JP6354672B2 - 熱成形用シートおよび成形体 - Google Patents

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本発明は、熱成形用シートおよび成形体に関し、更に詳しくはポリプロピレン系樹脂組成物からなる熱成形用シートおよび成形体に関する。
熱成形用シートは、真空成形、圧空成形、真空圧空成形など熱成形により、食品容器等の包装容器のような小型の成形品から住設部材等の構造部材のような大型の成形品まで広く用いられている。包装容器に求められる特性としては、透明性、光沢といった外観上の特性や、例えば電子レンジで内容物を加熱調理する際には耐熱性、耐油性といった特性が求められる。さらには近年、環境問題に対する関心が高まり、熱成形性に優れるポリスチレンやABS等の非晶性樹脂シートよりもポリプロピレン系樹脂シートが好まれている。一方、構造部材の特性として、剛性、強度、耐熱性等の機械的特性に優れるとともに、耐ドローダウン性、延展性等の成形性に優れることが求められている。
熱成形法による成形品の製造に用いられるシート用のポリプロピレン系樹脂としては、成形性や製品の剛性、透明性などの点から、プロピレン単独重合体やプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体が用いられることが多い。しかし、これらの樹脂は溶融張力が低く、シートの熱成形において耐ドローダウン性が十分とはいえず、改良が求められている。
耐ドローダウン性を改良するために、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂を含む樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし、この組成物では、肉厚で大型の成形品を熱成形する際の耐ドローダウン性は十分とはいえない。
さらに、大型の成形品は複雑な形状のものが多いため、シートには熱成形において良好な延展性も求められる。従来の熱成形に供されるポリプロピレン系樹脂は、延展性が十分とはいえず、たとえ複雑な形状に賦形ができたとしても、不均一な延展により得られたものであるため、その成形体は偏肉が大きく、座屈や破壊を生じやすい。したがって、構造部材に要求されるより高い信頼性を充足することが困難であった。このような構造部材には、非晶性樹脂であるABSやポリスチレンによる熱成形体が多く用いられている(例えば特許文献2参照)。しかしながらこのような非晶性樹脂は、耐熱性、耐薬品性に劣るものであり、構造部材製品の使用環境に様々な制約が掛かるという欠点を有している。
特開2002−294009号公報 特開2000−117903号公報
本発明の目的は、真空成形、圧空成形、真空圧空成形などの熱成形に使用する熱成形用シートにおいて、大型の成形体を製造する場合であっても、シートの垂れ下がりが小さく、複雑な金型への賦形性が良好であり、偏肉が小さい成形体を得ることができ、耐熱性、耐薬品性が優れる熱成形用シートを提供することにある。
上記目的を達成する本発明の熱成形用シートは、ポリプロピレン樹脂組成物により形成された厚さ1mm以上の熱成形用シート(ただし、熱成形用発泡シートを除く)であって、前記ポリプロピレン樹脂組成物が、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)5〜50重量%およびポリプロピレン樹脂(Y)95〜50重量%を含み、前記ポリプロピレン樹脂(X)が下記の特性(X−i)、(X−ii)を有し、前記ポリプロピレン樹脂(Y)が下記の特性(Y−i)、(Y−ii)を有し、ポリプロピレン樹脂(X)のメルトフローレートをMFRx、ポリプロピレン樹脂(Y)のメルトフローレートをMFRyとするとき、これらの比MFRx/MFRyが30>MFRx/MFRy>1を満たすことを特徴とする。
特性(X−i):230℃、2.16kg荷重で測定されたメルトフローレート(MFR)が0.1〜30g/10分
特性(X−ii):溶融張力(MT)(単位:g)が
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、またはlog(MT)≧1.15を満たす
特性(Y−i):230℃、2.16kg荷重で測定されたメルトフローレート(MFR)が0.1〜9.5g/10分
特性(Y−ii):溶融張力(MT)(単位:g)が
log(MT)<−0.9×log(MFR)+0.7、およびlog(MT)<1.15を満たす
本発明の熱成形用シートは、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)および任意にポリプロピレン樹脂(Y)を含むポリプロピレン樹脂組成物製であることから、耐熱性、耐薬品性が優れ、熱成形によって大型の成形体の製造する場合において、シートの垂れ下がりが小さく、賦形性が優れる。また、得られる成形体は偏肉が小さく、座屈強度が優れるという効果を奏する。
前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、特性(X−iii):13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上を有することが好ましい。
本発明の熱成形用シートを熱成形して得られた成形体は、耐熱性、耐薬品性が優れるとともに、偏肉が小さく、座屈強度が優れる。
本発明の熱成形用シートは、ポリプロピレン樹脂組成物により形成された厚さ1mm以上の熱成形用シートである。熱成形用シートは、真空成形、圧空成形、真空圧空成形など熱成形に用いる原反であり、大型成形品用、小型成形品用のいずれにも使用することができる。大型成形品としては例えばドアトリム、インストルメントパネルやルーフキャリア等の自動車部材、建材内装パネル、洗面台パネル、大型の搬送トレー等などを挙げることができる。また小型成形品としては例えばトレー、皿、カップなど食品容器などを挙げることができる。
熱成形用シートは、ポリプロピレン樹脂組成物により形成された厚さ1mm以上の層を含む限り、単層シートまたは多層シートのいずれでもよい。単層シートは、特定のポリプロピレン樹脂組成物を含む層のみからなるシートである。多層シートは、特定のポリプロピレン樹脂組成物を含む層と、ガスバリア樹脂層、接着樹脂層、再生樹脂層、華燭樹脂層等から選ばれる少なくとも1つの層を重ねた積層シートである。
本発明の熱成形用シートは、ポリプロピレン樹脂組成物を含む層の厚みが1mm以上、好ましくは2mmを超え、より好ましくは3mmを超え、さらに好ましくは3.1mmを超える。また、本発明の熱成形シートは、厚みが好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm未満、さらに好ましくは10mm未満である。ポリプロピレン樹脂組成物を含む層の厚みを1mm以上にすることにより、偏肉を小さくすることができる。
本発明の熱成形用シートは、ポリプロピレン樹脂組成物を単軸押出機又は二軸押出機に通して、例えばコートハンダーダイからシート状に押出した後、例えば(内部で冷却水や油が循環している)金属ロール表面に、エアーナイフ、エアーチャンバー、硬質ゴムロール、スチールベルト、金属ロール等を用いて押さえつけ冷却固化されることによって得ることができる。又、熱成形用シートの両面をスチールベルトで挟んで冷却固化することもできる。このような熱成形用シートの冷却方法の中では、シート両面に金属ロール及び/又はスチールベルトを使用する方法が、表面凹凸の少ないシート表面、つまり透明性に優れたシートを得られることから、最も好ましい方法である。
また本発明の熱成形用シートは、複数のダイを備えた押出機を用い、フィードブロックやマルチマニホールドを用いて、多層シートとすることができる。
本発明の熱成形用シートを構成するポリプロピレン樹脂組成物は、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)5〜100重量%およびポリプロピレン樹脂(Y)95〜0重量%を含む。以下、ポリプロピレン樹脂組成物について説明する。
ポリプロピレン樹脂(X)
本発明において、ポリプロピレン樹脂(X)は、下記の特性(X−i)、(X−ii)を有する。
特性(X−i):230℃、2.16kg荷重で測定されたメルトフローレート(MFR)が0.1〜30g/10分
特性(X−ii):溶融張力(MT)(単位:g)が
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、または
log(MT)≧1.15を満たす
またポリプロピレン樹脂(X)は、下記の特性(X−iii)を有するとよい。
特性(X−iii):13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上
以下、特性(X−i)〜(X−iii)およびその他の特性について順番に説明する。
(X−i):ポリプロピレン樹脂(X)の230℃、2.16kg荷重で測定されたメルトフローレート(MFR)は0.1〜30g/10分である。
ポリプロピレン樹脂(X)のメルトフローレート(MFR)は、230℃、2.16kg荷重で測定された値である。ポリプロピレン樹脂(X)のMFRは、0.1〜30g/10分、好ましくは0.2〜20g/10分、より好ましくは0.5〜9.5g/10分である。MFRが0.1g/10分以上であると、シートを押出成形する際に、押出機への負荷が抑えられ、生産性が向上する。また、30g/10分を超えると、十分な溶融張力が得られず、押出成形や熱成形する際に成形体が自重で垂れてしまい、成形が困難になるおそれがある。
ポリプロピレン系樹脂(X)のMFRは、重合時の水素濃度等を制御することにより調整することができる。なお、MFRは、JIS K7210に準拠して測定した値である。
(X−ii):ポリプロピレン樹脂(X)の溶融張力(MT)(単位:g)は、
log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、または
log(MT)≧1.15を満たす
ポリプロピレン樹脂(X)の溶融張力(MT)は、log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、またはlog(MT)≧1.15を満たし、好ましくは、log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.9、またはlog(MT)≧1.15を満たす。さらに好ましくはlog(MT)≧−0.9×log(MFR)+1.1、またはlog(MT)≧1.15を満たす。
ポリプロピレン樹脂(X)のMFRと溶融張力(MT)とが上記特性(X-ii)を満たすと、耐ドローダウン性が優れる。溶融張力(MT)の上限には定めはないが、大きすぎると延展性が低下し、熱成形時において金型への賦形性が悪化し、極端な場合には成形体が裂けるなどの成形不良が発生するおそれがあるため、好ましくはlog(MT)≦1.48(MT≦30.2)である。
ポリプロピレン樹脂(X)の溶融張力(MT)の制御方法としては、触媒の種類にもよるが、重合時に連鎖移動剤の水素を、水素/プロピレンのモル比で1.0×10−6〜0.2の範囲で調節することにより、所望の溶融張力(MT)にすることが可能である。
また、ポリプロピレン樹脂(X)のMFRと溶融張力(MT)との関係は、例えば触媒の種類によって調節することが可能である。例えば特開2009−275207号公報によれば、特定の二種類の遷移金属化合物を含む触媒を用いることで得られたプロピレン系重合体は溶融張力が高く、上述したMFRと溶融張力との関係を満たすポリプロピレン樹脂として用いることができる。
なお、ポリプロピレン樹脂(X)の溶融張力(MT)は、キャピログラフ(例えば、本明細書の実施例では(株)東洋精機製キャピログラフを使用)を使用して、温度230℃に加熱した直径9.6mmのシリンダーに樹脂を入れ、押し込み速度20mm/分で、溶融樹脂を直径2.0mm、長さ40mmのオリフィスから押し出す。この押し出された樹脂を、速度4.0m/分で引き取っていった時にプーリーに検出される張力を測定し、これを溶融張力(MT)とした値である。
(X−iii):ポリプロピレン樹脂(X)の13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率は好ましくは95%以上である。
ポリプロピレン樹脂(X)は、立体規則性が高いことが好ましい。立体規則性の高さは、13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率によって評価することができる。ポリプロピレン樹脂(X)の13C−NMRによって得られるプロピレン単位3連鎖のmm分率は、95%以上が好ましく、より好ましくは96%以上であり、さらに好ましくは97%以上である。
mm分率は、ポリマー鎖中、頭−尾結合からなる任意のプロピレン単位3連鎖中、各プロピレン単位中のメチル分岐の方向が同一であるプロピレン単位3連鎖の割合であり上限値は100%である。このmm分率は、ポリプロピレン分子鎖中のメチル基の立体構造がアイソタクチックに制御されていることを示す値であり、高いほど、高度にアイソタクチックに制御されていることを意味する。mm分率が95%以上であると、熱成形時の耐ドローダウン性や、成形体の座屈強度が向上する。
なお、ポリプロピレン樹脂(X)の13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率の測定方法は、以下の通りである。
試料375mgをNMRサンプル管(10φ)中で重水素化1,1,2,2、−テトラクロロエタン2.5mlに完全に溶解させた後、125℃においてプロトン完全デカップリング法で、以下の条件で測定する。ケミカルシフトは、重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタンの3本のピークの中央のピークを74.2ppmに設定する。他の炭素ピークのケミカルシフトはこれを基準とする。
フリップ角:90度
パルス間隔:10秒
共鳴周波数:100MHz以上
積算回数:10,000回以上
観測域:−20ppmから179ppm
データポイント数:32768
mm分率の決定は、前記の条件により測定された13C−NMRスペクトルを用いて行う。スペクトルの帰属は、Macromolecules,(1975年)8巻,687頁やPolymer,30巻 1350頁(1989年)を参考に行う。なお、mm分率決定のより具体的な方法は、特開2009−275207号公報の段落[0053]〜[0065]に詳細に記載されており、本発明においても、この方法に従って行うものとする。
(X−iv)ポリプロピレン樹脂(X)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)から求められる分子量分布Mw/Mnは好ましくは3〜10である。
ポリプロピレン樹脂(X)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布Mw/Mnが好ましくは3〜10、より好ましくは3.5〜8、さらに好ましくは4.1〜6である。ポリプロピレン樹脂(X)のMw/Mnが上記範囲であることにより、シートを押出成形する際、成形加工性に特に優れる。
(X−v)ポリプロピレン樹脂(X)のGPCにより測定されたZ平均分子量(Mz)およびMwから求められる分子量分布Mz/Mwは好ましくは2.5〜10である。
さらに、ポリプロピレン樹脂(X)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布Mz/Mwが好ましくは2.5〜10、より好ましくは2.8〜8、さらに好ましくは3〜6である。ポリプロピレン樹脂(X)のMz/Mwが上記範囲であることにより、シートを押出成形する際、成形加工性に特に優れる。
なお本明細書において、Mn、Mw、Mzの定義は「高分子化学の基礎」(高分子学会編、東京化学同人、1978)等に記載されており、Mn、Mw、MzはGPCによる分子量分布曲線から計算可能である。
本発明において、GPCの測定手法は、以下の通りである。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線(較正曲線)を用いて行う。標準ポリスチレンとしては、東ソー(株)製の以下の銘柄を用いる。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
標準ポリスチレン各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mα は、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、 α=0.7
PP:K=1.03×10−4、 α=0.78
ポリプロピレン樹脂(X)は長鎖分岐構造を有する。ポリプロピレン樹脂(X)が長鎖分岐構造を有することの直接的な指標として、分岐指数g’を挙げることができる。分岐指数g’は、長鎖分岐構造を有するポリマーの固有粘度[η]brと同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度[η]linの比、すなわち、[η]br/[η]lin によって与えられ、g’<1であると、長鎖分岐構造を有するといえる。
分岐指数g’の定義は、例えば「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983)に、記載されており、当業者にとって公知の指標である。
分岐指数g’の好適範囲は、例えば、下記に記すような光散乱計と、粘度計を検出器に備えたGPCを使用することによって、絶対分子量Mabsの関数として得ることができる。
ポリプロピレン樹脂(X)は、光散乱によって求めた絶対分子量Mabsが100万の時に、分岐指数g’が0.30以上1.00未満であることが好ましく、より好ましくは0.55以上0.98以下、更に好ましくは0.75以上0.96以下、最も好ましくは0.78以上0.95以下である。
分岐指数g’の算出方法は、以下の通りである。
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社製のAlliance GPCV2000を用いる。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いる。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続する。移動相溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼン(BASFジャパン社製酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。
移動相溶媒の流量は1mL/分で、カラムは、東ソー社製GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いる。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。
MALLSから得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)およびViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行う。
参考文献:
1.「Developments in Polymer Characterization−4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983. Chapter1.)
2.Polymer, 45, 6495−6505(2004)
3.Macromolecules, 33, 2424−2436(2000)
4.Macromolecules, 33, 6945−6952(2000)
分岐指数g’は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度([η]br)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる極限粘度([η]lin)との比([η]br/[η]lin)として算出する。
ここで、[η]linを得るための線状ポリマーとしては、市販のホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテック(登録商標)PPグレード名:FY6)を用いる。線状ポリマーの[η]linの対数は分子量の対数と線形の関係があることは、Mark−Houwink−Sakurada式として公知であるから、[η]linは、低分子量側や高分子量側に適宜外挿して数値を得ることができる。
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)は、例えばプロピレンモノマーから末端二重結合を有するプロピレンマクロマーを重合し、プロピレンマクロマーとプロピレンモノマーとを共重合する、いわゆるマクロマー共重合法によって得ることができる。しかしポリプロピレン樹脂(X)の製造方法はマクロマー共重合法に限定されない。
ポリプロピレン樹脂(X)は、プロピレンを単段重合又は二段以上の多段重合で単独重合して得られるプロピレン単独重合体、プロピレンとα−オレフィンとを単段重合又は二段以上の多段重合で共重合して得られるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンを単段重合又は二段以上の多段重合で単独重合してプロピレン単独重合体を得る重合工程とプロピレンとα−オレフィンとを単段重合又は二段以上の多段重合で共重合してプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を得る共重合工程とを含む重合で得られるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体のいずれであってもよいが、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましい。
α−オレフィンは、好ましくはエチレンまたは炭素数4〜18のα−オレフィンである。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。また、α−オレフィンとしては、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
ポリプロピレン樹脂(Y)
本発明において、ポリプロピレン樹脂(Y)は下記の特性(Y−i)、(Y−ii)を有する。
特性(Y−i):230℃、2.16kg荷重で測定されたメルトフローレート(MFR)が0.1〜9.5g/10分
特性(Y−ii):溶融張力(MT)(単位:g)がlog(MT)<−0.9×log(MFR)+0.7、およびlog(MT)<1.15を満たす
以下、特性(Y−i)〜(Y−ii)およびその他の特性について順番に説明する。
(Y−i):ポリプロピレン樹脂(Y)の230℃、2.16kg荷重で測定されたメルトフローレート(MFR)は0.1〜9.5g/10分である。
ポリプロピレン樹脂(Y)のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)は、0.1〜9.5g/10分、好ましくは0.1〜3g/10分、より好ましくは0.2〜1.5g/10分、さらに好ましくは0.3〜0.9g/10分である。MFRが0.1g/10分以上であると、シートを押出成形する際に、押出機への負荷が抑えられ生産性が向上する。また、MFRが9.5g/10分以下であると、シートの溶融張力を高く保つことができ、押出成形や熱成形する際に成形体が自重で垂れることがないため好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(Y)のMFRは、重合時の水素濃度等を制御することにより調整することができる。なお、MFRは、JIS K7210に準拠して測定した値である。
(Y−ii):ポリプロピレン樹脂(Y)の溶融張力(MT)(単位:g)は、
log(MT)<−0.9×log(MFR)+0.7、および
log(MT)<1.15を満たす
ポリプロピレン樹脂(Y)の溶融張力(MT)は、log(MT)<−0.9×log(MFR)+0.6およびlog(MT)<1.04(MT<11)を満たすことが好ましい。さらに好ましくはlog(MT)<−0.9×log(MFR)+0.5およびlog(MT)<0.85(MT<7)を満たすとよい。
ポリプロピレン樹脂(Y)のMFRと溶融張力(MT)とが上記特性(Y−ii)を満たすと、延展性が優れる。溶融張力の下限には定めはないが、小さすぎると耐ドローダウン性が低下し、熱成形時において成形可能な温度幅が狭くなるおそれがあるため、好ましくはlog(MT)>0.48(MT>3)である。
(Y−iii):ポリプロピレン樹脂(Y)のGPCにより測定された分子量分布Mw/Mnは好ましくは3.5〜10である。
ポリプロピレン樹脂(Y)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布Mw/Mn(ここで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)が好ましくは3.5〜10、より好ましくは3.7〜8、さらに好ましくは4〜6である。ポリプロピレン樹脂(Y)のMw/Mnを上記範囲にすることにより、シートを押出成形する際に、成形加工性に特に優れる。ポリプロピレン樹脂(Y)の分子量分布Mw/Mnは、ポリプロピレン樹脂(X)の分子量分布Mw/Mnと同様にして求めることができる。
ポリプロピレン樹脂(Y)は、好ましくは長鎖分岐構造を有しない。ポリプロピレン樹脂(Y)の分岐指数g’は、好ましくは1である。なおポリプロピレン樹脂(Y)の分岐指数g’は、ポリプロピレン樹脂(X)の分岐指数g’と同様にして求めることができる。
ポリプロピレン樹脂(Y)は、プロピレンを単段重合又は二段以上の多段重合で単独重合して得られるプロピレン単独重合体、プロピレンとα−オレフィンとを単段重合又は二段以上の多段重合で共重合して得られるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンを単段重合又は二段以上の多段重合で単独重合してプロピレン単独重合体を得る重合工程とプロピレンとα−オレフィンとを単段重合又は二段以上の多段重合で共重合してプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を得る共重合工程とを含む重合で得られるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体のいずれであってもよいが、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましい。
α−オレフィンは、好ましくはエチレンまたは炭素数4〜18のα−オレフィンである。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。また、α−オレフィンとしては、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
ポリプロピレン樹脂(Y)は、チーグラーナッタ触媒によって重合されたものであることが好ましい。ここでチーグラーナッタ触媒としては、チタン、マグネシウム、ハロゲンを必須とする固体成分、有機アルミニウム、および必要に応じて用いられる電子供与体を含んでなる触媒であることが好ましい。
ポリプロピレン樹脂組成物
本発明の熱成形シートを構成するポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂(X)を5〜100重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)を0〜95重量%、好ましくはポリプロピレン樹脂(X)を10〜100重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)を0〜90重量%、より好ましくはポリプロピレン樹脂(X)を20〜100重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)を0〜80重量%含む。ここで、ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)との合計量を100重量%にする。ポリプロピレン樹脂(X)のポリプロピレン樹脂(X)およびポリプロピレン樹脂(Y)の合計に対する比率が5重量%以上であれば、押出成形や熱成形する際に成形体が自重で垂れてしまうことなく、好ましい。
本発明の熱成形シートを構成するポリプロピレン樹脂組成物において、ポリプロピレン樹脂(X)のメルトフローレートをMFRx、ポリプロピレン樹脂(Y)のメルトフローレートをMFRyとするとき、これらの比MFRx/MFRyが好ましくは30>MFRx/MFRy>1を満たすとよい。より好ましくは15>MFRx/MFRy>1.5を満たすとよい。比MFRx/MFRyを上記範囲にすることにより、偏肉をより小さくした成形体を得ることができる。なおMFRxおよびMFRyは、上記の通り230℃、2.16kg荷重で測定されるものとする。
(任意成分)
ポリプロピレン樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、例えば、発明の効果を一層向上させるなど、他の効果を付与する等の目的のため、任意の成分を添加することができる。
具体的には、顔料などの着色剤、ヒンダードアミン系などの光安定剤、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、ソルビトール系などの造核剤、フェノール系、リン系などの酸化防止剤、非イオン系などの帯電防止剤、ハイドロタルサイトなどの中和剤、チアゾール系などの抗菌・防黴剤、ハロゲン化合物などの難燃剤、可塑剤、脂肪酸金属塩などの分散剤、脂肪酸アミドなどの滑剤、窒素化合物などの金属不活性剤、非イオン系などの界面活性剤、タルクなどの充填剤や、前記ポリプロピレン樹脂(X及びY)以外のポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂やポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂、オレフィン系エラストマー及びスチレン系エラストマーなどのエラストマー(ゴム成分)などを挙げることができる。
これらの任意成分は、2種以上を併用してもよく、プロピレン樹脂(X)に添加してもよいし、ポリプロピレン樹脂(Y)などに添加されていてもよく、それぞれの成分においても、2種以上併用することもできる。
着色剤として、例えば、無機系や有機系の顔料などは、本発明に係る熱成形用シートの、着色外観、見映え、風合い、商品価値、耐候性や耐久性などの付与、向上などに有効である。
具体例としては、無機系の顔料としては、ファーネスカーボン、ケッチェンカーボンなどのカーボンブラック;酸化チタン;酸化鉄(ベンガラ等);クロム酸(黄鉛など);モリブデン酸;硫化セレン化物;フェロシアン化物などが挙げられ、有機系の顔料としては、難溶性アゾレーキ;可溶性アゾレーキ;不溶性アゾキレート;縮合性アゾキレート;その他のアゾキレートなどのアゾ系顔料;フタロシアニンブルー;フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料;アントラキノン;ペリノン;ペリレン;チオインジゴなどのスレン系顔料;染料レーキ;キナクリドン系;ジオキサジン系;イソインドリノン系などが挙げられる。また、メタリック調やパール調にするには、アルミフレーク;パール顔料を含有させることができる。また、染料を含有させることもできる。
光安定剤や紫外線吸収剤として、例えば、ヒンダードアミン化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物やサリシレート系化合物などは、本発明に係る熱成形用シートの耐候性や耐久性などの付与、向上に有効であり、耐候変色性の一層の向上に有効である。
具体例としては、ヒンダードアミン化合物として、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの縮合物;ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕;テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート;ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルセバケートなどが挙げられ、ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられ、ベンゾフェノン系化合物としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられ、サリシレート系化合物としては、4−t−ブチルフェニルサリシレート;2,4−ジ−t−ブチルフェニル3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
ここで、前記光安定剤と紫外線吸収剤とを併用する方法は、耐候性、耐久性、耐候変色性などの向上効果が大きく好ましい。
酸化防止剤として、例えば、フェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤は、本発明に係る熱成形用シートの、耐熱安定性、加工安定性、耐熱老化性などの付与、向上などに有効である。
また、帯電防止剤として、例えば、非イオン系やカチオン系などの帯電防止剤は、本発明に係る熱成形用シートの帯電防止性の付与、向上に有効である。
オレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(EPR)、エチレン・ブテン共重合体エラストマー(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合体エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合体エラストマー(EOR)などのエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー;エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体などのエチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマー、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体エラストマー(SBS)などを挙げることができる。
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体エラストマー(SIS)、スチレン−エチレン・ブチレン共重合体エラストマー(SEB)、スチレン−エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(SEP)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体エラストマー(SEBS)、スチレン−エチレン・ブチレン−エチレン共重合体エラストマー(SEBC)、水添スチレン・ブタジエンエラストマー(HSBR)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体エラストマー(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体エラストマー(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体エラストマー(SBBS)、部分水添スチレン−イソプレン−スチレン共重合体エラストマー、部分水添スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体エラストマーなどのスチレン系エラストマー、さらにエチレン−エチレン・ブチレン−エチレン共重合体エラストマー(CEBC)などの水添ポリマー系エラストマーなどを挙げることができる。
上述した任意成分の使用量は、ポリプロピレン樹脂(X)とポリプロピレン樹脂(Y)との合計量100重量部に対して、100重量部以下であることが好ましい。
ポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂(X)、ポリプロピレン樹脂(Y)、および必要に応じて添加する任意成分を、ドライブレンド、ヘンシェルミキサー等で混合することにより得ることができる。さらに、一軸押出機、二軸押出機等で溶融混練することができる。
本発明の熱成形用シートは、上述したポリプロピレン樹脂組成物により形成された厚さ1mm以上の熱成形用シートである。熱成形用シートは、ポリプロピレン樹脂組成物を単軸押出機又は二軸押出機に通しシート状に押出成形することにより得られる。
本発明の成形体は、上記熱成形用シートを、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、プラグアシスト真空圧空成形などの熱成形法により、成形して得ることができる。このような熱成形における加熱方法としては、間接加熱、熱板加熱、熱ロール加熱などが挙げられる。
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
ポリプロピレン樹脂(X)、ポリプロピレン樹脂(Y)および熱成形用シートの特性は、以下の評価方法により求めた。
1.評価方法
(1)メルトフローレート(MFR)
ポリプロピレン樹脂(X)およびポリプロピレン樹脂(Y)のMFRを、JIS K7210:1999のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。単位はg/10分である。
(2)融点(Tm)
ポリプロピレン樹脂(X)の融点(Tm)は、セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を使用して測定した。シート状にしたサンプル片5mgをアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で20℃まで降温して、その後、10℃/分で200℃まで昇温させた時の融解最大ピーク温度として融点Tmを求めた。単位は℃である。
(3)溶融張力MT
ポリプロピレン樹脂(X)およびポリプロピレン樹脂(Y)の溶融張力MTを、東洋精機製作所製キャピログラフを用いて、以下の条件で張力を測定し、これをMTとした。
・キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
・シリンダー径:9.55mm
・シリンダー押出速度:20mm/分
・引き取り速度:4.0m/分
・温度:230℃
MTが極めて高い場合には、引き取り速度4.0m/分では、樹脂が破断してしまう場合があり、このような場合には、引取り速度を0.1m/分ずつ下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMTとした。単位はグラムである。
(4)分子量分布Mw/MnおよびMz/Mw
上述した方法に従って、GPC測定により求めた。
(5)mm分率
ポリプロピレン樹脂(X)のmm分率は、日本電子社製、GSX−400、FT−NMRを用い、前述したとおり、特開2009−275207号公報の段落[0053]〜[0065]に記載の方法で測定した。単位は%である。
(6)耐ドローダウン性
各実施例及び各比較例で得られたポリプロピレン樹脂シートから、300mm×300mmの大きさの試験片を切り出し、内寸260mm×260mmの枠に水平に固定した。三鈴エリー社製垂れ試験機を用いて、ヒーターが上下に配列してある試験機内の加熱炉に導いて雰囲気温度200℃で加熱し、加熱開始からのサンプル中央部の鉛直方向の変位の経時変化をレーザー光線により逐次測定した。
加熱とともにシートは、一旦垂れ下がり(マイナス方向へ変位)、応力緩和によって張り戻った(プラス方向へ変位)後に再び垂れ下がる。加熱開始時のシート位置(変位)をA(mm)、最大張り戻り時の位置(変位)をB(mm)、最大張り戻り時から10秒後の位置(変位)をC(mm)として、耐ドローダウン性を、以下の基準で評価した。
◎:B−A≧0mmかつC−B≧−5mm
○:B−A≧−5mmかつC−B≧−10mm(B−A≧0mmかつC−B≧−5mmの場合を除く)
△:B−A≧−5mmかつC−B<−10mm、または、B−A<−5mmかつC−B≧−10mm
×:B−A<−5mmかつC−B<−10mm
ここで、B−A≧−5mmであることは、容器成形時にシートが緊張し、皺のない美麗な外観形成が可能であることを意味し、C−B≧−10mmであることは、良好な成形体を得るための成形時間範囲が充分広いことを意味する。
(7)延展性
各実施例及び各比較例で得られたポリプロピレン樹脂シートから、200mm×200mmの大きさの試験片を切り出し、内寸半径80mmの円状枠に固定した。三鈴エリー社製垂れ試験機を用いて、ヒーターが上下に配列してある試験機内の加熱炉に導いて雰囲気温度200℃で加熱し、最大張り戻り時から2秒後シート上部に設置したプラグをエアシリンダー圧により0.1m/秒で降下させ、シートの深絞り成形を行った。得られた高さ200mmのコーン状の成形体について、高さ方向25mm〜175mmの間の15mmの間隔に設けた11か所の基準点における胴部の厚みをマイクロメーターにより測定し、最小の測定値を胴部最小厚みとした。
(8)座屈強度
上記(7)延展性の評価により得られたコーン状の成形体について、成形体上部のシート原反部を固定し、成形体底部の凸部に1kgの荷重を掛け、座屈強度を目視で以下の基準で判定した。
○:座屈が認められない
×:座屈が認められる
参考例1
ポリプロピレン樹脂(X)として、日本ポリプロ(株)製WAYMAX MFX8(表1,3,4中「X1」と記す。)を使用し、これをポリプロピレン樹脂組成物とした。またポリプロピレン樹脂X1の特性を上述した評価方法で測定し表1に示した。
ポリプロピレン樹脂組成物をスクリュウ口径40mmの押出機に投入し、樹脂温度230℃にてT型ダイスより押出し、表面温度が80℃の鏡面仕上げの金属製キャストロ−ルにて挟み、冷却固化させながら0.5m/minの速度で連続的に引き取り、幅500mm、厚さ3.2mmのポリプロピレン樹脂シート(熱成形用シート)を得た。
このシートについて、上述の各種評価を行った。このシートは、耐ドローダウン特性が良好であり、延展性が優れ、偏肉の少ない成形体が得られ、前記成形体は十分な座屈性を有していることが確認された。熱成形用シートの組成および評価結果を表3にまとめた。
実施例2
使用する樹脂を、ポリプロピレン樹脂(X)として日本ポリプロ(株)製WAYMAXMFX8を50重量%と、ポリプロピレン樹脂(Y)として日本ポリプロ(株)製ノバテックEC9(表2,3,4中「Y1」と記す。)を50重量%とからなる混合物をリボンブレンダーにより均一に攪拌混合したものをポリプロピレン樹脂組成物とする以外は、参考例1と同様にして、ポリプロピレン樹脂シートを得、評価を行った。またポリプロピレン樹脂Y1の特性を上述した評価方法で測定し表2に示した。このシートは、耐ドローダウン特性が良好であり、延展性が優れ、偏肉の少ない成形体が得られ、前記成形体は十分な座屈性を有していることが確認された。熱成形用シートの組成および評価結果を表3にまとめた。
実施例3
ポリプロピレン樹脂(X)を20重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)を80重量%とする以外は、実施例2と同様にして、ポリプロピレン樹脂シートを得、評価を行った。このシートは、耐ドローダウン特性が良好であり、延展性が優れ、偏肉の少ない成形体が得られ、前記成形体は十分な座屈性を有していることが確認された。熱成形用シートの組成および評価結果を表3にまとめた。
実施例4
ポリプロピレン樹脂(X)を10重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)を90重量%とする以外は、実施例2と同様にして、ポリプロピレン樹脂シートを得、評価を行った。このシートは、耐ドローダウン特性が良好であり、延展性が優れ、偏肉の少ない成形体が得られ、前記成形体は十分な座屈性を有していることが確認された。熱成形用シートの組成および評価結果を表3にまとめた。
実施例5
ポリプロピレン樹脂(X)として、日本ポリプロ(株)製WAYMAX(表1,3中「X2」と記す。)を使用する以外は、実施例3と同様にして、ポリプロピレン樹脂シートを得、評価を行った。またポリプロピレン樹脂X2の特性を上述した評価方法で測定し表1に示した。このシートは、耐ドローダウン特性が良好であり、延展性が優れ、偏肉の少ない成形体が得られ、前記成形体は十分な座屈性を有していることが確認された。熱成形用シートの組成および評価結果を表3にまとめた。
実施例6
ポリプロピレン樹脂(X)として、日本ポリプロ(株)製WAYMAX MFX6(表1,3中「X3」と記す。)を使用する以外は、実施例3と同様にして、ポリプロピレン樹脂シートを得、評価を行った。またポリプロピレン樹脂X3の特性を上述した評価方法で測定し表1に示した。このシートは、耐ドローダウン特性が良好であり、延展性が優れ、偏肉の少ない成形体が得られ、前記成形体は十分な座屈性を有していることが確認された。熱成形用シートの組成および評価結果を表3にまとめた。
実施例7
ポリプロピレン樹脂(X)として、日本ポリプロ(株)製WAYMAX MFX3(表1,3中「X4」と記す。)を使用する以外は、実施例3と同様にして、ポリプロピレン樹脂シートを得、評価を行った。またポリプロピレン樹脂X4の特性を上述した評価方法で測定し表1に示した。このシートは、耐ドローダウン特性が良好であり、延展性が優れ、偏肉の少ない成形体が得られ、前記成形体は十分な座屈性を有していることが確認された。熱成形用シートの組成および評価結果を表3にまとめた。
実施例8
ポリプロピレン樹脂(X)として、ボレアリスAG製Daploy WB140HMS(表1,3中「X5」と記す。)を使用する以外は、実施例3と同様にして、ポリプロピレン樹脂シートを得、評価を行った。またポリプロピレン樹脂X5の特性を上述した評価方法で測定し表1に示した。このシートは、耐ドローダウン特性がやや良好であり、延展性が優れ、偏肉の少ない成形体が得られ、前記成形体は十分な座屈性を有していることが確認された。熱成形用シートの組成および評価結果を表3にまとめた。
実施例9
ポリプロピレン樹脂(Y)として、日本ポリプロ(株)製ノバテックEA9(表2,3,4中「Y2」と記す。)を使用する以外は、実施例3と同様にして、ポリプロピレン樹脂シートを得、評価を行った。またポリプロピレン樹脂Y2の特性を上述した評価方法で測定し表2に示した。このシートは、耐ドローダウン特性が良好であり、延展性が優れ、偏肉の少ない成形体が得られ、前記成形体は十分な座屈性を有していることが確認された。熱成形用シートの組成および評価結果を表3にまとめた。
Figure 0006354672
Figure 0006354672
Figure 0006354672
比較例1
使用するポリプロピレン樹脂組成物を、日本ポリプロ(株)製ノバテックEC9とする以外は、参考例1と同様にして、ポリプロピレン樹脂シートを得、評価を行った。このシートは、耐ドローダウン特性が不良であり、延展性が悪く、偏肉の大きい成形体が得られ、前記成形体は座屈強度が弱いことが確認された。結果を表4にまとめた。
比較例2
使用するポリプロピレン樹脂組成物を、日本ポリプロ(株)製ノバテックEA9とする以外は、参考例1と同様にして、ポリプロピレン樹脂シートを得、評価を行った。このシートは、耐ドローダウン特性が不良であり、延展性が悪く、偏肉の大きい成形体が得られ、前記成形体は座屈強度が弱いことが確認された。結果を表4にまとめた。
比較例3
ポリプロピレン樹脂(X)を3重量%、ポリプロピレン樹脂(Y)を97重量%含むポリプロピレン樹脂組成物を使用すること以外は、実施例2と同様にして、ポリプロピレン樹脂シートを得、評価を行った。このシートは、耐ドローダウン特性が不良であり、延展性が悪く、偏肉の大きい成形体が得られ、前記成形体は座屈強度が弱いことが確認された。結果を表4にまとめた。
Figure 0006354672

Claims (3)

  1. ポリプロピレン樹脂組成物により形成された厚さ1mm以上の熱成形用シート(ただし、熱成形用発泡シートを除く)であって、前記ポリプロピレン樹脂組成物が、長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)5〜50重量%およびポリプロピレン樹脂(Y)95〜50重量%を含み、前記ポリプロピレン樹脂(X)が下記の特性(X−i)、(X−ii)を有し、前記ポリプロピレン樹脂(Y)が下記の特性(Y−i)、(Y−ii)を有し、ポリプロピレン樹脂(X)のメルトフローレートをMFRx、ポリプロピレン樹脂(Y)のメルトフローレートをMFRyとするとき、これらの比MFRx/MFRyが30>MFRx/MFRy>1を満たすことを特徴とする熱成形用シート。
    特性(X−i):230℃、2.16kg荷重で測定されたメルトフローレート(MFR)が0.1〜30g/10分
    特性(X−ii):溶融張力(MT)(単位:g)が
    log(MT)≧−0.9×log(MFR)+0.7、または
    log(MT)≧1.15を満たす
    特性(Y−i):230℃、2.16kg荷重で測定されたメルトフローレート(MFR)が0.1〜9.5g/10分
    特性(Y−ii):溶融張力(MT)(単位:g)が
    log(MT)<−0.9×log(MFR)+0.7、および
    log(MT)<1.15を満たす
  2. 前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレン樹脂(X)が、下記の特性(X−iii)を有することを特徴とする請求項1に記載の熱成形用シート。
    特性(X−iii):13C−NMRによるプロピレン単位3連鎖のmm分率が95%以上
  3. 請求項1又は2に記載の熱成形用シートを熱成形して得られることを特徴とする成形体。
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