JP2006028889A - 地中埋設中空構造物の補強方法及び地中埋設構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 中空部400を形成する複数の内周面を有し、内周面によって角部が形成されているマンホール100を補強する際に、角部のうち補強を要すべき角部170(補強角部170)について、その補強角部170の内周面形状に対応する外周面形状を有する補強体300を用意し、補強体300を補強角部170に接着剤500を用いて接着する。
【選択図】 図3
Description
ところで、近年、道路を通行する車両の車両重量や車両数の増加等により路面にかかる荷重、したがって、路面の下に埋設されているマンホールに印加される荷重が増大する傾向にある。
そこで、特開2003−155755号公報には、埋設されているマンホールの中空部の内面全体に、まず繊維シートを貼り、次にモルタルを塗布し、さらに繊維シートを貼ることでマンホールを補強する方法が開示されている。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、簡単に、短時間でマンホール等の地中埋設中空構造物を補強することができる地中埋設中空構造物の補強方法及び補強された地中埋設構造体を提供することである。
(請求項1に記載の発明)
請求項1に記載の発明によれば、中空部を形成する複数の内周面を有する地中埋設中空構造物の補強方法が構成される。
この地中埋設中空構造物は、典型的にはマンホール、トンネル等の地中に埋設される構造物であり、内周面によって角部が形成されている。
「内周面」は、平面、曲面のいずれでもよく、平面と曲面が混在している場合をも含む。例えば、地中埋設中空構造物が略直方体形状の場合には、「内周面」は、上床版、下床版、側壁(後述する終端版を含む。)等の内面を示す。
また、「角部」は、180度未満の角を成す2つの内周面が交差して形成されているコーナーの周囲を広く包含する。また、「角部」には予めハンチ部が形成されていてもよい。
本発明では、前記した角部のうち補強を要すべき角部(以下、補強角部という。)について、その補強角部の内周面形状に対応する外周面形状を有する補強体を用意し、補強体を前記補強角部に接着剤を用いて接着する。
補強角部とは、荷重の増大(例えば、地表面を走行する車両の重量の増大)や経年変化等によって「角部」に発生する応力が設定値を越えている「角部」を示す。
「補強角部の内周面形状」とは、補強角部を形成している2つの内周面の一部を含む形状であるのが好ましい。したがって、補強体の「補強角部の内周面形状に対応する外周面形状」も、補強角部を形成している2つの面の少なくとも一部を含む形状であるのが好ましい。また、「補強角部の内周面形状」は補強角部に別の部材(例えば、後述する内周面補強部材)が配設されている場合には、当該別の部材の内周側の面を含む面を「補強角部の内周面」としてもよい。勿論、補強角部がハンチ部(肉厚部)を有する場合には、ハンチ部を形成する面(以降、ハンチ面と称呼する。)を含め「内周面形状」とするのが好ましい。
なお、補強角部の内周面形状に対応する外周面形状は、厳密に補強角部の内周面形状に一致していなくてもよい。
「補強体」は、例えば、地中埋設中空構造物へ取り付けるための固定手段を備えていて、当該固定手段を含めて「補強体」と称してもよい。
また、「接着剤」は、補強角部に補強体を接着可能な、樹脂等の接着剤を広く包含する。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の地中埋設中空構造物の補強方法において、少なくとも、接着剤により補強体が補強角部に接着されるまでの間、固定手段を用いて補強体を補強角部に固定する。
この「固定手段」は、少なくとも、接着剤により補強体が補強角部に接着されるまでの間、補強体を補強角部に固定可能な構成(すなわち、仮止め可能な構成)であればよく、補強体が補強角部に接着された後に除去される固定手段を用いてもよいし、補強体が補強角部に接着された後も配設される固定手段を用いてもよい。
本発明の中空構造物の補強方法によれば、少なくとも、補強体が補強角部に接着するまで補強体を補強角部に固定しておけるので、補強体を確実に補強角部に接着することができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の地中埋設中空構造物の補強方法において、対向する端部に補強角部が存在する内周面の、対応する両端部間に内周面補強部材を配置し、補強体と当該内周面とによって内周面補強部材を挟持するように、補強体を補強角部に接着する。
この「内周面補強部材」は、対向する端部に補強角部が存在する内周面(例えば、上床版の内面)に、荷重により発生する曲げ引張応力を低減することができる補強部材であればよく、材質、形状(板状、シート状、繊維状等を含む。)、配置位置等に関しては種々の態様が考えられ得る。
例えば、「内周面補強部材」には、その目的に応じて、繊維質を含んだ材質が用いられる。この場合、繊維質としては、種々の繊維質を用いる場合を広く包含する。例えば、「内周面補強部材」は、コンクリート製の中空構造物を補強するためには、ひび割れ等を効果的に抑制することができるとともにコンクリートよりも弾性係数が大きく伸びが少ない繊維質を含んだ材質(例えば、炭素繊維を含んだ材質)で形成されているのが好ましい。
また、「内周面補強部材」は、鉄等の金属で構成されていてもよい。
また、複数種類の「内周面補強部材」を用いても良い。この場合、例えば、複数種類の内周面補強部材を少なくとも一部が重なるように内周面の両端部間に配置される態様も包含する。
「内周面の両端部間に内周面補強部材を配置する」態様としては、内周面の一方の端部から他方の端部につき連続的に設けられている態様を用いるのが好ましいが、必ずしも両端部まで設けられなくてもよく、各補強角部に設けられる補強体と内周面とによって内周面補強部材の少なくとも一部が挟持される態様であればよい。
本発明の地中埋設中空構造物の補強方法によれば、内周面補強部材によって、対向する端部に補強角部が存在する内周面(例えば、上床版の内周面)に発生する曲げ引張応力を低減することができる。これにより、地中埋設中空構造物を、補強体と内周面補強部材とによって補強することができ、より強度を高めることができる。また、内周面補強部材を確実に内周面に固定することができる。
請求項4に記載の発明によれば、中空構造物と、補強体とを備えた地中埋設構造体が構成される。
「中空構造物」は、中空部を形成する複数の内周面を有し、内周面によって角部が形成されている。また、「補強体」は、中空構造物の角部のうち補強角部について、その補強角部の内周面形状に対応する外周面形状を有し、角部に接着剤を用いて接着されている。
本発明の地中埋設構造体は、補強角部に補強体が接着されることでハンチ部が形成されている。これにより、中空構造物の補強角部や内周面等が効果的に補強されている。
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の地中埋設構造体であって、さらに、内周面補強部材を備えている。
内周面補強部材は、中空構造物の、対向する端部に補強角部が存在する内周面の、対向する両端部間に、補強体と当該内周面とによって挟持されるように配設されている。
本発明の地中埋設構造体では、当該内周面に発生する曲げ引っ張り応力を低減することができるとともに、補強体により内周面補強部材が確実に内周面に固定されている。
本実施の形態では、本発明の地中埋設中空構造物の補強方法を、地中に埋設されている略直方体のマンホールの補強に適用し、主たる荷重である上載荷重に対する補強方法について取り上げることとした。
補強後のマンホールの平面図を図1に、図1のA−A断面図を図2に、図1のB−B断面図を図3に示す。また、補強体として用いるレジンコンクリートブロックの斜視図を図4に、補強体の平面図及び側面図及び断面図を図5に示す。また、本発明を適用したマンホールの補強方法の手順を示すフローチャート図を図6に示す。また、図7は、図3に破線で示す角部の拡大図である。また、図8には、補強体で補強角部を補強する前の、荷重により上床版に作用する曲げモーメントを示す。図9には、補強体で補強角部を補強した後の、荷重により上床版に作用する曲げモーメントを示す。さらに、図10には、補強後のマンホールの強度の上昇度を表に示す。
なお、補強角部とは、荷重の増大(例えば、地表面を走行する車両の重量の増大)や経年変化等によって「角部」に発生する応力が設定値を越えている「角部」を示す。
一般的に、地中に埋設されるマンホール100は、鉛直方向断面形状が略四角形のラーメン構造で、中空部が略直方体のコンクリート製ボックスカルバートにマンホール用の孔空け加工等が施されて構成されている。
図1〜図3に示すマンホール100は、鉛直方向上部(地表側)に設けられている外周形状が略長方形の上床版110、上床版110より鉛直方向下部に上床版110と平行に設けられており上床版110と同じ外形寸法の下床版120、上床版110と下床版120との間に設けられている側壁130及び終端版140を有している。例えば、上床版110の厚みd1は200mm、下床版120の厚みd3は300mm、側壁130、終端版140の厚みd2は250mmで構成されている。
上床版110には、長方形を形成する長辺(図1の左右方向)と短辺(図1の上下方向)の中心線が交わる位置を中心に、所定の径の孔150が鉛直方向上方(図2、図3において上方)に開口するように立設状に設けられていて、この開口部には蓋160が配設される。
また、上床版110、下床版120、側壁130及び終端版140の内周面により、略直方体の中空部400が形成されている。例えば、中空部400は、幅Wが1200mm、長さDが3600mm、高さHが1800mmで構成されている。
マンホール100の地表側には、地表側の内周面(上床版110)と他の内周面(両側壁130及び両終端版140)とで角部が形成されている。本実施の形態では、図2、図3に示すように、上床版110の短辺方向で対向する端部に存在する角部(上床版110の長辺方向に沿った角部)が「補強を要すべき角部」、すなわち補強角部170である。
そして、マンホール100の中空部400には、例えば、電線や通信線等のケーブルが配設されており、作業員が孔150から中空部400に入り、ケーブルのメンテナンス作業等を行うことが可能な構成となっている。
埋設されたマンホール100では、地表側からの荷重(例えば、道路を通行する車両による荷重)によって、上床版110に短辺方向の曲げモーメントが作用する(併せて、図8参照)。これにより、上床版110の内周面の中央部には曲げ引張応力が発生し、上床版110の外周面(道路側の面)の中央部には曲げ圧縮応力が発生する。また、上床版110の内周面の端部(補強角部170)には曲げ圧縮応力が発生し、上床版110の外周面の端部(補強角部170)には曲げ引張応力が発生する。
また、補強角部170に補強体300が設けられることにより、補強角部170の厚みが増し、補強角部170に作用する曲げモーメントの影響が小さくなり、補強角部170に発生する曲げ引張応力や曲げ圧縮応力が低減される。
このように、補強角部170に補強体300を設けることにより、道路を通行する車両によりマンホール100に印加される荷重による影響、すなわち、上床版110に作用する曲げモーメントを低減することができ、マンホール100の強度が向上することが分かる。
この補強体300の詳細な構成の詳細については後述する。
そこで、本実施の形態では、補強体300を短辺方向で対向する端部に存在する補強角部170に配設するのに加え、上床版110の内周面の短辺方向で対向する端部間に炭素繊維板200(例えば、東レ(株)製 トレカラミネートTL510;幅100mm、厚み1mm)を配設している。本実施の形態では、内周面の補強体300が設けられている端部間(図3に示す、上床版110の内周面の両端の補強角部170間)に、図1に示すように、約150mm間隔で炭素繊維板200を接着剤を用いて接着している。
炭素繊維板200は、マンホール100を形成しているコンクリートよりも弾性係数が大きく伸びが少ないため、上床版110に荷重が印加されて上床版110に曲げモーメントが作用しても、上床版110の内周面側の伸び量が抑えられる。これにより、上床版110の内周面の中央部に作用する曲げ引張応力が小さくなり、ここにひび割れ等が発生することを防止することができる。
まず、補強体300を準備する。補強体300は、図4、図5に示すように、5角形の断面を成す角柱状部材としてレジンコンクリートを用いて構成されている。補強体300は、上床版110の内周面に当接する当接面311、上床版110と側壁130により形成されている角部に設けられているハンチ部131に当接する当接面312、側壁130に当接する当接面313、先端面315、補強体300のハンチ面316、そして側面314を有している。
また、補強体300には、ハンチ面316と当接面311の間を貫通する貫通孔317が2箇所に設けられている。本実施の形態では、補強体300を角部170に接着剤で接着する際に、補強体300を補強角部170に固定するために後述するコンクリートアンカ321とナット322を用いるため、貫通孔317のハンチ面316側には、ナット322締付け用のスペース317bが設けられている。
本実施の形態では、当接面313と先端面315の距離(L1)(図5(a)に示す上下方向の長さ)は240mm、当接面311とハンチ面316との距離(L2)(図5(b)に示す上下方向の長さ)は80mm、側面314間の距離(L3)(図5(a)に示す左右方向の長さ)は500mmに設定されている。なお、ハンチ部を大きくして上床版110に発生する曲げモーメントを低減させるためには、(L1)と(L2)を以下の関係式を満足するように設定するのが好ましい。
(L1)≧=3×(L2)
まず、ステップS10で、作業者は、マンホール100の中空部400内に配設されているケーブルにプロテクターを配設し、ケーブルを保護してステップS12の作業に進む。
次に、ステップS12で、作業者は、マンホール100の中空部400の各表面に付着している汚れやレイタンスを研磨し、コンクリート面の下地処理を行い、ステップS14の作業に進む。
ステップS14では、作業者は、ステップS12で下地処理を行ったコンクリート面の不陸修正及び表面修復を行い、コンクリート面を平滑化する。例えば、コンクリートの欠損箇所にエポキシ樹脂を充填し表面を仕上げ、ステップS16の作業に進む。
ステップS16では、ステップS14で用いたエポキシ樹脂が硬化した後、炭素繊維板200の貼り付け位置、及び補強体300の取り付け位置の墨出しが行われる。そして、作業者は、ステップS18の作業に進む。
ステップS18では、作業者は、上床版110の内周面(中空部400天井面)の、コンクリートアンカ321を配設する位置に、ドリルでコンクリートアンカ321配設用の孔を設け、コンクリートアンカ321を打ち込む。なお、コンクリートアンカ321は、打ち込むことにより配設用の孔に固定される構成となっている。そして、作業者は、ステップS20の作業に進む。
ステップS20では、作業者は、ステップS16で墨出しした炭素繊維板200の貼り付け位置に接着剤(例えば、モルタルエポキシ樹脂接着剤;東レ(株)製 シーカデュア30)を約1mm塗布する。そして、接着面に炭素繊維板200を、炭素繊維板200の両側から接着剤がはみ出る程度に圧着して、はみ出した接着剤をヘラ等で除去する。そして、作業者は、ステップS22の作業に進む。
ステップS22では、作業者は、ステップS16で墨出しした補強体300の取り付け位置に接着剤(例えば、モルタルエポキシ樹脂接着剤)500を約5mm塗布する。そして、補強体300の貫通孔317に、ステップS18で上床版110の内周面に配設されたコンクリートアンカ321を貫通させ、補強体300の両側から接着剤500がはみ出る程度に、コンクリートアンカ321にナット322を締め付ける。これにより、図7に示すように、上床版110の内周面の両端の補強角部170に補強体300が、上床版110の内周面と補強体300とで炭素繊維板200を挟持するように配設される(併せて図3参照)。
本実施の形態の「マンホール100」が本発明の「地中埋設中空構造物」に、「補強体300」が本発明の「補強体」に、「コンクリートアンカ321とナット322」が本発明の「固定手段」に、「炭素繊維板200」が本発明の「内周面補強部材」に対応する。
補強体300は、勿論、外形寸法が大きい程、補強角部170に配設した際に補強角部170に肉厚のハンチ部が形成されて補強角部170の強度が増し、荷重印加方向の曲げモーメントによる補強角部170、及び上床版110に作用する影響が小さくなる。しかしながら、外形寸法が大きい程、中空部400の容積が小さくなるとともに、補強体300の重量が増すことにより取付作業が困難となる。
本実施の形態では、補強角部170の外周面に作用する曲げ引張応力を50%低減することとし、4種類の寸法((a)L1=15cm及びL2=5cm、(b)L1=24cm及びL2=8cm、(c)L1=30cm及びL2=10cm、(d)L1=45cm及びL2=15cm)の補強体300について検討した。なお、一般的に、補強角部170の外周面に作用する曲げ引張応力が低減されれば、補強角部170の内周面に作用する曲げ圧縮応力や上床版110の内周面の中央部に作用する曲げ引張応力も低減される。
(1)L1=15cm及びL2=5cmの補強体300(a)を用いる場合に発生する、補強角部170の外周面に作用する曲げ引張応力は、1.1MPa(35パーセント低減)であった。
(2)L1=24cm及びL2=8cmの補強体300(b)を用いる場合に発生する、補強角部170の外周面に作用する曲げ引張応力は、0.85MPa(50パーセント低減)であった。
(3)L1=30cm及びL2=10cmの補強体300(c)を用いる場合に発生する、補強角部170の外周面に作用する曲げ引張応力は、0.7MPa(59パーセント低減)であった。
(4)L1=45cm及びL2=15cmの補強体300(d)を用いる場合に発生する、補強角部170の外周面に作用する曲げ引張応力は、0.5MPa(71パーセント低減)であった。
したがって、L1=24cm及びL2=8cmの補強体300を採用することとする。
さらに、炭素繊維板200と補強体300の両方を配設することにより、さらに、上床版110の内周面の中央部に作用する曲げ引張応力を低減することができる。
発明者らは、本実施の形態の炭素繊維板200及び補強体300を用いてマンホール100を補強することにより、補強角部170及び上床版110の中央部の強度が、図10の表に示すように上昇することを確認した。厚さ1mmの炭素繊維板及び補強体300を用いた場合、上床版110の中央部の強度は1.17倍となり、補強角部170の強度は2.0倍となっている。また、厚さ2mmの炭素繊維板及び補強体300を用いた場合、上床版110の中央部の強度は1.27倍となり、補強角部170の強度は2.0倍となっている。また、厚さ0.143mmの炭素繊維シート及び補強体300を用いた場合には、上床版110の中央部の強度は1.17倍となり、補強角部170の強度は2.0倍となっている。炭素繊維板(あるいは炭素繊維シート)の厚さは、補強後のマンホール100の強度の要請に基づいて、適宜選択されればよい。
また、本実施の形態によれば、補強体300と上床版110の内周面とによって炭素繊維板200を挟持するように固定するので、炭素繊維板200を確実に固定することができる。また、コンクリートアンカ321とナット322により補強体300を補強角部170に固定するので、少なくとも、補強体300が補強角部170に接着剤500により接着するまで補強体300を補強角部170に固定し、補強体300を確実に補強角部170に接着することができる。
本実施の形態では、図1に示すように、補強体300は蓋160の周囲には配設していない。このように、マンホール100の各寸法により蓋160の周囲には補強体300を配設するスペースがない場合には、補強体300は蓋160の周囲には配設しなくてもよいが、スペースがある場合には、補強体300を蓋160の周囲にも配設してもよい。なお、蓋160は剛性を有するため、実施の形態のように、蓋160によって補強体300を配設するスペースがない場合には、蓋160がある部分の断面では蓋160の剛性によりマンホール100の補強角部170がある程度補強されている。
また、実施の形態では、炭素繊維板200と補強体300の両方をマンホール100に配設する場合について説明したが、補強体300のみを配設してもよい。
また、マンホール100は中空部400が直方体である場合に限定されるものではなく、例えば、平面図において、L字状等に構成されていてもよい。
また、実施の形態では、上床版110の内周面に作用する曲げ引張応力を低減するために、まず、炭素繊維板200を上床版110の内周面に貼り付けたが、引張応力を低減することができるものであれば、図10に示すような炭素繊維シートを用いてもよい。また、他の繊維が含まれる補強部材、鉄等の金属で構成される補強部材等を用いてもよい。さらに、複数種類の補強部材が用いられてもよい。
また、マンホールを補強する場合について説明したが、本発明はマンホール以外の種々の地中埋設中空構造物を補強する場合に適用することができる。
また、本実施の形態では、上床版110の内周面の一方の端部110aから他方の端部110bにわたり補強板200を配置したが、補強板200は両端部110a,110b間に設けられていればよい。補強角部170に設けられている補強体300と上床版110の内周面とによって補強版200の少なくとも一部が挟持されていれば、補強板200を確実に当該内周面に固定することができる。しかしながら、補強板200は、補強体300と当該内周面とによって挟持されていなくてもよく、補強板200が当該内周面に固定されれば、少なくとも上床版110の内周面に発生する曲げ引張応力を低減することができる。
また、本実施の形態では、固定手段としてコンクリートアンカ321とナット322を用い、補強体300が補強角部170に接着された後も、これらの固定手段を除去しない構成について説明したが、固定手段は接着剤が乾燥するまでの仮止めとして用いてもよい。すなわち、補強体300が補強角部170に接着された後に除去される構成の固定手段を用いてもよい。これによれば、固定手段を再利用することができるので、補強のための施工コストを削減することができる。
また、本実施の形態では、補強角部が、上床版110の短辺方向で対向する端部に存在する角部(上床版110の長辺方向に沿った角部)である場合について説明したが、補強角部はマンホール100の内周面によって形成されている他の「角部」でもよい。補強角部は、マンホール100にかかる荷重の大きさ、マンホール100の構成、マンホール100が埋設されている場所、マンホール100が地中に埋設されてから経過した年数等、種々の条件により、適宜決定される。勿論、このようにして決定される補強角部は、実施の形態のように2つの「角部」に限らず、1つの「角部」でもよいし、全ての「角部」でもよい。
(態様1)
「中空部を形成する複数の内周面を有し、地表面側の内周面と他の内周面とによって角部が形成されている地中埋設中空構造物の補強方法であって、
前記地表面側の内周面と他の内周面とによって形成された角部のうち補強を要すべき角部について、その補強を要すべき角部の内周面形状に対応する外周面形状を有する補強体を用意し、当該補強体を前記補強を要すべき角部に接着剤を用いて接着する、
ことを特徴とする地中埋設中空構造物の補強方法。」
「地表面側の内周面」は、典型的には、地中埋設中空構造物が略直方体の場合には、上床版の内面を示す。
地中埋設中空構造物にかかる荷重のうち、主たる荷重は上載荷重であることが知られている。態様1に記載の地中埋設中空構造物の補強方法によれば、地表面側の内周面と他の内周面とによって形成されている角部に、予め準備した補強体を接着することで、容易にハンチ部を形成することができ、地表面側の内周面(略直方体の地中埋設構造物であれば、上床版の内面)、地表面側の内周面の端部の補強角部等が効果的に補強され、上載荷重に対する強度を容易に上げることができる。
「態様1に記載の地中埋設中空構造物の補強方法であって、
さらに、地中埋設中空構造物は、地表面側とは反対側の内周面と他の内周面とによって角部が形成されており、前記地表面側とは反対側の内周面と他の内周面とによって形成された角部のうち補強を要すべき角部について、その補強を要すべき角部の内周面形状に対応する外周面形状を有する補強体を用意し、当該補強体を前記補強を要すべき角部に接着剤を用いて接着する、
ことを特徴とする地中埋設中空構造物の補強方法。」
「地表面側とは反対側の内周面」は、典型的には、地中埋設中空構造物が略直方体の場合には、下床版の内面を示す。
地中埋設中空構造物に上載荷重がかかると、上載荷重により生ずる地盤反力による鉛直方向下側からの地中埋設中空構造物への荷重印加があることが知られている。態様2に記載の地中埋設中空構造物の補強方法によれば、地表面側の内周面と他の内周面とによって形成されている角部と、地表面側とは反対側の内周面(略直方体の地中埋設構造物であれば、下床版の内面)と他の内周面とによって形成されている角部に、予め準備した補強体を接着することで、容易にハンチ部を形成することができ、地表面側の内周面や当該内周面の端部の補強角部、地表面側とは反対側の内周面や当該内周面の端部の補強角部が効果的に補強される。これにより、地中埋設中空構造物の、上載荷重および上載荷重に起因する地盤反力による荷重印加に対する強度を容易に上げることができる。
110 上床版
170 補強角部
200 炭素繊維板
300 補強体
321 コンクリートアンカ
322 ナット
400 中空部
500 接着剤
600 土砂
700 路面
Claims (5)
- 中空部を形成する複数の内周面を有し、内周面によって角部が形成されている地中埋設中空構造物の補強方法であって、
前記角部のうち補強を要すべき角部について、その補強を要すべき角部の内周面形状に対応する外周面形状を有する補強体を用意し、当該補強体を前記補強を要すべき角部に接着剤を用いて接着する、
ことを特徴とする地中埋設中空構造物の補強方法。 - 請求項1に記載の地中埋設中空構造物の補強方法であって、
少なくとも、前記接着剤により前記補強体が前記補強を要すべき角部に接着されるまでの間、固定手段を用いて前記補強体を前記補強を要すべき角部に固定する、
ことを特徴とする地中埋設中空構造物の補強方法。 - 請求項1又は2に記載の地中埋設中空構造物の補強方法であって、
対向する端部に補強を要すべき角部が存在する内周面の、前記対向する両端部間に内周面補強部材を配置し、
前記補強体と当該内周面とによって前記内周面補強部材を挟持するように、前記補強体を、前記補強を要すべき角部に接着する、
ことを特徴とする地中埋設中空構造物の補強方法。 - 中空部を形成する複数の内周面を有し、内周面によって角部が形成されている中空構造物と、
前記角部のうち補強を要すべき角部について、その補強を要すべき角部の内周面形状に対応する外周面形状を有し、前記補強を要すべき角部に接着剤を用いて接着された補強体と、
を備えることを特徴とする地中埋設構造体。 - 請求項4に記載の地中埋設構造体であって、対向する端部に補強を要すべき角部が存在する内周面の、前記対向する両端部間に、前記補強体と当該内周面とによって挟持されるように配設された内周面補強部材を備えることを特徴とする地中埋設構造体。
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