JP4711461B2 - 鉄骨造の露出型柱脚構造 - Google Patents

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本発明は、鉄骨造の露出型柱脚構造に関する。より詳しくは、鉄骨造露出型柱脚における基礎柱型コンクリート(以下、単に柱型という)のコンパクト化に関する。
この種の鉄骨造露出型柱脚において、アンカーボルトの周囲に立上がり筋やフープ筋からなる柱脚部補強筋を配筋して柱型を補強する場合に、立上がり筋をフープ筋のコーナー部以外の位置に配筋して、フープ筋の平面形状を柱材の下端部に設けられるベースプレートの外形とほぼ同形にすることによってコンパクト化を図る柱型に関する補強技術が従来から知られている(特許文献1)。
特許第2516653号公報
本発明は、前記柱型のコンパクト化を更に進めて、柱脚部の破壊モードが人命にとってより安全であり、しかも破壊後の補修がより簡便な鉄骨造の露出型柱脚構造を提供することを目的とする。
ところで、柱型のコンパクト化は、敷地面積に余裕がある場合にはあまり問題にならず、一般的には敷地面積が小さく幅の比較的小さい角形の柱材に適用される柱脚において問題となることが多い。そこで、本発明では、アンカーボルトを四隅に設置する4本タイプで、300mm×300mm以下の角形の柱材に適用される柱脚を対象とした。この比較的小型の柱脚において従来の設計方式により柱型のコンパクト化を進め、柱材の外側面から柱型の外側面までの寸法をあまり縮小すると、柱型の終局曲げモーメントcoMu、すなわち当該柱型を構成するコンクリートが破壊されるときの柱脚に作用する曲げモーメントの値が柱材の全塑性曲げモーメントcMpより小さくなり、地震などにより柱材より先に柱型全体が破壊される破壊モードに至るおそれも大きい。この柱型を構成するコンクリートからの破壊モードは、急激な破壊となり人命に対する危険度が大きいだけでなく、破壊の程度もひどく致命的な損傷となり修復が困難な事態に至る場合が多い。そこで、本発明では、柱材の外側面から柱型の外側面までの寸法を縮小しながらも、人命にとってより安全な破壊モードに従って柱脚部の破壊が起り、しかも補修のより簡便な鉄骨造の露出型柱脚構造を提供すべく次の技術手段を採用した。
すなわち以上の観点から、請求項1に係る発明では、ベープレートの四隅にアンカーボルトを設置し、柱材が300mm×300mm以下の角形で、かつ柱材の外側面から柱型の外側面までの寸法を130mm以下にした露出型柱脚であって、前記アンカーボルトの周囲に配筋する立上がり筋及びフープ筋により、cMp<coMu<min(aMu,pMu)(ただし、cMp:柱材の全塑性曲げモーメント、coMu:柱型の終局曲げモーメント、aMu:アンカーボルトの終局曲げモーメント、pMu:ベースプレートの終局曲げモーメント)の条件が満たされるように柱型を補強するという技術手段を採用した。すなわち、アンカーボルトの周囲に配筋する立上がり筋及びフープ筋の少なくとも一方の配筋量を従来より増やすことにより、柱型の終局曲げモーメントcoMuが柱材の全塑性曲げモーメントcMpより大きく、アンカーボルトの終局曲げモーメントaMu及びベースプレートの終局曲げモーメントpMuのうちの小さい方より更に小さい値になるように設定するという技術手段を採用した。
請求項2の発明では、さらに前記アンカーボルトの周囲に配筋する立上がり筋及びフープ筋の配筋量を、(rTy+hTy)/aTy≧0.8(ただし、rTy:有効立上がり筋降伏耐力、hTy:有効フープ筋降伏耐力、aTy:引張側アンカーボルト降伏耐力)の条件が満たされるように設定するという技術手段を採用した。因みに、有効立上がり筋降伏耐力rTyは、rN×rA×rF(rN:有効立上がり筋本数、rA:立上がり筋断面積、rF:立上がり筋設計基準強度)により、有効フープ筋降伏耐力hTyは、2×hN×hA×hF(hN:有効フープ筋本数、hA:フープ筋断面積、hF:フープ筋設計基準強度)により、引張側アンカーボルト降伏耐力aTyは、aN×aA×aF(aN:引張側アンカーボルト本数、aA:アンカーボルト断面積、aF:アンカーボルト設計基準強度)により、それぞれ求めることができる。なお、ここで、有効立上がり筋本数rNは、引張側アンカーボルトの下部定着板からのコーン状破壊面の有効水平投影面(但し圧縮側アンカーボルトまでとする)内に含まれる立上がり筋の本数とする。また、有効フープ筋本数hNは、前記コーン状破壊面の有効水平投影面内に含まれる(部分的に横切る場合も含む)フープ筋の本数とする。
本発明によれば、幅の小さい角形の柱材に適用される比較的小型の柱脚における柱型の更なるコンパクト化が可能であり、敷地面積の効率的な利用の点からきわめて有効であるとともに、cMp<coMu<min(aMu,pMu)の関係に着目しながら立上がり筋及びフープ筋によって柱型を補強するようにしたので、柱脚に作用する曲げモーメントが柱材の全塑性曲げモーメントに至った後で、かつアンカーボルトやベースプレートの終局状態より先行して柱型の角落ち破壊、すなわち柱型における圧縮側のベースプレート周辺部のコンクリートが角落ちする破壊モードとなり、柱型全体が破壊される破壊モードに至らないため、比較的緩やかな破壊状態となり急激な耐力低下が避けられることから、人命の保護にもきわめて有効である。しかも、柱型は立上がり筋及びフープ筋によって強固に拘束された状態にあり、その破壊状態は、上述のように圧縮側のベースプレート周辺部のコンクリートの角落ちとなるので、破壊後の補修作業が他の破壊モードとは比較にならないほど簡便である。以上のように、本発明によれば、柱型のコンパクト化による敷地面積の有効利用、柱脚部の急激な耐力低下の回避による人命の保護、及び破壊後の補修作業の簡便化においてきわめて有効である。
次に、本発明に係る鉄骨造の露出型柱脚構造の実施形態に関してより詳細に説明する。本発明は、図1に示したように柱材1の下端部に設けたベープレート2の四隅にアンカーボルト3を設置する4本タイプを採用し、柱材1の幅cDが300mm×300mm以下で、かつ柱材1の外側面から柱型4の外側面までの寸法、すなわちベースプレート2の柱材1の外側面からの張出し寸法bと柱型4のベースプレート2の外側面からのへりあき寸法eとの合算b+eが130mm以下の露出型柱脚に適用される。その柱脚部は被接合材である柱材1より耐力を強く設計すべきであり、柱材1の全塑性曲げモーメントcMp以上の終局曲げモーメントを有し、かつ固定柱脚とほぼ同等の剛性を備えることが望ましい。アンカーボルト3をベースプレート2の四隅以外に配置するとベースプレート2の張出し寸法bが大きくなる傾向にありコンパクト化に不向きである。したがって、ベープレート2の四隅にアンカーボルト3を設置する4本タイプが幅の小さい角形の柱材に適用される比較的小型の露出型柱脚におけるコンパクト化によく適合する。因みに、柱材1の幅cDが300mm×300mmを超える場合には、四隅配置のアンカーボルト3では、柱脚部の終局曲げモーメントを柱材1の全塑性曲げモーメントcMp以上とし、かつ固定柱脚とほぼ同等の剛性を備えることは困難である。また、柱材1の外側面から柱型4の外側面までの寸法b+eに関しては、130mmを超えるとアンカーボルト3やベースプレート2の方が柱型4より先に終局に至るケースが多くなり、また100mmを下回ると耐力確保が難しくなるので、100mm〜130mmが望ましい。
柱脚部に作用する曲げモーメントが柱材の全塑性曲げモーメントであるときに、柱型4を構成するコンクリートに作用する圧縮力は、圧縮力C=cMp/j(ただし、cMp:柱材1の全塑性曲げモーメント、j:引張力図心から圧縮力図心までの距離)から求められ、この圧縮力Cに対して柱型4を構成するコンクリートが破壊しないように設計すればよい。すなわち、その圧縮力Cより柱型の圧縮側の強度を大きくすればよいことになる。そして、本例のように、例えば柱脚部に作用する曲げモーメントにより生じる圧縮力がベースプレート2の張出し部において柱型4へ等分布に働くように想定される場合には、圧縮力C≦{(B−cD)/2}×B×α×coF(ただし、B:ベースプレート2の幅、cD:柱材1の幅、coF:柱型4のコンクリートの設計基準強度、α:coFの割増係数)となるように柱型4の寸法を設定すればよいことになるが、本発明では柱型4が立上がり筋やフープ筋によって前記所定の条件に見合うように補強されることから、αは1.5〜2程度の範囲にとることができ、その分柱型4の寸法を縮小することが実現可能となる。なお、図2は本発明に係る鉄骨造の露出型柱脚構造の履歴モデルを示したものである。横軸に柱脚部の回転変位角θ(rad)をとったものであり、図示のように、柱型4のコンクリートの終局曲げモーメントcoMuは、アンカーボルト3の周囲に配筋する立上がり筋やフープ筋の配筋量を従来より増やすことにより、柱材の全塑性曲げモーメントcMpより大きく、アンカーボルト3の終局曲げモーメントaMuやベースプレート2の終局曲げモーメントpMuより小さい値に設定される。
さらに、柱材1の外側面から柱型4の外側面までの寸法b+eを130mm以下に設定する場合に、それらのベースプレート2の柱材1の外側面からの張出し寸法bと柱型4のベースプレート2の外側面からのへりあき寸法eに関して次の条件が満たされるように設定されることが望ましい。(1)40mm≦e≦60mmとし、かつ0.44≦e/b≦0.86とする。へりあき寸法eは、フープ筋の平面形状がベースプレート2の外形とほぼ同形であるとして、最低被り厚として40mmが必要とされ、また柱型4のコンクリート破壊がアンカーボルト3やベープレート2の破壊より遅れないように60mmを超えない範囲にする必要があり、同様に、e/bが0.44を下回ると前記へりあき寸法eの確保が困難であり、0.86を超えると柱型4のコンクリートの破壊がアンカーボルト3やベープレート2の破壊より遅れることになるからである。(2)0.7≦B/coD≦0.9(ただし、B:ベースプレート2の幅、coD:柱型4の幅)とする。このB/coDが0.7を下回るとコンクリートのへりあき寸法eが大きくなり柱型4のコンクリートの破壊がアンカーボルト3やベープレート2の破壊より遅れることになり、0.9を超えると被り厚が確保できなくなるからである。(3)0.2≦(b+e)/coD≦0.3とする。この(b+e)/coDが0.2を下回ると耐力の確保が困難であり、0.3を超えると柱型4のコンクリートの破壊がアンカーボルト3やベープレート2の破壊より遅れることになるからである。
前記アンカーボルトの周囲に配筋する立上がり筋及びフープ筋の配筋量に関しては、請求項2の発明に関して前述したように、(rTy+hTy)/aTy≧0.8との条件が満たされるように設定すれば、請求項1の発明に関する、cMp<coMu<min(aMu,pMu)との条件を簡便に充足することが可能である。なお、図3は本発明を適用した場合の外壁の納り状態を例示した概略説明図であり、図4はその概略平面図である。図示のように、本発明を適用した場合には、外壁材5の納りがよく、仕上げ作業の簡便化にも有効である。
本発明の適用対象である鉄骨造の露出型柱脚構造を例示した概略説明図である。 本発明に係る鉄骨造の露出型柱脚構造の履歴モデルを示した特性曲線図である。 本発明を適用した場合の外壁の納り状態を例示した概略説明図である。 図3の概略平面図である
符号の説明
1…柱材、2…ベープレート、3…アンカーボルト、4…柱型、5…外壁材

Claims (2)

  1. ベープレートの四隅にアンカーボルトを設置し、柱材が300mm×300mm以下の角形で、かつ柱材の外側面から柱型の外側面までの寸法を130mm以下にした露出型柱脚であって、前記アンカーボルトの周囲に配筋する立上がり筋及びフープ筋により、次の条件が満たされるように柱型を補強したことを特徴とする鉄骨造の露出型柱脚構造。
    cMp<coMu<min(aMu,pMu)
    (ただし、cMp:柱材の全塑性曲げモーメント、coMu:柱型の終局曲げモーメント、aMu:アンカーボルトの終局曲げモーメント、pMu:ベースプレートの終局曲げモーメント)
  2. 前記アンカーボルトの周囲に配筋する立上がり筋及びフープ筋の配筋量を次の条件が満たされるように設定したことを特徴とする請求項1に記載の鉄骨造の露出型柱脚構造。
    (rTy+hTy)/aTy≧0.8
    (ただし、rTy:有効立上がり筋降伏耐力、hTy:有効フープ筋降伏耐力、aTy:引張側アンカーボルト降伏耐力)


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