JP6355448B2 - ガスセンサ - Google Patents
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Description
このような分野において、水素は、効率の観点から液化させた状態で輸送、貯蔵することが行われている。しかし、液体水素の沸点は−250℃以下と低いため、周囲環境の熱により容易に気化してしまう。これを防止するために、液体水素のタンクは、液体水素の容器の周囲に、真空断熱層を備えた構造となっている。また、さらに真空断熱層の外殻に窒素もしくは液体窒素が充填された三重殻構造のタンクもある。
このような虞を回避するために、前記真空断熱層への水素の漏洩を早期に検知して、水素の漏洩があった場合には前記真空断熱層の排気を行う等の手段を早急に講じる必要がある。
また、宇宙輸送分野や有人宇宙飛行分野でも安全性を高めるために宇宙空間で、すなわち真空中で水素ガスを選択的に検知する技術が求められている。
なお、これらの用途では、大気圧から1×10-3Torrの圧力範囲で水素ガスを選択的に検知することを求められている。
その他のガスセンサとして、超音波式ガスセンサ、気体熱伝導式ガスセンサ、紫外線レーザーを光源に用いてラマン散乱を利用する方式のガスセンサがある。しかし、超音波式ガスセンサは、真空中では超音波が伝播しない。気体熱伝導式ガスセンサは、0.1Torr以下の圧力範囲では、気体分子の平均自由行程が素子サイズよりも大きくなってしまい、気体分子による素子の熱移動効率が低下してしまう。紫外線レーザーを光源に用いてラマン散乱を利用する方式のものでは、真空中は分子密度が低く、散乱強度が低下してしまう。つまり、いずれも真空中での使用に適したものではない。
真空計は、機械的な現象に基づいて圧力を測定する隔膜式真空計等、気体の輸送現象に基づいて圧力を測定するピラニ真空計、熱電対式真空計等、気体の電離現象に基づいて圧力を測定するペニング真空計、電離真空計、質量分析計等と、圧力を測定する原理によって分類されており、各真空計は、それぞれの原理に基づいて計測可能な圧力範囲が限定され、用途・目的に応じて使い分けられている。なお、各真空計の原理と特徴は一般的に良く知られた技術であるため、先行技術文献は記載しない。
このような気圧の変化は、ヒータ制御回路によって一定の動作抵抗値となるように制御されたヒータに印加される電流や電圧をモニタすることで検知できるので、前記電流や電圧に基づいて被検知ガスの検知感度を調整することで、常に最適な感度で被検知ガスの検知ができるようになる。
以上のように、単純な構造でありながら、圧力に依存せずにさまざまな圧力範囲で、被検知ガスを高感度に選択的に検知可能なガスセンサが実現できる。
なお、被検知ガスは水素ガスに限らず、ガス分子の結合解離エネルギーが酸素以下である還元性の高い物質であればよく、例えばメタンガス、ブタンガス等であってもよい。
なお、前記検知空間に設置された温度センサが検知した前記検知空間の温度と、前記ヒータに印加される電流または電圧の変化に基づいて、前記検知空間の気圧の変化を算出する気圧算出部を設けて、前記抵抗切替部は、前記気圧算出部により算出された気圧に応じて、前記可変型負荷抵抗の抵抗値を切り替える構成であってもよいし、前記ヒータに印加される電流または電圧に、所定の閾値を設定しておき、前記所定の閾値以上であるか未満であるかに基づいて、前記抵抗値を変化させる構成であってもよい。
ガス検知素子1は、絶縁基板3の上面に形成された一対の検知電極4a、4bと、検知電極4a、4bを被覆するように設けられた酸化物イオン伝導性と電子伝導性の両方を備える金属酸化物の一例である酸化セリウムを主成分として構成されるガス感応層2と、絶縁基板3の下面には薄膜ヒータ5を備え、検知電極4が検知したガス感応層2の抵抗値の変化に基づいて、被検知ガスを検知するものである。
このように製造されたガス検知素子1は小型・低消費電力であり、同一空間にガス検知素子1を複数備える冗長設計が可能となる。例えば、複数のガス検知素子1のうち、一つをメインのガス検知素子1とし、他をメインのガス検知素子1の健全性を評価するために用いることができる。また、このようなガス検知素子1を真空断熱層等の真空中に設置する場合は、ガス検知素子1の故障時の取替えが困難であるため、ガス検知素子1を、予めスペアとして複数個設置することもできる。
このとき、検知空間に被検知ガスとして水素ガス、メタンガス、ブタンガス(以下では、単に「被検知ガス」という場合がある。)のようにガス分子の結合解離エネルギーが酸素以下である還元性の高い物質が存在した場合、ガス感応層2に被検知ガスが到達すると酸化セリウムの電荷移動が容易になって電子伝導性が飛躍的に変化する。
ガス感応層2は、酸化物イオン伝導性と電子伝導性の両方の性質を持つ混合伝導性の金属酸化物のみを成分として構成することもできるし、さらに、白金等の貴金属触媒を担持することもできる。ガス感応層2に貴金属触媒を担持することで、被検知ガスが水素のように還元性の高いガスではない場合であっても上述と同じように検知することができる。
検知回路10は、ガス検知素子1と直列に接続された可変型負荷抵抗R0と、ガス検知素子1と可変型負荷抵抗R0に所定の動作電圧を印加する電源部Eと、可変型負荷抵抗R0に並列に接続され、可変型負荷抵抗R0に印加される動作電圧を検知する電圧計Vとを備えている。
上述のように、ガス検知素子1は、検知空間に被検知ガスが存在すると、抵抗値が低抵抗となる。従って、電圧計Vによって、可変型負荷抵抗R0に印加される動作電圧を検知することで、ガス検知素子1の抵抗値、または出力の変化を間接的に算出することができる。
薄膜ヒータ5の材質は、特に制限されるものではなく、例えば、白金や金等の貴金属、白金パラジウム合金等を蒸着等によって設けることができる。特に白金は非常に耐久性に優れた材料であり、薄膜ヒータ5に好ましく適用することができる。
しかし、ガス検知素子1の動作温度が1000℃より高いと、酸化物イオンの易動度が上がりすぎ、電子伝導性が良くなりすぎて、水素を検知したときの変化幅が十分でなくなるから好ましくない。
一方、ガス感応層2を構成する酸化セリウムの耐熱性を考慮すると、ガス検知素子1を低温で動作させるほど、動作抵抗値は上がり電子伝導性は下がるが、寿命は延びる。しかし、ガス検知素子1の動作温度が200℃より低いと、酸化物イオンの易動度が制限され、電子伝導性が低下しすぎてしまうので好ましくない。
図4からわかるように、水素ガスが存在する場合では、動作抵抗値の変化比は、動作温度が低いほど大きくなる傾向がある。また、寿命の観点からも、上記のように400℃から650℃の温度範囲が好ましく採用される。
図5に示されるように、検知空間の気圧が下がると、薄膜ヒータ5の動作温度は上がる。これは、圧力が低いほど熱移動の媒体となる気体分子が減るからである。逆に、検知空間の気圧が上がると、薄膜ヒータ5の動作温度は下がる。これは、圧力が高いほど熱移動の媒体となる気体分子が増えるからである。従って、薄膜ヒータ5の動作温度をモニタすることで検知空間の気圧変化が検知できる。
なお、別途併用する温度センサには、サーミスタや測温抵抗体のほか、ガス検知素子1の絶縁基板3と、同じ絶縁基板3を密閉容器内に空気または不活性ガスなどと封入したものも適用することができる。この場合、ガス検知素子1と温度センサの温度特性が近くなるため、補正が容易となる。
ホイートストンブリッジを構成する抵抗R1と抵抗R3とは同じ抵抗値であり、抵抗R2と薄膜ヒータ5とは同じ抵抗値である。
これら抵抗の両端の非平衡電圧をオペアンプA1に差動入力し、出力をパワートランジスタTR1のエミッタフォロワで受け、薄膜ヒータ5の抵抗値が常に抵抗R2と同じ値になるようにホイートストンブリッジに印加する動作電圧を自動的に調節する。
なお、薄膜ヒータ5に印加される動作電流または動作電圧値をモニタするモニタ部としては、薄膜ヒータ5に並列に接続された電圧計や、薄膜ヒータ5に直列に接続された電流計が用いられる。
実験にあたり、図6に示すような、真空チャンバ30を用意した。
真空チャンバ30は約30Lの容量を有し、周囲には水素、酸素、窒素を夫々真空チャンバ30内に供給するためのリークバルブ31,32、ベントバルブ33、真空チャンバ30内を真空にするための真空ポンプ34が備えられ、内部にガス検知素子1が設置されている。
これは、周囲の酸素濃度(分圧)に応じてガス感応層2を構成する酸化セリウムの結晶格内の酸素が放出され、その結果生じる酸素空孔が酸化物イオンの移動が促された結果だと考えられる。
同様の傾向は、真空チャンバ30内に窒素を供給したときの抵抗値RNでも確認できた。なお、抵抗値RA、抵抗値RNの比較から、ガス感応層2は酸素にも応答していることがわかる。また、1×102〜1×10-3Torrの範囲で抵抗値RAと抵抗値RNには酸素分圧に対応した差が認められ、1×10-5Torr付近では抵抗値RAと抵抗値RNの差が小さくなった。これは高真空中では酸化セリウムから酸素が放出され酸素空孔が増加して酸化物イオンの易動度が高くなったためだと考えられる。
一方、真空チャンバ30内に水素ガスを供給したときの抵抗値RHは、抵抗値RA、抵抗値RNに比べて、約1/100以下まで大きく低下し、この傾向は、真空チャンバ30内が1×10-5Torrまで減圧するまで維持されることが確認できた。
これは、ガス感応層2を構成する酸化セリウムの表面で水素ガスが酸化しているのではなく、酸化セリウムへの水素ガスの吸着によって格子内酸素が引き付けられて、酸素空孔の移動が容易になった結果だと考えられる。この結果より、ガス感応層2に酸化セリウムを用いたガス検知素子1によると、約1×10-5Torrまでの任意の圧力下で水素ガスを検知可能であることがわかる。
なお、この状態で窒素を約1×102Torrまで導入するとセンサ抵抗値は60kΩ程度まで増加した。これは、ガス感応層2の酸化セリウムが水素ガス中で金属にまで還元されたのではなく、酸化セリウムの表面に水素ガスが吸着することで、酸化物イオン伝導性が高くなったためであると考えられる。メタンガスとブタンガスについても水素ガスと同様の結果が確認された。
次に、リークバルブ32から水素ガスを段階的に所定の条件(水素分圧比約1%、約4%、51%、83%)となるように供給し、圧力が安定したときの抵抗値を取得した。
異なる圧力条件(1×10-3Torr、1×10-4Torr)についても夫々同様の実験を行った。なお、平衡圧力が1×10-3Torrであるときは、リークバルブ32から水素ガスを段階的に所定の条件(水素分圧比3.8%、35%、66%、83%)となるように供給し、圧力が安定したときの抵抗値を取得した。また、平衡圧力が1×104Torrであるときは、リークバルブ32から水素ガスを段階的に所定の条件(水素分圧比9%、33%、53%、68%、80%)となるように供給し、圧力が安定したときの抵抗値を取得した。その結果を図8に示す。
なお、1×10-3Torrの圧力条件のデータをもとに近似式で外挿により求めた水素ガスの検知限界濃度は、1000ppm以下と見積もられる。
酸化セリウムを主成分として構成されたガス感応層2を備えるガス検知素子1では、真空中では、水素ガスの吸着に伴う電子伝導度変化を利用するため、高感度に水素ガスを検知することができる。
抵抗値への酸素分圧比の影響評価を目的として、真空チャンバ30内に窒素と異なる分圧比となるように酸素を供給し、各酸素分圧比において水素分圧比を変化させたときの電気抵抗値の傾向を確認する実験を行った。
次に、リークバルブ32から水素ガスを段階的に所定の条件となるように供給し、圧力が安定したときの抵抗値を取得した。その結果を図9に示す。
また、水素濃度に対する抵抗値が大きくなる変極点は酸素濃度の影響を受けることを確認した。酸素濃度が高い方が抵抗値が急激に低下するときの水素濃度も高くなることがわかる。この結果より、抵抗値が大きく変化する変極点は酸素と水素の濃度比(分圧比)で決まると考えられる。
そこで、窒素バランス中で酸素濃度(分圧)が0.1%になるように調整し、そこに水素ガス、メタンガス、ブタンガスをそれぞれ所定量ずつ注入してそれぞれ濃度(分圧)を変化させたときの各抵抗値を取得した。その結果を図12に示す。
被検知ガスの種類によって変極点の濃度が異なるのは、ガス分子の解離のし易さと関係があると考えられる。
解離結合エネルギーは、酸素は493kJ/mol、水素が432J/mol、メタンが434±6J/mol、ブタンが346±8J/mol、窒素が942J/molであることから、解離結合エネルギーは、ブタン<水素≒メタン<酸素<<窒素の順に大きい。これは、図12の結果と一致する。
酸化セリウムの酸素吸蔵は気相の酸素が解離してバルク内に取り込まれる反応であるので、酸素よりも解離結合エネルギーが低い水素ガス、メタンガス、ブタンガスも酸化セリウム表面に解離吸着すると考えられる。
水素ガス、メタンガス、ブタンガスが解離して水素イオンが酸化セリウム表面に吸着すると、バルク内の酸素原子が引き付けられて、見かけ酸素空孔が増加する。その結果、還元性ガスの吸着が酸素より優位な環境下では電子伝導性が著しく向上する。
そこで、真空中と大気中とで検知回路10の可変型負荷抵抗R0の抵抗値を切り替えることで、電圧計Vによって検知する電圧の変化幅を変更することができる。
例えば、真空中であるときは可変型負荷抵抗R0の抵抗値を1kΩに変更し、大気中であるときは可変型負荷抵抗R0の抵抗値を500kΩに変更することで、0から4%vol%の範囲で水素を精度良く検知することができる。
つまり、薄膜ヒータ5に並列に接続された電圧計や、薄膜ヒータ5に直列に接続された電流計をモニタすることで、気圧の変化が検知できる。このように検知された気圧の変化に基づいて、可変型負荷抵抗の抵抗値を切り替える抵抗切替部を備え、該抵抗切替部によって、可変型負荷抵抗R0の抵抗値の切替のトリガとなる所定の気圧閾値、例えば1Torrに対応する電流値や電圧値を予め設定しておき、前記電流値や電圧値が、気圧が前記所定の気圧閾値未満であることを示すと抵抗値を下げ、所定の気圧閾値以上であることを示すと抵抗値を上げるように制御すればよい。なお、所定の気圧閾値は一つでもよいし、複数であってもよい。気圧に応じて好ましい抵抗値を算出しておき、検知空間の気圧に応じて、前記抵抗値を変化させることで、常に被検知ガスの検知感度を最適なものに調整することができる。
2 ガス感応層(ガス感応部)
3 絶縁基板
4 検知電極
10 ガス検知回路
20 ヒータ制御回路
100 ガスセンサ
Claims (5)
- ガス感応部と、前記ガス感応部に接続された検知電極と、前記ガス感応部を加熱するヒータとを備えたガス検知素子と、
前記検知電極が検知した前記ガス感応部の抵抗値の変化に基づいて、被検知ガスを検知する検知回路と、前記ヒータを制御するヒータ制御回路とを備えたガスセンサであって、
前記ガス感応部は酸化物イオン伝導性と電子伝導性の両方を備える金属酸化物を主成分として構成してあり、
前記検知回路は、前記ヒータ制御回路が前記ヒータの動作抵抗値が一定となるように印加する電流または電圧に基づいて、前記ガス検知素子の検知感度を制御することを特徴とするガスセンサ。 - 前記検知回路は、
前記ガス検知素子と直列に接続された可変型負荷抵抗と、
前記ガス検知素子と前記可変型負荷抵抗に電圧を印加する電源部と、
前記可変型負荷抵抗に並列に接続され、前記可変型負荷抵抗に印加される電圧を検知する電圧計と、前記可変型負荷抵抗の抵抗値を切り替える抵抗切替部と、を備え、
前記ヒータ制御回路は、
前記ヒータに印加される電流または電圧を検知する検知部を備え、
前記抵抗切替部は、
検知空間に設置された温度センサが検知した前記検知空間の温度と、前記検知部が検知した前記ヒータに印加される電流または電圧に基づいて、前記可変型負荷抵抗の抵抗値を切り替えることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。 - 前記抵抗切替部は、前記ヒータに印加される電流または電圧に対応する気圧が、
所定の気圧閾値未満であると前記抵抗値を下げ、
所定の気圧閾値以上であると前記抵抗値を上げることを特徴とする請求項2に記載のガスセンサ。 - 前記所定の気圧閾値が、大気圧であることを特徴とする請求項3に記載のガスセンサ。
- 前記ヒータ制御回路は、前記ヒータの動作温度を摂氏400度から650度の範囲に維持するように構成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のガスセンサ。
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