JP6352167B2 - 露出型柱脚構造 - Google Patents

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Description

本発明は、露出型柱脚構造に関する。
従来より、鉄骨造や鋼管コンクリート構造等における建築物の柱をベースプレートを介して基礎コンクリートに固着する露出型柱脚構造が実用化されており、このような露出型柱脚構造が、戸建住宅等の小規模鉄骨造建築物に多く用いられている。小規模鉄骨造建築物では、狭小地において建築面積を大きく取るために、基礎柱型の幅をできるだけ小さくすることが求められている。このため、現在においては、4本のアンカーボルトを配置して基礎柱型の幅を小さくすることが提案されている。そして、4本のアンカーボルトを配置した柱脚の中でも高い耐震性が要求される柱脚においては、例えばSD490の鋼種からなる高強度で太径のアンカーボルトが採用されている。
ところで、基礎柱型の高さは、アンカーボルトの定着長さに比例するが、上述した高強度・太径のアンカーボルトを採用すると、太径のために定着長さが長くなり、これに伴って基礎柱型の高さが高くなり、基礎梁成と基礎柱型の高さに段差が生じるため、施工が煩雑となるという問題があった。また、基礎柱型に立ち上がりが生じる場合は、意匠的に好ましくない。
このため、高強度・太径のアンカーボルトの短尺化の需要が高まっている。近年においては、SD490鋼種からなる高強度のアンカーボルトの定着長さを短縮するために、ベースプレートの各隅部にアンカーボルトを2本ずつ(計8本)配置した露出型柱脚構造が提案されている(特許文献1参照)。
特許第4041435号公報
しかし、特許文献1に記載された露出型柱脚構造では、計8本のアンカーボルトを配置することから、基礎柱型の幅が小さい場合には配筋性が悪く、アンカーボルトと立ち上がり筋や梁主筋が混み合うため、所望のアンカーボルトの定着耐力を発揮する前にコンクリートの剥落等も生じ易くなるという問題がある。このため、上記問題を解決しつつ、アンカーボルトの本数を抑え、アンカーボルトの定着長さを短縮する技術が待望されていた。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、アンカーボルトの抜け出しやコンクリートの割裂破壊を抑制しつつ、アンカーボルトの本数を抑え定着長さを短縮することができる露出型柱脚構造を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明に係る露出型柱脚構造は、基礎コンクリートに定着させる複数のアンカーボルトを用いて、建築物の柱の下端部に一体的に設けられた平面視略矩形状のベースプレートを締め付け固定することにより、柱を立設するものであって、アンカーボルトの下端部に配置される下部定着板と、複数のアンカーボルトによって囲まれた領域よりも外側の領域に鉛直方向に配置され、かつ、下部定着板からのコーン状破壊ラインを跨ぐように配置される鉛直鉄筋と、鉛直鉄筋の周囲に沿うように水平方向に配置される水平鉄筋と、を備え、アンカーボルトは、SD490の鋼種から構成されるとともにベースプレートの各隅部のみに一本ずつ配置され、下部定着板の上方領域において、基礎コンクリートの体積に対する鉛直鉄筋及び水平鉄筋の体積の割合が1.48〜1.93%に設定され、かつ、基礎コンクリートの体積に対する水平鉄筋の体積の割合が0.64〜0.84%に設定されているものである。
かかる構成を採用すると、下部定着板の上方領域において、基礎コンクリートの体積(柱型体積)に対する鉛直・水平鉄筋の体積の割合が特定の範囲に設定され、かつ、柱型体積に対する水平鉄筋の体積の割合が特定の割合に設定されているため、アンカーボルトの抜け出しやコンクリートの割裂破壊を抑制しつつ、アンカーボルトの本数を4本に抑えかつその定着長さを短縮する(例えば直径の11.5倍程度に抑える)ことができる。このようにアンカーボルトの本数を抑えて定着長さを短縮することにより、施工に必要な掘削量を低減させるとともに鋼材量やコンクリート量を低減させることができるので、施工に要する費用や時間を節減することができる。柱型体積に対する鉛直・水平鉄筋の体積の割合が1.48%未満であったり水平鉄筋の割合が0.64%未満であったりすると、鉄筋による周囲のコンクリート拘束が弱まりアンカーボルトの抜け出しが発生する。一方、柱型体積に対する鉛直・水平鉄筋の体積の割合が1.93%を超えたり水平鉄筋の体積の割合が0.84%を超えたりすると、過密配筋によるコンクリートの割裂破壊が生じることに加え材料の浪費や施工性の低下が懸念される。
本発明に係る露出型柱脚構造において、引張側のアンカーボルトの降伏耐力をABt、鉛直鉄筋の降伏耐力をT、水平鉄筋の降伏耐力をHとした場合に、以下の関係式
1.01≦(T+H)/ABt
が満たされるようにアンカーボルト、鉛直鉄筋及び水平鉄筋の仕様を設定することができる。
かかる構成を採用すると、降伏耐力に関する特定の関係式が満たされるようにアンカーボルト、鉛直鉄筋及び水平鉄筋の仕様(本数、径、材質等)を設定することができるため、充分な定着耐力を確保することができる。
本発明に係る露出型柱脚構造において、基礎コンクリート内に埋設される第一の部分と、基礎コンクリート内に埋設されない第二の部分と、を有し、第二の部分の径が第一の部分の径よりも小さく設定されているアンカーボルトを採用することができる。
かかる構成を採用すると、アンカーボルトの基礎コンクリート内に埋設されない小径の部分(第二の部分)に応力を集中させることができるため、第二の部分で引張変形やせん断変形を集中的に発生させることができる。従って、例えば過大なせん断力がアンカーボルトに作用した場合においても、第二の部分のみが十分に塑性変形する間、アンカーボルトの基礎コンクリートに埋設される大径の部分(第一の部分)においては、その全長にわたり付着状態を維持できるため、アンカーボルトを短くしても定着耐力を確保することができる。
本発明に係る露出型柱脚構造において、ベースプレートの各隅部に、アンカーボルトを挿通させる挿通孔を設け、挿通孔と、挿通孔に挿通されるアンカーボルトと、の間に形成される空間にグラウトを充填することができる。
かかる構成を採用すると、ベースプレートの各隅部に設けられた挿通孔と、この挿通孔に挿通されるアンカーボルトと、の間に形成される空間にグラウトが充填されるため、グラウトが充填されていない場合に懸念されるベースプレートの挿通孔とアンカーボルトとの接触箇所に発生する局所的な応力集中が緩和され、早期に破断することがなくなる。
本発明によれば、アンカーボルトの抜け出しやコンクリートの割裂破壊を抑制しつつ、アンカーボルトの本数を抑え定着長さを短縮することができる露出型柱脚構造を提供することが可能となる。
本発明の実施形態に係る露出型柱脚構造の構成を説明するための側断面図である。 本発明の実施形態に係る露出型柱脚構造の基礎コンクリート部分の断面図(図1のII-II部分の断面図)である。 本発明の実施形態に係る露出型柱脚構造にせん断力が作用してアンカーボルトの下挽部が局所的に変形した状態を示す説明図である。 従来の露出型柱脚構造にせん断力が作用してアンカーボルトが変形した状態を示す説明図である。 グラウト充填工程を説明するための説明図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態はあくまでも好適な適用例であって、本発明の適用範囲がこれに限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る露出型柱脚構造1は、図1に示すように、基礎コンクリートCに定着させる複数のアンカーボルト10を用いて、建築物の柱Pの下端部に一体的に設けられた平面視略矩形状のベースプレート20を締め付け固定することにより、柱Pを立設するものである。
アンカーボルト10は、SD490の鋼種から構成されており、図1及び図2に示すように、ベースプレート20の各隅部のみに一本ずつ(計4本)配置される。各アンカーボルト10は、基礎コンクリートC内に埋設される第一の部分11と、基礎コンクリートC内に埋設されない第二の部分12と、を有している。アンカーボルト10の第一の部分11は、図3に示すように、周面に節11aが形成された竹節形状を有する異形部である(なお、図1では節11aの図示を省略している)。一方、アンカーボルト10の第二の部分12は、第一の部分11よりも径が小さく節が形成されていない下挽部である。
図4に示すような従来の均一な径を有するアンカーボルト100に過大なせん断力が作用すると、基礎コンクリートC内に埋設される部分110にまで変形がおよび、有効な付着部分(有効定着長さL)が減少して充分な定着耐力を確保することができない。これに対し、本実施形態におけるアンカーボルト10は、基礎コンクリートC内に埋設されない第二の部分12が第一の部分11よりも小径とされているため、図3に示すように第二の部分12に応力を集中させることができ、第二の部分12で引張変形やせん断変形を集中的に発生させることができる。このため、過大なせん断力がアンカーボルト10に作用した場合においても、アンカーボルト10の第一の部分11では有効な付着状態(有効定着長さL)を維持することができ、充分な定着耐力を確保することができる。
各アンカーボルト10の下端部には、鋼板等から構成された下部定着板30が配置・固定されている。基礎コンクリートC中のアンカーボルト10に引張力が作用すると、アンカーボルト10の下端部に固定された下部定着板30を介して基礎コンクリートCに応力がかかり、この応力が基礎コンクリートCの所定のせん断耐力を超えると、下部定着板30から45°上方向に基礎コンクリート1が破壊される所謂「コーン状破壊」が発生することが知られている。本実施形態においては、コーン状破壊ラインを跨ぐように鉛直鉄筋41を鉛直方向に配置することにより、コーン状破壊の発生を抑制するようにしている。
鉛直鉄筋41は、図1及び図2に示すように、4本のアンカーボルト10で囲まれた領域よりも外側の領域に、所定間隔で複数配置されている。鉛直鉄筋41の本数は、後述する体積条件及び耐力関係式を満たすように適宜設定することができる。本実施形態では、図1及び図2に示すように12本の鉛直鉄筋41を配置している。
鉛直鉄筋41の周囲には、図1及び図2に示すように、水平鉄筋42が配置されている。水平鉄筋42は、鉛直方向に配置された鉛直鉄筋41の外側を囲うように水平方向に配置されており、鉛直鉄筋41を拘束して定着耐力を高めるように機能する。水平鉄筋42の本数は、後述する体積条件及び耐力関係式を満たすように適宜設定することができる。本実施形態においては、図1及び図2に示すように、下部定着板30の上方領域Aに5本の水平鉄筋42を配置している。
本実施形態においては、下部定着板30の上方領域Aにおいて、基礎コンクリートCの体積(柱型体積)VCに対する鉛直鉄筋41及び水平鉄筋42の体積VRの割合を1.48〜1.93%に設定するとともに、柱型体積VCに対する水平鉄筋42の体積VRHの割合を0.64〜0.84%に設定している。柱型体積VCに対する鉛直・水平鉄筋41・42の体積VRの割合が1.48%未満であったり水平鉄筋42の割合VRHが0.64%未満であったりすると、鉄筋による周囲のコンクリート拘束が弱まりアンカーボルト10の抜け出しが発生する。一方、柱型体積VCに対する鉛直・水平鉄筋41・42の体積VRの割合が1.93%を超えたり水平鉄筋42の体積VRHの割合が0.84%を超えたりすると、過密配筋によるコンクリートの割裂破壊が生じることに加え材料の浪費や施工性の低下が懸念される。
また、本実施形態においては、引張力が作用するアンカーボルト10の降伏耐力をABt、引張力が作用する鉛直鉄筋41の降伏耐力をT、引張力が作用する水平鉄筋42の降伏耐力をHとした場合に、以下の関係式
1.01≦(T+H)/ABt
が満たされるようにアンカーボルト10、鉛直鉄筋41及び水平鉄筋42の仕様(本数、径、材質等)を設定する。鉛直鉄筋41及び水平鉄筋42の降伏耐力の和(T+H)をアンカーボルト10の降伏耐力ABtで除した値が1.01未満となるような仕様を採用すると、充分な定着耐力が確保できなくなる。
ベースプレート20は、鋼板、鋳造、鍛造等によって構成された所定厚さを有する板状部材であり、建築物の柱Pの下端部に一体的に設けられている。ベースプレート20は平面視矩形状を呈しており、その各隅部には、アンカーボルト10を挿通させる挿通孔21が設けられている。そして、図1に示すように、ベースプレート20の挿通孔21と、挿通孔21に挿通されるアンカーボルト10と、の間に形成される空間にグラウトGが充填されている。
グラウトGを充填する際には、まず、図5に示すように、ベースプレート20の外側に注入枠50を設置する。この際、基礎コンクリートCの上面に小径のレベルモルタル51を介してベースプレート20を配置することにより、基礎コンクリートCの上面とベースプレート20の下面との間に間隙を形成しておく。次いで、ベースプレート20の各挿通孔21に専用の注入座金52を配置する。各注入座金52には、アンカーボルト10を挿通させるためのボルト孔52aと、グラウトGの注入・噴出のための注入・噴出孔52bと、が設けられている。
グラウトロート53を用いて、4つのうち1つの注入座金52の注入・噴出孔52bからグラウトGを注入すると、グラウトGは、ベースプレート20の1つの挿通孔21と、その挿通孔21に挿通されるアンカーボルト10と、の間に形成される空間に充填された後、基礎コンクリートCの上面とベースプレート20の下面との間に形成された間隙に充填される。その後、グラウトGは、ベースプレート20の残りの3つの挿通孔21と、これら挿通孔21に挿通されるアンカーボルト10と、の間に形成される空間に充填された後、残りの3つの注入座金52の注入・噴出孔52bから噴出する。これにより、グラウトGの充填完了が目視にて確認できる。このように、ベースプレート20の各隅部に設けられた挿通孔21と、これら挿通孔21に挿通されるアンカーボルト10と、の間に形成される空間にグラウトGが充填されるため、グラウトGが充填されていない場合に懸念されるベースプレート20の挿通孔21とアンカーボルト10との接触箇所に発生する局所的な応力集中が緩和される。
以上説明した実施形態に係る露出型柱脚構造1においては、下部定着板30の上方領域Aにおいて、基礎コンクリートCの体積(柱型体積)VCに対する鉛直・水平鉄筋41・42の体積VRの割合が特定の範囲に設定され、かつ、柱型体積VCに対する水平鉄筋42の体積VRHの割合が特定の割合に設定されているため、アンカーボルト10の抜け出しや基礎コンクリートCの割裂破壊を抑制しつつ、アンカーボルト10の本数を4本に抑えかつその定着長さを短縮する(例えば直径の11.5倍程度に抑える)ことができる。このようにアンカーボルト10の本数を抑えて定着長さを短縮することにより、施工に必要な掘削量を低減させるとともに鋼材量やコンクリート量を低減させることができるので、施工に要する費用や時間を節減することができる。
また、以上説明した実施形態に係る露出型柱脚構造1においては、降伏耐力に関する特定の関係式が満たされるようにアンカーボルト10、鉛直鉄筋41及び水平鉄筋42の仕様(本数、径、材質等)を設定することができるので、充分な定着耐力を確保することができる。
また、以上説明した実施形態に係る露出型柱脚構造1においては、アンカーボルト10の基礎コンクリートC内に埋設されない小径の部分(第二の部分12)に応力を集中させることができるため、第二の部分12で引張変形やせん断変形を集中的に発生させることができる。従って、例えば過大なせん断力がアンカーボルト10に作用した場合においても、第二の部分12のみが十分に塑性変形する間、アンカーボルト10の基礎コンクリートCに埋設される大径の部分(第一の部分11)においては、その全長にわたり付着状態を維持できるため、アンカーボルト10を短くしても定着耐力を確保することができる。
また、以上説明した実施形態に係る露出型柱脚構造1においては、ベースプレート20の各隅部に設けられた挿通孔21と、これら挿通孔21に挿通されるアンカーボルト10と、の間に形成される空間にグラウトGが充填されるため、グラウトGが充填されていない場合に懸念されるベースプレート20の挿通孔21とアンカーボルト10との接触箇所に発生する局所的な応力集中が緩和され、早期に破断することがなくなる。
次に、本発明の実施例について説明する。
<第一実施例>
次に、第一実施例について説明する。本実施例においては、SD490の鋼種で製作した異形部の呼び名がD32のアンカーボルト10(4本)と、呼び名がD19の鉛直鉄筋41(12本)と、呼び名がD13の水平鉄筋42(下部定着板30の上方領域Aにおいて5本)と、を採用して露出型柱脚構造1を構成した。なお、本実施例においては、SN490の鋼種で製作した厚さ32mm、一辺320mmの平面視正方形状のベースプレート20を採用した。
本実施例における露出型柱脚構造1の基礎コンクリートCは、一辺530mmの平面視正方形状を呈しており、下部定着板30の上方領域Aにおける基礎コンクリートCの体積(柱型体積)VCは103,371,200mm3であった。一方、下部定着板30の上方領域Aにおける鉛直鉄筋41の体積VRVは1,127,664mm3であり、下部定着板30の上方領域Aにおける水平鉄筋42の体積VRHは871,696mm3であり、両者の和VRは1,999,360mm3であった。従って、下部定着板30の上方領域Aにおける柱型体積VCに対する鉛直・水平鉄筋41・42の体積VRの割合は1.93%であり、柱型体積VCに対する水平鉄筋42の体積VRHの割合は0.84%であった。
本実施例においては、引張力が作用する鉛直鉄筋41の降伏耐力Tと、引張力が作用するアンカーボルト10の降伏耐力ABtと、の比(T/ABt)は1.08であり、引張力が作用する水平鉄筋42の降伏耐力Hと、引張力が作用するアンカーボルト10の降伏耐力ABtと、の比(H/ABt)は0.54であり、両者の和((T+H)/ABt)は1.62であった。このときのアンカーボルト10の定着長さは368mm(異形部の呼び名D32の11.5倍)であった。
<第二実施例>
次に、第二実施例について説明する。本実施例においては、SD490の鋼種で製作した異形部の呼び名がD38のアンカーボルト10(4本)と、呼び名がD19の鉛直鉄筋41(12本)と、呼び名がD13の水平鉄筋42(下部定着板30の上方領域Aにおいて4本)と、を採用して露出型柱脚構造1を構成した。なお、本実施例においては、SN490の鋼種で製作した厚さ32mm、一辺460mmの平面視正方形状のベースプレート20を採用した。
本実施例における露出型柱脚構造1の基礎コンクリートCは、一辺610mmの平面視正方形状を呈しており、下部定着板30の上方領域Aにおける基礎コンクリートCの体積(柱型体積)VCは162,607,700mm3であった。一方、下部定着板30の上方領域Aにおける鉛直鉄筋41の体積VRVは1,364,886mm3であり、下部定着板30の上方領域Aにおける水平鉄筋42の体積VRHは1,033,872mm3であり、両者の和VRは2,398,758mm3であった。従って、下部定着板30の上方領域Aにおける柱型体積VCに対する鉛直・水平鉄筋41・42の体積VRの割合は1.48%であり、柱型体積VCに対する水平鉄筋42の体積VRHの割合は0.64%であった。
本実施例においては、引張力が作用する鉛直鉄筋41の降伏耐力Tと、引張力が作用するアンカーボルト10の降伏耐力ABtと、の比(T/ABt)は0.74であり、引張力が作用する水平鉄筋42の降伏耐力Hと、引張力が作用するアンカーボルト10の降伏耐力ABtと、の比(H/ABt)は0.37であり、両者の和((T+H)/ABt)は1.11であった。このときのアンカーボルト10の定着長さは437mm(異形部の呼び名D38の11.5倍)であった。
<第三実施例>
次に、第三実施例について説明する。本実施例においては、SD490の鋼種で製作した異形部の呼び名がD41のアンカーボルト10(4本)と、呼び名がD19の鉛直鉄筋41(12本)と、呼び名がD13の水平鉄筋42(下部定着板30の上方領域Aにおいて5本)と、を採用して露出型柱脚構造1を構成した。なお、本実施例においては、SN490の鋼種で製作した厚さ36mm、一辺460mmの平面視正方形状のベースプレート20を採用した。
本実施例における露出型柱脚構造1の基礎コンクリートCは、一辺630mmの平面視正方形状を呈しており、下部定着板30の上方領域Aにおける基礎コンクリートCの体積(柱型体積)VCは187,138,350mm3であった。一方、下部定着板30の上方領域Aにおける鉛直鉄筋41の体積VRVは1,483,497mm3であり、下部定着板30の上方領域Aにおける水平鉄筋42の体積VRHは1,343,020mm3であり、両者の和VRは2,826,517mm3であった。従って、下部定着板30の上方領域Aにおける柱型体積VCに対する鉛直・水平鉄筋41・42の体積VRの割合は1.51%であり、柱型体積VCに対する水平鉄筋42の体積VRHの割合は0.72%であった。
本実施例においては、引張力が作用する鉛直鉄筋41の降伏耐力Tと、引張力が作用するアンカーボルト10の降伏耐力ABtと、の比(T/ABt)は0.62であり、引張力が作用する水平鉄筋42の降伏耐力Hと、引張力が作用するアンカーボルト10の降伏耐力ABtと、の比(H/ABt)は0.39であり、両者の和((T+H)/ABt)は1.01であった。このときのアンカーボルト10の定着長さは472mm(異形部の呼び名D41の11.5倍)であった。
<比較例>
次に、比較例について説明する。本比較例においては、SD490の鋼種で製作した異形部の呼び名がD29のアンカーボルト10(4本)と、呼び名がD13の鉛直鉄筋41(12本)と、呼び名がD10の水平鉄筋42(下部定着板30の上方領域Aにおいて4本)と、を採用して露出型柱脚構造1を構成した。本比較例においては、SN490の鋼種で製作した厚さ28mm、一辺300mmの平面視正方形状のベースプレート20を採用した。
本比較例における露出型柱脚構造1の基礎コンクリートCは、一辺460mmの平面視正方形状を呈しており、下部定着板30の上方領域Aにおける基礎コンクリートCの体積(柱型体積)VCは79,773,200mm3であった。一方、下部定着板30の上方領域Aにおける鉛直鉄筋41の体積VRVは341,583mm3であり、下部定着板30の上方領域Aにおける水平鉄筋42の体積VRHは410,861mm3であり、両者の和VRは752,444mm3であった。従って、下部定着板30の上方領域Aにおける柱型体積VCに対する鉛直・水平鉄筋41・42の体積VRの割合は、0.94%であり、柱型体積VCに対する水平鉄筋42の体積VRHの割合は0.52%であった。
本比較例においては、引張力が作用する鉛直鉄筋41の降伏耐力Tと、引張力が作用するアンカーボルト10の降伏耐力ABtと、の比(T/ABt)は0.25であり、引張力が作用する水平鉄筋42の降伏耐力Hと、引張力が作用するアンカーボルト10の降伏耐力ABtと、の比(H/ABt)は0.37であり、両者の和((T+H)/ABt)は0.62であった。このときのアンカーボルト10の定着長さは377mm(異形部の呼び名D29の13倍)であった。
以上の実施例及び比較例の結果を、以下の表1にまとめた。
以上の結果を見ると明らかなように、柱型体積VCに対する鉛直・水平鉄筋41・42の体積VRの割合が1.48〜1.93%に設定され、かつ、柱型体積VCに対する水平鉄筋42の体積VRHの割合が0.64〜0.84%に設定された実施例では、耐力比を大きい値(1.01以上)に維持しつつ、アンカーボルト10の定着長さを短縮する(異形部の呼び名Dの11.5倍とする)ことができた。これに対し、柱型体積VCに対する鉛直・水平鉄筋41・42の体積VRの割合が1.48未満でありかつ水平鉄筋42の体積VRHの割合が0.64%未満である比較例においては、耐力比が小さく(1.01未満)、アンカーボルト10の埋め込み長さも長く(異形部の呼び名Dの13倍)なった。また、柱型体積VCに対する鉛直・水平鉄筋41・42の体積の割合が1.93%を超えるものの中で、柱型体積VCに対する水平鉄筋42の体積VRHの割合が0.84%を超えるものは、水平鉄筋42のピッチが100mm未満となり、施工性が低下した。さらに、柱型体積VCに対する鉛直鉄筋41のみを増やした結果、鉛直・水平鉄筋41・42の体積VRの割合が1.93%を超えるものは、アンカーボルト10と鉛直鉄筋41や梁主筋が混み合うため、所望のアンカーボルト10の定着耐力を発揮する前にコンクリートの剥落等も生じ易くなるという懸念がある。
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、この実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前記実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
1…露出型柱脚構造
10…アンカーボルト
11…第一の部分
12…第二の部分
20…ベースプレート
21…挿通孔
30…下部定着板
41…鉛直鉄筋
42…水平鉄筋
A…下部定着板の上方領域
C…基礎コンクリート
G…グラウト
P…柱
C…下部定着板の上方領域における基礎コンクリートの体積(柱型体積)
R…下部定着板の上方領域における鉛直・水平鉄筋の体積
RH…下部定着板の上方領域における水平鉄筋の体積

Claims (4)

  1. 基礎コンクリートに定着させる複数のアンカーボルトを用いて、建築物の柱の下端部に一体的に設けられた平面視略矩形状のベースプレートを締め付け固定することにより、前記柱を立設する露出型柱脚構造であって、
    前記アンカーボルトの下端部に配置される下部定着板と、
    前記複数のアンカーボルトによって囲まれた領域よりも外側の領域に鉛直方向に配置され、かつ、前記下部定着板からのコーン状破壊ラインを跨ぐように配置される鉛直鉄筋と、
    前記鉛直鉄筋の周囲に沿うように水平方向に配置される水平鉄筋と、を備え、
    前記アンカーボルトは、SD490の鋼種から構成されるとともに前記ベースプレートの各隅部のみに一本ずつ配置され、
    前記下部定着板の上方領域において、前記基礎コンクリートの体積に対する前記鉛直鉄筋及び前記水平鉄筋の体積の割合が1.48〜1.93%に設定され、かつ、前記基礎コンクリートの体積に対する前記水平鉄筋の体積の割合が0.64〜0.84%に設定されている、露出型柱脚構造。
  2. 引張側の前記アンカーボルトの降伏耐力をABt、前記鉛直鉄筋の降伏耐力をT、前記水平鉄筋の降伏耐力をHとした場合に、以下の関係式
    1.01≦(T+H)/ABt
    が満たされるように前記アンカーボルト、前記鉛直鉄筋及び前記水平鉄筋の仕様が設定される、請求項1に記載の露出型柱脚構造。
  3. 前記アンカーボルトは、前記基礎コンクリート内に埋設される第一の部分と、前記基礎コンクリート内に埋設されない第二の部分と、を有し、第二の部分の径が第一の部分の径よりも小さく設定されている、請求項1又は2に記載の露出型柱脚構造。
  4. 前記ベースプレートの各隅部には、前記アンカーボルトを挿通させる挿通孔が設けられており、前記挿通孔と、前記挿通孔に挿通される前記アンカーボルトと、の間に形成される空間にグラウトが充填されている、請求項1から3の何れか一項に記載の露出型柱脚構造。
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