JP7064355B2 - ポリオレフィン多層シートまたはフィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
[1]外層およびコア層を備え、以下のi)およびii)を満たすポリオレフィン多層シートまたはフィルム:
i)前記外層の厚さが全体の厚さの1/40~1/100であり、2~50μmである
ii)前記コア層は前記外層より厚い
の製造方法であって、
前記外層およびコア層を共押出して、前記i)およびii)を満たすポリオレフィン多層シートまたはフィルムを形成する工程を含み、
当該共押出する工程における前記外層を形成するための押出機が上流からフィードゾーンおよび圧縮ゾーンを備え、
当該フィードゾーンの温度T(℃)が式(1)の関係を満たす、
Tm-50℃ ≦T≦Tm-10℃・・・(1)
(Tmは原料ポリオレフィンの融点(℃)である)
製造方法。
[2]前記共押出工程で得たポリオレフィン多層シートまたはフィルムを、前記i)、ii)を満たすように二次加工する工程をさらに含む、[1]に記載の製造方法。
[3]前記外層が、エチレンおよびC4~C10-α-オレフィンからなる群より選択されるコモノマー0~5.0重量%を含むポリプロピレンを含む、[1]または2]に記載の製造方法。
[4]前記コア層が以下のポリプロピレン組成物:
成分(1)として、プロピレン単独重合体と、エチレンおよびC4~C10-α-オレフィンからなる群より選択されるコモノマーを含むプロピレン共重合体とのブレンドであって、両者の重量比が10~97:90~3でありかつ当該ブレンド中の当該コモノマー含有量が3重量%以下のブレンド、ならびに
成分(2)として、60~90重量%のエチレンと、1種類以上のC3~C10-α-オレフィンとの共重合体からなるエチレン共重合体、を含み、
以下の(i)~(iii)を備える
(i)前記成分(1):成分(2)の重量比が、60~90:40~10
(ii)MFR(230℃、荷重2.16kg)が1.0~10g/10分
(iii)XSIV(キシレン可溶分の極限粘度)が0.5~2.0dl/g、
を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記多層シートまたはフィルムが3層以上の層を備え、前記外層が両最外面に位置する、[4]に記載の製造方法。
[6]前記多層シートまたはフィルムが3層構造である、[5]に記載の製造方法。
[7]前記ポリプロピレン組成物が、成分(1)中に成分(2)が分散している相構造を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]前記成分(1)におけるコモノマーがエチレンであり、
前記成分(2)におけるα-オレフィンが、プロピレンまたはブテン-1である、[4]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]前記ポリプロピレンにおけるコモノマーがエチレンである、[3]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]前記[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法によって得られた多層シートまたはフィルム。
本発明は特定の厚さを有する外層およびこれよりも厚いコア層を有するポリオレフィン多層シート等を共押出して形成する工程を含む。共押出工程とは、複数の押出機を用いて溶融樹脂を形成し、それぞれの溶融樹脂を多層フィードブロックあるいは多層マニホールド等に通過させて多層構造を形成し、これを冷却固化して成形物を製造する工程である。以下、当該共押出し工程について説明する。
本発明では、上流からフィードゾーンおよび圧縮ゾーンを備えるスクリュー構成を備える押出機を用いて外層を形成する。押出機の原料樹脂投入側を上流といい、ダイ側を下流という。図1にスクリュー構成の一態様を示す。図1中、1は原料樹脂投入口、2はフィードゾーン、3は圧縮ゾーン、4は計量ゾーンである。
Tm-50℃ ≦T≦Tm-10℃・・・(1)
式(1)においてTmは原料樹脂(原料ポリオレフィン)の融点(℃)である。Tの下限値はTm-45℃であることが好ましく、Tm-40℃であることがより好ましい。Tの上限値はTm-20℃であることが好ましい。TがTm-50℃より低い場合は樹脂が溶融されずシート成形が困難となる。TがTm-10℃より高い場合は、シート等の幅方向で外層の厚さの変動が大きくなり、全体的に光沢ムラ等の外観不良が発生するとともに透明性が悪化する。Tmは原料樹脂を、DSCを用いてセカンドスキャンして観測される、最も高温側にあるピークトップ温度である。セカンドスキャンとは、原料樹脂を加熱融解後、冷却して結晶化し、室温で5分間保持した後に2回目の加熱をして熱分析することをいう。具体的には、1)原料樹脂を融解温度(230℃)まで加熱し、当該温度で5分保持し、10℃/分の降温速度で30℃まで冷却して5分間保持した後、2)10℃/分の昇温速度で230℃まで加熱して熱分析を行う。ポリプロピレン系のポリオレフィンを原料樹脂として用いる場合、Tは120~160℃程度とすることができる。フィードゾーンの長さは適宜調整されるが、スクリューの原料投入位置から下流端までの長さをLとすると、フィードゾーンは0.15L~0.3Lの長さであることが好ましい。
コア層を形成する押出機の構成および成形条件は特に限定されず、温度は公知の温度としてよく、かつ吐出量は所望の厚さによって適宜調整してよい。一態様において、本発明のポリオレフィン多層シート等は外層/コア層/外層の3層構造であることが好ましい。このような3層構造の場合、従来の技術では厚さの比を1:「5~20」:1とすることが一般的であったが、本発明によれば厚さの比を1:「40~100」:1とできる。
前述の成形機によって得られた溶融樹脂を積層してこれを冷却固化することでポリオレフィン多層シート等を製造できる。積層する工程は公知のとおりとしてよく、例えば公知の多層フィードブロックあるいは多層マニホールドを用いることができる。成形品を冷却固化する工程も公知のとおりとしてよく、成形品を空冷することや成形品をチルプレート等に載置することが挙げられる。チルプレート等に載置する場合、引取速度を調整することで成形品の厚さを適宜調整することができる。このようにして得られた成形品、すなわちポリオレフィン多層シート等は用途に応じた形状に形成され、種々の用途に用いることができる。
本発明のポリオレフィン多層シート等はポリオレフィンで構成される。本発明で使用されるポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・共役ジエン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体等が挙げられる。ポリプロピレンは、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、ランダムポリプロピレン(プロピレンランダム共重合体)、ブロックポリプロピレンのいずれであってもよい。ここでブロックポリプロピレンとは、ヘテロファジック共重合体、ヘテロファジックポリプロピレン、耐衝撃性プロピレンポリマー、または耐衝撃性ポリプロピレンポリマーと称されることもあり、共重合または混合によって得られるゴム成分を含むポリプロピレンをいう。ポリエチレンは、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのいずれであってもよい。ポリオレフィンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記ポリオレフィンの中でも、本発明の効果がとりわけ発揮される点では、ポリプロピレンが好ましい。これらポリオレフィン多層シート等は、いずれも透明性および耐寒衝撃性に優れるので、包装材料、容器用材料、特に食品容器として有用である。各層の厚さや位置はすでに述べたとおりであるので、以下に各層を構成する好ましい材料について説明する。
外層は、エチレンおよびC4~C10-α-オレフィンからなる群より選択されるコモノマー0~5.0重量%を含むポリプロピレン、を含むことが好ましい。特に、プロピレン単独重合体またはプロピレンランダム共重合体を含むことが好ましい。プロピレンランダム共重合体においてコモノマーの含有量は5.0重量%以下であればよいが、4.0重量%以下であることが好ましい。コモノマーの量が上限値を超えると得られるシート等の製造安定性が低下する。プロピレンランダム共重合体においてコモノマーの含有量の下限値は0重量%超であればよいが、0.1重量%以上であることが好ましい。プロピレン単独重合体およびプロピレンランダム共重合体は公知の方法で製造できる。プロピレンランダム共重合体におけるコモノマーは産業上、安価かつ安定的に流通され、かつ入手が比較的容易であることの観点からエチレンが好ましい。上記ポリプロピレンは、1.0~10g/10分のMFR(230℃、荷重2.16kgで測定)を有することが好ましい。MFRが上限値を超えると成形時にドローダウンしやすくなるためにシート等の製造が困難となり、下限値未満であると成形時の負荷が大きくなりシート等の製造が困難となる。
コア層は任意のポリオレフィンで構成されてよいが、成分(1)および成分(2)を含むポリプロピレン組成物を含むことが好ましい。成分(1)は、プロピレン単独重合体、プロピレン共重合体、またはプロピレン単独重合体とプロピレン共重合体とのブレンドである。成分(2)はエチレン共重合体である。成分(1)と成分(2)の重量比は60~90:40~10であり、好ましくは65~85:35~15である。成分(2)の量が上限を超えるとシート等の剛性が低下し、下限未満であるとシート等の耐寒衝撃性が低下する。
成分(1)はプロピレン単独重合体、プロピレン共重合体、またはプロピレン単独重合体とプロピレン共重合体とのブレンドである。これらは任意の重量比とすることができるが、好ましくは、成分(1)として、プロピレン単独重合体と、エチレンおよびC4~C10-α-オレフィンからなる群より選択されるコモノマーを含むプロピレン共重合体とのブレンドであって、両者の重量比が10~97:90~3でありかつ当該ブレンド中の当該コモノマー含有量が3重量%以下のブレンドである。すなわち、成分(1)中、プロピレン単独重合体の含有量は10~97重量%である。当該含有量が下限値未満であると剛性が低下し、上限値を超えると透明性、耐寒衝撃性、および剛性のバランスを良好にするための成形条件が限定される。この観点から、プロピレン単独重合体の含有量は40~90重量%が好ましい。またプロピレン共重合体はプロピレンランダム共重合体であることが好ましい。
成分(2)はエチレンと1種類以上のC3~C10-α-オレフィンとの共重合体からなるエチレン共重合体である。エチレンの含有量は60~90重量%であるが、好ましくは65~85重量%である。エチレン含有量が上限値を超えると得られるシート等の耐寒衝撃性が低下し、下限値未満であるとシート等の透明性が低下する。α-オレフィンはC3~C10のα-オレフィンであるが、産業上、安価かつ安定的に流通され、かつ入手が比較的容易であることの観点からプロピレンまたはブテン-1が好ましい。
ポリプロピレン組成物は、当該組成物100重量部に対して1.0重量部以下、好ましくは0.3重量部以下の結晶核剤を含んでいてもよいが、含まないことがより好ましい。結晶核剤の量が上限値を超えると、結晶核形成の促進効果は頭打ちとなり、単純に製造コスト増となるため、産業上大量安価に製造する場合においては現実的でない。
[MFR]
ポリプロピレン組成物は1.0~10g/10分のMFRを有することが好ましい。MFRは230℃、荷重2.16kgで測定される。MFRが上限値を超えると成形時にドローダウンしやすくなるためにシート等の製造が困難となり、下限値未満であると成形時の負荷が大きくなりシート等の製造が困難になる。
ポリプロピレン組成物は0.5~2.0dl/gのXSIVを有することが好ましい。XSIVとは、ポリプロピレン組成物の25℃でのキシレン可溶分の極限粘度である。キシレン可溶分は結晶性を持たない成分であり、XSIVはその成分の分子量の指標である。キシレン可溶分の主体は成分(2)に由来する。当該組成物におけるXSIVは25℃のキシレンに可溶な成分を得て、当該成分の極限粘度を定法にて測定することで求められる。XSIVが上限値を超えると得られるシート等の透明性が低下し、下限値未満であるとポリプロピレン組成物の製造安定性が低下する。
ポリプロピレン組成物は、成分(1)中に成分(2)が分散している相構造を有することが好ましい。マトリックスである成分(1)がプロピレン単独重合体とプロピレン共重合体のブレンドであるかどうかは、DSCによって確認できる。例えば特開2011-184686の段落0037に記載の方法に従ってDSC分析を行うことで確認できる。具体的には、本発明で用いるポリプロピレン組成物を、極大加熱温度が順次低くなるように加熱と冷却を複数回繰り返した後に再加熱した際の熱分析による融解曲線が以下のx~zを満たす場合、成分(1)がプロピレン単独重合体とプロピレン共重合体のブレンドである。
x)融解ピーク温度が165℃以上である。
y)170℃以上で融解する成分の割合が5%以上である。
z)160℃以下で融解する成分の割合が15%以上である。
前述のとおり、成分(1)はプロピレン単独重合体またはプロピレン共重合体を単体として用いることができるが、プロピレン単独重合体とプロピレン共重合体とをブレンドして用いることもできる。便宜上、成分(1)のプロピレン単独重合体を「成分(1h)」、プロピレン共重合体を「成分(1c)」とする。成分(1h)、成分(1c)、および成分(2)からなるポリプロピレン組成物は任意の方法で製造できる。例えば以下の方法で製造できる。
方法4-1:成分(1c)の重合体の存在下で成分(2)の原料モノマーを重合してブレンドを調製する工程、成分(1h)の原料モノマーを重合して重合体を得る工程、および前記ブレンドと重合体を混合する工程、を含む方法。
方法4-2:成分(1c)の重合体の存在下で成分(2)の原料モノマーを重合してブレンド1を得る工程、成分(1h)の重合体の存在下で成分(2)の原料モノマーを重合してブレンド2を得る工程、および両者を混合する工程、を含む方法。
中間層は本発明の効果を損なわない限り任意のポリマーを含んでよい。例えば、本発明の3層からなるシート等をリサイクルして得たリターン材等を中間層に使用できる。
本発明のポリオレフィン多層シート等は、外層を極薄にできるのでこのことに起因する種々の優れた効果を奏する。例えば、前述のエチレンおよびC4~C10-α-オレフィンからなる群より選択されるコモノマー0~5.0重量%を含むポリプロピレンが外層、前述のポリプロピレン組成物がコア層である3層シートを例にして説明する。当該シートは成分(1)中に成分(2)が分散している相構造を有するコア層を有するのでシートの耐寒衝撃性が向上するが、外部ヘーズは大きくなる。一方、外層は融点が大きく異なる成分が存在しないため表面に凹凸を持たないことによって小さな外部ヘーズを有する。すなわち、コア層はシート等の耐寒衝撃性、外層は透明性向上に寄与する。外層が厚いと耐寒衝撃性を低下させるが、本発明において外層は極めて薄いため耐寒衝撃性を低下させない。以上から、前記ポリオレフィン多層シートは優れた透明性と耐寒衝撃性を発現する。
(1)外層のための重合体
[重合体A1]
重合に用いる固体触媒を、欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により調製した。当該固体触媒は、MgCl2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを上記の特許公報に記載された方法で担持させたものである。当該固体触媒と、トリエチルアルミニウム(TEAL)およびシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が8、TEAL/CHMMSの重量比が6.5となるような量で、-5℃で5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予重合を行った。
得られた予重合物を重合反応器に導入した後、水素とプロピレンをフィードし、重合温度、水素濃度を、それぞれ75℃、0.113モル%とし、圧力を調整することよって、プロピレン単独重合体を製造した。当該重合体のパウダー100重量部に、結晶核剤としてMillad NX8000J(ノニトール系、ミリケン社製)0.5重量部添加し、酸化防止剤としてBASF社製B225を0.2重量部、中和剤として淡南化学社製カルシウムステアレートを0.05重量部添加し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌して混合した。この混合物を、ナカタニ機械株式会社製NVCφ50mm単軸押出機を用いて、シリンダー温度230℃で押出し、ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットしペレット状のプロピレン樹脂組成物を得て、重合体A1とした。重合体A1は結晶核剤を含むポリプロピレン組成物である。当該重合体のTmは166℃であった。
シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMMS)の代わりにジイソプロピルジメトキシシラン(DIPMS)を用い、TEAL/DIPMSの重量比を3.2とし、水素とプロピレン以外にエチレンをフィードして、重合温度を75℃、水素濃度を0.12モル%、エチレン濃度を0.45モル%とした以外は、重合体A1の場合と同様にしてプロピレン-エチレン共重合体を製造した。得られた重合体のパウダー100重量部に、結晶核剤としてMillad NX8000Jの代わりにMillad 3988(ソルビトール系、ミリケン社製)を0.25重量部添加した以外は、重合体A1と同様にして重合体A2を得た。重合体A2は結晶核剤を含むポリプロピレン組成物である。当該重合体のTmは153℃であった。
[重合体B1]
MgCl2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州特許第728769号公報の実施例5に記載された方法により調製した。次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてTEALと、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの重量比が20、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予重合を行った。得られた予重合物を、二段の重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の重合反応器に導入し、プロピレンをフィードし、プロピレンの液相状態にてプロピレン単独重合体を製造し、二段目の気相重合反応器でエチレン・ブテン-1共重合体を製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度と水素濃度が、それぞれ70℃、0.05モル%、二段目の反応器では、重合温度、H2/C2、C4/(C2+C4)が、それぞれ80℃、0.22モル比、0.52モル比であった。また、共重合体成分の量が30重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。得られた重合体のパウダー100重量部に、結晶核剤としてMillad NX8000Jの代わりにアデカスタブNA-71(リン酸エステル系、株式会社ADEKA製)を0.25重量部添加した以外は、重合体A1と同様にして重合体B1を得た。重合体B1は、プロピレン単独重合体マトリックス中に、エチレン-ブテン-1共重合体が分散し、かつ結晶核剤を含むポリプロピレン組成物である。
表1に重合体の特性をまとめる。
2種3層フィードブロックを備えるTダイ押出機(株式会社創研)を用いて、前記重合体から3層シート(特に「二次加工前多層シート」という)を製造し、後述の方法で評価した。
Tダイは300mmのコートハンガーダイであり、リップ幅は1.5mmであった。スクリュー構成は以下のとおりであった。
コア層用:フルフライトスクリュー(φ30mm、L/D=38、CR 2.75)
外層用 :フルフライトスクリュー(φ25mm、L/D=25、CR 3.2)
上記で得た二次加工前多層シートを150℃または160℃で120秒加熱し、Bruckner社製フィルム延伸装置(KARO)を用いて2軸延伸を行ない、全体の厚さ0.2~0.4mmの3層シート(特に「シート状積層体」または「二次加工後シート状積層体」ともいう)を得た。当該2軸延伸は、二次加工である真空成形、圧空成形、真空圧空成形等を想定して実施した。条件および評価結果を表2にまとめた。
(1)重合体または重合体における各成分のエチレン含有量
1,2,4-トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子株式会社製JNM LA-400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、13C-NMR法で測定した値から算出した。
(2)MFR
JIS K 7210-1に準じ、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。
(3)XSIV
サンプル2.5gを、o-キシレン(溶媒)を250ml入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間、撹拌し、サンプルを完全溶解した。その後、溶液を25℃で1時間冷却した。濾紙を用いて得られた溶液を濾過し、濾液を100ml採取し、アルミカップ等に移し、窒素パージを行いながら、150℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置してキシレン可溶分を得た。ウベローデ型粘度計を用いて、当該キシレン可溶分の135℃テトラヒドロナフタレン中で極限粘度を測定し、XSIV(dl/g)を得た。
重合体のTmは、パーキンエルマー社製ダイヤモンドDSCを用いて、前記のとおり定義したセカンドスキャンを行い測定した。
二次加工前多層シートを測定用試験片とした。株式会社島津製作所製ハイドロショットHITS-P10を用い、-30℃に調整した槽内で、内径40mmφの穴の開いた支持台に測定用試験片を置き、内径76mmφの試料押えを用いて固定した後、半球状の打撃面を持つ直径12.7mmφのストライカーで、1m/秒の衝撃速度で試験片を打撃し、JIS K7211-2に従いパンクチャーエネルギー(J)を求めた。4個の測定用試験片各々のパンクチャーエネルギーの平均値を面衝撃強度とした。
ISO 14782に準拠して、株式会社村上色彩技術研究所製、HM-150を使用し、前述のとおりにして得た二次加工前多層シートおよび二次加工後シート状積層体を試験片としヘーズ測定を行い、透明性を評価した。表面の凹凸の影響を除外するため、試験片の両面に流動パラフィン(関東化学株式会社製、Liquid Paraffin Cat. No.32033-00)を刷毛にて塗布し、同様にヘーズ測定を行った。前者を「全ヘーズ」、後者を「内部ヘーズ」と定義した。また表面の寄与を見るため、「外部ヘーズ」(「全ヘーズ」-「内部ヘーズ」)を定義した。
二次加工前多層シートに関し、幅方向に等間隔に5等分し、それぞれの中心部分を3cm×3cmに切り出して試験片とし、シックネスゲージで測定して得た平均値を全体の厚さとした。さらに、試験片の断面をミクロトームで切削した後、倍率100倍の偏光顕微鏡で表裏両面の外層を観察し、その顕微鏡写真の表裏両面の外層の厚さをノギスで測定し、標準スケールを用いて実際の厚さに換算した。5つの試験片の表裏両面の厚さ計10点の測定値の平均値を外層の厚さとした。また、10点の計測から外層の厚さの標準偏差を求めた。上記透明性評価に用いた二次加工後シート状積層体に関しては、透明性計測位置をシックネスゲージで測定して得た平均値を全体の厚さとし、二次加工後シート状積層体の外層の厚さは以下から求めた。
(二次加工後シート状積層体の全体の厚さ)×(二次加工前多層シートの外層の厚さ)/(二次加工前多層シート全体の厚さ)
本発明の製造方法により得られたポリオレフィン多層シートは優れた耐寒衝撃性と透明性のバランスを備えることが明らかである。
2 フィードゾーン
3 圧縮ゾーン
4 計量ゾーン
Claims (10)
- 外層およびコア層を備え、以下のi)およびii)を満たすポリプロピレン多層シートまたはフィルム:
i)前記外層の厚さが全体の厚さの1/40~1/100であり、2~50μmである
ii)前記コア層は前記外層より厚い
の製造方法であって、
前記外層およびコア層を共押出して、前記i)およびii)を満たすポリプロピレン多層シートまたはフィルムを形成する工程を含み、
当該共押出する工程における前記外層を形成するための押出機が上流からフィードゾーンおよび圧縮ゾーンを備え、
当該フィードゾーンの温度T(℃)が式(1)の関係を満たす、
Tm-50℃ ≦T≦Tm-10℃・・・(1)
(Tmは原料ポリプロピレンの融点(℃)である)
製造方法。 - 前記共押出工程で得たポリプロピレン多層シートまたはフィルムを、前記i)、ii)を満たすように二次加工する工程をさらに含む、
請求項1に記載の製造方法。 - 前記外層が、エチレンおよびC4~C10-α-オレフィンからなる群より選択されるコモノマー0~5.0重量%を含むポリプロピレンを含む、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記コア層が以下のポリプロピレン組成物:
成分(1)として、プロピレン単独重合体と、エチレンおよびC4~C10-α-オレフィンからなる群より選択されるコモノマーを含むプロピレン共重合体とのブレンドであって、両者の重量比が10~97:90~3でありかつ当該ブレンド中の当該コモノマー含有量が3重量%以下のブレンド、ならびに
成分(2)として、60~90重量%のエチレンと、1種類以上のC3~C10-α-オレフィンとの共重合体からなるエチレン共重合体、を含み、
以下の(i)~(iii)を備える
(i)前記成分(1):成分(2)の重量比が、60~90:40~10
(ii)MFR(230℃、荷重2.16kg)が1.0~10g/10分
(iii)XSIV(キシレン可溶分の極限粘度)が0.5~2.0dl/g、
を含む、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。 - 前記多層シートまたはフィルムが3層以上の層を備え、前記外層が両最外面に位置する、請求項4に記載の製造方法。
- 前記多層シートまたはフィルムが3層構造である、請求項5に記載の製造方法。
- 前記ポリプロピレン組成物が、成分(1)中に成分(2)が分散している相構造を有する、請求項4~6のいずれかに記載の製造方法。
- 前記成分(1)におけるコモノマーがエチレンであり、
前記成分(2)におけるα-オレフィンが、プロピレンまたはブテン-1である、請求項4~7のいずれかに記載の製造方法。 - 前記ポリプロピレンにおけるコモノマーがエチレンである、請求項3~8のいずれかに記載の製造方法。
- 前記Tが、Tm-40℃≦T≦Tm-20℃の関係を満たす、請求項1~9のいずれかに記載の製造方法。
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