JP6344314B2 - インクセット、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
インクに含有される溶剤としては、水を含む液を使用することが好ましく、水と、グリセリン及び/又はグリコールと、アルコール及び/又はグリコールエーテルとを含む混合液を使用することがより好ましい。インクの乾燥を抑制するために、上記混合液に乾燥防止剤(例えば、2−ピロリドン)をさらに加えてもよい。グリセリン及び/又はグリコールをインクに含有させることで、インクの乾燥を抑制することが可能になる。グリコールの好適な例としては、エチレングリコールが挙げられる。また、アルコール及び/又はグリコールエーテルをインクに含有させることで、記録シートに対するインクの浸透性を向上させることが可能になる。グリコールエーテルの好適な例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、又はジエチレングリコールモノノルマルブチルエーテルが挙げられる。適切な粘度を有するインクを調製するためには、インクにおける水の量が、インク全質量に対して20質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係るインクでは、着色剤として顔料分散体を使用する。顔料分散体は、複数の顔料粒子を含む。複数の顔料粒子はそれぞれ、樹脂に覆われている。顔料粒子が樹脂に覆われていることで、顔料粒子同士の凝集が抑制される。なお、インク中には、顔料粒子に付着している樹脂(以下、被覆樹脂と記載する)に加えて、顔料粒子に付着していない樹脂(以下、分散樹脂と記載する)が存在していてもよい。インク中には、樹脂で覆われる顔料粒子に加えて、樹脂で覆われない顔料粒子が存在していてもよい。顔料粒子同士の凝集を好適に抑制するためには、顔料分散体における樹脂の使用量(被覆樹脂及び分散樹脂の合計量)が、顔料100質量部に対して15質量部以上100質量部以下であることが好ましい。また、記録ヘッドのミスト汚染を抑制するためには、インク中の樹脂における被覆樹脂の割合が95質量%以上100質量%未満であることが好ましい。
顔料粒子は、実質的に顔料から構成される。インクの色濃度、色相、又は安定性を向上させるためには、顔料粒子の体積中位径(D50)が30nm以上200nm以下であることが好ましい。インクにより形成される画像のオフセットを抑制しつつ画像濃度を向上させるためには、インクにおける着色剤の量が、インク全質量に対して2.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
記録ヘッドのミスト汚染を抑制するためには、インクが水を含み、インク中の顔料粒子を覆う樹脂が水溶性を有することが好ましい。顔料粒子同士の凝集を抑制するためには、顔料粒子を覆う樹脂の少なくとも1種が、スチレン系モノマーに由来する1種以上の繰返し単位と、アクリル酸系モノマーに由来する1種以上の繰返し単位とを含む共重合体(スチレン−アクリル酸系共重合体)であることが好ましい。スチレン−アクリル酸系共重合体の好適な例としては、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、又はビニルナフタレン−マレイン酸共重合体が挙げられる。
本実施形態に係るインクは、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤は、分子内に親水性基及び疎水性基を有する化合物である。記録ヘッドのミスト汚染を抑制するためには、ノニオン界面活性剤をインクに含有させることが好ましい。
以下、上記構成を有する本実施形態に係るインクを製造する方法の一例について説明する。
本実施形態に係るインクセットは、例えば長尺のインクジェット記録ヘッド(以下、ラインヘッドと記載する)を備えるインクジェット記録装置で、好適に使用できる。以下、図1を参照して、ラインヘッドを備えるインクジェット記録装置の一例(プリンター100)について説明する。
PK:カーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA7」)
PC:C.I.ピグメントブルー15:3(大日精化工業株式会社製)
PY:C.I.ピグメントイエロー74(大日精化工業株式会社製)
PM:C.I.ピグメントレッド122(大日精化工業株式会社製)
測定装置として、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー株式会社製「HLC−8020GPC」)を用いた。試料(例えば、樹脂)を測定装置に注入し、下記測定条件でゲルろ過クロマトグラフィーを行って、クロマトグラムを得た。得られたクロマトグラムと、予め作成した検量線とに基づいて、試料のMw(質量平均分子量)を求めた。なお、検量線は、東ソー株式会社製のTSKgel標準ポリスチレンから、F−40、F−20、F−4、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、及びn−プロピルベンゼンの8種を選択して作成した。
(測定条件)
・カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultiporeHZ−H」(4.6mmI.D.×15cmのセミミクロカラム)
・カラム本数:3本
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:0.35mL/分
・サンプル注入量:10μL
・測定温度:40℃
・検出器:IR(赤外吸収分析)検出器
(顔料分散液の調製)
表2に示す顔料分散液の材料(顔料、水溶性樹脂、エチレングリコール、及びイオン交換水)を表2に示す割合で混合して、得られた混合物をサンドミルのベッセルに投入した。続けて、投入された材料の質量に対して1.5倍の質量のメディア(直径1.7mmのガラスビーズ)を上記サンドミルのベッセル内に充填した。続けて、サンドミルを用いて分散処理を2時間行って、多数の被覆顔料粒子を含む顔料分散液を得た。
表1に示すインクの材料(顔料分散液、グリセリン、トリエチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、2−ピロリドン、ノニオン界面活性剤、及びイオン交換水)を表1に示す割合で混合した。続けて、得られた混合物を、攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター BL−600」)を用いて回転速度400rpmで攪拌して均一な混合物(詳しくは、混合液)とした。続けて、得られた混合液を、孔径5μmのフィルターを用いてろ過して、混合液中の異物及び粗大粒子を除去した。その結果、インク(インクA〜Kのいずれか)が得られた。
上記のようにして調製したインクA〜Kの各々について、下記方法に従って測定した粒径変化定数等を、表3に示す。
容積300mLの容器に試料(インク)250mLを入れ、容器内容物(インク)の質量(乾燥前質量W1)を測定した。続けて、その容器を温度60℃に設定された恒温槽に入れ、任意に設定される時間ごとに容器内容物(インク)の質量(乾燥後質量W2)を測定した。時間が経過するほど乾燥後質量W2は小さくなった。式「質量乾燥率=100×(W1−W2)/W1」で表されるインクの質量乾燥率(単位:質量%)を随時計測しながら、インクの質量乾燥率が10質量%、20質量%、30質量%、及び40質量%となった各時点での、インク中の被覆顔料粒子(詳しくは、凝集粒子)の体積中位径(D50)を、動的光散乱式粒径分布測定装置(シスメックス株式会社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて温度25℃環境下で測定した。
上記のようにして調製したインクA〜Kを用いて、表4に示すインクセットA〜Gを準備した。表4中の「色」に関して、Yはイエロー顔料を示し、Mはマゼンタ顔料を示し、Cはシアン顔料を示し、Bkはブラック顔料を示す。
上記評価機を用いて、所定の耐刷試験(5000枚の記録シートに対する連続印刷)を行った。耐刷試験では、温度25℃かつ湿度60%RHの環境下、搬送速度350mm/秒の条件で、評価機の4個の記録ヘッドにより、表4に示す4色のインクを表4に示す順に吐出して、記録シート(富士ゼロックス株式会社製「C2」、A4サイズの普通紙)にソリッド画像(各色につき印字率25%、合計で印字率100%のソリッド画像)を形成した。耐刷試験後、パージ及びワイピングを実行した。続けて、光学顕微鏡を用いて、記録ヘッドのノズル面を観察し、ノズル面にインクが付着しているか否かを判定した。
上記評価機を用いて、所定の耐刷試験(5000枚の記録シートに対する連続印刷)を行った。耐刷試験では、温度25℃かつ湿度60%RHの環境下、搬送速度350mm/秒の条件で、評価機の4個の記録ヘッドにより、表4に示す4色のインクを表4に示す順に吐出して、記録シート(富士ゼロックス株式会社製「C2」、A4サイズの普通紙)にソリッド画像(各色につき印字率25%、合計で印字率100%のソリッド画像)を形成した。耐刷試験後、スタンプ式で(記録シートを搬送しない状態で)、記録シートに対して4つの記録ヘッドの全ノズルから1ドット吐出を行った。そして、記録シート上の各ドットについて、汎用画像処理システム(王子計測機器株式会社製「DA−6000」)を用いて、式「3σ=3√(σx 2+σy 2)」(σx:ノズル設計位置からのX方向の位置ずれ量の標準偏差、σy:ノズル設計位置からのY方向の位置ずれ量の標準偏差)で表される着弾精度3σを測定した。得られた測定データ(各ドットの着弾精度3σ)の算術平均値を評価値とした。
上記評価機を用いて、温度25℃かつ湿度60%RHの環境下、搬送速度350mm/秒の条件で、4個の記録ヘッドにより、表4に示す4色のインクを表4に示す順に吐出して、記録シート(富士ゼロックス株式会社製「C2」、A4サイズの普通紙)にソリッド画像(各色につき印字率25%、合計で印字率100%のソリッド画像)を形成した。そして、ソリッド画像が形成された記録シートについて、裏抜けしているか否かを目視で判定した。裏抜けが全くなければ「◎(非常に良い)」と評価し、裏抜けがほぼなければ「○(良い)」と評価し、裏抜けが明確に生じていれば「×(悪い)」と評価した。
上記評価機の最下流の記録ヘッド(第2記録ヘッド)よりもさらに10cm下流側に、オフセット評価用のローラーを設けた。こうした評価機を用いて、温度25℃かつ湿度60%RHの環境下、搬送速度350mm/秒の条件で、4個の記録ヘッドにより、表4に示す4色のインクを表4に示す順に吐出して、記録シート(富士ゼロックス株式会社製「C2」、A4サイズの普通紙)にソリッド画像(各色につき印字率25%、合計で印字率100%のソリッド画像)を形成した。そして、画像形成後の記録シートがオフセット評価用のローラーで擦られることにより、白紙部(非画像部)に生じる汚れ(インクの付着)の度合いを目視で評価した。実質的に汚れがなければ「◎(非常に良い)」と評価し、若干の汚れしか生じていなければ「○(良い)」と評価し、汚れが明確に生じていれば「×(悪い)」と評価した。
インクセットA〜Gの各々についての評価結果を、表5に示す。
10a、10b ローラー
10c 搬送ベルト
10d エンコーダー
10e 負圧発生部
20、20a〜20d ラインヘッド
30 吐出ユニット
100 プリンター
101 給紙カセット
102 給紙装置
102a、102b ローラー
103 排出装置
103a、103b ローラー
104 排紙トレイ
200 画像形成部
P 紙
Claims (5)
- 複数種のインクを含むインクセットであって、
前記インク中には、それぞれ樹脂で覆われた複数の顔料粒子が分散しており、
前記複数種のインクとして、
質量乾燥率10質量%から40質量%までの範囲においては、質量乾燥率の単位増加量あたりの、前記樹脂で覆われた前記顔料粒子の体積中位径の増加量が50nm以上90nm以下である第1インクと、
質量乾燥率10質量%から40質量%までの範囲においては、質量乾燥率の単位増加量あたりの、前記樹脂で覆われた前記顔料粒子の体積中位径の増加量が100nm以上150nm以下である第2インクと、
を含み、
前記第1インクの前記樹脂の質量平均分子量は30000以上60000以下であり、前記第2インクの前記樹脂の質量平均分子量は55000以上200000以下であり、
前記第1インク及び前記第2インクの各々の前記樹脂は、スチレン−アクリル酸系共重合体であり、
前記第1インクに含まれる前記スチレン−アクリル酸系共重合体の含有量は、7質量%以上8質量%以下であり、
前記第2インクに含まれる前記スチレン−アクリル酸系共重合体の含有量は、6質量%以上7質量%以下である、インクセット。 - 前記第1インク及び前記第2インクの各々に関して、質量乾燥率10質量%から40質量%までの範囲においては、質量乾燥率が大きくなるほど、前記樹脂で覆われた前記顔料粒子の体積中位径が大きくなり、かつ、質量乾燥率の増加量と、前記樹脂で覆われた前記顔料粒子の体積中位径の増加量とが、線形の関係を有する、請求項1に記載のインクセット。
- それぞれインクを吐出する複数の記録ヘッドと、搬送路の下方から負圧吸引しながら前記搬送路上の記録シートを搬送する搬送ユニットとを備えるインクジェット記録装置であって、
前記複数の記録ヘッドには、前記記録シートの搬送方向において、最上流に位置する第1記録ヘッドと、最下流に位置する第2記録ヘッドと、前記第1記録ヘッドと前記第2記録ヘッドとの間に位置する他の記録ヘッドとが含まれ、
前記搬送ユニットは、前記他の記録ヘッドの下方よりも、前記第1記録ヘッド及び前記第2記録ヘッドの各々の下方において、より強い負圧で前記記録シートを吸引するように構成され、
前記複数の記録ヘッドの各々により吐出される前記インク中には、それぞれ樹脂で覆われた複数の顔料粒子が分散しており、
前記第1記録ヘッド及び前記第2記録ヘッドはそれぞれ、質量乾燥率10質量%から40質量%までの範囲においては、質量乾燥率の単位増加量あたりの、前記樹脂で覆われた前記顔料粒子の体積中位径の増加量が50nm以上90nm以下である第1インクを吐出するように構成され、
前記他の記録ヘッドは、質量乾燥率10質量%から40質量%までの範囲においては、質量乾燥率の単位増加量あたりの、前記樹脂で覆われた前記顔料粒子の体積中位径の増加量が100nm以上150nm以下である第2インクを吐出するように構成され、
前記第1インクの前記樹脂の質量平均分子量は30000以上60000以下であり、前記第2インクの前記樹脂の質量平均分子量は55000以上200000以下であり、
前記第1インク及び前記第2インクの各々の前記樹脂は、スチレン−アクリル酸系共重合体であり、
前記第1インクに含まれる前記スチレン−アクリル酸系共重合体の含有量は、7質量%以上8質量%以下であり、
前記第2インクに含まれる前記スチレン−アクリル酸系共重合体の含有量は、6質量%以上7質量%以下である、インクジェット記録装置。 - 請求項3に記載のインクジェット記録装置を用いて前記記録シートに対して記録を行うインクジェット記録方法であって、
前記第1記録ヘッドにより、質量乾燥率10質量%から40質量%までの範囲においては、質量乾燥率の単位増加量あたりの、前記樹脂で覆われた前記顔料粒子の体積中位径の増加量が50nm以上90nm以下である第1インクを吐出して前記記録シートに対して記録を行う第1工程と、
前記第1工程の後、前記他の記録ヘッドにより、質量乾燥率10質量%から40質量%までの範囲においては、質量乾燥率の単位増加量あたりの、前記樹脂で覆われた前記顔料粒子の体積中位径の増加量が100nm以上150nm以下である第2インクを吐出して前記記録シートに対して記録を行う第2工程と、
前記第2工程の後、前記第2記録ヘッドにより、質量乾燥率10質量%から40質量%までの範囲においては、質量乾燥率の単位増加量あたりの、前記樹脂で覆われた前記顔料粒子の体積中位径の増加量が50nm以上90nm以下である第1インクを吐出して前記記録シートに対して記録を行う第3工程と、
を含む、インクジェット記録方法。 - 前記第1記録ヘッド及び前記第2記録ヘッドの各々の下方における前記負圧は350Pa以上400Pa以下であり、前記他の記録ヘッドの下方における前記負圧は270Pa以上300Pa以下である、請求項4に記載のインクジェット記録方法。
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