JP7115288B2 - 加飾フィルム及びそれを用いた加飾成形体の製造方法 - Google Patents

加飾フィルム及びそれを用いた加飾成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための加飾フィルム及びその加飾フィルムを用いた加飾成形体の製造方法に関する。詳しくは、熱成形時のフィルムのしわや破膜を抑制でき、樹脂成形体への十分な接着強度を発現することができる、樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための加飾フィルム及びその加飾フィルムを用いる加飾成形体の製造方法に関する。さらには、接触ムラがなく熱成形性に優れ、表面光沢及び接着力が良好であり、熱成形前後で表面光沢の低下が抑制され、かつ、リサイクル性に優れる、三次元加飾熱成形に用いることができる加飾フィルム及びその加飾フィルムを用いた加飾成形体の製造方法に関する。
近年、VOC(揮発性有機化合物)削減要求等で塗装に代わる加飾技術への要求が高まっており、様々な加飾技術の提案が成されている。
なかでも塗膜に代わる加飾フィルムを真空圧空成形又は真空成形により成形体に適用して、加飾フィルム及び成形体が一体化された装飾成形品を形成する技術が提案され(例えば特許文献1参照。)、近年、特に注目されるようになっている。
真空圧空成形及び真空成形による加飾成形は、インサート成形に代表される他の加飾成形に比べ、形状の自由度が大きく、加飾フィルムの端面が加飾対象の裏側まで巻き込まれることで継ぎ目が生じないため外観に優れ、さらに、比較的低温、低圧で熱成形することができることから、加飾フィルム表面にシボ等を付与することにより、加飾成形体の表面でのシボ等の再現性に優れるといった利点を有する。
このような真空圧空成形及び真空成形による加飾成形において、加飾フィルムと成形体とを貼着させる際、加飾フィルムに破膜やしわが発生したり、加飾フィルムと成形体との接着強度が十分に得られないという課題があった。また接着強度の向上のための層として、接着剤やタッキファイヤ等の使用が提案されているが、高価であること、層構成が極めて複雑になること、耐溶剤性や耐熱性が不足すること、等の問題を有している。
このような問題に対し、ポリプロピレン系樹脂からなる基体(成形体)に、ポリプロピレン系樹脂を含有する接着層を含む加飾フィルムを適用することにより、加飾フィルムと成形体とを熱融着することが提案されている(例えば特許文献2及び3を参照。)。特許文献2及び3において開示された発明は、加飾フィルムの接着層としてポリプロピレン系樹脂を用いるものであるが、実質的にはさらに、接着層上の表面層、接合層やバルク層にアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート等の層を設けることを必要としている。このように異種原材料を組み合わせることによって、ドローダウン性等の熱成形性を発現させているのであり、これらの異種原材料を含まないポリプロピレン系樹脂からなる加飾フィルムでは熱成形性を確保することができず、これを貼着した成形品の表面には、穴やしわ、空気の巻き込みが生じやすく、さらには破膜が発生し、外観の優れる加飾成形体を得ることができなかった。特に異種原材料としてポリウレタン樹脂を含む場合、熱硬化性樹脂であるポリウレタン樹脂は、加熱時に融解しないためフィルムの形態を保持しやすく熱成形性を非常に高めるものの、リサイクル性が極めて低いという課題があった。
すなわち、特許文献2及び3に記載された加飾フィルムでは、接着性及び外観等の熱成形性を確保するため異種原材料を含み、層構成が複雑でその製造には多くの工程を必要とすること、異種原材料が組み合わされた加飾フィルムのリサイクルが困難であること、という問題を有している。
日本国特開2002-67137号公報 日本国特開2013-14027号公報 日本国特開2014-124940号公報
ポリプロピレン系樹脂をはじめとするポリオレフィン系樹脂は、結晶性樹脂であるため、粗大な球晶構造を形成し、透明性や表面光沢が悪化することが知られている。これに対し、造核剤を添加することで、球晶サイズを小さくし、透明性や表面光沢を加飾フィルムに付与することが検討されている。しかし、そのような造核剤を含有させることにより、高光沢な加飾フィルムとすることはできるものの、三次元加飾成形後に表面がくすむ等の問題があった。
従来の技術では、リサイクルが容易であり、優れた接着性及び外観を両立でき、さらには加飾成形後であっても光沢の低下が小さいプロピレン系樹脂からなる加飾フィルムはいまだ達成されていない。本発明の課題は、上記問題点を鑑み、接触ムラがなく熱成形性に優れ、表面光沢及び接着力が良好であり、熱成形前後で表面光沢の低下が抑制され、かつ、リサイクル性に優れる、三次元加飾熱成形に用いることができる加飾フィルム及びそれを用いた加飾成形体の製造方法を提供することにある。
三次元加飾熱成形においては、固体状態の樹脂成形体に固体状態の加飾フィルムを貼着させるには、成形体表面及びフィルムが十分に軟化又は融解することが必要である。そのため、成形体表面とフィルムの軟化若しくは融解に必要な熱量を加えること、又は軟化若しくは融解しやすい成形体及びフィルムを用いることが重要となる。一方で、フィルムを加熱しすぎると、フィルムは粘度が低下し、三次元加飾熱成形工程における成形体の突き上げや真空チャンバーを大気圧に戻す際の空気の流入により、フィルムが破断したり暴れたりすることが外観不良につながる。本発明者らは、上記外観不良が生じる機構に着目し検討した結果、特定のポリプロピレン系樹脂からなる層を含む加飾フィルムが、前記課題を解決し得ることを見出した。
さらに、加飾成形条件、すなわち真空下において加飾フィルムを加熱するという工程において、光沢を付与するために樹脂に添加した造核剤が著しく揮発していることをつきとめた。本発明者らは、良好な接着性を有するシール層を含むことで、低温かつ短時間での加飾成形を可能にし、造核剤が揮発する前に加飾成形を完了させることにより、光沢低下を抑えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための造核剤を含有する加飾フィルムであって、該加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)を含有するシール層(I)及びポリプロピレン系樹脂(B)を含有する層(II)を含み、前記ポリプロピレン系樹脂(A)は下記要件(a1)を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂(B)は下記要件(b1)を満たす加飾フィルム。
(a1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(A))は、0.5g/10分を超える。
(b1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))とMFR(A)とは、関係式(b-1)を満たす。
MFR(B)<MFR(A) ・・・式(b-1)
(2)前記造核剤が、芳香族カルボン酸金属塩、芳香族リン酸金属塩、ソルビトール系誘導体、ノニトール誘導体、アミド系化合物、ロジンの金属塩から選択される(1)に記載の加飾フィルム。
(3)前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、さらに下記要件(a2)~(a4)を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂(B)は、さらに下記要件(b2)を満たす、(1)又は(2)に記載の加飾フィルム。
(a2)メタロセン触媒系プロピレン系重合体である。
(a3)融解ピーク温度(Tm(A))は、150℃未満である。
(a4)GPC測定により得られる分子量分布(Mw/Mn(A))は、1.5~3.5である。
(b2)融解ピーク温度(Tm(B))とTm(A)とは、関係式(b-2)を満たす。
Tm(B)>Tm(A) ・・・式(b-2)
(4)前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、さらに下記要件(a5)を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂(B)は、さらに下記要件(b3)を満たす、(1)~(3)のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
(a5)結晶化温度(Tc(A))は、100℃未満である。
(b3)結晶化温度(Tc(B))とTc(A)とは、関係式(b-3)を満たす。
Tc(B)>Tc(A) ・・・式(b-3)
(5)前記シール層(I)は、ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)との重量比率が97:3~5:95である樹脂組成物(X3)を含み、前記エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)は下記要件(c1)~(c3)を満たす、(1)~(4)のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
(c1)エチレン含量[E(C)]は、65重量%以上である。
(c2)密度は、0.850~0.950g/cmである。
(c3)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(C))は、0.1~100g/10分である。
(6)前記シール層(I)は、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(D)との重量比率が97:3~5:95である樹脂組成物(X4)を含み、前記熱可塑性エラストマー(D)は下記要件(d1)~(d4)を満たす、(1)~(4)のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
(d1)プロピレン及びブテンのうちの少なくとも1つを主成分とする熱可塑性エラストマーである。
(d2)密度は0.850~0.950g/cmである。
(d3)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(D))は、0.1~100g/10分である。
(d4)引張弾性率がポリプロピレン系樹脂(A)よりも小さい。
(7)前記シール層(I)は、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(E)との重量比率が97:3~5:95である樹脂組成物(X5)を含み、前記熱可塑性樹脂(E)は下記要件(e1)を満たし、前記樹脂組成物(X5)は下記要件(x1)を満たす、(1)~(4)のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
(e1)脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基のうちの少なくとも1つを含有する。
(x1)示差熱走査型熱量計(DSC)で求めた樹脂組成物(X5)の等温結晶化時間(t(X5))(秒)が、以下の式(x-1)を満たす。
t(X5)≧1.5×t(A) ・・・式(x-1)
(式中t(A)はポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化開始温度よりも10℃高い温度で測定したポリプロピレン系樹脂(A)の等温結晶化時間(秒)を表し、t(X5)はポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化開始温度よりも10℃高い温度で測定した樹脂組成物(X5)の等温結晶化時間(秒)である。)
(8)前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、下記要件(f1)及び(f2)を満たすプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)である、(1)~(7)のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
(f1)融解ピーク温度(Tm(F))が、110~170℃である。
(f2)プロピレン単独重合体又はプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F1)を5~97重量%、前記成分(F1)よりもエチレン含量が多いプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F2)を3~95重量%含有する。
(9)前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン-α-オレフィン共重合体である、(1)~(7)のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
(10)前記Tm(A)は、140℃以下である、(3)~(9)のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
(11)前記エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)は、さらに下記要件(c4)及び(c5)のうちの少なくとも1つの要件を満たす、(5)及び(8)~(10)のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
(c4)融解ピーク温度(Tm(C))は、30~130℃である。
(c5)エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとのランダム共重合体である。
(12)前記熱可塑性エラストマー(D)は、エチレン含量が50wt%未満であるプロピレン-エチレン共重合体、エチレン含量が50wt%未満であるブテン-エチレン共重合体、エチレン含量が50wt%未満であるプロピレン-エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、及びブテン単独重合体からなる群から選択される少なくとも1つの共重合体である、(6)及び(8)~(10)のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
(13)前記熱可塑性エラストマー(D)は、さらに下記要件(d5)を満たす、(6)、(8)~(10)及び(12)のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
(d5)融解ピーク温度(Tm(D))が30~170℃である。
(14)前記熱可塑性樹脂(E)は、スチレン系エラストマーである、(7)~(10)のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
(15)前記熱可塑性樹脂(E)は、脂環族系炭化水素樹脂である、(7)~(10)のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
(16)前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)は、さらに下記要件(f3)~(f5)のうちの少なくとも1つの要件を満たす、(8)及び(10)~(15)のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
(f3)プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)中のエチレン含量が0.15~85重量%である。
(f4)前記成分(F1)のエチレン含量が0~6重量%の範囲にある。
(f5)前記成分(F2)のエチレン含量が、5~90重量%の範囲にある。
(17)前記層(II)の、前記樹脂成形体との貼着面側とは反対面側に、造核剤を含む表面加飾層樹脂からなる表面加飾層(III)を有する、(1)~(16)のいずれか1つに記載の加飾フィルム。
(18)前記表面加飾層(III)は、下記要件(h1)を満たすポリプロピレン系樹脂(H)からなる(17)に記載の加飾フィルム。
(h1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(H))とMFR(B)とは、関係式(h-1)を満たす。
MFR(H)>MFR(B) ・・・式(h-1)
(19)(1)~(18)のいずれか一つに記載の加飾フィルムを準備するステップ、樹脂成形体を準備するステップ、減圧可能なチャンバーボックス中に、前記樹脂成形体及び前記加飾フィルムをセットするステップ、前記チャンバーボックス内を減圧するステップ、前記加飾フィルムを加熱軟化させるステップ、前記樹脂成形体に前記加飾フィルムを押し当てるステップ、並びに前記減圧したチャンバーボックス内を大気圧に戻す又は加圧するステップを含む加飾成形体の製造方法。
(20)前記樹脂成形体は、プロピレン系樹脂組成物からなる、(19)に記載の加飾成形体の製造方法。
本発明によれば、接触ムラがなく熱成形性に優れ、表面光沢及び接着力が良好であり、熱成形前後で表面光沢の低下が抑制され、かつ、リサイクル性に優れる、三次元加飾熱成形に用いることができる加飾フィルム及びそれを用いた加飾成形体の製造方法を提供できる。
本発明の加飾成形体の製造方法によれば、加飾フィルムと樹脂成形体の間に空気の巻き込みが無く、シボ等のテクスチャーの再現性が良好かつ美麗な加飾成形体を得ることができる。このようにして得られた加飾成形体は、加飾フィルムの構成材料がポリプロピレン系樹脂であり、熱硬化性樹脂層を含まないため又は含ませなくてもよいため、リサイクルしても外観や性能の低下が小さく、リサイクル適性が高い。
図1(a)~図1(c)は、本発明の加飾フィルムの層構成の一例を示す図である。 図2は、本発明の加飾成形体の製造方法に用いる装置の概要を説明する模式的断面図である。 図3は、図2の装置内に樹脂成形体及び加飾フィルムをセットした様子を説明する模式的断面図である。 図4は、図2の装置内を加熱及び減圧する様子を説明する模式的断面図である。 図5は、図2の装置内で樹脂成形体に加飾フィルムを押し当てる様子を説明する模式的断面図である。 図6は、図2の装置内を大気圧に戻す又は加圧する様子を説明する模式的断面図である。 図7は、得られた加飾成形体において、不要な加飾フィルムのエッジがトリミングされた様子を説明する模式的断面図である。 図8(a)~図8(c)は、得られた加飾成形体の層構成の一例を示す図である。
本明細書において、加飾フィルムとは、成形体を装飾するためのフィルムをいう。加飾成形とは、加飾フィルムと成形体とを貼着させる成形をいう。三次元加飾熱成形とは、加飾フィルムと成形体とを貼着させる成形であって、加飾フィルムを成形体の貼着面に沿って熱成形すると同時に貼着させる工程を有し、該工程が、加飾フィルムと成形体との間に空気が巻き込まれるのを抑制するために、減圧(真空)下で熱成形を行い、加熱した加飾フィルムを成形体に貼着させ、圧力解放(加圧)により、密着させる工程である、成形をいう。
また、本明細書において、ポリプロピレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂組成物の各MFRの測定は、ISO 1133:1997 Conditions Mに準拠し、230℃、2.16kg荷重の条件で測定した。単位はg/10分である。
また、ポリプロピレン系樹脂のMn、Mwは、「高分子化学の基礎」(高分子学会編、東京化学同人、1978)等に記載されており、GPCによる分子量分布曲線から計算される値である。
そしてまた、本明細書において、単位「wt%」は、重量%を意味する。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
本発明の加飾フィルムは、樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための造核剤を含有する加飾フィルムであって、該加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)を含有するシール層(I)及びポリプロピレン系樹脂(B)を含有する層(II)を含み、前記ポリプロピレン系樹脂(A)は下記要件(a1)を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂(B)は下記要件(b1)を満たすことを特徴とする。
(a1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(A))は、0.5g/10分を超える。
(b1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))とMFR(A)とは、関係式(b-1)を満たす。
MFR(B)<MFR(A) ・・・式(b-1)
第1の実施形態においては、前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、さらに下記要件(a2)~(a4)を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂(B)は、さらに下記要件(b2)を満たすことが好ましい。
(a2)メタロセン触媒系プロピレン系重合体である。
(a3)融解ピーク温度(Tm(A))は、150℃未満である。
(a4)GPC測定により得られる分子量分布(Mw/Mn(A))は、1.5~3.5である。
(b2)融解ピーク温度(Tm(B))とTm(A)とは、関係式(b-2)を満たす。
Tm(B)>Tm(A) ・・・式(b-2)
第2の実施形態においては、前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、さらに下記要件(a5)を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂(B)は、さらに下記要件(b3)を満たすことが好ましい。
(a5)結晶化温度(Tc(A))は、100℃未満である。
(b3)結晶化温度(Tc(B))とTc(A)とは、関係式(b-3)を満たす。
Tc(B)>Tc(A) ・・・式(b-3)
第3の実施形態においては、前記シール層(I)は、ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)との重量比率が97:3~5:95である樹脂組成物(X3)を含み、前記エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)は下記要件(c1)~(c3)を満たすことが好ましい。
(c1)エチレン含量[E(C)]は、65重量%以上である。
(c2)密度は、0.850~0.950g/cmである。
(c3)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(C))は、0.1~100g/10分である。
第4の実施形態においては、前記シール層(I)は、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(D)との重量比率が97:3~5:95である樹脂組成物(X4)を含み、前記熱可塑性エラストマー(D)は下記要件(d1)~(d4)を満たすことが好ましい。
(d1)プロピレン及びブテンのうちの少なくとも1つを主成分とする熱可塑性エラストマーである。
(d2)密度は0.850~0.950g/cmである。
(d3)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(D))は、0.1~100g/10分である。
(d4)引張弾性率がポリプロピレン系樹脂(A)よりも小さい。
第5の実施形態においては、前記シール層(I)は、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(E)との重量比率が97:3~5:95である樹脂組成物(X5)を含み、前記熱可塑性樹脂(E)は下記要件(e1)を満たし、前記樹脂組成物(X5)は下記要件(x1)を満たすことが好ましい。
(e1)脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基のうちの少なくとも1つを含有する。
(x1)示差熱走査型熱量計(DSC)で求めた樹脂組成物(X5)の等温結晶化時間(t(X5))(秒)が、以下の式(x-1)を満たす。
t(X5)≧1.5×t(A) ・・・式(x-1)
(式中t(A)はポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化開始温度よりも10℃高い温度で測定したポリプロピレン系樹脂(A)の等温結晶化時間(秒)を表し、t(X5)はポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化開始温度よりも10℃高い温度で測定した樹脂組成物(X5)の等温結晶化時間(秒)である。)
第6の実施形態においては、前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、下記要件(f1)及び(f2)を満たすプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)であることが好ましい。
(f1)融解ピーク温度(Tm(F))が、110~170℃である。
(f2)プロピレン単独重合体又はプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F1)を5~97重量%、前記成分(F1)よりもエチレン含量が多いプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F2)を3~95重量%含有する。
[造核剤]
本明細書において、造核剤とはポリオレフィン系樹脂等に配合される添加剤であり、ポリオレフィン系樹脂等に配合することで、樹脂の結晶化を促進することができる材料である。そのため、ポリオレフィン系樹脂の結晶化速度を速めることや、結晶化温度や融解温度を高めたりすることが可能である。また造核剤の添加により、微細な結晶が急速に生成するため、フィルムの表面平滑性、光沢、透明性等を向上させることが可能である。
造核剤は加飾成形条件下、すなわち真空下で加熱するという成形条件下で揮発しやすいが、良好な接着性を発揮するシール層(I)を含むことで、造核剤が揮発する前に成形を完了することができ、光沢低下を抑えることができる。
好ましい造核剤としては、芳香族カルボン酸金属塩、芳香族リン酸金属塩、ソルビトール系誘導体、ノニトール誘導体、アミド系化合物、ロジンの金属塩等を挙げることができる。
これらの造核剤の中では、p-t-ブチル安息香酸アルミニウム、リン酸2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)アルミニウム、ビス(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ[d,g][1,2,3]ジオキサホスホシン-6-オキシド)水酸化アルミニウム塩と有機化合物の複合体、p-メチル-ベンジリデンソルビトール、p-エチル-ベンジリデンソルビトール、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトール、ロジンのナトリウム塩等を例示することができる。
市販品として、株式会社アデカ製の「アデカスタブNA-11」、「アデカスタブNA-21」及び「アデカスタブNA-25」、新日本理化株式会社製の「エヌジェスターTF-1」、「PC-1」及び「ゲルオールMD」、BASFジャパン株式会社の「IRGACLEAR XT386」、ミリケン・アンド・カンパニー社製「ミラッドNX8000J」「ミラッド3988」等が挙げられる。
造核剤は、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
造核剤の添加量は、造核剤を含む層を構成する樹脂100重量部に対して、0.001~1.00重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.005~0.50重量部である。添加量が上記範囲であると、良好な透明性・表面平滑性の加飾フィルム及び加飾成形体を得ることができる。
造核剤は、加飾フィルムの全層に含まれていても良いが、加飾成形体の表面となる、加飾フィルムの表面層にのみ含まれていても良い。例えば、シール層(I)と層(II)からなる2層の加飾フィルムである場合は、層(II)が造核剤を含んでいることが好ましい。さらに、層(II)の上に任意の層である表面加飾層(III)が積層されるような場合、その表面加飾層(III)が造核剤を含んでいることが好ましい。
[シール層(I)]
本発明の加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)を含有する樹脂組成物(X)からなるシール層(I)を含む。シール層(I)は、三次元加飾熱成形の際に、樹脂成形体(基体)と接する層である。シール層(I)を設けることにより、三次元加飾熱成形の成形時間を短縮しても良好な接着性が発現するため、造核剤が揮発する前に成形を完了させ、表面光沢の低下を抑制することが可能となる。
以下、上記した基本的な実施形態、及び第1の実施形態~第6の実施形態を例に、シール層(I)の構成を具体的に説明する。
<基本的な実施形態>
基本的な実施形態において、シール層(I)はポリプロピレン系樹脂(A)を含有する。基本的な実施形態において、ポリプロピレン系樹脂(A)は、緩和しやすい樹脂であることが好ましい。このようなポリプロピレン系樹脂(A)を含有するシール層(I)を設けることにより、三次元加飾熱成形の成形時間を短縮しても良好な接着性が発現するため、造核剤が揮発する前に成形を完了させ、表面光沢の低下を抑制することが可能となる。
<<ポリプロピレン系樹脂(A)>>
1.メルトフローレート(MFR(A)):(a1)
基本的な実施形態において、ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)MFR(A)は、0.5g/10分を超えることが必要であり、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは2g/10分以上である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の緩和が十分に進行し十分な接着強度を発揮することができる。MFR(A)の上限に制限はないが、100g/10分以下であることが好ましい。前記の範囲であると、物性低下による接着強度の悪化が生じることがない。
2.樹脂組成
基本的な実施形態のポリプロピレン系樹脂(A)は、チーグラー触媒、メタロセン触媒等により重合される樹脂であることができる。すなわち、ポリプロピレン系樹脂(A)は、チーグラー触媒系プロピレン重合体、メタロセン触媒系プロピレン重合体であることができる。
基本的な実施形態におけるポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン-α-オレフィン共重合体(ランダムポリプロピレン)、プロピレンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)等の様々なタイプのプロピレン系重合体、又はそれらの組み合わせを選択することができる。プロピレン系重合体は、プロピレンモノマー由来の重合単位を50mol%以上含んでいることが好ましい。プロピレン系重合体は、極性基含有モノマー由来の重合単位を含まないものであることが好ましい。
<第1実施形態>
第1実施形態において、シール層(I)はポリプロピレン系樹脂(A)を含有する樹脂組成物(X1)からなる。第1実施形態において、ポリプロピレン系樹脂(A)は、溶融・緩和しやすい樹脂であることが好ましい。このようなポリプロピレン系樹脂(A)を含有する樹脂組成物(X1)からなるシール層(I)を設けることにより、三次元加飾熱成形の成形時間を短縮しても良好な接着性が発現するため、造核剤が揮発する前に成形を完了させ、表面光沢の低下を抑制することが可能となる。
<<ポリプロピレン系樹脂(A)>>
1.メルトフローレート(MFR(A)):(a1)
第1実施形態において、ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)MFR(A)は、0.5g/10分を超えることが必要であり、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは2g/10分以上である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の緩和が十分に進行し十分な接着強度を発揮することができる。MFR(A)の上限に制限はないが、100g/10分以下であることが好ましい。前記の範囲であると、物性低下による接着強度の悪化が生じることがない。
2.分子量分布(Mw/Mn(A)):(a4)
ポリプロピレン系樹脂(A)のMw/Mnは、1.5~3.5であることが好ましく、より好ましくは2~3である。前記の範囲であると、相対的に緩和時間が長い成分が少なく、十分に緩和しやすいので好ましい。
3.融解ピーク温度(Tm(A)):(a3)
ポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピーク温度(DSC融解ピーク温度、本明細書で「融点」と称する場合もある。)(Tm(A))は、150℃未満であることが好ましく、より好ましくは145℃以下、さらに好ましくは140℃以下、特に好ましくは130℃以下である。前記の範囲であると、十分な接着強度を発揮することができる。Tm(A)が下がりすぎると、耐熱性が低下し成形体の使用において問題を生じる場合があるため、100℃以上であることが好ましく、より好ましくは110℃以上である。
4.樹脂組成:(a2)
第1実施形態のポリプロピレン系樹脂(A)は、メタロセン触媒により重合されるいわゆるメタロセン触媒系プロピレン系重合体であることが好ましい。メタロセン触媒は活性点が単一であることから、メタロセン触媒により重合されたプロピレン系重合体は、分子量分布や結晶性分布が狭く、融解・緩和しやすいことで、多くの熱を加えることなく基体との融着が可能となる。
第1実施形態におけるポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン-α-オレフィン共重合体(ランダムポリプロピレン)、プロピレンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)等の様々なタイプのプロピレン系重合体、又はそれらの組み合わせを選択することができる。プロピレン系重合体は、プロピレンモノマー由来の重合単位を50mol%以上含んでいることが好ましい。プロピレン系重合体は、極性基含有モノマー由来の重合単位を含まないものであることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(A)は、接着性の観点からは、プロピレン-α-オレフィン共重合体が好ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体は通常、プロピレン単独重合体に比べ融点が低下するのに伴って結晶化温度も低下しているため、三次元加飾熱成形の成形時間を短縮しても良好な接着性が発現しやすい。
α-オレフィンとしては、エチレン及び炭素数が3~8のα-オレフィンから選ばれる一種又は二種以上の組み合わせ等を用いることができる。
<第2実施形態>
第2実施形態において、シール層(I)はポリプロピレン系樹脂(A)を含有する樹脂組成物(X2)からなる。第2実施形態において、ポリプロピレン系樹脂(A)は、結晶化開始が遅い樹脂であることが好ましい。このようなポリプロピレン系樹脂(A)を含有する樹脂組成物(X2)からなるシール層(I)を設けることにより、三次元加飾熱成形の成形時間を短縮しても良好な接着性が発現するため、造核剤が揮発する前に成形を完了させ、表面光沢の低下を抑制することが可能となる。
<<ポリプロピレン系樹脂(A)>>
1.メルトフローレート(MFR(A)):(a1)
第2実施形態において、ポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)MFR(A)は、0.5g/10分を超えることが必要であり、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは2g/10分以上である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の緩和が十分に進行し十分な接着強度を発揮することができる。MFR(A)の上限に制限はないが、100g/10分以下であることが好ましい。前記の範囲であると、物性低下による接着強度の悪化が生じることがない。
2.分子量分布(Mw/Mn(A))
ポリプロピレン系樹脂(A)のMw/Mnは、好ましくは3.5~10であり、より好ましくは3.7~7である。前記の範囲であると、フィルム成形時に表面あれが発生しにくく、表面外観に優れるため好ましい。
3.結晶化温度(Tc(A)):(a5)
ポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化温度Tc(A)は、100℃未満であることが好ましく、より好ましくは97℃以下、さらに好ましくは93℃以下である。前記の範囲であると、十分な接着強度を発揮する。Tc(A)が下がりすぎると、耐熱性が低下し成形体の使用において問題を生じる場合があるため、65℃以上であることが好ましく、より好ましくは75℃以上である。
4.樹脂組成
第2実施形態のポリプロピレン系樹脂(A)は、チーグラー触媒、メタロセン触媒等により重合される樹脂であることができる。すなわち、ポリプロピレン系樹脂(A)は、チーグラー触媒系プロピレン重合体、メタロセン触媒系プロピレン重合体であることができる。
第2実施形態におけるポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン-α-オレフィン共重合体(ランダムポリプロピレン)、プロピレンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)等の様々なタイプのプロピレン系重合体、又はそれらの組み合わせを選択することができる。プロピレン系重合体は、プロピレンモノマー由来の重合単位を50mol%以上含んでいることが好ましい。プロピレン系重合体は、極性基含有モノマー由来の重合単位を含まないものであることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(A)は、接着性の観点からは、プロピレン-α-オレフィン共重合体が好ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体は通常、プロピレン単独重合体に比べ結晶化温度が低下しており、三次元加飾熱成形の成形時間を短縮しても良好な接着性が発現しやすいため、造核剤が揮発する前に成形を完了させ、表面光沢の低下を抑制することが可能となる。
α-オレフィンとしては、エチレン及び炭素数が3~8のα-オレフィンから選ばれる一種又は二種以上の組み合わせ等を用いることができる。
<第3実施形態>
第3実施形態において、シール層(I)はポリプロピレン系樹脂(A)及びエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)を含有する樹脂組成物(X3)を含む。このような樹脂組成物(X3)を含むシール層(I)を設けることにより、三次元加飾熱成形時のフィルム加熱時間が短くても十分な接着強度が発現する。
<<ポリプロピレン系樹脂(A)>>
第3実施形態におけるポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン-α-オレフィン共重合体(ランダムポリプロピレン)、プロピレンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)等の様々なタイプのプロピレン系重合体、又はそれらの組み合わせを選択することができる。プロピレン系重合体は、プロピレンモノマー由来の重合単位を50mol%以上含んでいることが好ましい。プロピレン系重合体は、極性基含有モノマー由来の重合単位を含まないものであることが好ましい。
1.メルトフローレート(MFR(A)):(a1)
シール層(I)に含まれるポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)MFR(A)は、0.5g/10分を超えることが必要であり、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは2g/10分以上である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の緩和が十分に進行し十分な接着強度を発揮することができる。MFR(A)の上限に制限はないが、100g/10分以下であることが好ましい。前記の範囲であると、物性低下による接着強度の悪化が生じることがない。
2.融解ピーク温度(Tm(A))
ポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピーク温度(Tm(A))は、110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の成形性が良好である。融解ピーク温度の上限に制限はないが、170℃以下であることが好ましく、前記の範囲であると、十分な接着強度を発揮することができる。
3.樹脂組成
第3実施形態におけるポリプロピレン系樹脂(A)は、チーグラー触媒、メタロセン触媒等により重合される樹脂であることができる。すなわち、ポリプロピレン系樹脂(A)は、チーグラー触媒系プロピレン重合体、メタロセン触媒系プロピレン重合体であることができる。
<<エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)>>
第3実施形態のシール層(I)で用いられるエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)は、下記の要件(c1)~(c3)、好ましくはさらに要件(c4)~(c5)を有するものである。
1.エチレン含量[E(C)]:(c1)
第3実施形態のエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)のエチレン含量[E(C)]は、65重量%以上であることが好ましく、より好ましくは68重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮し、フィルムの加熱時間を短くすることができる。エチレン含量[E(C)]の上限は特に制限されないが、95重量%以下であることが好ましい。
(エチレン含量[E(C)]の算出方法)
エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)のエチレン含量[E(C)]は13C-NMR測定で得られる積分強度から求めることができる。
(算出方法1(二元系))
初めに、二種の繰り返し単位から構成される二元系共重合体におけるエチレン含量[E(C)]の算出方法について説明する。この場合、エチレン-α-オレフィン二元系共重合体のエチレン含量は(式-1)で求めることができる。
エチレン含量(mol%)=IE×100/(IE+IX)・・・(式-1)
エチレン含量(重量%)=[エチレン含量(mol%)×エチレンの分子量]×100/[エチレン含量(mol%)×エチレンの分子量+α-オレフィン含量(mol%)×α-オレフィンの分子量]
ここで、IE、IXは、それぞれエチレン、α-オレフィンについての積分強度であり、下記(式-2)及び(式-3)により求めることができる。
IE=(Iββ+Iγγ+Iβδ+Iγδ+Iδδ)/2+(Iαγ+Iαδ)/4・・・(式-2)
IX=Iαα+(Iαγ+Iαδ)/2・・・(式-3)
ここで、右辺のIの下つきの記号は、下記構造式(a)~(d)に記載の炭素を示す。例えばααはα-オレフィン連鎖に基づくメチレン炭素を示し、Iααはα-オレフィン連鎖に基づくメチレン炭素のシグナルの積分強度を表す。
Figure 0007115288000001
構造式(d)中、nは1以上の奇数を表す。
以下に、エチレン-α-オレフィン二元系共重合体のα-オレフィン毎に(式-2)及び(式-3)に用いる積分強度について説明する。
<エチレン-プロピレン共重合体の場合>
α-オレフィンがプロピレンの場合、(式-2)及び(式-3)に以下の積分強度の値を代入し、エチレン含量[E(C)]を求める。
ββ=I25.0-24.2
γγ=I30.8-30.6
βδ=I27.8-26.8
γδ=I30.6-30.2
δδ=I30.2-28.0
αα=I48.0-43.9
αγ+Iαδ=I39.0-36.2
ここで、Iは積分強度を、右辺のIの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI39.0-36.2は39.0ppmと36.2ppmの間に検出した13Cシグナルの積分強度を示す。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とする。エチレン-プロピレン共重合体と同様に、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、及びエチレン-1-オクテン共重合体についても下記する。
<エチレン-1-ブテン共重合体の場合>
α-オレフィンが1-ブテンの場合、(式-2)及び(式-3)に以下の積分強度の値を代入し、エチレン含量[E(C)]を求める。
ββ=I24.6-24.4
γγ=I30.9-30.7
βδ=I27.8-26.8
γδ=I30.5-30.2
δδ=I30.2-28.0
αα=I39.3-38.1
αγ+Iαδ=I34.5-33.8
<エチレン-1-ヘキセン共重合体の場合>
α-オレフィンが1-ヘキセンの場合、(式-2)及び(式-3)に以下の積分強度の値を代入し、エチレン含量[E(C)]を求める。
ββ=I24.5-24.4
γγ=I31.0-30.8
βδ=I27.5-27.0
γδ=I30.6-30.2
δδ=I30.2-28.0
αα=I40.0-39.0
αγ+Iαδ=I35.0-34.0
<エチレン-1-オクテン共重合体の場合>
α-オレフィンが1-オクテンの場合、βδシグナルとαγ+αδシグナルに1-オクテンに基づくヘキシル分岐のメチレン炭素が重なる(以下の構造式の5B6及び6B6)。
βδ+I5B6=I27.6-26.7
αγ+Iαδ+I6B6=I35.0-34.0
Figure 0007115288000002
そこで、5B6及び6B6の重なりを補正したIβδと、Iαγ+Iαδを代用し、以下に示される積分強度を(式-2)及び(式-3)に代入し、エチレン含量[E(C)]を求める。
ββ=I24.7-24.2
γγ+Iγδ+Iδδ=I32.0-28.0
βδ=2/3×I27.6-26.7
αα=I40.8-39.6
αγ+Iαδ=Iβδ+2×Iββ
(算出方法2(三元系))
次に、三種の繰り返し単位から構成される三元系共重合体におけるエチレン含量[E(C)]の算出方法について説明する。例えば、エチレン-プロピレン-ブテン三元系共重合体のエチレン含量は、下記(式-4)で求めることができる。
エチレン含量(mol%)=IE×100/(IE+IP+IB)・・・(式-4)
エチレン含量(重量%)=[エチレン含量(mol%)×エチレンの分子量]×100/[エチレン含量(mol%)×エチレンの分子量+プロピレン含量(mol%)×プロピレンの分子量+ブテン含量(mol%)×ブテンの分子量]
ここで、IE、IP及びIBはそれぞれ、エチレン、プロピレン及びブテンについての積分強度であり、(式-5)、(式-6)及び(式-7)で求めることができる。
IE=(Iββ+Iγγ+Iβδ+Iγδ+Iδδ)/2+(Iαγ(P)+Iαδ(P)+Iαγ(B)+Iαδ(B))/4・・・(式-5)
IP=1/3×〔ICH3(P)+ICH(P)+Iαα(PP)+1/2×(Iαα(PB)+Iαγ(P)+Iαδ(P))〕・・・(式-6)
IB=1/4×〔(ICH3(B)+ICH(B)+I2B2+Iαα(BB))+1/2×(Iαα(PB)+Iαγ(B)+Iαδ(B))〕・・・(式-7)
ここで、添え字の(P)は、プロピレン由来のメチル基分岐に基づくシグナルであることを意味し、同様に(B)はブテン由来のエチル基分岐に基づくシグナルであることを意味する。
また、αα(PP)は、プロピレン連鎖に基づくメチレン炭素のシグナルを意味し、同様にαα(BB)はブテン連鎖に基づくメチレン炭素のシグナルを、αα(PB)はプロピレン-ブテン連鎖に基づくメチレン炭素のシグナルを意味する。
ここで、γγシグナルは、プロピレン-プロピレン-エチレンと並んだ中心のプロピレンのメチン炭素CH(PPE)のシグナルの裾と重なるため、γγのシグナルを分離することは困難である。
γγシグナルはエチレン連鎖が2個の構造式(c)で現れ、エチレン由来のγγの積分強度と構造式(c)のβδの積分強度には(式-8)が成り立つ。
βδ(構造式(c))=2×Iγγ・・・(式-8)
また、βδは、エチレン連鎖が3個以上の構造式(d)で現れ、構造式(d)のβδの積分強度はγδの積分強度と等しく(式-9)が成り立つ。
βδ(構造式(d))=Iγδ・・・(式-9)
よって、構造式(c)と構造式(d)に基づくβδは(式-10)で求まる。
βδ=Iβδ(構造式(c))+Iβδ(構造式(d))=2×Iγγ+Iγδ
・・・(式-10)
すなわち、Iγγ=(Iβδ-Iγδ)/2・・・(式-10’)
よって、(式-10’)を(式-5)に代入すると、IEは(式-11)に置き換えることができる。
IE=(Iββ+Iδδ)/2+(Iαγ(P)+Iαδ(P)+Iαγ(B)+Iαδ(B)+3×Iβδ+Iγδ)/4・・・(式-11)
ここで、βδシグナルは1-ブテンに基づくエチル分岐の重なりを補正し、(式-12)となる。
βδ=Iαγ(P)+Iαδ(P)+Iαγ(B)+Iαδ(B)-2×Iββ・・・(式-12)
(式-11)及び(式-12)より、IEは(式-13)となる。
IE=Iδδ/2+Iγδ/4-Iββ+Iαγ(P)+Iαδ(P)+Iαγ(B)+Iαδ(B)・・・(式-13)
(式-13)、(式-6)及び(式-7)に以下を代入し、エチレン含量を求める。
ββ=I25.2-23.8
γδ=I30.4-30.2
δδ=I30.2-29.8
αγ(P)+Iαδ(P)=I39.5-37.3
αγ(B)+Iαδ(B)=I34.6-33.9
CH3(P)=I22.6-19.0
CH(P)=I29.5-27.6+I31.2-30.4+I33.4-32.8
αα(PP)=I48.0-45.0
CH3(B)=I11.4-10.0
CH(B)=I35.5-34.7+I37.4-36.8+I39.7-39.6
αα(BB)=I40.3-40.0
αα(PB)=I44.2-42.0
2B2=I26.7-26.4
なお、各シグナルの帰属は、次の5つの文献を参照した。
Macromolecules,Vol.10,NO.4,1977、
Macromolecules,Vol.36,No.11,2003、
Analytical Chemistry,Vol.76,No.19,2004、
Macromolecules,2001,34,4757-4767、
Macromolecules,Vol.25,No.1,1992。
エチレン-α-オレフィンランダム共重合体のα-オレフィンが、上述以外の場合であっても、各シグナルの帰属を行い上述の場合と同様にエチレン含量を求めることができる。
2.密度:(c2)
エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)の密度は、0.850~0.950g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.855~0.900g/cm、さらに好ましくは0.860~0.890g/cmである。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮し、さらにフィルム成形性も良好である。
3.メルトフローレート(MFR(C)):(c3)
エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(C))は、0.1~100g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5~50g/10分、さらに好ましくは1~30g/10分である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形の成形時間を短縮しても良好な接着性が発現する。
4.融解ピーク温度(Tm(C)):(c4)
エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)の融解温度ピーク(DSC融解ピーク温度)(Tm(C))は、30~130℃であることが好ましく、より好ましくは35~120℃、さらに好ましくは40~110℃である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮することができる。
5.エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)の種類:(c5)
エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)は、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体であることが好ましい。上記炭素数3~20のα-オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン等が挙げられる。これらの中では、特にプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく用いられる。
このようなエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)は、触媒存在下、各モノマーを共重合することにより製造される。具体的には、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)は、オレフィンの重合触媒として、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の触媒を使用して、気相法、溶液法、高圧法、スラリー法等のプロセスで、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンとを共重合させて、製造することができる。
また、第3実施形態のシール層(I)に用いるエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)は、本発明の効果を損なわない範囲で、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
このようなエチレン-α-オレフィンランダム共重合体の市販品として、日本ポリエチレン(株)製のカーネルシリーズ、三井化学(株)製のタフマーPシリーズ、タフマーAシリーズ、デュポンダウ社製エンゲージEGシリーズ等が挙げられる。
<<樹脂組成物(X3)>>
第3実施形態において、シール層(I)を構成する樹脂組成物(X3)は、ポリプロピレン系樹脂(A)及びエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)を主成分として含むものであり、ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)との混合物又は溶融混練物であってもよく、ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)との逐次重合物であってもよい。
1.ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)の重量比
樹脂組成物(X3)において、ポリプロピレン系樹脂(A)及びエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)の重量比((A):(C))は、97:3~5:95の範囲で選択されることが好ましく、より好ましくは95:5~10:90、さらに好ましくは93:7~20:80である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮し、フィルムの加熱時間を短くすることができる上、シール層(I)と層(II)の接着性が良好である。
<第4実施形態>
第4実施形態において、シール層(I)はポリプロピレン系樹脂(A)及び熱可塑性エラストマー(D)を主成分として含む樹脂組成物(X4)を含む。このような樹脂組成物(X4)を含むシール層(I)を設けることにより、、三次元加飾熱成形の成形時間を短縮しても良好な接着性が発現するため、造核剤が揮発する前に成形を完了させ、表面光沢の低下を抑制することが可能となる。
<<ポリプロピレン系樹脂(A)>>
1.メルトフローレート(MFR(A)):(a1)
シール層(I)に含まれるポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)MFR(A)は、0.5g/10分を超えることが必要であり、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは2g/10分以上である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の緩和が十分に進行し十分な接着強度を発揮することができる。MFR(A)の上限に制限はないが、100g/10分以下であることが好ましい。前記の範囲であると、物性低下による接着強度の悪化が生じることがない。
2.融解ピーク温度(Tm(A))
ポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピーク温度(Tm(A))は、110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の成形性が良好である。融解ピーク温度の上限に制限はないが、170℃以下であることが好ましく、前記の範囲であると、十分な接着強度を発揮することができる。
3.樹脂組成
第4実施形態におけるポリプロピレン系樹脂(A)は、チーグラー触媒、メタロセン触媒等により重合される樹脂であることができる。すなわち、ポリプロピレン系樹脂(A)は、チーグラー触媒系プロピレン重合体、メタロセン触媒系プロピレン重合体であることができる。
第4実施形態におけるポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン-α-オレフィン共重合体(ランダムポリプロピレン)、プロピレンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)等の様々なタイプのプロピレン系重合体、又はそれらの組み合わせを選択することができる。プロピレン系重合体は、プロピレンモノマー由来の重合単位を50mol%以上含んでいることが好ましい。プロピレン系重合体は、極性基含有モノマー由来の重合単位を含まないものであることが好ましい。
<<熱可塑性エラストマー(D)>>
第4実施形態のシール層(I)で用いられる熱可塑性エラストマー(D)は、下記の要件(d1)~(d4)を満たし、好ましくはさらに要件(d5)を有するものである。
1.組成:(d1)
本発明の熱可塑性エラストマー(D)はプロピレン及びブテンのうちの少なくとも1つを主成分とする熱可塑性エラストマーである。ここで、「プロピレン及びブテンのうちの少なくとも1つを主成分とする熱可塑エラストマー」は、(I)プロピレンを主成分とする熱可塑性エラストマー、(ii)ブテンを主成分とする熱可塑性エラストマー、(iii)プロピレンとブテンを合計した成分を主成分とする熱可塑性エラストマーを包含する。
熱可塑性エラストマー(D)中のプロピレン又はブテンの含有量については特に制限はないが、好ましくは30wt%以上、より好ましくは40wt%以上、さらに好ましくは50wt%以上である。例えば、熱可塑性エラストマー(D)は35wt%を超えてプロピレン又はブテンを含有することができる。
また、熱可塑性エラストマー(D)はプロピレン及びブテンを両方含んでもよく、その場合は、プロピレンとブテンを合計した成分が熱可塑性エラストマー(D)の主成分となり、プロピレンとブテンの含有量の合計は好ましくは30wt%以上、より好ましくは40wt%以上、さらに好ましくは50wt%以上である。プロピレン及びブテンの両方が含まれる場合は、例えば、熱可塑性エラストマー(D)は、プロピレン及びブテンを合計して35wt%を超えて含有することができる。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮し、フィルムの加熱時間を短くすることができる。
2.密度:(d2)
熱可塑性エラストマー(D)の密度は0.850~0.950g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.855~0.940g/cm、さらに好ましくは0.860~0.930g/cmである。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮し、さらにフィルム成形性も良好になる。
3.メルトフローレート(MFR(D)):(d3)
熱可塑性エラストマー(D)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)MFR(D)は、0.1~100g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5~50g/10分、さらに好ましくは1~30g/10分である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形の成形時間を短縮しても良好な接着性が発現する。
4.引張弾性率:(d4)
熱可塑性エラストマー(D)の引張弾性率は、ポリプロピレン系樹脂(A)よりも小さいことが好ましい。より好ましくは、熱可塑性エラストマー(D)の引張弾性率は500MPa以下、さらに好ましくは450MPa以下である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮することができる。
5.融解ピーク温度(Tm(D)):(d5)
熱可塑性エラストマー(D)の融解ピーク温度(Tm(D))は、30~170℃であることが好ましく、より好ましくは35~168℃、さらに好ましくは40~165℃以上である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー(D)は、上述要件(d1)~(d4)を満たせば、適宜、選択して使用することができるが、エチレン含量が50wt%未満であるプロピレン-エチレン共重合体、エチレン含量が50wt%未満であるブテン-エチレン共重合体、エチレン含量が50wt%未満であるプロピレン-エチレンーブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、又はブテン単独重合体であることが好ましい。
6.エチレン含量[E(D)]
上記プロピレン-エチレン共重合体、ブテン-エチレン共重合体又はプロピレン-エチレンーブテン共重合体のエチレン含量[E(D)]は、より好ましくは45wt%以下、さらに好ましくは40wt%以下であり、前記範囲であると三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮することができる。
(エチレン含量[E(D)]の算出方法)
熱可塑性エラストマー(D)がエチレンを含むエラストマーの場合、熱可塑性エラストマー(D)のエチレン含量[E(D)]は13C-NMR測定で得られた積分強度から求めることができる。
算出方法は、上記第3実施形態で説明したエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)のエチレン含量[E(C)]の算出方法で挙げられた「算出方法1(二元系)」及び「算出方法2(三元系)」と同様である。
また、熱可塑性エラストマー(D)は本発明の効果を損なわない限り、プロピレンとブテン以外のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。α-オレフィンとしては、具体的にはエチレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン等が挙げられる。これらのα-オレフィンは、単独で又は組み合せて用いることができる。これらの中では、特に1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく用いられる。
熱可塑性エラストマー(D)は、触媒存在下、各モノマーを共重合することにより製造される。具体的には、オレフィンの重合触媒として、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の触媒を使用して、気相法、溶液法、高圧法、スラリー法等のプロセスで、プロピレン、1-ブテン、及び場合によりエチレン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンを共重合させて、製造することができる。
また、第4実施形態のシール層(I)に選択的に用いる熱可塑性エラストマー(D)は、本発明の効果を損なわない範囲で、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
このような熱可塑性エラストマーは、市販品として、三井化学(株)製のタフマーXMシリーズ、タフマーBLシリーズ、タフマーPNシリーズや、エクソンモービルケミカル社製のVISTAMAXXシリーズ等を挙げることができる。
<<樹脂組成物(X4)>>
第4実施形態において、シール層(I)を構成する樹脂組成物(X4)は、ポリプロピレン系樹脂(A)及び熱可塑性エラストマー(D)を含む。前記樹脂組成物(X4)は、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(D)との混合物又は溶融混練物であってもよいし、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(D)との逐次重合物であってもよい。
1.ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(D)の重量比
樹脂組成物(X4)において、ポリプロピレン系樹脂(A)及び熱可塑性エラストマー(D)の重量比((A):(D))は、97:3~5:95で構成されることが好ましく、より好ましくは95:5~10:90、さらに好ましくは93:7~20:80である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮し、フィルムの加熱時間を短くすることができる上、シール層(I)と層(II)の接着性が良好になる。
<第5実施形態>
第5実施形態において、シール層(I)はポリプロピレン系樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(E)を含有する樹脂組成物(X5)を含む。このような樹脂組成物(X5)を含むシール層(I)を設けることにより、、三次元加飾熱成形の成形時間を短縮しても良好な接着性が発現するため、造核剤が揮発する前に成形を完了させ、表面光沢の低下を抑制することが可能となる。
<<ポリプロピレン系樹脂(A)>>
第5実施形態におけるポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン-α-オレフィン共重合体(ランダムポリプロピレン)、プロピレンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)等の様々なタイプのプロピレン系重合体、又はそれらの組み合わせを選択することができる。プロピレン系重合体は、プロピレンモノマー由来の重合単位を50mol%以上含んでいることが好ましい。プロピレン系重合体は、極性基含有モノマー由来の重合単位を含まないものであることが好ましい。
1.メルトフローレート(MFR(A)):(a1)
シール層(I)に含まれるポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)MFR(A)は、0.5g/10分を超えることが必要であり、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは2g/10分以上である。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の緩和が十分に進行し十分な接着強度を発揮することができる。MFR(A)の上限に制限はないが、100g/10分以下であることが好ましい。前記の範囲であると、物性低下による接着強度の悪化が生じることがない。
2.融解ピーク温度(Tm(A))
ポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピーク温度(Tm(A))は、110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の成形性が良好である。融解ピーク温度の上限に制限はないが、170℃以下であることが好ましく、前記の範囲であると、十分な接着強度を発揮することができる。
3.樹脂組成
第5実施形態におけるポリプロピレン系樹脂(A)は、チーグラー触媒、メタロセン触媒等により重合される樹脂であることができる。すなわち、ポリプロピレン系樹脂(A)は、チーグラー触媒系プロピレン重合体、メタロセン触媒系プロピレン重合体であることができる。
<<熱可塑性樹脂(E)>>
第5実施形態のシール層(I)で用いられる熱可塑性樹脂(E)は、ポリプロピレン系樹脂(A)に含有させることによって、ポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化を遅らせる機能を有する成分である。ポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化速度を遅らせることによって、加飾成形の際には、シール層(I)と基体表面とが熱融着する前に、シール層樹脂が結晶化(固化)して接着力が低下することを防ぐことができる。結果として、加飾フィルムの加熱時間が短くても強い接着力を発現する。このポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化を遅らせる効果については、後述する樹脂組成物(X5)の等温結晶化時間で評価した。
1.樹脂組成:(e1)
本発明における熱可塑性樹脂(E)は、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基のうちの少なくとも1つを含有することが好ましい。熱可塑性樹脂(E)が前記特徴を有することによって、前記ポリプロピレン系樹脂(A)と混合した際に、ポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化を遅らせる効果が発現し、基体との接着力及び基体表面についた傷を目立ちにくくする効果が高い。具体的には、脂環式炭化水素基としてはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基、及びそれらの置換基誘導体、縮合環化体や架橋構造体等が挙げられ、とりわけシクロペンチル基、シクロへキシル基を含有していることが好ましい。芳香族炭化水素基としてはフェニル基、メチルフェニル基、ビフェニル基、インデニル基、フルオレニル基及びそれらの置換基誘導体や縮合環化体等が挙げられ、とりわけフェニル基、ビフェニル基、インデニル基を含有していることが好ましい。また、脂環式炭化水素基は、樹脂中に含まれる芳香族炭化水素基を水添することによって得られるものであってもよい。
なお、熱可塑性樹脂(E)としては、上述要件(e1)を満たせば適宜、選択して使用することができるが、スチレン系エラストマー又は脂環族系炭化水素樹脂が、特に好適に用いることができ、両方が含まれていてもよい。
スチレン系エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体エラストマー(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体エラストマー(SIS)、スチレン-エチレン・ブチレン共重合体エラストマー(SEB)、スチレン-エチレン・プロピレン共重合体エラストマー(SEP)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体エラストマー(SEBS)、スチレン-エチレン・ブチレン-エチレン共重合体エラストマー(SEBC)、水添スチレン・ブタジエンエラストマー(HSBR)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体エラストマー(SEPS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体エラストマー(SEEPS)、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレン共重合体エラストマー(SBBS)等が例示でき、水添されているものが特に好適に用いることができる。
市販品として、JSR(株)製のダイナロンシリーズ、クレイトンポリマージャパン(株)製のクレイトンGシリーズ、旭化成(株)製のタフテックシリーズ等が挙げられる。
脂環族系炭化水素樹脂としては例えば、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等のジシクロペンタジエン誘導体の1種又は2種以上の混合物を主原料として重合して得られる炭化水素樹脂、水素化クマロン・インデン樹脂、水素化C9系石油樹脂、水素化C5系石油樹脂、C5/C9共重合系石油樹脂、水素化テルペン樹脂、水素化ロジン樹脂等が挙げられ、そして、市販の製品を使用することができ、具体的には、荒川化学(株)製のアルコンシリーズ等を挙げることができる。
<<樹脂組成物(X5)>>
第5実施形態において、シール層(I)を構成する樹脂組成物(X5)は、ポリプロピレン系樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(E)を主成分として含むものであり、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(E)との混合物であってもよく、溶融混練物であってもよい。
1.ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(E)の重量比
樹脂組成物(X5)において、ポリプロピレン系樹脂(A)及び熱可塑性樹脂(E)の重量比((A):(E))は、97:3~5:95の範囲で選択されることが好ましく、より好ましくは95:5~10:90、さらに好ましくは93:7~20:80である。ここで複数の種類のポリプロピレン系樹脂(A)又は熱可塑性樹脂(E)が含まれていてもよく、例えば熱可塑性樹脂(E1)と熱可塑性樹脂(E2)を含む場合は、熱可塑性樹脂(E1)と熱可塑性樹脂(E2)の合計を熱可塑性樹脂(E)の重量とする。前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時に十分な接着強度を発揮し、フィルムの加熱時間を短くすることができる。さらにシール層(I)と層(II)の接着性が良好である。
2.等温結晶化時間(t(X5)):(x1)
樹脂組成物(X5)は、示差熱走査型熱量計(DSC)で求めた樹脂組成物(X5)の等温結晶化時間(t(X5))(秒)が、以下の式(x-1)を満たすことが好ましく、より好ましくは式(x-2)、さらに好ましくは(x-3)を満たす。
t(X5)≧1.5×t(A)・・・式(x-1)
t(X5)≧2.0×t(A)・・・式(x-2)
t(X5)≧2.5×t(A)・・・式(x-3)
(式中t(A)はポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化開始温度よりも10℃高い温度で測定したポリプロピレン系樹脂(A)の等温結晶化時間(秒)を表し、t(X5)はポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化開始温度よりも10℃高い温度で測定した樹脂組成物(X5)の等温結晶化時間(秒)である。)
樹脂組成物(X5)の等温結晶化時間(t(X5))が前記範囲であると、加飾成形の際に、加飾フィルムのシール層(I)と基体表面とが熱融着するまでの時間を稼ぐことができ、高い接着力が発現する。
等温結晶化時間(t(X5))の上限については特に制限はないが、30t(A)≧t(X5)であるとフィルムの成形性が良好である。
(示差走査型熱量計(DSC)による等温結晶化時間の測定)
本発明での等温結晶化時間とは、示差走査型熱量計(DSC)を用いて測定した値であり、JIS-K7121(2012)「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠する。
具体的には、ポリプロピレン系樹脂(A)のサンプル5mgをアルミニウム製ホルダーに入れ窒素雰囲気下で10℃/minの速度で40℃から200℃まで昇温する。200℃で10分間保持した後、40℃まで10℃/分の冷却速度で結晶化させ、このときのDSC曲線から結晶化開始温度を測定・算出する。
次に、ポリプロピレン系樹脂(A)又は樹脂組成物(X5)のサンプル5mgをアルミニウム製ホルダーに入れ窒素雰囲気下で10℃/minの速度で40℃から200℃まで昇温し、10分間保持し試料を融解させる。続いて、上述した方法で求めたポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化開始温度より10℃高い温度(以下「測定温度」ということがある。)まで40℃/minの速度で冷却し、その後測定温度に保ち、試料が結晶化し発熱する挙動を測定する。試料の温度が測定温度に達した時から、発熱ピーク時までの時間を等温結晶化時間とする。ここで、加飾成形の際に加飾フィルムのシール層(I)がわずかに結晶化するだけで接着力が大きく低下することが考えられるため、等温結晶化測定における発熱ピークが二つ以上ある場合は、最初の発熱ピーク時までの時間を等温結晶化時間とする。
また、ポリプロピレン系樹脂(A)の種類によっては、結晶化開始温度より10℃高い温度での測定でも、ポリプロピレン系樹脂(A)の等温結晶化時間が極端に短い(例えば120秒以下)又は長い(例えば3000秒以上)場合が発生する可能性がある。その場合は、結晶化開始温度より10±2℃高い温度で等温結晶化時間を測定してもよいものとする。ただし、そのような測定をした場合は樹脂組成物(X5)の等温結晶化時間もポリプロピレン系樹脂(A)の測定温度に合わせて測定しなければならない。
<第6実施形態>
第6実施形態において、シール層(I)のポリプロピレン系樹脂(A)としてはプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)を含有する樹脂組成物(X6)を用いる。このようなシール層(I)を設けることにより、三次元加飾熱成形の成形時間を短縮しても良好な接着性が発現するため、造核剤が揮発する前に成形を完了させ、表面光沢の低下を抑制することが可能となる。
<<プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)>>
第6実施形態で用いるプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)は、プロピレン単独重合体又はプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F1)と、成分(F1)よりも多くのエチレンを含有するプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F2)を含有する。プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)中のゴム成分である成分(F2)により樹脂成形体(基体)との接着力が向上する。プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)は、第1重合工程でプロピレン単独又はプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F1)を(共)重合し、第2重合工程で成分(F1)よりも多くのエチレンを含有するプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F2)を逐次共重合して得られる。
1.成分(F1)及び成分(F2)の割合:(f2)
第6実施形態におけるプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)を構成する成分(F1)及び成分(F2)の配合比は、成分(F1)が5~97重量%、成分(F2)が3~95重量%であることが好ましい。より好ましくは、成分(F1)が30~95重量%かつ成分(F2)が5~70重量%であり、さらに好ましくは、成分(F1)が52~92重量%かつ成分(F2)が8~48重量%である。成分(F1)及び成分(F2)の割合が前記の範囲であると、十分な接着強度を発揮することができる。また、前記の範囲であるとフィルムがべたつかず、フィルム成形性が良好である。
2.メルトフローレート(MFR(F)):(a1)
プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)MFR(F)は、0.5g/10分を超えることが必要であり、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは2g/10分以上である。MFR(F)が前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時にプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)の緩和が十分に進行し十分な接着強度を発揮することができる。MFR(F)の上限には制限はないが、100g/10分以下であることが好ましい。前記の範囲であると、物性低下による接着強度の悪化が生じることがない。
3.融解ピーク温度(Tm(F)):(f1)
プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)の融点(融解ピーク温度)Tm(F)は、110~170℃であることが好ましく。より好ましくは113~169℃、さらに好ましくは115~168℃である。Tm(F)が前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の成形性が良好である。融解ピーク温度は主にエチレン含量の少ない成分(F1)、すなわち結晶性の高い成分(F1)に由来しており、共重合するエチレンの含量によって融解ピーク温度を変えることができる。
4.プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)中のエチレン含量(E(F)):(f3)
プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)中のエチレン含量(以下、「E(F)」という。)は、0.15~85重量%であることが好ましい。より好ましくは0.5~75重量%、さらに好ましくは2~50重量%である。E(F)が前記の範囲であると十分な接着強度を発揮することができ、また加飾フィルムの層(II)との接着性が良好でフィルム成形性にも優れる。
5.成分(F1)のエチレン含量(E(F1)):(f4)
成分(F1)は融点が比較的高く、エチレン含量(以下、「E(F1)」という。)が0~6重量%の範囲にあるプロピレン単独重合体又はプロピレン-エチレンランダム共重合体であることが好ましい。より好ましくは0~5重量%である。E(F1)が前記の範囲であると、三次元加飾熱成形時の成形性が良好であるとともに、フィルムのベタツキが少なくフィルム成形性にも優れる。
6.成分(F2)のエチレン含量(E(F2)):(f5)
成分(F2)は、そのエチレン含量(以下、「E(F2)」という。)が成分(F1)のエチレン含量E(F1)よりも多い。また、E(F2)が5~90重量%の範囲にあるプロピレン-エチレンランダム共重合体であることが好ましい。E(F2)は、より好ましくは7~80重量%、さらに好ましくは9~50重量%である。E(F2)が前記の範囲であると、十分な接着強度を発揮することができる。
(プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)の製造方法)
本発明に用いるプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)とそれを構成するプロピレン単独重合体又はプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F1)及びプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F2)は、以下の原料、重合方法によって好ましく製造することができる。本発明に用いるプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)の製造方法について、以下に説明する。
・使用原料
本発明に用いられるプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)を製造するに際し使用される触媒としては、マグネシウム、ハロゲン、チタン、電子供与体を触媒成分とするマグネシウム担持型触媒、三塩化チタンを触媒とする固体触媒成分と有機アルミニウムからなる触媒、又はメタロセン触媒が使用できる。具体的な触媒の製造法は特に限定されるものではないが、例として日本国特開2007-254671号公報に開示されたチーグラー触媒や日本国特開2010-105197号公報に開示されたメタロセン触媒を例示することができる。
また、重合される原料オレフィンは、プロピレン及びエチレンであり、必要により、本発明の目的を損なわない程度の他のオレフィン、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等を使用することもできる。
・重合工程
前記触媒の存在下に行う重合工程は、成分(F1)を製造する第1重合工程、成分(F2)を製造する第2重合工程の多段階からなる。
第1重合工程
第1重合工程は、プロピレン単独かプロピレン/エチレンの混合物を、前記触媒を加えた重合系に供給してプロピレン単独重合体又はプロピレン-エチレンランダム共重合体を製造して、全重合体量の5~97重量%に相当する量となるように成分(F1)を形成させる工程である。
成分(F1)のMFR(以下、「MFR(F1)」という。)は水素を連鎖移動剤として用いることにより調整することができる。具体的には、連鎖移動剤である水素の濃度を高くすると成分(F1)のMFR(F1)が高くなる。逆もまた同様である。重合槽における水素の濃度を高くするには、重合槽への水素の供給量を高くすればよく、当業者にとって調整は極めて容易である。また、成分(F1)がプロピレン-エチレンランダム共重合体である場合には、エチレン含有量を制御する手段として、重合槽に供給するエチレンの量を制御する方法を用いるのが簡便である。具体的には、重合槽に供給するエチレンのプロピレンに対する量比(エチレン供給量÷プロピレン供給量)を高くすれば、成分(F1)のエチレン含有量は高くなる。逆も同様である。重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比と成分(F1)のエチレン含有量との関係は使用する触媒の種類によって異なるが、適宜供給量比を調整することによって目的のエチレン含有量を有する成分(F1)を得ることは当業者にとって極めて容易なことである。
第2重合工程
第2重合工程は、第1重合工程に引き続いてプロピレン/エチレン混合物をさらに導入して、プロピレン-エチレンランダム共重合体を製造して、全重合体量の3~95重量%に相当する量となるように成分(F2)を形成させる工程である。
成分(F2)のMFR(以下、「MFR(F2)」という。)は水素を連鎖移動剤として用いることにより調整することができる。具体的な制御方法は、成分(F1)のMFRの制御方法と同じである。成分(F2)のエチレン含有量を制御する手段として、重合槽に供給するエチレンの量を制御する方法を用いるのが簡便である。具体的な制御方法は、成分(F1)がプロピレン-エチレンランダム共重合体である場合と同じである。
次に、プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)のインデックスの制御方法について説明する。
まず、成分(F1)と成分(F2)の重量比の制御方法について説明する。成分(F1)と成分(F2)の重量比は成分(F1)を製造する第1重合工程における製造量と成分(F2)を製造する第2重合工程における製造量によって制御する。例えば、成分(F1)の量を増やして成分(F2)の量を減らすためには、第1重合工程の製造量を維持したまま第2重合工程の製造量を減らせばよく、それは、第2重合工程の滞留時間を短くしたり、重合温度を下げたりすればよい。また、エタノールや酸素等の重合抑制剤を添加したり、元々添加している場合にはその添加量を増やしたりすることでも制御することができる。その逆もまた同様である。
通常、成分(F1)と成分(F2)の重量比は、成分(F1)を製造する第1重合工程における製造量と成分(F2)を製造する第2重合工程における製造量で定義する。式を以下に示す。
成分(F1)の重量:成分(F2)の重量=W(F1):W(F2)
W(F1)=第1重合工程の製造量÷(第1重合工程の製造量+第2重合工程の製造量)×100
W(F2)=第2重合工程の製造量÷(第1重合工程の製造量+第2重合工程の製造量)×100
W(F1)+W(F2)=100
(ここで、W(F1)及びW(F2)はそれぞれプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)における成分(F1)と成分(F2)の重量比率(百分率)である。)
工業的な製造設備では、各重合槽のヒートバランスやマテリアルバランスから製造量を求めるのが通常である。また、成分(F1)と成分(F2)の結晶性が充分異なる場合には、TREF(温度昇温溶離分別法)等の分析手法を用いて両者を分離同定し量比を求めることでもよい。ポリプロピレンの結晶性分布をTREF測定により評価する手法は当業者によく知られたものであり、G.Glokner,J.Appl.Polym.Sci:Appl.Poly.Symp.;45,1-24(1990)、 L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1-47(1990)、 J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polyer;36,8,1639-1654(1995)等の文献に詳細な測定法が示されている。
次に、エチレン含有量の制御方法について説明する。プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)はプロピレン単独重合体又はプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F1)とプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F2)の混合物であるから、それぞれのエチレン含有量の間には以下の関係式が成立する。
E(F)=E(F1)×W(F1)/100 + E(F2)×W(F2)/100
(ここで、E(F)、E(F1)及びE(F2)はそれぞれ、プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)、プロピレン単独重合体又はプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F1)、及びプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F2)のエチレン含有量であり、W(F1)及びW(F2)は上記と同様である。)
この式はエチレン含有量に関するマテリアルバランスを示すものである。
したがって、成分(F1)と成分(F2)の重量比が決まれば、すなわち、W(F1)とW(F2)が決まれば、E(F)はE(F1)とE(F2)によって一意的に定まる。つまり、成分(F1)と成分(F2)の重量比、E(F1)及びE(F2)の3つの因子を制御することによりE(F)を制御することができる。例えば、E(F)を高くする為にはE(F1)を高くしてもよいし、E(F2)を高くしてもよい。また、E(F2)がE(F1)よりも高いことに留意すれば、W(F1)を小さくしてW(F2)を大きくしてもよいことも容易に理解できよう。逆方向の制御方法も同様である。
なお、実際に測定値を直接得られるのはE(F)とE(F1)であり、両者の測定値を使ってE(F2)を計算することになる。従って、仮にE(F)を高くする操作を行う際に、E(F2)を高くする操作、すなわち、第2重合工程に供給するエチレンの量を増やす操作を手段として選ぶ場合、測定値として直接確認できるのはE(F)であってE(F2)ではないが、E(F)が高くなる原因はE(F2)が高くなることにあるのは自明である。
最後に、MFR(F)の制御方法について説明する。本願においては、MFR(F2)を以下の式で定義することにする。
MFR(F2)=exp{(loge[MFR(F)]-(W(F1)/100)×
loge[MFR(F1)])÷(W(F2)/100)}
(ここで、logeはeを底とする対数である。MFR(F)、MFR(F1)及びMFR(F2)はそれぞれ、プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)、プロピレン単独重合体又はプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F1)、及びプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F2)のMFRであり、W(F1)及びW(F2)は上記と同様である。)
この式は一般に粘度の対数加成則と呼ばれる経験式
loge[MFR(F)]=(W(F1)/100)×loge[MFR(F1)]+(W(F2)/100)×loge[MFR(F2)]
を変形したものであり、当業界で日常的に使われるものである。
この式で定義する為に、成分(F1)と成分(F2)の重量比、MFR(F)、MFR(F1)及びMFR(F2)は独立ではない。故に、MFR(F)を制御するには、成分(F1)と成分(F2)の重量比、MFR(F1)及びMFR(F2)の3つの因子を制御すればよい。例えば、MFR(F)を高くする為にはMFR(F1)を高くしてもよいし、MFR(F2)を高くしてもよい。また、MFR(F2)がMFR(F1)より低い場合には、W(F1)を大きくしてW(F2)を小さくしてもMFR(F)を高くすることができることも容易に理解できよう。逆方向の制御方法も同様である。
なお、実際に測定値を直接得られるのはMFR(F)とMFR(F1)であり、両者の測定値を使ってMFR(F2)を計算することになる。従って、仮にMFR(F)を高くする操作を行う際に、MFR(F2)を高くする操作、すなわち、第2重合工程に供給する水素の量を増やす操作を手段として選ぶ場合、測定値として直接確認できるのはMFR(F)であってMFR(F2)ではないが、MFR(F)が高くなる原因はMFR(F2)が高くなることにあるのは自明である。
プロピレン-エチレンブロック共重合体の重合プロセスは、回分式、連続式のいずれの方法によっても実施可能である。この際に、ヘキサン、ヘプタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として使用する方法、実質的に液体溶媒を用いずにガス状の単量体中で重合を行う方法、さらに、これらを組み合わせた方法を採用することができる。また、第1重合工程と第2重合工程は同一の重合槽を用いても、別個の重合槽を用いてもよい。
(1)共重合体中のエチレン含有量の測定
プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)を用い、この共重合体中の各エチレン含有量を測定した。すなわち、第1重合工程終了時に得られたプロピレン単独重合体又はプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F1)及び、第2重合工程を経て得られたプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)における各々のエチレン含有量は、プロトン完全デカップリング法により以下の条件に従って測定した13C-NMRスペクトルを解析することにより求めた。
機種:日本電子(株)製 GSX-400又は同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o-ジクロロベンゼン+重ベンゼン(4:1(体積比))
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えば、Macromolecules 17,1950 (1984)等を参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は下表の通りである。表中Sαα等の記号はCarmanら(Macromolecules 10, 536 (1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
Figure 0007115288000003
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、及びEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules 15,1150 (1982)等に記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の(1)~(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) (1)
[PPE]=k×I(Tβδ) (2)
[EPE]=k×I(Tδδ) (3)
[PEP]=k×I(Sββ) (4)
[PEE]=k×I(Sβδ) (5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} (6)
ここで括弧[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。したがって、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1
(7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えば、I(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。上記(1)~(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1-X/100)}×100
ここで、Xはモル%表示でのエチレン含有量である。
[シール層(I)のその他の成分]
上記の基本的な実施形態、及び第1実施形態から第6実施形態において、シール層(I)を構成する樹脂組成物(X)(樹脂組成物(X1)~(X6))には、本発明の効果を損なわない限り、造核剤を含む添加剤、フィラー、その他の樹脂成分等が含まれていてもよい。ただし、添加剤、フィラー、その他の樹脂成分等の総量は、樹脂組成物に対して50重量%以下であることが好ましい。
樹脂組成物(X)がポリプロピレン系樹脂(A)からなるときは、樹脂組成物(X)が、前記のポリプロピレン系樹脂(A)の特性を有していることが好ましい。
添加剤としては、酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤等の、ポリプロピレン系樹脂に用いることのできる公知の各種添加剤を配合することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオ系酸化防止剤等を例示することができる。中和剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸塩類等を例示することができる。光安定剤及び紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン類、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類等を例示することができる。
滑剤としては、ステアリン酸アマイド等の高級脂肪酸アマイド類等を例示することができる。帯電防止剤としては、グリセリン脂肪酸モノエステル等の脂肪酸部分エステル類等を例示することができる。金属不活性剤としては、トリアジン類、フォスフォン類、エポキシ類、トリアゾール類、ヒドラジド類、オキサミド類等を例示することができる。
フィラーとしては、無機充填剤、有機充填剤等の、ポリプロピレン系樹脂に用いることのできる公知の各種充填剤を配合することができる。無機充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ガラスファイバーやカーボンファイバー等を例示することができる。また有機充填剤としては、架橋ゴム微粒子、熱硬化性樹脂微粒子、熱硬化性樹脂中空微粒子等を例示することができる。
その他の樹脂成分としては、変性ポリオレフィンやエチレン-α-オレフィン共重合体等のエラストマー、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、石油樹脂、その他の熱可塑性樹脂等を例示することができる。
樹脂組成物(X)の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂(A)(基本的な実施形態、並びに第1及び第2実施形態の場合)、ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)(第3実施形態の場合)、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(D)(第4実施形態の場合)、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(E)(第5実施形態の場合)、又はプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)(第6実施形態の場合)と、添加剤、フィラー、その他の樹脂成分等とを溶融混練する方法、第3~第5実施形態においては、ポリプロピレン系樹脂(A)と添加剤、フィラー、その他の樹脂成分等を溶融混練したものに、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)、熱可塑性エラストマー(D)又は熱可塑性樹脂(E)をドライブレンドする方法や、ポリプロピレン系樹脂(A)をエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)、熱可塑性エラストマー(D)又は熱可塑性樹脂(E)に加え、添加剤、フィラー、その他の樹脂組成物等をキャリアレジンに高濃度で分散させたマスターバッチをドライブレンドする方法等によって製造することができる。
[層(II)]
本発明の加飾フィルムに含まれる層(II)は、ポリプロピレン系樹脂(B)を含む樹脂組成物(Y)からなる。加飾フィルムに、層(II)を設けることにより、三次元加飾熱成形時にフィルムが破断したり暴れたりすることによる外観不良の発生を抑制することができる。これにより、加飾フィルムは、熱成形性を改良するための熱成形性に優れる熱硬化性樹脂層を含まなくてもよい。
<<ポリプロピレン系樹脂(B)>>
次に、層(II)を構成するポリプロピレン系樹脂(B)について説明する。ポリプロピレン系樹脂(B)は、前記のポリプロピレン系樹脂(A)よりも、溶融・緩和しにくい樹脂であることが好ましい。
1.メルトフローレート(MFR(B)):(b1)
ポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))は、ポリプロピレン系樹脂(A)のMFR(A)に比べて低いことが必要である。すなわち、下記関係式(b-1)を満たす。
MFR(B)<MFR(A) ・・・式(b-1)
ポリプロピレン系樹脂(B)とポリプロピレン系樹脂(A)とのMFRの比であるMFR(B)/MFR(A)は、1未満(すなわち、MFR(B)<MFR(A))であり、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.25以下である。MFR(B)/MFR(A)が前記の範囲であると、熱成形性が良好となる。MFR(B)/MFR(A)の下限には制限はないが、好ましくは0.01以上である。
MFR(B)は、前記の範囲であれば特に制限はないが、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.2g/10分以上である。前記の範囲であると、熱成形の際、加飾フィルムの延展性が良好である。また、MFR(B)は、好ましくは20g/10分以下、より好ましくは15g/10分以下である。
2.融解ピーク温度(Tm(B)):(b2)
ポリプロピレン系樹脂(B)のDSC測定における融解ピーク温度Tm(B)は、特に制限はないが、好ましくは150℃以上、より好ましくは155℃以上である。Tm(B)が前記の範囲であると、耐熱性、耐傷つき性、耐溶剤性が良好となる。
また、ポリプロピレン系樹脂(B)の融解ピーク温度(Tm(B))は、ポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピーク温度(Tm(A))よりも高いことが好ましく、下記関係式(b-2)を満たす。
Tm(B)>Tm(A) ・・・式(b-2)
前記の範囲であると、熱成形性が良好となる。
3.結晶化温度(Tc(B)):(b3)
ポリプロピレン系樹脂(B)のDSC測定における結晶化温度(Tc(B))は、ポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化温度(Tc(A))よりも高いことが好ましく、下記関係式(b-3)を満たす。
Tc(B)>Tc(A) ・・・式(b-3)
前記の範囲であると、熱成形性が良好となる。
Tc(B)は、前記の範囲であれば特に制限はないが、好ましくは95℃以上、より好ましくは100℃以上である。
4.樹脂組成
ポリプロピレン系樹脂(B)は、メタロセン触媒系プロピレン系重合体、チーグラー・ナッタ触媒系プロピレン系重合体等から選ぶことができる。チーグラー・ナッタ触媒系プロピレン系重合体が好ましい。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(B)は、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン-α-オレフィン共重合体(ランダムポリプロピレン)、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)等の様々なタイプのプロピレン系重合体、又はそれらの組み合わせを選択することができる。プロピレン系重合体は、プロピレンモノマー由来の重合単位を50mol%以上含んでいることが好ましい。
本発明において、シール層(I)との好ましい組み合わせは以下である。
第1実施形態においては、層(II)は上記要件(b1)と(b2)を満たすことが好ましく、第2実施形態においては、層(II)は上記要件(b1)と(b3)を満たすことが好ましく、第3~6実施形態においては、層(II)は上記要件(b1)を満たす。
[層(II)のその他の成分]
層(II)を構成する樹脂組成物(Y)には、ポリプロピレン系樹脂(B)の他に、造核剤を含む添加剤、フィラー、着色剤、その他の樹脂成分等が含まれていてもよい。すなわち、プロピレン系重合体(ポリプロピレン系樹脂(B))と添加剤、フィラー、着色剤、その他の樹脂成分等を含む樹脂組成物(ポリプロピレン系樹脂組成物)であってもよい。添加剤、フィラー、着色剤、その他の樹脂成分等の総量は、ポリプロピレン系樹脂組成物に対して50重量%以下であることが好ましい。
添加剤としては、前記のシール層(I)を構成する樹脂組成物(X)に含まれていてもよい添加剤等を使用することができる。
樹脂組成物(Y)は、プロピレン系重合体と添加剤、フィラー、その他の樹脂成分等を溶融混練する方法、プロピレン系重合体と添加剤、フィラー等を溶融混練したものにその他の樹脂成分をドライブレンドする方法、プロピレン系重合体とその他の樹脂成分に加え添加剤、フィラー等をキャリアレジンに高濃度で分散させたマスターバッチをドライブレンドする方法等によって製造することができる。
樹脂組成物(Y)がポリプロピレン系樹脂(B)からなるときは、樹脂組成物(Y)が、前記のポリプロピレン系樹脂(B)の特性を有していることが好ましい。
また、意匠性を付与するために着色することも可能であり、着色には無機顔料、有機顔料、染料等の各種着色剤を用いることができる。また、アルミフレークや酸化チタンフレーク、(合成)マイカ等の光輝材を使用することもできる。
本発明の加飾成形体が、着色された成形体として成形される場合、加飾フィルムにのみ着色剤を用いればよいため、樹脂成形体全体に着色する場合と比べ、高価な着色剤の使用を抑制することが可能である。また着色剤を配合することに伴う物性変化を抑制することができる。
[加飾フィルム]
本発明における加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)を含有するシール層(I)、及びポリプロピレン系樹脂(B)を含有する層(II)を含む。加飾フィルムは、シール層(I)、層(II)の他に様々な構成を取ることが可能である。すなわち、加飾フィルムは、シール層(I)及び層(II)からなる二層フィルムであっても、シール層(I)及び層(II)と他の層からなる三層以上の多層フィルムであってもよい。なお、シール層(I)は、樹脂成形体(基体)に沿って貼着する。また、加飾フィルムは、その表面にシボ、エンボス、印刷、サンドプラスト、スクラッチ等が施されていてもよい。
三次元加飾熱成形は、加飾対象の形状の自由度が大きく、加飾フィルムの端面が加飾対象の裏側まで巻き込まれることで継ぎ目が生じないため外観に優れ、さらに、加飾フィルムの表面にシボ等を付与することで様々なテクスチャーを表現できる。例えば樹脂成形体にエンボス等のテクスチャーを付与する場合、エンボスの付与された加飾フィルムを用いて三次元加飾熱成形を行えばよい。このため、エンボスを付与する成形体金型で成形する場合の課題、すなわちエンボスパターン毎に成形体金型が必要であること、曲面の金型に複雑なエンボスを施すことは非常に困難で高価であること、といった課題が解決でき、様々なパターンのエンボスを容易に付与した加飾成形体を得ることができる。また、鏡面状の冷却ロールを面転写して加飾フィルムに鏡面加工を施せば、より光沢の高い加飾フィルムを得ることができる。さらに、樹脂成形体の貼着面側とは反対面側に、造核剤を含む表面加飾層樹脂からなる表面加飾層(III)を有する加飾フィルムでは、表面光沢の高い加飾フィルムを得ることができる。
多層フィルムには、シール層(I)及び層(II)の他、表面層、表面加飾層(III)、印刷層、遮光層、着色層、基材層、バリア層、これらの層間に設けることができるタイレイヤー層等を含めることができる。ポリプロピレン系樹脂(B)を含有する層(II)は、多層フィルムを構成する層のうち、シール層を除くいずれの層であってもよい。
多層フィルムにおいて、シール層(I)と層(II)以外の層は、好ましくは熱可塑性樹脂からなる層であり、より好ましくはポリプロピレン系樹脂からなる層である。シール層(I)と層(II)以外の層は、シール層(I)及び層(II)と識別することができる限り、その層を構成するポリプロピレン系樹脂のMFR(230℃、2.16kg荷重)は特に制限されるものではない。各層は熱硬化性樹脂を含まない層であることが好ましい。熱可塑性樹脂を用いることにより、リサイクル性が向上し、ポリプロピレン系樹脂を用いることにより、層構成の複雑化を抑制することができ、さらにリサイクル性がより向上する。
加飾フィルムが、二層フィルムであるとき、シール層(I)が樹脂成形体への貼着面を構成し、層(II)が樹脂成形体への貼着面とは反対の表面層を構成する。この場合層(II)が造核剤を含んでいることが好ましい。
図1(a)~図1(c)は、加飾フィルムの実施形態の断面を模式的に例示する説明図である。図1(a)~図1(c)において、理解を容易にするため、シール層(I)及び層(II)の配置を特定して説明するが、加飾フィルムの層構成はこれら例示に限定して解釈されるものではない。本明細書において、図面の符号1は加飾フィルム、符号2は層(II)、符号3はシール層(I)、符号4は表面加飾層(III)を示す。図1(a)は、加飾フィルム1が二層フィルムからなる例であり、シール層(I)3の上に層(II)2が積層する。図1(b)の加飾フィルム1はシール層(I)3、層(II)2及び表面層からなり、シール層(I)の上に層(II)及び表面層がこの順に積層する。図1(c)の加飾フィルム1は、シール層(I)3、層(II)2及び表面加飾層(III)4からなり、シール層(I)の上に層(II)及び表面加飾層(III)がこの順に積層する。
図8(a)~図8(c)は、樹脂成形体5に加飾フィルム1を貼着した加飾成形体6の実施形態の断面を模式的に例示する説明図である。図8(a)~図8(c)において、理解を容易にするため、シール層(I)及び層(II)の配置を特定して説明するが、加飾フィルム1の層構成はこれら例示に限定して解釈されるものではない。図8(a)は、加飾フィルム1が二層フィルムからなる例であり、樹脂成形体5にシール層(I)3が貼着し、シール層(I)3の上に層(II)2が積層する。図8(b)の加飾フィルム1は、シール層(I)3、層(II)2及び表面層からなり、樹脂成形体5の表面にシール層(I)が貼着し、シール層(I)の上に層(II)及び表面層がこの順に積層する。図8(c)の加飾フィルム1は、シール層(I)3、層(II)2及び表面加飾層(III)4からなり、樹脂成形体5の表面にシール層(I)が貼着し、シール層(I)の上に層(II)及び表面加飾層(III)がこの順に積層する。
加飾フィルムの好ましい別の態様として、樹脂成形体への貼着面側とは反対面側の最表面に、表面加飾層樹脂からなる表面加飾層(III)とを含む多層フィルムが挙げられる。
表面加飾層樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂、より好ましくはポリプロピレン系樹脂(H)であるとよい。また、この表面加飾層(III)に造核剤が含まれていることが好ましい。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(H)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(H))は、好ましくはMFR(H)>MFR(B)を満たす。上記の値の範囲にすることにより、より美麗な表面光沢を表現することができる。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂(H)は、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン-α-オレフィン共重合体(ランダムポリプロピレン)、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)等の様々なタイプのプロピレン系重合体、又はそれらの組み合わせを選択することができる。プロピレン系重合体は、プロピレンモノマー由来の重合単位を50mol%以上含んでいることが好ましい。プロピレン系重合体は、極性基含有モノマー由来の重合単位を含まないものであることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂(H)は、耐油性、耐溶剤性、耐傷付き性等の観点からホモポリプロピレンが好ましい。また光沢(グロス)や透明性(発色性)の観点からは、プロピレン-α-オレフィン共重合体が好ましい。本発明において、表面加飾層(III)を構成するポリプロピレン系樹脂(H)は、シール層(I)を構成するポリプロピレン系樹脂(A)と同じであっても異なっていてもよい。
ポリプロピレン系樹脂(H)には、造核剤を含む添加剤、フィラー、その他の樹脂成分等が含まれていてもよい。すなわち、プロピレン系重合体と添加剤、フィラー、その他の樹脂成分等との樹脂組成物(ポリプロピレン系樹脂組成物)であってもよい。添加剤、フィラー、その他の樹脂成分等の総量は、ポリプロピレン系樹脂組成物に対して50重量%以下であることが好ましい。
添加剤としては、前記のシール層(I)を構成する樹脂組成物(X)に含まれていてもよい添加剤等を使用することができる。
ポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体と添加剤、フィラー、その他の樹脂成分等を溶融混練する方法、プロピレン系重合体と添加剤、フィラー等を溶融混練したものにその他の樹脂成分をドライブレンドする方法、プロピレン系重合体とその他の樹脂成分に加え添加剤、フィラー等をキャリアレジンに高濃度で分散させたマスターバッチをドライブレンドする方法等によって製造することができる。
本発明の加飾フィルムは、厚みが、好ましくは約20μm以上、より好ましくは約50μm以上、さらに好ましくは約80μm以上である。加飾フィルムの厚みをこのような値以上にすることにより、意匠性を付与する効果が向上し、成形時の安定性も向上し、より良好な加飾成形体を得ることが可能となる。一方、加飾フィルムの厚みは、好ましくは約2mm以下、より好ましくは約1.2mm以下、さらに好ましくは約0.8mm以下である。加飾フィルムの厚みをこのような値以下にすることにより、熱成形時の加熱に要する時間が短縮することで生産性が向上し、不要な部分をトリミングすることが容易になる。
本発明の加飾フィルムにおいて、加飾フィルム全体の厚みに占めるシール層(I)の厚みの割合は、好ましくは1~70%であり、層(II)の厚みの割合は、好ましくは30~99%である。加飾フィルム全体に占めるシール層(I)の厚みの割合が上記の値の範囲であれば、十分な接着強度を発揮することができ、樹脂成形体(基体)の傷が表面に浮き出すのを抑制することができる。また加飾フィルム全体に占める層(II)の厚みの割合が上記の値の範囲であれば、加飾フィルムの熱成形性が不十分となることを避けることができる。
また、加飾フィルムの最表面にポリプロピレン系樹脂(H)からなる表面加飾層(III)を設けた多層フィルムにおいては、加飾フィルム中で表面加飾層(III)の厚みの占める割合は、好ましくは30%以下である。
[加飾フィルムの製造]
本発明の加飾フィルムは、公知の様々な成形方法により製造することができる。
例えば、樹脂組成物(X)からなるシール層(I)と樹脂組成物(Y)からなる層(II)とを共押出成形する方法、シール層(I)及び層(II)とさらに他の層とを共押出成形する方法、あらかじめ押出成形した一方の層の片方の面の上に、他の層を熱及び圧力をかけて貼り合せる熱ラミネーション法、接着剤を介して貼り合せるドライラミネーション法及びウェットラミネーション法、あらかじめ押出成形した一方の層の片方の面の上に、ポリプロピレン系樹脂を溶融押出しする押出ラミネーション法やサンドラミネーション法等が挙げられる。加飾フィルムを形成するための装置としては、公知の共押出Tダイ成形機や、公知のラミネート成形機を用いることができる。この中で、生産性の観点から、共押出Tダイ成形機が好適に用いられる。
ダイスより押出された溶融状の加飾フィルムを冷却する方法としては、一本の冷却ロールにエアナイフユニットやエアチャンバーユニットより排出された空気を介して溶融状の加飾フィルムを接触させる方法や、複数の冷却ロールで圧着して冷却する方法が挙げられる。
本発明の加飾フィルムに光沢を付与する場合には、加飾フィルムの、製品の意匠面に鏡面状の冷却ロールを面転写して鏡面加工を施す方法が用いられる。
さらに、本発明の加飾フィルムの表面にシボ形状を有していてもよい。このような加飾フィルムは、ダイスより押出された溶融状態の樹脂を、凹凸形状を施したロールと平滑なロールとで直接圧着して凹凸形状を面転写する方法、平滑なフィルムを、凹凸形状を施した加熱ロールと平滑な冷却ロールとで圧接して面転写する方法等により製造することができる。シボ形状としては梨地調、獣皮調、ヘアライン調、カーボン調等が例示される。
本発明の加飾フィルムは、成膜後に熱処理してもよい。熱処理の方法としては、熱ロールで加熱する方法、加熱炉や遠赤外線ヒータで加熱する方法、熱風を吹き付ける方法等が挙げられる。
[加飾成形体]
本発明において加飾される成形体(加飾対象)として、好ましくはポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂組成物からなる各種樹脂成形体(以下、「基体」と言うことがある。)を用いることができる。樹脂成形体の成形方法は、特に制限されるものでなく、例えば射出成形、ブロー成形、プレス成形、押出成形等を挙げることができる。
ポリプロピレン系樹脂は非極性であることから、難接着性の高分子であるが、本発明における加飾フィルムは、樹脂組成物(X)からなるシール層(I)、及び樹脂組成物(Y)からなる層(II)を含むことにより、ポリプロピレン系樹脂からなる加飾対象と加飾フィルムが貼着することで非常に高い接着強度を発揮する。
加飾対象である成形体のポリプロピレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂組成物のベース樹脂としては、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン-α-オレフィン共重合体、あるいは、プロピレンブロック共重合体等の公知の様々なプロピレンモノマーを主原料とする様々なタイプのものを選択することができる。また、本発明の効果を損なわない限り、剛性付与のためにタルク等のフィラーや、耐衝撃性付与のためにエラストマー等を含んでいてもよい。また、上述した加飾フィルムを構成し得るポリプロピレン系樹脂組成物と同様に添加剤成分やその他の樹脂成分を含んでもよい。
本発明における加飾フィルムを、ポリプロピレン系樹脂からなる三次元形状に形成された各種成形体に貼着した加飾成形体は、塗装や接着剤に含まれるVOCが大きく削減されるため、自動車部材、家電製品、車輌(鉄道等)、建材、日用品等として好適に使用することができる。
[加飾成形体の製造]
本発明の加飾成形体の製造方法は、上述した加飾フィルムを準備するステップ、樹脂成形体を準備するステップ、減圧可能なチャンバーボックス中に、前記樹脂成形体及び前記加飾フィルムをセットするステップ、前記チャンバーボックス内を減圧するステップ、前記加飾フィルムを加熱軟化させるステップ、前記樹脂成形体に前記加飾フィルムを押し当てるステップ、並びに前記減圧したチャンバーボックス内を大気圧に戻す又は加圧するステップを含むことを特徴とする。
三次元加飾熱成形は、減圧可能なチャンバーボックス中に、加飾対象と加飾フィルムをセットし、チャンバーボックス内を減圧した状態でフィルムを加熱軟化させ、加飾対象にフィルムを押し当て、チャンバーボックス内を大気圧に戻す、あるいは、加圧することで、加飾フィルムを加飾対象の表面に貼り付ける、という基本的な工程を有し、減圧下でフィルムの貼り付けを行う。これにより空気だまりが生じない、きれいな加飾成形体を得ることができる。本発明の製造方法において、三次元加飾熱成形に相応しい装置、条件であれば公知のあらゆる技術を用いることができる。
すなわち、チャンバーボックスは、加飾対象と加飾フィルム、及び、それを押し当てるための機構、加飾フィルムを加熱するための装置等の全てを一つに納めるものでもよいし、加飾フィルムによって分割された複数のものでもよい。
また、加飾対象と加飾フィルムを押し当てるための機構は、加飾対象を移動させるもの、加飾フィルムを移動させるもの、両者を移動させるもの、いずれのタイプでもかまわない。
より具体的に代表的な成形方法を以下に例示する。
以下、図を参照しながら、三次元加飾熱成形機を用いて加飾フィルムを加飾対象に貼着する方法について例示的に説明する。
図2に示すように、この実施形態の三次元加飾熱成形機は上下にチャンバーボックス11及び12を具備すると共に、前記2つのチャンバーボックス11及び12内で加飾フィルム1の熱成形を行なうようにしている。上下のチャンバーボックス11及び12には、真空回路(図示せず)と空気回路(図示せず)がそれぞれ配管されている。
また、上下のチャンバーボックス11及び12の間には、加飾フィルム1を固定する治具13が備えられている。また、下チャンバーボックス12には、上昇・下降が可能なテーブル14が設置されており、樹脂成形体(加飾対象)5はこのテーブル14上に(治具等を介して又は直接)セットされる。上チャンバーボックス11内にはヒータ15が組み込まれており、このヒータ15により加飾フィルム1は加熱される。加飾対象5は、プロピレン系樹脂組成物を基体とすることができる。
このような三次元加飾熱成形機としては、市販の成形機(例えば布施真空株式会社製NGFシリーズ)を使用することができる。
図3に示すように、まず上下チャンバーボックス11及び12が開放された状態で、下チャンバーボックス12内のテーブル14上に加飾対象5を設置し、テーブル14を下降した状態にする。続いて、上下チャンバーボックス11及び12間のフィルム固定用の治具13に加飾フィルム1をシール層(I)が基体、すなわち加飾対象5に対向するようにセットする。
図4に示すように、上チャンバーボックス11を降下させ、上下チャンバーボックス11及び12を接合させ前記ボックス内を閉塞状態とした後、それぞれのチャンバーボックス11及び12内を真空吸引状態にし、ヒータ15により加飾フィルム1の加熱を行う。
加飾フィルム1を加熱軟化した後、図5に示すように、上下チャンバーボックス11及び12内を真空吸引状態のまま下チャンバーボックス12内のテーブル14を上昇させる。加飾フィルム1は加飾対象5に押し付けられて、加飾対象5を被覆する。さらに図6に示すように、上チャンバーボックス11を大気圧下に開放又は圧空タンクより圧縮空気を供給することにより、さらに大きな力で加飾フィルム1を加飾対象5に密着させる。
続いて、上下チャンバーボックス11及び12内を大気圧下に開放し、加飾成形体6を下チャンバーボックス12から取り出す。最後に、図7に例示するように加飾成形体6の周囲にある不要な加飾フィルム1のエッジをトリミングする。
[成形条件]
チャンバーボックス11及び12内の減圧は、空気だまりが発生しない程度であればよく、チャンバーボックス内の圧力が10kPa以下、好ましくは3kPa以下、より好ましくは1kPa以下である。
また、加飾フィルム1により上下に分割された二つのチャンバーボックス11及び12においては、加飾対象5と加飾フィルム1が貼り付けられる側のチャンバーボックス内圧力が上記範囲であればよく、上下のチャンバーボックス11及び12の圧力を変えることで加飾フィルム1のドローダウンを抑制することもできる。
このとき、一般的なポリプロピレン系樹脂からなるフィルムは加熱時の粘度低下により、わずかな圧力変動で大きく変形及び破膜することがある。
本発明の加飾フィルム1は、ドローダウンしにくいだけでなく、圧力変動によるフィルム変形にも耐性を有する。
加飾フィルム1の加熱はヒータ温度(出力)と加熱時間によって制御される。また、フィルムの表面温度を放射温度計等の温度計により測定し適切な条件の目安とすることも可能である。
本発明において、ポリプロピレン系樹脂からなる加飾対象5にポリプロピレン系加飾フィルム1を貼着させるには、樹脂成形体5表面及び加飾フィルム1が十分に軟化又は融解することが必要である。
そのために、ヒータ温度は加飾対象5を構成するポリプロピレン系樹脂と加飾フィルム1を構成するポリプロピレン系樹脂の融解温度よりも高いことが必要である。ヒータ温度は、好ましくは160℃以上、より好ましくは180℃以上、最も好ましくは200℃以上である。
ヒータ温度が高いほど加熱に要する時間は短縮されるが、加飾フィルム1の内部(あるいはヒータが片側にのみ設置させる場合にはヒータと反対の面)が十分に加熱されるまでに、ヒータ側の温度が高くなりすぎることで成形性の悪化を招くばかりでなく樹脂が熱劣化してしまうため、ヒータ温度は500℃以下であることが好ましく、より好ましくは450℃以下、最も好ましくは400℃以下である。
適切な加熱時間はヒータ温度によって異なるが、短くても、ポリプロピレン系加飾フィルムが加熱され、スプリングバックと呼ばれる張り戻りが開始するまでの時間又はそれを超える時間加熱されることが好ましい。基本形態、第1実施形態、第2実施形態においては、張り戻りが終了してから2秒後までの時間又はそれを超える時間加熱されることが好ましい。
すなわち、ヒータによって加熱された加飾フィルムは、固体状態から加熱されることで熱膨張し結晶溶融に伴い一度たるみ、結晶融解が全体に進行すると分子が緩和することで一時的に張り戻るスプリングバックが観察され、その後、自重によって垂れ下がるという挙動を示すが、スプリングバック後には、フィルムは完全に結晶が融解しており、分子の緩和が十分であるため、十分な接着強度が得られる。
さらに、本発明の加飾フィルムは、驚くべきことに張り戻りが終了する前に加飾熱成形しても基体と強く接着することが可能であるため、熱成形の時間を短縮することができ、加飾フィルムに含まれる造核剤が揮発する前に成形を完了させることができる。
一方、加熱時間が長くなりすぎると、フィルムは自重によって垂れ下がったり、上下チャンバーボックスの圧力差により変形してしまったりするので、スプリングバック終了後、30秒未満の加熱時間であることが好ましい。
凹凸を有する複雑な形状の成形体を加飾する場合や、より高い接着力を達成する場合には、加飾フィルムを基体に密着させる際に、圧縮空気を供給することが好ましい。圧縮空気を導入した際の上チャンバーボックス内の圧力は、150kPa以上、好ましくは200kPa以上、より好ましくは250kPa以上である。上限については特に制限しないが、圧力が高すぎると機器を損傷するおそれがあるため、450kPa以下、好ましくは400kPa以下がよい。
以下、実施例として、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
<試験例1及び2>
(緒物性の測定方法及び評価方法)
1.諸物性の測定方法
(i)メルトフローレート(MFR)
ISO 1133:1997 Conditions Mに準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定した。単位はg/10分である。
(ii)融解ピーク温度(融点)
示差走査熱量計(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて10分間保持した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融解ピーク温度(融点)とした。単位は℃である。
(iii)結晶化温度
示差走査熱量計(DSC)を使用し、シート状にしたサンプル片を5mgアルミパンに詰め、50℃から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した後に、10℃/分で40℃まで降温して結晶化させた。この時の結晶化最大ピーク温度を結晶化温度(Tc)とした。
(iv)GPC測定
以下の装置と条件でGPC測定をおこないMw/Mnの算出をおこなった。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
・移動相溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/min
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させた。
GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレン(PS)による検量線を用いて行った。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して、較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。
なお、分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10-4、α=0.7
PP:K=1.03×10-4、α=0.78
(v)密度
エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)と熱可塑性エラストマー(D)の密度は、JIS K7112(1999)の密度勾配管法に従って、測定した。
(vi)引張弾性率
熱可塑性エラストマー(D)の引張弾性率は、ASTM D638に準拠し、ASTM-IV射出スペシメン、23℃、引張り速度50mm/minで測定した。
(vii)エチレン含量[E(C)]及び[E(D)]
エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)のエチレン含量[E(C)]及び熱可塑性エラストマー(D)のエチレン含量[E(D)]は、上述した方法に基づき、13C-NMR測定で得られた積分強度から求めた。試料の調製と測定条件は以下の通りである。
試料であるエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)又は熱可塑性エラストマー(D)の200mgをo-ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(CBr)=4/1(体積比)2.4ml及び化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ溶解した。
13C-NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)製のAV400型NMR装置を用いて行った。
13C-NMR測定条件は、試料の温度120℃、パルス角を90°、パルス間隔を20秒、積算回数を512回とし、ブロードバンドデカップリング法で実施した。
(viii):プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)、成分(F1)及び成分(F2)のエチレン含量の算出
プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)、成分(F1)及び成分(F2)のエチレン含量は、上述した13C-NMRによるエチレン含量の測定法を用いて行った。
(ix)等温結晶化時間
等温結晶化時間は、示差走査熱量計(DSC)を用い、上述した方法で測定した。
なお、ポリプロピレン系樹脂(A)及び樹脂組成物(X5)の等温結晶化時間を測定する場合は、ポリプロピレン系樹脂(A)及び樹脂組成物(X5)をそれぞれ二軸押出機にて溶融混練し、ポリプロピレン系樹脂(A)及び樹脂組成物(X5)のペレットを得て、それを用いて等温結晶化時間を測定した。二軸押出機には、テクノベル社製KZW-15を用い、スクリュー回転数は400RPM、混練温度は、ホッパ下から80℃、120℃、200℃(以降、ダイス出口まで同温度)の設定とした。
2.加飾成形体の物性評価
(1)熱成形性の評価
三次元加飾熱成形時の加飾フィルムのドローダウン状態、並びに基体に加飾フィルムを貼着した加飾成形体の加飾フィルムの貼着状態を目視にて観察し、以下に示した基準で評価した。
○:三次元加飾熱成形時に、加飾フィルムがドローダウンせずに基体と加飾フィルムとの接触が接触面全面にて同時に行われたため、接触ムラが発生せず、均一に貼着されている。
△:三次元加飾熱成形時に、加飾フィルムが若干ドローダウンしたため、基体中心から加飾フィルムと接触し、基体上面端部に接触ムラが発生。
×:三次元加飾熱成形時に、加飾フィルムが大きくドローダウンしたため、基体全面に接触ムラが発生。
(2)樹脂成形体(基体)と加飾フィルムとの接着力
株式会社ニトムズ社製「クラフト粘着テープ No.712N」を幅75mm、長さ120mmに切り出し、樹脂成形体(基体)の端部より75mm×120mmの範囲で樹脂成形体(基体)に貼り付けてマスキング処理を施した(基体表面露出部は幅45mm、長さ120mm)。樹脂成形体(基体)のマスキング面が加飾フィルムと接触するように三次元加飾熱成形装置NGF-0406-SWに設置し、三次元加飾熱成形を行った。
得られた加飾成形体の加飾フィルム面を、粘着テープの長手方向に対して垂直方向にカッターを用いて10mm幅で基体表面までカットし、試験片を作成した。得られた試験片において、基体と加飾フィルムとの接着面は幅10mm×長さ45mmである。試験片の基体部と加飾フィルム部とが180°となるように引張試験機に取付け、200mm/minの引張速度で接着面の180°剥離強度測定を行い、剥離時又は破断時の最大強度(N/10mm)を5回測定し、平均した強度を接着力とした。試験は、23℃50%RHで行った。
(3)光沢(グロス)
加飾フィルムが貼着された加飾成形体の中央付近の光沢(グロス)を日本電色工業(株)社製GLOSS計Gloss Meter VG2000を用いて、入射角60°で測定した。測定方法はJIS-Z-8741に準拠した。また、あらかじめ同方法にて加飾成形前の加飾フィルムの表面光沢を測定しておき、両者の光沢差を算出することで、表面光沢の変化量を評価した。
(4)リサイクル性評価
得られた加飾成形体を粉砕し、樹脂成形体(基体)の製造と同様に射出成形によりリサイクル成形体を得、外観を目視で評価した。外観に優れるものを「○」とした。
(樹脂成形体(基体)の作製)
1.樹脂成形体に用いたポリプロピレン系樹脂
以下のポリプロピレン系樹脂を用いた。
(Z-1):プロピレン単独重合体(MFR=40g/10分、Tm=165℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)MA04H」
(Z-2):プロピレンエチレンブロック共重合体(MFR=30g/10分、Tm=164℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)NBC03HR」
(Z-3):ポリプロピレン系樹脂(Z-2)60重量%に、MFR=1.0のEBR(三井化学(株)社製 タフマー(登録商標)A0550S)を20重量%、無機フィラー(日本タルク(株)社製 タルクP-6、平均粒径4.0μm)を20重量%ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物
2.樹脂成形体(基体)の製造
ポリプロピレン系樹脂(Z-1)~(Z-3)を用い、以下の方法で射出成形体を得た。
射出成形機:東芝機械株式会社製「IS100GN」、型締め圧100トン
シリンダー温度:200℃
金型温度:40℃
射出金型:幅×高さ×厚さ=120mm×120mm×3mmの平板
状態調整:温度23℃、湿度50%RHの恒温恒湿室にて5日間保持
(試験例1)
[使用材料]
(1)ポリプロピレン系樹脂
以下のポリプロピレン系樹脂を用いた。
(A-1):メタロセン触媒によるプロピレン-α-オレフィン共重合体(MFR=7.0g/10分、Tm=125℃、Mw/Mn=2.5)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ウィンテック(登録商標)WFX4M」
(A-2):メタロセン触媒によるプロピレン-α-オレフィン共重合体(MFR=25g/10分、Tm=125℃、Mw/Mn=2.4)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ウィンテック(登録商標)WSX03」
(A-3):メタロセン触媒によるプロピレン-α-オレフィン共重合体(MFR=7.0g/10分、Tm=135℃、Mw/Mn=2.3)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ウィンテック(登録商標)WFW4M」
(A-4):メタロセン触媒によるプロピレン-α-オレフィン共重合体(MFR=30g/10分、Tm=145℃、Mw/Mn=2.4)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ウィンテック(登録商標)WMG03」
(B-1):チーグラー・ナッタ触媒によるプロピレン単独重合体(MFR=2.4g/10分、Tm=161℃、Tc=112℃)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FY6」
(B-2):チーグラー・ナッタ触媒によるプロピレン単独重合体(MFR=0.4g/10分、Tm=161℃、Tc=114℃、Mw/Mn=4.9)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)EA9」
(B-1-1):ポリプロピレン系樹脂(B-1)100重量部に、造核剤(ミリケン・ジャパン(株)製、商標名「Millad NX8000J」)を0.4重量部ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=2.4g/10分、Tm=164℃、Tc=124℃)
(B-1-2):ポリプロピレン系樹脂(B-1)96重量%に黒色顔料MB(ポリコール興業(株)製 EPP-K-120601)を4重量%ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=2.4g/10分、Tm=161℃、Tc=112℃)
(H-1):プロピレン単独重合体(MFR=10g/10分、Tm=161℃、引張弾性率=1600MPa)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FA3KM」
(H-1-1):ポリプロピレン系樹脂(A-1)100重量部に、造核剤(ミリケン・ジャパン(株)製、商標名「Millad NX8000J」)を0.4重量部ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=10g/10分、Tm=164℃)
(H-1-2):ポリプロピレン系樹脂(A-1)100重量部に、造核剤(新日本理化(株)製、商標名「ゲルオールMD」)を0.4重量部ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=10g/10分、Tm=164℃)
(H-1-3):ポリプロピレン系樹脂(A-1)100重量部に、造核剤((株)アデカ製、商品名「アデカスタブNA-11」)を0.2重量部ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=10g/10分、Tm=163℃)
(H-1-4):ポリプロピレン系樹脂(A-1)100重量部に、造核剤((株)アデカ製、商品名「アデカスタブNA-21」)を0.2重量部ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=10g/10分、Tm=163℃)
(H-1-5):ポリプロピレン系樹脂(A-1)100重量部に、造核剤(BASFジャパン(株)製、商品名「IRGACLEAR XT386」)を0.2重量部ブレンドしたポリプロピレン系樹脂組成物(MFR=10g/10分、Tm=163℃)
実施例1-1
・加飾フィルムの製造
口径30mm(直径)のシール層用押出機-1、及び口径40mm(直径)の押出機-2、及び口径30mm(直径)の表面加飾層用押出機-3が接続された、リップ開度0.8mm、ダイス幅400mmの3種3層Tダイを用いた。シール層用押出機-1にポリプロピレン系樹脂(A-1)を、押出機-2にポリプロピレン系樹脂(B-1)を、表面加飾層用押出機-3にポリプロピレン系樹脂(H-1-1)をそれぞれ投入し、樹脂温度240℃、シール層用押出機-1の吐出量を4kg/h、押出機-2の吐出量を8kg/h、表面加飾層用押出機-3の吐出量を4kg/hの条件で溶融押出を行った。
溶融押出されたフィルムを、80℃、3m/minで回転する冷却ロールに、シール層(I)が接するように冷却固化させ、厚さ50μmの表面加飾層(III)と、厚さ100μmの層(II)と、厚さ50μmのシール層(I)が積層された3層の未延伸フィルムを得た。
・三次元加飾熱成形
樹脂成形体(基体)5として、上記により得られたポリプロピレン系樹脂(Z-1)からなる射出成形体を用いた。
三次元加飾熱成形装置として、布施真空株式会社製「NGF-0406-SW」を用いた。図2~7に示すように、加飾フィルム1を、シール層(I)が基体(樹脂成形体5)に対向するとともに長手方向がフィルムのMD方向となるように、幅250mm×長さ350mmで切り出し、開口部のサイズが210mm×300mmのフィルム固定用の治具13にセットした。樹脂成形体5は、治具13よりも下方に位置するテーブル14上に設置された、高さ20mmのサンプル設置台の上に、ニチバン株式会社製「ナイスタック NW-K15」を介して貼り付けた。治具13とテーブル14を上下チャンバーボックス11及び12内に設置し、上下チャンバーボックス11及び12を閉じてチャンバーボックス内を密閉状態とした。チャンバーボックスは、加飾フィルム1を介して上下に分割されている。上下チャンバーボックス11及び12を真空吸引し、大気圧(101.3kPa)から1.0kPaまで減圧した状態で、上チャンバーボックス11上に設置された遠赤外線ヒータ15を出力80%で始動させて加飾フィルム1を加熱した。加熱中も真空吸引を継続し、最終的に0.1kPaまで減圧した。加飾フィルム1が加熱され一時的にたるみ、その後、張り戻るスプリングバック現象が終了してから5秒後に、下チャンバーボックス12内に設置されたテーブル14を上方に移動させて、樹脂成形体5を加飾フィルム1に押し付け、直後に上チャンバーボックス11内の圧力が270kPaとなるように圧縮空気を送り込んで樹脂成形体5と加飾フィルム1を密着させた。このようにして、樹脂成形体5の上面及び側面に加飾フィルム1が貼着された三次元加飾熱成形品(加飾成形体6)を得た。評価結果を表2に示す。
実施例1-2
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-2)に変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例1-3
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-3)に変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例1-4
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-4)に変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例1-5
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-5)に変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例1-6
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(B-2)に変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例1-7
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)のポリプロピレン系樹脂(A-1)を、ポリプロピレン系樹脂(A-2)に変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例1-8
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)のポリプロピレン系樹脂(A-1)を、ポリプロピレン系樹脂(A-3)に変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例1-9
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)のポリプロピレン系樹脂(A-1)を、ポリプロピレン系樹脂(A-4)に変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例1-10
口径30mm(直径)のシール層用押出機-1、及び口径40mm(直径)の押出機-2が接続された、リップ開度0.8mm、ダイス幅400mmの2種2層Tダイを用いた。シール層用押出機-1にポリプロピレン系樹脂(A-1)を、押出機-2にポリプロピレン系樹脂(B-1-1)をそれぞれ投入し、樹脂温度240℃、シール層用押出機-1の吐出量を4kg/h、押出機-2の吐出量を12kg/hの条件で溶融押出を行った。
溶融押出されたフィルムを、80℃、3m/minで回転する冷却ロールに、シール層(I)が接するように冷却固化させ、厚さ50μmのシール層(I)と、厚さ150μmの層(II)が積層された2層の未延伸フィルムを得た。
上記の加飾フィルム製造で得られた未延伸フィルムを用いて、実施例1-1と同様に三次元加飾熱成形を行い、評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例1-11
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(B-1-2)に変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例1-12
実施例1-1の三次元加飾熱成形において、基体をポリプロピレン系樹脂(Z-2)からなる射出成形体に変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例1-13
実施例1-1の三次元加飾熱成形において、基体をポリプロピレン系樹脂(Z-3)からなる射出成形体に変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
比較例1-1
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
比較例1-2
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
比較例1-3
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)のポリプロピレン系樹脂(A-1)を、ポリプロピレン系樹脂(B-2)に変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
比較例1-4
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)のポリプロピレン系樹脂(A-1)を、ポリプロピレン系樹脂(B-2)に変更し、さらに三次元加飾熱成形においてスプリングバック現象が終了してから50秒後に成形を行ったこと以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表2に示す。
Figure 0007115288000004
実施例1-1~1-13の加飾フィルムから得られた加飾成形体は、いずれかの層に造核剤を含有しており、シール層(I)中のポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR(A))が0.5g/10分を超え、かつ、層(II)中のポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR(B))がMFR(A)より小さいため、接触ムラがなく熱成形性に優れ、表面光沢及び接着力が良好であった。また、短時間の加飾熱成形であったため、造核剤の揮発を低減することができ、熱成形後においても高い表面光沢を維持しているものであった。さらに、得られた成形体はリサイクル性にも優れていた。実施例1-11の加飾フィルムから得られた加飾成形体は、層(II)が黒色に着色されているため、外観、意匠性に優れるものであった。
一方、いずれの層も造核剤を含んでいない比較例1-1の加飾フィルムは、加飾フィルムの表面光沢が低く、加飾成形後にはさらに表面がくすみ、表面光沢の低下が著しかった。MFR(B)がMFR(A)より大きい比較例1-2の加飾フィルムは、三次元加飾熱成形中に加飾フィルムがドローダウンしてしまい、熱成形性に劣っていた。得られた加飾成形体は外観に劣るものであり、接着力、表面光沢の評価は行わなかった。MFR(A)が0.5g/10分以下であり、かつ、MFR(B)がMFR(A)より大きい比較例1-3は、スプリングバック現象が終了してから5秒後に成形を行った場合、三次元加飾成形の加熱時間が短いため、良好な接着性が発現しなかった。比較例1-3と同じ加飾フィルムを用い、スプリングバック現象が終了してから50秒後に成形を行った比較例1-4は、三次元加飾成形の加熱時間を長くすることで、接着性は発現するものの、表面加飾層(III)に添加した造核剤が揮発してしまい、加飾成形後には表面がくすみ、表面光沢の低下が著しかった。
(試験例2)
[使用材料]
(試験例1)で使用したポリプロピレン系樹脂以外に、以下のポリプロピレン系樹脂を用いた。
(A-6):プロピレン-α-オレフィン共重合体(MFR=5.0g/10分、Tc=86℃、Mw/Mn=4.0)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FX4G」
(A-7):プロピレン-α-オレフィン共重合体(MFR=7.0g/10分、Tc=96℃、Mw/Mn=3.9)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FW4B」
(H-1):プロピレン単独重合体(MFR=10g/10分、Tm=161℃、Tc=116℃、引張弾性率=1600MPa)、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FA3KM」
実施例2-1
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)のポリプロピレン系樹脂(A-1)を、ポリプロピレン系樹脂(A-6)に変更し、三次元加飾熱成形においてスプリングバック現象が終了してから10秒後に成形を行ったこと以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表3に示す。
実施例2-2
実施例2-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-2)に変更した以外は、実施例2-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表3に示す。
実施例2-3
実施例2-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-3)に変更した以外は、実施例2-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表3に示す。
実施例2-4
実施例2-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-4)に変更した以外は、実施例2-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表3に示す。
実施例2-5
実施例2-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-5)に変更した以外は、実施例2-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表3に示す。
実施例2-6
実施例2-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)のポリプロピレン系樹脂(A-6)を、ポリプロピレン系樹脂(A-7)に変更した以外は、実施例2-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表3に示す。
実施例2-7
口径30mm(直径)のシール層用押出機-1、及び口径40mm(直径)の押出機-2が接続された、リップ開度0.8mm、ダイス幅400mmの2種2層Tダイを用いた。シール層用押出機-1にポリプロピレン系樹脂(A-6)を、押出機-2にポリプロピレン系樹脂(B-1-1)をそれぞれ投入し、樹脂温度240℃、シール層用押出機-1の吐出量を4kg/h、押出機-2の吐出量を12kg/hの条件で溶融押出を行った。
溶融押出されたフィルムを、80℃、3m/minで回転する冷却ロールに、シール層(I)が接するように冷却固化させ、厚さ50μmのシール層(I)と、厚さ150μmの層(II)が積層された2層の未延伸フィルムを得た。
上記の加飾フィルム製造で得られた未延伸フィルムを用いて、実施例2-1と同様に三次元加飾熱成形を行い、評価を行った。評価結果を表3に示す。
実施例2-8
実施例2-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(B-1-2)に変更した以外は、実施例2-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表3に示す。
実施例2-9
実施例2-1の三次元加飾熱成形において、基体をポリプロピレン系樹脂(Z-2)からなる射出成形体に変更した以外は、実施例2-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表3に示す。
実施例2-10
実施例2-1の三次元加飾熱成形において、基体をポリプロピレン系樹脂(Z-3)からなる射出成形体に変更した以外は、実施例2-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表3に示す。
比較例2-1
実施例2-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例2-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表3に示す。
比較例2-2
実施例2-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例2-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表3に示す。
Figure 0007115288000005
実施例2-1~2-10の加飾フィルムから得られた加飾成形体は、いずれかの層に造核剤を含有しており、シール層(I)中のポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR(A))が0.5g/10分を超え、かつ、層(II)中のポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR(B))がMFR(A)より小さく、さらに、シール層(I)中のポリプロピレン系樹脂の結晶化温度(Tc(A))が100℃未満であり、かつ、層(II)中のポリプロピレン系樹脂の結晶化温度(Tc(B))がTc(A)より高いため、接触ムラがなく熱成形性に優れ、表面光沢及び接着力が良好であった。また、短時間の加飾熱成形であったため、造核剤の揮発を低減することができ、熱成形後においても高い表面光沢を維持しているものであった。さらに、得られた成形体はリサイクル性にも優れていた。実施例2-8の加飾フィルムから得られた加飾成形体は、層(II)が黒色に着色されているため、外観、意匠性に優れるものであった。
一方、いずれの層も造核剤を含んでいない比較例2-1の加飾フィルムは、加飾フィルムの表面光沢が低く、加飾成形後にはさらに表面がくすみ、表面光沢の低下が著しかった。MFR(B)がMFR(A)より大きい比較例2-2の加飾フィルムは、三次元加飾熱成形中に加飾フィルムがドローダウンしてしまい、熱成形性に劣っていた。得られた加飾成形体は外観に劣るものであり、接着力、表面光沢の評価は行わなかった。
(試験例3)
[使用材料]
(試験例1)で使用した樹脂以外に、以下の樹脂を用いた。
(A-5):チーグラー・ナッタ触媒によるプロピレン-α-オレフィン共重合体(MFR=7.0g/10分、Tm=146℃、Tc=115℃、Mw/Mn=4.0、引張弾性率=1200MPa、結晶化開始温度=111℃、等温結晶化時間(t)=263秒(121℃で測定))、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FW3GT」
エチレン-α-オレフィンランダム共重合体
以下のエチレン-α-オレフィンランダム共重合体を用いた。
(C-1):エチレン-ブテンランダム共重合体(MFR=6.8g/10分、Tm=66℃、密度=0.885g/cm、エチレン含量=84重量%):三井化学(株)製、商品名「タフマーA4085S」
(C-2):エチレン-ブテンランダム共重合体(MFR=7.0g/10分、Tm=47℃、密度=0.860g/cm、エチレン含量=73重量%):三井化学(株)製、商品名「タフマーA4050S」
(C-3):エチレン-オクテンランダム共重合体(MFR=2.0g/10分、Tm=77℃、密度=0.885g/cm、エチレン含量=85重量%):デュポンダウ社製、商品名「エンゲージEG8003」
(C-4):エチレン-オクテンランダム共重合体(MFR=2.0g/10分、Tm=38℃、密度=0.860g/cm、エチレン含量=75重量%):デュポンダウ社製、商品名「エンゲージEG8842」
(C-5):エチレン-ヘキセンランダム共重合体(MFR=3.5g/10分、Tm=60℃、密度=0.880g/cm、エチレン含量=76重量%):日本ポリエチレン(株)製、商品名「カーネルKS340T」
(C-6):エチレン-プロピレンランダム共重合体(MFR=7.0g/10分、Tm=38℃、密度=0.860g/cm、エチレン含量=73重量%):三井化学(株)製、商品名「タフマーP0280」
実施例3-1
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)のポリプロピレン系樹脂(A-1)を、ポリプロピレン系樹脂(A-5)とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C-1)とを重量比が85:15となるようにブレンドしたものに変更し、三次元加飾熱成形においてスプリングバック現象が終了した直後(すなわちスプリングバック後の加熱時間が0秒)に成形を行ったこと以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-2
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-2)に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-3
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-3)に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-4
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-4)に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-5
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-5)に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-6
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(B-2)に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-7
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用したエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C-1)を、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C-2)に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-8
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用したエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C-1)を、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C-3)に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-9
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用したエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C-1)を、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C-4)に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-10
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用したエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C-1)を、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C-5)に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-11
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用したエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C-1)を、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C-6)に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-12
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)の樹脂の配合比をポリプロピレン系樹脂(A-5):エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C-1)=70:30としたこと以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-13
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)の樹脂の配合比をポリプロピレン系樹脂(A-5):エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C-1)=30:70としたこと以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-14
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用したポリプロピレン系樹脂(A-5)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-15
口径30mm(直径)のシール層用押出機-1、及び口径40mm(直径)の押出機-2が接続された、リップ開度0.8mm、ダイス幅400mmの2種2層Tダイを用いた。シール層用押出機-1にポリプロピレン系樹脂(A-5)とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C-1)とを重量比が85:15となるようにブレンドしたものを、押出機-2にポリプロピレン系樹脂(B-1-1)をそれぞれ投入し、樹脂温度240℃、シール層用押出機-1の吐出量を4kg/h、押出機-2の吐出量を12kg/hの条件で溶融押出を行った。
溶融押出されたフィルムを、80℃、3m/minで回転する冷却ロールに、シール層(I)が接するように冷却固化させ、厚さ50μmのシール層(I)と、厚さ150μmの層(II)が積層された2層の未延伸フィルムを得た。
上記の加飾フィルム製造で得られた未延伸フィルムを用いて、実施例3-1と同様に三次元加飾熱成形を行い、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-16
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(B-1-2)に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-17
実施例3-1の三次元加飾熱成形において、基体をポリプロピレン系樹脂(Z-2)からなる射出成形体に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例3-18
実施例3-1の三次元加飾熱成形において、基体をポリプロピレン系樹脂(Z-3)からなる射出成形体に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
比較例3-1
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
比較例3-2
実施例3-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例3-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表4に示す。
Figure 0007115288000006
実施例3-1~3-18の加飾フィルムから得られた加飾成形体は、いずれかの層に造核剤を含有しており、シール層(I)中のポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR(A))が0.5g/10分を超え、かつ、層(II)中のポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR(B))がMFR(A)より小さく、さらに、シール層(I)が、ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)との重量比率が97:3~5:95である樹脂組成物(X3)を含み、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)において、(c1)エチレン含量[E(C)]が65重量%以上、(c2)密度が0.850~0.950g/cm、(c3)メルトフローレート(MFR(C))が0.1~100g/10分であるため、接触ムラがなく熱成形性に優れ、表面光沢及び接着力が良好であった。また、短時間の加飾熱成形であったため、造核剤の揮発を低減することができ、熱成形後においても高い表面光沢を維持しているものであった。さらに、得られた成形体はリサイクル性にも優れていた。実施例3-16の加飾フィルムから得られた加飾成形体は、層(II)が黒色に着色されているため、外観、意匠性に優れるものであった。
一方、いずれの層も造核剤を含んでいない比較例3-1の加飾フィルムは、加飾フィルムの表面光沢が低く、加飾成形後にはさらに表面がくすみ、表面光沢の低下が著しかった。MFR(B)がMFR(A)より大きい比較例3-2の加飾フィルムは、三次元加飾熱成形中に加飾フィルムがドローダウンしてしまい、熱成形性に劣っていた。得られた加飾成形体は外観に劣るものであり、接着力、表面光沢の評価は行わなかった。
(試験例4)
[使用材料]
ポリプロピレン系樹脂
(試験例1)及び(試験例3)で使用したポリプロピレン系樹脂を使用した。
熱可塑性エラストマー(D)
以下の熱可塑性エラストマーを用いた。
(D-1):プロピレンを主成分とするプロピレン-ブテンランダム共重合体(MFR=7.0g/10分、Tm=75℃、密度=0.885g/cm、引張弾性率=290MPa、プロピレン含量=69重量%、ブテン含量=31重量%、エチレン含量[E]=0重量%):三井化学(株)製、商品名「タフマーXM7070」
(D-2):ブテン単独重合体(MFR=5.0g/10分、Tm=125℃、密度=0.915g/cm、引張弾性率=430MPa、エチレン含量[E]=0重量%):三井化学(株)製、商品名「タフマーBL4000」
(D-3):プロピレンを主成分とするプロピレンーエチレン-ブテンランダム共重合体(MFR=6.0g/10分、Tm=160℃、密度=0.868g/cm、引張弾性率=50MPa、プロピレン含量=84重量%、エチレン含量[E]=9重量%、ブテン含量=7重量%):三井化学(株)製、商品名「タフマーPN2060」
(D-4):プロピレンを主成分とするプロピレン-エチレンランダム共重合体(MFR=8.0g/10分、Tm=61℃、密度=0.871g/cm、引張弾性率=45MPa、プロピレン含量=89重量%、エチレン含量[E]=11重量%):エクソンモービルケミカル社製、商品名「VISTAMAXX3000」
実施例4-1
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)のポリプロピレン系樹脂(A-1)を、ポリプロピレン系樹脂(A-5)と熱可塑性エラストマー(D-1)とを重量比が85:15となるようにブレンドしたものに変更した以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-2
実施例4-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-2)に変更した以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-3
実施例4-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-3)に変更した以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-4
実施例4-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-4)に変更した以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-5
実施例4-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-5)に変更した以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-6
実施例4-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(B-2)に変更した以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-7
実施例4-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用した熱可塑性エラストマー(D-1)を、熱可塑性エラストマー(D-2)に変更した以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-8
実施例4-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用した熱可塑性エラストマー(D-1)を、熱可塑性エラストマー(D-3)に変更した以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-9
実施例4-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用した熱可塑性エラストマー(D-1)を、熱可塑性エラストマー(D-4)に変更した以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-10
実施例4-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)の樹脂の配合比をポリプロピレン系樹脂(A-5):熱可塑性エラストマー(D-1)=70:30としたこと以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-11
実施例4-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)の樹脂の配合比をポリプロピレン系樹脂(A-5):熱可塑性エラストマー(D-1)=30:70としたこと以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-12
実施例4-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用したポリプロピレン系樹脂(A-5)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-13
口径30mm(直径)のシール層用押出機-1、及び口径40mm(直径)の押出機-2が接続された、リップ開度0.8mm、ダイス幅400mmの2種2層Tダイを用いた。シール層用押出機-1にポリプロピレン系樹脂(A-5)と熱可塑性エラストマー(D-1)とを重量比が85:15となるようにブレンドしたものを、押出機-2にポリプロピレン系樹脂(B-1-1)をそれぞれ投入し、樹脂温度240℃、シール層用押出機-1の吐出量を4kg/h、押出機-2の吐出量を12kg/hの条件で溶融押出を行った。
溶融押出されたフィルムを、80℃、3m/minで回転する冷却ロールに、シール層(I)が接するように冷却固化させ、厚さ50μmのシール層(I)と、厚さ150μmの層(II)が積層された2層の未延伸フィルムを得た。
上記の加飾フィルム製造で得られた未延伸フィルムを用いて、実施例4-1と同様に三次元加飾熱成形を行い、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-14
実施例4-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(B-1-2)に変更した以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-15
実施例4-1の三次元加飾熱成形において、基体をポリプロピレン系樹脂(Z-2)からなる射出成形体に変更した以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例4-16
実施例4-1の三次元加飾熱成形において、基体をポリプロピレン系樹脂(Z-3)からなる射出成形体に変更した以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
比較例4-1
実施例4-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
比較例4-2
実施例4-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例4-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表5に示す。
Figure 0007115288000007
実施例4-1~4-16の加飾フィルムから得られた加飾成形体は、いずれかの層に造核剤を含有しており、シール層(I)中のポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR(A))が0.5g/10分を超え、かつ、層(II)中のポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR(B))がMFR(A)より小さく、さらに、シール層(I)が、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(D)との重量比率が97:3~5:95である樹脂組成物(X4)を含み、熱可塑性エラストマー(D)が、(d1)プロピレン及びブテンのうちの少なくとも1つを主成分とする熱可塑性エラストマーであり、(d2)密度が0.850~0.950g/cm、(d3)メルトフローレート(MFR(D))が0.1~100g/10分であり、(d4)引張弾性率がポリプロピレン系樹脂(A)よりも小さいため、接触ムラがなく熱成形性に優れ、表面光沢及び接着力が良好であった。また、短時間の加飾熱成形であったため、造核剤の揮発を低減することができ、熱成形後においても高い表面光沢を維持しているものであった。さらに、得られた成形体はリサイクル性にも優れていた。実施例4-14の加飾フィルムから得られた加飾成形体は、層(II)が黒色に着色されているため、外観、意匠性に優れるものであった。
一方、いずれの層も造核剤を含んでいない比較例4-1の加飾フィルムは、加飾フィルムの表面光沢が低く、加飾成形後にはさらに表面がくすみ、表面光沢の低下が著しかった。MFR(B)がMFR(A)より大きい比較例4-2の加飾フィルムは、三次元加飾熱成形中に加飾フィルムがドローダウンしてしまい、熱成形性に劣っていた。得られた加飾成形体は外観に劣るものであり、接着力、表面光沢の評価は行わなかった。
(試験例5)
[使用材料]
ポリプロピレン系樹脂
シール層(I)のポリプロピレン系樹脂として、以下のポリプロピレン系樹脂を用いた。
(A-1):プロピレン-α-オレフィン共重合体(MFR=7.0g/10分、Tm=125℃、結晶化開始温度=97℃、等温結晶化時間(t)=570秒(107℃で測定))、日本ポリプロ(株)製、商品名「ウィンテック(登録商標)WFX4M」
(A-5):プロピレン-α-オレフィン共重合体(MFR=7.0g/10分、Tm=146℃、結晶化開始温度=111℃、等温結晶化時間(t)=263秒(121℃で測定))、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FW3GT」
(A-8):プロピレンブロック共重合体(MFR=6.0g/10分、Tm=135℃、結晶化開始温度=99℃、等温結晶化時間(t)=478秒(109℃で測定))、日本ポリプロ(株)製、商品名「ウェルネクス(登録商標)RFG4VA」
(H-1):プロピレン単独重合体(MFR=10g/10分、Tm=161℃、結晶化開始温度=123℃、等温結晶化時間(t)=613秒(133℃で測定))、日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FA3KM」
層(II)及び表面加飾層(III)については、(試験例1)で使用したポリプロピレン系樹脂を使用した。
熱可塑性樹脂(E)
以下の熱可塑性樹脂を用いた。
(E-1):水添スチレン系エラストマー(HSBR):JSR(株)製、商品名「ダイナロン1320P」
(E-2):スチレン系エラストマー(SEBS):クレイトンポリマージャパン(株)製、商品名「クレイトンG1645」
(E-3):脂環族系炭化水素樹脂:荒川化学(株)製、商品名「アルコンーP125」
実施例5-1
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)のポリプロピレン系樹脂(A-1)を、ポリプロピレン系樹脂(A-5)と熱可塑性樹脂(E-1)とを重量比が50:50となるようにブレンドしたものに変更し、三次元加飾熱成形においてスプリングバック現象が終了した直後(すなわちスプリングバック後の加熱時間が0秒)に成形を行ったこと以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-2
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-2)に変更した以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-3
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-3)に変更した以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-4
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-4)に変更した以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-5
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-5)に変更した以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-6
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(B-2)に変更した以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-7
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用した熱可塑性樹脂(E-1)を、熱可塑性樹脂(E-2)に変更した以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-8
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用した熱可塑性樹脂(E-1)を、熱可塑性樹脂(E-3)に変更し、ポリプロピレン系樹脂(A-5)と熱可塑性樹脂(E-3)との配合比を85:15としたこと以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-9
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)の樹脂の配合比をポリプロピレン系樹脂(A-5):熱可塑性樹脂(E-1)=70:30としたこと以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-10
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)の樹脂の配合比をポリプロピレン系樹脂(A-5):熱可塑性樹脂(E-1)=30:70としたこと以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-11
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用したポリプロピレン系樹脂(A-5)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-12
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用したポリプロピレン系樹脂(A-5)を、ポリプロピレン系樹脂(A-1)に変更した以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-13
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用したポリプロピレン系樹脂(A-5)を、ポリプロピレン系樹脂(A-8)に変更し、ポリプロピレン系樹脂(A-8)と熱可塑性樹脂(E-1)との配合比を70:30としたこと以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-14
口径30mm(直径)のシール層用押出機-1、及び口径40mm(直径)の押出機-2が接続された、リップ開度0.8mm、ダイス幅400mmの2種2層Tダイを用いた。シール層用押出機-1にポリプロピレン系樹脂(A-5)と熱可塑性樹脂(E-1)とを重量比が50:50となるようにブレンドしたものを、押出機-2にポリプロピレン系樹脂(B-1-1)をそれぞれ投入し、樹脂温度240℃、シール層用押出機-1の吐出量を4kg/h、押出機-2の吐出量を12kg/hの条件で溶融押出を行った。
溶融押出されたフィルムを、80℃、3m/minで回転する冷却ロールに、シール層(I)が接するように冷却固化させ、厚さ50μmのシール層(I)と、厚さ150μmの層(II)が積層された2層の未延伸フィルムを得た。
上記の加飾フィルム製造で得られた未延伸フィルムを用いて、実施例5-1と同様に三次元加飾熱成形を行い、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-15
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(B-1-2)に変更した以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-16
実施例5-1の三次元加飾熱成形において、基体をポリプロピレン系樹脂(Z-2)からなる射出成形体に変更した以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
実施例5-17
実施例5-1の三次元加飾熱成形において、基体をポリプロピレン系樹脂(Z-3)からなる射出成形体に変更した以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
比較例5-1
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
比較例5-2
実施例5-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例5-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表6に示す。
Figure 0007115288000008
実施例5-1~5-17の加飾フィルムから得られた加飾成形体は、いずれかの層に造核剤を含有しており、シール層(I)中のポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR(A))が0.5g/10分を超え、かつ、層(II)中のポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR(B))がMFR(A)より小さく、さらに、シール層(I)が、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(E)との重量比率が97:3~5:95である樹脂組成物(X5)を含み、熱可塑性樹脂(E)が、(e1)脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基のうちの少なくとも1つを含有し、(x1)樹脂組成物(X5)の等温結晶化時間(t(X5))(秒)が、ポリプロピレン系樹脂(A)の等温結晶化時間(t(A))(秒)の1.5倍以上であるため、接触ムラがなく熱成形性に優れ、表面光沢及び接着力が良好であった。また、短時間の加飾熱成形であったため、造核剤の揮発を低減することができ、熱成形後においても高い表面光沢を維持しているものであった。さらに、得られた成形体はリサイクル性にも優れていた。実施例5-15の加飾フィルムから得られた加飾成形体は、層(II)が黒色に着色されているため、外観、意匠性に優れるものであった。
一方、いずれの層も造核剤を含んでいない比較例5-1の加飾フィルムは、加飾フィルムの表面光沢が低く、加飾成形後にはさらに表面がくすみ、表面光沢の低下が著しかった。MFR(B)がMFR(A)より大きい比較例5-2の加飾フィルムは、三次元加飾熱成形中に加飾フィルムがドローダウンしてしまい、熱成形性に劣っていた。得られた加飾成形体は外観に劣るものであり、接着力、表面光沢の評価は行わなかった。
(試験例6)
[使用材料]
(試験例1)で使用したポリプロピレン系樹脂以外に、以下のポリプロピレン系樹脂を用いた。
プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)の製造
加飾フィルムのシール層(I)に用いるプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)として、以下の製造例で得られたプロピレン-エチレンブロック共重合体(F-1)~(F-4)を用いた。重合条件及び重合結果を表7-1に、ポリマー分析の結果を表7-2に示す。
[製造例F-1:プロピレン-エチレンブロック共重合体(F-1)の製造]
触媒組成の分析
Ti含有量:試料を精確に秤量し、加水分解した上で比色法を用いて測定した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含有量を計算した。
ケイ素化合物含有量:試料を精確に秤量し、メタノールで分解した。ガスクロマトグラフィーを用いて標準サンプルと比較することにより、得られたメタノール溶液中のケイ素化合物濃度を求めた。メタノール中のケイ素化合物濃度と試料の重量から、試料に含まれるケイ素化合物の含有量を計算した。予備重合後の試料については、予備重合ポリマーを除いた重量を用いて含有量を計算した。
予備重合触媒の調製
(1)固体触媒の調製
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、マグネシウムジエトキシド[Mg(OEt)]を200g投入し、四塩化チタン(TiCl)を1Lゆっくりと添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ-n-ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。さらに、精製したn-ヘプタンを用いて、トルエンをn-ヘプタンで置換し、固体成分のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分のTi含有量は2.7重量%であった。
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分のスラリーを固体成分として100g導入した。精製したn-ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が25g/Lとなる様に調整した。四塩化珪素(SiCl)を50ml加え、90℃で1時間反応を行った。反応生成物を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄した。
その後、精製したn-ヘプタンを導入して液レベルを4Lに調整した。ここに、ジメチルジビニルシランを30ml、ジイソプロピルジメトキシシラン[i-PrSi(OMe)]を30ml、トリエチルアルミニウム(EtAl)のn-ヘプタン希釈液をEtAlとして80g添加し、40℃で2時間反応を行った。反応生成物を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒を得た。得られた固体触媒のスラリーの一部をサンプリングして乾燥し、分析を行った。固体触媒にはTiが1.2重量%、i-PrSi(OMe)が8.9重量%含まれていた。
(2)予備重合
上記で得られた固体触媒を用いて、以下の手順により予備重合を行った。上記のスラリーに精製したn-ヘプタンを導入して、固体触媒の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、EtAlのn-ヘプタン希釈液をEtAlとして10g添加し、280gのプロピレンを4時間かけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、さらに30分反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って予備重合触媒を得た。この予備重合触媒は、固体触媒1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この予備重合触媒のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.0重量%、i-PrSi(OMe)が8.3重量%含まれていた。
この予備重合触媒を用いて、以下の手順に従ってプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)の製造を行った。
(3)プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)の製造
内容積2mの流動床型重合槽が2個直列に繋がった2槽連続重合設備を用いてプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)の製造を行った。プロピレン-エチレンブロック共重合体(F-1)の製造条件は、表7-1の6A-1に記載のとおりである。使用するプロピレン、エチレン、水素、窒素は一般的な精製触媒を用いて精製したものを使用した。第1重合槽における成分(F1)の製造量、及び、第2重合槽における成分(F2)の製造量は重合槽の温度制御に使用する熱交換器の冷却水温度の値から求めた。
第1重合工程:プロピレン単独重合体からなる成分(F1)の製造
第1重合槽を用いてプロピレンの単独重合を行った。重合温度は65℃、全圧は3.0MPaG(ゲージ圧、以下同様)、パウダーホールド量は40kgとした。重合槽に連続的にプロピレン、水素、及び、窒素を供給し、プロピレン及び水素の濃度がそれぞれ70.83mol%、0.92mol%となる様に調整した。助触媒として、EtAlを5.0g/時間の速度で連続的に供給した。第1重合槽における成分(F1)の製造量が20.0kg/時間となる様に、上記で得られた予備重合触媒を重合槽に連続的に供給した。生成した成分(F1)は連続的に抜き出しを行い、パウダーホールド量が40kgで一定となる様に調整した。第1重合槽から抜き出した成分(F1)は第2重合槽に連続的に供給し、プロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F2)の製造を引き続いて行った。
第2重合工程:プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(F2)の製造
第2重合槽を用いてプロピレンとエチレンのランダム共重合を行った。重合温度は65℃、全圧は2.0MPaG、パウダーホールド量は40kgとした。重合槽に連続的にプロピレン、エチレン、水素、及び、窒素を供給し、プロピレン、エチレン、及び、水素の濃度がそれぞれ54.29mol%、17.14mol%、0.41mol%となる様に調整した。重合抑制剤であるエタノールを連続的に供給することによって、第2重合槽におけるプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(F2)の製造量が6.7kg/hとなる様に調整した。こうして生成したプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)は連続的に抜き出しを行い、パウダーホールド量が40kgで一定となる様に調整を行った。第2重合槽から抜き出したプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)は、さらに乾燥機に移送し、充分に乾燥を行った。
生成したプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)の一部を分析した所、MFR(F)は7.0g/10min、エチレン含有量E(F)は9.5重量%であった。第1重合工程の製造量と第2重合工程の製造量から、成分(F1)の重量比率W(F1)と成分(F2)の重量比率W(F2)を求めた所、それぞれ、75重量%、25重量%であった。
こうして得られたW(F1)、W(F2)、E(F)から、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(F2)のエチレン含有量E(F2)を計算した。
計算には以下の式を使用した。
E(F2)={E(F)-E(F1)×W(F1)/100}÷
(W(F2)/100)
(ここで、成分(F1)はプロピレン単独重合体なのでE(F1)は0重量%である。また上記の式は上述のE(F)について記載したものをE(F2)についてそれぞれ整理しなおしたものである。)
エチレン含有量E(F2)は38.0重量%であった。
[製造例F-2及びF-3:プロピレン-エチレンブロック共重合体(F-2)及び(F-3)の製造]
表7-1の6A-2及び6A-3に記載の条件をそれぞれ用いた以外はプロピレン-エチレンブロック共重合体(F-1)の製造例と同様にして、プロピレン-エチレンブロック共重合体(F-2)及び(F-3)の製造を行った。
Figure 0007115288000009
[製造例F-4:プロピレン-エチレンブロック共重合体F-4)の製造]
予備重合触媒の調製
(1)珪酸塩の化学処理
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm、粒度分布=10~60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を超えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
(2)珪酸塩の乾燥
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様、乾燥条件は以下の通りである。
回転筒:円筒状 内径50mm 加温帯550mm(電気炉)
かき上げ翼付き回転数:2rpm
傾斜角:20/520
珪酸塩の供給速度:2.5g/分
ガス流速:窒素 96リットル/時間
向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
(3)触媒の調製
撹拌及び温度制御装置を有する内容積16リットルのオートクレーブを窒素で充分置換した。ここに、乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1,160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で撹拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2,000mlに調製した。次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。平行して、(r)-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル}]ジルコニウム2,180mg(0.3mM)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)33.1mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間撹拌後、混合ヘプタンを追加して5,000mlに調製した。
(4)予備重合/洗浄
続いて、槽内温度を40℃昇温し、温度が安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを2,400mlデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5600ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5600ml除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mモル/リットル、ジルコニウム(Zr)濃度は8.6×10-6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M)のヘプタン溶液を170ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒が得られた。
(5)プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)の製造
第1重合工程:プロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F1)の製造
撹拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)を十分に乾燥し、内部を窒素ガスで十分に置換した。ポリプロピレン粉体床の存在下、回転数30rpmで撹拌しながら、反応器の上流部に調整した予備重合触媒を(予備重合パウダーを除いた固体触媒量として)0.444g/時間、トリイソブチルアルミニウムを15.0mmol/時間で連続的に供給した。反応器の温度を65℃、圧力を2.00MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.058、水素濃度が150ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、定常状態になった際の重合体抜き出し量は10.0kg/時間であった。
第1重合工程で得られたプロピレン-エチレンランダム共重合体を分析したところ、エチレン含有量は1.7重量%であった。
第2重合工程:プロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F2)の製造
撹拌羽根を有する横型反応器(L/D=6、内容積100リットル)に、第1重合工程より抜き出したプロピレン-エチレン共重合体を連続的に供給した。回転数25rpmで撹拌しながら、反応器の温度を70℃、圧力を1.88MPaGに保ち、且つ反応器内気相部のエチレン/プロピレンモル比が0.450、水素濃度が300ppmになるように、モノマー混合ガスを連続的に反応器内に流通させ、気相重合を行った。反応によって生じた重合体パウダーは、反応器内の粉体床量が一定になるように、反応器下流部より連続的に抜き出した。この時、重合体抜き出し量が18.0kg/時間になるように活性抑制剤として酸素を供給し、第2重合工程での重合反応量を制御した。
こうして得られたプロピレン-エチレンブロック共重合体(F-4)を分析したところ、MFRは7.0g/10分、エチレン含有量は6.3重量%であった。
前記のプロピレン-エチレンブロック共重合体(F-1)~(F-4)のポリマー分析の結果を表7-2に示す。
Figure 0007115288000010
プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)のペレット化
製造例F-1~F-4で得られた各々のプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)100重量部に対し、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.05重量部、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト0.10重量部、ステアリン酸カルシウム0.05重量部をタンブラーにてそれぞれ混合し均一化し、得られた混合物を35mm径の二軸押出機により230℃で溶融混練し、プロピレン-エチレンブロック共重合体F-1~F-4の各ペレットを得た。
実施例6-1
実施例1-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)のポリプロピレン系樹脂(A-1)を、プロピレン-エチレンブロック共重合体(F-1)に変更し、三次元加飾熱成形においてスプリングバック現象が終了した直後(すなわちスプリングバック後の加熱時間が0秒)に成形を行ったこと以外は、実施例1-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表8に示す。
実施例6-2
実施例6-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-2)に変更した以外は、実施例6-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表8に示す。
実施例6-3
実施例6-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-3)に変更した以外は、実施例6-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表8に示す。
実施例6-4
実施例6-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-4)に変更した以外は、実施例6-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表8に示す。
実施例6-5
実施例6-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1-5)に変更した以外は、実施例6-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表8に示す。
実施例6-6
実施例6-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(B-2)に変更した以外は、実施例6-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表8に示す。
実施例6-7
実施例6-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用したプロピレン-エチレンブロック共重合体(F-1)を、プロピレン-エチレンブロック共重合体(F-2)に変更した以外は、実施例6-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表8に示す。
実施例6-8
実施例6-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用したプロピレン-エチレンブロック共重合体(F-1)を、プロピレン-エチレンブロック共重合体(F-3)に変更した以外は、実施例6-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表8に示す。
実施例6-9
実施例6-1の加飾フィルムの製造において、シール層(I)に使用したプロピレン-エチレンブロック共重合体(F-1)を、プロピレン-エチレンブロック共重合体(F-4)に変更した以外は、実施例6-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表8に示す。
実施例6-10
口径30mm(直径)のシール層用押出機-1、及び口径40mm(直径)の押出機-2が接続された、リップ開度0.8mm、ダイス幅400mmの2種2層Tダイを用いた。シール層用押出機-1にプロピレン-エチレンブロック共重合体(F-1)を、押出機-2にポリプロピレン系樹脂(B-1-1)をそれぞれ投入し、樹脂温度240℃、シール層用押出機-1の吐出量を4kg/h、押出機-2の吐出量を12kg/hの条件で溶融押出を行った。
溶融押出されたフィルムを、80℃、3m/minで回転する冷却ロールに、シール層(I)が接するように冷却固化させ、厚さ50μmのシール層(I)と、厚さ150μmの層(II)が積層された2層の未延伸フィルムを得た。
上記の加飾フィルム製造で得られた未延伸フィルムを用いて、実施例6-1と同様に三次元加飾熱成形を行い、評価を行った。評価結果を表8に示す。
実施例6-11
実施例6-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(B-1-2)に変更した以外は、実施例6-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表8に示す。
実施例6-12
実施例6-1の三次元加飾熱成形において、基体をポリプロピレン系樹脂(Z-2)からなる射出成形体に変更した以外は、実施例6-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表8に示す。
実施例6-13
実施例6-1の三次元加飾熱成形において、基体をポリプロピレン系樹脂(Z-3)からなる射出成形体に変更した以外は、実施例6-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表8に示す。
比較例6-1
実施例6-1の加飾フィルムの製造において、表面加飾層のポリプロピレン系樹脂(H-1-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例6-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表8に示す。
比較例6-2
実施例6-1の加飾フィルムの製造において、層(II)のポリプロピレン系樹脂(B-1)を、ポリプロピレン系樹脂(H-1)に変更した以外は、実施例6-1と同様に成形、評価を行った。評価結果を表8に示す。
Figure 0007115288000011
実施例6-1~6-13の加飾フィルムから得られた加飾成形体は、いずれかの層に造核剤を含有しており、シール層(I)中のポリプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR(A))が0.5g/10分を超え、かつ、層(II)中のポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR(B))がMFR(A)より小さく、さらに、ポリプロピレン系樹脂(A)がプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)であり、該共重合体(F)において、(f1)融解ピーク温度(Tm(F))が110~170℃であり、(f2)プロピレン単独重合体又はプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F1)を5~97重量%、成分(F1)よりもエチレン含量が多いプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F2)を3~95重量%含有するため、接触ムラがなく熱成形性に優れ、表面光沢及び接着力が良好であった。また、短時間の加飾熱成形であったため、造核剤の揮発を低減することができ、熱成形後においても高い表面光沢を維持しているものであった。さらに、得られた成形体はリサイクル性にも優れていた。実施例6-11の加飾フィルムから得られた加飾成形体は、層(II)が黒色に着色されているため、外観、意匠性に優れるものであった。
一方、いずれの層も造核剤を含んでいない比較例6-1の加飾フィルムは、加飾フィルムの表面光沢が低く、加飾成形後にはさらに表面がくすみ、表面光沢の低下が著しかった。MFR(B)がMFR(A)より大きい比較例6-2の加飾フィルムは、三次元加飾熱成形中に加飾フィルムがドローダウンしてしまい、熱成形性に劣っていた。得られた加飾成形体は外観に劣るものであり、接着力、表面光沢の評価は行わなかった。
本発明の加飾フィルム及びそれを用いた加飾成形体の製造方法は、三次元加飾成形体及びその製造に使用することができる。
1 加飾フィルム
2 層(II)
3 シール層(I)
4 表面加飾層(III)
5 樹脂成形体(加飾対象、基体)
6 加飾成形体
11 上チャンバーボックス
12 下チャンバーボックス
13 治具
14 テーブル
15 ヒータ

Claims (19)

  1. 樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための造核剤を含有する加飾フィルムであって、該加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)を含有するシール層(I)及びポリプロピレン系樹脂(B)を含有する層(II)を含み、
    加飾フィルムの表面層は、造核剤を含み、
    前記ポリプロピレン系樹脂(A)は下記要件(a1)を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂(B)は下記要件(b1)を満たし、
    前記シール層(I)は、ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)との重量比率が97:3~5:95である樹脂組成物(X3)を含み、
    前記エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)は下記要件(c1)~(c3)を満たす加飾フィルム。
    (a1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(A))は、0.5g/10分を超える。
    (b1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))とMFR(A)とは、関係式(b-1)を満たす。
    MFR(B)<MFR(A) ・・・式(b-1)
    (c1)エチレン含量[E(C)]は、65重量%以上である。
    (c2)密度は、0.850~0.950g/cm である。
    (c3)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(C))は、0.1~100g/10分である。
  2. 樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための造核剤を含有する加飾フィルムであって、該加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)を含有するシール層(I)及びポリプロピレン系樹脂(B)を含有する層(II)を含み、
    加飾フィルムの表面層は、造核剤を含み、
    前記ポリプロピレン系樹脂(A)は下記要件(a1)を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂(B)は下記要件(b1)を満たし、
    前記シール層(I)は、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(D)との重量比率が97:3~5:95である樹脂組成物(X4)を含み、
    前記熱可塑性エラストマー(D)は下記要件(d1)~(d4)を満たす加飾フィルム。
    (a1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(A))は、0.5g/10分を超える。
    (b1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))とMFR(A)とは、関係式(b-1)を満たす。
    MFR(B)<MFR(A) ・・・式(b-1)
    (d1)プロピレン及びブテンのうちの少なくとも1つを主成分とする熱可塑性エラストマーである。
    (d2)密度は0.850~0.950g/cm である。
    (d3)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(D))は、0.1~100g/10分である。
    (d4)引張弾性率がポリプロピレン系樹脂(A)よりも小さい。
  3. 樹脂成形体上に熱成形によって貼着するための造核剤を含有する加飾フィルムであって、該加飾フィルムは、ポリプロピレン系樹脂(A)を含有するシール層(I)及びポリプロピレン系樹脂(B)を含有する層(II)を含み、
    加飾フィルムの表面層は、造核剤を含み、
    前記ポリプロピレン系樹脂(A)は下記要件(a1)を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂(B)は下記要件(b1)を満たし、
    前記シール層(I)は、ポリプロピレン系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(E)との重量比率が97:3~5:95である樹脂組成物(X5)を含み、
    前記熱可塑性樹脂(E)は下記要件(e1)を満たし、前記樹脂組成物(X5)は下記要件(x1)を満たす加飾フィルム。
    (a1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(A))は、0.5g/10分を超える。
    (b1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(B))とMFR(A)とは、関係式(b-1)を満たす。
    MFR(B)<MFR(A) ・・・式(b-1)
    (e1)脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基のうちの少なくとも1つを含有する。
    (x1)示差熱走査型熱量計(DSC)で求めた樹脂組成物(X5)の等温結晶化時間(t(X5))(秒)が、以下の式(x-1)を満たす。
    t(X5)≧1.5×t(A) ・・・式(x-1)
    (式中t(A)はポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化開始温度よりも10℃高い温度で測定したポリプロピレン系樹脂(A)の等温結晶化時間(秒)を表し、t(X5)はポリプロピレン系樹脂(A)の結晶化開始温度よりも10℃高い温度で測定した樹脂組成物(X5)の等温結晶化時間(秒)である。)
  4. 前記造核剤が、芳香族カルボン酸金属塩、芳香族リン酸金属塩、ソルビトール系誘導体、ノニトール誘導体、アミド系化合物、ロジンの金属塩から選択される請求項1~3のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
  5. 前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、さらに下記要件(a2)~(a4)を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂(B)は、さらに下記要件(b2)を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
    (a2)メタロセン触媒系プロピレン系重合体である。
    (a3)融解ピーク温度(Tm(A))は、150℃未満である。
    (a4)GPC測定により得られる分子量分布(Mw/Mn(A))は、1.5~3.5である。
    (b2)融解ピーク温度(Tm(B))とTm(A)とは、関係式(b-2)を満たす。
    Tm(B)>Tm(A) ・・・式(b-2)
  6. 前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、さらに下記要件(a5)を満たし、前記ポリプロピレン系樹脂(B)は、さらに下記要件(b3)を満たす、請求項1~のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
    (a5)結晶化温度(Tc(A))は、100℃未満である。
    (b3)結晶化温度(Tc(B))とTc(A)とは、関係式(b-3)を満たす。
    Tc(B)>Tc(A) ・・・式(b-3)
  7. 前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、下記要件(f1)及び(f2)を満たすプロピレン-エチレンブロック共重合体(F)である、請求項1~のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
    (f1)融解ピーク温度(Tm(F))が、110~170℃である。
    (f2)プロピレン単独重合体又はプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F1)を5~97重量%、前記成分(F1)よりもエチレン含量が多いプロピレン-エチレンランダム共重合体からなる成分(F2)を3~95重量%含有する。
  8. 前記ポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレン-α-オレフィン共重合体である、請求項1~のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
  9. 前記Tm(A)は、140℃以下である、請求項に記載の加飾フィルム。
  10. 前記エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)は、さらに下記要件(c4)及び(c5)のうちの少なくとも1つの要件を満たす、請求項に記載の加飾フィルム。
    (c4)融解ピーク温度(Tm(C))は、30~130℃である。
    (c5)エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとのランダム共重合体である。
  11. 前記熱可塑性エラストマー(D)は、エチレン含量が50wt%未満であるプロピレン-エチレン共重合体、エチレン含量が50wt%未満であるブテン-エチレン共重合体、エチレン含量が50wt%未満であるプロピレン-エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、及びブテン単独重合体からなる群から選択される少なくとも1つの共重合体である、請求項に記載の加飾フィルム。
  12. 前記熱可塑性エラストマー(D)は、さらに下記要件(d5)を満たす、請求項2又は11に記載の加飾フィルム。
    (d5)融解ピーク温度(Tm(D))が30~170℃である。
  13. 前記熱可塑性樹脂(E)は、スチレン系エラストマーである、請求項に記載の加飾フィルム。
  14. 前記熱可塑性樹脂(E)は、脂環族系炭化水素樹脂である、請求項に記載の加飾フィルム。
  15. 前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)は、さらに下記要件(f3)~(f5)のうちの少なくとも1つの要件を満たす、請求項に記載の加飾フィルム。
    (f3)プロピレン-エチレンブロック共重合体(F)中のエチレン含量が0.15~85重量%である。
    (f4)前記成分(F1)のエチレン含量が0~6重量%の範囲にある。
    (f5)前記成分(F2)のエチレン含量が、5~90重量%の範囲にある。
  16. 前記層(II)の、前記樹脂成形体との貼着面側とは反対面側に、造核剤を含む表面加飾層樹脂からなる表面加飾層(III)を有する、請求項1~1のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
  17. 前記表面加飾層(III)は、下記要件(h1)を満たすポリプロピレン系樹脂(H)からなる請求項1に記載の加飾フィルム。
    (h1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)(MFR(H))とMFR(B)とは、関係式(h-1)を満たす。
    MFR(H)>MFR(B) ・・・式(h-1)
  18. 請求項1~1のいずれか一項に記載の加飾フィルムを準備するステップ、
    樹脂成形体を準備するステップ、
    減圧可能なチャンバーボックス中に、前記樹脂成形体及び前記加飾フィルムをセットするステップ、
    前記チャンバーボックス内を減圧するステップ、
    前記加飾フィルムを加熱軟化させるステップ、
    前記樹脂成形体に前記加飾フィルムを押し当てるステップ、並びに
    前記減圧したチャンバーボックス内を大気圧に戻す又は加圧するステップ
    を含む加飾成形体の製造方法。
  19. 前記樹脂成形体は、プロピレン系樹脂組成物からなる、請求項1に記載の加飾成形体の製造方法。
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