JP6341508B2 - 防水コネクタ及び防水コネクタの製造方法 - Google Patents
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Description
また、自動車用途で使用される場合、雨や路面からの跳ね上がりの水の掛かる領域などは同じく防水機能が求められる。さらに、使用場所によっては、温度変化が大きな使用環境であっても防水機能を保つ必要がある。
また、成形直後に防水機能を満たした場合でも、長期にわたってコネクタを使用している間に、隙間が発生し、水の浸入によってコネクタ機能が損なわれることがあった。この原因を解析したところ、長期間の使用中に高温環境と低温環境に繰り返し晒されることによって、線膨張係数の小さな金属端子と、線膨張係数の大きな熱可塑性樹脂との間に歪が生じて隙間が発生することが分かった。
以上のことから、通常の方法でインサート成形を行った場合では防水機能を確保することは困難であるという問題があった。
しかしながら、この方法では加硫済のゴムと金属端子、または、加硫済のゴムと熱可塑性樹脂との接着性が弱いため使用環境の温度によっては隙間が発生する問題があった。また、使用可能な形状が限定されるという問題もあった。
特許文献2に開示されるトリアジンチオール系表面処理は、金属表面に予めトリアジンチオール誘導体を含有する陽極酸化皮膜を形成する。そして、この陽極酸化皮膜上に樹脂層を形成して、陽極酸化皮膜を介して樹脂層と金属との接合を良好にしている。
さらに、陽極酸化皮膜と熱可塑性樹脂との接着性を良好にするためには、陽極酸化皮膜を形成してからインサート成形を行うまでの時間(オープンタイム)を短くする必要がある。そのため、インサート成形でコネクタを成形する場合は、インサート部品である金属端子へ表面処理を行なってから成形するまでの間を注意深く管理する必要が有るので、少量多品種生産へは不向きであった。
特許文献3に開示されているインサート成形方法では、金型表面に断熱層を形成することにより、金型内に高温の溶融樹脂が流入して金型内の金属部品の温度が急上昇した後の金属部品及び樹脂の金属部品と接触する部分の温度の低下をし難くし、樹脂と金属部品との接触部分の収縮量の差を小さくして密着性を上げるようにしている。
しかしながら、この方法では全ての製品形状に対して精度良く断熱層を形成することが出来ないため、複雑な製品形状への対応は困難であり、製品形状が限定されるという問題があった。
金属端子と熱可塑性樹脂との間にクロロスルホン化ポリエチレン組成物からなる密着層を形成して、金属端子と熱可塑性樹脂とを密着層に一体に結合することにより、金属端子と熱可塑性樹脂の隙間をなくして水の浸入を防止することを特徴とする。
その結果、本発明の防水コネクタは、金属端子と熱可塑性樹脂との間に隙間が形成されず、良好な防水機能が得られる。
射出成形前に予め金属端子における熱可塑性樹脂が覆う部分へクロロスルホン化ポリエチレン組成物からなる密着層を形成し、密着層がキャビティ内に配置されるように金属端子を射出成形金型へ装着して射出成形を行うことを特徴とする。
その結果、射出成形後に熱可塑性樹脂が熱収縮を起こしても密着層がその弾性力により熱可塑性樹脂の収縮を吸収するので、密着層を介して金属端子と熱可塑性樹脂との密着性は維持されて、金属端子と熱可塑性樹脂との間に隙間が形成されず、良好な防水機能を発揮できる防水コネクタを製造することができる。
このようにして金属端子に密着層を形成することにより、金型端子の形状に限定されることなく簡単に薄膜の密着層を形成できる。
また、本発明の防水コネクタの製造方法によれば、密着層を有する金属端子をインサート成形することによって、金型内で射出成形時に熱可塑性樹脂と金属端子とは密着層を介して良好な密着性が得られる。その結果、熱可塑性樹脂が熱収縮を起こしても密着層がその弾性力により熱可塑性樹脂の歪を吸収し、金属端子と熱可塑性樹脂との密着性を良好にできるので、金属端子と熱可塑性樹脂との間に隙間が形成されず、良好な防水機能を発揮した防水コネクタが得られる。
本実施形態では、金属端子3における外部に露出させる部分は密着層4は形成してないが、密着層4は、その端部がハウジング2からはみ出した状態になってもよいし、ハウジング2よりも内方に位置させてハウジング2で覆われた状態になってもよい。何れの場合でも、金属端子3とハウジング2とが密着層4に良好に密着する。
さらに、CSM組成物はCSMの性能を有効に作用させる為に、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、加工助剤、軟化剤、樹脂・金属導電体に対する濡れ性を改善する濡れ性改善剤などが必要に応じて添加される。
また、1度の塗布で目的の膜厚を確保することが望ましいが、膜厚の均一性や厚い膜厚が必要な場合は複数回塗布してもかまわない。塗装により密着層4を形成する場合には、金属端子3における密着層4を形成しない部分にマスキングをして塗装することにより、必要な部分だけ正確に密着層4を形成することができる。
さらに、塗布領域に関しては、ハウジング2で包埋される部分全体であっても一部であっても防水機能が満たせれば構わない。
密着層4の膜厚が薄いと、密着効果が低く、防水効果を十分に保つことができない場合がある。また、膜厚が厚いと、インサート成形工程で密着層4が押し流され、押し流された密着層4が異物となったり、金型汚染の原因となったりする場合がある。さらに好ましくは10μm以上60μm以下であれば、防水機能を良好に保ち、かつインサート成形時に押し流されない膜の密着層4を形成できる。
そのため、有機溶液を噴霧などの塗装により塗布する場合は、有機溶液のCSM組成物の濃度は、有機溶媒100重量部に対し、CSM組成物を30重量部以上70重量部以下で調整することが好ましい。また、有機溶液を印刷により塗布する場合は、有機溶液のCSM組成物の濃度は、有機溶媒100重量部に対し、CSM組成物を10重量部以上50重量部以下の範囲で調整することが好ましい。
本実施形態に使用されるハウジング2と金属端子3とを備えるコネクタ1は、図3に示すように、固定金型5と可動金型6とを用いたインサート成形により形成される。
まず、金属端子3の表面におけるハウジング2で覆われる部分に上述した方法で、CSM組成物の密着層4を形成する。
固定金型5に可動金型6を接合させることによりハウジング2を成形するためのキャビティ7が形成される。さらに、固定金型5と可動金型6とには、キャビティ7内に開口され、金属端子3が挿入される複数の固定側挿入穴51と、複数の可動側挿入穴61とが形成されている。固定金型5には、キャビティ7に連通する2本のゲート52が形成されている。
そして、ハウジング2が固化すると、型開きして成形品を取り出す。
(金属端子)
本実施例および比較例に使用した金属端子3は、錫メッキ処理を行った銅を用いた。
クロロスルホン化ポリエチレン(TOSO−CSM(登録商標) CM−1500:東ソー株式会社製)100重量部に対し、
加硫剤および受酸材として酸化マグネシウム(キョーワマグ(登録商標)150:協和化学工業株式会社製)4重量部、
加硫促進剤としてジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(ノクセラー(登録商標)TRA:大内新興化学工業株式会社製)2重量部、
酸化防止剤としてペンタエリスリトール(ノイライザー(登録商標)P:日本合成化学株式会社製)3重量部の割合で添加して、加工温度80℃のロール混錬機で15分間混錬することによりCSM組成物を得た。
トルエン(和光純薬工業株式会社製・1級)100重量部に対し、上記CSM組成物40重量部の割合で投入し、スターラーを用いて4時間撹拌し有機溶液を得た。
金属端子3へはけ塗りによって有機溶液を塗布し、室温25℃の環境下で16時間自然乾燥して密着層4を得た。乾燥後に膜厚を測定したところ、15〜30μmであった。
本実施例および比較例に使用したコネクタ1を形成するための成形材料は市販のポリフェニレンサルファイド(以下、PPS樹脂という)、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBT樹脂という)を用意し、それぞれ140℃の乾燥機で3時間以上乾燥したものを用いた。それぞれの商品名に関しては表1に記載する。
図3に示す固定金型5と可動金型6によりキャビティ7が形成される金型を用いた。金型端子3を密着層4がキャビティ7内に配置されるようにキャビティ7内に設置し、PPS樹脂又はPBT樹脂をインサート成形しコネクタ1を得た。主な成形条件は表1に示す。
(インサート成形物の密着評価)
得られたコネクタ1を1日間室温で保管した後、図4に示すようにコネクタ1のハウジング本体21の開口部を試験機8で密封した状態で空気を送り込んだ。その圧力を0.4MPaまで上げて空気の漏れの有無を確認して、コネクタ1のハウジング2と金属端子3との密着性を評価した。
得られたコネクタ1を1日間室温で保管した後、表1に示す温度環境条件でヒートサイクル試験を行った。その後、このコネクタ1を上記密着評価と同様の方法で密着性の評価を行った。
得られたコネクタ1を1日間室温で保管した後、図5に示すように治具9でコネクタ1のハウジング本体21の開口部を密閉した状態で水深1mの水中で30分水没させコネクタ1の治具9で覆われた空間への水の浸入の有無を確認した。
得られたコネクタ1を1日間室温で保管した後、表1に示す温度環境条件でヒートサイクル試験を行った。その後、このコネクタ1を上記防水機能評価と同様の方法で水の浸入の有無の評価を行った。
有機溶液を金属端子3へ塗布・乾燥し密着層4を得た。この密着層4を形成した金属端子3へ表1に示すPPS樹脂を用いて表1に示す射出成形条件でインサート成形してコネクタ1を得た。
得られたコネクタ1の密着性評価では、空気は漏洩しなかった。さらにヒートサイクル試験後のコネクタ1の密着評価を行なったところ、空気は漏洩しなかった。
得られたコネクタ1の防水機能評価では、水の浸入はなかった。さらにヒートサイクル試験後のコネクタ1の防水機能評価を行なったところ、水の浸入はなかった。
実施例1により、CSM組成物を密着層4として形成した金属端子3にPPS樹脂をインサート成形して得られたコネクタ1は、金属端子3とハウジング2の密着状態は良好であり、防水機能を有することを確認した。
密着層4を形成した後、金属端子3を室温25℃湿度50%に調湿した恒温槽の中に13日間保管する以外、実施例1と同様にコネクタ1をPPS樹脂を用いて表1に示す射出成形条件でインサート成形した。
得られたコネクタ1の密着性評価では、空気は漏洩しなかった。さらにヒートサイクル試験後のコネクタ1の密着評価を行なったところ、空気は漏洩しなかった。
得られたコネクタ1の防水機能評価では、水の浸入はなかった。さらにヒートサイクル試験後のコネクタ1の防水機能評価を行なったところ、水の浸入はなかった。
実施例2により、CSM組成物を密着層4として形成した金属端子3を室温環境下において長期に保管した場合であっても、PPS樹脂をインサート成形して得られたコネクタ1は、金属端子3とハウジング2の密着状態は良好であり、防水機能を有することを確認した。
実施例1と同様に金属端子3へ密着層4を形成して、この密着層4を形成した金属端子3へ表1に示すPBT樹脂を用いて表1に示す射出成形条件でコネクタ1をインサート成形した。
得られたコネクタ1の密着性評価では、空気は漏洩しなかった。さらにヒートサイクル試験後のコネクタ1の密着評価を行なったところ、空気は漏洩しなかった。
得られたコネクタ1の防水機能評価では、水の浸入はなかった。さらにヒートサイクル試験後のコネクタ1の防水機能評価を行なったところ、水の浸入はなかった。
実施例3により、CSM組成物を密着層4として形成した金属端子3にPBT樹脂をインサート成形して得られたコネクタ1は、金属端子3とハウジング2の密着状態は良好であり、防水機能を有することを確認した。
密着層4を形成した後、金属端子3を室温25℃湿度50%に調湿した恒温槽の中に13日間保管する以外、実施例3と同様にコネクタ1をPBT樹脂を用いて表1に示す射出成形条件でインサート成形した。
得られたコネクタ1の密着性評価では、空気は漏洩しなかった。さらにヒートサイクル試験後のコネクタ1の密着評価を行なったところ、空気は漏洩しなかった。
得られたコネクタ1の防水機能評価では、水の浸入はなかった。さらにヒートサイクル試験後のコネクタ1の防水機能評価を行なったところ、水の浸入はなかった。
実施例4により、CSM組成物を密着層4として形成した金属端子3を室温環境下において長期に保管した場合であっても、PBT樹脂をインサート成形して得られたコネクタ1は、金属端子3とハウジング2の密着状態は良好であり、防水機能を有することを確認した。
密着層4を形成しない金属端子3へ表1に示すPPS樹脂を用いて表1に示す射出成形条件でインサート成形してコネクタ1を得た。
得られたコネクタ1の密着性評価では、空気は漏洩しなかった。さらにヒートサイクル試験後のコネクタ1の密着評価を行なったところ、空気が漏洩した。
得られたコネクタ1の防水機能評価では、水の浸入はなかった。しかしながら、さらにヒートサイクル試験後のコネクタ1の防水機能評価を行ったところ、水の浸入がみられた。
比較例1により、密着層4を形成していない金属端子とPPS樹脂とをインサート成形して得られたコネクタ1は、高温環境と低温環境に繰り返し晒されることによって密着状態が悪化し、防水機能が損なわれることを確認した。
密着層4を形成しない金属端子3へ表1に示すPBT樹脂を用いて表1に示す射出成形条件でインサート成形してコネクタ1を得た。
得られたコネクタ1の密着性評価では、空気は漏洩しなかった。さらにヒートサイクル試験後のコネクタ1の密着評価を行なったところ、空気が漏洩した。
得られたコネクタ1の防水機能評価では、水の浸入はなかった。しかしながら、さらにヒートサイクル試験後のコネクタ1の防水機能評価を行ったところ、水の浸入がみられた。
比較例2により、密着層4を形成していない金属端子とPBT樹脂とをインサート成形して得られたコネクタ1は、高温環境と低温環境に繰り返し晒されることによって密着状態が悪化し、防水機能が損なわれることを確認した。
2 ハウジング
21 ハウジング本体
21a 底部
22 フランジ部
3 金属端子
4 密着層
5 固定金型
51 固定側挿入穴
52 ゲート
6 可動金型
61 金型側挿入穴
7 キャビティ
8 試験機
9 治具
Claims (3)
- 金属端子の一部を熱可塑性樹脂によってインサート成形することによって得られる主に防水が求められる環境で使用される防水コネクタであって、
金属端子と熱可塑性樹脂との間にクロロスルホン化ポリエチレン組成物からなる密着層を形成して、金属端子と熱可塑性樹脂とを密着層に一体に結合することにより、金属端子と熱可塑性樹脂の隙間をなくして水の浸入を防止することを特徴とする防水コネクタ。 - 射出成形金型に金属端子をセットし、型締めしてキャビティ内に熱可塑性樹脂を射出充填することによって熱可塑性樹脂と金属端子とをインサート成形して得られる主に防水が求められる環境で使用される防水コネクタの製造方法であって、
射出成形前に予め金属端子における熱可塑性樹脂が覆う部分へクロロスルホン化ポリエチレン組成物からなる密着層を形成し、密着層がキャビティ内に配置されるように金属端子を射出成形金型へ装着して射出成形を行うことを特徴とする防水コネクタの製造方法。 - 請求項2記載の防水コネクタの製造方法において、
予めクロロスルホン化ポリエチレン組成物を有機溶剤を用いて溶液化し、クロロスルホン化ポリエチレン組成物の溶液を金属端子における熱可塑性樹脂が覆う部分へ塗布した後に乾燥させて密着層を形成することを特徴とする防水コネクタの製造方法。
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