以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。以下では、従来技術の自動高さ調整弁に相当するものとして、スプール・スリーブ方式の制御弁を説明するが、これは一例であって、空気バネに連通する負荷ポートと、気体供給源に連通する給気ポートと、大気側に開放される排気ポートとの3つのポートを有する気体制御弁であれば、他の構造であってもよい。気体圧アクチュエータとして、復元バネ付のピストン・シリンダ機構を述べるが、これ以外の気体圧制御型のアクチュエータ、例えば、ダイヤフラム型アクチュエータ、ベローズ型アクチュエータ等であってもよい。
なお、以下では、空気バネに加圧空気が供給されるものとして説明するが、ここでの空気は、外気の他に、乾燥空気、あるいは窒素と酸素の成分比を適当に変更した気体、適当な不活性ガス等を添加した気体等であってもよい。
また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
図1は、車体傾斜装置30が用いられる車両10の構成を説明する図である。車両10は、路面12の上に敷設されるレール14,15の上を回転する車輪16,17を備える台車18と、乗客等が利用する車体20と、台車18と車体20の間に設けられる空気バネ22,23と、台車18と車体20との間に設けられるリンクレバー機構24,25を含む。1両の車両について、その前後左右に空気バネとそれに対応するリンクレバー機構がそれぞれ設けられるが、図1では、そのうちの左右の2つの空気バネ22,23とリンクレバー機構24,25についてのみ図示されている。ここでは、車体傾斜装置30を構成する各要素について簡単に説明し、具体的な詳細構造については図2以下で詳述するものとする。
図1では、路面12が傾斜し、左右のレール14,15の高さに差がつけられている。この差は、レールが曲線状に敷設されて車両10がカーブしながら走行するときに、車体20の中の乗客が遠心力を感じないように、車体20を傾斜させるためのものである。曲線の内側のレール14と曲線の外側のレール15の高低差は、カント量と呼ばれる。このカント量は、その曲線部分を走行する車両の設定速度に適合して設定されるので、その設定速度以上で高速走行する車両10の場合には、超過遠心力が生じることになる。
その超過遠心力を車体20の中の乗客に感じさせないようにするには、レールに付けられているカント量に加えて、台車18に対し車体20を曲線の内側に向かって傾斜させればよい。このように台車18に対し車体20を傾斜させることが車体傾斜制御である。図1の例では、車体20が台車18に対し傾斜している様子が示されている。
リンクレバー機構24,25は、台車18に対し回動可能に一方端が支持される台車側アームと、車体20に対し回転可能に他方端が支持される車体側アームであるレバーと、台車側アームの他方端と車体側アームの一方端が相互に回動可能に接続される機構で、台車18に対する車体20の高さ位置が変わると、リンクレバー機構24,25のリンク形状が変化し、その形状変化は、台車18に対する車体20の高さによって一意に定まる。そこで、例えば、予め定められた車体20の基準面に対する車体側アームの傾斜角度を、台車に対する車体の高さに対応する高さ対応値として用いることができる。その意味から、リンクレバー機構24,25は、高さ対応値を車高値として提供することができる車高検出器である。
車体傾斜装置30は、各空気バネ22,23に対応して設けられる個別傾斜部112,113と、複数の個別傾斜部112,113を統合的に制御する制御部110とを含む。図1で紙面の向こう側を車両10の進行方向とすると、個別傾斜部112は、車両10の左側に設けられる左側傾斜部であり、個別傾斜部113は、車両10の右側に設けられる右側傾斜部である。左側傾斜部である個別傾斜部112と右側傾斜部である個別傾斜部113は、車両の進行方向に沿った中心軸に対し左右対称である。左右を区別するときは、例えば、左側傾斜部である個別傾斜部112を構成する各要素に「第1」を付し、右側傾斜部である個別傾斜部113を構成する各要素に「第2」を付すことができる。そのように区別するときは、空気バネ22を第1空気バネ、空気バネ23を第2空気バネと呼ぶことができる。以下では、特に断らない限り、個別傾斜部112に代表させて、説明を続けるものとする。
個別傾斜部112は、制御弁40を駆動して、空気バネ22に対し十分な給排気を行うことができる装置である。設定車高値としては、標準車高値と、標準車高値よりも高い所定車高値とがある。
制御弁40には、給気口接続部、排気口開放部、負荷口接続部が設けられる。図1の気体供給源32は、制御弁40の給気口接続部に接続され、供給圧PSの加圧空気を供給する気体源である。排気は、制御弁40の排気口開放部を大気側に開放することで行われる。
制御弁40は、スプール・スリーブ機構を有し、給気ポートと排気ポートと負荷ポートとを有する二層三方弁78を含む。ここでは、スリーブが二層に分かれて、制御スリーブ90と固定スリーブ91とに分かれる。固定スリーブ91は、スプール・スリーブ機構の筐体であって、一般的なスプール・スリーブ機構のスリーブに相当するものである。制御スリーブ90は、外周側で固定スリーブ91に摺動自在に支持され、内周側でスプール80を摺動自在に支持する部材である。
スプール80は、気体圧制御型の気体圧アクチュエータで移動駆動され、制御スリーブ90は、機械式の回転・直進変換機構44を介してリンクレバー機構24によって移動駆動される。
制御弁路42は、制御弁40の負荷口接続部と空気バネ22とを接続する負荷路である。この制御弁路42を介して、空気バネ22は、制御弁40から加圧空気の供給を受けることができ、また、空気バネ22から、制御弁40を介して、大気に開放して排気することができる。
次に、制御弁40の詳細構造について、図2から図4を用いて説明する。制御弁40は、大別して、給気開閉弁60と、二層三方弁78と、機械式アクチュエータに相当する回転・直進変換機構44と、気体圧アクチュエータ120を含む。図2は、制御弁40全体の構造図で、図3は、給気開閉弁60と二層三方弁78の部分の詳細図、図4は、回転・直進変換機構44の詳細図である。これらの図において、直交するXYZ軸を示した。X方向が、スプール80および制御スリーブ90の移動方向である。
制御弁40は、給気口接続部52、排気口開放部54、負荷口接続部41の3つの気体流通口と、スプール駆動制御ポート128を有する。これらは、制御弁40の筐体に取り付けられる。制御弁40の筐体は、制御弁40が複数の構成要素を組み合わせていることから、各構成要素の筐体を接続して組み立てたものであるが、ここでは、二層三方弁78の筐体である固定スリーブ91に代表させて、これを制御弁40の筐体と呼ぶことにする。
給気口接続部52は、給気開閉弁60に気体供給源32から供給圧PSの加圧空気を供給するための接続口である。排気口開放部54は、二層三方弁78の排気ポートに接続し、大気に開放する開放端である。ここでEXは排気を示す。負荷口接続部41は、二層三方弁78の負荷ポートと空気バネ22とを接続するための接続口である。給気口接続部52と負荷口接続部41には適当なフィルタを設けてもよい。また、排気口開放部54に適当な消音器を設けてもよい。
スプール駆動制御ポート128は、気体圧制御型の気体圧アクチュエータに所定の気体圧を有する気体を供給するための気体ポートである。
図3は、給気開閉弁60と二層三方弁78に関する詳細を示す断面図である。給気開閉弁60は、二層三方弁78における給気ポートに相当するもので、気体供給源32に接続される。給気開閉弁60は、二層三方弁78の制御スリーブ90の+X方向の移動で閉じ、−X方向の移動で開く。または、二層三方弁78のスプール80の+X方向の移動で開き、−X方向の移動で閉じる。図3は、二層三方弁78が中立状態にあるときの様子が示されている。
給気開閉弁60は、制御弁40の筐体の一部を構成する開閉弁本体61と、その内部空間62に収納されるようにして配置される弁体機構64を含む。開閉弁本体61は、一方端側が給気口接続部52に接続され、他方端側が二層三方弁78の筐体の一部である固定スリーブ91の開閉弁端に接続される筒状部材である。開閉弁本体61の一方端側には、円環状の突出部63が設けられる。
弁体機構64は、両側に円板を有し、その円板の間に弱いバネ定数のコイルバネ70が取り付けられるバネ付双方向弁体である。具体的には、弁体機構64は、給気口接続部52側の円板である給気側弁体66と、二層三方弁78側の円板である開閉弁弁体68と、給気側弁体66と開閉弁弁体68とを接続する付勢手段であるコイルバネ70を含む。コイルバネ70は、給気側弁体66と開閉弁弁体68に対し、互いに引き離す方向に付勢力を与える。
給気側弁体66は、開閉弁本体61の内部の圧力が供給圧力よりも高くなった場合に、逆流を防止する逆止弁の機能を有し、開閉弁本体61の一方端側に設けられる円環状の突出部63に囲まれる開口部を塞げる大きさの外形を有する円板である。逆止弁としての気密を確保するために、給気側弁体66にOリングまたはゴム板等が設けられる。
開閉弁弁体68は、中立状態では、制御スリーブ90の開閉弁端側に設けられる円環状の突出部98によって囲まれる開口部である開閉弁側開口部を塞げる大きさの外形を有する円板である。開閉弁弁体68は、コイルバネ70によって開閉弁本体61の他方端側に向かうように付勢されるので、制御スリーブ90の中立状態では、開閉弁弁体68は、制御スリーブ90の開閉弁端側の突出部98に押し付けられる。押し付けによって気密を確保するために、開閉弁弁体68にOリングまたはゴム板等が設けられる。なお、図3では、開閉弁端側の近傍部65が破線で囲んで示されている。
また、スプール80と制御スリーブ90が中立状態のときは、スプール80の開閉弁端側に設けられる円環状の突出部88もちょうど制御スリーブ90の円環状の突出部98とX方向の位置が同じとなるように設定されるので、中立状態では、開閉弁弁体68は、スプール80の開閉弁端側の突出部88にも同時に押し付けられる。これによって、中立状態では、制御スリーブ90の開閉弁端側の突出部98で囲まれる開口部と、スプール80の開閉弁端側の突出部88で囲まれる開口部は、共にその開口部が塞がれる。開閉弁弁体68の二層三方弁78側の表面69と、制御スリーブ90の突出部98の先端部と、スプール80の突出部88の先端部とは、相互に気密に密着できるようにされる。気密を確保するために、開閉弁弁体68にOリングまたはゴム板等が設けられる。
二層三方弁78のスプール80は、軸方向の一方端側である+X方向端を開閉弁端側として、開閉弁端側に排気用開口部82を有し、軸方向に沿って延びて他方端が排気口開放部54に連通する中心穴84が設けられる細軸のステム部と、ステム部よりも外径の大きい中央ランド部86とを有する軸部材である。排気用開口部82は、円環状の突出部88に囲まれる開口部である。
制御スリーブ90は、外周側で固定スリーブ91に摺動自在に支持され、内周側でスプール80を摺動自在に支持する部材である。制御スリーブ90は、軸方向の一方端側である+X方向端を開閉弁端側として、スプール80の開閉弁端側の外径よりも大きい内径の開閉弁側開口部を開閉弁端側に有し、スプール80を軸方向に摺動自在に支持する案内穴を内部に有する。開閉弁側開口部は、開閉弁端側の円環状の突出部98によって囲まれた開口部である。図3には、スプール80の開閉弁端側の外径と制御スリーブ90の開閉弁側開口部の内径との隙間空間100が示されている。
制御スリーブ90は、軸方向に沿って3つの開口部を有するが、そのうちの1つが負荷口50である。上記のように、給気開閉弁60と二層三方弁78の組合せでは、制御スリーブ90において気体供給源32から加圧空気が供給されるのは、給気開閉弁60側からである。その意味で、給気口に相当するのは、開閉弁端側の近傍部65の隙間空間100である。また、制御スリーブ90において空気バネ22から空気が大気に排気されるのは、スプール80の中心穴84を介して行われる。その意味で、排気口に相当するのも、開閉弁端側の近傍部65の隙間空間100である。
したがって、図3における構成の制御スリーブ90は、外周に軸方向に沿って3つの開口部を有するが、そのうちの1つが負荷口50である。中立状態では、この負荷口50と、スプール80の中央ランド部86の位置とが一致し、中央ランド部86によって負荷口50は閉じられた状態となっている。他の2つの開口部92,94は、連通路96によって互いに連通する。この2つの開口部92,94は、スプール80と制御スリーブ90と給気開閉弁60の協働によって、加圧空気を空気バネ22に接続される負荷口50に供給するか、負荷口50から大気に排気するかを切り替えるために用いられる。
再び図2に戻り、制御スリーブ90は、−X方向端で、回転・直進変換機構44を介してリンクレバー機構24に接続される。図4は、その部分の拡大斜視図である。ここでは、リンクレバー機構24について、台車側アーム26と車体側アームであるレバー28と、これらを回転自在に相互に接続する回転接続部27が示されている。
回転・直進変換機構44は、車高値に応じて、台車側アーム26と車体側アームであるレバー28とで形成される形状の変化に伴うレバー28の回転運動を、制御スリーブ90の直進運動に変換する機能を有する。これによって、車高値に応じて、制御スリーブ90が軸方向に移動駆動される。その意味で、リンクレバー機構24と回転・直進変換機構44が、制御スリーブ90を移動駆動する機械式アクチュエータに相当する。
回転・直進変換機構44は、制御弁40の筐体に固定されるケース160に中心軸161が回転自在に保持される回転体162と、回転体162の中心軸161から偏心して配置される偏心ピン164と、制御スリーブ90の−X方向端に接続される案内板166に設けられた案内溝168を含む。
ここで、回転体162の中心軸161に、レバー28の一方端が取り付けられる。また、案内板166は、制御スリーブ90と一体であるので、X方向にのみ移動可能である。そして、案内溝168は、Z方向に沿って設けられた溝で、偏心ピン164を受け入れる溝幅を有する。
再び図2に戻り、スプール軸118は、スプール80が二層三方弁78の領域よりも−X方向に延びて突き出す部分である。スプール軸118に取り付けられる気体圧アクチュエータ120は、スプール80を軸方向に移動駆動する気体圧制御型のピストン・シリンダ機構である。
気体圧アクチュエータ120は、シリンダ124と、シリンダ124の内壁を摺動するピストン126と、ピストン126を−X方向に付勢する復元バネ122を含む。シリンダ124の内部空間はピストン126によって2つの空間に仕切られるが、+X側の空間に復元バネ122が設けられ、−X側の空間にスプール駆動制御ポート128から所定の気体圧を有する気体が供給される。
参考実施の形態においては、スプール駆動制御ポート128から供給される所定の気体圧は2種類である。1つは、復元バネ122の復元力に抗することができない低圧気体圧で、例えば大気圧である。低圧気体圧を有する気体が供給されるときは、復元バネ122の復元力によってピストン126は−X側に移動してシリンダ124の−X側に押付けられる。この位置が気体圧アクチュエータのホームポジションである。このとき、制御スリーブ90に対してスプール80は中立位置を取る。所定の気体圧のもう1つは、復元バネ122の−X方向の復元力に抗することができる高圧気体圧で、例えば大気圧よりも高い供給気体圧である。高圧気体圧を有する気体が供給されるときは、ピストン126をシリンダ124の+X側に移動させ、復元バネ122を圧縮してストッパに当たり、そこで止まる。これにより制御スリーブ90に対してスプール80を中立位置から+X側に移動させることができる。ここで、低圧気体圧を大気圧、高圧気体圧を大気圧よりも高い供給気体圧とすることができる。
このように、気体圧アクチュエータ120は、スプール駆動制御ポート128から供給される所定の気体圧を低圧と高圧の間で切り替えることで、スプール80を中立位置に保持するか、中立位置から+X側に移動させるかのいずれかとすることができる。
スプール80の軸方向の移動量は、気体圧アクチュエータ120におけるピストン126の移動可能なストローク長で決めることができる。すなわち、シリンダ124の内壁面の軸方向に沿った長さと、ピストン126の軸方向に沿った厚さとストッパの高さとで設定することができる。このスプール80の軸方向の移動量、つまり気体圧アクチュエータ120におけるピストン126の移動可能ストローク量で、後述する所定車高値hHが定まる。
気体圧アクチュエータ120に供給される2種類の気体圧の生成には、高圧の供給気体圧の気体を供給する供給ポートと、大気圧に開放される排気ポートと、1つの出力ポートを有する三方弁を用いることができる。
図5は、上記構成の車体傾斜装置30のブロック図である。ここでは、車体20を左右傾斜するために、2つの空気バネ22,23のいずれか一方を他方よりも余計に伸長させる制御を説明するので、車体20の左右を区別して、2つの空気バネをそれぞれ、第1空気バネ22、第2空気バネ23とし、台車と車体との間の高さである車高値をそれぞれ、第1車高値、第2車高値と呼ぶことにする。
ここで、空気バネ22によって変化する台車18と車体20の間の高さである車高値から、リンクレバー機構24、回転・直進変換機構44、二層三方弁78を介して再び空気バネ22に戻るフィードバックループが、車高値を所定の値に維持する高さ維持制御のループである。このフィードバックループがリンクレバー機構を用いる従来のレベル調整制御のループに相当する。そこで、この高さ維持制御を、従来の用語を用いて、レベル調整制御と呼ぶことにする。
レベル調整制御では、実際の車高値hが予め定めた設定車高値hSからずれて、車高偏差値Δhが生じると、スプール80に対し制御スリーブ90の相対位置関係が変化し、空気バネ22に対しQ1の大きさで加圧空気の供給または空気バネ22からの大気への排気が行われ、Δhをゼロにする方向に車体20が上昇または下降する。
設定車高値hSは、制御スリーブ90に対するスプール80の位置で設定できる。レベル調整制御における設定車高値hSは車体傾斜装置30の構造設定で予め定まる標準車高値h0である。傾斜制御における設定車高値hSは、制御部110からの指令で設定される。車両10が曲線部分を有さない直線的な線路を走行するとき、設定車高値hSは標準車高値h0のままである。車両10が曲線部分を走行し、超過遠心力が所定以上となるとき、制御部110から傾斜指令部200に傾斜指令値が出力される。
スプール駆動制御ポート128から供給される所定の気体圧が2種類である参考実施の形態についての様子を模式的に図6に示す。図6に示す3つの図のうち、中央の図は、車両が通常の走行を行っているときの様子を説明する図で、左右の図は、車両が超過遠心力を受けたときの様子を示す図である。各図とも縦軸は車高値で、横軸は、空気バネ22の位置と空気バネ23の位置である。すなわち、各図とも、空気バネ22の車高値と空気バネ23の車高値を並べて示してある。
図6の中央の図に示されるように、車両が通常の走行をしているときは、空気バネ22の位置の車高値も空気バネ23の位置の車高値も共にh0である。これを標準とすると、右側の図は、超過遠心力を相殺するために、車両の右側を高くするときの様子を示す図である。図6では、これを、R−UPとして示した。このときは、空気バネ23の位置に対しては、傾斜指令値として設定車高値hS=hHが出力されるが、空気バネ22の位置に対しては傾斜指令値が出力されない。したがって、空気バネ23の位置の車高値はhHであるが、空気バネ22の位置の車高値はh0のままである。
図6の左側の図は、超過遠心力を相殺するために、車両の左側を高くするときの様子を示す図である。図6では、これを、L−UPとして示した。このときは、空気バネ22の位置に対しては、設定車高値hS=hHが出力されるが、空気バネ23の位置に対しては傾斜指令値が出力されない。したがって、空気バネ22の位置の車高値はhHであるが、空気バネ23の位置の車高値はh0のままである。このように、傾斜制御においては、空気バネ22または空気バネ23のいずれか一方にのみ、設定車高値hS=hHが出力される。設定車高値hS=hHが2つの空気バネ22,23の双方に同時に出力されることはない。
車体20の右側か左側のいずれかを傾斜させることよりも、もう少しきめ細かい車体傾斜を行いたい場合がある。図7はそのような場合に適用可能な構造を示す図である。図7は、図2の制御弁40において、気体圧アクチュエータ120のピストン126の変位を検出する変位センサ140を設けたものである。この制御弁40は空気バネ22に対するもので、これと同様の制御弁40が空気バネ23について用いられる。
この構成の制御弁40を用いるときは、制御部110は、傾斜指令部200に対し、設定車高値として標準車高値h0から最大の車高値である所定車高値hHの間の値を出力する。
図7において、変位センサ140は、ピストン126の先端に設けられる軟磁性体の位置プローブと、制御弁40の筐体である固定スリーブ91に設けられるトランス巻線を有する差動トランス型変位計である。ここで、ピストン126が軸方向に移動すると、位置プローブもこれと一体となって移動する。トランス巻線は、励磁コイルと検出コイルを有し、検出コイルは位置プローブの軸方向の位置の変化に応じた変位信号を出力する。変位センサ140としては、磁気式変位センサ、光学式変位センサ等を用いてもよい。変位センサポート142は、トランス巻線に励磁信号を供給し、検出信号を取り出す端子である。
傾斜指令部200は、スプール駆動制御ポート128に接続される可変制御弁144を有する。図5における傾斜指令部200は、出力が高圧気体圧の出力か低圧気体圧の出力かいずれかである三方弁等であるが、ここでの可変制御弁144は、予め定められた車高値に対してスプール80の位置を連続的に制御できる。
可変制御弁144の制御回路146としては、制御部110からの設定車高値hSに対応する気体圧を出力するように可変制御弁144を駆動する信号を出力する回路が用いられる。この制御回路146には、可変制御弁144を駆動する信号によって実際に移動したピストン126の変位を示す変位センサポート142の出力がフィードバックされる。これによって、ピストン126は、空気バネ22の位置に対応する車高値が設定車高値hSとなるように、気体圧アクチュエータ120としてスプール80を駆動する。
同様に、空気バネ23に対する制御弁40についても、変位センサ140と変位センサポート142が設けられ、これに対応して傾斜指令部200が空気バネ22に対応するものとは独立に設けられる。したがって、空気バネ22と空気バネ23について、標準車高値h0と所定車高値hHとの間の車高値を、互いに独立に設定することができる。
図8は、図6に対応する図で、図7の構成において、傾斜制御のときの左右の空気バネ22,23の位置の車高値を説明する図である。図8に示す3つの図のうち、中央の図は、図6の中央の図と同じで、車両が通常の走行を行っているときであり、左右の図は、車両が超過遠心力を受けたときの様子を示す図である。各図の縦軸、横軸の意味は図6と同じである。
図8の中央の図は、車両が通常の走行をしているときであり、空気バネ22の位置の車高値も空気バネ23の位置の車高値も共にh0である。右側の図は、超過遠心力を相殺するために、車両の右側を高くするときの様子を示す図である。ここでは、標準車高値h0と所定車高値hHとの間を4等分して、h1,h2,h3,h4としてある。
このように、可変制御弁144を用いることで、車高値を段階的に変えることができ、やや曲線部が多い路線においても、きめ細かい車体傾斜を行うことができる。
上記では、制御弁40として、給気開閉弁60と二層三方弁78とを組み合わせた構成を説明した。ここで、二層三方弁78の制御スリーブ90は外周に軸方向に沿って3つの開口部を有し、そのうちの1つは負荷口であるが、他の2つは給気口でも排気口でもない構成である。この他に、スプールに3つのランド部を有し、制御スリーブの外周に軸方向に沿って給気口、負荷口、排気口が配置される一般的なスプール・スリーブ型の三方弁を用いることができる。
図9は、そのような制御弁180の一例として、その基本構成を説明する図である。ここで用いられる二層三方弁181は、固定スリーブ182、制御スリーブ184、スプール186を備える。スプール186は、気体圧アクチュエータ120によって軸方向に駆動でき、制御スリーブ184はリンクレバー機構24と回転・直進変換機構44によって軸方向に駆動できる。スプール186は、ステムに3つのランド部が軸方向に相互に離間して設けられる。制御スリーブ184は、この3つのランド部の配置に対応して、外周に軸方向に沿って、給気口188、負荷口190、排気口192が順次配置される。
中立状態において、負荷口190の位置は、スプール186の中央ランド部の位置と一致して、中央ランドは負荷口190を塞ぐ。給気口188と排気口192は、中央ランド部の前後のステムの位置に合わせて配置される。また、固定スリーブ182においては、制御スリーブ184の給気口188、負荷口190、排気口192に対応して、それぞれ、給気ポート、負荷ポート、排気ポートが設けられる。制御スリーブ184は、予め定めた移動範囲で、固定スリーブ182に対し軸方向に移動可能で、その移動範囲においては、給気口188は給気ポートの範囲内、負荷口190は負荷ポートの範囲内、排気口192は排気ポートの範囲内とされる。
図9の構成の三方弁181を用いる制御弁180によっても、図5で説明したブロック図の構成をとることができる。なお、図9の構成と図2、図3の構成との相違の大きなところは、給気開閉弁60を用いずに、給気口188、負荷口190、排気口192を制御スリーブ184の外周に設けていることである。これによって、給気開閉弁60と二層三方弁78との密着性のために必要なOリングやゴム板等が不要になり、信頼性がその分向上することが期待される。また、排気口がスプールの内部に軸方向に沿って設けられる図2、図3の構成に比較して、排気容量を増加させることが容易となる。
上記では、制御スリーブ90の移動駆動を車高値によって形状が変化するリンクレバー機構24によって行い、スプール80の移動駆動を気体圧アクチュエータ120によって行うものとして説明した。設定車高値の変更は、スプール80と制御スリーブ90の中立位置の間の相対的位置のオフセットの設定で行うことができる。したがって、スプールの移動駆動を車高値によって形状が変化するリンクレバー機構によって行い、制御スリーブの移動駆動を気体圧制御型の制御スリーブアクチュエータによって行うものとしてもよい。
二層三方弁78は、従来から用いられる一般的なスプール・スリーブ型の三方弁と比べて、スリーブが二層構造となる分、気体の内部リーク、外部リークが多いことが予想される。レベル調整制御または傾斜制御が実行されているときは、時々刻々車高値がフィードバックされるので、内部リークや外部リークがあってもその制御は正常に行われる。二層三方弁78においてレベル調整および傾斜制御においてフィードバックが正常に行われない故障状態のとき、あるいは二層三方弁78を搭載する車両10が運行を終えて車庫入りした倉入り状態となって動作制御が行われなくなるときには、内部リークや外部リークによって空気バネ22,23から気体が漏れて縮小状態となることが生じ得る。
そのような状態を抑制するために、スリーブが一層構造である通常の三方弁を二層三方弁78に並列に配置することが好ましい。図10は、図5に対応し第1空気バネ22に関する部分を示すブロック図である。勿論、第2空気バネ23についても同様な適用が可能である。ここでは、通常の三方弁220を用い、そのスプールを回転・直進機構222で駆動させるようにリンクレバー機構24に接続し、これを二層三方弁78に並列に配置して車体傾斜装置とした構成が示されている。
図10において、三方弁220は、従来技術で用いられる高さ調整弁に相当するものとしてよい。
開閉弁224,226,228は、図示されていない切換部の制御の下で開閉制御され、二層三方弁78と三方弁220とが使い分けられる。すなわち、二層三方弁78が搭載される車両10において、レベル調整制御または傾斜制御が実行される通常の場合には、開閉弁224が閉じられ、開閉弁226,228が開かれる。二層三方弁78が異常のとき、あるいは二層三方弁78が搭載される車両10が倉入り状態にあって動作制御が行われていないときは、開閉弁226,228が閉じられ、開閉弁224が開かれる。この構成によって、二層三方弁78が異常のとき、あるいは二層三方弁78が搭載される車両10が倉入り状態にあるときでも、空気バネ22が完全に縮小状態となってしまうことを抑制できる。
図11は、二層三方弁78と三方弁220の具体的な並列配置を示す図である。ここでは、二層三方弁78と三方弁220のそれぞれに接続される2つのレバーを有するリンクレバー機構24が示されている。2つのレバーは一体化されて、同じ動きをする。これに代えて、1つのレバーを有するリンクレバー機構24として、その1つのレバーで二層三方弁78のスプール80と三方弁220のスプールを同時に駆動するものとしてもよい。開閉弁224,226は直列に接続され、その接続点が第1空気バネ22に接続される。開閉弁228は、二層三方弁78の供給ポートと気体供給源32との間に設けられる。
図11では、二層三方弁として、図9で説明した構造の制御弁180における二層三方弁181を示した。この制御弁180における二層三方弁181は、図2、図3の構造の給気開閉弁60を有する二層三方弁78に比較して、排気容量を大きく取ることができる。図12は、制御弁180における二層三方弁181を二層三方弁として用いたときの流量特性を示す図である。縦軸は第1空気バネ22に流れる流量Q1、横軸はリンクレバー機構24のレバーの回転角度である。図11に示されるように、レバーの回転角度の絶対値を同じとして比較すると、供給側の流量に比較して排気側の流量が大きくできる。もっとも、排気容量に特別な仕様がないときは、二層三方弁として給気開閉弁60を有する二層三方弁78を用いても構わない。