以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1~図9を参照して、本発明の第1実施形態によるガスセンサ100の構成について説明する。
第1実施形態によるガスセンサ100は、被検知ガスを検知して、検知結果(出力電圧Vo1)を外部(たとえば、表示部202および情報処理装置203)に出力するように構成されている。たとえば、図1に示すように、ガスセンサ100は、液体水素格納容器200を覆う真空断熱槽201内に配置される。真空断熱槽201の内部では、大気圧よりも低い気圧Pを有する空間Aが形成されており、空間Aは、真空断熱槽201の外部と液体水素格納容器200とを断熱する機能を有する。なお、真空断熱槽201の空間Aは、特許請求の範囲の「検知空間」の一例である。
ここで、液体水素格納容器200は、たとえば、再使用観測ロケットまたは再使用観測衛星に搭載される。この場合、真空断熱槽201に配置されるガスセンサ100には、耐圧防爆性能が要求される。そこで、第1実施形態によるガスセンサ100は、耐圧防爆性能を有している。また、後述するように、第1実施形態によるガスセンサ100は、真空計(気圧計)としての機能を有する。以下、詳細に説明する。
図2に示すように、ガスセンサ100は、ガス検知素子1と、検知回路2と、温度制御回路3と、電源回路4と、コネクタ5とを備える。なお、検知回路2は、特許請求の範囲の「検知部」および「気圧検知回路」の一例である。また、温度制御回路3は、特許請求の範囲の「加熱部制御回路」の一例である。
たとえば、図3に示すように、ガスセンサ100は、ガス検知素子1が真空断熱槽201の空間Aのガスに接触可能な状態で配置されている。具体的には、ガスセンサ100は、検知回路2および温度制御回路3等を収納する筐体6を備える。すなわち、第1実施形態によるガスセンサ100では、ガス検知素子1と検知回路2と温度制御回路3とは、一体的(on board)に配置されている。
ここで、第1実施形態では、筐体6は、耐圧構造および防爆構造を有する。具体的には、筐体6は、箱形状を有する筐体本体部61と、逆火防止機能を有するフレームアレスタ62と、筐体6を真空断熱槽201に固定するための固定部63とを含む。また、筐体6の内部と、外部に検知結果(出力電圧Vo1)を伝達するためのコネクタ5とを接続するケーブル64が設けられている。なお、本願明細書では、「防爆構造」とは、必ずしも爆発、火災および火炎の伝達が生じない構造を意味するものではなく、少なくとも爆発の発生、火災の発生、および、火炎の伝達が抑制することが可能な構造を意味するものとして記載している。たとえば、「防爆構造を有するガスセンサ」という記載が、防爆に関する標準規格に準拠していることを意味するものではない。
筐体本体部61は、大気圧より低い気圧下においても形状を維持する強度を有することにより、耐圧(耐圧力)構造を構成する。そして、筐体本体部61は、金属により構成されており、筐体6の内部または外部のいずれかで火炎が生じた場合に、筐体6の内部と外部との間で火炎が伝達するのを抑制する機能を有する。また、フレームアレスタ62は、たとえば、5層の焼結金網からなり、ガス検知素子1の内部と外部(筐体6の外部)との間で、火炎が伝達するのを抑制する機能を有する。
また、固定部63は、液体水素格納容器200または真空断熱槽201に締結部材(図示せず)等により、固定されるように構成されている。また、コネクタ5は、内部の電極および配線と外部の間において、防水構造を有する。そして、ガス検知素子1のガス感応部11は、フレームアレスタ62を介して導入された、空間Aの被検知ガスに感応するように構成されている。
(ガス検知素子の構成)
図4に示すように、ガス検知素子1は、ガス感応部11と、検知電極12aおよび12bと、絶縁基板13と、ヒータ14とを含む。絶縁基板13は、平板形状を有する。そして、検知電極12aおよび12bは、絶縁基板13の一方面(矢印Z1方向側の面)に対として形成されている。そして、ガス感応部11は、検知電極12aおよび12bを被覆するように設けられている。ヒータ14は、絶縁基板13の他方面(矢印Z2方向側の面)上に配置されている。
ここで、第1実施形態では、ガス感応部11は、半導体を主成分として構成されている。たとえば、ガス感応部11は、酸化物イオン伝導性と電子伝導性の両方を備える金属酸化物半導体である酸化セリウムを主成分として構成されている。すなわち、ガスセンサ100は、混合伝導体式ガスセンサとして構成されている。
詳細には、酸化セリウムは、約300℃以上の温度下では、周囲の酸素濃度(分圧)に応じて結晶格子内の酸素を吸蔵・放出する特性を有する。そして、酸化セリウムが、空間A中に酸素を放出することによって生じる酸素空孔が、酸化物イオンの移動を促して、ガス感応部11の電子伝導性(抵抗値Rs)が変化する。
電子電導性が変化する理由は、酸化セリウム(CeO
2-X)が不定比性酸化物であることに由来して、結晶内部の酸素空孔濃度と電子電導性とが比例関係を有するからである。たとえば、約500℃に加熱した酸化セリウムは、周囲の酸素濃度に基づいて下記式(1)の反応の平衡状態に維持される。
この状態で、低酸素もしくは真空中では、ガス分子の結合解離エネルギーが酸素以下である還元性の高い物質(たとえば、水素ガス)の水素は、酸化セリウムの酸素原子サイトO
O
Xに解離吸着し、下記式(2)のように、4価のセリウムCeに電子が移動して3価のセリウムCeとなり、これがキャリアとして機能して電子伝導性が向上される。
すなわち、空間Aに被検知ガスとして水素ガス、メタンガス、ブタンガスのようにガス分子の結合解離エネルギーが酸素以下である還元性の高い物質が存在した場合、ガス感応部11に被検知ガスが到達すると酸化セリウムの電荷移動が容易になって電子伝導性が飛躍的に向上する(抵抗値Rsが低下する)。
上記の式(2)の反応は、水素分圧が酸素分圧よりも大きい場合に起こる反応であるため、空間Aの全圧(気圧P)には依存しない。これにより、ガス感応部11に酸化セリウムを用いることは、真空中の水素ガスを高感度に検知するのに適している。
ここで、図5に、空気中および水素中から減圧しながらガス感応部11の抵抗値Rsを実測した測定結果(特性例)を示す。なお、「空気中」とは、窒素ガスおよび酸素ガスを含むガスを意味する。また、「水素中」とは、真空状態の空間Aに水素ガスを封入した状態を意味する。図5に示されるガス感応部11の特性から、検知回路2に要求される抵抗値Rsの検知範囲は、約1kΩ以上約100MΩ以下(5ディケート)の広範囲であることが判明している。そこで、第1実施形態によるガスセンサ100は、検知範囲が約1kΩ以上約100MΩ以下となるように構成されている。
図4に示すように、検知電極12aおよび12bは、互いに離間して配置されており、たとえば、一対の櫛歯形状を有する。また、検知電極12aおよび12bは、たとえば、白金や金等の貴金属、白金パラジウム合金等を蒸着等により形成されている。ここで、白金は耐久性に優れた材料であり、検知電極12aおよび12bを構成する材料として適用するのに好ましい。
絶縁基板13は、絶縁体からなり、たとえば、アルミナ、シリカ、ガラス等のいずれかからなる。たとえば、絶縁基板13は、アルミナ(アルミナセラミックス)からなる。アルミナは、表面が比較的平滑でなく、ナノオーダーの凹凸を有するため、アンカー効果により検知電極12aおよび12bやヒータ14との接合を強固にすることが可能である。
ヒータ14は、白金や金等の貴金属、白金パラジウム合金等からなる。そして、ヒータ14は、絶縁基板13の他方面側に配置(成膜)されている。そして、ヒータ14は、後述する温度制御回路3から電力が供給されて発熱することにより、ガス感応部11を加熱するように構成されている。
(検知回路の構成)
図6に示すように、第1実施形態では、ガス感応部11に接続されたコンデンサ21と、抵抗値Rsに対応するコンデンサ21の充電時間twを取得して、取得した充電時間twに基づいて被検知ガス(たとえば、水素ガス)を検知するマイクロコンピュータ回路22(以下、「マイコン22」とする)と、比較回路23とが設けられている。図2に示すように、マイコン22は、制御部22aとメモリ22bとを含む。なお、充電時間twは、値であり、特許請求の範囲の「充電または放電する時間に関する値」および「時間に関する値」の一例である。また、コンデンサ21は、特許請求の範囲の「容量素子」の一例である。また、マイコン22は、特許請求の範囲の「検知部」および「気圧検知回路」の一例である。また、比較回路23は、特許請求の範囲の「検知部」の一例である。
詳細には、コンデンサ21は、所定の電気容量C1を有する固定コンデンサからなる。図6では、コンデンサ21を、1つのコンデンサとして図示しているが、コンデンサ21が複数のコンデンサを有する充電回路から構成されていてもよい。
そして、ガス感応部11とコンデンサ21とは、直列に接続されている。これにより、ガスセンサ100は、ガス感応部11の抵抗値Rsとコンデンサ21の電気容量C1とのRC直列回路を構成する。詳細には、コンデンサ21のガス感応部11に接続されている端子とは反対側の端子には、電圧値Vccを印加する電源回路4が接続されている。ガス感応部11のコンデンサ21に接続されている側の検知電極12aとは反対側の検知電極12bは、接地されている。また、ガス感応部11とコンデンサ21とは、抵抗値R1を有する抵抗器25を介して直列に接続されている。
検知回路2の充放電切替回路24は、コンデンサ21の両端に接続され、コンデンサ21を充電させる状態と、コンデンサ21から放電させる状態とを切り替えるスイッチ部24aを含む。また、充放電切替回路24は、抵抗器24bおよびダイオード24cを含む。そして、スイッチ部24aのドレインは、抵抗器24bを介して接地されているとともに、ダイオード24cのアノードに接続されている。また、スイッチ部24aのソースは、コンデンサ21および電源回路4に接続されている。そして、ダイオード24cのカソードは、コンデンサ21および抵抗器25に接続されている。
たとえば、スイッチ部24aは、P型の電界効果型トランジスタ(FET)として構成されており、マイコン22からの放電指令信号Saを取得した場合(パルス信号がローのレベルの場合)に、オン(コンデンサ21の両端を短絡)するように構成されている。これにより、コンデンサ21からスイッチ部24a、ダイオード24c、および、コンデンサ21の順に電流が流れ(放電され)、コンデンサ21の両端の電位差が小さくなる。そして、スイッチ部24aは、マイコン22からの放電指令信号Saを取得しない場合(パルス信号がハイのレベルの場合)に、オフ(コンデンサ21の両端を切断)するように構成されている。これにより、コンデンサ21から抵抗器25およびガス感応部11を介してグラウンドに電流が流れ、コンデンサ21の両端の電位差が大きくなることにより充電される。
また、ダイオード24cを設けることにより、スイッチ部24aのみで充放電切替回路24を逆流する電流を抑制する場合に比べて、スイッチ部24aとダイオード24cとの両方により充放電切替回路24を逆流する電流を抑制することができるので、より確実に充放電切替回路24を逆流する電流を抑制することが可能になる。
図7に示すように、コンデンサ21が充電される際には、コンデンサ21と抵抗器25との接続点N1における電圧値(入力電圧Va)は、コンデンサ21の電気容量C1、ガス感応部11の抵抗値Rsおよび抵抗器25の抵抗値R1から定まる時定数で低下する。すなわち、電気容量C1および抵抗値R1は、固定値であるので、ガス感応部11の抵抗値Rsの変化が、入力電圧Vaの時定数の変化に反映される。これにより、コンデンサ21と抵抗器25との接続点N1における電圧値(入力電圧Va)が、基準電圧値V1から基準電圧値V2まで変化するために要する時間(以下、「充電時間tw」とする)は、下記式(3)を用いて表すことが可能である。
そして、比較回路23には、コンデンサ21と抵抗器25との接続点N1における電圧値(入力電圧Va)が入力される。また、検知回路2は、分割抵抗回路26を含む。分割抵抗回路26は、電源回路4と比較回路23との間に配置されており、基準電圧値V1と基準電圧値V1よりも低い基準電圧値V2とを比較回路23に入力するように構成されている。分割抵抗回路26は、分割抵抗(複数の抵抗器)により基準電圧値V1およびV2を生成しているので、電源回路4の電圧値Vccの大きさが変化した場合でも、基準電圧値V1と基準電圧値V2との比は変化しない。基準電圧値V1と基準電圧値V2との比は変化しないことにより、上記式(3)に示すように充電時間twは、電源回路4の電圧値Vccの変化(変動)の影響は、受けにくい。
ここで、比較回路23は、ガス感応部11とコンデンサ21とのRC回路からのアナログの信号を、充電時間twの情報を含むデジタルの信号に変換するように構成されている。たとえば、比較回路23は、ウィンド・コンパレータ回路として構成されており、入力電圧Vaと基準電圧値V1との比較を行うとともに、入力電圧Vaと基準電圧値V2との比較を行うように構成されている。具体的には、図7に示すように、比較回路23は、たとえば、入力電圧Vaが基準電圧値V1以下でかつ基準電圧値V2以上の場合、ハイレベル(H)の出力信号Sbを出力するように構成されている。また、比較回路23は、入力電圧Vaが基準電圧値V1よりも大きいか、または、入力電圧Vaが基準電圧値V2よりも小さい場合、ローレベル(L)の出力信号Sbを出力するように構成されている。
そして、マイコン22は、比較回路23からの出力信号Sbを取得して、取得した出力信号Sbにおける充電時間twを取得(計測)するように構成されている。たとえば、マイコン22は、水晶振動子(X-TAL)22cに接続されている。そして、制御部22aは、水晶振動子22cに対応する所定の期間毎にカウントを行うことにより、充電時間twの長さをカウント数として取得可能に構成されている。
ここで、図7に示すように、第1実施形態では、マイコン22は、充電時間twが所定の第1時間th1未満の場合に、さらに複数回繰り返して、充電時間twを取得するように構成されている。たとえば、マイコン22は、充電時間twが第1時間th1未満で、かつ、基準電圧値V2未満となった時に、充放電切替回路24に放電指令信号Saを伝達するように構成されている。これにより、ガス感応部11およびコンデンサ21では、充電と放電とが交互に繰り返され、マイコン22により、複数回繰り返して充電時間twが取得される。たとえば、マイコン22は、繰り返し充電時間twを取得する場合、所定の第2時間th2以上(たとえば、1024カウント以上)になるまで、繰り返して充電時間twを取得する。第1時間th1と第2時間th2とは、同一の長さであってもよいし、互いに異なる長さであってもよい。
そして、マイコン22は、充電時間twに対応する出力電圧Vo1(水素ガス濃度情報)を出力するように構成されている。たとえば、マイコン22による充電時間twから出力電圧Vo1への変換は、変換回路により行ってもよいし、メモリ22bに水素ガス濃度テーブルを予め記憶しておき、予め記憶された水素ガス濃度テーブルを用いて、変換するように構成してもよい。ここで、マイコン22は、複数回繰り返して充電時間twを取得した場合には、取得された充電時間twを平均化処理して、平均化処理された充電時間twに基づく出力電圧Vo1を出力するように構成されている。
そして、マイコン22は、出力電圧Vo1を情報処理装置203に伝達するように構成されている。また、マイコン22は、出力電圧Vo1に基づいて抵抗値Rsを算出するとともに、抵抗値Rs(数値)を示す画像を表示部202に表示させるように構成されている。情報処理装置203は、たとえば、出力電圧Vo1に基づいて水素ガス濃度を算出するように構成されている。
(ヒータおよび温度制御回路の構成)
図8に示すように、ヒータ14は、温度制御回路3から電力が供給されることにより発熱して、ガス検知素子1のガス感応部11(図4参照)を加熱するように構成されている。また、温度制御回路3は、ヒータ14に供給する電力を調整して、ガス検知素子1の動作温度を維持する制御を行うように構成されている。
たとえば、ヒータ14は、白金や金等の貴金属、白金パラジウム合金等を蒸着等によって、絶縁基板13上(図4参照)に形成されている。ここで、白金は比較的耐久性に優れた材料であり、ヒータ14の材料として好ましい。
ここで、第1実施形態では、温度制御回路3は、ヒータ14の動作抵抗値Rhが略一定となるようにヒータ14に供給する電力の大きさを制御するように構成されている。そして、検知回路2のマイコン22は、温度制御回路3からヒータ14に供給する電力の大きさに基づいて、空間Aにおける気圧P(真空度)を検出するように構成されている。
具体的には、温度制御回路3は、ガス検知素子1の温度が200℃から1000℃の範囲、好ましくは、400℃から650℃の範囲の所定温度となるようにヒータ14を制御するように構成されている。ここで、ガス検知素子1の動作温度が1000℃より高いと、酸化物イオンの易動度が上がりすぎ、電子伝導性が高くなりすぎることにより、水素を検知した際の変化幅が十分でなくなる。しかし、ガス検知素子1の動作温度が200℃より低いと、酸化物イオンの易動度が制限され、電子伝導性が低下しすぎてしまうので好ましくない。また、水素ガスの有無の変化に対応する抵抗値Rsの変化量は、動作温度が低いほど大きくなる傾向があるので、ガス検知素子1の寿命の観点からは、上記のように400℃から650℃の温度範囲が好ましい。
ここで、図9に、空間Aの気圧Pとヒータ電流値Ih及びヒータ動作温度Thとの関係(測定結果)を示している。図9に示されるように、空間Aの気圧Pが下がると、ヒータ14の動作温度Thは高くなる。これは、圧力が低いほど熱移動の媒体となる気体分子が減るからである。逆に、検知空間Aの気圧Pが上がると、ヒータ14の動作温度Thは低くなる。これは、圧力が高いほど熱移動の媒体となる気体分子が増えるからである。
ここで、温度制御回路3は、空間Aの気圧Pの変化に応じてヒータ14の動作温度Thが変化しないように、ヒータ14の動作抵抗値Rhを一定にするように、ヒータ14に供給する電力(たとえば、ヒータ電流値Ih)の大きさを制御するように構成されている。ヒータ電流値Ihは、たとえば、図8に示すように、ヒータ14に直列に接続された電流計35により検出される。そして、電流計35は、ヒータ電流値Ihをマイコン22に伝達するように構成されている。
すなわち、温度制御回路3は、空間Aの気圧Pが下がった場合に、ヒータ14に供給する電力(ヒータ電流値Ih)を小さくするとともに、空間Aの気圧Pが上がった場合に、ヒータ14に供給する電力(ヒータ電流値Ih)を大きくするように構成されている。そして、検知回路2のマイコン22は、温度制御回路3がヒータ14に供給する電力(ヒータ電流値Ih)の大きさを取得して、取得した電力の大きさに基づいて、空間Aの気圧Pを検出するように構成されている。
また、空間Aの温度を計測する温度センサ(図示せず)の値と併用し、温度センサの値(ヒータ動作温度Th)に基づいて、気圧Pの値を補正することにより、より正確な空間Aの気圧Pを取得することが可能である。なお、別途併用する温度センサには、サーミスタや測温抵抗体のほか、ガス検知素子1の絶縁基板13と同じ絶縁基板13を密閉容器内に空気または不活性ガスなどと封入したものも適用することができる。この場合、ガス検知素子1と温度センサの温度特性が近くなるため、補正が容易となる。
そして、マイコン22は、メモリ22bに記憶された電力(ヒータ電流値Ih)と気圧Pとが関連付けられた電力気圧テーブル、または、電力気圧変換回路を用いて、取得した電力の大きさに対応する空間Aの気圧Pの情報を出力電圧Vopとして出力するように構成されている。そして、マイコン22は、出力電圧Vopを、コネクタ5を介して情報処理装置203等(図6参照)に伝達するように構成されている。
また、図8に示すように、温度制御回路3は、ヒータ14の動作抵抗値Rhを一定に保つために、ホイートストンブリッジ回路31を備えたフィードバック回路として構成されている。ホイートストンブリッジ回路31は、抵抗器31a~31cを含み、抵抗器31aの抵抗値R11と抵抗器31cの抵抗値R13とは同じであり、抵抗器31bの抵抗値R12とヒータ14の動作抵抗値Rhとは同じになる。なお、抵抗器31bは、たとえば、抵抗値R12の大きさを変更可能なデジタルポテンショメータとして構成されている。
そして、温度制御回路3は、ホイートストンブリッジ回路31の両端の電圧Vc1およびVc2が、オペアンプ回路32に差動入力されるように構成されている。そして、温度制御回路3は、オペアンプ回路32からの出力Vc3がスイッチ部33に入力され、スイッチ部33により、ヒータ14の動作抵抗値Rhが常に抵抗値R12と同じ値(略同じ値)になるように、ホイートストンブリッジ回路31に供給される電力(たとえば、ヒータ電流値Ih)が自動的に調節されるように構成されている。なお、各回路間には、インピーダンスの調整等のための抵抗器34a~34cが設けられている。
ここで、第1実施形態では、温度制御回路3は、防爆構造を有する。すなわち、温度制御回路3のホイートストンブリッジ回路31における電源回路4側に安全保持部品が配置されている。詳細には、温度制御回路3のホイートストンブリッジ回路31における電源回路4側に固定値の抵抗値R11を有する抵抗器31a、および、固定値の抵抗値R13を有する抵抗器31cが配置され、ヒータ14および抵抗器31bが接地(グラウンドに接続)されている。これにより、ヒータ14の動作抵抗値Rhおよび抵抗器31bの抵抗値R12が極めて小さい値になった場合でも、固定値の抵抗値を有する抵抗器31aおよび31cを経由してグラウンドに電流が流れるので、温度制御回路3に大電流が流れるのを抑制することが可能になる。この結果、温度制御回路3では、大電流に起因した発熱や火花等の発生を抑制することが可能になるので、爆発や火災を抑制することが可能となる。
(ガス検知制御処理)
次に、図10を参照して、第1実施形態のガスセンサ100による被検知ガスの検知制御処理について説明する。ガスセンサ100の制御処理は、マイコン22により実行される。
ここで、第1実施形態の被検知ガスの検知制御処理(ガス検知方法)では、被検知ガスに感応することにより抵抗値Rsが変化するとともに、半導体を主成分とするガス感応部11に接続され、抵抗値Rsに対応するコンデンサ21の充電時間twを取得するステップS4と、取得した充電時間twに基づいて被検知ガスを検知するステップS9とを備える。以下、具体的に説明する。
ステップS1において、コンデンサ21から放電が行われる。すなわち、図7に示すように、マイコン22から放電指令信号Sa(ローレベルの信号)が充放電切替回路24のスイッチ部24aに伝達され、スイッチ部24aが導通して、コンデンサ21の両端が短絡されることにより、コンデンサ21の放電が行われる。その後、ステップS2に進む。
ステップS2において、コンデンサ21への充電が開始される。すなわち、マイコン22から放電指令信号Saが停止され(ハイレベルにされ)充放電切替回路24のスイッチ部24aのドレインおよびソース間が切断されることにより、コンデンサ21から抵抗器25およびガス感応部11を介してグラウンドに電流が流れ、コンデンサ21への充電が開始される。その後、ステップS3に進む。
ステップS3において、比較回路23により、コンデンサ21と抵抗器25との接続点N1における入力電圧Vaと基準電圧値V1およびV2との比較が行われ、出力信号Sb(比較結果)がマイコン22により取得される。その後、ステップS4に進む。
ステップS4において、マイコン22により、比較回路23からの出力信号Sbに基づいて、ガス感応部11の抵抗値Rsに対応する充電時間twが取得される。すなわち、マイコン22により、入力電圧Vaが基準電圧値V1から基準電圧値V2に変化するまでの期間が取得される。その後、ステップS5に進む。
ステップS5において、繰り返し充電時間twが取得されたか否かが判断される。すなわち、1回の被検知ガスの検知制御処理中に、2回以上、充電時間twが取得されたか否かが判断される。繰り返し充電時間twが取得された場合、ステップS7に進み、充電時間twが1回目の取得の場合、ステップS6に進む。
ステップS6において、充電時間twが所定の第1時間th1未満か否かが判断される。充電時間twが所定の第1時間th1未満の場合、ステップS1に戻り、充電時間twが所定の第1時間th1以上の場合、ステップS9に進む。すなわち、充電時間twが所定の第1時間th1未満の場合、ステップS1~S5が繰り返され、繰り返し充電時間twが取得される。
ステップS7において、被検知ガスの検知制御処理開始時点から所定の第2時間th2を経過したか否かが判断される。所定の第2時間th2を経過している場合、ステップS8に進み、所定の第2時間th2経過していない場合、ステップS1に戻る。すなわち、所定の第2時間th2経過するまで、ステップS1~S5、および、S7が繰り返される。
ステップS8において、繰り返し取得された充電時間twの平均化処理が行われる。その後、ステップS9に進む。
ステップS9において、充電時間twが、充電時間twに対応する出力電圧Vo1に変換されて出力される。すなわち、充電時間twが、被検知ガス濃度(水素ガス濃度)を示す出力電圧Vo1に変換されて出力される(被検知ガスの検出)。その後、第1実施形態の被検知ガスの検知制御処理が終了される。
(第1実施形態によるガスセンサの測定結果)
次に、図11を参照して、第1実施形態のガスセンサ100による測定結果を示す。第1実施形態のガスセンサ100の検知回路2の検証のために、第1実施形態のガスセンサ100のガス感応部11を固定抵抗値1kΩ以上100MΩ以下を有する固定抵抗器に置き換えて、抵抗値Rs(出力電圧Vo1)に対応する表示部202の抵抗値表示を確認した。
図11に示すように、固定抵抗器の抵抗値1.00kΩの場合、抵抗値表示は、1.05kΩであった。また、固定抵抗器の抵抗値1.10kΩの場合、抵抗値表示は、1.10kΩであった。また、固定抵抗器の抵抗値10.0kΩの場合、抵抗値表示は、10.4kΩであった。また、固定抵抗器の抵抗値100kΩの場合、抵抗値表示は、104kΩであった。また、固定抵抗器の抵抗値1.00MΩの場合、抵抗値表示は、1.02MΩであった。また、固定抵抗器の抵抗値10.0MΩの場合、抵抗値表示は、10.0MΩであった。また、固定抵抗器の抵抗値100MΩの場合、抵抗値表示は、99.1MΩであった。
この結果より、5ディケート(1kΩ以上100MΩ以下)に渡る広範囲な固定抵抗器の抵抗値と、抵抗値表示とが略一致しているので、第1実施形態によるガスセンサ100では、5ディケート(1kΩ以上100MΩ以下)に渡る広範囲な抵抗値Rsの変化を十分な精度で検出することが可能であることが判明した。
[第1実施形態の効果]
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態では、上記のように、検知回路2に、ガス感応部11に接続されたコンデンサ21と、抵抗値Rsに対応するコンデンサ21の充電または放電する時間に関する値(充電時間tw)を取得して、取得した時間に関する値(充電時間tw)に基づいて被検知ガスを検知するマイコン22および比較回路23とを設ける。これにより、ガス感応部11の抵抗値Rsおよびコンデンサ21によりRC回路が構成されるので、このRC回路の時間に関する値(時定数:充電時間tw)が、ガス感応部11の抵抗値Rsに対応する値となる。ここで、充電時間twは、検出時間を長くすれば、無限に大きな値を検出可能な物理量である。したがって、ガス感応部11の抵抗値Rsが微小の場合、充電時間twを比較的長い検出時間をかけて測定すれば、間接的にガス感応部11の抵抗値Rsを高分解能で取得することができる。一方、ガス感応部11の抵抗値Rsが比較的大きい場合には、通常の検出時間の測定により、間接的にガス感応部11の抵抗値Rsを高分解能で取得することができる。その結果、被検知ガスに感応することに起因するガス感応部11の抵抗値Rsの変化の幅が比較的大きい場合でも、抵抗値Rs自体を直接的に高分解能で測定する必要がないので、高分解能なAD変換器を要しない。また、被検知ガスに感応することに起因するガス感応部11の抵抗値Rsの変化の幅が比較的大きい場合でも、ガス感応部11の抵抗値Rsの大小に応じて、検出する抵抗値の範囲(レンジ)を切り替える必要がない。この結果、被検知ガスに感応することに起因するガス感応部11の抵抗値Rsの変化の幅が比較的大きい場合にも、被検知ガスの濃度を高分解能で検出することが可能で、かつ、ガスセンサ100が複雑化および大型化するのを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、ガス感応部11を、被検知ガスとしての水素ガスに感応するように構成する。これにより、水素ガスの検出に起因するガス感応部11の抵抗値Rsの変化が広範囲になる場合にも、高分解能で微量の水素ガスの濃度を検出することが可能で、かつ、ガスセンサ100が複雑化または大型化するのを抑制することができる。したがって、液体水素格納容器200の周囲配置される真空断熱槽201における水素ガス漏洩検知に適用する第1実施形態は、特に効果的である。
また、第1実施形態では、上記のように、マイコン22を、充電時間twを取得して、取得した充電時間twに基づいて被検知ガスを検知するように構成する。これにより、ガス感応部11の抵抗値Rsに対応する値である充電時間twを取得することにより、容易に、被検知ガスを高分解能で検出することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、マイコン22を、充電時間twを取得して、取得した時間が所定の時間未満の場合に、さらに複数回、充電時間twを取得するように構成する。これにより、充電時間twが、検出する周期に対して十分長くなく、1回の充電時間twの検出では、分解能を高くすることが困難な場合でも、複数回の時間の検出を行うことにより、複数回の時間の検出結果を平均化処理することにより、分解能を向上させることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、ガス検知素子1に、ガス感応部11を加熱するヒータ14を設けて、ガスセンサ100に、ヒータ14の動作抵抗値Rhが略一定となるようにヒータ14に供給する電力の大きさを制御する温度制御回路3を設ける。そして、マイコン22を、温度制御回路3からヒータ14に供給する電力の大きさに基づいて、空間Aにおける気圧Pを検出するように構成する。これにより、ガス検知素子1は、ガス感応部11を動作させるガスセンサとしての機能と、空間Aにおける気圧Pを検出する気圧計(真空計)としての機能との両方を兼ねることができる。この結果、ガスセンサ100とは別個に、真空計を検知空間に配置する必要がないので、ガスセンサ100が配置される装置(設備)の構成を簡素化することができる。
[第2実施形態]
次に、図12~図14を参照して、第2実施形態のガスセンサ300の構成について説明する。第2実施形態によるガスセンサ300は、比較回路23を用いて、コンデンサ21に充電される充電時間twを取得するように構成されていた第1実施形態によるガスセンサ100と異なり、タイマー集積回路(IC)323(以下、タイマーIC323)を用いて、コンデンサ321の充放電周波数fcおよび充放電周期Tcを取得するように構成されている。なお、上記第1実施形態と同一の構成については、図中において同じ符号を付して図示し、その説明を省略する。
(第2実施形態によるガスセンサの構成)
本発明の第2実施形態によるガスセンサ300は、図12に示すように、ガスセンサ300は、検知回路302を備える。検知回路302は、電気容量C21を有するコンデンサ321と、タイマーIC323と、マイクロコンピュータ回路322(以下、「マイコン322」)とを含む。なお、コンデンサ321は、特許請求の範囲の「容量素子」の一例である。また、タイマーIC323と、マイコン322とは、特許請求の範囲の「検知部」の一例である。
コンデンサ321は、抵抗値R21を有する抵抗器324を介して、ガス感応部11に直列に接続されており、第1実施形態と同様にRC直列回路を構成する。
タイマーIC323は、たとえば、汎用のC-MOSタイマーICを用いることができる。具体的には、タイマーIC323として、National Semiconductor製のLMC555タイマー回路、または、これと同等の性能を有するタイマーICを採用することが可能である。
そして、タイマーIC323のスレッショルド端子(THR)およびトリガー端子(TRIG)には、コンデンサ321と抵抗器324との接続点N21が接続されている。また、タイマーIC323のリセット端子(RST)およびV+端子には、電源回路4の電圧値Vccが印加されている。また、タイマーIC323のディスチャージ端子(DIS)には、ガス感応部11と抵抗器324との接続点N22が接続されている。タイマーIC323の制御電圧端子(C VOLT)は、コンデンサ325を介して接地されている。タイマーIC323のグラウンド端子(GND)は、接地されている。
そして、タイマーIC323の出力端子(OUT)には、マイコン322が接続されている。なお、タイマーIC323の出力端子(OUT)には、抵抗器326を介して電源回路4が接続されている。
すなわち、検知回路302を、上記のタイマーIC323の接続状態として構成することにより、タイマーIC323は、図14に示すように、無安定動作(フリーラン)するマルチバイブレータ回路として機能する。すなわち、コンデンサ321は、ガス感応部11および抵抗器324を介して充電されるとともに、コンデンサ321は、抵抗器324を介して放電される。そして、コンデンサ321の充放電周波数fcおよび充放電周期Tcは、ガス感応部11の抵抗値Rsと抵抗器324の抵抗値R21との比により算出可能となる。
したがって、抵抗器324の抵抗値R21は固定値であるので、コンデンサ321の充放電周波数fcおよび充放電周期Tcは、ガス感応部11の抵抗値Rsに対応した値となる。詳細には、充放電周期Tcは、比例定数k(たとえば、0.693)を用いて、以下の式(4)のように表すことが可能であり、充放電周波数fcは、以下の式(5)のように表すことが可能である。
そして、マイコン322は、タイマーIC323からの出力信号Sb2を取得することによりコンデンサ321の充放電周波数fcおよび充放電周期Tcを取得して、取得した充放電周波数fcおよび充放電周期Tcに基づいて、被検知ガス(水素ガス)を検知するように構成されている。たとえば、マイコン322は、抵抗値Rsに対応する出力電圧Vo2(水素ガス濃度の情報)を出力するように構成されている。
ここで、第2実施形態では、マイコン322は、充放電周波数fcを取得する周波数取得モードと、充放電周期Tcを取得する周期取得モードとを、条件に応じて切り替えるように構成されている。すなわち、マイコン322は、抵抗値Rsが比較的小さく充放電が高速で行われる場合には、周波数取得モードにして、充放電周波数fcを取得し、抵抗値Rsが比較的大きく充放電が低速で行われる場合には、周期取得モードにして、充放電周期Tcを取得する制御を行う。
詳細には、第2実施形態では、マイコン322は、周波数取得モードの状態で、充放電周波数fcを取得して、取得した充放電周波数fcが所定の周波数fh未満の場合に、コンデンサ321における充放電周期Tcを取得する周期取得モードに切り替えるとともに、取得した充放電周波数fcが所定の周波数fh以上の場合には、充放電周波数fcの取得する周波数取得モードを継続するように構成されている。
また、マイコン322は、周期取得モードの状態で、充放電周期Tcを取得して、取得した充放電周期Tcが所定の周期Tch未満の場合に、コンデンサ321における充放電周波数fcを取得する周波数取得モードに切り替えるとともに、取得した充放電周期Tcが所定の周期Tch以上の場合には、充放電周期Tcの取得する周期取得モードを継続するように構成されている。
マイコン322は、周波数取得モードでは、所定の時間(所定のカウント数)のうちの充放電の回数を取得するように構成されている。また、マイコン322は、周期取得モードでは、1つの充放電周期Tcの長さを計測するように構成されている。
ここで、第2実施形態では、所定の周波数fhに対応する抵抗値Rsは、所定の周期Tchに対応する抵抗値Rsと略同一の値である。なお、所定の周波数fhに対応する抵抗値Rsを、所定の周期Tchに対応する抵抗値Rs2よりも大きく構成して、周波数取得モードと周期取得モードとの間に、ヒステリシスを形成してもよい。この場合、周波数取得モードと周期取得モードとが、頻繁に切り替えられて、検知回路302の動作が不安定になるのを抑制することが可能になる。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
(第2実施形態によるガスセンサの被検知ガスの検出制御処理)
次に、図15を参照して、第2実施形態によるガスセンサ300の被検知ガスの検出制御処理について説明する。具体的には、ガスセンサ300による周波数取得モードと周期取得モードとの切替制御について説明する。
ステップS101において、周波数取得モードにおいて、充放電周波数fcが取得され、取得された充放電周波数fcに基づいて、抵抗値Rsに対応する出力電圧Vo2が出力される(被検知ガスの検出が行われる)。その後、ステップ102に進む。
ステップS102において、充放電周波数fcが所定の周波数fh未満か否かが判断される。充放電周波数fcが所定の周波数fh未満の場合、ステップS103に進み、充放電周波数fcが所定の周波数fh以上の場合、ステップS101に戻る。すなわち、充放電周波数fcが所定の周波数fh未満の場合、周期取得モードに切り替えられ、充放電周波数fcが所定の周波数fh以上の場合、周波数取得モードが継続される。
ステップS103において、周期取得モードにおいて、充放電周期Tcが取得され、取得された充放電周期Tcに基づいて、抵抗値Rsに対応する出力電圧Vo2が出力される。その後、ステップ104に進む。
ステップS104において、充放電周期Tcが所定の周期Tch未満か否かが判断される。充放電周期Tcが所定の周期Tch未満の場合、ステップS101に戻り、充放電周期Tcが所定の周期Tch以上の場合、ステップS103に戻る。すなわち、充放電周期Tcが所定の周期Tch未満の場合、周波数取得モードに切り替えられ、充放電周期Tcが所定の周期Tch以上の場合、周期取得モードが継続される。
上記のステップS101~S104が繰り返されることにより、測定時間の増大が抑制されながら、高分解能で被検知ガスの検出(抵抗値Rsに対応する出力電圧Vo2の取得)がなされる。
なお、第2実施形態のその他の制御処理は、上記第1実施形態と同様である。
(第2実施形態によるガスセンサの測定結果)
次に、図16を参照して、第2実施形態のガスセンサ300による被検知ガスの測定結果を示す。図16では、真空断熱槽201に水素ガスの圧力を1.51×102Paから5.65×10-5Paまで減圧しながら、ガスセンサ300から出力された出力電圧Vo2に基づいて、取得された抵抗値Rsと、真空断熱槽201に酸素ガスの圧力を1.51×102Paから4.70×10-5Paまで減圧しながら、ガスセンサ300から出力された出力電圧Vo2に基づいて、取得された抵抗値Rsと、真空断熱槽201に窒素ガスの圧力を1.54×102Paから5.70×10-5Paまで減圧しながら、ガスセンサ300から出力された出力電圧Vo2に基づいて、取得された抵抗値Rs(抵抗値表示)とを示している。
水素ガスの圧力と抵抗値Rs(抵抗値表示)との測定結果は、1.51×102Paの時、1.86×104Ω、1.00×10Paの時、7.83×103Ω、9.59×10-1Paの時、6.54×103Ω、9.55×10-2Paの時、6.88×103Ω、9.55×10-3Paの時、7.72×103Ω、9.95×10-4Paの時、9.24×103Ω、9.91×10-5Paの時、9.72×103Ω、5.65×10-5Paの時、1.04×104Ωであった。
窒素ガスの圧力と抵抗値Rs(抵抗値表示)との測定結果は、1.54×102Paの時、6.59×107Ω、1.01×10Paの時、4.04×107Ω、9.77×10-1Paの時、3.21×107Ω、9.73×10-2Paの時、2.76×107Ω、1.03×10-2Paの時、2.64×107Ω、1.01×10-3Paの時、2.49×107Ω、1.00×10-4Paの時、2.35×107Ω、5.70×10-5Paの時、2.37×107Ωであった。
酸素ガスの圧力と抵抗値Rs(抵抗値表示)との測定結果は、1.51×102Paの時、2.59×108Ω、1.00×10Paの時、1.69×108Ω、1.00Paの時、1.17×108Ω、9.86×10-2Paの時、8.79×107Ω、1.00×10-2Paの時、6.59×107Ω、1.00×10-3Paの時、5.58×107Ω、9.82×10-5Paの時、5.35×107Ω、4.70×10-5Paの時、4.70×107Ωであった。
この結果より、たとえば、第2実施形態によるガスセンサ300では、水素ガスの圧力が9.59×10-1Paの時、抵抗値Rsを6.53×103Ωとして取得することができ、酸素ガスの圧力が1.51×102Paの時、抵抗値Rsを2.59×108Ωとして取得することができることが判明した。したがって、第2実施形態によるガスセンサ300においても、第1実施形態によるガスセンサ100と同様に、5ディケート(1kΩ以上100MΩ以下)に渡る広範囲な抵抗値Rsの変化を十分な精度(3桁の精度)で検出することが可能であることが判明した。
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第2実施形態では、上記のように、マイコン322を、取得した充放電周波数fcが所定の周波数fh未満の場合に、コンデンサ321における充放電周期Tcを取得するとともに、取得した充放電周波数fcが所定の周波数fh以上の場合に、コンデンサ321における充放電周波数fhを取得するように構成する。これにより、充放電周波数fcが比較的大きい場合は、充放電周波数fcを取得して、高分解能で被検知ガスを検知することができるとともに、充放電周波数fcが比較的小さい場合には、充放電周期Tcを取得することにより、検知時間の増大を抑制することができる。すなわち、検知時間の増大を抑制しながら、被検知ガスを高分解能で検知することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1および第2実施形態では、ガスセンサ全体を大気圧より低い気圧を有する空間に配置するように構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図17に示す第1変形例のガスセンサ400のように、ガス検知素子401のみが、真空断熱槽201に接続される真空チャンバ410内に配置されてもよい。ガスセンサ400は、ガスセンサ装置420の一部を構成する。
具体的には、ガスセンサ400は、ガスセンサ装置420の一部を構成する。ガスセンサ装置420は、真空チャンバ410と、真空ポンプ421と、真空断熱槽側バルブ422と、ポンプ側バルブ423と、メンテナンス用バルブ424とを備える。そして、ガスセンサ400は、ガス検知素子401が真空チャンバ410内に露出されており、真空断熱槽側バルブ422が開の状態で、真空チャンバ410の空間A2の被検知ガス(たとえば、水素ガス)を検出するように構成されている。
真空ポンプ421は、真空チャンバ410を減圧して、真空チャンバ410の気圧が真空断熱槽201の気圧に略同一になるように制御される。また、ガスセンサ400の検知回路、温度制御回路および電源回路は、真空チャンバ410および真空断熱槽201の外部の大気中の回路ユニット430に収納されている。回路ユニット430とガス検知素子401とは、電線431により接続されることにより、各電力および信号が伝達される。ガスセンサ装置420によれば、真空断熱槽201を真空破壊することなく、ガスセンサ400のメンテナンスが可能となる。
また、上記第1実施形態では、充電時間twに基づいて被検知ガスを検知する例を示し、上記第2実施形態では、充放電周期Tcおよび充放電周波数fcに基づいて被検知ガスを検知する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図18に示す第2変形例のガスセンサ500の検知回路502を用いれば、放電時間tdに基づいて被検知ガスを検知することが可能である。
具体的には、図18に示すように、第2変形例によるガスセンサ500の検知回路502は、コンデンサ521と、マイコン522と、比較回路523と、充放電切替回路524と、抵抗器525とを含む。そして、充放電切替回路524は、マイコン522からの充電指令信号Sdに基づいて、ガス感応部511とコンデンサ521とのRC回路に対して充電する状態と、放電させる状態とを切り替えるように構成されている。充放電切替回路524は、スイッチ部524aと、ダイオード524bと、抵抗器524cとを含む。そして、コンデンサ521は、一端が接地されており、スイッチ部524aが導通している場合、充電される。そして、スイッチ部524aが切断された場合、コンデンサ521から抵抗器525とガス感応部511に電流が流れて(放電して)、コンデンサ521の両端の電池差が小さくなる。
そして、比較回路523は、第1実施形態による比較回路23と同様に構成されており、コンデンサ521と抵抗器525との接続点N31の電圧値を入力電圧Va3として入力される。そして、比較回路523は、放電時間tdの情報を含む出力信号Sb3をマイコン522に出力する。マイコン522は、放電時間tdに基づいて、第1実施形態によるマイコン22と同様に、被検知ガスの検出を行うように構成されている。
また、上記第1および第2実施形態では、ガス感応部を、酸化セリウムを主成分として構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、ガス感応部を、酸化セリウム以外の半導体を主成分として構成してもよい。たとえば、ガス感応部を、酸化物イオン伝導性と電子伝導性の両方の性質を持つ混合伝導性の金属酸化物であるイットリア安定化ジルコニアを主成分として構成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、ガスセンサを、被検知ガスとして水素ガスを検知するように構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、ガスセンサを、被検知ガスとして水素ガス以外のガスを検知するように構成してもよい。たとえば、ガスセンサを、酸素ガスおよび窒素ガスを検知するように構成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、ヒータの動作温度を制御する温度制御回路に、ホイートストンブリッジ回路およびフィードバック回路を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、ヒータの動作温度を制御する温度制御回路に、ホイートストンブリッジ回路およびフィードバック回路以外の構成の制御回路により、ヒータの動作温度を制御してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、ヒータに流れるヒータ電流値に基づいて、気圧を検出する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ヒータに並列に電圧計を接続して、ヒータの両端の電位差に基づいて、気圧を検出するように構成してもよい。