JP6351147B2 - 誘電体セラミックス、誘電体セラミックスの製造方法およびセラミック電子部品 - Google Patents

誘電体セラミックス、誘電体セラミックスの製造方法およびセラミック電子部品 Download PDF

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Description

本発明は、誘電体セラミックス粒子、誘電体セラミックス粒子集合体および圧電セラミックスに関する。
現在、ユビキタス化が進む中、スマートフォンやタブレット等のモバイル端末に使用される電子部品の小型高性能化の要求は、日々高度化している。そして、これに伴い、積層コンデンサとして使用されるMLCC(Multi Layer Ceramic Capacitor:積層セラミックコンデンサ)も当然のように、小型大容量化が求められている。
上記MLCCを構成しうる代表的な材料の一つに、チタン酸バリウム(BaTiO:BT)が挙げられる。チタン酸バリウムは、誘電体材料の主力材料、および、非鉛系圧電材料の一候補材料として、研究開発が進められている。
このような状況の下、チタン酸バリウム結晶の配向性に係る技術について研究が進められており、<111>方向に分極したチタン酸バリウム単結晶を製造する技術が提案されている(特許文献1)。特許文献1に開示された技術によれば、BaTi1740(B6T17)の板状粉末を用いて、{111}面の配向度の高い結晶配向セラミックスを得ることができる。そして、特許文献1に開示された結晶配向セラミックスのうち、Lotgeringの{111}配向度(F)が最も高いものは0.70であり、このように、配向度(F)が高い結晶配向セラミックスは、圧電特性に優れることが記載されている。
特開2001−106568号公報
一方で、MLCCの小型大容量化のためには、誘電体セラミックスの誘電特性の改良もまた求められている。しかしながら、特許文献1に開示された結晶配向セラミックスは、誘電特性が十分ではなく、さらなる誘電特性の向上が望まれる。
したがって、本発明の目的は、高い配向度を示し、誘電特性に優れる誘電体セラミックスを提供することにある。また、本発明の他の目的は、高い配向度を示し、誘電特性に優れる誘電体セラミックスの製造方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、上記誘電体セラミックスを用いたセラミック電子部品を提供することにある。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、チタン酸バリウムを主成分とし、{111}面の配向度が特定の値よりも大きい誘電体セラミックスを製造することにより、誘電特性に優れた誘電体セラミックスが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.チタン酸バリウムを主成分とし、{111}面の配向度が0.72超である、誘電体セラミックス;
2.上記1.の誘電体セラミックスを製造する方法であって、
Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子を含む組成物を焼成する工程を含む、誘電体セラミックスの製造方法;
3.前記Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子は、バリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)が6.0:14.0〜6.0:16.5の範囲内である原料を用いたフラックス法によって合成される、上記2.の誘電体セラミックスの製造方法;
4.前記Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子が板状である、上記2.または3.の誘電体セラミックスの製造方法;
5.バリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)が6.0:14.0〜6.0:16.5の範囲内である原料を用いたフラックス法によって合成する工程を含む、Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子の製造方法;
6.上記1.の誘電体セラミックスまたは上記2.〜4.のいずれかの製造方法により得られる誘電体セラミックスを含む、セラミック電子部品。
本発明によれば、高い配向度を示し、誘電特性に優れる誘電体セラミックスが提供される。また、本発明によれば、高い配向度を示し、誘電特性に優れる誘電体セラミックスの製造方法が提供される。さらに、本発明によれば、上記誘電体セラミックスを用いたセラミック電子部品が提供される。
実施例4に係る前駆体粒子のSEM像である。 比較例2に係る前駆体粒子のSEM像である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の第一の形態は、チタン酸バリウムを主成分とし、{111}面の配向度が0.72超である、誘電体セラミックスを提供する。
なお、本明細書中、「チタン酸バリウムを主成分とする」とは、当該誘電体セラミックスの全量に対して、チタン酸バリウムを90質量%以上含むことを意味する。なお、誘電体セラミックスがチタン酸バリウムを90質量%以上含むことは、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP)による分析により確認される。また、「配向度」は、Lotgering配向度(F)を示すものであり、具体的には、実施例に記載の方法で算出した値を採用するものとする。
本発明の誘電体セラミックスは、チタン酸バリウムを主成分とした、{111}面の配向度が極めて高い、結晶配向セラミックスであり、従前にない高い配向度を達成している。
上述の通り、従来、{111}面の配向度が高い誘電体セラミックスについて研究され、これらの圧電特性が注目されていた。しかしながら、本発明者らは、誘電体セラミックスの誘電特性を向上させるため、鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、{111}面の配向度が特定の値よりも高い誘電体セラミックスが良好な誘電特性を示すことを見出し、本発明に至った次第である。
上記の通り、本発明の第一の形態は、チタン酸バリウムを主成分とし、0.72超という極めて高い{111}面の配向度を有する誘電体セラミッックスである。そして、かような{111}面の配向度が高い誘電セラミックスを製造するために、本発明者らは、誘電体セラミックスの前駆体について鋭意検討した。その結果、Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子を前駆体とすることにより、上記のように{111}面の配向度が極めて高い誘電体セラミックスを製造可能となることが判明した。
さらに、原料のバリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)の値を特定の範囲内とすることにより、誘電特性に優れる誘電体セラミックスの前駆体となる、Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子が得られることもまた明らかとなった。
以下、本発明の誘電体セラミックスおよび本発明を実施するための形態・態様について詳細に説明する。なお、以下の説明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
≪誘電体セラミックス≫
本発明の誘電体セラミックスは、チタン酸バリウム(BaTiO)を主成分とする結晶配向セラミックス(ペロブスカイト型化合物)である。「主成分とする」の用語の定義は上述の通りであって、製造上含まれてしまう不純成分が誘電体セラミックス中に微量含まれていても良い。不純成分としては、アルミニウム、カルシウム、ニオブ、鉄、鉛などの金属由来成分、ガラス成分および炭化水素系の有機成分などが挙げられる。
誘電体セラミックスは、誘電体セラミックスの全量に対して、チタン酸バリウムを93質量%以上含んでいると好ましく、95質量%以上含んでいるとより好ましく、98質量%以上含んでいると特に好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、実質的には100質量%である。チタン酸バリウムの含有量が多いほど、誘電体セラミックス中の結晶配向度を高めることが容易となり、特に比誘電率の向上に寄与するため、好ましい。
また、本発明の誘電体セラミックスの{111}面の配向度(F)は、0.72超を達成することができるが、0.75以上であると好ましく、0.80以上であるとより好ましく、0.85以上であるとさらにより好ましく、0.90以上であると特に好ましい。上記配向度が高いほど、特性を発現する結晶軸の方向がより一方向に配列するため、比誘電率や誘電損失等の誘電特性が向上する。一方、その上限は特に制限されないが、実質的には1.00である。{111}面の配向度(F)が高いほど、比誘電率や誘電損失等の誘電特性の向上に寄与するため、好ましい。
≪誘電体セラミックスの製造方法≫
本発明は、上記のような{111}面の配向度(F)が極めて高いチタン酸バリウムを主成分とする誘電体セラミックスの製造方法もまた提供する。本発明の製造方法は、Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子を前駆体(テンプレート粒子)として用いることを特徴とする。なお、本明細書中、「Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子」を単に「前駆体粒子」と称することもある。なお、「Ba11Ti2866.5の組成を有する」とは、当該粒子についてXRD解析(測定条件は、実施例に記載の条件とする)を行った際、Ba11Ti2866.5に帰属されるピークが確認されるものであれば、他の成分を含んでいてもよい。
すなわち、本発明の第二の形態は、上記誘電体セラミックスの製造方法であって、Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子を含む組成物を焼成する工程を含む、誘電体セラミックスの製造方法を提供する。より詳細には、本発明の誘電体セラミックスの製造方法は、(1)Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子(前駆体粒子)を製造する工程、(2)Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子(前駆体粒子)を含む組成物を焼成する工程に大別される。以下、各工程について詳細に説明する。
(1)Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子(前駆体粒子)を製造する工程
本発明の誘電体セラミックスの製造方法は、上記の通り、Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子(前駆体粒子)を用いる。
ここで、Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子は、バリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)が6.0:14.0〜6.0:16.5の範囲内である原料を用いたフラックス法によって合成されたものであると好ましい。
フラックス法とは、溶液法の一種であり、融剤法とも呼ばれるものである。フラックス法により結晶を成長させる際には、フラックスとなる適当な塩または酸化物と、溶質となる原料とを混合し、加熱溶融した後、溶液を徐冷あるいはフラックスを蒸発させながら過飽和状態をつくり、結晶を成長させる。フラックス法は、溶融液中の反応、成長であるため、物質拡散が容易であり、表面エネルギーの差異に起因する形状の異方性が発現しやすいため、特にBa11Ti2866.5の組成を有する粒子を製造する際に好ましく用いられる。
本発明者らは、鋭意検討することにより、Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子の製造方法として、好ましい方法もまた見出した。当該方法において、Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子の製造方法は、原料中のバリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)を所定の範囲内とし、フラックス法を用いることを特徴とする。
すなわち、本発明の第三の形態は、バリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)が6.0:14.0〜6.0:16.5の範囲内である原料を用いたフラックス法によって合成する工程を含む、Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子の製造方法を提供する。
Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子の製造方法(製造工程)では、主として(1−1)原料を混合する工程(原料混合工程)と、(1−2)加熱処理する工程(熱処理工程)とが行われる。さらに、必要に応じて(1−3)後処理工程を行ってもよい。以下、各工程について説明する。
(1−1)原料混合工程
本工程では、バリウム源となる化合物と、チタン源となる化合物と、フラックスとを混合する。これらの混合方法、混合順序は特に制限されないが、バリウム源となる化合物と、チタン源となる化合物とを湿式混合した後、乾燥させ、フラックス(融剤)を添加して乾式混合すると好ましい。かような方法をとることにより、各原料をより均一に混合することができる。
このとき、バリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)が6.0:14.0〜6.0:16.5の範囲内(1:2.33〜1:2.75)となるように、バリウム源となる化合物とチタン源となる化合物とを混合する。換言すると、前駆体粒子の製造に用いる原料において、バリウムに対するチタンのモル比を2.33〜2.75とすると好ましい。かような範囲とすることにより、配向度の高い誘電体セラミックスの製造に適した前駆体である、Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子を製造することができる。バリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)を上記範囲内とすることにより、当該混合比率内でエネルギー的に安定に存在しうるBa11Ti2866.5を主成分として得ることができる。
このように、上記モル比(Ba:Ti)は、従来技術よりもチタンをやや少なくする方が良好な板状結晶である前駆体粒子が生成する。より具体的には、従来、上記モル比(Ba:Ti)を6:17(1:2.83)で混合することにより得られる、BaTi1740を前駆体粒子とすることが多かったが、本発明では、これよりもチタンの含有比率を少なくすることを特徴の一つとする。すなわち、バリウムに対するチタンのモル比を2.83未満とすると好ましい。
ここで、上記モル比(Ba:Ti)は、6.0:14.5〜6.0:16.0(1:2.41〜1:2.67)の範囲内であると好ましく、6.0:15.0〜6.0:15.5(1:2.5〜1:2.58)の範囲内であるとより好ましい。特に、上記モル比(Ba:Ti)を6.0:15.5(1:2.58)とすることにより、Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子を作製することができる。その結果、当該粒子を用いることにより、配向度の極めて高い誘電体セラミックスを製造することができる。
前駆体粒子の製造のために用いられるバリウム源となる化合物としては、特に制限されないが、たとえば、水酸化バリウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、炭酸バリウム、酢酸バリウム、乳酸バリウム、バリウムアルコキシド、チタン酸バリウム(BaTiO)等を用いることができる。これらのうち、他の不純物の混入がなく反応を行える点、さらに取り扱いや入手が容易であるという点で、チタン酸バリウムが好ましく用いられる。なお、上記バリウム源となる化合物は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
前駆体粒子の製造のために用いられるチタン源となる化合物としては、特に制限されないが、酸化チタン(TiO)、含水酸化チタン、水和酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、水酸化チタンなどのチタン酸化物やチタン水酸化物、チタンアルコキシド、チタニルアセチルアセトナート、チタンカップリング剤などの有機チタン化合物、無機チタン塩、チタン酸バリウム(BaTiO)、シュウ酸チタニルアンモニウム、シュウ酸チタニルカリウム2水和物、シュウ酸チタンバリウム、などが挙げられる。これらの中でも、他の不純物の混入がなく反応を行える点、さらに取り扱いや入手が容易であるという点で、酸化チタン、チタン酸バリウムが好ましい。なお、チタン酸バリウムは、バリウム源にもなりうるが、原料中のバリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)を上記範囲内とするために、他の適当なチタン源が添加されうる。また、上記チタン源となる化合物は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
湿式混合を行う場合に用いる溶媒としては、特に制限されないが、たとえば、水;エタノール、メタノール、ベンジルアルコール、メトキシエタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。後に溶媒を除去する際の操作性を考慮すると、上記湿式混合の溶媒としてはアルコール溶媒が好ましく、なかでも、メタノールやエタノール等の低沸点溶媒を用いることが好ましい。なお、上記溶媒は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
溶媒の使用量は、固形分(バリウム源となる化合物およびチタン源となる化合物)の全重量に対して1〜15倍程度であると好ましく、5〜10倍程度であるとより好ましい。上記範囲とすることにより、原料が十分に混合されると共に、後に溶媒を除去する操作を簡便に行うことができる。
また、湿式混合を行う場合は、湿式ボールミルまたは撹拌ミルにより行われると好ましい。湿式ボールミルにおいてジルコニアボールを用いる場合には、直径1〜10mmの多数のジルコニアボールを用いて8〜24時間、好ましくは10〜20時間湿式混合すると好ましい。
上記のように、バリウム源となる化合物およびチタン源となる化合物を湿式混合した場合は、その後、溶媒を除去する(乾燥工程)。溶媒を除去する方法は特に制限されず、真空(減圧)乾燥、熱風乾燥等の加熱乾燥により行うことができるが、操作の簡便性から、加熱乾燥による方法が好ましく用いられる。なお、この時の「加熱乾燥」とは、後で詳述する(1−2)熱処理工程の温度範囲とは大きく異なり、比較的低温で行われるものである。
具体的には、上記乾燥工程における温度は、特に制限されるものではないが、50〜100℃で行われると好ましく、60〜90℃で行われると好ましく、70〜85℃で行われるとより好ましい。また、乾燥時間も特に制限されず、5〜30時間であると好ましく、10〜20時間であるとより好ましく、12〜18時間であると特に好ましい。
上記の通り溶媒を除去した後、フラックスを添加し、混合する。この時の混合方法としては特に制限されないが、乾式混合であると好ましい。また、撹拌混合に用いる装置としては、ボールミル、Vブレンダー、乳鉢、ミキサー等の従来公知の方法を用いることができる。
フラックス(融剤)としては、特に制限されないが、LiCl、NaCl、KCl、CsCl、CaCl、BaCl、KPO、KHPO、KHPO、NaPO、NaHPO、LiPO等が挙げられる。これらの中でも、取り扱いや入手が容易であるという点で、LiCl、NaCl、KClを用いることが好ましい。なお、上記フラックスは、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
フラックスの使用量は特に制限されないが、たとえば、バリウム源となる化合物およびチタン源となる化合物の全質量(合計質量)に対し、0.2〜1.5倍であると好ましく、0.8〜1.2倍であるとより好ましい。上記範囲とすることにより、上記原料をより均一に分散させることができ、良好な板状結晶である前駆体粒子を製造することができる。
(1−2)熱処理工程
上記の通り原料を混合することによって混合物を得た後、当該混合物の熱処理を行う。当該熱処理は、従来公知の方法により行うことができ、たとえば、上記混合物をるつぼに投入し、加熱することによって行われる。
このとき、熱処理温度としては、特に制限されないが、1000〜1250℃であると好ましく、1050〜1200℃であるとより好ましく、1080〜1130℃であると特に好ましい。また、熱処理時間としては、0.5〜3時間であると好ましく、1〜2時間であると特に好ましい。さらに、上記熱処理は、空気中または窒素、アルゴン等の不活性ガス中で行うことができる。
(1−3)後処理工程
上記熱処理工程を行った後、必要に応じて、水洗、乾燥等の後処理を行うと好ましい。熱処理後の混合物(前駆体粒子を含む混合物)を水洗することにより、フラックスやその他の不純物を除去することができ、不純物の少ない前駆体粒子を得ることができる。さらに、乾燥することにより、より不純物の少ない前駆体粒子を得ることができる。なお、水洗方法、乾燥方法は特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
上記のように製造された前駆体粒子(混合物)の組成は、XRD解析により確認することができ、少なくとも、Ba11Ti2866.5の組成を有する。なお、得られた前駆体粒子(混合物)中の組成として、Ba11Ti2866.5以外の組成が含まれていてもよい。
上記の方法によって製造されるBa11Ti2866.5の組成を有する粒子は、その形状が板状であると好ましい。なお、本明細書中「粒子が板状である」とは、具体的には、当該粒子のアスペクト比が3.0以上であるものを指す。このように、アスペクト比が3.0以上の範囲内であれば、以下で詳述するように、結晶配向セラミックスを作製する際に、前駆体粒子がランダムに並ぶのではなく、平面状に並ぶ(積層する)ことができるため、優れたテンプレートとして機能し、より配向度の高い誘電体セラミックスを製造することができる。なお、アスペクト比は、実施例に記載の測定方法により算出された値を採用する。さらに、上記理由から、前駆体粒子のアスペクト比は、3.0以上であるとより好ましく、4.0以上であると特に好ましい。
上記板状の前駆体粒子の板面直径は、特に制限されないが、配向度の高い誘電体セラミックスを作製するうえで、0.1〜100μmであると好ましく、1〜50μmであるとより好ましく、2〜30μmであると特に好ましい。上記(1−2)熱処理工程における処理温度を高くすることにより、板面直径を大きくすることができる。また、原料に含まれるチタンのモル比を多くすることにより、板面直径を大きくすることもできる。これは、原料中のチタンを多くすることにより、BaTi1740相が生成し、当該相を核として、Ba11Ti2866.5の粒成長を促進するためであると推定される。なお、本明細書中、前駆体の板面直径は、実施例に記載の方法により測定された値を採用するものとする。
(2)Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子(前駆体粒子)を含む組成物を焼成する工程
本工程では、上記の工程により製造されたBa11Ti2866.5の組成を有する粒子(前駆体粒子)を焼成して誘電体セラミックスの製造を行う。このとき、配向を制御するため、TGG(Template Grain Growth:テンプレート粒子成長)法やRTGG(Reactive Template Grain Growth:反応性テンプレート粒子成長法)法を用いると好適である。TGG法やRTGG法は、異方形状のテンプレート粒子と微細なマトリックス粒子とを混合し、テープキャスト法等の方法で異方形状のテンプレート粒子の配置を制御した後、焼成することで配向制御を行う方法であるが、本発明に係る誘電体セラミックスを製造する際、RTGG法が好ましく用いられる。
上記のRTGG法では、テンプレート粒子としてのBa11Ti2866.5の組成を有する粒子と、マトリックス粒子とを含む組成物を調製し、当該組成物を焼成することにより、誘電体セラミックスを製造する。
したがって、本工程では、主として(2−1)テンプレート粒子とマトリックス粒子とを混合する工程(組成物調製工程)と、(2−2)組成物を用いてグリーンシートを作製する工程(グリーンシート作製工程)と、(2−3)組成物を焼成する工程(焼成工程)とが行われる。以下、各工程について説明する。
(2−1)組成物調製工程
本工程では、テンプレート粒子としてのBa11Ti2866.5の組成を有する粒子(前駆体粒子)と、マトリックス粒子とを混合し、グリーンシート作製用の組成物(スラリー)を調製する。さらに、必要に応じて、分散剤、バインダ、可塑剤等の添加剤を混合する。これらの混合方法、混合順序は特に制限されないが、上記粒子および添加剤をより均一に混合できるという点で、湿式混合すると好ましい。
テンプレート粒子としてのBa11Ti2866.5の組成を有する粒子は、上記工程(1)により製造されたものを用いると好ましい。
マトリックス粒子としては、バリウム源となる化合物が用いられる。当該化合物としては特に制限されないが、たとえば、バリウムの酸化物、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、酢酸塩、シュウ酸塩等を用いることができる。より具体的には、炭酸バリウム(BaCO)、水酸化バリウム(Ba(OH)・HO、Ba(OH)・8HO)、酢酸バリウム((CHCOBa)等を挙げることができる。これらのうち、他の不純物の混入がなく反応を行える点、さらに取り扱いや入手が容易であるという点で、炭酸バリウム、酢酸バリウムが好ましく用いられる。なお、上記バリウム源となる化合物は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
テンプレート粒子(前駆体粒子)とマトリックス粒子とは、バリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)が1:1となるように混合されると好ましい。かような比率とすることにより、目的物であるチタン酸バリウム(BaTiO)中のバリウムとチタンのモル比(1:1)に近づけることができ、より不純物が少なく、より配向度の高い誘電体セラミックスを製造することができる。
以下、グリーンシート作製用組成物に含まれうる添加剤について説明する。なお、当該組成物に含まれうる添加剤は、以下に挙げるものに限定されず、本発明の効果を損なわない限りにおいて、潤滑剤、帯電防止剤等、他の添加剤が添加されてもよい。
組成物に含まれうる分散剤としては、特に制限されないが、たとえば、リン酸エステル系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤等が挙げられる。これらの中でも、リン酸エステル系分散剤を用いると好ましい。なお、上記分散剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分散剤の使用量は、特に制限されないが、テンプレート粒子とマトリックス粒子の全質量(合計質量)に対して、0.1〜5質量%であると好ましく、0.3〜3質量%であるとより好ましく、0.5〜1.5質量%であると特に好ましい。上記範囲とすることにより、分散剤として十分な効果が得られると共に、得られる誘電体セラミックス中に含まれる不純物を少なくすることができる。その結果、配向度の高い誘電体セラミックスを得ることができる。
さらにまた、組成物に含まれうるバインダとしては、特に制限されないが、たとえば、PVA(ポリビニルアルコール)、PVB(ポリビニルブチラール)、アクリル系樹脂が挙げられる。なお、上記バインダは、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
バインダの使用量は、特に制限されないが、テンプレート粒子とマトリックス粒子の全質量(合計質量)に対して、0.1〜50質量%であると好ましく、3〜30質量%であるとより好ましく、5〜25質量%であると特に好ましい。上記範囲とすることにより、バインダとして十分な効果が得られると共に、得られる誘電体セラミックス中に含まれる不純物を少なくすることができる。その結果、配向度の高い誘電体セラミックスを得ることができる。
さらにまた、組成物に含まれうる可塑剤としては、特に制限されないが、たとえば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(DOP)、フタル酸ジ(2−エチルブチル)などのフタル酸系可塑剤、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)(DOA)などのアジピン酸系可塑剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール系可塑剤、トリエチレングリコールジブチレート、トリエチレングリコールジ(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)などのグリコールエステル系可塑剤などが挙げられる。これらの中でも、組成物を用いてグリーンシートとしたときに、シートの柔軟性が良好であることから、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等などのフタル酸系可塑剤を用いると好ましい。なお、上記可塑剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
可塑剤の使用量は、特に限定されないが、テンプレート粒子とマトリックス粒子の全質量(合計質量)に対して、0.1〜20質量%であると好ましく、1〜10質量%であるとより好ましく、1.5〜8質量%であると特に好ましい。上記範囲とすることにより、可塑剤として十分な効果が得られると共に、得られる誘電体セラミックス中に含まれる不純物を少なくすることができる。その結果、配向度の高い誘電体セラミックスを得ることができる。
湿式混合を行う場合に用いる溶媒としては、特に制限されないが、たとえば、水;エタノール、メタノール、ベンジルアルコール、メトキシエタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。後に、組成物に含まれる各種添加剤の溶解性や分散性を考慮すると、上記湿式混合の溶媒としてはアルコール系溶媒、芳香族系溶媒が好ましい。これらの中でも、アルコール系溶媒としては、メタノールやエタノール等、芳香族系溶媒としては、トルエン等の低沸点溶媒を用いることが好ましい。なお、上記溶媒は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。二種以上の溶媒を混合するときは、上記アルコール系溶媒と、芳香族系溶媒を混合すると特に好ましい。
溶媒の使用量は、テンプレート粒子とマトリックス粒子の全質量(合計質量)の全重量に対して0.5〜10倍程度であると好ましく、1〜5倍程度であるとより好ましい。上記範囲とすることにより、テンプレート粒子、マトリックス粒子、添加剤が十分に混合されると共に、後に溶媒を除去する操作を簡便に行うことができる。
また、湿式混合を行う場合は、湿式ボールミルまたは撹拌ミルにより行われると好ましい。湿式ボールミルにおいてジルコニアボールを用いる場合には、直径0.1〜10mmの多数のジルコニアボールを用いて8〜24時間、好ましくは10〜20時間湿式混合すると好ましい。
(2−2)グリーンシート作製工程
本工程では、Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子(前駆体粒子)と、マトリックス粒子と、各種添加剤とを混合することによって得られた組成物を、適当な大きさ、形状となるようにシート成形し、グリーンシートを作製する。ここで、グリーンシートを作製する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。たとえば、ドクターブレード法やカレンダーロール法等のテープ成形法等によりシート状に成形し、これを乾燥することによりグリーンシートを得る。なかでも、シート面に対する上記前駆体粒子の配向配置が容易に可能であるため、ドクターブレード法を用いることが好ましい。前駆体粒子の配向配置が良好に行われる結果、配向度の高い誘電体セラミックスを得ることができる。
グリーンシートの厚さ(乾燥後の厚さ)は、特に制限されないが、50μm以下であると好ましく、30μm以下であるとより好ましい。一方、その下限は特に限定されないが、実質的には0.3μm以上である。
さらに、得られたグリーンシートを所望の厚さになるまで積層し、その後加熱圧着を行ってもよい。このとき、全体の厚さ(乾燥後の厚さ)が0.1〜5mm程度、好ましくは1〜3mm程度となるまで積層すると好ましい。また、加熱圧着時の条件は特に制限されないが、温度は50〜150℃程度であると好ましく、圧力は10〜200MPa程度であると好ましく、加圧時間は1〜10分程度であると好ましい。
その後、グリーンシートを積層したものを裁断して所望のチップ形状とし、グリーンチップを作製してもよい。
さらに、得られたグリーンシート(またはグリーンチップ)中に含まれるバインダ成分等を熱分解して除去する処理、いわゆる脱脂処理を行うことが好ましい。脱脂処理の条件は特に制限されず、使用したバインダの種類にも依存するが、150〜400℃であると好ましく、200〜350℃であるとより好ましい。また、脱脂処理時間としては、特に制限されないが、5時間以上であると好ましく、10時間以上であるとより好ましい。さらに、上記熱処理は、空気中または窒素、アルゴン等の不活性ガス中で行うことができるが、操作の簡便さの点から、空気中で行うことが好ましい。
(2−3)焼成工程
本工程では、上記工程(2−2)において得られたグリーンシート(またはグリーンチップ)を、焼成する。焼成方法は、従来公知の方法により行うことができる。
このとき、焼成温度としては、1250℃〜1600℃であると好ましく、1300℃〜1450℃であるとより好ましく、1350℃〜1450℃であると特に好ましい。焼成温度を1350℃〜1450℃とすることにより、特に配向度の高い誘電体セラミックスを得ることができる。また、熱処理時間としては、特に制限されないが、1〜4時間であると好ましく、1.5〜3時間であるとより好ましく、2〜3時間であると特に好ましい。さらに、上記熱処理は、空気中または窒素、アルゴン等の不活性ガス中で行うことができるが、操作の簡便さの点から、空気中で行うことが好ましい。
≪セラミック電子部品≫
本発明の第四の形態は、上記誘電体セラミックスまたは上記の製造方法により得られる誘電体セラミックスを含む、セラミック電子部品を提供する。上記誘電体セラミックスは、配向度が高く、優れた誘電特性を有する。したがって、本発明の誘電体セラミックスは、たとえば、種々のセラミック電子部品に好適に用いることができる。以下、セラミック電子部品の一例である、積層セラミックコンデンサについて説明する。
(積層セラミックコンデンサ)
グリーンシート(またはグリーンチップ)を焼成することにより得られる誘電体セラミックスは、薄膜状となっており、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の誘電体層として用いることができる。積層セラミックコンデンサの製造方法としては特に制限されないが、例えば、以下のようにして製造される。
まず、前記グリーンシート上に、各種金属等を含有する内部電極用導電性ペーストを所定形状にスクリーン印刷して、内部電極用導電性ペースト膜を形成する。内部電極の材料としては特に制限されず、例えば、Cu、Ni、W、Mo、Ag等の金属またはこれらの合金等からなるものなどが挙げられる。
外部電極の材料としては特に制限されず、例えば、Cu、Ni、W、Mo、Ag等の金属またはこれらの合金;In−Ga、Ag−10Pd等の合金;カーボン、グラファイト、カーボンとグラファイトとの混合物等からなるものなどが挙げられる。
次いで、内部電極用導電性ペースト膜が形成された複数のグリーンシートを積層するとともに、これらグリーンシートを挟むように、導電性ペースト膜が形成されていないグリーンシートを積層して、圧着した後、必要に応じてカットすることによって、積層体(グリーンチップ)を得る。
そして、得られた積層体(グリーンチップ)に脱バインダ処理を施した後、当該グリーンチップを、不活性ガス雰囲気下において焼成して、コンデンサチップ体を得る。コンデンサチップ体においては、グリーンシートを焼成してなる焼結体からなる誘電体層と内部電極とが交互に積層されている。
なお、得られたコンデンサチップ体には、誘電体層を再酸化するためアニール処理を施すことが好ましい。
次に、コンデンサチップ体の端面から露出した内部電極の各端縁それぞれに外部電極が電気的に接続するように、コンデンサチップ体の端面上に、上記の各種金属等を含有する外部電極用ペーストを塗布することによって外部電極を形成する。そして、必要に応じ、外部電極表面に、めっき等により被覆層を形成する。このようにして、積層セラミックコンデンサを製造することができる。
セラミック電子部品の一例として上記積層セラミックコンデンサを挙げたが、本発明に係るセラミック電子部品は、これに限定されるものではない。たとえば、高周波モジュール、サーミスタ用電子部品、またはこれらの複合部品等、種々の他の部品が挙げられる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
≪誘電体セラミックスの製造≫
(実施例1)
・前駆体粒子の製造
フラックス法を用いて、以下の通り、結晶配向セラミックス製造用板状粉末(前駆体粒子)を作製した。まず、チタン酸バリウム(BaTiO)粉末(戸田工業株式会社製 T−BTO−100RK)30.0gと二酸化チタン(TiO)粉末(昭和電工株式会社製 F−6A)14.55gを、溶媒としてエタノール400mLを用いて湿式ボールミル(ジルコニアボール、φ3mm)で混合した。なお、このとき、バリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)は6.0:14.5となる。次いで、得られたスラリーを80℃で16時間乾燥させて混合物を得た後、当該混合物と同じ重量のNaCl(キシダ化学株式会社製)をフラックスとして添加し、乳鉢で混合した。得られた粉末をるつぼに入れ、1100℃の温度で1時間加熱した。室温まで冷却した後の塊を繰り返し水洗して塩化物を除去し、合成粉末(前駆体粒子)を得た。表1に原料の調合比等の詳細を示す。
・誘電体セラミックスの製造
上記の通り得られた前駆体粒子を用いて、以下の通り、結晶配向セラミックスを作製した。まず、全体でモル比がBa:Ti=1:1になるように、前駆体粒子 26.7g、BaCO(堺化学工業株式会社製 BW−KS) 36.8gを配合し、リン酸エステル系分散剤(ビックケミージャパン株式会社製 DISPERBYK(登録商標)−103) 0.46g、トルエン 48.4g、エタノール 44.0gの混合液を溶媒として加え、これをボールミルで湿式混合した。16時間経過後、バインダとしてのポリビニルブチラール 7.2gと可塑剤としてのフタル酸ジブチル 1.73gを加えて、さらにボールミルで16時間湿式混合した。得られたスラリーを用いて、ドクターブレード装置にてシート成形した。シート厚みは、20μm程度とした。乾燥後のシートを厚みが約1.5mm程度になるまで積層し、静水圧下で80℃、49MPaで圧着し、配向成形体とした。これを1cm角にカットし、300℃にて、24時間、脱脂処理を行い、さらに、大気中1400℃の温度で2時間加熱し、誘電体セラミックス(1)を得た。
(実施例2〜6)
上記実施例1の前駆体粒子の製造において、チタン酸バリウム粉末と二酸化チタン(TiO)粉末の使用量を変更し、バリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)を表1に記載の値にそれぞれ変更し、さらに、誘電体セラミックスの製造において、前駆体粒子とBaCOの使用量を変更して、トータルでモル比がBa:Ti=1:1になるようにしたこと以外は、上記実施例1と同様にして誘電体セラミックス(2)〜(6)をそれぞれ得た。
(比較例1および2)
上記実施例1の前駆体粒子の製造において、チタン酸バリウム粉末と二酸化チタン(TiO)粉末の使用量を変更し、バリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)を表1に記載の値にそれぞれ変更し、さらに、誘電体セラミックスの製造において、前駆体粒子とBaCOの使用量を変更して、トータルでモル比がBa:Ti=1:1になるようにしたこと以外は、上記実施例1と同様にして比較誘電体セラミックス(1)および(2)をそれぞれ得た。
≪評価≫
上記実施例および比較例で得られた誘電体セラミックスについて、以下の通り、評価した。
(SEM観察)
上記実施例4で得られた前駆体粒子について、SEM分析を行った。なお、測定は、日本電子株式会社製S−4800を用いて行った。得られたSEM像を図1に示す。
その結果、前駆体粒子として、良好な板状粒子が形成されていることが確認された。なお、他の実施例において得られた前駆体粒子についてもSEM分析を行ったところ、良好な板状粒子が形成されていることが確認された。
また、上記比較例2で得られた前駆体粒子についても同様にSEM分析を行った。得られたSEM像を図2に示す。
その結果、前駆体粒子として、良好な板状粒子がほぼ形成されていないことが確認された。なお、他の比較例において得られた前駆体粒子についてもSEM分析を行ったところ、良好な板状粒子がほぼ形成されていないことが確認された。
(板面直径およびアスペクト比の測定)
上記SEM観察において、前駆体粒子の板面直径およびアスペクト比を測定した。
板面直径(D)は、無作為に、50個の粒子を抽出してその平面部分の直径を測定し、これを平均したものである。また、粒子の平面部分の形状が円形でない場合には、長径(長軸長さ)を測定して算出したものである。
アスペクト比は、上記SEM観察において、無作為に抽出した50個の粒子の平均値を意味する。アスペクト比は、板面直径(D)と、厚み(T)の比率(D/T)として求められる。このとき厚みが一定でない場合は、最も厚い部分の厚みをTとする。なお、板面直径の算出方法は上記の通りである。
得られた結果を表1に示す。
(主生成物の決定)
上記実施例および比較例において得られた前駆体粒子および誘電体セラミックスの主成分(主生成物)をXRD測定により特定した。このとき、XRD測定は、X線回折装置(PANalytical社製 Empyreを用いて行い、線源はCu−Kα、電圧45kV、電流40mAとした。
(配向度測定)
上記実施例および比較例で得られた誘電体セラミックスについて、配向度を求めた。配向度はXRD回折パターンから算出した。このとき、XRD測定は、X線回折装置(PANalytical社製 Empyreを用いて行い、線源はCu−Kα、電圧45kV、電流40mAとした。配向度を表すパラメータとしてはLotgeringの提唱するFファクターを用い、配向度(F)は以下の数式(1)により求めた。
なお、上記数式(1−1)および(1−2)において、I0(111)は{111}面の理論ピーク強度を示す。理論ピーク強度I0(111)はJCPDSによるデータを使用した。また、I(111)は、2θ=20°〜80°の回折線を用いた実測ピーク強度を示す。さらに、ΣI(hkl)は評価対象の誘電体セラミックスの全結晶面(hkl)のX線ピーク強度の総和である。また、ΣI0(hkl)は基準試料の全結晶面(hkl)のX線ピーク強度の総和である。
得られた結果を表1に示す。
(相対密度測定)
上記実施例および比較例で得られた誘電体セラミックスについて、アルキメデス法を用いて密度を測定した。相対密度は、試料の実測密度を理論密度で除することで算出し、このとき、理論密度は6.02g/cmをとした。
得られた結果を表1に示す。
(比誘電率および誘電損失測定)
上記実施例および比較例で得られた誘電体セラミックスについて、比誘電率および誘電損失について評価した。
電極としてインジウム−ガリウム(In−Ga)合金を各誘電体セラミックスの上下面に塗布し、LCRメーター(Agilent社製 4284A 測定条件:AC印加電圧1.0V/mm、1kHz)を用いて比誘電率および誘電損失の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
上記表1より、実施例のすべてにおいて、従来の原料のモル比(Ba:Ti=6.0:17.0)で作製した前駆体粒子を用いて製造された誘電体セラミックス(比較例2)よりも、配向度が高く、さらに、誘電特性(比誘電率および誘電損失)が良好であるという結果が得られた。一方、前駆体粒子の調製時に使用する原料において、Tiの比率を少なくし、Ba:Ti=6.0:13.5として作製した誘電体セラミックス(比較例1)と比較しても、本発明の誘電体セラミックスは、配向度が高く、誘電特性(比誘電率および誘電損失)もまた良好であった。
このような結果は、前駆体粒子のSEM像による分析結果も考慮すると、前駆体粒子を作製する際に用いる原料のモル比(Ba:Ti)が前駆体粒子の組成および形状に大きく影響を与えており、原料のモル比(Ba:Ti)を6.0:14.0〜6.0:16.5の範囲内とすることにより、良好な板状粒子を得ることができることを示唆している。そして、その結果、当該前駆体粒子を用いて製造される誘電体セラミックスの誘電特性を向上させることができると考えられる。
また、前駆体粒子の主成分がBa11Ti2866.5であるとき、誘電特性に優れる誘電体セラミックスが得られること、原料のモル比(Ba:Ti)を6.0:14.0〜6.0:16.5の範囲内とすることにより、主成分がBa11Ti2866.5である前駆体粒子が得られることが示された。
さらに、原料のモル比(Ba:Ti)が、6.0:15.5であるとき(実施例4)、得られる誘電体セラミックスの誘電特性が最も良好であった。かような結果は、実施例4において得られた前駆体粒子のアスペクト比も考慮すると、実施例4において、誘電体セラミックスの製造に最も好適な前駆体粒子(Ba11Ti2866.5粉末)が得られていることを示唆している。

Claims (5)

  1. チタン酸バリウムを主成分とし、{111}面の配向度が0.72超である、誘電体セラミックスを製造する方法であって、
    Ba 11 Ti 28 66.5 の組成を有する粒子を含む組成物を焼成する工程を含む、
    誘電体セラミックスの製造方法。
  2. 前記Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子は、バリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)が6.0:14.0〜6.0:16.5の範囲内である原料を用いたフラックス法によって合成される、請求項に記載の誘電体セラミックスの製造方法。
  3. 前記Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子が板状である、請求項またはに記載の誘電体セラミックスの製造方法。
  4. バリウムとチタンのモル比(Ba:Ti)が6.0:14.0〜6.0:16.5の範囲内である原料を用いたフラックス法によって合成する工程を含む、Ba11Ti2866.5の組成を有する粒子の製造方法。
  5. 請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法により得られる誘電体セラミックスを含む、セラミック電子部品の製造方法
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