以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。以下では、従来技術の自動高さ調整弁に相当するものとして、スプール・スリーブ方式の三方弁としての給排気切替弁を説明するが、これは一例であって、空気バネに連通する負荷ポートと、気体供給源に連通する給気ポートと、大気側に開放される排気ポートとの3つのポートを有する切替弁であれば、他の構造であってもよい。また、大容量制御弁もスプール・スリーブ方式の三方弁としての電気的アクチュエータによって駆動される制御弁を説明するが、これも一例であって、電気信号によって制御される三方弁であれば、他の構造であっても構わない。アクチュエータとしてプランジャ型のフォースモータを説明するが、これ以外の方式、例えば、可動線輪型のフォースモータであってもよい。
なお、以下では、空気バネに加圧空気が供給されるものとして説明するが、ここでの空気は、外気の他に、乾燥空気、あるいは窒素と酸素の成分比を適当に変更した気体、適当な不活性ガス等を添加した気体等であってもよい。
また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
図1は、車体傾斜装置30が用いられる車両10の構成を説明する図である。車両10は、路面12の上に敷設されるレール14,15の上を回転する車輪16,17を備える台車18と、乗客等が利用する車体20と、台車18と車体20の間に設けられる空気バネ22,23と、台車18と車体20との間に設けられるリンク機構24,25を含んで構成される。1両の車両について、その前後左右に空気バネとそれに対応するリンク機構がそれぞれ設けられるが、図1では、そのうちの左右の2つの空気バネ22,23とリンク機構24,25についてのみ図示されている。ここでは、車体傾斜装置30を構成する各要素について簡単に説明し、具体的な詳細構造については図3以下で詳述するものとする。
図1では、路面12が傾斜し、左右のレール14,15の高さに差がつけられている。この差は、レールが曲線状に敷設されて車両がカーブしながら走行するときに、車体20の中の乗客が遠心力を感じないように、車体20を傾斜させるためのものである。曲線の内側のレール14と曲線の外側のレール15の高低差は、カント量と呼ばれる。このカント量は、その曲線部分を走行する車両の設定速度に適合して設定されるので、その設定速度以上で高速走行する車両の場合には、超過遠心力が生じることになる。
その超過遠心力を車体20の中の乗客に感じさせないようにするには、その高速走行に対応するカント量に相当するように、台車18に対し車体20を曲線の内側に向かって傾斜させればよい。このように台車18に対し車体20を傾斜させることが車体傾斜制御である。図1に例では、空気バネ22が縮小され、空気バネ23が伸長されて、これによって車体20の空気バネ22側が低くなるように、車体20が台車18に対し傾斜している様子が示されている。
リンク機構24,25は、台車18に対し回動可能に一方端が支持される台車側アームと、車体20に対し回転可能に他方端が支持される車体側アームであるレバーと、台車側アームの他方端と車体側アームの一方端が相互に回動可能に接続される機構で、台車18に対する車体20の高さ位置が変わると、リンク機構24,25のリンク形状が変化し、その形状変化は、台車18に対する車体20の高さによって一意に定まる。そこで、例えば、予め定められた車体20の基準面に対する車体側アームの傾斜角度を、台車に対する車体の高さに対応する高さ対応値として用いることができる。その意味から、リンク機構24,25は、高さ対応値を車高値として提供することができる車高検出器である。
車体傾斜装置30は、各空気バネ22,23に対応して設けられる個別傾斜部40,41と、複数の個別傾斜部40,41を統合的に制御する制御部100とを含んで構成される。個別傾斜部40,41は、図1の例では左右対称の構成であるので、以後では、個別傾斜部40について説明を続けるものとする。
個別傾斜部40は、制御部100から与えられる高さ指令値と、リンク機構24から得られる車高値との間の偏差である高さ偏差を用いて、センサ付き給排気切替弁42と、大容量比例弁72を駆動して、空気バネ22に対し十分な給排気を行うことができる装置である。ここで、センサ付き給排気切替弁42は、リンク機構24の傾斜角度に基いて機械的に駆動され、大容量比例弁72は、センサ付き給排気切替弁42の変位センサの電気信号に基いて制御弁駆動回路部70によって電気的に駆動される。
センサ付き給排気切替弁42と、大容量比例弁72には、それぞれ給気ポート、排気ポート、負荷ポートが設けられる。図1の気体供給源32は、センサ付き給排気切替弁42と大容量比例弁72の給気ポートに接続され、加圧気体を供給する気体源である。排気は、センサ付き給排気切替弁42と大容量比例弁72の排気ポートを大気側に開放することで行われる。
切替弁路92は、センサ付き給排気切替弁42の負荷ポートと空気バネ22とを接続する給排気路である。また、大容量弁路94は、大容量比例弁72に含まれる大容量制御弁の負荷ポートと空気バネ22とを接続する大容量の給排気路である。図1に示されるように、切替弁路92と大容量弁路94とは、相互に合流して、空気バネ22に接続されるので、空気バネ22には、センサ付き給排気切替弁42と、大容量比例弁72に含まれる大容量制御弁とから加圧空気の供給を受けることができ、また、空気バネ22から、センサ付き給排気切替弁42と、大容量比例弁72に含まれる大容量制御弁を介して、大気に開放して排気することができる。
大容量比例弁72の給気ポートに設けられる制御弁給気側開閉弁130と、大容量比例弁72の排気ポートに設けられる制御弁排気側開閉弁132は、乗客の増減に応じて台車に対し車体の床面を一定の高さに制御するレベル調整制御のときに閉じられる開閉弁である。車体の傾斜制御を行なうときは、これらの開閉弁が開放され、大容量比例弁72を作動させることができる。
リンク機構24とセンサ付き給排気切替弁42の間に設けられる指令・減算装置60は、車体20のレベル調整制御と車体20の傾斜制御の双方に用いられる装置である。指令・減算装置60は、台車18に対する車体20の所望の高さを高さ指令値として与える高さ指令処理部としての機能と、リンク機構24によって得られる実際の車高値と、高さ指令値との間の偏差である高さ偏差を出力する高さ偏差出力部としての機能を有する。この高さ偏差をゼロにするように、車体の車体20のレベル調整制御と車体20の傾斜制御が行なわれる。
図2は、上記構成の車体傾斜装置30の特徴事項を従来技術と比較して説明するブロック図である。上記構成の車体傾斜装置30にはいくつかの従来技術を利用しているが、具体的な詳細構造は必ずしも従来技術と全く同じではない。そこで、図2では、車体20を除き、車体傾斜装置30の各要素の名称と異なる要素名称とし、符号も異なるものとしてある。
図2で示されるように、車体傾斜装置30は、自動高さ調整弁154を有し、これによって、空気バネ系28を伸長・縮小させて台車18に対する車体20の高さである車高を変化させる。そして、その車高変化によるリンクレバー156の位置変化を車体20の実際の高さに対応する値として、指令装置・減算装置152に戻し、指令装置・減算装置152で高さ指令値と実際の高さ値と比較し、その差を自動高さ調整弁154に与え、自動高さ調整弁154はその差をゼロにするように、空気バネ系28に給気または空気バネ系28を排気する。
この一連の流れが、従来技術によって知られている範囲であるが、このように、従来技術では、リンクレバー156の機械的変化量を用いて自動高さ調整弁154の作動を機械的に制御している。
従来技術で知られている範囲に対し、車体傾斜装置30は、破線で囲まれた部分に特徴事項を有する。すなわち、自動高さ調整弁154をセンサ158付きとする。そして、このセンサ158によって自動高さ調整弁154の機械的作動量を電気信号に変換する。そして、その電気信号をアンプ160によって適当に増幅等の信号処理を行い、3ウェイ比例弁162の電気的駆動信号とする。3ウェイ比例弁162とは、給気ポート、排気ポート、負荷ポートの3つのポートを有し、負荷ポートの出力を電気的駆動信号に比例したものとする制御弁で、自動高さ調整弁154に比べ、大容量の給排気能力を有する。そして、この3ウェイ比例弁162によって、空気バネ系28に給気または空気バネ系28を排気する。
このように、車体傾斜装置30の破線で囲まれた部分では、電気的制御によって、空気バネ系28に対し給気と排気とを行なわせることができる部分が追加されている。これによって、空気バネ系28に対する給気と排気を、自動高さ調整弁154の機能によって行なわせるよりも、大容量で実行できるので、短時間で空気バネ系28の伸長または縮小を行うことができる。
図3は、図2で説明した原理的ブロック図を、車体傾斜装置30の具体的な構成で示すブロック図である。車体傾斜装置30は、指令・減算装置60と、センサ付き給排気切替弁42と、制御弁駆動回路部70と、大容量比例弁72と、リンク機構24を含んで構成される。車体傾斜装置30の構成要素ではないが、空気バネ系28と、車体20が図3には示されている。制御弁駆動回路部70以外の要素は、一体化構造をとるものが多いので、ここでは、簡単な説明に留め、それらの詳細は後述することにする。そして、ここでは特に、制御弁駆動回路部70の詳細を中心に説明する。
リンク機構24は、図2の156に対応するもので、台車18に対する車体20の高さを検出して、指令・減算装置60にフィードバックする機構である。指令・減算装置60は、図2の指令装置・減算装置152に対応する装置である。指令・減算装置60は、台車18に対する車体20の高さについての指令値である高さ指令値h*102を受け取り、これを、台車18に対する車体20の実際の高さである車高値hと比較し、高さ指令値h*102から車高値hを減算してその偏差である高さ偏差を機械的偏差値として出力して、センサ付き給排気切替弁42に与える機能を有する装置である。高さ指令値h*に代えて、リンク機構24の形状変化に対応する操作角度に対する指令値としての操作角度指令値θ*を用いてもよい。高さ指令値h*102またはそれに対応する操作角度指令値θ*がどのような機構を用いて指令・減算装置60において処理されるかについての詳細は、後に図4、図5を用いて説明する。
センサ付き給排気切替弁42は、図2で説明した自動高さ調整弁154とセンサ158を一体化したものに相当する。センサ付き給排気切替弁42は、図3で示される回転・直進変換機構61と、回転・直進変換機構61によって変換された直進運動の変位を検出して電気信号を出力する変位センサ62と、直進運動によって駆動されるスプールを有するスプール・スリーブ型三方切替弁である給排気切替弁44とを含んで構成される。センサ付き給排気切替弁42の具体的構造については、後に図6等を用いて説明する。
制御弁駆動回路部70は、図2で説明したアンプ160に相当し、変位センサ62が出力する電気信号に基づいて、大容量比例弁72に含まれるフォースモータ74に与える駆動信号を生成する回路である。制御弁駆動回路部70は、センサアンプ110と、プレアンプ112と電流ブースタ114とスイッチ素子116を含んで構成される。
センサアンプ110は、変位センサ62から出力される高さ偏差量あるいは操作角度偏差量に対応する電気的偏差信号を、適当な大きさの信号に増幅する増幅器である。プレアンプ112は、センサアンプ110の出力を処理し、電流ブースタ114に供給する増幅回路である。
プレアンプ112は、センサアンプ110の出力である変位信号に対し、変換ゲインK1を用いて処理する変位ゲイン処理部120と、その出力の上下限を適当に制限して以後の処理で信号の飽和が生じないようにするリミッタ122と、センサアンプ110の出力を微分して速度フィードフォワード信号とする速度変換部124と、リミッタ122の出力と速度変換部124の出力の偏差を求める演算器126と、演算器126の出力に対し、変換ゲインK2を用いて処理する速度ゲイン処理部128とを含む。
電流ブースタ114は、プレアンプ112の出力に基いて、フォースモータ74の駆動電流を生成する増幅機能を有するドライバ回路である。
スイッチ素子116は、車体傾斜装置30がレベル調整制御を実行するとき、すなわち、高さ指令値h*102が平坦高さ値であるときにOFFとされ、車体傾斜装置30が車体傾斜制御を実行するとき、すなわち、高さ指令値h*102が傾斜指令用高さ値のときにONとされるスイッチである。このスイッチ素子116の機能により、レベル調整制御のときには、フォースモータ74に駆動電流が供給されない。
大容量比例弁72は、図2の3ウェイ比例弁162に対応するものである。大容量比例弁72は、フォースモータ74と大容量制御弁80を含んで構成される。フォースモータ74は、プランジャ型のモータで、大容量制御弁80を駆動する制御弁駆動部としての機能を有するアクチュエータである。大容量制御弁80は、フォースモータ74によって駆動されるスプールを有するスプール・スリーブ型の三方比例弁である。給排気切替弁44と相違するのは、給排気能力で、給排気切替弁44よりも大きな給排気能力を有する。
大容量制御弁80における気体供給源32側に設けられる制御弁給気側開閉弁130と、大容量制御弁80における排気側に設けられる制御弁排気側開閉弁132は、スイッチ素子116の動作と同様に、高さ指令値h*102が平坦高さ値であるときにOFFとされ、高さ指令値h*102が傾斜指令用高さ値のときにONとされる大容量開閉弁である。すなわち、レベル調整制御のときには、大容量制御弁80は作動しない。
給排気合流分岐部96は、センサ付き給排気切替弁42からの切替弁路92と、大容量制御弁80からの大容量弁路94とを一体化する流路結合部である。図3に示すように、センサ付き給排気切替弁42からの流量をQ1とし、大容量制御弁80からの流量をQ2として、この2つを合計して空気バネ22に供給し、あるいは空気バネ22からの排気を、センサ付き給排気切替弁42への流量Q1と、大容量制御弁80への流量Q2の2つに分岐する流路結合部である。
空気バネ系28は、空気バネ22と補助タンク26とで構成される。補助タンク26は空気バネ22に連通して接続され、空気バネ22における急激な加圧空気の増減を吸収する緩衝タンクである。空気バネ22の伸長・縮小による車体20の台車18に対する車高値h106は、リンク機構24によって、操作角度θに変換され、上記のように、指令・減算装置60において、操作角度指令値θ*と比較される。
次に、指令・減算装置60について説明する。図4は、指令・減算装置60と給排気切替弁44の回転・直進変換機構61との関係を説明する斜視図で、図5はその断面構造図である。指令・減算装置60は、高さ指令値h*に応じて回転・直進機構の原点を変更することで、リンク機構24と給排気切替弁44との間の相対的な位置関係を変更する高さ指令処理部としての機能を有する。
給排気切替弁44は、スリーブと呼ばれる案内部の内部に摺動自在に支持されるスプールと呼ばれる軸部材が直進運動をするが、図4には、そのスプールの直進運動の方向が矢印で示されている。指令・減算装置60は、この給排気切替弁44のスリーブを含むハウジングに取り付けられ、操作モータ170と、操作モータ170の出力軸に一体的に取り付けられる操作板178と、操作板178の回転中心から偏心して設けられる偏心ピン180とを含んで構成される。
偏心ピン180に対応して、給排気切替弁44のスプールには案内溝182が設けられる。この偏心ピン180と案内溝182とが回転・直進変換機構61を構成する。このように、指令・減算装置60と給排気切替弁44の回転・直進変換機構61とは一体的に構成されている。ここで、操作板178が回転すると、回転・直進変換機構61の機能によって給排気切替弁44が作動するので、操作板178、偏心ピン180、案内溝182が、給排気切替弁44を駆動する切替弁駆動部としての機能を有する。広い意味では、リンク機構24と指令・減算装置60も含めて、切替弁駆動部としての機能を有するものとすることができる。このように、切替弁駆動部は機械的な機構によって給排気切替弁44を駆動するものである。
操作モータ170は、図5の断面図に示されるように、モータケース172と、モータケース172の内部に固定して設けられるステータコイル174と、モータケース172に対し回転可能に支持されるロータ176を含んで構成される。操作モータ170と給排気切替弁44のハウジングとは、図示されていない保持機構によって、ロータ176を回転自在に支持するようにして取付られる。すなわち、操作モータ170は、給排気切替弁44のハウジングに対し、ロータ176を回転自在として保持されて取り付けられる。操作モータ170は、制御部100の制御の下でステータコイル174に駆動信号が与えられて動作する。操作モータ170に対する動作制御は、レベル調整制御と車体傾斜制御とを区別して次のようにして行なわれる。
制御部100がレベル調整制御を行なうときは、高さ指令値h*として平坦高さ値を指令する。このときは、操作モータ170に特別な駆動信号を出力しない。したがって、操作モータ170は、ステータコイル174とロータ176との相対位置関係をそのまま保持する。換言すれば、ステータコイル174が取り付けられるモータケース172と、ロータ176とは一体的に動作し、モータケース172が給排気切替弁44のハウジングに対し回転するときは、ロータ176もモータケース172と一体となって給排気切替弁44のハウジングに対し回転する。
制御部100が車体傾斜制御を行なうときは、高さ指令値h*として傾斜指令用高さ値を指令する。このときは、操作モータ170に対し、高さ指令値h*に対応する操作角度指令値θ*となるまで、ロータ176をステータコイル174に対し相対的に回転するように駆動信号を出力する。
図4、図5に示されるレバー168は、リンク機構24の車体側アームで、その一方端は、リンク機構24の台車側アーム166に回転自在に接続され、他方端は、操作モータ170のモータケース172に一体的に固定される。
かかる構成の作用を説明する。制御部100がレベル調整制御を行なうときは、上記のように高さ指令値h*として平坦高さ値を指令するが、実際には、操作モータ170に特別な駆動信号を出力しない。ここで、車両の乗客の増減に応じて台車18に対し車体20の床面が上下すると、その車高値hに対応してリンク機構24の形状が変化する。このリンク機構24の形状変化に伴って、レバー168はモータケース172を給排気切替弁44のハウジングに対し回転させることになるが、この回転角度がリンク機構24のレバー168の操作角度θである。このように、車高値hが変化すると、レバー168の操作角度θが車体20が平坦な状態のときの操作角度=0°から変化する。
このロータ176の回転と一体的に操作板178が回転し、その回転によって偏心ピン180もロータ176の軸周りに回転する。偏心ピン180は、給排気切替弁44のスプールの案内溝182によって案内され、スプールはスリーブに対し軸方向に摺動可能に保持されるので、偏心ピン180のロータ176の軸周りの回転が案内溝182に案内される直進運動を介して、スプールのスリーブに対する直進運動に変換される。このようにして、操作角度θの変化が給排気切替弁44の弁体であるスプールの位置Xに変換される。
これによって、給排気切替弁44が作動し、例えば、車高値hがマイナスの値で台車18に対し車体20が沈んでいる状態であるときには、給気ポートと負荷ポートとを連通するようにすれば、空気バネ22に給排気切替弁44から加圧気体が供給され、空気バネ22が伸長し、車体20を台車18に対し持ち上げることができる。そして、車高値h=0つまり平坦高さ値となれば、操作角度θ=0°に戻り、給排気切替弁44の状態が元に戻って、空気バネ22への給気が停止する。このようにして、リンク機構24の車高値hのフィードバックによって、高さ指令値h*から実際の車高値hが減算される。この減算処理が指令・減算装置60の中の減算機能に対応する。そして、減算の結果得られる高さ偏差量に応じて給排気切替弁44の作動が制御され、高さ偏差値をゼロにするように、自動的に車体20の台車18に対するレベル調整が行なわれる。
制御部100が車体傾斜制御を行なうときは、上記のように高さ指令値h*として傾斜指令用高さ値を指令する。具体的には、操作モータ170に対し、高さ指令値h*に対応する操作角度指令値θ*となるまで、ロータ176をステータコイル174に対し相対的に回転するように駆動信号を出力する。なお、リンク機構24は、実際の車高値hに対応するリンク形状となっており、レバー168は、その車高値hに対応する操作角度θとなっている。例えば、正常にレベル調整制御が行なわれているであれば、操作角度指令値θ*が指令されたときには傾斜指令用高さ値が操作角度θ=0°となっている。操作角度θは、操作角度指令値θ*が与えられても、実際の車高値hが変化しない限り変化しない。
ここで、制御部100から高さ指令値h*またはこれに対応する操作角度指令値θ*が操作モータ170に与えられると、その指令値に応じ、ロータ176がステータコイル174に対し回転する。つまりロータ176はモータケース172に対し相対的に回転するが、モータケース172はレバー168の操作角度θのままである。このように、車体傾斜制御においては、操作角度指令値θ*が指令されると、レバー168に対し、相対的にロータ176が回転する。そして、この回転角度が操作角度指令値θ*となったところでロータ176の回転が停止する。
このロータ176の回転と一体的に操作板178は回転し、その回転によって偏心ピン180もロータ176の軸周りに回転する。偏心ピン180は、給排気切替弁44のスプールの案内溝182によって案内され、スプールはスリーブに対し軸方向に摺動可能に保持されるので、偏心ピン180のロータ176の軸周りの回転が案内溝182に案内される直進運動を介して、スプールのスリーブに対する直進運動に変換される。このようにして、操作角度指令値θ*が給排気切替弁44の弁体であるスプールの直進運動の位置Xに変換される。
これによって、給排気切替弁44が作動し、例えば、高さ指令値h*が平坦高さ値よりも高さが高い値で、空気バネ22を伸長させる方向の指令であるときに、給気ポートと負荷ポートとを連通するようにすれば、空気バネ22に給排気切替弁44から加圧気体が供給され、空気バネ22が伸長し、車体20を台車18に対し持ち上げることができる。
具体的には、次のようにして、操作角度指令値θ*と実際の操作角度θの間の偏差量である操作角度偏差量がゼロとされる。すなわち、上記のように、操作モータ170は通常の状態では、モータケース172とロータ176が一体となって回転する。したがって、レバー168の操作角度が変化してモータケース172が回転し、これと一体的にロータ176が回転するが、そのロータ176の回転は、操作角度指令値θ*を減少させる方向である。つまり、空気バネ22を持ち上げるときの回転と逆方向の回転である。このロータ176の逆方向の回転によって、操作板178も逆方向に回転し、その逆方向回転によって偏心ピン180もロータ176の軸周りに逆方向に回転する。偏心ピン180のロータ176の軸周りの逆周りの回転は案内溝182に案内される直進運動を介して、スプールのスリーブに対する逆方向の直進運動に変換される。このようにして、スプールは、空気バネ22に対する加圧気体の供給を止める方向に移動する。
こうして、空気バネ22への加圧気体の供給によって車高値hが高くなるに応じてレバー168の操作角度θが増加し、操作角度指令値θ*と一致すると、ロータ176の回転が止まり、給排気切替弁44の移動が止まる。
このように、指令・減算装置60の操作モータ170、回転・直進変換機構61の操作板178の偏心ピン180とこれに対応するスリーブの案内溝182、リンク機構24のレバー168、給排気切替弁44のスリーブとスプールとハウジング等は、全体として一体化されて構成される。
上記では、操作モータ170を、リンク機構24と給排気切替弁44との間の相対的な位置関係を変更し、高さ指令値h*に応じて回転・直進機構の原点を変更する指令・減算装置60の中の高さ指令処理部の機能を有するものとして説明した。これ以外の構成でも、指令・減算装置60の中の高さ指令処理部としては、高さ指令値h*に応じて回転・直進機構の原点を変更するものであればよい。
例えば、リンク機構24はそのままとして、操作モータによって車体20に対してセンサ付き給排気切替弁42を高さ指令値h*に応じて回転させる構成を用いてもよい。あるいは、リンク機構24の台車側アーム166の長さを高さ指令値h*に応じて変更させるアクチュエータを用いることもできる。また、リンク機構24をそのままとして、車体20に対するセンサ付き給排気切替弁42の高さ位置を高さ指令値h*に応じて変更させるアクチュエータを用いるものとしてもよい。ここで述べた以外の構成で高さ指令値h*に応じて回転・直進機構の原点を変更するものを用いてもよい。
次に、図6を用いて個別傾斜部40の詳細構成を説明する。図6では、車体20の台車18に対する高さである車高値として、平坦高さ値に維持されている状態の個別傾斜部40の各要素の状態が示されている。すなわち、給排気切替弁44のハウジングに対するレバー168の操作角度θが0°とされ、給排気切替弁44から空気バネ22に対する給気が止まっている状態が示されている。
個別傾斜部40は、センサ付き給排気切替弁42と、大容量比例弁72を駆動するための制御弁駆動回路部70と、フォースモータ74と大容量制御弁80を含む大容量比例弁72と、センサ付き給排気切替弁42からの切替弁路92と、大容量制御弁80からの大容量弁路94と、これら2つの給排気路を一体化接続する給排気合流分岐部96を含んで構成される。なお、図6には、センサ付き給排気切替弁42と大容量制御弁80に加圧空気を供給する気体供給源32が示されているが、センサ付き給排気切替弁42と大容量制御弁80を介して空気バネ22を大気側に開放するためには、特別な排気設備を要しないので、単に大気側に開放する排気口を示した。もっとも、排気口にフィルタを設けることができる。
センサ付き給排気切替弁42は、給排気切替弁44と、変位センサ62とを含む。図4、図5で説明したように、給排気切替弁44のハウジングに指令・減算装置60が取り付けられる。また、リンク機構24のレバー168の他方端が指令・減算装置60の操作モータ170のモータケース172に一体的に固定される。
給排気切替弁44は、スリーブと呼ばれる切替弁本体46と、スプールと呼ばれる切替弁弁体48とを含むスプール・スリーブ方式の三方弁である。
切替弁本体46は、円筒状部材で、内壁は、切替弁弁体48を摺動可能に支持するように滑らかに加工され、筒部には、空気バネ22に連通する負荷ポート50と、気体供給源32に連通する給気ポート52と、大気に開放される排気口につながる排気ポート54との3つのポートを有する。
切替弁弁体48は、ランドと呼ばれる円筒部とランドより細径のステムと呼ばれる軸部を有し、切替弁本体46に対し軸方向に移動することで、ランドと切替弁本体46の各ポートとの相対位置を変化させることができ、これによって、負荷ポート50を給気ポート52に連通させて切替弁路92を介して空気バネ22側に給気し、あるいは負荷ポート50を排気ポート54に連通させて空気バネ22側から大気側に排気させることができる。
給排気切替弁44のスリーブに設けられる案内溝182は、図4、図5で説明したように、指令・減算装置60の操作板178に設けられる偏心ピン180とともに、回転・直進変換機構61を構成する。
変位センサ62は、差動トランス型の変位センサである。ここでは、切替弁弁体48が軸方向に延ばされ、磁性体部分を有し、その外周の周りに沿って3つのコイルが配置される。磁性体部分の軸方向の移動で、3つのコイルに誘起信号が発生し、これらの信号を差動処理することで、磁性体部分の軸方向の位置の変化、すなわち切替弁弁体48の軸方向の位置の変化を検出できる。
このように、変位センサ62は位置検出センサであるが、基準位置に対する検出信号を記録しておくことで、この基準位置に対する検出信号を原点として、基準位置と任意の位置との位置偏差についての信号を出力することができる。このように用いられるときは、変位センサ62は、位置偏差検出センサの機能を有することになる。例えば、基準位置を高さ指令値に対応する位置とすることで、変位センサ62は、機械的偏差量である高さ偏差を電気信号に変換して出力することができる。
制御弁駆動回路部70は、図3で説明したように、変位センサ62によって出力される切替弁弁体48の軸方向の位置を示す電気信号を処理して、大容量比例弁72に対する駆動信号を生成する電気回路である。
大容量比例弁72は、フォースモータ74と大容量制御弁80を含んで一体的に構成される制御弁装置である。フォースモータ74は、磁石を含む駆動軸と、駆動軸の外周の周りに沿って配置される2組の駆動コイルを含むプランジャ型のモータである。
大容量制御弁80は、給排気切替弁44と基本的構造が同じで、スリーブと呼ばれる制御弁本体82とスプールと呼ばれる制御弁弁体84を含む三方弁であるが、給排気能力が格段に大きい。その給排気能力は、給排気切替弁44の給排気能力と、車両の車体傾斜制御に要求される応答速度、すなわち、空気バネ22の伸長・縮小の速度の仕様によって設定される。
大容量制御弁80の制御弁本体82は、円筒状部材で、内壁は、制御弁弁体84を摺動可能に支持するように滑らかに加工され、筒部には、空気バネ22に大容量弁路94を介して連通する負荷ポート86と、気体供給源32に連通する給気ポート88と、大気に開放される排気口につながる排気ポート90との3つのポートを有する。
制御弁弁体84は、ランドと呼ばれる円筒部とランドより細径のステムと呼ばれる軸部を有し、その軸方向の一方端に制御弁駆動回路部70のフォースモータ74の駆動軸が接続される。したがって、フォースモータ74によって制御弁本体82に対し軸方向に移動することで、ランドと制御弁本体82の各ポートとの相対位置を変化させることができる。これによって、負荷ポート86を給気ポート88に連通させて空気バネ22側に大容量弁路94を介して給気し、あるいは負荷ポート86を排気ポート90に連通させて空気バネ22側から大気側に排気させることができる。
大容量制御弁80の給気ポート88と気体供給源32との間に設けられる制御弁給気側開閉弁130と、大容量制御弁80の排気ポート90と大気に開放される排気口との間に設けられる制御弁排気側開閉弁132は、図3で説明したスイッチ素子116の動作と同様に、高さ指令値h*102が平坦高さ値であるときにOFFとされ、高さ指令値h*102が傾斜指令用高さ値のときにONとされる大容量開閉弁である。すなわち、レベル調整制御のときには、大容量制御弁80は作動しない。
給排気合流分岐部96は、センサ付き給排気切替弁42からの切替弁路92と、大容量制御弁80からの大容量弁路94の2つの給排気路を一体化させて、空気バネ22に接続する流路結合部である。
以上が、車体傾斜装置30の構成の説明であるが、以下では、車体傾斜装置30の作用について、上記の図6を含めて図9までを用いて詳細に説明する。車体傾斜装置30の作用としては、台車18に対し車体20の床面を一定の高さに制御するレベル調整制御の作用と、車両の曲線部走行の際に、レール14,15によって設定されるカント量の不足のために発生する超過遠心力を緩和するように、車体20を曲線の内側に傾斜させる車体傾斜制御の作用がある。
これらの作用を行なわせるために、制御部100から、高さ指令値h*102と、これをリンク機構24のレバー168の操作角度に変換した操作角度指令値θ*104が出力される。ここで、レバー168の操作角度としては、予め定められた車体20の基準面に対するリンク機構24のレバー168の傾斜角度を用いることができ、具体的には、上記のように、給排気切替弁44のハウジングに対するレバー168の傾斜角度を用いることができる。
最初にレベル調整制御の作用について説明する。レベル調整制御のときの高さ指令値h*102は、台車18に対し車体20を一定の高さに維持するために予め設定される高さ値である平坦高さ値であり、操作角度指令値θ*104は、この平坦高さ値に対応する操作角度である。レベル調整制御においては、車体20の床面は台車18の基準平面に平行とする制御であるので、給排気切替弁44のスプールの直進方向を車体の床面と平行として、これを予め定められた車体20の基準面とすれば、操作角度指令値は0°となる。
個別傾斜部40の構成を説明するために用いた図6は、レベル調整制御が行われているときの様子が示されている。図6では、車体20の車高値hがちょうど平坦高さ値となって落ち着いた状態が示されている。すなわち、センサ付き給排気切替弁42の軸方向が車体20の床面に平行であるとして、リンク機構24の操作角度が0°、すなわち、リンク機構24のレバー168の軸方向がセンサ付き給排気切替弁42の軸方向と一致している。リンク機構24は、車体20の車高値hが平坦高さ値となったときに、レバー168の操作角度が0°になるように、台車側アーム166の寸法と、台車側アーム166の一方側が台車18に回転自在に保持される位置と、レバー168の寸法と、レバー168の他方側が車体20に回転自在に保持される位置とが設定される。したがって、特に制御部100から高さ指令値h*を出さなくても、自動的にレベル調整制御が行なわれる。
すなわち、乗客の増減でリンク機構24のレバー168の操作角度θが変化すると、回転・直進変換機構61の機能によって、操作角度θの変化が切替弁弁体48の軸方向の直進運動の位置Xに変換され、これによって、負荷ポート50が給気ポート52に連通し、あるいは負荷ポート50が排気ポート54に連通する。このとき、図3で説明したように、スイッチ素子116、制御弁給気側開閉弁130、制御弁排気側開閉弁132がOFFされているので、大容量制御弁80は作動しない。したがって、空気バネ22には、給排気切替弁44を介して、図3で説明した流量Q1で加圧空気が供給され、あるいは流量Q1で空気バネ22の空気が排気される。そして、リンク機構24の操作角度が0度に戻ったところで、図4の状態となって、空気バネ22への加圧空気の供給または排気が停止する。
次に車体傾斜制御の作用について説明する。車体傾斜制御における高さ指令値h*は、台車18に対する車体20の高さ対応値であり、レール14,15によって設定されるカント量の不足による超過遠心力を吸収するため、走行路の曲線部の曲率と、車両の走行速度等によって制御部100によって計算された傾斜指令用高さ値である。車体20の傾斜は、左右方向の2つの空気バネ22,23の相対的な伸長・縮小で定まるので、制御部100は、2つの個別傾斜部40,41のそれぞれに異なる値の高さ指令値h*を出力する。操作角度指令値θ*は、この傾斜指令用高さ値に対応する操作角度である。
図7は、車体傾斜制御が行われるときの様子を説明する図である。制御部100から傾斜指令用高さ値としての高さ指令値h*が出力されると、この高さ指令値h*に対応する操作角度指令値θ*の分だけ、リンク機構24のレバー168と給排気切替弁44のハウジングとの間の相対的位置関係が変更される。図7では、指令・減算装置60がθ*だけ回転されることで、そのことが示されている。具体的には、指令・減算装置60を構成する操作モータ170のロータ176と操作板178が、モータケース172に対しθ*だけ回転される。回転・直進変換機構61の機能によって、給排気切替弁44のスプールは、この操作角度指令値θ*に対応する位置まで、その軸方向の位置が移動される。
なお、このときまで正常にレベル調整制御が行なわれているとすると、車体20の車高値hは平坦高さ値を維持し、リンク機構24のレバー168の操作角度θは0°である。図7では、リンク機構24のレバー168の軸方向がセンサ付き給排気切替弁42の軸方向と一致していることでそのことが示されている。つまり、リンク機構24が示す実際の車高値hに対し、給排気切替弁44のスプールの位置は、車高値h*となっている状態に対応する位置に変更される。
図7に示すように、リンク機構24のレバー168と、給排気切替弁44のハウジングとの間の相対的角度が0度からθ*に変更されることで、センサ付き給排気切替弁42の切替弁弁体48はその操作角度の変更に応じて、図7の実線矢印の方向に軸方向に移動する。また、変位センサ62は、その軸方向の移動量を検出して、制御弁駆動回路部70に出力し、ここで、スイッチ素子116、制御弁給気側開閉弁130、制御弁排気側開閉弁132がONされているので、これによって大容量制御弁80の制御弁弁体84は、変位センサ62の出力に応じて、図7の実線矢印の方向に軸方向に移動する。したがって、空気バネ22には、給排気切替弁44と、大容量制御弁80の両方から、図3で説明した流量(Q1+Q2)で加圧空気が供給され、あるいは流量(Q1+Q2)で空気バネ22の空気が排気される。これによって、空気バネ22が伸長または縮小し、車高値hが変化する。
図8は、車高値hが変化して、リンク機構24のレバー168の操作角度θが変化して、ちょうど操作角度指令値θ*となった状態を示す図である。上記のように、リンク機構24のレバー168と給排気切替弁44のハウジングとの間の相対的角度が操作角度指令値θ*とされた後は、リンク機構24のレバー168と操作モータ170のロータ176は一体として回転する。したがって、車高値hが高さ指令値h*の方向に変化すると、リンク機構24のレバー168の操作角度θが0度からθ*の方向に変化し、これに応じて操作モータ170のロータ176が回転し、回転・直進変換機構61の機能によって、給排気切替弁44の切替弁弁体48が図8の破線矢印の方向に軸方向に沿って戻される。同様に、大容量制御弁80の制御弁弁体84も、変位センサ62の出力に応じて、図8の破線矢印の方向に軸方向に沿って戻される。
そして、車高値hが高さ指令値h*となると、リンク機構24のレバー168の操作角度θが操作角度指令値θ*となる。この状態では、図8に示されるように、空気バネ22への給気または排気が止まる。このようにして、流量(Q1+Q2)によって、車体傾斜制御が行われる。
図9は、上記構成の車体傾斜装置30の効果を従来技術と比較して説明する図である。横軸は時間、縦軸は車高値hおよびそれに対応する操作角度θである。実線は、上記構成のように、センサ付き給排気切替弁42と大容量制御弁80を用いて車体傾斜制御を行った場合、一点鎖線は、給排気切替弁44のみを用いて車体傾斜制御を行った場合である。高さ指令値h*、操作角度指令値θ*に到達する時間を比較すると、前者は時間t1でθ*に到達したのに比べ、後者はθ*に到達するのに、t1よりはるかに長い時間t2を要している。これは、空気バネ22に対する流量が、前者と後者とでは大きく異なるためである。このように、図1の構成によれば、従来技術の自動高さ調整弁に相当する給排気切替弁44を十分生かしながら、迅速な車体傾斜制御を行うことが可能となる。
上記では、大容量制御弁80として、フォースモータ74によって、Q2の大きさを制御するものとして説明した。この構成によれば、Q2の大きさを連続的に制御することができる。目的によっては、Q2の大きさを連続的に制御せずに、段階的な大きさで制御することで十分な場合がある。また、場合によっては、Q2に関しオンオフするだけでよいこともある。そのような場合には、フォースモータ74と大容量制御弁80に代えて、1つまたは複数のオンオフ弁を用いることができる。オンオフ弁として、電気信号でオンオフする駆動部を有するものを用いれば、オンオフ弁の動作を制御するオンオフ回路の構成も比較的簡単な構成とすることができる。
図10は、図2に対応する図であって、回路部70、フォースモータ74、大容量制御弁80に代えて、オンオフ回路部210とオンオフ弁部220を用いた車体傾斜装置200の構成を説明する図である。
図11は、図3に対応する図であって、オンオフ弁部220が容量の大きさが相互に異なる3つのオンオフ弁で構成される様子を示す図である。3つのオンオフ弁としては、容量が最も小さい第1オンオフ弁222、中間の容量を有する第2オンオフ弁224、最も大きな容量を有する第3オンオフ弁226が用いられる。第2オンオフ弁224と第3オンオフ弁226の出力は合流装置232によって相互に接続される。また、合流装置232の出力と第1オンオフ弁222の出力は、別の合流装置230によって相互に接続される。
第1オンオフ弁222、第2オンオフ弁224、第3オンオフ弁226は、それぞれ、気体供給源32に接続される給気口と、大気に開放される排気口と、対応する合流装置230,232に接続される出力口とを有する三方弁である。図11でPsの符号が給気口に対応し、Exの符号が排気口に対応する。
第1オンオフ弁222は、オンオフ回路210からの制御信号V1によって出力口が給気口、あるいは排気口と連通する。具体的には、制御信号V1がプラスの信号であるときに出力口が給気口に連通し、制御信号V1がマイナスの信号であるときに出力口が排気口に連通する。同様に、第2オンオフ弁224は、オンオフ回路210からの制御信号V2がプラスの信号のとき、出力口が給気口に連通し、制御信号V2がマイナスの信号であるときに出力口が排気口に連通する。第3オンオフ弁226は、オンオフ回路210からの制御信号V3がプラスの信号のとき、出力口が給気口に連通し、制御信号V3がマイナスの信号であるときに出力口が排気口に連通する。
このように、3つの互いに容量の異なるオンオフ弁を2つの合流装置230,232で直並列に接続することで、3通りの流量を段階的に出力することができる。ここでは、3つのオンオフ弁を用いるものとしたが、オンオフ弁部220を構成するオンオフ弁の数は3以外であってもよい。例えば、1つでも2つでもよく、また4以上であってもよい。
締切弁234は、制御部100の制御によって開閉する弁である。締切弁234は、レベル調整制御のときに閉じられ、車体傾斜制御を行うときに開放される。
オンオフ回路部210は、変位センサ62の出力、すなわち給排気切替弁44のスプールのストロークSに応じて、第1オンオフ弁222、第2オンオフ弁224、第3オンオフ弁226を駆動する信号を出力する回路である。図11では、オンオフ回路部210の動作について、横軸にストロークS、縦軸にオンオフ弁部220に出力する駆動信号Vをとった動作図が示されている。
オンオフ回路部210の動作図には、ストロークSの閾値として、±S1、±S2、±S3が設定されている。そして、これらの閾値に対し、適当なヒステリシス幅を持たせて、駆動信号V1,V2,V3がパルス状に出力される。駆動信号V1,V2,V3は、それぞれ、ストロークSがプラスのときにはプラスの信号を出力し、ストロークSがマイナスのときにはマイナスの信号を出力する。これらの駆動信号V1,V2,V3はストロークSに関し、適当な間隔をあけて離散的に出力される。駆動信号V1は、第1オンオフ弁222に対し出力され、駆動信号V2は、第2オンオフ弁224に対し出力され、駆動信号V3は、第3オンオフ弁226に対し出力される。
したがって、給排気切替弁44のスプールのストロークSが、閾値±S1に対しそのヒステリシス幅の間にあるときは、第1オンオフ弁222に駆動信号V1が出力される。駆動信号V1がプラスの信号のときは、上記のように、第1オンオフ弁222の出力口が給気口に接続され、第1オンオフ弁222の容量に対応して、空気バネ22に流量が供給される。駆動信号V1がマイナスの信号のときは、上記のように、第1オンオフ弁222の出力口が排気口に接続され、第1オンオフ弁222の容量に対応して、空気バネ22が大気に開放される。
また、給排気切替弁44のスプールのストロークSが、閾値±S1に対しそのヒステリシス幅を超えて、閾値±S2に対しそのヒステリシス幅の間にあるときは、第2オンオフ弁224に駆動信号V2が出力される。駆動信号V2がプラスの信号のときは、上記のように、第2オンオフ弁224の出力口が給気口に接続され、第2オンオフ弁224の容量に対応して、空気バネ22に流量が供給される。駆動信号V2がマイナスの信号のときは、上記のように、第2オンオフ弁224の出力口が排気口に接続され、第2オンオフ弁224の容量に対応して、空気バネ22が大気に開放される。
同様に、給排気切替弁44のスプールのストロークSが、閾値±S2に対しそのヒステリシス幅を超えて、閾値±S3に対しそのヒステリシス幅の間にあるときは、第3オンオフ弁226に駆動信号V3が出力される。駆動信号V3がプラスの信号のときは、上記のように、第3オンオフ弁226の出力口が給気口に接続され、第3オンオフ弁226の容量に対応して、空気バネ22に流量が供給される。駆動信号V3がマイナスの信号のときは、上記のように、第3オンオフ弁226の出力口が排気口に接続され、第3オンオフ弁226の容量に対応して、空気バネ22が大気に開放される。
このように、オンオフ弁を用いることで、簡単な構成で、車体傾斜制御に十分な流量を空気バネ22に供給し、あるいは空気バネ22から十分な流量で大気に開放させることができる。