、本体形状が本体横幅を一辺とする正方形の場合に比べて回転半径が小さくなり、その分後退させる距離を短くすることができ、方向転換する際の時間および消費電力を減らすことができる。ただし、回転中心が本体1の中心より前側に遠く離れていると、本体形状が正方形の場合よりも方向転換時に後退させる距離が長くなる。そのため、本体形状が正方形の場合にくらべて、後退させる距離が短くなるような位置、つまりは本体1の前面より本体1の横幅の半分の距離より後方の位置に回転中心を設けることが望ましい。よって、駆動輪4a、4bの中心の位置は、本体1の前面より本体1の横幅の半分の距離より後方の位置に設けることが望ましい。
また、特に、駆動輪4a、4bの中心の位置を本実施例の位置に限定せずに、前側の円弧C1の両端と後側の円弧C3上の中央からの距離が等しくなるような位置に駆動輪4a、4bの中心を配することで、本体1の回転最小半径を小さくすることができ、狭いところでの方向転換が容易になる。
よって、大きく後退させずに方向転換が可能であるとともに、回転最小半径を小さくさせるために、駆動輪4a、4bの中心の位置は前側の円弧C1の中心より前側で、かつ本体1の前面より本体1の横幅の半分の距離より後ろ側に配することが望ましい。
ただし、これらのように駆動輪4a、4bを配置した場合における隅部の掃除は、一端前壁112まで本体1を近づけ、上記のようにサイドブラシにより隅部を掃除した後、本体1を後退させた後に方向転換させるようにする。そのとき、本体1が回転しても前壁に接触しない距離以上、つまりは前壁112から駆動輪4a、4bの中心が前側の円弧C1の半径以上離れるように後退させる。また、側壁111に対しても、本体1後側の円弧C3が接触しないように、あらかじめ若干隙間を広く壁際を走行させる、もしくは、方向転換する前に側壁111から離れるように斜めに、もしくは円弧状に後退させるほうが望ましい。また、前壁112等に接触しないように方向転換中も測距センサー23a〜23gで周囲の障害物を検出して制御することは望ましい。また、測距センサー23a〜23gだけでなく、本体1の後方にも測距センサーを配して障害物を検出して制御することも望ましい。
また、円弧C1が円弧でなく直線の場合、本体1の前側半分は略矩形状となり、障害物に対して真正面から近づかない限り、その角部から障害物に接近し、前記角部から接触することになり望ましくない。たとえ前記角部が円弧であったとしても、曲率半径が小さな円弧であり、接触面積が小さいため、障害物に強い衝撃力を与えやすく、望ましくない。
さらに、障害物に斜めに近づく場合と正面から近づく場合とで、本体と障害物との間の隙間の面積が大きく異なるため、掃除性能にばらつきが生じやすい。特に、障害物に斜めに近づくと、本体と障害物との間の隙間の面積が広く、障害物近傍の掃除性能が低くなってしまう。また、隅部掃除において本体1を揺動させる場合、前記角部が前壁112に頻度よく接触するようになり、望ましくない。よって、本体1の正面は円弧形状となっていることが望ましい。
以上のように本実施例では、本体1の前側の円弧C1の曲率を後側の円弧C3の曲率より大きくし、本体1前方左右45度近傍が本体1の横幅を直径とする円弧より外側に出るような大きな円弧で形作ることにより、隅部に本体1を近づけることができ、隅部へサイドブラシ6a、6bが届きやすくなり、隅部の掃除性能を向上させる。
すなわち、本実施例の構成によれば、本体の外周を形成する曲面のうち、前側の曲面の曲率半径を後側の曲面の曲率半径よりも大きくすることにより、本体の前側斜め45度近傍の外郭と、本体の前面の横幅(左右方向)の中央部に略外接する矩形で囲んだときにできる隅部との距離を近づけることができ、隅部に近づけた本体の前側斜め45度近傍にサイドブラシを設けることにより、サイドブラシが、隅部に届きやすくなり、隅部を掃除することができる。これは本体の形状を円形状から異ならせたことによる効果であり、複雑な機構を設けたり、複雑な制御を施したりする必要がなく、容易な機構および制御で隅部の掃除が可能となる。