以下では、図1〜6に基づき、本発明による空気噴射式織機における緯糸規制装置の一実施例について説明する。
図1に示すように、空気噴射式織機においては、筬1は、筬羽として織前CF側に凹部を有する変形筬羽1aが用いられ、その変形筬羽1aが多数枚並設されることによって形成された緯糸案内溝1bを有する変形筬となっている。そして、筬1は、下側の口金がリードホルダ3の凹溝3a内においてリードグリッパ3bによって締付け保持されるかたちでリードホルダ3に支持されている。因みに、リードホルダ3は、スレーソードを介してロッキングに支持されたスレー(いずれも図示略)上に載置されるかたちで設けられており、ロッキングシャフトが往復回動駆動されることによってロッキングシャフトを揺動中心として揺動駆動される。そして、筬1は、リードホルダ3が前記のように揺動駆動されることにより、最後退位置と筬打ち時の位置である最前進位置との間で往復揺動運動を行う。
また、メインノズル5は、周知の空気噴射式織機と同様に、図6に示すように、リードホルダ3に支持されてリードホルダ3上に設けられている。詳しくは、リードホルダ3上には、その一部において筬1と同様に保持されたノズルブラケット6が設けられると共に、そのノズルブラケット6上にノズルサポータ7が取り付けられ、そのノズルサポータ7に本体部5b及びパイプ部5aが支持されるかたちでメインノズル5がリードホルダ上に設けられている。なお、図示の例では、2つのメインノズル5、5(但し、本体部5bについては一体化されたものとなっている。)が設けられ、多色の緯入れに対応したものとなっている。
また、空気噴射式織機においては、緯入れ方向に関しメインノズル5と給糸側の織端We(以下、単に「織端We」とも言う。)との間の織端We寄りの位置であって経糸方向に関しその切断領域が織前付近に位置するような配置で、給糸カッタ20が設けられている。この給糸カッタ20は、固定刃22及び可動刃21から成り、カッタブラケット11を介して織機のフレーム(図示略)に支持されている(図1、3)。
詳しくは、織機の左右フレーム間に架設された梁材であるフロントトップステー12上には、スペーサ13及びスライドバーホルダ14を介してスライドバー15が支持されている。このスライドバー15は、長手方向と直交する方向の断面形状が台形である長尺の部材であって、経糸方向に関し織前CFから前方に離間した位置で、織機の幅方向(織布Wの織幅方向)に延在するように設けられている。そして、そのスライドバー15上には、緯入れ方向に関し給糸側の織端Weに隣接する配置において、カッタブラケット11がボルト16によって取り付けられている。従って、カッタブラケット11は、スライドバー15、スライドバーホルダ14、スペーサ13及びフロントトップステー12を介して織機のフレームに対し支持されると共に、織機上において経糸方向に関し織前CFから前方へ離間した位置に設けられたものとなっている。
なお、図示の構成では、カッタブラケット11は、板材を長手方向における2箇所において略直角に屈曲させて形成されたコ字状の形状を有するものとなっており、前記屈曲によって対向した状態となる部分の一方11bを取付部として、その取付部11cの外側面においてスライドバー15の上面に載置されると共に、その取付部11cに連続する部分である支持部11aの外側面が織前CF側を向くと共にその外側面が緯入れ方向と平行となる向きで、スライドバー15に対し固定されている。
そして、給糸カッタ20は、そのようなカッタブラケット11によって支持されるものであるが、そのための構成として、図示の例では、一対の支持プレート17、17がカッタブラケット11に対し取り付けられると共に、支持ブロック18が一対の支持プレート17、17の一方に対し取り付けられるものとなっている。
その構成について、より詳しくは、各支持プレート17は、板状の部材であり、その板厚方向をカッタブラケット11の幅方向(緯入れ方向)に向けると共に前記幅方向に離間する配置で、カッタブラケット11における支持部11aの前記外側面に対し取り付けらるかたちでカッタブラケット11に支持されている。また、支持ブロック18は、略直方体形状のブロック状の部材であり、一対の支持プレート17、17の一方、具体的には、織機上において織端We側に配置される支持プレート17に対し、その支持プレート17における支持ブラケット11側の面とは反対側の面に対し取り付けられ、支持プレート17を介してカッタブラケット11に支持されている。なお、前記のように、カッタブラケット11は、織機上において経糸方向に関し織前CFから前方へ離間した位置に設けられるものであり、前記のようにカッタブラケット11に支持される両支持プレート17、17及び支持ブロック18の織機上における配置も、経糸方向に関し織前CFから前方へ離間した位置となっている。
また、給糸カッタ20の支持について、より詳しくは、先ず、固定刃22は、前記のように支持プレート17に対し取り付けられた支持ブロック18によって支持されている。具体的には、織機上において織端We側となる支持ブロック18の側面には、薄板状の部材で構成された固定刃用ホルダ22aがボルト22cによって取り付けられている。また、その固定刃用ホルダ22aは、支持ブロック18に取り付けられた状態において支持ブロック18よりも上方に延在する部分を有するものとなっている。
その上で、固定刃22は、その固定刃用ホルダ22aにおける前記部分に対し、側面を対向させた状態でネジ部材22bによって取り付けられて固定刃用ホルダ22aに支持されている。従って、固定刃22は、固定刃用ホルダ22aを介して支持ブロック18に支持されるものとなっており、さらには、その支持ブロック18及び支持プレート17を介して、織機のフレームに支持されたカッタブラケット11に対し支持されるものとなっている。そして、固定刃22は、前記のように織機上で支持された状態において、経糸方向と平行に織前CF側(後方)へ向けて延在すると共に、その先端が経糸方向において織前CFを超えた位置に位置するものとなっている。但し、固定刃22は、前記のように織機上で支持された状態において、上下方向に関しては、前記幅方向に見て織前CFよりも下方に位置するものとなっている。
また、可動刃21は、カッタブラケット11に固定された一対の支持プレート17、17に対し支持されている。具体的には、一対の支持プレート17、17には、支持ブロック18に支持された固定刃22と上下方向に関し略同じ高さ位置で、両支持プレート17、17間に架設されるかたちで、支持軸17aが軸受等を介して回転自在に支持されている。但し、その支持軸17aは、前記幅方向に関し、各支持プレート17の外側に突出する、言い換えれば、その両端部のそれぞれが各支持プレート17の外側に位置するようなかたちで設けられている。そして、その支持軸17aの両端部のうちの織機上において織端We側となる端部(一端)には、可動刃用ホルダ21aが相対回転不能に取り付けられている。
その上で、可動刃21は、ネジ部材21bによって可動刃用ホルダ21aに対し取り付けられて支持されており、可動刃用ホルダ21aを介して支持軸17aに支持された状態となっている。従って、可動刃21は、可動刃用ホルダ21a及び支持軸17aを介して一対の支持プレート17、17に対し回動可能に支持されるものとなっており、さらには、その支持プレート17、17を介して、織機のフレームに支持されたカッタブラケット11に対し支持されるものとなっている。そして、可動刃21は、前記のように織機上で支持された状態において、固定刃22と平行に織前CF側(後方)へ向けて延在すると共に、その先端が経糸方向において織前CFを超えた位置に位置するものとなっている。また、可動刃21は、前記のように織機上で支持された状態において、前記幅方向に関し固定刃22の織端We側に位置し、その回動に伴って固定刃22と摺接するように設けられるものとなっている。
因みに、支持軸17aにおけるの前記一端(可動刃21が支持される側)とは反対側の端部(他端)には、可動刃21を回動駆動するための駆動伝達機構が連結されている。この駆動伝達機構は、図示の例では、回動レバー19aと駆動ロッド19bとで構成されており、回動レバー19aがその一端において支持軸17aの前記他端に対し相対回転不能に取り付けられると共に、その回動レバー19aの他端に対し、軸受(例えば、球面軸受)を介し、駆動ロッド19bがその一端において回動可能に連結されている。但し、図示の構成では、駆動ロッド19bは、織機上において上下方向に延在するものとなっており、回動レバー19aに連結される前記一端が上端となっている。その上で、駆動ロッド19bは、その他端(下端)においてカム機構等の駆動機構(図示略)に連結されており、駆動機構によって上下方向に往復運動するように駆動されるものとなっている。
そして、前記のように駆動ロッド19bが上下方向に往復駆動されることにより、回動レバー19aを介して駆動ロッド19bに連結された支持軸17aが往復回動駆動され、その支持軸17aに対し可動刃用ホルダ21aを介して相対回転不能に取り付けられた可動刃21が支持軸17aの軸心を中心に往復回動運動を行うものとなっている。
なお、その可動刃21の往復回動運動については、織機の1サイクル(筬打ち〜筬打ち)で可動刃21が1往復するものであり、且つ、緯入れされた緯糸が筬1によって筬打ちされる時点では、可動刃21における刃面のうちの少なくとも少なくとも織前CFよりも前方に位置する部分が織前CFよりも上方に位置すると共に、織機の1サイクル中における筬打ち後の所定のタイミングにおいて前記刃面における織前CF付近に位置する部分が固定刃22の刃面と交錯するように設定されている。
従って、緯入れされた緯糸が筬1によって運ばれて織前CF側へ移動する過程において、経糸方向に関しその緯糸が給糸カッタ20(固定刃22及び可動刃21)の存在範囲に達する時点では、固定刃21はその先端部がその緯糸よりも上方に位置する状態となるため、前記移動に伴い、その緯糸のうちの織端Weとメインノズルとの間に連なる部分が給糸カッタ20における固定刃22と可動刃21との間に導かれる。そして、前記のような可動刃21の往復回動運動によって可動刃21の刃面と固定刃22の刃面とが交錯することにより、前記所定のタイミングにおいて、その緯糸における前記部分が給糸カッタ20の位置で切断されるものである。
また、本発明が前提とする空気噴射式織機は、製織される織布Wの織端に絡み耳組織を形成するための耳組装置9が備えられるものであり、図2に示すように、耳組装置9は、経糸方向に関し筬1の最後退位置(図2において二点鎖線で示す位置)よりも後方で、給糸側においては、緯入れ方向に関し経糸列Tの側方(メインノズル5側)に設けられるものである。なお、この耳組装置9は、例えば周知の遊星歯車式耳組装置(遊星耳組装置)であり、この遊星耳組装置9は、専用の給糸体としての一対の耳糸ボビンを備えている。そして、その遊星耳組装置9においては、耳糸ボビンが遊星運動を行うように回転駆動され、それにより、各耳糸ボビンから引き出される一対の耳糸ST、STに開口運動が与えられると共に両耳糸ST、STが撚り合わされ、織布Wの織端に絡み耳組織が形成されるものである。
但し、本発明が前提とする空気噴射式織機に備えられる耳組装置は、前記のような遊星耳組装置9に限らず、前述の特許文献3に開示された耳組装置であってもよく、また、それ以外の構成、例えば、所謂プロペラ形式の耳組装置あるいはディスク形式の耳組装置であってもよい。
以上のような構成を有する空気噴射式織機において、本発明では、緯入れ方向に関しメインノズル5と給糸側の織端Weとの間に緯糸規制装置が設けられるものであり、本実施例では、その緯糸規制装置としての緯糸規制部材30が、緯入れ方向において給糸カッタ20における固定刃22に隣接するような配置で設けられるものとなっている。この緯糸規制部材30について、詳しくは以下のようなものである。
本実施例における緯糸規制装置としての緯糸規制部材30は、薄板状の板材で形成されたものであり、図4に示すように、板厚方向に見てその側面(板厚方向と直交する面)の形状が略長方形状の基部31と、その基部31の外周端面(前記側面と直交する面)から突出するように形成された規制部32とを有する構成となっている。
これらの各部について、基部31は、その長手方向(前記側面の長辺方向)の寸法が固定刃22の長手方向の寸法よりも大きく、且つ、前記長手方向と直交する方向(短手方向)の寸法も固定刃22の短手方向の寸法よりも若干大きいものとなっている。さらに、基部31は、短辺と長辺とが交差する部分である4つの頂部のうちの1つが切り欠かれた形状となっている。なお、以下では、長手方向に関し、基部31における前記のように頂部の一方が切り欠かれた側の端部を基部31の先端部とし、その反対側を後端部とする。
また、規制部32は、基部31における外周端面のうちの前記長手方向に延在する2つの外周端面(長手端面)31a、31bの一方であって前記のように頂部が切り欠かれた側の長手端面31bから前記短手方向に突出するように形成されている。この規制部32は、図示のように板厚方向に見て略台形状に形成されると共に、板厚方向と平行な外周端面のうちの前記長手方向と交差する外周端面32a、32bの一方であって基部31の前記先端部に近い方の外周端面32aが基部31における前記の長手端面31bと直交するように形成されている。
そして、緯糸規制部材30は、固定刃22を支持する固定刃用ホルダ22aに対し、固定刃22を固定刃用ホルダ22aに取り付けるためのネジ部材22bによって取り付けられている。言い換えれば、緯糸規制部材30と固定刃22とは、ネジ部材22bによって共締めされるかたちで固定刃用ホルダ22aに固定されている。但し、緯糸規制部材30は、基部31における長手端面31bが上側の面となって規制部32が基部31よりも上方に位置する向きで、緯入れ方向に見て下面となる長手端面31aの位置が可動刃22の下面の位置に一致するような配置で設けられるものとなっている。そして、前述のように基部31の短手方向の寸法が固定刃22の短手方向の寸法よりも若干大きいものとなっていることから、規制部32は、緯入れ方向に見て固定刃22の上縁(刃面)よりも上方に位置するものとなり、また、規制部32における外周端面32aは、固定刃22の上方で上下方向に延在するものとなっている。
なお、空気噴射式織機において、給糸カッタ20における固定刃22は、前述のように固定刃用ホルダ22aに取り付けられた状態において、上下方向に関し織前CFよりも若干下方に位置するものとなっている。また、緯糸規制部材30における基部31の長手端面31bも、上下方向に関し、固定刃22の上縁(刃面)よりも上方に位置するものの、織前CFよりも下方に位置するものとなっている。そして、緯糸規制部材30における規制部32は、上下方向に関し、前記のように織前CFよりも下方に位置する基部31の長手端面31bから上方へ向けて延在すると共に、織前CFを超えた位置まで延在するものとなっている。言い換えれば、規制部32は、緯糸規制部材30が固定刃用ホルダ22aに取り付けられた状態において、上下方向に関し、その外周端面32aが織前CFよりも下方に位置する基部31の長手端面31bから織前CFを超えた位置まで延在するような前記短手方向の寸法を有するものとなっており、それにより、外周端面32aの延在範囲内に織前CFが位置するものとなっている。
さらに、緯糸規制部材30は、緯入れ方向に関しては、固定刃22における両側面のうちの可動刃21が回動に伴って摺接する側面とは反対側の側面の側に設けられるものとなっており、言い換えれば、固定刃22と固定刃用ホルダ22とに挟まれるかたちで設けられるものとなっている。すなわち、本実施例では、緯糸規制部材30は、緯入れ方向に関し、固定刃22及び可動刃21から成る給糸カッタ20に対し織端We側とは反対の側に設けられるものとなっている。
その上で、緯糸規制部材30は、前記のように固定刃用ホルダ22aに取り付けられた状態において、規制部32の外周端面32aが経糸方向に関し織前CFと略同じ位置に配置されるような構成となっている。但し、図示の構成では、緯糸規制部材30は、基部31の長手方向(経糸方向)に関し、前記後端部の端面の位置を固定刃22の後端側(カッタブラケット側)の端面の位置に一致させた状態で固定刃用ホルダ22aに対し取り付けられるものとなっている。従って、緯糸規制部材30における規制部32は、緯糸規制部材30上において、基部31の長手方向に関し、基部31における固定刃用ホルダ22aに対する取り付け部分に対し、前記のような配置が実現される位置に設けらたものとなっている。
なお、前記のように上下方向に関しその延在範囲に織前CFの位置を含むように上下方向に延在する規制部32における外周端面32aは、緯入れ方向に関し緯糸規制部材30が前記のような位置に設けられることから、緯入れ方向に関しメインノズル5と織端Weとの間に位置するものとなっている。また、規制部32における外周端面32aは、前記のように経糸方向に関し織前CFと略同じ位置するものとなっており、言い換えれば、経糸方向に関し筬打ち時において最も前方に位置するメインノズル5(噴射口5cの後端)と織前CFにおける織端We(図2等において符号CF′で示す部分。以下、「織前端CF′」とも言う。)とを結ぶ仮想線(図5に示す線VL)よりも織前CF側における織前CFまでの間に位置したものとなっている。従って、この規制部材32における外周端面32aが、本発明で言う「規制面」に相当するものとなっている。因みに、その規制面32aの位置については、緯入れ方向におけるメインノズル5と織端Weとの間の領域であって、経糸方向における織前CFの延長線(図5に示す線EL)と前記仮想線VLとの間の領域(図5に示す領域A。但し、この領域Aは、前記延長線ELは含むが前記仮想線VLは含まない。)内であるとも言える。
以上のような緯糸規制部材30を備えた本実施例の空気噴射式織機によれば、緯入れされた緯糸が筬1によって織前CFに筬打ちされる時点において、メインノズル5、5は織前CFよりも前方(織前CFよりも織布W側)に位置するものとなり、それに伴い、メインノズル5と織端Weとの間に連なる緯糸の部分(緯糸部分)が経糸方向に関し織前端CF′からメインノズル5の位置に向けて前方へ傾斜するようなかたちになろうとするが、緯入れ方向に関し織端Weとメインノズル5との間の給糸カッタ20に隣接する位置において、経糸方向に関し織前CFと略同じ位置に規制面32aが位置するように緯糸規制部材30が設けられており、且つ、その規制面32aが上下方向に関しその延在範囲に織前CFの位置を含むように存在するものとなっているため、経糸方向に関しメインノズル5が規制面32aの位置を通過することに伴い、前記緯糸部分が規制面32aと係合することとなる。
それにより、前記緯糸部分における緯入れ方向に関し規制面32aよりも織端We側の部分については、前記緯糸部分と規制面32aとの係合によって変位が規制され、緯糸の織前CFに筬打ちされる部分と同じく、経糸方向に関し織前CFと同じ位置に位置する状態となる。すなわち、筬打ち時点においてメインノズル5が織前CFよりも前方に位置することに起因して前方へ屈曲した状態となる緯糸の屈曲点が、従来の空気噴射式織機においては織前端CF′の位置であるのに対し、本実施例における空気噴射式織機では、緯糸規制部材30の規制面32aの位置となる。
従って、その屈曲点よりもメインノズル5側の緯糸部分が前方へ向けて変位することに起因して前記屈曲点に作用する前方へ向けた力が、織前端CF′に作用するのではなく、織機のフレームに固定して設けられた緯糸規制部材30の規制面30に受けられることとなる。その結果として、筬打ち時点において、織前端CF′が、従来のように本来の位置(筬(緯糸案内溝の底部)の最前進位置)よりも前方へ余計に変位するといった状態が発生することはなく、耳組装置(遊星耳組装置)9から耳糸が過剰に引き出されるといったことが発生しないため、織布Wに耳緩みやその耳緩みによる耳崩れが発生することが防止される。
以上では、本発明による緯糸規制装置(緯糸規制部材30)の一実施形態(実施例)について説明したが、本発明による緯糸規制装置は前記実施例の構成に限定されるものではなく、以下のような実施形態(変形例)での実施も可能である。
(1)前記実施例では、緯糸規制装置としての緯糸規制部材30は、板厚方向に見たときの基部31の大きさが固定刃22の大きさよりも大きいものとなっているが、緯糸規制装置(緯糸規制部材)の構成はそのようなものに限らない。すなわち、前記実施例の緯糸規制部材30の構成において、本発明が目的とする作用・効果を実現するための部分は規制部32であり、基部31は規制部32を支持する部分にすぎないため、基部31は、規制部32における規制面32aが固定刃22の上方において上下方向に関し織前CFの位置を含む範囲で延在するように設けられた状態となるものであれば、どのような大きさ・形状のものであってもよい。
(2)前記実施例では、緯糸規制装置を薄板状の板材で形成された緯糸規制部材30とし、規制面32aを有する規制部32も板状に形成されたものとしたが、本発明による緯糸規制装置はそのような板状の部材で構成されたものに限らず、例えば、図7において符号40で示すような規制面を有する部分が棒状に形成された構成されたものとしてもよい。なお、図7では、緯糸規制装置を概略的に平面視において示しているが、その緯糸規制装置における棒状の部分は、上下方向に延在しているものとする。そして、その棒状の部分における外周面のうちの緯糸と係合する部分が、本発明における規制面となる。
また、そのような規制面を有する部分が棒状に形成された緯糸規制装置の支持については、例えば、緯糸規制装置がその棒状の部分と一体的に形成された支持部を有するものとし、その支持部において支持されるものとしてもよいし、緯糸規制装置を棒状の部材のみによって構成されるものとし、その棒状の緯糸規制装置が他のブラケット等によって支持されるものとしてもよい。さらに、緯糸規制装置における規制面を有する部分が前記のように棒状に形成される場合において、図7では、その棒状の部分が平面視において略真円形に形成されたものとしたが、その棒状の部分については、平面視において楕円形状や多角形状に形成されたものであってもよい。
なお、前記のように規制面を有する部分が棒状に形成された緯糸規制装置の場合、その規制面は、平面視において円弧形状等を有するものとなり、面の全範囲において経糸方向に関し同じ位置に存在しないものとなる。その場合において、緯糸規制装置(規制面)の位置については、その規制面の最も後側に位置する部分を基準として設定されるものとする。
(3)前記実施例では、緯糸規制装置としての緯糸規制部材30は、固定刃22を支持する固定刃用ホルダ22aに固定刃22と共に支持されるものとなっているが、本発明において、緯糸規制装置を支持するための構成は前記実施例のような給糸カッタの固定刃を支持するものに限らず、緯糸規制装置を織機の固定部分に支持された状態とするものであれば、どのような部材(構成)であってもよい。
例えば、緯糸規制装置(前記実施例の緯糸規制部材30)の支持について、前記実施例で説明したカッタブラケット11に取り付けられる一対の支持プレート17、17のうちの織機上において織端Weから遠い側となる支持プレート17にも前記実施例における支持ブロック18に相当する支持部材を取り付け、その支持部材に緯糸規制装置が支持されるものとしてもよい。また、前記実施例で説明したカッタブラケット11を支持するスライドバー15に対し、カッタブラケット11とは別のブラケット等によって緯糸規制装置が支持される構成としてもよい。
なお、前記のように別のブラケット等を用いて緯糸規制装置を支持する構成とした場合、緯入れ方向における緯糸規制装置の配置を任意に設定できるものとなる。そして、本発明においては、緯入れ方向における緯糸規制装置の配置については、前記実施例のように給糸カッタ20の反織端We側の給糸カッタ20に隣接した位置に限らず、メインノズル5と給糸側の織端Weとの間であればどのような位置であって本発明が目的とする作用・効果が得られるため、緯入れ方向におけるメインノズル5と給糸側の織端Weとの間のどのような位置であってもよい。
但し、その緯入れ方向における配置をメインノズル5に近づける程、規制面において緯糸が屈曲された際の経路長の変化が大きくなり、その経路長の変化が大きいと緯糸の張力が過大となって緯糸の糸切れ等が発生するおそれがある。従って、緯入れ方向における緯糸規制装置の配置については、給糸カッタ20の近傍(配置が可能であれば給糸カッタ20よりも織端We側)である方が好ましい。また、前記実施例のように給糸カッタ20の固定刃22を支持する固定刃用ホルダ22aによって緯糸規制装置(緯糸規制部材)を支持する構成とすることにより、専用のブラケット等を新たに設ける必要がないため、構成を簡単なものとすることができる。
(4)前記実施例では、緯糸規制装置としての緯糸規制部材30は、その規制面32aが経糸方向に関し織前CFと略同じ位置にとなるように配置されるものとしたが、本発明においては、緯糸規制部材30の経糸方向における配置については前記実施例のようなものに限らず、筬打ち時において最も前方に位置するメインノズル5と織前CFにおける給糸側の織端Weとを結ぶ仮想線(図5における仮想線VL)よりも織前CF側における織前CFまでの間に規制面が位置するように設けられるものであればよい。
なお、経糸方向に関し規制面の位置を織前CFよりも前方とした場合、緯糸は、織前端CF′においても、規制面の位置に応じた量だけ屈曲した状態となる。すなわち、前述した前方へ向けた力が作用する屈曲点が、織前端CF′にも存在することとなる。しかし、その場合であっても、織前端CF′での緯糸の屈曲量は、本発明による緯糸屈曲装置を備えない従来の空気噴射式織機と比べると、小さいものとなっており、従って、その屈曲部分で前方へ向けて作用する力も小さいものとなる。それにより、規制面の位置が織前CFよりも前方であっても、その位置が前記仮想線よりも織前CF側の位置であれば、従来の空気噴射式織機と比べ、織前端CF′の前方への変位が抑制され、織布Wにおいて前記のような耳緩みや耳崩れが発生する抑制又は防止することができる。但し、より確実に前記のような耳緩みや耳崩れの発生を防止するためには、織前端CF′の前方への変位を確実に防ぐべく、前記実施例のように規制面の位置が経糸方向に関し織前CFと略同じ位置にとなるように緯糸規制装置を配置した方が好ましい。
また、空気噴射式織機における緯入れ装置が複数のメインノズル5を備えた多色の緯入れ装置の場合、例えば、前記実施例のように2つのメインノズル5、5が経糸方向に並設された緯入れ装置の場合、その経糸方向における各メインノズル5の位置により、筬打ち時点での織前端CF′においてのメインノズル5に連なる緯糸の屈曲量は異なるものとなり、当然ながら筬1における緯糸案内溝1bの底部に近い方(後方)のメインノズル5に連なる緯糸の屈曲量の方が小さいものとなる。しかも、後方のメインノズル5は、その噴射口5cの後端を筬1における緯糸案内溝1bの底部に接近させて設けられているため、前記した緯糸の屈曲量は非常に小さいものとなっている。
その場合、緯糸の種類(伸縮性が高いか低いか等)にもよるが、後方のメインノズル5による緯入れの場合には、筬打ち時点において、前記のような耳緩みや耳崩れの発生に影響を及ぼすような織前端CF′の前方への変位が発生しない場合がある。一方、筬1における緯糸案内溝1bの底部から遠い方(前方)のメインノズル5による緯入れの場合には、前記した緯糸の屈曲量が大きいため、織前端CF′の前方への変位が発生して前記のような耳緩みや耳崩れが発生する可能性が高い。
このように、空気噴射式織機における緯入れ装置が前記した多色の緯入れ装置の場合には、規制面が筬打ち時において前方のメインノズル5に連なる緯糸の変位のみを規制するような位置に緯糸規制装置が設けられる場合でも、本発明が目的とする作用・効果が得られる場合がある。従って、本発明は、その前提とする空気噴射式織機における緯入れ装置が複数のメインノズルを経糸方向に並設した多色緯入れ装置である場合においては、少なくとも最も前方のメインノズルにより緯入れされた緯糸と規制面とが係合するように緯糸規制部材が設けられるものとすればよいものであり、筬打ち時において規制面が最も前方のメインノズルにより緯入れされた緯糸のみと係合するように緯糸規制部材が配置される構成も含むものである。
但し、緯入れ装置が前記のように経糸方向に並設された複数のメインノズルを備える場合における最も後方のメインノズルによる緯入れの場合、あるいは、緯入れ装置が1つのメインノズルしか備えない、すなわち、前記で言う最も後方のメインノズル5しか備えない場合であっても、緯糸の伸縮性が非常に低い場合等においては、前記のような織前端CF′の前方への変位が発生する場合もある。従って、そのような場合には、筬打ち時において、最も後方のメインノズルに連なる緯糸にも規制面が係合するように緯糸規制装置が設けられる必要がある。
また、前記のように緯入れ装置が経糸方向に並設された2つのメインノズルを備える場合において、図8に示すように後方のメインノズル5の噴射口5cの後端と織前端CF′とを結ぶ仮想線VL′上に規制面が位置するように、あるいは経糸方向に関し図8に示す位置よりも織前CF側に規制面が位置するように(最も織前CF側に設けられる例が前記実施例)緯糸規制部材(緯糸規制装置)を設けることにより、各メインノズル5によって緯入れされた緯糸の筬打ち時での織前端CF′での屈曲状態が同じとなるため、織前端CF′に作用する力がメインノズル5毎に一定となって織前CFの状態を筬打ち毎に一定とすることができるため、より好ましいと言える。
なお、前記実施例では、緯糸規制装置(緯糸規制部材)は、規制面が特定の位置に位置するように設けられる、すなわち、緯糸規制装置が経糸方向に関し位置変更不能に織機上において支持される(支持する部材に取り付けられる)構成となっているが、本発明においては、緯糸規制装置は、そのように位置変更不能なかたちで支持されて設けられるものに限らず、支持する部材との間で経糸方向に関し位置調整が可能なように構成されたものであってもよい。具体的には、例えば前記実施例の構成において、緯糸規制部材30におけるネジ部材22bが挿通される孔を基部31の長手方向に延在する長孔とし、その長孔の範囲内で緯糸規制部材30の経糸方向における位置が調整できる構成としてもよい。
さらに、本発明は、以上で説明したいずれの実施形態にも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。