以下、本発明に係る建具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る建具10を室内側から見た正面図である。また、図2は、図1に示す建具10の縦断面図であり、図3は、図1に示す建具10の横断面図である。
図1〜図3に示すように、建具10は、建物の躯体開口部に固定される開口枠12と、開口枠12の内側にスライド可能に配設された一対の障子14,15とを備える。本実施形態では、障子14,15をスライドさせることにより開口枠12の内側開口部を開閉可能な引違い窓の建具10を例示する。障子14,15は一方が開口枠12にはめ殺され、他方のみがスライドする構成であってもよく、また障子の設置枚数は適宜変更可能である。
開口枠12は、上枠12aと、下枠12bと、左右の縦枠12c,12dとを四周枠組みすることで矩形の開口部を形成したものである。本実施形態では開口枠12として、室外側に配設される金属枠18と、室内側に配設される樹脂枠20とを組み合わせた複合構造の枠体を用いている(図2及び図3参照)。金属枠18は、アルミニウム等の金属の押出形材である。樹脂枠20は、塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂の押出形材である。
上枠12aは、金属枠18の上枠部18aに樹脂枠20の上枠部20aを組み付けたものである。下枠12bは、金属枠18の下枠部18bに樹脂枠20の下枠部20bを組み付けたものである。縦枠12c,12dは、それぞれ金属枠18の縦枠部18c,18dに樹脂枠20の縦枠部20c,20dを組み付けたものである。上枠部18a,20a、下枠部18b,20b及び縦枠部18c,18d,20c,20dは、固定ねじ21を用いて建物の躯体に固定される。
図2に示すように、上枠12aの見込み面には、外障子となる室外側の障子14をスライド可能に案内するレール(突出部)22と、内障子となる室内側の障子15をスライド可能に案内するレール(突出部)23とが室内外方向に並ぶように突出形成されている。レール22,23は上枠12aの全長に渡って延在している。上枠12aのレール22,23間には、室内外の気密性を保持するための風止め板24が設けられている。風止め板24に隣接する上枠12aの見込み面には、加熱されると膨張する熱膨張性部材25が2箇所に設けられている。熱膨張性部材25は、例えば加熱されると発泡する黒鉛等の加熱発泡材である。
図2に示すように、下枠12bの見込み面には、障子14をスライド可能に案内するレール(突出部)26と、障子15をスライド可能に案内するレール(突出部)27とが室内外方向に並ぶように突出形成されている。レール26,27は上枠12aの全長に渡って延在している。下枠12bにも風止め板24及び熱膨張性部材25が設けられている。下枠12bに形成された中空部内には、断面コ字状の補強材28が長手方向に延在するように設けられている。補強材28はスチール等で形成されており、この補強材28にも熱膨張性部材25が設けられている。
図3に示すように、縦枠12cの見込み面には、閉じた障子14に対応する位置にヒレ部(突出部)29が突出形成されている。縦枠12dの見込み面には、閉じた障子15に対応する位置にヒレ部(突出部)30が突出形成されている。ヒレ部29,30は、縦枠12c,12dの全長に渡って延在している。
図1〜図3に示すように、室外側の障子14は、四周を囲む框体32となる上框32a、下框32b、戸先框32c及び召合せ框32dと、内側に配置される面材34とを框組みして構成したものである。
面材34は、スペーサ35を介して一対のガラス板36,37を互いに間隔を隔てて対面配置した2層の複層ガラスである。本実施形態の場合、室外側に配置されるガラス板36は、網入りの厚板ガラスとし、室内側に配置されるガラス板37は、薄板のフロートガラスとしている。
図2及び図3に示すように、框体32は、室外側に配設される金属製框材38と、室内側に配設される樹脂製框材40とを組み合わせた構成である。金属製框材38はアルミニウム等の金属の押出形材である。樹脂製框材40は塩化ビニル樹脂(PVC)等の樹脂の押出形材である。
上框32aは、金属製框材38の上框部38aの室内側見付け面に樹脂製框材40の上框部40aを装着したものであり、これら上框部38a,40a間に面材34の上縁部を保持している。下框32bは、金属製框材38の下框部38bの室内側見付け面に樹脂製框材40の下框部40bを装着したものであり、これら下框部38b,40b間に面材34の下縁部を保持している。戸先框32cは、金属製框材38の戸先框部38cの室内側見付け面に樹脂製框材40の戸先框部40cを装着したものであり、これら戸先框部38c,40c間に面材34の側縁部を保持している。召合せ框32dは、金属製框材38の召合せ框部38dの室内側見付け面に樹脂製框材40の召合せ框部40dを装着したものであり、これら召合せ框部38d,40d間に面材34の側縁部を保持している。
図2に示すように、上框32aは、レール22が摺動可能に挿入される開口溝42を上側の見込み面に有し、面材34が配置される面材配置溝44を下側の見込み面に有する。開口溝42及び面材配置溝44は上框32aの全長に渡って延在しており、その間には中空部(ホロー部)46が形成されている。開口溝42及び中空部46は、金属製框材38の上框部38aに形成されている。面材配置溝44は、金属製框材38の上框部38aと樹脂製框材40の上框部40aとで構成されている。面材34は、面材配置溝44内で上框部38aに対して接着剤47で接着されると共に、上框部38aと上框部40aとの間に挟み込まれて保持される。
金属製框材38の上框部38aの室内側見付け面には、樹脂製框材40の上框部40aを着脱可能な取付部48,49が設けられている(図7(A)も参照)。一方の取付部48は、開口溝42の側壁となる一対の壁部42a,42bのうちの室内側の壁部42bの室内側見付け面上端部に配置された爪状の凹部である。他方の取付部49は、中空部46と面材配置溝44との間に配置された爪状の凹部である。これら取付部48,49は、室内側に向かって開口しており、樹脂製框材40の上框部40aから突出した係合片50,51を見込み方向に向かって係合させることができる。
図7(A)に示すように、開口溝42を形成する一対の壁部42a,42bでは、室内側の壁部42bの板厚t2が室外側の壁部42aの板厚t1よりも薄い薄肉構造とされている(図2も参照)。
図2及び図7(A)に示すように、開口溝42の内側には、加熱されると膨張する第1の熱膨張性部材52が設けられ、面材配置溝44の内側には加熱されると膨張する第2の熱膨張性部材53が設けられている。具体的には、第1の熱膨張性部材52は、レール22の案内面22aと対向する開口溝42の底部に配置され、第2の熱膨張性部材53は面材34の上縁部端面と対向する面材配置溝44の底部に配置されている。
第1の熱膨張性部材52は、上記した熱膨張性部材25と同様な構成からなる黒鉛等の加熱発泡材であり、例えば200℃まで加熱された場合に膨張する性質を有する。第2の熱膨張性部材53は、第1の熱膨張性部材52よりも低温で膨張する性質を有する黒鉛等の加熱発泡材であり、例えば150℃まで加熱された場合に膨張する。なお、図7(A)は火災により加熱されたことで低温用の第2の熱膨張性部材53が膨張した状態(図中に参照符号53aで示す第2の熱膨張性部材)を模式的に示しており、図7(B)はさらに加熱されて温度が上昇したことで第2の熱膨張性部材53に続いて第1の熱膨張性部材52も膨張した状態(図中に参照符号52aで示す第1の熱膨張性部材)を模式的に示している。
図2及び図7(A)に示すように、上框32aには、開口溝42の室内側見付け面から面材配置溝44に配置された面材34の縁部側面と対向する位置まで延在した脱落防止金具54が取り付けられている。脱落防止金具54は、ステンレスやスチール等の金属板を屈曲変形させた段付き形状であり、開口溝42の室内側の壁部42bの室内側見付け面に当接配置される当接部54aと、面材34の上縁部室内側面に対面配置される保持部54bとを備える。
脱落防止金具54は、火災時に上框32aから面材34が脱落することを防止するための金具である。脱落防止金具54は、金属製框材38の上框部38aの室内側見付け面に対して2本のねじ56によって固定される(図4(A)、図4(B)及び図7(A)参照)。具体的には、脱落防止金具54は、開口溝42と面材配置溝44との間に設けられた中空部46の室内側の壁部の室内側見付け面に対し、当接部54aの下端部分に形成された取付孔58を挿通したねじ56によって固定される。これにより、脱落防止金具54は、金属製框材38の上框部38aと樹脂製框材40の上框部40aとの間に設置される。中空部46の室内側の壁部の室内側見付け面にはねじ56が螺合されるねじ孔46aが2個形成されている(図4(A)参照)。取付孔58は、脱落防止金具54の幅方向に沿って複数個(本実施形態では4個)が形成されている。
図4(A)及び図4(B)から明らかなように、脱落防止金具54は、上框32aの長手方向寸法よりも短く形成された部品であり、図1に示すように上框32aの長手方向に沿って1個以上、例えば3個並べて設置される。
図2に示すように、下框32bは、レール26が挿入される開口溝62を下側の見込み面に有し、面材34が配置される面材配置溝64を上側の見込み面に有する。開口溝62及び面材配置溝64は下框32bの全長に渡って延在しており、その間には中空部(ホロー部)66が形成されている。開口溝62及び中空部66は、金属製框材38の下框部38bに形成されている。面材配置溝64は、金属製框材38の下框部38bと樹脂製框材40の下框部40bとで構成されている。面材34は、面材配置溝64内で下框部38bに対して接着剤47で接着されると共に、下框部38bと下框部40bとの間に挟み込まれて保持される。
金属製框材38の下框部38bの室内側見付け面には、樹脂製框材40の下框部40bを着脱可能な取付部48,49が設けられている(図8(A)も参照)。取付部48,49は上框32aの取付部48,49と同様な構造である。すなわち、一方の取付部48は、開口溝62の側壁となる一対の壁部62a,62bのうちの室内側の壁部62bの室内側見付け面下端部に配置された爪状の凹部であり、他方の取付部49は、面材配置溝64と中空部66との間に配置された爪状の凹部である。なお、樹脂製框材40を構成する下框部40bは、上框部40aと上下対称構造である点以外は同様な構造であり、取付部48,49に対して見込み方向から係合可能な係合片50,51を有する(図8(A)も参照)。
図8(A)に示すように、下框32bにおいても開口溝62を形成する一対の壁部62a,62bでは、室内側の壁部62bの板厚t4が室外側の壁部62aの板厚t3よりも薄い薄肉構造とされている(図2も参照)。
図2及び図8(A)に示すように、開口溝62の内側には、加熱されると膨張する第1の熱膨張性部材52が2箇所に設けられ、面材配置溝64の内側には加熱されると膨張する第2の熱膨張性部材53が設けられている。第1の熱膨張性部材52は、レール26の案内面26aと対向する開口溝62の底部と壁部62bの室外側面とにそれぞれ配置され、第2の熱膨張性部材53は面材34の下縁部端面と対向する面材配置溝64の底部に配置されている。なお、図8(A)は火災により加熱されたことで低温用の第2の熱膨張性部材53が膨張した状態(図中に参照符号53aで示す第2の熱膨張性部材)を模式的に示しており、図8(B)はさらに加熱されて温度が上昇したことで第2の熱膨張性部材53に続いて第1の熱膨張性部材52も膨張した状態(図中に参照符号52aで示す第1の熱膨張性部材)を模式的に示している。
面材配置溝64には、面材34の下縁部端面を支持するセッティングブロック68が配設されている。セッティングブロック68は、アルミニウム等の金属ブロックの表面に黒鉛等の加熱発泡材を設けたものである。また、中空部66の室外側壁面には、熱膨張性部材25が配設されている。
図2及び図8(A)に示すように、下框32bについても開口溝62の室内側の壁部62bの室内側見付け面から面材配置溝64に配置された面材34の縁部側面と対向する位置まで延在した脱落防止金具54が取り付けられている。脱落防止金具54は上框32aに取り付けられるものと上下対称構造である点以外は同様な構造である。すなわち、脱落防止金具54は、当接部54a及び保持部54bを備えた段付き形状であり、中空部66の室内側の壁部の室内側見付け面に対して2本のねじ56によって固定される(図5(A)、図5(B)及び図8(A)参照)。脱落防止金具54は、図1に示すように下框32bの長手方向に沿って1個以上、例えば3個並べて設置される。
図2及び図8(A)に示すように、金属製框材38の下框部38bには、戸車70が配設されている。戸車70は、レール26の案内面26a上を転動することにより、障子14を開口枠12に対して円滑にスライド移動させるためのローラである。図5(A)及び図5(B)に示すように、戸車70は戸車筐体71に対して回転可能に支持された状態で下框部38bに搭載される。戸車筐体71が下框部38bの中空部66内に嵌挿されると、戸車70は中空部66の下壁66aに形成された切欠部である戸車挿入部66bに挿入され、その外周縁部が戸車挿入部66bを通って開口溝62内に配置される(図2、図5(A)、図5(B)及び図8(A)参照)。
図6(A)及び図6(B)に示すように、戸車挿入部66bは下框部38bの側端部から長手方向に沿って延在するように開口形成されている。下框32bでは、この下框部38bの戸車挿入部66bが形成された部分の室内側見付け面に対して脱落防止金具54が取り付けられる。つまり、脱落防止金具54は、一部(又は全部でもよい)が下框32bの長手方向に沿った方向で、戸車挿入部66bと重なる位置に取り付けられる(図6(B)参照)。これにより、戸車挿入部66bの切欠きによって強度が低下している下框部38bの側端部付近の強度が脱落防止金具54によって補強されるため、火災時に戸車挿入部66bを起点とする下框部38bの捲れや折れ曲がり等の変形を生じることを抑制できる。
図3に示すように、戸先框32cは、開口溝72を戸先側の見込み面に有し、面材34が配置される面材配置溝74を召合せ側の見込み面に有する。開口溝72及び面材配置溝74は戸先框32cの全長に渡って延在しており、その間には中空部(ホロー部)76が形成されている。開口溝72及び中空部76は、金属製框材38の戸先框部38cに形成されている。面材配置溝74は、金属製框材38の戸先框部38cと樹脂製框材40の戸先框部40cとで構成されている。面材34は、面材配置溝74内で戸先框部38cに対して接着剤47で接着されると共に、戸先框部38cと戸先框部40cとの間に挟み込まれて保持される。開口溝72は、障子14が閉じられた状態で縦枠12cのヒレ部29が挿入される部分である。
金属製框材38の戸先框部38cの室内側見付け面には、樹脂製框材40の戸先框部40cを着脱可能な取付部48,49が設けられている。取付部48,49は上框32aの取付部48,49と同様な構造である。すなわち、一方の取付部48は、開口溝72の側壁となる一対の壁部72a,72bのうちの室内側の壁部72bの室内側見付け面側端部に配置された爪状の凹部であり、他方の取付部49は、面材配置溝74と中空部76との間に配置された爪状の凹部である。なお、樹脂製框材40を構成する戸先框部40cは上框部40aと多少形状は異なるが、取付部48,49に係合可能な係合片50,51を有する。
開口溝72、面材配置溝74及び中空部76の内側には、それぞれ熱膨張性部材25が1又は複数配設されている。
戸先框32cについても脱落防止金具54が取り付けられている。戸先框32cに取り付けられた脱落防止金具54は、中空部76の室内側見付け面から面材配置溝44に配置された面材34の縁部側面と対向する位置まで延在している。脱落防止金具54は上框32aに取り付けられるものと同様な構造であり、中空部76の室内側の壁部の室内側見付け面に当接配置される当接部54aと、面材34の側縁部室内側面に対面配置される保持部54bとを備えた段付き形状である。この脱落防止金具54についても、図4(A)に示す上框32aの場合と同様に中空部76の室内側の壁部の室内側見付け面に対して2本のねじ56によって固定される。
また、戸先框32cでは、面材配置溝74内における室外側に断面略L字状の脱落防止金具78が配設されている。脱落防止金具78は脱落防止金具54の保持部54bと共に略コ字状の断面形状を形成し、面材34の側縁部を保持するものである。脱落防止金具54,78は、図1に示すように戸先框32cの長手方向に沿って1個以上、例えば3個並べて設置される。
図3に示すように、召合せ框32dは、面材34が配置される面材配置溝84を戸先側の見込み面に有する。面材配置溝84は召合せ框32dの全長に渡って延在しており、その側部には中空部(ホロー部)86が形成されている。中空部86は、金属製框材38の召合せ框部38dに形成されている。面材配置溝84は、金属製框材38の召合せ框部38dと樹脂製框材40の召合せ框部40dとで構成されている。面材34は、面材配置溝84内で召合せ框部38dに対して接着剤47で接着されると共に、召合せ框部38dと召合せ框部40dとの間に挟み込まれて保持される。
金属製框材38の召合せ框部38dの室内側見付け面には、樹脂製框材40の召合せ框部40dを着脱可能な取付部49が設けられている。取付部49は上框32aの取付部49と同様な構造であり、面材配置溝84と中空部86との間に設けられている。樹脂製框材40を構成する召合せ框部40dは上框部40aと異なる略L字形状であり、L字の一辺が取付部49に係合可能な係合片51となる。
面材配置溝84及び中空部86の内側には、それぞれ熱膨張性部材25が1又は複数配設されている。中空部86では、その外面にも熱膨張性部材25が配設されている。また、召合せ框32dでは、中空部86の内側に断面コ字状の補強材88が長手方向に延在するように設けられている。補強材88はスチール等で形成されている。
面材配置溝84内には、断面略L字状の脱落防止金具90,91が配設されている。これら脱落防止金具90,91は、両者で略コ字状の断面形状を形成し、面材34の側縁部を保持するものである。脱落防止金具90,91は、図1に示すように召合せ框32dの長手方向に沿って1個以上、例えば2個並べて設置される。
図2及び図3に示すように、室内側の障子15は、上枠12aのレール23と下枠12bのレール27の間で室外側の障子14に対して引違いにスライド可能であり、その構成は障子14とほとんど同一構造となっている。そこで、障子15については、上記した障子14の構成要素と対応する構成要素について同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
なお、障子15の召合せ框32dと障子14の召合せ框32dとの間はクレセント92によってロック可能であり、これにより障子14,15が閉状態に保持される。障子15の召合せ框部38d,40dには、それぞれ中空部(ホロー部)93,94が設けられている。また、戸先框32cの開口溝72は、障子15が閉じられた状態で縦枠12dのヒレ部30が挿入される部分である。
ところで、図7(A)に示すように、上框32aに配設されるねじ56は、戸先框32c及び召合せ框32dに対して上框32aを固定するための固定ねじ95が締結されるねじ孔(ビスホール)96に対して当接する位置にある。すなわち、ねじ孔96は上框32aの長手方向に沿って設けられ、ねじ56は見込み方向に向かって螺入され、該ねじ56の先端がねじ孔96に干渉可能な位置にねじ孔46a(図4(A)参照)が形成されている。ここで、ねじ56はねじ孔96に締結された固定ねじ95の非有効ねじ部を押圧する位置に配設されることにより、該非有効ねじ部においてねじ56がねじ孔96を押圧するため、固定ねじ95を損傷させることなく固定ねじ95の緩みや脱落を防止できる。
次に、上記のように構成された建具10の作用について説明する。
例えば、室外側で発生した火災等の熱を建具10が受けた場合、各障子14,15の上框32aでは、図7(A)に示すように、先ず面材配置溝44に配設された低温用の第2の熱膨張性部材53が膨張する。これにより、面材34の上縁部端面と面材配置溝44との間の隙間が膨張した第2の熱膨張性部材53によって閉塞され、この部分に火炎や煙等が流通する貫通孔が形成されることが防止され、ガラス板36,37とスペーサ35との間を接着・気密しているシール材の燃焼によるガスの漏えいも防止される。
建具10がさらに加熱されると、図7(B)に示すように、今度は開口溝42に配設された第1の熱膨張性部材52が膨張する。これにより、開口溝42内が膨張した第1の熱膨張性部材52によって閉塞される。
同時に、第1の熱膨張性部材52の膨張圧により開口溝42を形成する壁部42a,42bが内側から押圧力を受け、厚肉の壁部42aよりも薄肉構造を有する室内側の壁部42bが図7(B)に示すように室内側へと押し倒されるように優先的に変形する。そうすると、金属製框材38を構成する上框部38aの壁部42bに設けられた取付部48及び中空部46の下部に設けられた取付部49に対して係合片50,51によって取り付けられていた樹脂製框材40の上框部40aは、壁部42bの変形による室内側への押圧力を受ける。そのため、上框部40aは、その上端部の係合片50が取付部48から離脱すると共に、係合片51も取付部49から離脱するため、樹脂製框材40の上框部40aが金属製框材38の上框部38aから外れることになる。この際、上框部40aの上端部に設けられた係合片51は、壁部42bの上端部に設けられた取付部48に係合しているため、壁部42bの変形により効果的にその係合状態が解除される。
さらに、壁部42bの変形により、図7(B)に示すように、脱落防止金具54の当接部54aも室内側への押圧力を受ける。そうすると、中空部46の室内側見付け面に対し、当接部54aと保持部54bとの間がねじ56によって固定された脱落防止金具54は、当接部54aの室内側への移動に伴い、ねじ56による固定部を支点として図7(B)中で時計方向への回転力を受け、保持部54bが面材34側に押圧力を受けて移動する。このため、保持部54bが面材34の室内側面に強く押し付けられ、面材34を一層強固に保持することになる。
このような状況下、各障子14,15の下框32bでは、図8(A)に示すように、先ず面材配置溝64に配設された低温用の第2の熱膨張性部材53が膨張する。これにより、面材34の下縁部端面と面材配置溝64との間の隙間が膨張した第2の熱膨張性部材53によって閉塞される。続いて、図8(B)に示すように、今度は開口溝62に配設された第1の熱膨張性部材52が膨張する。これにより、開口溝62内が膨張した第1の熱膨張性部材52によって閉塞される。
同時に、第1の熱膨張性部材52の膨張圧により開口溝62を形成する壁部62a,62bが内側から押圧力を受け、厚肉の壁部62aよりも薄肉構造を有する室内側の壁部62bが図8(B)に示すように室内側へと押し倒されるように優先的に変形する。そうすると、金属製框材38を構成する下框部38bの壁部62bに設けられた取付部48及び中空部66の上部に設けられた取付部49に対して係合片50,51によって取り付けられていた樹脂製框材40の下框部40bは、壁部62bの変形による室内側への押圧力を受ける。そのため、下框部40bについても、その下端部の係合片50が取付部48から離脱すると共に、係合片51も取付部49から離脱するため、樹脂製框材40の下框部40bが金属製框材38の下框部38bから外れることになる。
さらに、壁部62bの変形により、図8(B)に示すように、脱落防止金具54の当接部54aも室内側への押圧力を受ける。そうすると、中空部66の室内側見付け面に対し、当接部54aと保持部54bとの間がねじ56によって固定された脱落防止金具54は、当接部54aの室内側への移動に伴い、ねじ56による固定部を支点として図8(B)中で反時計方向への回転力を受け、保持部54bが面材34側に押圧力を受けて移動する。このため、保持部54bが面材34の室内側面に強く押し付けられ、面材34を一層強固に保持することになる。
また、各障子14,15の戸先框32cにおいても、樹脂製框材40の戸先框部40cが金属製框材38の戸先框部38cの室内側見付け面に設けられた取付部48,49に対して係合片50,51によって装着されている。そのため、上框32aで上框部38aから上框部40aが外れた樹脂製框材40は、戸先框部38cの熱変形と自身の自重の影響により、戸先框部38cから戸先框部40cも上部から下部に向かって次第に外れることになる。同様に、召合せ框32dにおいても樹脂製框材40の召合せ框部40dが金属製框材38の召合せ框部38dから外れる。
このように樹脂製框材40が金属製框材38から外れることにより、金属製框材38の室内側見付け面が露出する。このため、金属製框材38は火災による熱を室内側へと円滑に放熱することが可能となり、火災によって受ける損傷が最小限に抑えられ、面材34の脱落が回避される。なお、戸先框32c及び召合せ框32dでは、壁部42b,62bのような薄肉構造による変形がなされないため、図7(B)及び図8(B)に示す上框32a及び下框32bのように円滑に樹脂製框材40が外れない事態も想定される。しかしながら、上記のように上框32aから外れた樹脂製框材40はその自重によって次第に室内側に垂れ下がり、戸先框部38cの熱変形もある程度は見込めるため、少なくとも一部は外れて金属製框材38の放熱は十分なものとなる。
なお、上框32a及び下框32bについても、樹脂製框材40の上框部40a及び下框部40bは、金属製框材38の上框部38a及び下框部38bの室内側見付け面に設けられた取付部48,49に対して係合片50,51によって装着されている。このため、仮に開口溝42,62内に第1の熱膨張性部材52を配設していない場合でも壁部42b,62bの熱変形によって上框部40a及び下框部40bの少なくとも一部は外れるため、金属製框材38の放熱は十分なものとなる。
以上のように、建具10では、金属製框材38は、開口溝42(62,72)の側壁となる一対の壁部42a,42b(62a,62b,72a,72b)のうちの一方の壁部42b(62b,72b)の見付け面に樹脂製框材40を着脱可能な取付部48を有する。
従って、建具10が火災等の熱を受けた場合、壁部42b(62b,72b)が熱や第1の熱膨張性部材52の膨張によって変形すると樹脂製框材40が金属製框材38の見付け面から外れて該金属製框材38を露出させる。これにより、金属製框材38が受けた熱を円滑に放熱させることができ、その損傷が抑制されるため、面材34の脱落が回避される。しかも建具10では、このように樹脂製框材40が外れることで金属製框材38を保護することができるため、上框32a、下框32b及び戸先框32cの中空部内にスチール等で形成された補強材を配設する必要がない。従って、製品のコストや重量の増加を抑えることができる。
すなわち、建具10では、上框32a、下框32b及び戸先框32cは、上記のように火災時に樹脂製框材40が円滑に外れて金属製框材38の放熱を促進する構成であるため、これら上框32a、下框32b及び戸先框32cには補強材を配設せずに防火構造を構築することができる。一方、召合せ框32dは、開口枠12に対してその上端及び下端のみで支持されるため、他の框よりも高い耐久性が必要となり、また開口枠12との接触部も上端及び下端のみであることから該開口枠12への放熱もほとんど期待されない。そこで、建具10では、召合せ框32dにのみ補強材88を配設することで防火性能を向上させ、同時に補強材の配設によるコストや重量の増加を最小限なものとしている。
建具10において、上框32a(下框32b)には、開口溝42(62)の室内側の壁部42b(62b)の室内側見付け面から面材配置溝44(64)に配置された面材34の縁部側面と対向する位置まで延在するように設けられ、該上框32a(下框32b)からの面材34の脱落を防止する脱落防止金具54が取り付けられている。
従って、建具10が火災等の熱を受けた場合、開口溝42(62)を形成する壁部42b(62b)が熱や第1の熱膨張性部材52の膨張によって変形すると、脱落防止金具54の当接部54aが該壁部42b(62b)から押圧される。これにより、面材配置溝44(64)で面材34の縁部側面と対向する保持部54bが面材34側への押圧力を受け、面材34に強く押し付けられるため、火災時に面材34が框体32から落下することをより確実に防止でき、高い防火性能を確保することができる。
この場合、脱落防止金具54は、開口溝42(62)と面材配置溝44(64)との間となる位置でねじ56によって框体32に対してねじ止め固定されている。このため、当接部54aに壁部42b(62b)から与えられた押圧力により、ねじ56部分を支点として脱落防止金具54が回転力を受けるため、保持部54bをより十分に面材34に対して押し付けることができる。
建具10では、このように火災時に面材34に押し付けられる構造からなる脱落防止金具54を有するため、脱落防止金具54を框体32の全長に渡って設ける必要がなく、脱落防止金具54を短尺な部品構成とすることができる。このため、脱落防止金具54の製造コストが低減され、建具10の重量増加も抑えることができる。
建具10では、開口溝42(62)の内側に第1の熱膨張性部材52を設け、面材配置溝44(64)の内側に第1の熱膨張性部材52と異なる温度で膨張する第2の熱膨張性部材53を設けている。
従って、開口溝42(62)内の第1の熱膨張性部材52と面材配置溝44(64)内の第2の熱膨張性部材53とが同時に膨張し、その膨張力によって框体32や面材34、開口枠12に大きな負荷が生じ、これらが損傷することを防止できる。しかも第1の熱膨張性部材52と第2の熱膨張性部材53とがそれぞれに設定された温度域で膨張することにより、室内外に火炎や煙が流通する貫通孔が発生することを防止できる。
この場合、第2の熱膨張性部材53は、第1の熱膨張性部材52よりも低温で膨張する性質を有する。このため、先ず面材配置溝44(64)に配設された第2の熱膨張性部材53が膨張して、面材34の縁部端面と面材配置溝44(64)との間の隙間での貫通孔の発生が防止されると共に、ガラス板36,37とスペーサ35との間を接着・気密しているシール材の燃焼によるガスの漏えいも防止される。続いて、開口溝42(62)に配設された第1の熱膨張性部材52が膨張する。このため、この部分での貫通孔の発生が防止される。
しかも、第1の熱膨張性部材52の膨張が第2の熱膨張性部材53よりも遅く膨張することにより、第1の熱膨張性部材52の膨張力によって壁部42b(62b)が変形し、樹脂製框材40が金属製框材38から脱落する際には、先んじて膨張していた第2の熱膨張性部材53によって面材34の縁部端面が閉塞されている。このため、樹脂製框材40が外れた際にガラス板36,37のエッジ露出が最小限となり、また樹脂製框材40が外れたことによる面材配置溝44(64)での室内外の貫通孔の形成も防止される。
また、アルミニウム等で構成される金属製框材38は面材34を構成するガラスよりも熱伸び量が大きく、そのため框体32が上方へと熱伸びすると上框32aが面材34の上縁部から外れる懸念がある。この点、当該建具10では、先に面材配置溝44で第2の熱膨張性部材53が膨張し、面材34の縁部端面と面材配置溝44との間の隙間に充満して面材34を保持し、その後に開口溝42に配置された第1の熱膨張性部材52が上枠12aやレール22との間で膨張するので、上枠12aやレール22を押す反力で上框32aを押下げて上框32aが上に移動するのを抑えるため、面材34の脱落を防止できる。
さらに、これら第1の熱膨張性部材52と第2の熱膨張性部材53との間には、中空の中空部46(66)が設けられている。このため、第1の熱膨張性部材52と第2の熱膨張性部材53による過度な膨張力はこの中空部46(66)によって吸収されるため、この膨張力によって框体32のみならず面材34や開口枠12が損傷することを防止できる。
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
例えば、上記した実施形態では、上框32a(下框32b)に設けられた脱落防止金具54が、開口溝42(62)の室内側の壁部42b(62b)の室内側見付け面から面材配置溝44(64)に配置された面材34の縁部と対向する位置まで延在する構成であるとしたが、戸先框32cに設けられた脱落防止金具54についても同様に開口溝72の室内側の壁部72bの室内側見付け面から面材配置溝74まで延在する形状としてもよい。
また、上記した実施形態では、上框32a(下框32b)の開口溝42(62)の内側に第1の熱膨張性部材52を設け、面材配置溝44(64)の内側に第1の熱膨張性部材52と異なる温度で膨張する第2の熱膨張性部材53を設けた構成を例示したが、このように膨張温度の異なる第1の熱膨張性部材52及び第2の熱膨張性部材53は戸先框32cについて適用してもよい。すなわち、戸先框32cの場合には、第1の熱膨張性部材52を開口溝72に設け、これより低温で膨張する第2の熱膨張性部材53を面材配置溝74に設けるとよい。